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リン−化学分析法−

最終更新日:2016年6月24日

リン分析法全般土壌リン試験法リン連続抽出法各論

【リン分析法全般】

※リンの化学分析法は、分野によって対象とする形態(化学種)が異なるとともに、目的に応じて多種多様の手法が用いられている。実際の化学種の決定は困難な場合も多く、現実的には、何らかの化学的操作によって区別できる分を分析する方法が用いられている。具体的には、リンの形態から:全P、全溶存P、溶存無機P、溶存有機P、粒子状無機P、粒子状有機P;あるいは、不安定なP、可溶性のP、交換性のP、ゆるく結合したP、Feと結合したP、Alと結合したP、Caと結合したP、など。また、リンの起源から:生物起源のP、自生のP、砕屑性のP、など。さらに、生物による利用性から:生物が利用可能なP(可給態=available)、プランクトンが利用可能なP、農作物が利用可能なP、など。とくに固体の場合で、化学種を特定できた場合は鉱物名(アパタイトなど)や無機化合物名や有機化合物名(生物起源が主)も用いられている。
 固体試料の場合には、特定の操作によって溶液に変え、そのP画分について上記のような特有の名称を与えることが多い。また、液体試料であっても、固体(浮遊物質、懸濁物質)と液体(溶存物質)の区別は現実的には困難な場合が多いため、濾過操作におけるフィルターの孔径によって行われており、0.45ミクロンがよく使われているこちらを参照)。分析手法(および分析機器)の違いによっても、結果が異なることが多い(ICPと比色の比較はこちらを参照)
 歴史的には、農業における農作物の栄養の一つであるリン量の管理を目的とする土壌中のリンの化学分析が主要であり、多種類の土壌リン試験法が開発されてきている。この場合は、農作物である植物に利用できる形態がとくに重要である。
 近年は、さらに環境問題に関連して、とくに富栄養化との関連で、水試料(および堆積物試料)の分析例が多い。

※それぞれの内容についての概略は以下を参照。また、それぞれの論文の要旨は『論文リスト(物質循環)』のページの『リン』を参照。

土壌

堆積物

天然水

無機態

有機態

海水

淡水

無機態

有機態
  • Tiessen and Moir(1993)
  • ◎Tiessen et al.(1984)⇒〔Hedley法〕
  • ◎★Hedley et al.(1982)
  • ◎Tessier et al.(1979)
  • Hupfter et al.(1995)《湖》
  • ◎★Psenner et al.(1984)、
    Psenner et al.(1988)《湖(淡水)》
  • ◎★Hieltjes and Lijklema(1980)《湖》
  • Watanabe and Olsen(1962)《CDB抽出液:モリブデン青−塩化スズ(II)還元吸光光度法》
  • Murphy and Riley(1962)《NaOHおよびHCl抽出液:モリブデン青−アスコルビン酸還元吸光光度法》

土壌リン試験法

  • Bray 1:塩酸(HCl)とフッ化アンモニウム(NH4F)←Bray and Kurtz(1945)
  • Mehlich 1:塩酸(HCl)と硫酸(H2SO4)←Mehlich
  • Mehlich 3:酸〔酢酸(HOAc)と硝酸(HNO3)〕と塩〔フッ化アンモニウム(NH4F)と硝酸アンモニウム(NH4NO3)〕とキレート剤〔エチレンジアミン四酢酸(EDTA、C10H16N2O8、(HOOCCH2)2NCH2CH2N(CH2COOH)2)〕←Mehlich(1984)
  • Olsen:炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)(pH=8.5)←Olsen et al.(1954)
  • IIP:鉄酸化物含浸紙(Fe-oxide impregnated paper)←Chardon(2000)
  • AER:陰イオン交換樹脂(anion exchange resin)←Sharpley(2000)
:連続抽出法
★:主要な分析法

【土壌リン試験法】

【リン連続抽出法各論】

1985|1986|1987|1988|1989|1990|1991|19921993|1994|1995|1996|1997|1998|1999|2000|2001|20022003200420052006|2007|200820092010

〜1999年 2000年〜2004年 2005年〜2009年 2010年〜
Lucotte & d'Anglejan(1985)
De Lange(1992)【Hieltjes & Lijklema】|
Ruttenberg(1992)
【Ruttenberg】
Jensen & Thamdrup(1993)
【Psenner】
鈴村・鎌谷(1993)【鎌谷・前田】|
Cross & Schlesinger(1995)【Tiessen←Hedley】|Hupfer et al.(1995))
【Psenner】
Paludan & Jensen(1995)
Schenau & De Lange(2000)【Ruttenberg】
Anderson & Delaney(2000
【Ruttenberg】
Rydin(2000)
【Psenner】
Motavalli & Miles(2002)【Hedley】|
Ruttenberg(2003)【Ruttenberg】
井上ほか(2004)【Pacini and Gachter】|
Fytianos & Kotzakioti(2005)【Psenner】
Latimer et al.(2006))
【Ruttenberg】
Kapanen(2008)【Hieltjes & Lijklema】|
Oxmann et al.(2008
対馬ほか(2008)【Pacini and Gachter】|
Zhang and Kovar(2009)
Pierzynski et al.(2009)
Kuster-Heins(2009))
【Ruttenberg】
小松ほか(2009)【Williams】|
Hupfer et al.(2009)
【Psenner】
Zhang et al.(2010))【Ruttenberg】
Wilson et al.(2010)
【Psenner】
Kuster-Heins et al.(2010))
【Ruttenberg】

主なリン連続抽出法〔Ruttenberg(1992)(SEDEX法)以降〕
  

NH4Cl

MgCl2

Na2S2O4

CH3COOH

HClO4

HCl

NaOH
  クエン酸
亜ジチオン酸
Na
2S2O4
でバッファー
酢酸ナトリウム   炭酸水素ナトリウムでバッファー(BD (高温)       (高温)   (高温)
Kuster-
Heins
(uの頭に¨) et al.
(2010)
〔Ruttenberg(1992)+Schenau and De Lang(2000)+Latimer et al.(2006)〕
【2M】
交換可能なP、生物起源アパタイト、
アパタイト先駆鉱物、
CaCO
3結合P
吸着された還元可能な/反応性のFe3+結合P 自生アパタイト           【1M】
砕屑性P
【550℃】
有機P
  【1.5M、85℃】
オパールに伴うP
Wilson et al.
(2010)
〔Psenner et al. (1988)+Tessier et al.(1979)+Hieltjes and Lijklema(1980)〕
【1M】
ゆるく吸着したP、
交換可能なP、
孔隙水中P
      【0.1M】
還元剤で可溶なP〔とマンガンの酸化物に伴うP〕
      【0.5M】
酸溶解鉱物
  【0.1M】
いくらかのアルミニウム・鉄の酸化物に伴うP、
いくらかの有機・生物起源P
【1M、85℃】
残り
Zhang et al.
(2010)
〔Ruttenberg(1992)〕
      【1M】
吸着された無機P、
交換可能な有機P
結合無機P   【バッファー】
【MgCl
2洗浄】
自生アパタイト、
CaCO
3結合無機・有機P
  【1M】
砕屑性アパタイト
【550℃】
溶けにくい有機P
   
Hupfer et al.
(2009)
〔Psenner et al.(1984)など〕
Hupfer et al.(1995)
【1M】
孔隙水中のP、
表面にゆるく吸着したP
      【0.1M】
酸化されたFe・Mn酸化物に結合した酸化還元に敏感なP
      【0.5M】
Caリン酸塩鉱物、
酸に可溶の有機P
  【1M】
Al・Fe酸化物に吸着したP、塩基中で可溶な無機P化合物、
ポリリン酸、
砕屑物中の有機P、
フミン化合物に結合したPを含む微生物中のP
 
小松ほか(2009)
〔Williams et al.(1971)〕
          【85℃】
【+クエン酸ナトリウム・炭酸水素ナトリウム】
Fe-P、
有機P
      【100℃】
Ca-P、
有機P
【1M】
Al-P、
有機P
 
Latimer et al.
(2006)
〔Mortlock and Froelich(1989)+Ruttenberg(1992)+Anderson and Delaney, (2000)〕
        【クエン酸ナトリウム+MgCl2
吸着した・還元可能な/反応しやすい鉄結合P
  【酢酸ナトリウム】
【MgCl
2
炭酸フッ素燐灰石、
生物起源水酸化燐灰石、
CaCO
3結合P
  【1M】
砕屑性P
【550℃】
有機P
  【1.5M、85℃】
オパールに伴ったP
Schenau & De Lange
(2000)
〔Ruttenberg(1992)+Lord(1982)など〕
【2M】
交換性またはゆるく吸着したP、
炭酸塩に伴ったP、
生物起源アパタイト
易還元性または反応性結合P 自生アパタイト         【90℃】
【HNO
3+HF】
有機P、
粘土鉱物に吸着したP
【1M】
砕屑性アパタイト
     
Ruttenberg
(2003)、
Ruttenberg
(1992)
      【1M】
交換性またはゆるく吸着したP
易還元性または反応性第二結合P   【酢酸ナトリウム
自生アパタイト、
生物起源アパタイト、
CaCO
3-結合P
  【1M】
砕屑アパタイト、
その他の無機P
【550℃】
有機P
   

【2010】

【2009】

【2008】

【2006】

【2005】

【2004】

【2003】

【2002】

【2000】

【1995】

【1993】

【1992】

【1985】


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