あ行

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【あ】

アイアンストーン（ironstone）②
『Feに富む化学的堆積岩の一種。主に古生代～白亜紀に形成され、細粒のシャモサイト・シデライト・赤鉄鉱・石英などが魚卵状に産出。ワバナに代表される北米の鉱床はクリントン型、フランスのロレーヌ地方をはじめ西欧諸国でかつて大量に利用された鉱床はミネット型と呼ばれる。中国河北省の竜烟鉱床も著名。鉱石品位は一般にFe25～35％程度でPが高い特徴がある。先カンブリア時代のBIFと並ぶ代表的な堆積性鉄鉱床であるが、資源としての重要性はしだいに失われつつある。〔島崎英彦〕』
→魚卵状鉄鉱鉱床
亜鉛鉱床（zinc deposit）②
『ZnとPbは相伴って産することが普通で、亜鉛・鉛鉱床として一括されることが多い。主要鉱石鉱物は閃亜鉛鉱・ウルツ鉱で、一部の鉱床や酸化帯では菱亜鉛鉱・異極鉱が重要。脈石鉱物は石英・方解石のほか、シデライト・菱マンガン鉱･重晶石・蛍石など。熱水鉱床と堆積層内鉱床に大別される。熱水鉱床は、１）火山性塊状硫化物鉱床：カナダNoranda地域の始生代グリーンストーン中の鉱床、日本の黒鉱鉱床など。Cuを伴うことも多いが、火山岩が珪長質であればZn・Pbに富む。２）鉱脈鉱床：豊羽・細倉・対州鉱山など。３）塊状鉱床：神岡鉱山のスカルン鉱床や、メキシコなどに多いマント型鉱床など。堆積層内鉱床は、４）ミシシッピバレー型鉱床：炭酸塩岩中の塊状鉱床。５）砕屑岩中の層状鉱床：カナダのSullivan。オーストラリアのMt.Isa・Broken Hill鉱床など。大鉱床が多いが成因不明のものも多い。６）含銅頁岩型鉱床：Kupferschieferが代表で、CuよりもZn・Pbを多く含む部分がある。Cd・Bi・Ge・Ga・In・Tlは亜鉛鉱床に濃集することが多く、亜鉛精錬の副産物として回収される。〔島崎英彦〕』

アスベスト（asbestos）②
『容易に細かな繊維状にでき、ほぐすと「綿のようになる石」で石綿（いしわた/せきめん）ともいう。糸や布に織ることができ、耐熱・耐磨耗性・耐薬品性・電気絶縁性等に優れた鉱物の総称。鉱物種からみると、蛇紋石の一種クリソタイルからなるアスベストと、グリュネル閃石（アモサイト）・リーベック閃石（クロシドライト）・繊維状直閃石・繊維状透閃石などの角閃石のアスベストの2種に分けられる。顕微鏡下で、アスペクト比が3：1以上の粒子として確認される。クリソタイルアスベストが圧倒的に多く消費されている。工業的に多用途に利用され「奇跡の鉱物」とされていたが、発癌性が広く指摘されて以来、「静かな時限爆弾」と恐れられ、汚染が問題となっている。〔赤井純治〕』
アスベスト（石綿）（asbestos、asbestus）③
『アスベストは天然に産する他の繊維や人造繊維より細いうえに、抗張力が非常に強く、燃えず、腐らず、熱や薬品に対して強いために表1に示すような用途が3000種以上もある。特に戦後になり用途が飛躍的に拡大したことに伴って、アスベストの世界総生産量が増大し、現在600万トン近くを生産している。世界最大の産出国はソ連（46％）で、ついでカナダ（29％）、南アフリカ（7％）、中国（3.7％）、ジンバブエ（3.7％）である。

**表1　アスベストのおもな用途**
セメント製品	平板、波板、パイプ
屋根材および下見板	石綿ボード
摩擦材	ブレーキライニング、クラッチフェイシング、エレベータや列車の制動部分
耐熱性製品	ボイラー被覆、ジョイトシート、パッキング
電気絶縁、保温、耐酸製品	石綿紙、フェルト、保温板、タイル
紡織製品	石綿糸、石綿布
その他	プラスチック強化材、ストーブの芯

　現在のアスベストとよばれる物質に対して西暦50年ごろにamiantus（ギリシア文字：略）という名がつけられ、その後アスベストとよばれるようになった。物質が発見された後になり、耐熱性や耐薬品性などの特性をもつことがわかってきた。そのために工業で用いているアスベストの定義と鉱物学の定義とは一致せず、次のような2つの定義がある。①石綿状変種をなす多くの鉱物の集合体の名称。②石綿状変種をなす鉱物を採掘、加工して得た工業原料で、石綿状変種以外の多くの鉱物が混在していることが多い。表2にアスベストと関連した鉱物を示す。工業用のアスベストの品質は石綿状変種をなす鉱物の種類、繊維の石綿状形態の発達の程度、針状結晶または他の不純物と石綿状変種をなす鉱物との混合比、繊維の長さや柔軟性に依存する。アスベストの化学分析値を表3（略）に、物理化学的性質を表4（略）に示す。

**表2　アスベストと関連鉱物**
鉱　物　名	化　学　組　成	石綿状変種	日　本　名
serpentine group（蛇紋石族）
chrysotile（クリソタイル）	Mg3Si2O5(OH)4	chrysotile asbestos	温石綿、白石綿
amphibole group（角閃石族）
anthophyllite（直閃石）	(Mg,Fe²⁺)7Si8O22(OH,F)2	anthophyllite asbestos	直閃石綿
cummingtonite-grunerite series（カミングトン閃石-グリュネ閃石系）	(Mg,Fe²⁺)7Si8O22(OH)2	amosite	アモサイト
tremolite-actinolite series（透閃石-アクチノ閃石系）	Ca2(Mg,Fe²⁺)5Si8O22(OH,F)2	tremolite asbestos actinolite asbestos	透角閃石綿陽起石綿
riebeckite（リーベック閃石）	Na2Fe²⁺3Fe³⁺2Si8O22(OH,F)2	crocidolite	クロシドライト、青石綿

　近年の工業社会でアスベストの用途の拡大、使用量の増大に伴って、アスベストの職業性暴露によるアスベスト肺症、肺がんや中皮腫などの悪性腫瘍が多発する以外に、一般生活環境中でのアスベストの暴露（副次的職業性暴露や近隣暴露）が世界的な関心を集めている。（林　久人）』
石綿（asbestos）⑩
『アスベストともよばれる。天然に産する繊維状の含水ケイ酸塩鉱物のうち高い抗張力と柔軟性をもつもの。耐熱性、耐摩耗性、電気絶縁性、耐薬品性に優れるため、建造物材料、摩擦材（ブレキライニング）、断熱材などの工業材料として利用される。鉱物学的には蛇紋石および角セン石鉱物のうち、繊維状形態を有する次の６種の鉱物を指す。１）クリソタイル（温石綿または白石綿）（chrysotile）Mg6Si4O10(OH)8、２）クロシドライト（青石綿）（crocidolite）Na2(Fe²⁺、Mg)3Fe³⁺2Si8O22(OH)2、３）アモサイト（茶石綿）（amosite）(Fe²⁺,Mg)7Si8O22(OH)2、４）直セン石（anthophyllite）(Mg,Fe²⁺)7Si8O22(OH)2、５）透セン石（tremolite）Ca2Mg5Si8O22(OH)2、６）緑セン石（actinolite）Ca2(Mg,Fe²⁺)5Si8O22(OH)2。クリソタイルは蛇紋石族、他の５種は角セン石族に属する。クロシドライトはリーベックセン石（riebeckite）の、アモサイトはグリューネセン石（grunerite）のそれぞれ繊維状変種である。世界の生産量400万tのうち90％以上がクリソタイルであり、生産量は健康問題および代替品の開発により減少傾向にある。クリソタイルは超塩基性岩が変成して蛇紋岩化するとき生じた岩体の割れ目に霜柱のように繊維軸が直交する状態で結晶成長する。これを直交繊維脈（cross-fiber vein）とよび、主なクリソタイル鉱山はほとんどこのタイプである。角セン石石綿のうち工業的に利用されるのは、主としてクロシドライトとアモサイトで、その大部分は南アフリカの先カンブリア時代の縞状鉄鉱層中に母岩の縞状構造と平行に互層を成して産出し、還元環境でゲル状の水酸化鉄と無水ケイ酸の反応により鉄鉱層とともに生成したとされる。アスベストは健康障害の問題を生ずる。疫学調査、動物実験により、アスベストの吸入と肺がん・中皮腫の発生率の関係が指摘されている。繊維が細くて長いほど発がん率が高い（Stanton-Pottの仮説）。労働環境中の石綿粉塵濃度の規制値として、毒性の最も高いクロシドライトは0.2本/cc、その他のアスベストは2本/ccとされている。』

アスベスト鉱床（asbetos deposit）②
『クリソタイルや繊維状角閃石系鉱物（コロシドライト・アモサイト・直閃石）からなる脈状の鉱床。クリソタイルは白色の直交・斜交繊維として蛇紋岩中に産出、世界のアスベスト生産の95％を占め、主産地はカナダのケベック州・ウラル・ブラジル・ジンバブウェ。アモサイト（amosite＝asbestos mine of South Africaの頭文字による商品名）は長さ10～20cmに及ぶ主にFeに富む角閃石（グリュネル閃石）からなり、主産国は南ア（トラスバール地方）。クロシドライトは青色の直交繊維として南ア（ケープ地方）に産する。後二者は先カンブリア時代の含鉄チャート・縞状含鉄珪岩中に層面に平行な脈として産出。世界生産量349万t（1991）。日本では北海道富良野でクリソタイルを産出。〔岡野武雄・平野英雄〕
アネルギー（anergie）⑦
『一般にエネルギーは機械エネルギーに変換できる部分と、変換できない部分から成っている。このうち前者をエクセルギー（有効エネルギー）、後者をアネルギーまたは無効エネルギーと呼ぶ。』

【い】

一次生産（primary production）⑪
『基礎生産（key production）。独立栄養生物（無機栄養生物）による有機物生産。これに関与する生物を生産者（一次生産者 primary producer）とよぶ。一般には光合成による有機物生産がその大部分を占めるが、H2Sの存在するような還元環境などでは、化学合成生物が一次生産を行う特殊な生態系も存在する。一次生産の語は有機物生産を示すのがふつうで、二次生産とは正確に対応しないので、この語を植物体生産の意味で用い、有機物生産を基礎生産とよぶ意見もある。なお、物質ではなくエネルギーに重点をおいて光合成によるエネルギー固定だけをいう立場もある。』
一般炭（steam coal、thermal coal）⑥
『石炭を用途によって分類した呼びかたで第一種炭（一般燃焼用炭）をいう。主に発電所ボイラの燃料で原料炭以外の有煙炭。日本では低度瀝青炭・褐炭およびいわゆる亜炭がこれにあたる。近年、一般炭の用途範囲は各ボイラ燃料はもとより、窯炉燃料、成形コークス原料、ガス化・液化の原料などに広く用いられている。』

【う】

ウィットウォーターズランド産金地域（Witwatersrand goldfields）②
『南アのヨハネスブルグ南西、約480km×180kmの地域でRand地方ともいう。世界最大の産金地。地質はSwaziland系を基盤とし、Witwatersrand系～Karroo系までが堆積。Witwatersrand系（30億～27億年前）は大きな向斜構造をなし、リーフと呼ぶ7層の含金礫岩層を挟む。上部層中のメインリーフ群が最も重要。礫は石英・チャートの円礫で、基質に黄鉄鉱・金・閃ウラン鉱・白金族その他多くの重鉱物を含む。平均金品位は5～10g/t。礫岩型金-ウラン鉱床の代表。1887年開山、盛時には122鉱床が稼行、1990年までの採掘粗鉱量約40億t、産金量約4万tで、なおAu 4万t以上を残すという。1952～83年のU3O8産出量約12万t、品位U3O8 0.01～0.03％。PGEも回収。最深3,600mまで開発。〔中川　充〕　』
ウラン（uranium）①
『U　原子番号92。原子量238.0．アクチノイド元素の1つ。天然には²³⁸U（半減期4.47×10⁹年、α崩壊）が99.275％、²³⁵U（半減期7.04×10⁸年、α崩壊）0.72％、²³⁴U（半減期2.45×10⁵年、α崩壊）0.0055％の割合で存在する。地殻における存在比2.7ppm。非常に有毒な放射性物質。1789年クラプロートが発見した。単体はハロゲン化物の融解塩電解あるいはアルカリ土類金属単体による還元で得られる。銀白色。667℃以下ではα型（斜方晶系、ゆがんだ六方最密構造）が安定。667～778℃でβ型（立方晶系）に、778℃以上γ型（体心立方構造）に転移する。密度19.050g/cm³。融点1132.3℃、沸点3800℃。熱容量27.8（27.45）J/K・mol（298.15K）。熱伝導率27.6W/m・K（300K）、電気抵抗率30.0×10^-6Ωcm。反応性が強く、粉末状のものは空気中で自然発火し、また水を分解する。水素と250℃で直接に反応しUH3を与える。ハロゲン、窒素、硫黄その他多くの元素と作用する。酸に溶け、アルカリに不溶。²³⁵U、²³³Uは核燃料として用いられる。²³³Uは原子炉で²³²Thの転換によってつくる。』
ウラン（uranium）⑦
『ウラニウムともいい、元素記号Uで表す原子番号92、原子量238.029の放射性元素。天然ウランは、主として質量数235と238の2種類の同位元素の混合物である。ウラン235²³⁵Uは純粋のウラン金属の中に0.72％の微量が含有され、残りの99.28％はウラン238²³⁸Uである。²³⁵Uは核分裂反応によって同じ重量の石炭の300万倍の熱を出す。²³⁸Uはそのままでは核分裂せず、中性子を吸収してプルトニウム239や241などの奇数番号のものに変化することによって核分裂するようになり、ともに核燃料として重要なものである。』
→『ウラニウム』のページを参照。
ウラン鉱床（uranium deposit）②
『同生鉱床と後生鉱床に大別される。同生鉱床は礫岩型・リン酸塩型・黒色頁岩型・貫入岩型など。礫岩型の代表は原生界下部層の石英礫礫岩に大規模に胚胎する南アWitwatersrandの金-ウラン鉱床、カナダのBlind River鉱床。鉱石鉱物は前者で閃ウラン鉱、後者はブランネル石。リン酸塩型・黒色頁岩型は海成の化学的沈殿鉱床で大規模だが低品位。貫入岩型はアラスカイト（ナミビアのRossing（oの頭に¨））・カーボナタイト・ペグマタイト中の鉱染鉱床。後生鉱床は不整合型・砂岩型・鉱脈型・角礫岩型・表層型など。不整合型の代表はカナダのAthabasca鉱床・オーストラリア北部のAlligator River鉱床など。砂岩型は地下水で運ばれたUが不透水層に挟まれた陸成砂岩中に沈殿濃集したもので、母岩の年代は原生代～第三紀にわたり世界各地に分布。米国コロラド州に多産するのでコロラド高原型とも呼ばれる。鉱石鉱物は瀝青ウラン鉱・閃ウラン鉱・コフィナイト・カルノー石などで、V・Cu・Mo・Seを伴う。鉱脈型は花崗岩中またはその付近に生成し、瀝青ウラン鉱と黄鉄鉱のみからなるもの、これにAg・Co・Ni・Biを伴うものがある。原生代～古生代に多くヤヒモフが著名。角礫岩型はオリンピックダム鉱山が代表。表層型はカルクリート型ウラン鉱床など。大略の埋蔵量比は砂岩型40％、礫岩型・不整合型・貫入岩型が各15％、鉱脈型5％。主産国は米国・南ア・オーストラリア・カナダ・ニジェール。〔矢島淳吉〕』
運搬（transportation）③
『鉱山における運搬は大別して運搬機械と積込機に分かれ、次のような方法がある。
①　切羽積込設備：　坑井（本書「坑井」の（３））の貯石を抜き出して鉱車に積み込む場合のビンゲートは、手動式および機械動式がある。その他ローダーによる積込み、かき込み式ローダーなどが切羽積込機として使用される。
②　鉱車運搬：　鉱車は形式により、横倒式・底開き式・両側開き式・グランビー型・ダンプ式などの分類があって、実情に合わせて選定して私用される。
③　ベルトコンベヤ：　一般に切羽の小運搬から、大は港湾積出しまでの長距離輸送用に至るまで使用される。これは運搬能力の大きいこと、静かなことおよび途中からの荷卸しが可能な利点がある。異なった型としてV型ベルトを使用して単位あたりの容量を増大させたものや、ワイヤロープで駆動させるもの、あるいはベルトを鎖に代えたチェーンコンベヤなどがある。
④　バケットコンベヤ：　バケットをベルト、鎖などに取り付け、下部の鉱石を上部に運搬放出する。工場などのスペースの限定された所での使用に適する。
⑤　スクリューコンベヤ：　管や樋の中にねじ羽根を回転させ、ねじ面に沿って輸送する方法で穀物などの粒状のものあるいは粉体の輸送に用いられる。
⑥　機関車運搬：　電気・ディーゼルなどの機関車が鉱車のけん引用に使用されるが、ディーゼルは坑内の通気良好な所以外は不向きである。
⑦　エンドレス運搬：　水平坑道などにロープをエンドレスに設置しこれを動力で回転させ、これのロープに鉱車をクリップしてけん引する運搬方法である。
⑧　巻取運搬：　斜坑・立坑などで鉱車を巻き上げる場合、ウィンチにより巻き取って昇降運搬する方法。
⑨　索道運搬：　山間部で地形にほとんど影響されることなく設置し、バケットに鉱石を入れて目的地まで運搬する。形式には単式・複式・エンドレス式がある。
　一方、工場運搬を対象とした運搬には次のようなものが用いられる。
①　振動コンベヤ：　機械力、または電磁力で粉粒体に振動を与え輸送する方法で、輸送途中において、乾燥や冷却などの操作もあわせて行うことができる。
②　水による流体輸送：　工場における泥漿輸送や、鉱山におけるスライム輸送などに広く用いられており、遠距離、低コスト輸送が可能である。ただ輸送物の脱水、汚水処理などの操作を要する場合がある。
③　空気による流体輸送：　これにはエアスライドと空気輸送がある。エアスライドは空気により粉体を流動化させ、下り勾配を滑送させる方式で、微粉輸送に適し、短距離用に多く用いられる。空気輸送には、吸引式・圧送式がある。吸引式は近距離や中距離に用いられ、圧送式は遠距離に用いられる。
④　高圧プラグ輸送：　特に摩耗物質を含む粉粒体の空気輸送に用いる。輸送速度がおそく、輸送管の摩耗が大幅に少なくなり、かつ所要空気量、動力、分離捕集器が小さくて済む。〔蜂須賀栄治〕』

【え】

API度（API degree）⑦
『アメリカ石油協会（American Petroleum Institute）が制定した石油の比重を表す単位。API゜＝141.5/（比重 60/60゜F）－131.5。表7（略）に示すように、原油の比重が小さいほど石油製品中でもっとも単価の高いガソリンの収率が高い傾向があるので、原油の価格はAPI゜を基準として定められることが多い。』

液化石油ガス（liquefied petroleum gas）⑦
『一般にLPGと略称される。石油工業で副生する炭素原子数3～4のガス状炭化水素を圧縮液化したもの。LPGは臨界温度が高いプロパン、ブタンを主体にプロピレン、ブチレンなどの混合物で、常温では気体で、常温で加圧して放熱すると簡単に液化し体積が1/250程度になり、耐圧容器に封入するだけで常温で液化が保たれ、圧力を除くと容易に再気化しガスとなる特性がある。ガス比重が1.5～2.0で漏れた場合上方拡散されず、かつ、可燃限界の下限が低いので引火爆発しやすい危険性があるので、漏れを察知しやすいように着臭剤が添加されている。LPGは表5のように分類され、一般家庭用としては気化しやすいプロパンが主に用いられプロパンガスと呼ばれる。工業用としては気化しにくいが価格が安いブタン、ブチレンが主成分のいわゆるブタンガスが主に用いられる。

**表5　液化石油ガスの種類および品質（JIS K 2240）**
項目種類		組　成（mol％）				硫黄分（wt％）	蒸気圧（40℃） kgf/cm²{MPa}	比重（15/4℃）	主な用途
		エタン＋エチレン	プロパン＋プロピレン	ブタン＋ブチレン	ブタジエン
1種	1号	5以下	80以上	20以下	0.5以下	0.015以下	15.6{1.53} 以下	0.50～0.63	家庭用燃料業務用燃料
	2号		60以上 80未満	40以下
	3号		60未満	30以上
2種	1号	－	90以上	10以下	－^*	0.02以下	15.8{1.55} 以下		工業用燃料及び原料自動車用燃料
	2号		50以上 90未満	50以下
	3号		50未満	50以上 90未満			12.7{1.25} 以下
	4号		10以下	90以上			5.3{0.52} 以下
^*　自動車用、工業用（燃料及び原料）、その他に使用する場合には、ブタジエン含有量は、使用目的に対して支障を与えるものであってはならない。注：ブタン＋ブチレンとは、イソブタン、n-ブタン、イソブチレン、1-ブチレン、トランス2-ブチレン、シス2-ブチレンの混合物であるまた、ブタジエンは1,3-ブタジエンを示す。　この規格の中で { } を付けてある単位及び数値は国際単位系（SI）によるものであって、参考として併記したものである。

』

液化天然ガス（liquefied natural gas）⑦
『天然ガスを液化したもので通常LNGと略称される。天然ガスの主成分はメタンであるが、これは-162℃、１atm（101325Pa）の条件で液体となり、体積は1/600程度に縮小される。LNGタンカ（冷凍船）で輸入され、気化装置によりガス化する。都市ガス、工業燃料、化学工業原料などとして用いられる。主にアラスカ、インドネシア、ボルネオのブルネイから輸入される。』
エクセルギー（exergy）⑦
『有効エネルギーともいい、一般にエネルギーは機械エネルギーに変換できる部分と、変換できない部分からなっているが、このうち前者をエクセルギーといい、後者をアネルギーという。すなわち、系の保有するエネルギーまたは系に加えられるエネルギーのうち、環境条件まで可逆変化させることにより外部に取り出し得る最大仕事量をいう。たとえば、引き上げられたおもりのもつ位置エネルギーは全部有効エネルギーであるが、有限温度の物体のもつ熱量はその一部だけが有効であり、高低両熱源の絶対温度をTおよびToとするとき、高温の熱量Qの有効エネルギーは　Q（T－To）/T　である。　燃料やアンモニアなどの化学物質も環境条件下で最も安定な規準物質を定めることで、エクセルギー値を定めることが可能であり、JIS（Z 9204）に定められている。』
⇒亀山（1999）による
エネルギー
⇒槌田（1982）による
⇒鈴木（1990）による
⇒河村・馬場（1993）による
⇒スピロ・スティリアニ（2000）による
エントロピー
⇒リフキン（1990）による
⇒足立（1998）による

【お】

オイルサンド（oil sand）③
『別名タールサンドともいう。粘ちょう性の強い原油を多量に含む砂をいう。流動性に乏しいため通常の石油採掘のように油井により経済的に回収することはできない。オイルサンドの採収法には、大別して、露天掘法と油層内採収法とがある。前者は比較的地表に近い地層を対象とし、砂ごと抽出プラントへ送られ、スチーム、溶剤による抽出および遠心分離操作を経て粗原油が回収される。後者は比較的深い（150m以上）地層を対象とし、スチームによる洗い流しによる方法と油層に点火し、燃焼フロントを形成し、採収井の方向へ移動させる方法とがある。いずれも油層を加熱することによる流動性の増大と掃攻効率の上昇をねらったものであるが、まだ実験・研究段階であり、実用段階に至っていない。オイルサンドの成因には二説ある。ひとつは未熟な石油の集積であるとする説と、もうひとつは元来普通の石油であったものが、地殻変動により地表に露出し、軽い炭化水素が逸散して著しく流動性を失ったとする説である。世界の埋蔵量は3千億～5千億klと推定されているが、そのうち90％以上はカナダとベネズエラで占められている。（浅川　忠）』
オイルサンド（oil sand）⑥
『油砂（ゆさ）。タールサンドと同意語。』
オイルシェール（oil shale）③
『腐泥岩の一種で、かつては油母頁岩とよばれた。ケロジンを多量に含有する緻密な細粒堆積岩で、乾留により油を生成する。オイルシェールの学問的定義はなく、一般に経済的目安で定義され、乾留により約40 l/t以上の油を生成するものをさす。オイルシェールと石炭との区別は必ずしも明確ではなく、トーバナイトやアルジナイトなどは腐泥炭として石炭の仲間に加えられているが、これらもオイルシェールである。根源物は石炭の高等植物に対して、主として海水あるいは淡水中に生えていた藻類に由来したものでケロジン中のH/C比は0.1～0.14で、れき青炭の0.06～0.08に比較すると水素量が約2倍である。水素含有量が多いことはケロジンの脂肪族側鎖に長鎖のものが多いことを意味し、乾留の結果液状の石油が石炭に比較して多く生成されることになる。
　世界のオイルシェールの原始埋蔵量に関する正確な統計はないが、米国の地質調査所によれば、石油生成率 40 l/t以上のものは原油換算で約5200億klとされている。おもな地域は米国、ブラジル、中国、ソ連、ザイールなどであるが、米国とブラジルの2ヵ国で世界の埋蔵量の約90％を占めているといわれている。（浅川　忠）』
オイルシェール（oil shale）⑥
『油頁岩。ケローゲン（kerogen、主として炭素と水素からなるが、ほかに酸素・窒素・硫黄を含有する複雑な高分子の物質）を含んだ頁岩の一種。外観は褐色ないし暗褐色または黒色を呈し、比重1.4～2で容易に燃焼する。オイルシェールを粉砕し、500℃前後で熱分解するとガス、頁岩油および残留物が得られる。頁岩油の収率は対原料数％～20％、一般に原油より不純物が多い。世界には比較的広く分布し、とくにアメリカ、ブラジル、カナダ、中国、ソ連などに埋蔵量が多いといわれている。これらの原始埋蔵量は55000億バーレル。』

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