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リン(燐、Phosphorus)

最終更新日:2016年10月26日

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比色分析とICP分析の比較
元素リン
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全般
埋蔵量・生産量

消費量
価格
ピーク・リン

リン鉱床
モロッコと西サハラ
肥料
リン回収(資源化)
リン循環(世界)
リン収支(地域)
リン分布

各国のリンフロー
環境基準(リンおよび窒素)
Eh-pH
自然界のリン濃度

リンを含む化学種
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MAP/HAP(リン酸マグネシウムアンモニウム/ヒドロキシアパタイト)
生体中のリン

 元素記号Pで原子番号(Atomic Number)15のリン(Phosphorus)元素について、主に物質循環(Substance Cycle)関連の情報を集めている。
 リン資源とは一般にカルシウムリン酸塩鉱物燐灰石(りんかいせき)、apatite、アパタイト〕を主体とするリン鉱石を指すが、その用途の大部分(世界で約9割)肥料(Fertilizer)である。植物(Plant)の生育(Growth)には窒素(N)およびカリ(K)と並んで必須(Essential)であるが、いわゆる生元素(Bio-element)として重要な元素である。自然界(Nature)では、リン酸塩鉱物(Phosphate Mineral)として存在するものが圧倒的に多い。
比色分析とICP分析の比較

2010

※溶液中のリン(P)の定量分析法として、もっとも汎用されている2つの方法の比較の例である。比色分析は、物質が光を吸収する現象を利用した分析法である。一方のICP分析は、ICP(inductively coupled plasma、高周波誘導結合プラズマ)を光源とする発光分光分析の一種であり、試料は約6000K(ケルビン温度)に加熱されるとされる。

【2010】

元素リン

1983|−|1992|−|2004|−|2011

リンだけから構成される物質、つまり化学組成Pの物質には、結晶構造が異なるものが複数存在する。一般に化学組成が同じで結晶構造が異なるものを多形(polymorphism)あるいは同質異像と呼ぶが、単一元素の場合は同素体(allotrope)とも呼ばれる。リンの他に炭素(C)の場合が良く知られている。リンの同素体は10数種類存在すると主張する研究者もいるが、代表的なものは(white)(violet)(black)とされる場合が多い。は白の表面の一部が紫に変わったもので、は紫に白が少し混じったものとされている。これら同素体の相関係は明確ではないし、それぞれの物性も研究者によって変動する。つまり、良く知られた元素であるにもかかわらず、不明な点が多く残されている。【参考】(リンの同素体について)

【2011】

【2004】

【1992】

【1983】

環境基準(リンおよび窒素)

1971|−|1997

【1997】

【1971】

Eh-pH

1994|−|2002|−|2005|−|2008

【2008】

【2005】

【2002】

【1994】

自然界のリン(P)濃度

1980|−|1995|−|20052006|−|2010|2011|2012

リンの濃度(ppm P:液体はmg/l、固体はmg/kg
固体 地球 690 Allegre(最初のeの頭に`)ほか(2001)
1,000〜2,130 鹿園(1992)
2,000〜5,000 松尾(監修)(1989)
地殻 520(日本の上部地殻) Togashi et al.(2000)
700(上部地殻) McLennan(2000)
665(上部地殻)
872(下部地殻)、
757(大陸地殻)
Wedepohl(1995)
1,000 南川・吉岡(編)(2006)
1,050 Krauskopf & Bird(1995)、西村(1991)
岩石 390(花崗岩)、
610(玄武岩)、
700(頁岩)
Krauskopf & Bird(1995)
830(花崗岩)、
1,960(玄武岩)
都城・久城(1975)
2,288(塩基性〜超塩基性深成岩)、
704(酸性深成岩)、
1,364(塩基性・中性火山岩)、
308(酸性火山岩)、
946(頁岩)、
344(砂岩)、
484(炭酸塩岩)、
264(蒸発岩)、
528(沖積堆積物)
Yang,X.ほか(2013)
堆積物 14.4〜27.2(有機態)
47.8〜73.0(無機態)
朝日ほか(2014)
140〜740 Bretzほか(2006)
〜1,000 Liほか(2003)Sondergaard(oに/が重なる)ほか(2003)
〜2,000 Chaoほか(2008)
2,700〜5,400(湖底) 対馬ほか(2008)
土壌 650 北野(1992)
800 浅見(2001)、一國(1989)
1,000、
20〜50(土壌テスト)
Bundy(2003?)
1,000〜1,500(森林土壌・水田土壌) 井上ほか(2004)
懸濁物 約5,000(河川) 井上ほか(2004)
19,000〜44,000(河川) 対馬ほか(2008)
液体 海水 <0.02(T類)
<0.03(U類(水産1種))
<0.05(V類(水産2種))
<0.09(W類(水産3種))
環境省による海域環境基準
0.01〜0.05 石井・柳(2004)
0.01〜0.05(湾懸濁態) 朝日ほか(2014)
0.01〜0.07 伊藤ほか(2010)
0.02〜0.04 瀬戸内海環境情報センター(2013)
0.04 大阪湾環境保全協議会(2014)
0.05 coral-shop(2014)
0.06 ホランド(1979)
0.062 南川・吉岡(編)(2006)
0.09 Krauskopf & Bird(1995)
河川水 0.006 西村(1991)、ホランド(1979)
0.0066(<0.0015〜0.116mg/l)(渓流水の溶存無機態) 若松ほか(2006)
0.023(溶存反応性リン) Fitzgerald(2013)
0.025 南川・吉岡(編)(2006)
0.10 Bundy(2003?)
0.106〜0.173(懸濁態) 朝日ほか(2014)
〜0.5 松本ほか(2012)
湖沼水 <0.005(T類、自然環境保全)
<0.01(U類、水道1・2・3級、水産1種)
<0.03(V類、水道3級)
<0.05(W類、水産2種)
<0.1(X類、水産3種、工業用水、農業用水、環境保全)
環境省による湖沼環境基準
0.001〜0.004 Bretzほか(2006)
0.01(溶存)
0.05(溶存+粒子状)
Bundy(2003?)
地下水 0.003〜0.082(地下水と湧水:甲府盆地)
0.089〜0.212(地下水と湧水:富士山麓)
小林・輿水(1999)
0.04〜0.12(溶存反応性リン) Holmanほか(2008)
0.1〜10(主に0.1〜3) 井岡ほか(2009)
〜1(溶存反応性リン) Fitzgerald(2013)
湧出水 〜17 川原谷ほか(2010)
間隙水 0.005〜0.07(ピエゾメーター) Bretzほか(2006)
0.01〜0.30(土壌) Bundy(2003?)
〜1.6(土壌) 山口(2009)
0.6〜2.0(湖底堆積物) 対馬ほか(2008)
〜2 Chaoほか(2008)
工業用水
農業用水
<0.1 環境省による湖沼環境基準
排水 16 環境省による一律排出基準の生活環境項目
生物 植物 木本類 120〜2,000(被子植物) 南川・吉岡(編)(2006)
1,000〜3,000(裸子植物) 南川・吉岡(編)(2006)
参照植物 2,000 南川・吉岡(編)(2006)
植物 2,300(陸)、
3,500(海)
西村(1991)
藻類 2,800(海洋褐藻類) 南川・吉岡(編)(2006)
3,000(海洋紅藻類) 南川・吉岡(編)(2006)
4,000(海洋緑藻類) 南川・吉岡(編)(2006)
5,800 井上ほか(2004)
草本野菜 130〜10,000 南川・吉岡(編)(2006)
海洋植物プランクトン 4,000〜18,000 南川・吉岡(編)(2006)
動物 動物プランクトン 7,500 南川・吉岡(編)(2006)
動物 4,000〜18,000(海)、
17,000〜44,000(陸)
西村(1991)
魚類 18,000 南川・吉岡(編)(2006)
参照ヒト 27,900 南川・吉岡(編)(2006)
家畜肥やし   〜10,000 Danielsほか(1998)
  3,000〜40,000(家畜ふん堆肥) 小柳ほか(2005)
食品   3,000〜7,000(植物性食品)、
3,000〜12,000(動物性食品)
(独)国立健康・栄養研究所(2014)
その他 化学肥料 56,000〜66,000 小柳ほか(2005)
生ゴミ処理物 1,000〜9,000 小柳ほか(2005)

【2012】

【2010】

【2006】

【2005】

【1995】

【1980】

リンを含む化学種

2003|2004|2005|2006|2007|20082009|2010|2011|−|2014

リンの化学種
固体 天然物 岩石 鉱物リン酸塩 アパタイト(リン酸カルシウム)グループ
堆積物 鉱物リン酸塩)、
吸蔵P(鉄酸化物など)、
吸着P(鉄酸化物など)
アパタイトグループ
土壌 アパタイトグループ
懸濁物
P鉱床 鉱物リン酸塩 アパタイトグループ
人工物 化学肥料 過リン酸石灰 リン酸二水素カルシウム(第一リン酸カルシウム)1水和物 Ca(H2PO4)2・H2O
重過リン酸石灰 リン酸二水素カルシウム1水和物+リン酸二水素カルシウム
Ca(H
2PO4)2・H2O+Ca(H2PO4)2
熔成リン肥 リン酸イオン(PO43-)を持つケイ酸塩アモルファス質
〔主成分はCa
3(PO4)2+Ca2SiO4
農薬 有機リン系  
洗剤   STP(Na5P3O10)、TSPP(Na4P2O7
生ゴミ処理物
汚泥 MAP/HAP ストルーバイト
液体 天然物 海水 リン酸のイオン、
有機リン化合物
リン酸水素イオン(HPO42-
河川水 リン酸のイオン リン酸二水素イオン(H2PO4-)、
リン酸水素イオン(HPO42-
湖沼水
地下水
湧出水
間隙水
人工物 工業用水
農業用水
リン酸のイオン  
排水  
生物 天然物 植物 (全体) ヌクレオシド(塩基+糖)+リン酸=ヌクレオチド、
ヌクレオシド二リン酸⇒ADP、
ヌクレオシド三リン酸⇒ATP
ATP(アデノシン三リン酸、 C10H16N5O13P3)、
ADP(アデノシン二リン酸、 C10H15N5O10P2)、
核酸(DNA、RNA)、
フィチン酸(phytic acid、 C
6H18O24P6)塩
動物 (全体) ヌクレオシド(塩基+糖)+リン酸=ヌクレオチド、
ヌクレオシド二リン酸⇒ADP、
ヌクレオシド三リン酸⇒ATP
ATP(アデノシン三リン酸、 C10H16N5O13P3)、
ADP(アデノシン二リン酸、 C10H15N5O10P2)、
核酸(DNA、RNA)
(骨や歯など) リン酸カルシウム(哺乳類の骨・歯、シャミセンガイの殻)  
人工物 有機肥料 家畜肥やし    
食品      
(注) 動物の殻などは炭酸カルシウム(貝殻、鳥類の卵の殻、サンゴの骨格、耳石)からなる。

燐酸塩鉱物こちらも参照。リンの鉱物としては燐灰石(apatite)グループが主要。他に、モナザイト(モナズ石、monazite)グループ、藍鉄鉱(vivianite)グループなど。

燐酸塩鉱物(phosphates

鉱物名

Mineral Name

化学式

結晶系

文献
ゼノタイム xenotime-(Y) YPO4 正方 Barthelmy氏による、Ralph氏による。
モナザイトグループmonazite group Barthelmy氏による、Ralph氏による。
モナザイト(-Ce)〔モナズ石〕 monazite-(Ce) CePO4/(Ce,La,Nd,Th)PO4 単斜 Barthelmy氏による、Ralph氏による。
モナザイト(-La) monazite-(La) LaPO4/(La,Ce,Nd)PO4 単斜 Barthelmy氏による、Ralph氏による。
モナザイト(-Nd) monazite-(Nd) NdPO4/(Nd,La,Ce)PO4 単斜 Barthelmy氏による、Ralph氏による。
燐灰石グループapatite group Barthelmy氏による、Ralph氏による。
燐灰石(-F)フッ素燐灰石 fluorapatite Ca5(PO4)3F 六方 Barthelmy氏による、Ralph氏による。
燐灰石(-Cl) chlorapatite Ca5(PO4)3Cl 単斜 Barthelmy氏による、Ralph氏による。
燐灰石(-OH) hydroxylapatite(hydroxyapatite) Ca5(PO4)3(OH) 六方 Barthelmy氏による、Ralph氏による。
緑鉛鉱 pyromorphite Pb5(PO4)3Cl 六方 Barthelmy氏による、Ralph氏による。
アンブルゴ石グループamblygonite group  
アンブリゴ石 amblygonite (Li,Na)Al(PO4)(F,OH) 三斜 Barthelmy氏による、Ralph氏による。
銀星石 wavellite Al3(PO4)2(OH,F)3・5H2O 斜方 Barthelmy氏による、Ralph氏による。
バリッシャイトグループvariscite group  
バリッシャイト variscite Al(PO4)・2H2O 斜方 Barthelmy氏による、Ralph氏による。
ストレンガイト strengite Fe3+(PO4)・2H2O 斜方 Barthelmy氏による、Ralph氏による。
ラブドフェーングループrhabdophane group Barthelmy氏による(LaNd)、Ralph氏による。
ラブドフェーン rhabdophane-(Ce) (Ce,La)PO4・H2O 六方 Barthelmy氏による、Ralph氏による。
人形石 ningyoite (U,Ca,Ce)2(PO4)2・1-2H2O 斜方・
擬六方
Barthelmy氏による、Ralph氏による。
藍鉄鉱グループvivianite group  
藍鉄鉱 vivianite Fe2+3(PO4)2・8H2O Barthelmy氏による、Ralph氏による。
トルコ石グループturquoise group  
トルコ石 turquoise Cu(Al,Fe)6(OH)8(PO4)4・5H2O/
Cu2+Al
6(PO4)4(OH)8・4H2O
三斜 Barthelmy氏による、Ralph氏による。
燐灰ウラン石グループautunite group Barthelmy氏による、Ralph氏による。
燐灰ウラン石 autunite Ca(UO2)2(PO4)2・10-12H2O 正方 Barthelmy氏による、Ralph氏による。
燐銅ウラン石 torbernite Cu(UO2)2(PO4)2・8-12H2O 正方 Barthelmy氏による、Ralph氏による。
Mandarino,J.A.(1999)による『Fleischer's Glossary of Mineral Species 1999』などから。リンクはウィキペディア、『鉱物の一覧#リン酸塩鉱物』も参照。Barthelmy氏によるMineralogy Database、およびRalph氏によるmindat.orgへのリンク。

その他
  monetite Ca(PO3OH)=Ca(HPO4) 三斜 Barthelmy氏による、Ralph氏による。
  brushite CaHPO4・2H2O 単斜 Barthelmy氏による、Ralph氏による。
ストルーバイトグループ Ralph氏
ストルーバイト struvite (NH4)MgPO4・6(H2O) 斜方 Barthelmy氏による、Ralph氏による。
MAP/HAP』を参照。
  struvite-(K) KMg(PO4)・6H2O 斜方 Barthelmy氏による、Ralph氏による。
  hazenite KNaMg2(PO4)2・14H2O 斜方 Barthelmy氏による、Ralph氏による。
リンクはウィキペディア。Barthelmy氏によるMineralogy Database、およびRalph氏によるmindat.orgへのリンク。

【2014】

【2011】

【2009】

【2008】

【2005】

【2003】

MAP/HAP

2010

 廃棄物(下水など)からのリン回収法に関連して用いられる用語である:
MAP(Magnesium Ammonium Phosphate、リン酸マグネシウムアンモニウム)は、天然産のものは鉱物名struviteストルーバイト:※鉱物名は正式にはストルーバイトであるが、下水汚泥関連の分野ではストラバイトと呼び習わされている)と呼ばれ、Mg(NH4)(PO4)・6H2Oという化学式を持つ。この物質は、下水処理施設の配管などを詰まらせて、人工的に生成していることが知られている。下水処理水中から人為的にこの物質を沈殿させて、リンを回収し、肥料等として利用する目的で研究が行われている。この方法はMAP法と総称されている。
HAP(Hydroxylapatite、Hydroxyapatite、ヒドロキシアパタイト)は、天然には微量ではあるが広範に産出する鉱物(一般に、燐灰石あるいはアパタイトと呼ばれるが、これはグループ名である)である。化学組成はCa5(PO4)3(OH)〔またはCa10(PO4)6(OH)2である。廃棄物に含まれるリンをカルシウム・リン酸塩の形で分離する方法はHAP法と総称されている。

【2010】

生体中のリン

1991

【1991】


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