|
中国地方の地質 |
図4A 図4B 図4 西南日本の地体構造区分:平面図(A:磯ア・板谷,1991を改変)と地殻断面(B:伊藤・佐藤,2010を改変).A:各地体構造単元(帯)および主要な帯境界断層(構造線)の略号については,図1と共通.詳細は本文参照.従来の区分からの主要な変更点は以下の4点である.(1)三波川帯のなかで年代の異なる2つの独立した高圧変成岩(三波川変成岩と四万十変成岩)の識別,(2)中圧型変成岩からなる肥後帯の識別,(3)九州西端の長崎変成岩の主部を四万十変成岩と同定.(4)古生代前期-中期の蛇紋岩メランジュの小規模な要素をすべて長門-蓮華帯(新称)として一括.なお智頭変成帯は分布が未確認なので表示していない.B:火山フロントから海溝に至る成熟した島弧の構造を示す日本海沿岸から南海トラフまでの西南日本の地殻断面(倉本ほか,2000;佐藤ほか,2005;Aoki et al.,2008;伊藤・佐藤,2010から編纂).中央構造線(MTL)を挟んで,日本海側と太平洋側との間に大きなコントラストがある.西南日本の前弧域は,ほとんど白亜紀後期以降の付加体で占められ結晶質岩石はほとんど認められない.ほぼ水平に累重するジュラ紀以前の付加体およびその変成部は,構造的に下位に向かって若くなる明瞭な極性をもつ.瀬戸内海よりも大陸側では,同様な付加体の累重構造が認められるが,花崗岩が地殻の主体をなし,玄武岩質な下部地殻は認められない.古期の付加体や高圧変成岩の総量はきわめて少なく,花崗岩バソリスの上にルーフペンダント状に残存するのみである.これらの対照的な領域,すなわち付加体の卓越域と花崗岩の卓越域とが接合したのは,中新世に背弧(日本海)が開裂した時に,前弧域の地殻中部で低角度のデタッチメント面(古中央構造線:Paleo-MTL)が活動した結果とみなされる. 図5 西南日本の付加体/高圧変成岩がもつ海洋プレート層序-変成作用の年代スペクトル一覧(磯ア・丸山,1991を改変).変成岩中の砕屑性ジルコンの火成年代と変成年代についてU-Pb年代が多数測定され,古生代高圧変成岩については,480Maと340Maの2種が明確に識別された.また一時期存在が否定された智頭帯の180Ma高圧変成岩が再確認されつつある.最も大きな変更は,従来三波川帯とされた領域に,140-130Ma付加体を原岩とし,120-110Maに高圧変成作用を被った三波川変成帯と,80Maの付加体を原岩とし,60Maに変成された四万十変成帯という2つの独立した単元が識別されたこと(青木ほか,2010)である.合計6回の高圧変成作用(1-6)は,おのおの日本の下へ海嶺が沈み込んだことに対応し,とくに上記の2回の独立した高圧変成帯の形成は,おのおのIzanagi-Kula海嶺およびKula-Pacific海嶺の沈み込みによってできた. 磯崎ほか(2010)による『日本列島の地体構造区分再訪―太平洋型(都城型)造山帯構成単元および境界の分類・定義―』から 海嶺沈み込みに伴う変成作用(6回): |
|
|
|
|
横田(2008/10)による『講演2 山陰地域の自然遺産・文化遺産と応用地質学』による |
第1図 中国地方の白亜紀〜古第三紀貫入岩類.西田ほか(2005)をもとに作図. 亀井(2007/3)による『山陰の花崗岩類と鉱物資源に関する概要』から |
Fig. 9. New geotectonic subdivision and areal extent of the Sangun belt (Renge and Suo belts) along with the geotectonic framework in the Inner Zone of Southwest Japan. The geotectonic subdivision of the Ryukyu Arc and its correlation are shown separately in Fig. 3. |
Fig. 8. Radiometric ages from high-P/T schists in the Renge and Suo belts including the Akiyoshi belt. Sources of data: Miller et al. (1963), Hayase et al. (1968), Shibata & Nozawa(1968), Shibata et al. (1968, 1970, 1972, 1979, 1984), Ueda & Onuki (1968), Shibata & Igi (1969), Ishizaka (1972), Shibata & Ito (1978), Matsumoto et al. (1983), Nishimura (1984), Faure et al. (1988b), Fukudomi et al. (1989), Nishimura et al.(1989, 1996, unpublished data), Okamoto et al. (1989), Shiba & Nishimura (1989), Ujiie & Nishimura (1992), Nagakawa et al. (1993), and Kabashima et al. (1995). |
Fig. 10. Radiometric ages from metagabbroic rocks in the Renge and Suo belts showing metamorphic age groups of high-P/T schists in Figs 8 & 9. Sources of data: Kawano et al. (1966), Hayase & Ishizaka (1967), Shibata et al. (1972, 1977, 1979, 1980, 1984), Ishizaka & Yanagi (1975), Shibata & Murakami (1975), Murakami et al. (1977), Murakami & Nishimura (1979), Igi et al.(1979), Matsumoto et al. (1983), and Nishimura & Shibata (1989). |
|
Nishimura(1998)による『Geotectonic subdivision and areal extent of the Sangun belt, Inner Zone of Southwest Japan』から 三郡変成帯(ペルム紀〜三畳紀の藍閃石変成岩)⇒ |
日本の地質「中国地方」編集委員会(編)(1987/11)による『日本の地質 中国地方』から |
岡本(1974/11)による『山陰西部の第三系』から |
第2図 中国地方古生層の分布 |
第3図 中生代後期の火成岩類の分布図 |
第4図 第三紀層分布図 |
第5図 第四紀の火山分布図 |
植田(1974/11)による『中国路をゆく 中国地方の地質と生いたち』から |
中国地方の断層/節理/リニアメント |
Fig. 2. Brief visualization of joint system of the Sandankyo area. 平山ほか(2006?)による『広島県三段峡地域における節理の形成過程』から |
図-1 岩脈の走向傾斜(シュミットネット下半球投影) 閃緑ヒン岩・フェルサイト・石英斜長石斑岩などの平行岩脈群の貫入面は,急傾斜で北北西方向を示す。 花崗岩の高角節理群は北北西と東北東と西北西の3方向にある。また、シーティングジョイントは低角節理群であり、ラミネーションシーティングは低角節理群でミリメートルオーダーの割れ目間隔を持つものである。 光本ほか(2006?)による『P-2.岡山市西部に分布する白亜紀花崗岩のテクトニック・ノンテクトニック節理群』から |
|
|||||||||||
第1図 対象地域の地形と主要活断層・被害地震 Km:神鍋山,Og:扇ノ山,Da:大山,Sm:三瓶山,Ot:大江高山,Ao:青野火山群,Ab:阿武火山群.活断層・推定活断層の分布は,「活断層詳細デジタルマップ」(中田・今泉編,2002)による.等高線は国土地理院発行数値地図250mメッシュをもとに作成した接峰面を示す.枠線は対象地域の範囲を示す. |
第3図 リニアメント分布図 等高線は国土地理院発行数値地図250mメッシュをもとに作成. |
||||||||||
第6図 中国地方の地震分布とリニアメント 地震のデータは,国立大学地震カタログ(1985-1998)および気象庁(1999-2001)による. |
第7図 中国地方の地質分布とリニアメント A:先白亜系,B:白亜紀火山岩類,C:中新世備北層群相当,D:新第三系.A〜Cは「中国地方土木地質図」(中国地方土木地質図編纂委員会編,1984),Dは「100万分の1日本地質図第3版」(地質調査所,1995)をもとに作成.単成火山の分布は宇都(1995)より引用.第四紀火山の分布は「日本の第四紀火山カタログ」(第四紀火山カタログ委員会,1999)より引用. |
||||||||||
第5図 リニアメントの分布密度と起伏量分布 A:10km平方あたりに含まれる断層長,B: 5kmメッシュごとの起伏量分布. |
|||||||||||
高田ほか(2003)による『震源断層となりうる活断層とリニアメントの検討−中国地方を事例として−』から |
図-2 西南日本内帯における花崗岩類の分布と節理系 |
図-3石英粒内のクラックの配向 ○はほぼ水平面内にクラックが配向していることを示す。実線は鉛直面内に配向するクラックの走行を示す。実線の長短はクラック密度のちがいを示す。 |
久永ほか(1987?)による『(98)西南日本内帯の花崗岩類に認められる節理の定向性』から |
中国地方の鉱床 |
中国地方の先白亜紀の地質構造は、北から飛騨帯・三郡帯・秋吉帯-舞鶴帯(ペルム紀〜三畳紀)・領家帯のようにほぼ東西に延びた地質体から構成されている。
白亜紀〜古第三紀には、火成作用が活発化して深成岩および火山岩が先白亜紀の地質体を貫いており、新第三紀以降にも島弧のテクトニックな場における火山作用が引き続いて発生している。
一般に、中国地方における鉱化作用により形成された鉱床は、@先白亜紀の地質体中の鉱床、A白亜紀〜古第三紀の火成活動による鉱床、B第三紀の鉱床、C第四紀の鉱床、のように4時期に分けられる。@には、三郡変成岩や非〜弱変成中・古生層などに伴うキースラーガー鉱床と層状マンガン鉱床、非〜弱変成中・古生層中の石灰石鉱床、三畳紀の石炭鉱床、超塩基性岩中のクロム鉱床などがある。Aには、山陽帯でCu・W・Fe・Zn・ろう石・珪石・長石、山陰帯でMo・絹雲母などの鉱床がある。Bには、堆積鉱床として古第三紀の石炭鉱床と新第三紀のU鉱床があり、新第三紀には火成鉱床としてCu・Pb・Zn・石膏鉱床(黒鉱鉱床:グリーンタフ地域)とSb鉱床(非グリーンタフ地域)がある。Cには、粘土・珪砂・珪藻土・マンガン・砂鉄の鉱床がある。
|
|
|
|
|||||||
生 代 |
C第四紀 | ・大森鉱山(石見銀山*2)(鉱脈鉱床) | ||||||||
B新第三紀 | ・人形峠鉱山*3(U鉱床) | ・黒鉱鉱床*4(Cu・Pb・Zn・石膏鉱床)(グリーンタフ*5地域) | ||||||||
AB古第三紀 | ・石炭鉱床*6(亜瀝青炭) |
家 変 成 岩 |
山陰帯火成岩類*7 ・田万川期 火山岩類−貫入岩類 ・高山期 貫入岩類−火山岩類 ・火山岩類−因美期貫入岩類 |
・Mo鉱床*8(鉱脈鉱床) | ||||||
生 代 |
A白亜紀 |
山陽帯火成岩類*7 ・火山岩類(阿武層群・高田流紋岩類・関門層群など)−広島期貫入岩類 ・領家貫入岩類 |
・都茂鉱山*9(スカルン鉱床*10) ・W鉱床*11(スカルン鉱床) ・ろう石鉱床*12 |
|||||||
@ジュラ紀 |
| 弱 変 成 中 ・ 古 生 層 |
・クロム鉱床*13(超塩基性岩中) ・キースラーガー鉱床*14 ・層状マンガン鉱床*15 ・石灰石鉱床*16 |
騨 変 成 岩 |
郡 変 成 岩*17 |
防 帯 |
|||||
@三畳紀 | ・石炭鉱床*6(無煙炭) | |||||||||
生 代 |
@ペルム紀 |
華 帯 |
・柵原鉱山(キースラーガー鉱床) | |||||||
@石炭紀 | ||||||||||
主に、日本の地質「中国地方」編集委員会(編)(1987/11)による『日本の地質 中国地方』の『第5章 地下資源』などを参照。 地質時代の@〜Cは、日本の地質「中国地方」編集委員会(編)(1987/11)による『日本の地質 中国地方』の『第5章 地下資源』における、中国地方の鉱床の区分であり、@先白亜紀の鉱床・A白亜紀〜古第三紀の火成活動に伴う鉱床・B第三紀の鉱床・C第四紀の鉱床を示す。 *1堆積作用・変成作用・火成作用 鉱床を、岩石と同じように堆積鉱床・変成鉱床・火成鉱床の3つに分けることもあるが、最も重要な鉱化作用をもたらすのは火成作用であり、マグマそのものよりも、その熱による地下水(熱水)の作用が本質的である。熱水は地下の割れ目を循環し、周囲の岩石から様々な元素を溶解し、条件が整った場所に鉱石鉱物を沈殿するため、鉱床ができあがる。このような場合には、その形態から、鉱脈鉱床や鉱染鉱床などと呼ばれる。また、マグマ由来の鉱床は、(正)マグマ鉱床と呼ばれるし、マグマの熱による交代作用のときに相手の地質体が石灰岩であればスカルン鉱床が生成する。 *2石見(いわみ)銀山〔大森(おおもり)鉱山〕 第四紀の鉱脈鉱床であり、銀を含む鉱石鉱物は輝銀鉱(Ag2S)や自然銀(Ag)である。『世界遺産とは』のページの『石見銀山』を参照。石見鉱山は別の鉱山であり、こちらは黒鉱鉱床。 *3人形峠(にんぎょうとうげ)鉱山 新第三紀中新世のウランの堆積鉱床。鉱石鉱物は人形石など。 *4黒鉱鉱床 新第三紀中新世の海底熱水噴気堆積鉱床(火山性塊状硫化物鉱床)であり、珪長質(石英や長石が多い)火山岩に伴う。日本列島の背弧海盆に産するものが歴史的に良く研究されてきたため、黒鉱鉱床(Kuroko deposit)と呼ばれる。黒鉱とは、閃亜鉛鉱〔(Zn,Fe)S〕と方鉛鉱(PbS)を主とするために黒色を呈する鉱石のことで、このような鉱石が優勢なために黒鉱鉱床と呼ばれる。日本の代表的な鉱床型の一つ。『鉱床と鉱山』のページの『黒鉱鉱床』を参照。 *5グリーンタフ 緑色凝灰岩のことであるが、新第三紀中新世に大量の火山岩・火山砕屑岩が変質して生じた緑色凝灰岩が分布する地域を、グリーンタフ地域と呼ぶ。 *6石炭鉱床 三畳紀の無煙炭が山口県中央西部〔大嶺(おおみね)炭田〕-瀬戸内海沿岸〔津布田(つぶた)炭田〕および岡山県西部〔成羽(なりわ)炭田〕に分布。古第三紀の亜瀝青炭が山口県西部〔宇部(うべ)炭田〕に分布。 *7山陰帯火成岩類・山陽帯火成岩類 とくに花崗岩類(深成岩類)について、含まれる鉄酸化鉱物の違いにより、磁鉄鉱系列(酸化的)−チタン鉄鉱(イルメナイト)系列(還元的)に分けられるが、山陰帯は主に磁鉄鉱系列で、山陽帯は主にチタン鉄鉱系列である。また、山陰帯にはモリブデンが、山陽帯にはタングステンがしばしば伴う。『岩石の種類』のページの『花崗岩』を参照。磁鉄鉱系列とチタン鉄鉱系列は『Fe-S-O系』のページの『Fe-Ti-O』および『金属鉱物資源』のページの『相図』を参照。 *8モリブデン鉱床 島根県の大東(だいとう)・山佐(やまさ)・小馬木(こまき)地域に代表的な鉱床がある。鉱脈鉱床であり、鉱石鉱物は輝水鉛鉱(MoS2)である。 *9都茂(つも)鉱山 スカルン鉱床であるが、石灰岩は三郡変成岩に含まれる。 *10スカルン鉱床 スカルン(skarn)とは、スウェーデンの鉱山用語で、炭酸塩岩〔主に石灰岩(ライムストーン/limestone:鉱物は方解石/カルサイト/calcite/CaCO3)で、苦灰岩(ドロストーン/dolostone:鉱物は苦灰石/ドロマイト/dolomite/CaMg(CO3)2)も含む〕と周囲の泥質岩(他の何でも良い。母岩と呼ぶことが多い)とが、マグマ〔熱水や水蒸気(流体)でも良い〕の熱の影響により高温で安定な鉱物組合せに変わった岩石(熱変成作用による変成岩の一種)である。石灰岩中のカルシウム(Ca)と泥質岩中の鉄(Fe)やマグネシウム(Mg)やアルミニウム(Al)等を含む珪酸塩鉱物(酸化鉱物も含む)の集合体である。マグマによる熱によって地下水が熱水となり(マグマ水も含まれる場合がある)、周囲の岩石から様々な成分を溶かし出し、石灰岩の脱炭酸作用(CO2として抜け出る)による空隙や割れ目等に、ある種の成分が濃集して生成した場合に、資源として利用できる場合にはスカルン鉱床と呼ぶ。上記のような典型的な組合せではないものの、同様のメカニズムで生成した鉱床をスカルン型鉱床〔例えば、マンガン等に富む炭酸塩岩や泥質岩とは異なる特殊な成分を含む岩石等(堆積岩でなくても良い)〕と呼ぶ場合もあるが、スカルン鉱床とスカルン型鉱床を分けなくても良い。接触鉱床や接触交代鉱床(成分の出入りが特に顕著な場合に『交代』を強調する)と呼ぶこともあるが、スカルンという呼び方が一般的である。マグマと母岩の種類や温度・圧力の違いおよび鉱液(熱水等)の性質の違い等(時代や生成場の違い)によって、様々な種類の鉱床が生成する。スカルン鉱床は『鉱床と鉱山』のページの『スカルン鉱床』を参照。長登(ながのぼり)鉱山は『鉱床と鉱山』のページの『長登鉱山』〔銅を主とするが、コバルト(輝コバルト鉱、CoAsS)も伴う〕を参照。 *11タングステン鉱床 スカルン鉱床あるいは鉱脈鉱床として生じている。Wスカルン鉱床は山口県岩国地域の玖珂(くが)鉱山・喜和田(きわだ)鉱山・藤ヶ谷(ふじがたに)鉱山が代表的。鉱石鉱物は灰重石(CaWO4)であるが、鉱脈鉱床では鉄マンガン重石〔(Fe,Mn)WO4〕の方が一般的。玖珂鉱山・喜和田鉱山・藤ヶ谷鉱山は『鉱床と鉱山』のページの『藤ケ谷鉱山-玖珂鉱山-喜和田鉱山』を参照。 *12ろう石鉱床 後期白亜紀の酸〜中性火成活動により生じている。岡山県三石(みついし)-吉永(よしなが)・広島県勝光山(しょうこうざん)・山口県阿武(あぶ)地域に分布。鉱石鉱物は主にパイロフィライト〔葉ろう石、Al2Si4O10(OH)2〕。 *13クロム鉱床 若松(わかまつ)鉱山と広瀬(ひろせ)鉱山が代表的な鉱床〔鉱石鉱物はクロム鉄鉱(FeCr2O4)〕。ともに超塩基性岩に伴う。塩基性マグマ由来とされていたが成因はもっと複雑〔荒井(2009/12)による『若松鉱山とクロム鉱床成因論』、松本(2009/12)による『ポディフォームクロム鉱床の岩石学的探査法−日本最大の多里地域クロム鉱床群の記載−』、地質調査総合センター(2009/12)による地質ニュースの『特集:鳥取県多里地域クロム鉱山・産業遺産登録!』、荒井(2010)による『クロミタイト−不思議なマントル構成岩−』を参照〕。 *14キースラーガー鉱床 鉄の硫化鉱物に富む層状含銅硫化鉄鉱鉱床であり、別子(べっし)鉱山が典型的であったため、別子型(銅)鉱床とも呼ぶ。鉄(Fe)やマグネシウム(Mg)の多い苦鉄質火山岩〜変成岩に伴う。海嶺付近で堆積して形成したと考えられている。銅鉱石を産出する例が多い。中生代以前に噴出した塩基性火山岩類に関連したものであり、オフィオライトを含む玄武岩質火山活動にともなって生成した含銅硫化鉄鉱鉱床であるキプロス型銅鉱床と類似する。別子型銅鉱床は『鉱床と鉱山』のページの『別子型銅鉱床』を参照。柵原(やなはら)鉱山は『鉱床と鉱山』のページの『柵原鉱山』を参照。 *15層状マンガン鉱床 従来『秩父層群』とよばれていた『非〜弱変成中・古生層』中に、チャート(おもにSiO2からなる)を直接の母岩としてマンガン炭酸塩鉱物(菱マンガン鉱、MnCO3)およびマンガン珪酸塩鉱物(バラ輝石、テフロ石、アレガニー石など)を主とするマンガン鉱石が層状に存在する。山口県岩国(いわくに)地域などに分布する。変成岩中にも、いわゆる『マンガン-スカルン鉱床』と呼べるものが存在する。『マンガン鉱物と鉱床』のページの『マンガン鉱床』を参照。 *16石灰石鉱床 石炭紀〜ペルム紀石灰岩からなる。岡山県阿哲(あてつ)(阿哲台地域)・成羽川(なりわがわ)-芳井(よしい)(中村・大賀・日南地域)・広島県帝釈(たいしゃく)(帝釈台地域)・瀬戸内島嶼(せとうちとうしょ)(島嶼部地域)・山口県美祢(みね)(秋吉台地域)・半田(はんだ)-蔵目喜(ぞうめき)地域・勝山(かつやま)地域に分布。 *17三郡変成岩 三郡変成帯(ペルム紀〜三畳紀の藍閃石変成岩)は、周防帯(すおうたい)〔2.3〜1.6億年前:高P/T片岩(萄石-パンペリー石相〜パンペリー石-アクチノ閃石〜藍閃石片岩相〜緑簾石−角閃岩相)〕および蓮華帯(れんげたい)〔3.3〜2.8億年前:藍閃石片岩〜緑簾石-角閃岩相片岩、蛇紋岩を含むメタ(変)オフィオライト(4.7〜3.4億年前)を伴う〕の2つに分けられることも多い。Nishimura(1998)による『Geotectonic subdivision and areal extent of the Sangun belt, Inner Zone of Southwest Japan』を参照。 |
図1 日本のパイロフィライト鉱床の分布. Geological Survey of Japan(1976)から編纂.パイロフィライトを産する鉱床を鉱物組み合わせにより2群に分けた.Qz-Pyr(-Ser)型が主要な鉱床.Qz:quartz(石英),Pyr:pyrophyllite(パイロフィライト),Ser:sericite(絹雲母),Ka :kaolin minerals(カオリン).生産量が50万トン以上とされる鉱床は大きなマークで示した.余地鉱床はGeological Survey of Japan(1976)の図に含まれていないが,大きな鉱床として図示した.主要な鉱床は関東以西にあり,東北地方より北側には大規模な鉱床が見られないことが注目される. 鉱化時期について,中生代は白亜紀,新生代は中新世とみられるが(例えば,佐藤ほか,1994),詳しい年代が全て分かっているわけではないので,このように表記した. 佐藤(2009)による『長野県東部のパイロフィライト鉱床:余地および信陽鉱床の鉱化年代』から |
第1図 西南日本内帯の変成岩帯,主要鉛亜鉛鉱床と低重力異常域.重力データはTomoda(1973)により,ブーゲ重力異常が−20mgalより低い地域を示した.先新第三紀地質構造区は広川ほか(1982)による. 石原ほか(1993)による『西南日本内帯における古期変成・深成岩類のベースメタル含量とその主要古第三紀鉛亜鉛鉱床との関連性』 |
日本の地質「中国地方」編集委員会(1987/11)による『日本の地質 中国地方』から 日本の地質「中国地方」編集委員会編『日本の地質 中国地方』、共立出版、1987年11月、306p、ISBN:978-4-320-04614-6。 |
図1 花崗岩類の分布と関係Mo・W・Sn鉱床 円は鉱脈型 四角はスカルン型 星形は鉱染型鉱床(石原・佐々木 1973) 黒円はMo 白円はW 白円に十字は生野 明延鉱床 網目は花崗岩類 太い実線・破線は主に鉱床の情報は基づく 南から領家帯 山陽帯 山陰帯の区分を示す。 |
図5 山砂鉄鉱床と砂チタン鉱床の分布.太破線は帯磁率測定(金谷・石原 1973)に基づく分帯線.兵庫県西部で夜久野上郡支脈と平行に南東にのびる点に注意.この部分は明らかに磁鉄鉱系花崗岩類であるが 同位体年代は山陽帯の値を示す. |
図6 たたら遺跡のある町村.赤木(1959による.山口県のものは地名と地形的判断のみ 地質と併せて信頼性に乏しい. |
|
石原(1974/11)による『中国地方の花崗岩をめぐる最近の話題』から |
図1 中国地方の石灰岩分布図 五十嵐・藤貫(1974)による『中国地方の石灰石・ドロマイト・マグネサイト その資源と利用』から |
第2図 ろう石鉱床分布図 神谷(1974)による『中国地方の鉱物資源V 非金属鉱物資源』から |
|
第1図 中国地方の稼行鉱山分布図 |
東元(1974)による『中国地方の鉱物資源T 鉱床および鉱業概況』から |
四国地方の地質 |
図6 四国の地体構造区分(Isozaki et al., 2010を改変).三波川変成岩の変成作用および地質構造は,四国において最も詳細に研究されてきたが,最近の砕屑性ジルコンの火成年代測定によって,伝統的三波川帯の中に変成年代の異なる2種の高圧変成岩(三波川変成岩と四万十変成岩)が隣接して産する実態が明らかにされた(青木ほか,2010).四国中央部では両者が相接するため,従来はあたかも単一の変成帯をなすとみなされてきた.原岩および変成作用の年代の違いに基づき引かれた両者間の境界は,ほぼ水平な断層で,秩父帯と四万十帯北帯の非変成付加体間の境界である仏像構造線(BTL)に相当する. 磯崎ほか(2010)による『日本列島の地体構造区分再訪―太平洋型(都城型)造山帯構成単元および境界の分類・定義―』から |
四国地方の鉱床 |
四国地方の地質構造は、北から領家帯・(中央構造線)・三波川帯・(御荷鉾構造線)・秩父帯・(仏像構造線)・四万十帯北帯(安芸・中筋構造線)四万十帯南帯のようにほぼ東西に延びた地質体から構成されている。
|
|
|
|
||||||
生 代 |
第四紀 | ||||||||
新第三紀 | 四万十南帯 |
・市ノ川鉱山*2 (Sb鉱脈鉱床) ・陶石鉱床(砥部*3) |
|||||||
古第三紀 |
家 変 成 岩 |
||||||||
生 代 |
白亜紀 | 四万十北帯 |
波 川 変 成 帯 |
万 十 変 成 帯 |
|||||
ジュラ紀 | 秩父帯 |
・石灰石鉱床 ・ドロマイト鉱床 |
・層状マンガン鉱床*4 | ・別子鉱山(別子型銅鉱床、キースラーガー鉱床*5) | |||||
三畳紀 | |||||||||
主に、日本の地質「四国地方」編集委員会(1991/6)による『日本の地質 四国地方』の『第7章 鉱物資源』などを参照。 *1堆積作用・変成作用・火成作用 鉱床を、岩石と同じように堆積鉱床・変成鉱床・火成鉱床の3つに分けることもあるが、最も重要な鉱化作用をもたらすのは火成作用であり、マグマそのものよりも、その熱による地下水(熱水)の作用が本質的である。熱水は地下の割れ目を循環し、周囲の岩石から様々な元素を溶解し、条件が整った場所に鉱石鉱物を沈殿するため、鉱床ができあがる。このような場合には、その形態から、鉱脈鉱床や鉱染鉱床などと呼ばれる。また、マグマ由来の鉱床は、(正)マグマ鉱床と呼ばれるし、マグマの熱による交代作用のときに相手の地質体が石灰岩であればスカルン鉱床が生成する。 *2市ノ川(いちのかわ)鉱山 愛媛県。アンチモンの鉱石鉱物は輝安鉱(Sb2S3)。『鉱床と鉱山』のページの『市之川鉱山』を参照。 *3砥部(とべ)陶石鉱床 新第三紀中新世の安山岩類・流紋岩類の貫入時自己変質作用による。陶石は石英・カオリナイト・絹雲母などからなる。須藤・神谷(2000)による『愛媛県の砥部陶石と砥部焼を訪ねて』を参照。 *4層状マンガン鉱床 三波帯・秩父帯・四万十帯のいずれにも分布する。三波帯〔古宮(ふるみや)鉱山〕はマンガン珪酸塩鉱物(ブラウン鉱)が主、秩父帯北帯の韮生(にろー)鉱山・穴内(あなない)鉱山はマンガン珪酸塩鉱物(ブラウン鉱)が主で、国見山(くにみやま)鉱山は鉄酸化鉱物(磁鉄鉱・赤鉄鉱)とマンガン珪酸塩鉱物(ベメント石)からなる『鉄マン鉱床』。『マンガン鉱物と鉱床』のページの『マンガン鉱床』を参照。中川ほか(2010/9)による『四国の付加体におけるマンガン鉱床の分布と鉱物組合せ』を参照。 *5キースラーガー鉱床 鉄の硫化鉱物に富む層状含銅硫化鉄鉱鉱床であり、別子(べっし)鉱山が典型的であったため、別子型(銅)鉱床とも呼ぶ。鉄(Fe)やマグネシウム(Mg)の多い苦鉄質火山岩〜変成岩に伴う。海嶺付近で堆積して形成したと考えられている。銅鉱石を産出する例が多い。中生代以前に噴出した塩基性火山岩類に関連したものであり、オフィオライトを含む玄武岩質火山活動にともなって生成した含銅硫化鉄鉱鉱床であるキプロス型銅鉱床と類似する。別子型銅鉱床は『鉱床と鉱山』のページの『別子型銅鉱床』および『別子鉱山』を参照。野崎(2009/6)による『Re-Os放射壊変系による別子型塊状硫化物鉱床の生成年代決定と成因の解明』および東京大学・海洋研究開発機構(2013/5)による『四国の銅鉱床は1億5000万年前に生成された』を参照。 |
東京大学と海洋研究開発機構は5月29日、日本の「三波川帯」に大量に分布する「別子型銅鉱床群」がジュラ紀後期の約1億5000万年前に生成したことを見出し、中央海嶺の極めて活発な火山・熱水活動→大規模な海底熱水硫化物鉱床の生成および大気中の二酸化炭素濃度の上昇→極域の氷床の消滅→海洋大循環の停止→グローバルな無酸素海洋の発達→海底熱水硫化物鉱床と石油鉱床の保存、という一連の地質現象を引き起こしたことを明らかにしたと共同で発表した。 | |
画像2。今回の研究対象地域の位置図(今回の論文より抜粋) |
|
画像4。別子型銅鉱床の Re-Os年代と海水の87Sr/86Sr同位体比および大気 CO2濃度の経年変動曲線(今回の論文より抜粋) |
|
|
|
|
|
デイビー日高(2013/5)による『四国の銅鉱床は1億5000万年前に生成された - 東大などが解明』から 【参考】Late Jurassic ocean anoxic event: evidence
from voluminous sulphide deposition and preservation in the Panthalassa http://www.nature.com/srep/2013/130528/srep01889/abs/srep01889.html |
第1図 鳥形山鉱山の位置.石灰岩の分布域を黒く示した.石灰石鉱床分布図(石灰石鉱業協会,1983)を参考に作成した. 須藤(2005/11)による『天空の鉱山「鳥形山(とりかたやま)」を訪ねる』から |
日本の地質「四国地方」編集委員会(1991/6)による『日本の地質 四国地方』の『第7章 鉱物資源』から 日本の地質「四国地方」編集委員会編『日本の地質 四国地方』、共立出版、1991年6月、284p、ISBN:978-4-320-04615-3。 |