要旨
Key Words
1.はじめに
2.リンの現状とリン回収研究の意義
3.下水処理システムからのリン回収技術の現状
(1)下水・返流水等からの回収
a)MAP法
b)HAP法
(2)下水汚泥、脱水汚泥からの回収
(3)下水汚泥焼却灰等からの回収
(4)リン回収技術の現状の課題
4.今後の展望
(1)リン回収技術の評価
(2)リン回収メカニズムの把握
(3)リン回収物の利用
(4)まとめ
参考文献
(Abstract)
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リン |
実用化 レベル |
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水 ・ 返 流 水 等 |
MAP法 | MAP法 | PO43-、NH4+、Mg2+の晶析作用で、リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を生成。消化脱離液等のリン濃度が高い下水に薬剤を添加後、ばっ気により攪拌混合。 | MAP | ◎ |
AF-BNR-SCR | 下水処理で発生する初沈汚泥・余剰汚泥と生ごみを混合し、消化処理をした脱離液に対してMAP法を適用。 | ▲ | |||
CSIR | CSIR社(南アフリカ)により開発。A2O法の嫌気槽から一部晶析槽を経由させ、MAP法、HAP法により回収。 |
MAP, HAP |
▲ | ||
HAP法 | HAP法 | PO43-、Ca2+、OH-の晶析作用で、カルシウムヒドロキシアパタイト(HAP)を生成。下水二次処理水等のリン濃度が低い下水に薬剤を添加後、晶析材充填塔に通水。 | HAP | ◎ | |
DHV晶析法 | DHV社(ドイツ)によち製品化。NaOHと乳状石灰を添加。 | ◎ | |||
P-RoC | フォストリップ法の返流水に対してCSH(ケイ酸Ca水和物)を晶析材としたHAP法によりリン酸Caを回収。 | リン酸カルシウム | ○ | ||
Sydney Water Board | Sydney Water Board社(オーストラリア)により製品化。Ca源としてgypsum(石膏)、晶析材としてMgOを使用。 | HAP | ▲ | ||
電気、磁気による回収 | 電解法 | 下水中にFeなどの電極を浸し、直流電流を流すことで、陽極表面において鉄イオンの溶出と、リンの凝集反応を進行させ、リンを沈殿除去。 | FePO4 | ◎ | |
Smit-Nymegen | 下水二次処理水に対して、石灰、磁石、ポリマーにより凝集沈殿後、超音波処理等により磁石とリンを分離。 | リン酸カルシウム | ○ | ||
その他 | 吸着法 | Zr系、活性アルミナ系の吸着剤充填塔に下水二次処理水を通水させ、リン酸イオンを吸着除去。吸着剤は再利用。 |
リン酸、 リン酸カルシウム |
○ | |
RIM-NUT | 下水二次処理水から、イオン交換樹脂でNH4+、PO43-を除去し、NaClで各イオンを溶出後、MAPとして回収。 | MAP | ○ | ||
水 汚 泥 |
加水分解・物理化学的処理 | Cambi-KREPRO | 消化汚泥を脱水後、硫酸を添加し、150℃、pH1〜2で加水分解し、有機物、重金属を沈殿分離後、上澄みにFe塩を添加し、FePO4を回収。過剰なFeは凝集剤に再利用。 | FePO4 | ◎ |
Heatphos法 | 嫌気・好気法の余剰汚泥を70℃で熱処理し、リン抽出、上澄みにCaCl2を添加しリンを凝集、回収。 | リン酸カルシウム | ○ | ||
Aqua Reci | 超臨界水によって脱水汚泥を1分間湿式分解し、無機物を含む残さにNaOHと石灰を添加し、リンを回収。 | リン酸カルシウム | ○ | ||
Seaborne | 消化汚泥に酸を添加し、リン、重金属類、有機物を分解、上澄みに消化ガスを通気し重金属類を沈殿させ、Mg添加によりMAP、消化ガスからはメタンを回収。 |
MAP、 リン酸カルシウム |
△ | ||
酸添加、熱処理 | 余剰濃縮汚泥に酸を添加し、熱処理することで加水分解し、リンを抽出。リン抽出液は吸着剤を用いて回収。 | − | ▲ | ||
オゾン、アルカリ溶出 | 活性汚泥に対し、汚泥を攪拌しながらオゾン注入後、NaOHによってpH10〜12で攪拌、オゾンによって微生物細胞膜が裂傷し、アルカリで細胞膜の溶解が促進。 | − | ▲ | ||
亜臨界水処理+MAP法 | 高温・高圧状態の亜臨界水と余剰汚泥を接触させた後、可溶化汚泥にMg(OH)2を添加し、MAPを回収。可溶化汚泥はさらに消化工程を経て、高速メタン発酵され、消化液は再び活性汚泥法で処理される。 | MAP | ▲ | ||
薬剤添加 | 前凝集沈澱汚泥からのNaHS法 | 塩化第二鉄を最初沈殿池に添加して発生した汚泥にNaHSを添加し、リン酸とFeSを生成。リン酸にCa塩を添加しリン酸Caを、FeSに酸を添加しH2S、Feを回収。H2SはNaHSに、Feは凝集剤に再利用。 | リン酸カルシウム | ▲ | |
アルカリ抽出 | 生物槽にPACを添加して得た余剰汚泥をNaOHでpH12に調整し、汚泥を可溶化。上澄みはCaCl2を添加しHAPを回収した後、凝集剤に再利用。 | HAP | ▲ | ||
その他 | HYPRO | 前凝集処理により、リンと有機物を沈殿除去し、その汚泥を加水分解することで、脱窒の炭素源として利用。リンは汚泥中にAl、Fe塩として回収。 |
AlPO4 FePO4 |
◎ | |
フォストリップ法 | A/O法において返送汚泥の一部を、滞留時間4〜12時間、嫌気適条件下で、上澄みにリン放出させる。上澄みは石灰あるいは他の凝集剤により処理され、固液分離。 | リン酸カルシウム | ◎ | ||
オゾン溶出+HAP法 | A/O法において返送汚泥の一部がオゾン接触槽へ送られ、有機物、リンが可溶化され、生物学的嫌気槽へ、嫌気槽から一部の混合液を抜き、HAP法によりリン回収。 | HAP | △ | ||
Kemicond | 下水汚泥に硫酸を添加し、pH4でリン酸Feを溶出させ、H2O2の添加によりFePO4を沈殿させ、汚泥を改質。 | FePO4 | ○ | ||
ZS吸着 | 沈砂池流出水に鉄、シリカ重合凝集剤(PSI)を添加し、沈殿汚泥を生成。沈殿汚泥に硫酸を添加し、リン酸を溶出後、ジルコニウムメゾ構造体(ZS)により吸着。 | ZS吸着態 | ▲ | ||
水 汚 泥 |
乾燥 | Swiss Combi | ドラム式乾燥機により脱水汚泥を150℃で乾燥し、得られた乾燥汚泥は肥料および低品位の燃料として利用。 | 肥料 | ◎ |
コンポスト | Simon-N-Viro | 脱水汚泥に対して、50℃でアルカリを添加してコンポスト化し、得られた乾燥汚泥を土壌改良剤として利用。 | 有機質土壌 | ◎ | |
水 汚 泥 焼 却 灰 |
熱処理 | Bio-Con | 焼却灰に硫酸を添加し、リン、重金属類を溶出後、溶出液をイオン交換し、リン酸、FeCl3、KHSO4を回収。 | リン酸 | ○ |
酸、溶媒抽出法 | 焼却倍灰に硫酸を添加し、リンを抽出後、抽出液から水難溶性の有機溶媒にリンを液液抽出。さらに有機溶媒中のリンを水中に逆抽出し、リン酸として回収。 | リン酸 | △ | ||
硫酸抽出、アルカリ回収法 | 硫酸により焼却灰からリンを酸抽出し、固液分離後、上澄みにアルカリを添加し、中和することで、pH4ではリン酸Ca、pH10では重金属類を分離回収。 | リン酸カルシウム | △ | ||
酸抽出、Ca凝集 | 焼却灰のリン濃度から最適硫酸添加量を決定。焼却灰に硫酸を添加し、抽出液にCa薬剤を添加し、リン回収。 | リン酸カルシウム | ▲ | ||
酸抽出、吸着法 | 焼却灰に硫酸を添加し、リンを抽出後、上澄みから吸着剤でリンを吸着除去。吸着されたリンはNaOH溶液で脱着後、リン溶出液を冷却し、リン酸Naを回収。 | リン酸ナトリウム | ▲ | ||
SEPHOS | 焼却灰に硫酸を添加し、pH1.5で攪拌後、上澄みをpH3.5に調整しAlPO4を回収。AlPO4にアルカリを添加し、pH12〜14で溶解後、Ca塩添加により、リン回収。 |
AlPO4、 リン酸カルシウム |
▲ | ||
ミョウバン法 | 焼却灰に硫酸を添加し、リンを抽出後、硫酸アンモニウム等を加え、冷却し、溶液中Alを複塩として回収。残った溶液に炭酸Naなどを加えてリン酸Naとして回収。 | リン酸ナトリウム | ▲ | ||
ゲル化法 | 焼却灰に硫酸を添加し、炭酸水素Naを添加し、AlPO4を回収。それにNaOH添加で溶解し、珪酸Na添加でゲル化させ、リン酸Na、ゼオライト状物質を回収。 | リン酸ナトリウム | ▲ | ||
加熱処理法 | 焼却灰に硫酸を添加し、溶解させ、二酸化ケイ素と炭酸Naを加えて900℃に加熱することで、リン酸Naとゼオライト状物質を生成。 | リン酸ナトリウム | ▲ | ||
アルカリ処理 | アルカリ抽出+Ca法(Na法) | 焼却灰からNaOH溶液によりリン、Alをアルカリ抽出し、上澄みにCa(OH)2の添加によりHAPを生成(Ca法)、または上澄みの放冷によりリン酸Naを析出(Na法)。 | リン酸カルシウム(ナトリウム) | △ | |
熔融処理 | 還元熔融+ガス冷却、燃焼 | 焼却灰にコークスを添加し、1250〜1500℃で還元熔融し、黄リンガスを揮発分離し、冷却して液状黄リンを回収、または黄リンガスを燃焼し、酸化リンを湿式回収。 |
黄リン、 リン酸 |
△ | |
薬剤添加熔融処理 | 焼却灰にMgO、CaO、SiO2を添加して熔融することで、熔性リン肥相当品を製造。 | 熔性リン肥 | △ | ||
融 飛 灰 |
酸処理 | 酸、溶媒抽出法 | 熔融飛灰に硫酸を添加し、リンを抽出後、抽出液から水難溶性の有機溶媒にリンを液液抽出。さらに有機溶媒中のリンを水中に逆抽出し、リン酸として回収。 | リン酸 | △ |
化 汚 泥 |
酸処理 | 酸溶出 | 炭化汚泥に、硫酸を添加し、90℃で、リン、Al、重金属類を溶出。抽出液にアルカリを添加し、リン、重金属類を分離回収。 | リン酸カルシウム | ▲ |
硫酸抽出、アルカリ回収 | 硫酸により炭化汚泥を酸処理し、リン抽出する。上澄みにアルカリを添加し、中和することで、pH4ではリン酸Ca、pH10では重金属類を分離回収。 | リン酸カルシウム | ▲ | ||
加熱処理 | 加熱処理法 | 炭化汚泥に含まれるSi、Al、Caを利用し、NaOHを添加して800℃で焼成することで、リン酸Naとゼオライト状物質を生成。 | リン酸ナトリウム | ▲ | |
還元加熱 | 下水汚泥を原料に炭化し、還元雰囲気下、1000〜1200℃で加熱して、黄リンを揮発させ、黄リンあるいはリン酸を製造する。 |
黄リン、 リン酸 |
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◎…実用化、○…パイロットプラント、△…ベンチスケール、▲…実験室。 |