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瀬戸内海の自然環境−中国地方・四国地方−

中国地方の地質中国地方の断層/節理/リニアメント中国地方の鉱床四国地方の地質四国地方の鉱床

中国地方の地質

1974|−|1987|−|1998|−|20072008|2009|2010

【2010】

【2008】

【2007】

【1998】

【1987】

【1974】

中国地方の断層/節理/リニアメント

1987|−|2003|−|2006

【2006】

【2003】

【1987】

中国地方の鉱床

1974|−|1987|−|1993|−|2009

 中国地方の先白亜紀の地質構造は、北から飛騨帯・三郡帯・秋吉帯-舞鶴帯(ペルム紀〜三畳紀)・領家帯のようにほぼ東西に延びた地質体から構成されている。
 白亜紀〜古第三紀には、火成作用が活発化して深成岩および火山岩が先白亜紀の地質体を貫いており、新第三紀以降にも島弧のテクトニックな場における火山作用が引き続いて発生している。
 一般に、中国地方における鉱化作用により形成された鉱床は、@先白亜紀の地質体中の鉱床、A白亜紀〜古第三紀の火成活動による鉱床、B第三紀の鉱床、C第四紀の鉱床、のように4時期に分けられる。@には、三郡変成岩や非〜弱変成中・古生層などに伴うキースラーガー鉱床と層状マンガン鉱床、非〜弱変成中・古生層中の石灰石鉱床、三畳紀の石炭鉱床、超塩基性岩中のクロム鉱床などがある。Aには、山陽帯でCu・W・Fe・Zn・ろう石・珪石・長石、山陰帯でMo・絹雲母などの鉱床がある。Bには、堆積鉱床として古第三紀の石炭鉱床と新第三紀のU鉱床があり、新第三紀には火成鉱床としてCu・Pb・Zn・石膏鉱床(黒鉱鉱床:グリーンタフ地域)とSb鉱床(非グリーンタフ地域)がある。Cには、粘土・珪砂・珪藻土・マンガン・砂鉄の鉱床がある。

中国地方の主な鉱床の生成時期

地質時代

堆積作用*1

変成作用*1

火成作用*1



C第四紀             大森鉱山石見銀山*2(鉱脈鉱床)
B新第三紀 人形峠鉱山*3(U鉱床)           ・黒鉱鉱床*4(Cu・Pb・Zn・石膏鉱床)(グリーンタフ*5地域)
AB古第三紀 ・石炭鉱床*6(亜瀝青炭)      





山陰帯火成岩類*7
田万川期 火山岩類−貫入岩類
高山期 貫入岩類−火山岩類
・火山岩類−因美期貫入岩類
・Mo鉱床*8(鉱脈鉱床)



A白亜紀         山陽帯火成岩類*7
・火山岩類(阿武層群・高田流紋岩類・関門層群など)−広島期貫入岩類
領家貫入岩類
都茂鉱山*9(スカルン鉱床*10
・W鉱床*11(スカルン鉱床)
ろう石鉱床*12
@ジュラ紀  










・クロム鉱床*13(超塩基性岩中)
・キースラーガー鉱床*14
・層状マンガン鉱床
*15
・石灰石鉱床
*16









*17



     
@三畳紀 ・石炭鉱床*6(無煙炭)    



@ペルム紀  



  柵原鉱山(キースラーガー鉱床)
@石炭紀      
主に、日本の地質「中国地方」編集委員会(編)(1987/11)による『日本の地質 中国地方』の『第5章 地下資源』などを参照。

地質時代の@〜Cは、日本の地質「中国地方」編集委員会(編)(1987/11)による『日本の地質 中国地方』の『第5章 地下資源』における、中国地方の鉱床の区分であり、@先白亜紀の鉱床・A白亜紀〜古第三紀の火成活動に伴う鉱床・B第三紀の鉱床・C第四紀の鉱床を示す。

*1堆積作用・変成作用・火成作用 鉱床を、岩石と同じように堆積鉱床・変成鉱床・火成鉱床の3つに分けることもあるが、最も重要な鉱化作用をもたらすのは火成作用であり、マグマそのものよりも、その熱による地下水(熱水)の作用が本質的である。熱水は地下の割れ目を循環し、周囲の岩石から様々な元素を溶解し、条件が整った場所に鉱石鉱物を沈殿するため、鉱床ができあがる。このような場合には、その形態から、鉱脈鉱床や鉱染鉱床などと呼ばれる。また、マグマ由来の鉱床は、(正)マグマ鉱床と呼ばれるし、マグマの熱による交代作用のときに相手の地質体が石灰岩であればスカルン鉱床が生成する。
*2石見(いわみ)銀山〔大森(おおもり)鉱山〕 第四紀の鉱脈鉱床であり、銀を含む鉱石鉱物は輝銀鉱(Ag
2S)や自然銀(Ag)である。『世界遺産とは』のページの『石見銀山』を参照。石見鉱山は別の鉱山であり、こちらは黒鉱鉱床。
*3人形峠(にんぎょうとうげ)鉱山 新第三紀中新世のウランの堆積鉱床。鉱石鉱物は人形石など。
*4黒鉱鉱床 新第三紀中新世の海底熱水噴気堆積鉱床(火山性塊状硫化物鉱床)であり、珪長質(石英や長石が多い)火山岩に伴う。日本列島の背弧海盆に産するものが歴史的に良く研究されてきたため、黒鉱鉱床(Kuroko deposit)と呼ばれる。黒鉱とは、閃亜鉛鉱〔(Zn,Fe)S〕と方鉛鉱(PbS)を主とするために黒色を呈する鉱石のことで、このような鉱石が優勢なために黒鉱鉱床と呼ばれる。日本の代表的な鉱床型の一つ。『鉱床と鉱山』のページの『黒鉱鉱床』を参照。
*5グリーンタフ 緑色凝灰岩のことであるが、新第三紀中新世に大量の火山岩・火山砕屑岩が変質して生じた緑色凝灰岩が分布する地域を、グリーンタフ地域と呼ぶ。
*6石炭鉱床 三畳紀の無煙炭が山口県中央西部〔大嶺(おおみね)炭田〕-瀬戸内海沿岸〔津布田(つぶた)炭田〕および岡山県西部〔成羽(なりわ)炭田〕に分布。古第三紀の亜瀝青炭が山口県西部〔宇部(うべ)炭田〕に分布。
*7山陰帯火成岩類・山陽帯火成岩類 とくに花崗岩類(深成岩類)について、含まれる鉄酸化鉱物の違いにより、磁鉄鉱系列(酸化的)−チタン鉄鉱(イルメナイト)系列(還元的)に分けられるが、山陰帯は主に磁鉄鉱系列で、山陽帯は主にチタン鉄鉱系列である。また、山陰帯にはモリブデンが、山陽帯にはタングステンがしばしば伴う。『岩石の種類』のページの『花崗岩』を参照。磁鉄鉱系列とチタン鉄鉱系列は『Fe-S-O系』のページの『Fe-Ti-O』および『金属鉱物資源』のページの『相図』を参照。
*8モリブデン鉱床 島根県の大東(だいとう)・山佐(やまさ)・小馬木(こまき)地域に代表的な鉱床がある。鉱脈鉱床であり、鉱石鉱物は輝水鉛鉱(MoS
2)である。
*9都茂(つも)鉱山 スカルン鉱床であるが、石灰岩は三郡変成岩に含まれる。
*10スカルン鉱床  スカルン(skarn)とは、スウェーデンの鉱山用語で、炭酸塩岩〔主に石灰岩(ライムストーン/limestone:鉱物は方解石/カルサイト/calcite/CaCO
3)で、苦灰岩(ドロストーン/dolostone:鉱物は苦灰石/ドロマイト/dolomite/CaMg(CO3)2)も含む〕と周囲の泥質岩(他の何でも良い。母岩と呼ぶことが多い)とが、マグマ〔熱水や水蒸気(流体)でも良い〕の熱の影響により高温で安定な鉱物組合せに変わった岩石(熱変成作用による変成岩の一種)である。石灰岩中のカルシウム(Ca)と泥質岩中の鉄(Fe)やマグネシウム(Mg)やアルミニウム(Al)等を含む珪酸塩鉱物(酸化鉱物も含む)の集合体である。マグマによる熱によって地下水が熱水となり(マグマ水も含まれる場合がある)、周囲の岩石から様々な成分を溶かし出し、石灰岩の脱炭酸作用(CO2として抜け出る)による空隙や割れ目等に、ある種の成分が濃集して生成した場合に、資源として利用できる場合にはスカルン鉱床と呼ぶ。上記のような典型的な組合せではないものの、同様のメカニズムで生成した鉱床をスカルン型鉱床〔例えば、マンガン等に富む炭酸塩岩や泥質岩とは異なる特殊な成分を含む岩石等(堆積岩でなくても良い)〕と呼ぶ場合もあるが、スカルン鉱床とスカルン型鉱床を分けなくても良い。接触鉱床や接触交代鉱床(成分の出入りが特に顕著な場合に『交代』を強調する)と呼ぶこともあるが、スカルンという呼び方が一般的である。マグマと母岩の種類や温度・圧力の違いおよび鉱液(熱水等)の性質の違い等(時代や生成場の違い)によって、様々な種類の鉱床が生成する。スカルン鉱床は『鉱床と鉱山』のページの『スカルン鉱床』を参照。長登(ながのぼり)鉱山は『鉱床と鉱山』のページの『長登鉱山』〔銅を主とするが、コバルト(輝コバルト鉱、CoAsS)も伴う〕を参照。
*11タングステン鉱床 スカルン鉱床あるいは鉱脈鉱床として生じている。Wスカルン鉱床は山口県岩国地域の玖珂(くが)鉱山喜和田(きわだ)鉱山藤ヶ谷(ふじがたに)鉱山が代表的。鉱石鉱物は灰重石(CaWO
4)であるが、鉱脈鉱床では鉄マンガン重石〔(Fe,Mn)WO4〕の方が一般的。玖珂鉱山・喜和田鉱山・藤ヶ谷鉱山は『鉱床と鉱山』のページの『藤ケ谷鉱山-玖珂鉱山-喜和田鉱山』を参照。
*12ろう石鉱床 後期白亜紀の酸〜中性火成活動により生じている。岡山県三石(みついし)-吉永(よしなが)・広島県勝光山(しょうこうざん)・山口県阿武(あぶ)地域に分布。鉱石鉱物は主にパイロフィライト〔葉ろう石、Al
2Si4O10(OH)2〕。
*13クロム鉱床 若松(わかまつ)鉱山広瀬(ひろせ)鉱山が代表的な鉱床〔鉱石鉱物はクロム鉄鉱(FeCr
2O4)〕。ともに超塩基性岩に伴う。塩基性マグマ由来とされていたが成因はもっと複雑〔荒井(2009/12)による『若松鉱山とクロム鉱床成因論』、松本(2009/12)による『ポディフォームクロム鉱床の岩石学的探査法−日本最大の多里地域クロム鉱床群の記載−』、地質調査総合センター(2009/12)による地質ニュースの『特集:鳥取県多里地域クロム鉱山・産業遺産登録!』、荒井(2010)による『クロミタイト−不思議なマントル構成岩−』を参照〕。
*14キースラーガー鉱床 鉄の硫化鉱物に富む層状含銅硫化鉄鉱鉱床であり、別子(べっし)鉱山が典型的であったため、別子型(銅)鉱床とも呼ぶ。鉄(Fe)やマグネシウム(Mg)の多い苦鉄質火山岩〜変成岩に伴う。海嶺付近で堆積して形成したと考えられている。銅鉱石を産出する例が多い。中生代以前に噴出した塩基性火山岩類に関連したものであり、オフィオライトを含む玄武岩質火山活動にともなって生成した含銅硫化鉄鉱鉱床であるキプロス型銅鉱床と類似する。別子型銅鉱床は『鉱床と鉱山』のページの『別子型銅鉱床』を参照。柵原(やなはら)鉱山は『鉱床と鉱山』のページの『柵原鉱山』を参照。
*15層状マンガン鉱床 従来『秩父層群』とよばれていた『非〜弱変成中・古生層』中に、チャート(おもにSiO
2からなる)を直接の母岩としてマンガン炭酸塩鉱物(菱マンガン鉱、MnCO3)およびマンガン珪酸塩鉱物(バラ輝石、テフロ石、アレガニー石など)を主とするマンガン鉱石が層状に存在する。山口県岩国(いわくに)地域などに分布する。変成岩中にも、いわゆる『マンガン-スカルン鉱床』と呼べるものが存在する。『マンガン鉱物と鉱床』のページの『マンガン鉱床』を参照。
*16石灰石鉱床 石炭紀〜ペルム紀石灰岩からなる。岡山県阿哲(あてつ)(阿哲台地域)・成羽川(なりわがわ)-芳井(よしい)(中村・大賀・日南地域)・広島県帝釈(たいしゃく)(帝釈台地域)・瀬戸内島嶼(せとうちとうしょ)(島嶼部地域)・山口県美祢(みね)(秋吉台地域)・半田(はんだ)-蔵目喜(ぞうめき地域・勝山(かつやま)地域に分布。
*17三郡変成岩 三郡変成帯(ペルム紀〜三畳紀の藍閃石変成岩)は、周防帯(すおうたい)〔2.3〜1.6億年前:高P/T片岩(萄石-パンペリー石相〜パンペリー石-アクチノ閃石〜藍閃石片岩相〜緑簾石−角閃岩相)〕および蓮華帯(れんげたい)〔3.3〜2.8億年前:藍閃石片岩〜緑簾石-角閃岩相片岩、蛇紋岩を含むメタ(変)オフィオライト(4.7〜3.4億年前)を伴う〕の2つに分けられることも多い。Nishimura(1998)による『Geotectonic subdivision and areal extent of the Sangun belt, Inner Zone of Southwest Japan』を参照。

【2009】

【1993】

【1987】

【1974】

四国地方の地質

2010|−|2014

【2014】

【2010】

四国地方の鉱床

1991|−|2005|−|2013

 四国地方の地質構造は、北から領家帯・(中央構造線)・三波川帯・(御荷鉾構造線)・秩父帯・(仏像構造線)・四万十帯北帯(安芸・中筋構造線)四万十帯南帯のようにほぼ東西に延びた地質体から構成されている。

四国地方の主な鉱床の生成時期

地質時代

堆積作用*1

変成作用*1

火成作用*1



第四紀            
新第三紀 四万十南帯   市ノ川鉱山*2 (Sb鉱脈鉱床)
・陶石鉱床(砥部*3
古第三紀  





   



白亜紀 四万十北帯  











   
ジュラ紀 秩父帯 石灰石鉱床
ドロマイト鉱床
・層状マンガン鉱床*4     別子鉱山別子型銅鉱床、キースラーガー鉱床*5) 
三畳紀        
主に、日本の地質「四国地方」編集委員会(1991/6)による『日本の地質 四国地方』の『第7章 鉱物資源』などを参照。

*1堆積作用・変成作用・火成作用 鉱床を、岩石と同じように堆積鉱床・変成鉱床・火成鉱床の3つに分けることもあるが、最も重要な鉱化作用をもたらすのは火成作用であり、マグマそのものよりも、その熱による地下水(熱水)の作用が本質的である。熱水は地下の割れ目を循環し、周囲の岩石から様々な元素を溶解し、条件が整った場所に鉱石鉱物を沈殿するため、鉱床ができあがる。このような場合には、その形態から、鉱脈鉱床や鉱染鉱床などと呼ばれる。また、マグマ由来の鉱床は、(正)マグマ鉱床と呼ばれるし、マグマの熱による交代作用のときに相手の地質体が石灰岩であればスカルン鉱床が生成する。
*2市ノ川(いちのかわ)鉱山 愛媛県。アンチモンの鉱石鉱物は輝安鉱(Sb
2S3)。『鉱床と鉱山』のページの『市之川鉱山』を参照。
*3砥部(とべ)陶石鉱床 新第三紀中新世の安山岩類・流紋岩類の貫入時自己変質作用による。陶石は石英・カオリナイト・絹雲母などからなる。須藤・神谷(2000)による『愛媛県の砥部陶石と砥部焼を訪ねて』を参照。
*4層状マンガン鉱床 三波帯・秩父帯・四万十帯のいずれにも分布する。三波帯〔古宮(ふるみや)鉱山〕はマンガン珪酸塩鉱物(ブラウン鉱)が主、秩父帯北帯の韮生(にろー)鉱山穴内(あなない)鉱山はマンガン珪酸塩鉱物(ブラウン鉱)が主で、国見山(くにみやま)鉱山は鉄酸化鉱物(磁鉄鉱・赤鉄鉱)とマンガン珪酸塩鉱物(ベメント石)からなる『鉄マン鉱床』。『マンガン鉱物と鉱床』のページの『マンガン鉱床』を参照。中川ほか(2010/9)による『四国の付加体におけるマンガン鉱床の分布と鉱物組合せ』を参照。
*5キースラーガー鉱床 鉄の硫化鉱物に富む層状含銅硫化鉄鉱鉱床であり、別子(べっし)鉱山が典型的であったため、別子型(銅)鉱床とも呼ぶ。鉄(Fe)やマグネシウム(Mg)の多い苦鉄質火山岩〜変成岩に伴う。海嶺付近で堆積して形成したと考えられている。銅鉱石を産出する例が多い。中生代以前に噴出した塩基性火山岩類に関連したものであり、オフィオライトを含む玄武岩質火山活動にともなって生成した含銅硫化鉄鉱鉱床であるキプロス型銅鉱床と類似する。別子型銅鉱床は『鉱床と鉱山』のページの『別子型銅鉱床』および『別子鉱山』を参照。野崎(2009/6)による『Re-Os放射壊変系による別子型塊状硫化物鉱床の生成年代決定と成因の解明』および東京大学・海洋研究開発機構(2013/5)による『四国の銅鉱床は1億5000万年前に生成された』を参照。

【2013】

【2005】

【1991】


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