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【か】

• 海岸段丘⇒海成段丘
• 階級（rank、category）�J
  『分類階級。生物のリンネ式階層分類におけるタクソンの階層的位置。タクソンはそれぞれ相応の階級に位置づけられ、下位の階級のタクソンは上位のタクソンに順次包含される。例えば科という階級のヒト科というタクソンは、目という階級のサル目（霊長目）というタクソンに含まれる。各階級にはそれぞれ固有の名称が与えられており、最下層の種に始まって、属、科、目、綱、門、界が基本的に用いられる。タクソン間の階層構造を表現するにあたって以上の7階級では足りない場合、必要に応じて階級が増やされる。例えば、動物分類では、綱と目の間にコホート（区）、科と属の間に族、種の下に亜種を設ける。また、各階級名に上-、下-、亜-などの接頭語を付けて階層をさらに細分することも行われている。』
  →こちらも参照。
• 海溝（trench）�A
  『大陸または島弧と大洋底の間にあり、急斜面で囲まれた細長い凹地。陸地・島列と平行にのび、周辺の大洋底より2km程度深い。長さは大規模なもので数千kmに達する。大部分の海溝は、陸側が急斜面、海側が緩斜面の非対称V字断面を示す。地球上には27の海溝があり、そのうち22が太平洋にある。ペルー海溝・チリ海溝のように太平洋の東側にあるものは水深が浅く直線的であり、日本海溝のように西側にあるものは深く海側に凸の弧状をなす。海溝は大洋プレートが大陸あるいは縁海プレートの下に沈み込むプレートの収斂（れん）境界であり、海側から陸側に傾斜する深発地震面（和達-ベニオフ帯）を伴う。また、海溝の陸側に発達する島弧と合わせて島弧-海溝系をつくる。〔茂木昭夫・中尾征三〕』
• 海進（transgression）�A
  『海岸線が陸側に前進してくること、あるいは陸地が海の進入を受けること。海浸ろも書く。海岸線の位置は、汎世界的海水準（ユースター）と陸地の上下運動とがつくる相対的海水準変動、砕屑物の供給、波浪や沿岸流などの沿岸の運搬営力とのバランスによって保たれているが、相対的海水準が上昇したとき、砕屑物の供給に対して海の運搬営力が勝ったときなどに海進が起こる。このとき海成層はオーバーラップの関係で陸側に広がり、古い地層・岩体の上にラビンメント面などの海進に伴う不連続面を挟んで重なる。〔保柳康一・�竃�義夫〕』
• 崖錐（がいすい）（talus）�A
  『急斜面から落下した岩屑が崖の麓に堆積して形成する急斜面（30゜〜40゜）で円錐形の地形。テーラスとも。その構成物は崖錐（性）堆積物（単に崖錐と呼ばれることも多い）で、大小さまざまな角礫からなる。堆積物はわずかな水の存在で下方に匍行（崖錐匍行）し、豪雨時には上部斜面の崩壊を引金として土石流を起こしやすい。〔小池一之・高浜信行〕』
• 海成段丘（marine terrace）�A
  『過去の海面に関連してできた海成平坦面が、海岸線に沿って階段状に分布する地形。海岸段丘とも。成因を重視すれば海成段丘が適当。段丘面は波食による場合と堆積による場合とがある。段丘崖はもとの海食崖で、段丘面とその内陸側の段丘崖との傾斜変換点を連ねた線は旧汀線である。段丘の規模・形態・堆積物の厚さなどは段丘形成前の地形・海況・構成岩石・地殻変動の様式などによって異なる。段丘の形成年代は段丘堆積物中の化石や被覆火山灰などから決められるが、年代決定が難しいことが多い。段丘面を形成した高海水準期が温暖期と対応し、段丘形成期が間氷期に相当するものが多い。海成段丘の形成は土地の間欠的な隆起によるとされていたが、段丘の分化を生じたのは地殻変動の緩急ではなく、地殻が一定の速さで隆起している間に繰り返された氷河性海面変化の結果とみるべきである。短い時間単位では、巨大地震による隆起で生まれた完新世段丘もある。〔太田陽子〕』
• 海退（regression、marine regression）�A
  『海岸線が海側に後退し、陸域が拡大すること。海進の対語。堆積空間の増加に対して砕屑物の供給が勝ったときや相対的海水準の低下による堆積空間の減少によって引き起こされる。地層中に残される海退の記録は、沿岸環境を示す堆積相が上方に向かって浅海化することによって残される。すなわち、陸棚を示す泥岩層から外浜を示す砂岩層へ上方粗粒化する地層の累重をつくる。この間に海水準の低下による急速な海退が起こると陸棚堆積物が外浜浸食を受け、陸棚堆積物と外浜堆積物の間に浸食海退面と呼ばれる不連続面が形成される。また、海退は堆積物の前進埋積作用を引き起こすので、上位の地層が下位の地層へダウンラップする構造をつくる。〔保柳康一・�竃�義夫〕』
• カイパーベルト（Kuiper belt）�A
  『海王星の軌道の外側の40〜100天文単位付近に、彗星などの小天体が群がって分布していると考えられる領域。その存在を米国の天文学者G.P.Kuiper（1905〜73）が1951年に予言。その後、この領域に多数の小天体（直径100km前後）が発見されるようになり、これらは、原始太陽系星雲の中で生れた微惑星の生残り天体であろうとみられている。短周期彗星（周期200年以内）の多くは、この領域を起原にしていると考えると好都合である。〔小森長生〕』
• 海洋性地殻（oceanic crust）�A
  『海底地殻とも。狭義には大洋底下の地殻で、その厚さは5〜10km、密度3.0g/cm³、地震波速度は6.2km/sを超えるものと定義される。シマ層に相当し、大洋底では大陸性地殻（シアル層）が欠如する形になっていると考えられている。広義には、海底直下の未固結堆積層からモホ面までのすべてを指し、上から第1層（未固結堆積層を主体とし、厚さは平均0.5km、地震波速度1.77km/s）、第2層（固結堆積層あるいは海山性の火山岩を主体とし、太平洋のほとんど全域と大西洋の一部に分布する。厚さは平均1〜2km、地震波速度5.96km/s）および第3層（玄武岩質火山岩からなり、厚さは平均5km、地震波速度6.7km/s）に分けられる。海面からモホ面までの深さは約10kmで大陸地殻に比べてかなり浅いが、第1層から第3層までの密度は平均で2.8g/cm³、上部マントルの平均密度は3.3g/cm³で大陸の値とほぼ一致し、アイソスタシーが成り立つ。〔岩淵義郎・中尾征三〕』
  oceanic crust�L
  『That type of the Earth's crust which underlies the ocean basins. The oceanic crust is about 5-10 km thick; it has a density of 2.9 g/cm³, and compressional seismic-wave velocities travelling through it at 4-7.5 km/sec. Cf: continental crust; Layer 1; Layer 2; Layer3.』
• 海洋底拡大（seafloor spreading）�A
  『プレート同士が互いに離れていく発散境界で、その空隙を埋めるようにアセノスフェアが上昇してきて、新たな海洋底が生産され、海洋底が拡大していくこと。プレートテクトニクスが学問として成立する以前、A.Holmes（1944）はマントル対流によって海洋底が拡大することを唱えたが、1960年代の初めにH.H.Hess（1962）、R.S.Dietz（1961）によって初めて具体的に提唱された。F.J.Vine et al.（1963）は、海洋底に残された地磁気異常の縞模様が、地磁気の極性の反転を記録していることを見いだし、これによって海洋底拡大が実証された。地磁気異常縞模様は拡大速度を推定する方法を与え、プレート運動を決定するために用いられる。〔瀬野徹三〕』
  →大洋底拡大説
• 海嶺（ridge）�A
  『急傾斜の斜面で両側を画され、起伏に富んだ海底の細長い高地。大小さまざまな規模のものがあり、一連の島弧の一部または全体を指すこともあれば、大洋中央海嶺を指すこともある。海嶺はあくまでも地形上の表現なので、現在活動的でないもの（例えば古島弧や構造的な成因をもつ地塁など）も含む。海底山脈とは同義として差し支えないが、大洋底山脈は大洋中央海嶺と同義に使われることが多く、海嶺のほうが広い意味をもつ。1960年代に入り、海洋底拡大やプレートテクトニクスに関連して、海嶺の地形・地質・磁気異常等の研究量が著しく増大。〔茂木昭夫・中尾征三〕』
• 化学進化（chemical evolution）�I
  『生命の誕生に至る過程を物質の進化ととらえ、生命誕生以降の生物進化に対し、化学進化とよぶ。特に生体構成成分の合成に関心があるので、前生物的合成（prebiotic synthesis）と同義のように使われることが多い。狭義には原始地球上で起こった生命の起源に至る一連の化学反応を指し、出発物質は通常、原始大気構成分と考えられている。かつてはメタン・アンモニア・水蒸気・水素を主成分とする還元的な大気と考えられていたが、今日ではCO2・N2・H2Oを主成分とする考えが有力である。原始大気に放電・紫外線・熱・放射線などのエネルギーが加わって自発的な反応が起こり、アミノ酸・糖・核酸塩基などの有機物が生じたという。』
• 河岸段丘⇒河成段丘
• 核異性体転移（isomeric transition）�I
  『比較的寿命の長い励起状態にある核が、励起エネルギーをγ線として放出するかあるいは励起エネルギーを核外電子に与えて（内部転換）、基底状態あるいはより低い励起状態に移ることをいう。ITと略称する。』
• 核種（nuclide、nuclear species）�I
  『原子核の組成、すなわち陽子および中性子の数によって規定される原子の種類。原子核のおのおのに独立の性格をもたせている点で同位体のように元素に着目した語と性格が異なるが、一般に核種というべきところを同位体（アイソトープ）と称している場合も多い。』
• 核反応（nuclear reaction）�@
  『原子核反応ともいう。原子核とほかの粒子との衝突によっておこる現象の総称。狭い意味では、このうち弾性散乱を除いたものを指す。原子核X（標的核）に粒子a（入射粒子）が衝突し、原子核Y（残留核）と粒子b1、…、bn（放射粒子）ができる反応
  　X＋a　→　Y＋b1＋…＋bn、またはX（a,b1…bn）Y
  と書く。弾性散乱はX（a,a）X、非弾性散乱はX（a,a'）X^*で表わされ、a'は粒子aがエネルギーを失ったこと、X^*はXが励起状態にあることを示す。残留核Yが標的核Xと異なる場合を組替え反応という。核反応で生ずる残留核と放出粒子の各組合せをそれぞれチャネルといい、これらを一括して放出チャネルとよぶ。また標的核と入射粒子の1組を入射チャネルという。核反応の研究は1919年ラザフォードのN（α,p）O反応の発見以来、各種の加速器を用いてさかんに行なわれ、入射粒子として中性子、陽子、重陽子、三重陽子、α粒子、より重い原子核や光子、電子、中間子などの各種素粒子が使用されている。核反応の過程には比較的単純な直接反応、複雑な複合核反応や、両反応の中間的な反応である中間共鳴反応などがある。これらの反応を統一的に記述する核反応理論の建設は原子核物理学の中心課題の1つである。』
• 核分裂（nuclear fission）�@
  『主としてウラン、トリウム、プルトリウムのような重い原子核でおこる核反応で、原子核が、質量があまり違わない2つ以上の原子核に分裂すること。原子核分裂ともいう。ふつうは2個に分裂することをさすが、3個に分裂する3体分裂もある。核分裂をおこす性質をもつ物質（原子核）を核分裂性物質、分裂して生じた原子核を核分裂破片という。核分裂は1938年ハーンらが発見し、分裂のときに放出される莫大なエネルギー（1つの核分裂につき200MeV程度）を利用して後に原子力が開発された。外からの刺激なしにおこる自発核分裂もあるが、中性子、陽子、α粒子、γ線などを当てて原子核を励起すると、分裂がおこりやすくなる。分裂の直後の核分裂破片からは、さらに2〜3個程度の中性子（γ線や電子も）が継起的に放出されることが多い。したがって、中性子の衝撃でおこる核分裂は中性子を連鎖担体とする連鎖反応をおこす可能性がある。これが原子炉や原子爆弾における基本的な核反応である。ただし核分裂をうまく続けておこすためには、中性子の速度が特定の範囲内になければならない場合が多く、また中性子の損失を少なくして臨界に達するようにする工夫が必要である。』
  核分裂（nuclear fission）�I
  『重い原子核が2個またはそれ以上の中程度の重さの核に分裂する現象。核分裂には自発核分裂と核分裂反応の2種類がある。自発核分裂は質量数の大きい核種に特異な壊変方式で²³⁵U、²³⁸U、²³⁹Pu、²⁵⁴Cf、²⁵⁶Fmなどにみられる。²³⁵U、²³⁹Puなどはα壊変が主で自発核分裂の割合は非常に小さいが、²⁵⁴Cf、²⁵⁶Fmなどは自発核分裂が主な壊変方式である。一方、原子核が中性子、陽子、α粒子などの入射粒子によって励起されて分裂するのが核分裂反応である。核分裂は1938年にO.Hahnらによって発見され、核分裂の際放出されるエネルギーが200MeVと莫大なため、第二次大戦中にこのエネルギーを利用する原子爆弾の開発が進められた。しかし戦後は、分裂の際放出される中性子を効果的に利用し、連鎖反応を原子炉内で制御することにより、原子力発電が開発された。』
• 核融合（反応）〔nuclear fusion（reaction）〕�I
  『原子核反応の結果反応前の原子核よりも重い原子核を生成する核反応を総称していうが、一般的には核分裂反応と対比して軽い原子核間の反応で比較的大きなエネルギーを放出する反応をいう。これは各核種の平均結合エネルギーの最大値が中重核近傍にあることに対応し、軽い原子核が核融合反応によってより安定になることに基づいている。主要な核融合反応としては、次のようなものがある。
  

  	2H＋3H	→	n＋4He＋17.8MeV	（1）
  	2H＋2H	→	n＋3He＋3.27MeV	(2)
  	2H＋2H	→	1H＋3H＋4.03MeV	(3)
  	2H＋3He	→	4He＋1H＋18.4MeV	(4)
  	1H＋6Li	→	4He＋3He＋4.0MeV	(5)
  	n＋6Li	→	3H＋4He＋4.8MeV	(6)
  	1H＋11B	→	34He＋8.7MeV	(7)

  
  水素爆弾はLiDを原子爆弾で点火し大きなエネルギーを放出させるが、これを爆発的でなく持続的に反応させてエネルギー源として用いようというのが制御核融合研究である。(1)と(6)の反応を用いた炉を第一世代と考えているが、さらに次世代のものとして中性子の発生が少ない、あるいは全くない反応を用いることも研究されている。』
• 花崗岩（granite）�A
  『珪長質粗粒完晶質火成岩。カリ長石・石英・斜長石（ほぼオリゴクレース）および有色鉱物を主成分とする。有色鉱物はふつう黒雲母で、ときに角閃石や白雲母、ざくろ石を含む。副成分鉱物として、ジルコン・磁鉄鉱・イルメナイト・りん灰石・チタン石などを少量含む。狭義には、IUGS火成岩分類委員会の提案によれば、石英、カリ長石および斜長石の三成分のモード比（体積比で）石英を20〜60％含み、斜長石/（斜長石＋カリ長石）比が10〜60％の深成岩。流紋岩とほぼ同じ化学組成を有する。広義には、石英を含む深成岩類の意味で花崗岩類あるいは花崗岩質岩石として使用。花崗岩類は斜長石、カリ長石および石英のモード比によって、アルカリ花崗岩・花崗岩・花崗閃緑岩・トーナル岩および石英閃緑岩などに分類。花崗岩の多くは中粒〜粗粒であるが、平均粒径が1〜0.1mm程度と個々の鉱物が肉眼で識別しにくいような場合にはマイクロ花崗岩と呼ぶ。成因論に関しては、古くは花崗岩化作用と呼ばれる交代変成作用によって生成するとする考えもあったが、最近では、大部分はマグマから固結したものと考えられるようになってきた。マグマの生成に関与した物質の性質に着目して、Sタイプ・Iタイプ・Aタイプ・Mタイプの系列が提唱されている。さらに磁鉄鉱の有無と量に基づき、磁鉄鉱系とチタン鉄鉱系に分けられる。花崗岩は造山帯および非造山帯を問わず大陸に広く分布し、大陸地殻を構成する。バソリスとして広く分布するほか、ストック状の岩体として累帯深成複合岩体を形成したり、火山岩と複合岩体をなす。花崗岩という用語は16世紀にさかのぼるが、正しい地質学的な地位はJ.HuttonとJ.Hall（1970）が確立。graniteはラテン語で「粒」を意味するgranumに由来。〔参〕高橋正樹（1985）、地質学論集、25号。〔今岡照喜・青木　斌〕』
  花崗岩（granite）�C
  『この非常によく知られている深成岩の名は、イタリア語のgranitoから各国語に取り入れられたものである。これはgrano（粒状にされた）の過去分詞形の形容詞で、もとはラテン語のgranum（穀粒）である。さらには「十分成熟した」の意の印欧語の語幹にに由来する。このgranumからは英語のgrain（穀粒）となっており、その指小語からはgranule（細粒）が派生し、コーヒーなどに入れるグラニュー糖はgranulated sugar（細かくされた砂糖）のことである。なお形は大きくちがっているが、corn（穀物の総称→とうもろこし）も語源的にはgraniteと類縁関係にあたる。
  　穀粒の意味が岩石の名前になっているのは、いうまでもなく、粒度の粗い鉱物の集合体であることが誰にも認められるためで、かなり広い範囲の岩石をさしたようであるが、これを石英・長石・雲母からなる粗粒岩の名として定義したのは、ドイツのウェルナー（1787年）である。彼の水成論の体系では花崗岩は地球の始源の大洋の底に最初に沈殿した岩石であった。これに対してイギリスのハットンは火成説を唱え、1785年スコットランドで花崗岩の岩脈が堆積岩を貫くところを発見して、その説を立証したことはよく知られている。
  　花崗岩の名は中国ではなく、日本で恐らく江戸時代に作られた岩石名らしく、幕末から明治初期の辞書・地質学書にgraniteの訳として「花崗岩」をあて、またこれにミカゲイシと仮名をふっている例が多い。花剛石と書いている場合もある。いうまでもなく御影は、現在の神戸市の六甲山麓の地名で、六甲山塊の花崗岩が石材として京阪地方でよく用いられたところから、この種の岩石の総称となったものである。天正17年、豊臣秀吉が京三条大橋を架けさせたさいの橋脚の石柱にも摂津国御影と刻まれている。
  　花崗の字の意味はさだかでないが中国の章鴻�ｻは「石雅」（民国7年・1921）の中で、もと花石という石の名があり、美麗な文様のある石をさしていたが、それからさらに由来して花崗岩の名が日本で作られたとしている。花にして剛なる石ということで命名されたものかもしれない。なお現在の中国でも花崗岩の名を用いている。
  　Graniteは東西で古くから石材として用いられているが、その固さのゆえに英語には bite on granite （むだな努力をする）という熟語がある。
  　発想としては、日本語の「石にかじりついても」に似ている。この hard as granite（花崗岩のように固い・強情な）のいい方は、その建材としての知名度によるもので、花崗岩は安山岩などにくらべればむしろ風化に弱い。また Granite City は、普通、スコットランドのアバデーン市（北海油田の基地）をさし、ここでは街の主な建築物が、すべて花崗岩からつくられていることで、古くから有名である。』
  granite [petrology]�L
  『(a) In the IUGS classification, a plutonic rock with Q between 20 and 60 and P/(A+P) between 10 and 65. (b) A plutonic rock in which quartz constitutes 10 to 50 percent of the felsic components and in which the alkali feldspar/total feldspar ratio is generally restricted to the range of 65 to 90 percent. Rocks in this range of composition are scarce, and sentiment has been growing to expand the definition to include rocks designated as adamellite or quartz monzonite, which are abundant in the U.S. (c) Broadly applied, any holocrystalline, quartz-bearing plutonic rock. Syn: granitic rocks. −Etymol: Latin granum, “grain”.』
• 花崗岩マグマ（granitic magma）�A
  『花崗岩に似た組成のマグマ。花崗岩マグマの存在を疑問視する研究もかつてはあった。しかし現在では、花崗岩マグマは以下のようなさまざまな過程により形成されることが明らかにされている。１）マントルに起原をもつ玄武岩質マグマの結晶分化作用、２）安山岩質マグマの結晶分化作用、３）沈み込む海洋底地殻の部分溶融、４）玄武岩〜安山岩質下部地殻の部分溶融、５）地殻を構成する堆積岩などの溶融、６）マントルあるいは下部地殻に起原をもつ玄武岩〜安山岩質マグマと上部地殻を構成する花崗岩質物質との混合。一つの花崗岩体の形成には、これらが複合して関与していることもある。〔参〕牛来正夫（1975）、火成論、共立出版。〔加々美寛雄〕』
• 火山（volcano）�A
  『火山活動により地表付近に生じた特徴的な構造あるいは地形。ふつうは噴火活動によって生じた地形的高まり（火山体）をいうが、爆発や陥没によって生じた負の地形をも含めてよい。ローマ神話の火と鍛冶屋の神Vulcanに由来。〔荒巻重雄〕』
• 火山岩（volcanic rock）�A
  『地表あるいは地下浅所でマグマが急冷することによって生成された細粒もしくはガラス質の岩石。地表で固結したものを噴出岩とも。マグマの化学組成により珪長質岩、中性岩、苦鉄質岩に区分。爆発的噴火によって形成された火砕岩、穏やかな噴火によって形成された溶岩などを含む。〔高橋正樹〕』
• カ氏温度（Fahrenheit's temperature scale）�@
  『温度目盛の一種。記号は゜F。ドイツの物理学者ファーレンハイト（Fahrenheit, Gabriel Daniel, 1686.5.14-1736.9.16）が1724年に始めたもので、中国で華倫海の字を当てたため華氏ともよばれる。英米ではセルシウス温度とともに慣用されている。現用のカ氏温度F はセルシウス温度C とF ＝（9/5）C ＋32の関係にある。』
• 可視光線（visible radiation、visible light）�@
  『人間の目に光として感じる波長範囲の電磁波。波長範囲には個人差があるが、下限は360〜400nm、上限は760〜830nm程度である。波長によって、異なる色感覚を与える。』
  可視光線（visible rays）�I
  『可視光（visible light）ともいい、電磁波のうち、人間の目に光として感じる波長範囲のもの。波長範囲は個人差があるが、通常380〜780nmの波長をもつ光線をいう。波長によって異なる色感覚を与える。紫400〜435nm、青435〜480nm、緑青480〜490nm、青緑490〜500nm、緑500〜560nm、黄緑560〜580nm、黄580〜595nm、橙595〜605nm、赤605〜700nmとなる。380ないし400nmより短波長側は紫外部に続き、780nm以上は赤外部へ続く。光の検出には光電子増倍管、写真乾板などが用いられ、光量の測定にはシュウ酸第二鉄カリウムアクチノメトリー（potassium ferrioxalate actinometry）などが使われる。』
• 火成活動（火成作用）（igneous activity、magmatism）�A
  『地下深部でできたマグマが地表に噴出したり、地殻内に貫入すること、およびそれに伴う諸作用。火成作用とも。火成活動は火山活動（volcanism）と深成活動（plutonism）に大別される。〔端山好和〕』
• 火成岩（igneous rock）�A
  『地球内部に由来する高温の珪酸塩溶融体（マグマ）の固結によって形成された岩石。マグマ固結時の化学成分、温度・圧力およびマグマの冷却する速度により種々の岩相を生ずる。火成岩は、前者を反映する鉱物種、後者を反映する結晶成長に基づいた組織により分類される。特に後者は、マグマが地下深所で固結したか、地表付近に貫入したか、あるいは地表に噴出したかに関係する。〔加々美寛雄〕』
• 河成段丘（fluvial terrace）�A
  『河川に沿って片側または両側に分布する階段状の地形で、谷底平野が浸食の復活により河床より高く台地状になった地形。河岸段丘とも。成因を重視すれば河成段丘というのが適当。平坦面を段丘面と呼び、旧谷底の遺物で、旧河川堆積物に覆われることが多い。段丘面を境する崖を段丘崖と呼ぶ。一般に、高い段丘ほど形成期が古い。河成段丘はその地域の浸食営力の消長を記録しており、地形発達史・地殻変動などを考察する資料として重要。地殻変動が激しい日本ではほとんどの川に沿って河成段丘が発達し、現河床からの比高・縦断面形は地殻変動の指標となる。火山活動によって埋積された谷底が段丘化している場合もある。山地地域には、氷期の荷重の増大による堆積段丘も多い。〔太田陽子〕』
• 化石（fossil、organic remains）�A
  『過去の生物の遺体または遺跡が地層中に埋没・保存されたもの。化石という語は石化（petrification）に由来するが、石化は化石の必要条件ではない。化石の多くは生物の遺体がそのまま、あるいは鉱物質に置換されて、または印象として残ったもので、これらは遺体化石（remain、Uberrest（Uの頭に¨）、Korperfossil（最初のoの頭に¨））と総称される。古生物の遺跡（生活の産物）が残ったものが生痕化石である。古生物に由来するが、変質して形態的・構造的特徴を残していないもの（例；石油・石炭・リン鉱・褐鉄鉱など）は、ふつう化石から除外する。また化石（fossil）という語は、古生物とは無関係な無機的事象に対して、「過去の」を意味する言葉として転用される場合（例；化石景観、漣痕化石、地磁気の化石など）があるが正しい用法ではない。〔�竃�義夫〕』
  化石（fossil）�D
  『過去（地質時代）の生物の遺骸または生物が残した痕跡。遺骸としては、動物の骨格や殻、植物のセルロースなど生物体を構成していた硬組織、またはそれが他の物質に置換されたもの、あるいはその印象が残っているものが多い。ときには、氷漬けになったマンモスゾウやミイラ化した動物のように軟体部もそのまま保存されたものもある。これら生物体が保存されたものを体化石という。痕跡としては、生活活動の跡、例えば足跡・はい跡・かじった跡・巣孔など（これらを生痕化石という）があるほか、動物のふん、下等藻類がマットをつくって生育し、それに堆積物が積もって形成された堆積構造なども、すべて化石として扱われる。有機物も生物の痕跡なので分子化石と呼んで化石に含めることがある。数千年程度のごく最近の過去のものは、ときに半化石と呼んで、もっと古いものと区別することもある。〔鎮西清高〕』
  化石（fossil）�J
  『地層中に残された前世界の生物の遺骸および生活の痕跡。前者を生骸、後者を生痕とよぶ。つまり古生物を認識するための具体的な対象物。一般に硬い部分が残り、そのうえ石化（化石化作用）することが多いので、普通には化石という言葉が使われている。しかし石化は必要条件ではない。化石としては、（１）古生物の硬い部分が変化されずに残る場合もあり、（２）鉱物質によってその一部あるいは全部が置換されたものもあり、（３）古生物の実体は残らず、その印象だけが残る印象化石（impression fossil）もあり、（４）ツンドラの凍土中に冷蔵されたマンモスや琥珀中の花や昆虫のように軟らかい部分までも完全に保存されたものもある。通常、約１万年前以後の現世のものは半化石（subfossil）として区別するが、化石と現生生物の遺骸・遺物との境界は明確でない。ときに化石らしいが明瞭でないものが発見され、これは擬石（problematicum）とよばれる。また、一見化石のようだが、その成因が生物と関係のないものを偽化石（pseudofossil）といい、植物の葉状の鉱物結晶がこれにあたる。化石は、それが生活していた場所に保存されたか否かによって、原地性化石（autochthonous fossil）と異地性化石（allochthonous fossil）とに区別される。生痕や直立樹幹などのほかに、造礁サンゴ・海綿・ウミユリなどのように着生生活を営むものは産状によるとはいえ前者である場合が多い。』
  fossil (fos'-sil)�L
  『n. Any remains, trace, or imprint of aplant or animal that has been preserved in the Earth's crust since some past geologic or prehistoric time; loosely, any evidence of past life.
  adj. Said of any object that existed in the geologic past and of which there is still evidence.
  Cf: subfossil.』
  →『化石とは』のページを参照。
• 河川（river、stream、brook、creek）�A
  『地表面上のほぼ一定した流路を通って下方へ流れ、ついには湖海や他の河川に注ぐ水体と、その通路となる河道（river channel）を含めた総称。河川の河の字は黄河を指し、川は象形文字で普通の川をいう。各国語ともに川の大小により呼び名が異なるようであるが、用語上の基準は判然としない。〔高山茂美〕』
• 活断層（active fault）�A
  『定性的には「きわめて近き時代まで地殻変動を繰り返した断層であり、今後もなお活動すべき可能性の大なる断層」（多田文男、1927）と定義される。「きわめて近き時代」とは広義には第四紀、狭義には第四紀後期ないしさらに狭い時代範囲を指す場合があるが、明瞭には限定されていない。また、定義の後半は判断が困難で、通常活断層の認定には用いられない。断層活動には地震活動を伴う間欠急性変位型から非地震性クリープ型まであるが、前者が主。〔加藤定碵一〕』
  活断層（active fault）�E
  『第四紀（約200万年前〜現在）に活動した断層と一般的に定義されるが、厳密には「今後も活動する能力がある断層」という意味である。第四紀に活動したことが明白なものでも、一過性のもの、たとえば火山活動に伴ったものなどは今後繰り返して活動することはないと考えられるので除くほうが適当である。現在、日本では第四紀後期に活動した断層に限定する場合が多い。活断層のタイプ（逆断層、横ずれ断層など）、活断層の密度、長さなどから日本内陸および周辺海域の活断層は大きく12の活断層区に区分されている。活断層の長さをもとにそれから発生する地震の規模はある程度予想できる。（図・表：略）』
• カリウムミョウバン（potassium alum）�@
  『AlK(SO4)2・12H2O。正確には、カリウムアルミニウムミョウバン。ふつうミョウバンという場合は、このカリウムミョウバンを指すことが多い。無色の立方晶系結晶で、密度1.75g/cm³（20℃）。64.5℃で長時間放置する9H2Oを失い、92℃で結晶水中に溶ける。溶解度は5.57g（20℃）、14.53g（50℃）、41.52g（80℃）/飽和水溶液100g。古くから知られた化合物で医薬、紙のにじみどめ、染色の媒染剤などとして用いられている。』
  カリ明礬（みょうばん）（potassium alum）�A
  『KAl(SO4)2・12H2O。立方晶系、空間群Pa3、格子定数ao 1.2157nm、単位格子中4分子含む。結晶は立方体もしくは八面体だが、ふつう粒状・鍾乳状・粉状の塊。無〜白色、透明、ガラス光沢。劈開{111}にわずか、断口貝殻状。硬度2〜2.5、比重1.76。薄片では無色、光学的等方体、屈折率n 1.456。水に可溶。KをNH4が置換したものがチェルミジャイトで、固溶体をつくる。さらにAlをFe³⁺が置換するとローンクリーカイト（lonecreekite）となる。泥質岩、褐炭層の吹出し物にみられるほか、噴気孔などに昇華物としてもみられる。カリウムを含む明ばんから命名。〔吉井守正・松原　聰〕』
• ガリレイ（Galilei, Galileo）�@
  『1564.2.15-1642.1.8。ガリレオとよぶことも多い。イタリアのピサに生れ、18歳のときピサ大学に入り医学を学んだ。この頃、寺院の吊灯を見て振動の等時性を発見した。19歳で初めてユークリッド幾何学を学び、21歳でフィレンツェの父の家（ピサから移った）へ帰り、リッチ（Ostilio Ricci）にアルキメデスの自然学を学んだ。1589年ピサ大学教学教授となったが、そのはげしいアリストテレス主義批判のため反感を買い、1592年パドヴァ大学に移った。この頃から物体の運動について研究を始め、1604年までに物体の自由落下の距離が時間の2乗に比例することを見出し、間もなくこの法則から落下物体の速度は時間に比例すると結論した。1609年望遠鏡を製作しこれを天体研究に利用、1610年木星の衛星、土星の環、月面の凹凸、太陽の黒点などを発見し地動説に強力な支持をあたえた。同年フィレンツェの大公に招かれてのちは研究に専心した。しかし反対者が多く現われ、弁明の効なく1613年宗教裁判所によび出され、1616年地動説の放棄を命じられた。フィレンツェに帰り数年の後“世界の2大体系についての対話”を著わし、検閲を受けて出版したが、異議が出、1633年ローマに召喚、シエナ（Siena）の大司教の下に留められた。シエナを去るとき‘でも地球は動いている’とつぶやいたと伝えられる。同年12月以後フィレンツェの市外に住むことを辛うじて許され、余生をそこで送った。この間に力学に関する“新科学対話”を著わした。彼は慣性の法則に近い命題を述べているが、‘円運動の慣性’との分離が明確でなく、今日の意味の慣性概念には到達していない。科学研究法として普遍的数学的法則の定立（総合的方法）と経験的事実の数量的分析（分析的方法）とを説いて、科学の方法を確定しその理想を明確にした功績も大きい。』
• カール（cirque、glacial cirque）�A
  『氷食山地の谷頭部または山稜直下の山腹斜面にみられる椀形で一方に開いた谷。圏谷とも。アルプス地方の方言に由来するドイツ語。馬蹄形状の崖をなすカール壁と緩傾斜または平坦なカール底からなる。径1〜2kmの大きさのものが多い。カール底は逆傾斜し池沼をたたえることもある。成因については、カール氷河の周縁に生ずる深い割れ目（ベルクシュルント）の底部で起こる凍結破砕作用が急なカール壁をつくるという説と、氷河の流動に伴って底部で凍結破砕が起こり、これに氷体の重圧と氷体内部の回転運動が加わって盆状にくぼむカール底を生ずるとする説がある。もともと谷頭の集水域や緩傾斜面上の積雪のつくる雪窪に氷河が成長した場合にカールとなりやすい。カール底は氷河形成時の局地的な雪線高度を示すので、氷期の雪線復元などに利用される。北半球では日射と偏西風の影響で東および北斜面に多い。〔式　正英・林原陽子〕』
• カルスト地形（karst topography）�A
  『石灰岩や苦灰岩などの炭酸塩岩が分布する地域の地表と地下に形成される、二酸化炭素を含む雨水や土壌水による溶食システム。カルストの名は、石灰岩台地からなるスロベニアのクラス地方（Kras）が、ドイツ語でカルスト（Karst）と紹介されたことに由来。地表ではドリーネ、ウバーレ、ポリエなどの凹地形や、ピナクル群のあるカレンフェルト、円錐カルスト、フム、タワーカルストなどの凸地形が形成される。地表の水はシンクホール（吸込み穴）を通して地下水系に流入し、洞窟を形成。ポリエでは、カルスト湧泉として地下水が地表に現れ、末端でポノール（吸込み穴）に流下。特に熱帯多雨地域では溶食が速い速度で進み、コックピットが形成され、凸地が孤立して、円錐カルストやタワーカルストが形成される。（図：略）〔漆原和子〕』
  カルスト（karst）�E
  『石灰岩などの可溶性岩石の分布地域にみられる、主として雨水や裂か水の溶食作用によって形成された特異な地形。カルスト地形ができるためには、地下水面上にかなりの厚さの石灰岩層があること、石灰岩層に水の通路となる割れ目があること、降水量がある程度以上あることなどの条件がある。地表でみられるカルスト地形には、ドリーネ（doline）と呼ばれるおわん状の凹地や、隣接するドリーネが連合してできたと考えられるウバーレ（uvala）と呼ばれるより大きな凹地、円錐カルスト（cone karst）と呼ばれる円錐状の凹地形などがある。円錐カルストは熱帯や亜熱帯の高温湿潤地域に多くみられる。地下に発達するカルスト地形には、鍾乳洞（limestone cave、cavern）と呼ばれる裂か水の溶食作用によって形成された洞穴がある。鍾乳洞の中には裂か水の滴下によってできた鍾乳石（stalactite）や石筍（stalagmite）がみられる。カルスト地形の発達した地域はカルスト地域と呼ばれ、ヨーロッパではユーゴスラビア北西部が有名。日本では山口県の秋吉台、福岡県の平尾台、広島県の帝釈台などが有名。（写真：略）』
• カルデラ（caldera）�A
  『輪郭が円形またはそれに近い火山性の凹陥地で、普通の火口よりも大きいもの。ポルトガル語でcalderaとは「大鍋」を指す。火道に直接連なっている火口の大きさは、ふつう直径1kmを超えないといわれるので、それよりもはるかに大きな火山性の凹地は、火山の単純な爆発的活動で生じたものではないと考えられ、火口と区別しカルデラと呼ぶ。多くのカルデラは急な崖で取り囲まれている。内側の床は平坦な場合もあれば、後カルデラ丘や再生円頂丘によって占められている場合もある。爆発カルデラ・陥没カルデラ・浸食カルデラに大別されるが、世界の主なカルデラは陥没カルデラである。〔参〕H.Williams et al. (1979), Volcanology, Freeman, Cooper and Co.。〔荒牧重雄〕』
• 完新世〔Holocene（epoch）〕�A
  『第四紀を二分したときの、現在を含む地質時代最新の世。現世、沖積世とも。この時代の堆積岩や火成岩を現世統、完新統、沖積統という。始まりは、氷床の後退に伴って、氷河で運ばれたものではなく、現地性の陸成層が堆積を開始したときと定義。Neustadt（1967）はアレレード期の基底を提案。約1万年前。ほかに、スウェーデン中部のRagunda地方でスカンジナビア氷床が二つに分割したときとか、北米の五大湖地方でAlgonquin湖の消滅時などの提案がある。〔熊井久雄・中川久夫〕』
• 岩石（rock）�A
  『地球上層部（地殻および少なくとも上部マントル）を構成する物質。数種（まれに一種）の鉱物の集合体。火成岩・堆積岩・変成岩に分類されるが、量的には火成岩が圧倒的に多く、例えば20kmの深さまでの地殻をとると95％以上が火成岩だといわれる。地球が全体として液体になったことがあれば、より深部はすべて火成岩だが、そうでなければ隕石物質の再結晶した変成岩。鉱石は有用金属を多量に含む特殊な岩石。石炭・岩塩なども特殊な岩石。〔端山好和〕』
  rock�L
  『(a) An aggregate of one or more minerals, e.g. granite, shale, marble; or a body of undifferentiated mineral matter, e.g. obsidian, or of solid organic material, e.g. coal. (b) Any prominent peak, cliff, or promontory, usually bare, when considered as a mass, e.g. the Rock of Gibraltar. (c) A rocky mass lying at or near the surface of a body of water, or along a jagged coastline, esp. where dangerous to shipping. (d) A slang term for a gem or diamond.』
  →『岩石の種類』のページを参照。
• 岩石学（petrology）�A
  『岩石の成因を研究する学問。岩石研究の初期には肉眼・ルーペ・簡単な化学分析により、19世紀後半〜20世紀初めには偏光顕微鏡により、記載・分類が行われた（記載岩石学）。19世紀後半から岩石の産状・随伴関係などの記載岩石学の成果と珪酸塩系の人工実験を基礎に成因論的研究が始まった。第2次大戦までは火山岩の晶出分化作用の研究が中心だったが、戦後高圧実験が行われ、熱力学の導入、同位体地質学の発展などに支えられ、マグマの生成の問題や変成作用の物理条件の解析、変成帯の発展史などが中心テーマとなっている。〔端山好和〕』
  岩石学（petrology）�C
  『ギリシャ語petra（岩→石油）と-ology（学問）。後者は-logia、-logosに由来し、「（特定のやり方で）話す人→（特定の話題を）扱う人」の意である。1811年ピンカートンがpetralogyとして使ったのが英語として最初だという。
  　その後、綴りがpetrologyとまちがえられたが、そのままつかわれている。』
• カンブリア紀〔Cambrian（period）〕�A
  『古生代の最初の地質時代。先カンブリア時代に比べて生物の種類・個体数ともに爆発的に多くなる。名称は模式地の英国ウェールズの古い呼称、カンブリアに基づく。ふつう初・中・後の3世に細分されるが、これはヨーロッパ、北米においては三葉虫のOlenellus−Paradoxides−Olenusという変化に対応している。生物界は三葉虫のほかに、無脊椎動物の大部分の門が出現し、なかでも海綿類とサンゴ類の中間的性質をもつArchaeocyathus、無関節、キチン質腕足類Lingulella・Obolellaなどは有名。植物は藻類が主。陸生植物は胞子が発見されているのみではっきりしない。〔中村耕二〕』
• γ線（γ-rays）�@
  『波長の短い電磁波で、長波長の限界ははっきり定まっていないが、0.1Å以上まで含められることが多く、X線とかなり重なる。原子核、素粒子のエネルギー準位間の遷移や素粒子の対消滅、対生成などによって放出・吸収される。透過力が強く、電離作用、写真作用、蛍光作用はX線よりはるかに小さいので検出がむずかしい。ベクレルによるウランの放射能発見（1896）、キュリー夫妻によるラジウムの発見（1898）以来、α線、β線とともに放射線の1つとしてよく知られ、医療用としてがんの治療その他に用いられている。工業上では、鋳物や溶接部の内部欠陥の探知が重要な用途である。放射性同位元素が多量に作られるようになって、用途は急速にひろがりつつある。メスバウアー効果の発見により、磁性など物性研究にも広く利用されている。』
• γ崩壊（γ-decay）�@
  『原子核の放射性崩壊の一種で、光子（γ線）が放出される現象。素粒子の同様な崩壊を含めることもある。核反応、α崩壊、β崩壊などの結果生ずる原子核の多くは励起状態にあり、ひきつづいてγ崩壊を行なうものが多い。このとき原子番号や質量数は変化しない。崩壊前の核 i 、崩壊後の核 f 、および放出された光子の角運動量をそれぞれ Ii、If、L、パリティをそれぞれΠi、Πf、Πとすれば、角運動量合成則およびパリティ保存則
  　｜Ii −If｜≦ L ≦Ii ＋If、Πi ＝ΠΠf
  によって選択則が与えられる。ただしL≠0で、Ii ＝If ＝ 0 は絶対禁止である。角運動量がLで、Π＝（-1）^Lの場合を電気 2^L極放射、Π＝（-1）^L+1の場合を磁気2^L極放射という。Lは多重度ともよばれる。一般に放出される光子のエネルギーが大きく、Lが小さいものほどおこりやすい。光子の波長が核半径にくらべて十分大きければ、許される最小のLのものがふつう最大の寄与をする。たとえばスピンが2、パリティが＋の準位の間の遷移では、磁気双極子放射と電気4重極放射がこれに相当し両者の混合比は原子核の構造に関する知識を与える。

【き】

• 紀（period）�A
  『地質学的な年代区分の単位。世より大きく、代より小さい。例えば、新生代は第三紀と第四紀からなり、第四紀は更新世と完新世に分けられる。年代層序区分の系に対応。各紀は、化石を手がかりとし、古生物の進化に基づいて区分されている。各紀の長さは、第四紀を除いて、おおよそ4,000万〜8,000万年。現在、カンブリア紀・オルドビス紀・シルル紀・デボン紀・石炭紀・ペルム紀・三畳紀・ジュラ紀・白亜紀・第三紀・第四紀の各紀が、一般に認められ、汎世界的に適用されているが、一部についてはなお異なった見解や使用がみられる。紀や世の境界の模式地とその年代については国際的な共同研究が行われており、適宜その結果が公表されている。〔山田一雄・坂本　亨〕』
• 期（age）�A
  『地質年代単元の最も低位の単位。世（せい）の下位に当たる。世界的な標準年代単元としても、地方的な年代単元（例えば下末吉期・立川期など）としても用いられる。年代層序単元の階に対応し、ある階の形成期間を示すものとして期が制定された。各期は、第三紀以前では主に化石に基づいて区分されるが、第四紀では気候変化に関連した事象が主要な基準となる。〔坂本　亨・芝　正博〕』
• 気圏（atmosphere）�A
  『地球を取り巻く大気の部分。対流圏・成層圏・中間圏・電離圏（熱圏）に区分。その総量は、1kg/cm²（水銀柱760mm）程度しかないが、動きが速いのと変化がすぐ現れるので、人間生活にとって重要。主成分のN2はあまり変化しないが、二十数億年前から蓄積しはじめたO2は、地球表層部の状況を決める最大の因子である。水蒸気とCO2は、その赤外線吸収効果により対流圏を暖めている。また、大気は熱や水のはか多くの物質を運んでいる。〔角皆静男・丸山健人〕』
  atmosphere (at'-mo-sphere)�L
  『(a) The mixture of gases that surrounds the Earth, being held thereto by gravity. At altitudes below 80 km, it consists of a relatively uniform concentration by volume of 78％ nitrogen, 21％ oxygen, 0.9％ argon, 0.03％ carbon dioxide, and minute quantities of helium, krypton, neon, and xenon. The atmosphere is so compressed by its own weight that half of its mass is below 5.5 km from the Earth's surface. (b) A unit of normal or standard pressure at sea level. Syn: air.』
• 気象庁震度階（JMA intensity scale）�A
  『地面の揺れを表すために気象庁が指針として用いている8階級の震度階。震度�Wを中震として、弱いほうに向かって弱震（�V）、軽震（�U）、微震（�T）、強いほうに向かって強震（�X）、烈震（�Y）、激震（�Z）、これに地震計のみに感じる無感（0）を加えた8階級である。震度�Zは1948年の福井地震を契機につけ加えられ、95年1月17日の兵庫県南部地震において初めて適用された。さらに兵庫県南部地震後、震度�Xと�Yはそれぞれ強・弱に二分され、地震の揺れをより細かく表現できるように改訂されている。地震計による震度の測定も検討されているが、あくまで基本は人体感覚と建物の倒壊状況である。〔菊地正幸〕』
• 季節風（monsoon）�A
  『季節を代表するに足るほど十分高い出現度をもち、大気大循環の風系にふさわしいほどの広い地理的空間を占め、季節が変わると風向がほぼ反対になるような風。モンスーンは、アラビア語で季節を意味するマウシム（mausim）から出た言葉で、昔はアラビア海の冬半年の北東風と、夏半年の南西風に用いられた。季節風は、大陸と海洋、極と赤道、北半球と南半球の間の季節的変化によって形成される。東南アジアやインドでは、モンスーンは夏の季節風のもたらす雨季を意味することが多い。〔倉嶋　厚〕』
• 気団（air mass）�A
  『広い範囲にわたってほぼ一様の性質をもつ大気の塊。気団の特性は、海洋・砂漠・大平原・大雪（氷）原など、ほぼ一様な性質の地球表面上に大気が長時間滞留するときに、大気と地球表面との熱・水蒸気などの授受によって形成される。気団は発源地から別の地表面上に移動すると、新しい地表面の影響を受けて変質する。気団はその発源地によって、熱帯気団・寒帯気団・大陸性気団・海洋性気団・シベリア気団・オホーツク海気団・小笠原気団などと分類される。大気大循環は気団の移動と変質によって営まれる。〔倉嶋　厚〕』
• 軌道電子捕獲→電子捕獲
• 希土類元素（rare earth element）�A
  『周期表の第3族のうち、原子番号57〜71番の15元素（Lanthanoid、ランタン系列）の総称。REEとも。ScとYを加え17元素を指す場合もある。また軽希土類元素（LREE：La・Ce・Pr・Nd・Pm・Sm・Eu）と重希土類元素（HREE：Gd・Tb・Dy・Ho・Er・Tm・Yb・Lu）に分けたり、Sm〜Dyを中希土類元素と呼ぶこともある。化学的性質の類似性から、相伴って産することが多い。地球化学的解析手法に、試料中のREE存在量をコンドライト中の存在度との比で表し、原子番号順に並べるMasuda-Coryell plotがある。原子番号が増加するにつれ、電子は最外殻軌道でなく内部の4f軌道に充填されるため、イオン半径は系統的に減少し、希土類元素存在度パターンは滑らかな変化を示す。希土類元素はさまざまな工業素材に添加される重要な資源であり、大陸地域のカーボナタイト／アルカリ岩鉱床と大陸周辺部の砂鉱床が主要な鉱床となっている。日本では福島県石川地方や岐阜県苗木地方に多くの希元素鉱物の産出が報告されているが、資源となるだけの量は産しない。フッ化セリウム石（ハロゲン塩）・フェルグソナイト（酸化物）・バストネ石・シンキス石・パリサイト（以上炭酸塩）・モナズ石・ゼノタイム（以上リン酸塩）・ガドリン石・褐れん石（以上珪酸塩）等に濃集。鉱床はカーボナタイト鉱床（バストネ石）・漂砂鉱床（モナズ石・ゼノタイム）・風化残留鉱床（花崗岩風化殻中のイオン吸着型）・マグマ性リン鉱床（りん灰石に固溶）など。発火合金・石油精製用触媒・光学ガラス材・研磨材のほか希土類蛍光体・強磁性材・磁気バブルメモリ材・中性子吸収材などに中希土の需要が増大。世界年産量はREO換算で6万t（1992）、主産国は中国（35.6％）・米国（34.5％）・旧ソ連（13.3％）・オーストラリア（6.4％）・インド（6.4％）。〔平野英雄・田中　剛〕』
• キュリー点（Curie point）�E
  『強磁性物質は温度が上昇すると熱振動により電子スピンの配列がくずれ、おのおのの強磁性物質固有の温度で自発磁化が消滅する。この温度をキュリー点と呼ぶ。キュリー点は飽和磁化の温度変化を熱磁気分析で測定することによって求められる。キュリー点は各強磁性物質固有の温度であり、固溶体の場合組成とともに連続的に変化することが知られている。一般に岩石中に含まれる強磁性鉱物はチタノマグネタイトであるが、そのキュリー点は図（略）のようにさまざまである。キュリー等温面法ではマグネタイト（Fe3O4）のキュリー点573℃が用いられることが多い。』
• 恐竜類（学名 Dinosauria、dinosaurs）�A
  『中生代に繁栄し絶滅した陸上爬虫類の一群で、最近の研究では恐竜上目という分類群を構成するとされ、竜盤目と鳥盤目に区分される。竜盤目は、恥骨と座骨が腸骨の前下方と後下方にのび、二足歩行・肉食性の獣脚類と四足歩行・草食性の竜脚類がこれに属する。鳥盤目は恥骨と座骨が平行に腸骨の後下方向にのび、二足歩行の鳥脚亜目と四足歩行の剣竜・角竜・曲竜亜目が属し、すべて草食性。1970年代からの恐竜研究は、分類学主体から生物学的に見直されるようになり、新しい知見が加えられるようになった。例えば、恐竜温血説、恐竜と鳥類の類縁関係、恐竜の病理、恐竜の大陸間移動、恐竜の行動様式（主に足跡化石の研究）、恐竜の子育てなどである。また恐竜の絶滅の原因についても、隕石衝突説などが議論されている。日本においても、1970年代末から、各地の白亜系を中心に恐竜化石が発見されるようになった。特に、北陸地方の手取層群や中部九州の御船層群から多量の恐竜化石が発見されている。恐竜という用語は、1842年英国のR.Owenによって創設されたもので、ギリシア語のdeinos（恐ろしい）＋sauros（トカゲ）に由来。〔東　洋一・小畠郁生〕』
  恐竜（きょうりゅう）�K
  『ジュラ紀中期に初めて出現し、食性・形態・大きさに関してきわめて多様に分岐し、全世界に分布して繁栄し、白亜紀後期に絶滅した化石は爬虫類の通俗名。骨盤の形態によって竜盤類と鳥盤類に分類し、約350種が知られる。』
• 曲流⇒蛇行
• 銀河�@
  『[１]（Milky Way、Lactic Way、Galaxy）
  銀河系、または天球上の天の川をいう。
  [２]（galaxy）
  われわれの銀河系の外には、銀河系と同格な、星や星間物質の集まった多数の天体がみられ、銀河系外星雲あるいは単に星雲とよばれているが、星雲の語は銀河系内の星雲とまぎらわしく、現在では銀河ということが多い。ふつう10億個から1兆個ぐらいの星の集団で、直径は1万から10万光年程度である。望遠鏡で見られる銀河の形はさまざまであるが、その大部分は渦巻星雲か楕円星雲またはレンズ型星雲（S0星雲）のいずれかであり、このほか不規則性運、楕円矮星雲などがある（これらの星雲を、たとえば渦巻星雲を渦巻銀河のようにもよぶ）。肉眼で見えるのはアンドロメダ星雲やマゼラン雲などにすぎないが、大口径望遠鏡では平均200万光年程度の距離をおいてほとんど無数に観測されている。銀河は、ところどころに大小の銀河群や銀河団をつくっている以外は、どの方向にもほぼ一様に同じ密度で分布している。遠距離の銀河の吸収スペクトルは赤方偏移を示し、銀河系から後退していることを示している。銀河の年齢は約100億年であり、自己重力で集まった恒星とガスの集合体である。銀河は膨張宇宙のなかでの密度のゆらぎの成長によって形成されると考えられている。原始銀河雲は水素とヘリウムとからなるが、星の生成と進化の結果、超新星爆発などを通じて重元素が増加していく。初期にもっていた角運動量などの力学的性質の違いによって、星の生成が速くおこったものは楕円銀河に、ゆっくりとおこったものは渦巻銀河になると考えられる。銀河系の構造と星の種族との関連をはじめとして銀河の進化は恒星進化論をもとに組みたてられる。渦巻銀河の構造は重力と遠心力とのつりあいで決まり、恒星はほぼ円運動をしているのに対し、楕円銀河はその扁平度を説明するだけの回転はなく恒星の軌道はより複雑である。銀河の中心部には恒星の密集した中心核とよばれる部分がある。全銀河の数％はセイファート銀河、電波銀河、BL Lac天体などのような激しい活動を示す。この活動性は中心核の中心に存在する太陽質量の10⁸倍程度の大質量ブラックホールによるという説が有力である。』
• 銀河系（Galaxy）�A
  『太陽系が所属している銀河。太陽質量の約2,000億倍の恒星と星間物質などからなり、中央部が膨らんだ、直径約10万光年の円盤形をした渦巻型銀河である。円盤部を包むハロー（halo）には百数十個の球状星団が分布する。太陽系は銀河中心から2.8万光年離れた円盤部にあり、220km/sで公転している。中央部の球状の部分はバルジ（bulge）と呼ばれ、厚みは約1.5万光年、円盤部の厚みは太陽近傍で約5,000光年。円盤部には恒星やガス・塵が集中しており、恒星の平均分布密度は10光年立方当り3個程度、ガス・塵などの星間物質は銀河系全質量の10％程度である。円盤部では年齢の若い種族�Tの星が多く、バルジやハローには老齢の種族�Uの星が多い。球状星団やマゼラン雲の運動から、銀河系の可視部分を包む太陽質量の約2,000億倍の暗黒物質（dark matter）が存在すると考えられるが、実態は明らかでない。〔黒田武彦〕』
• 均衡異常（isostatic anomaly）�A
  『観測重力値に海面上の質量の影響と地殻均衡説に基づく補償質量の影響を補正して得られる重力値から、標準重力値を差し引いて得られる重力異常。アイソスタシー異常とも。地殻において地殻均衡説が完全に成り立っておればこれはゼロになるべき性質のもの。事実、高度異常・ブーゲー異常に比べって均衡異常は小さな値となる。しかし、必ずしもゼロではなく、均衡異常の存在は地殻均衡が成り立っていないことを示す。〔藤井陽一郎〕』
• 均衡補正（isostatic reduction）�A
  『均衡異常を求めるため補償質量分の影響を観測重力値に加える補正。J.F.HayfordとW.Bowieは1912年、プラット説に基づき、観測点のまわりの放射線と同心円に囲まれた区間の平均高度および地殻密度とを使って均衡補正を求める方式を確立。これに対し、W.A.Heiskanenはエアリー説に基づく方式を38年に確立。いずれの方式でも均衡面の深さは初めに仮定しなくてはならない。〔藤井陽一郎〕』

【く】

• 空間群（space group）�A
  『三次元の周期構造をもつ結晶の空間格子を求めると14のブラベ格子のいずれかになる。また、一つの格子点のまわりの原子配列の可能な対称は、32の点群のいずれかになる。以上の両者を組み合わせて、一つの点のまわりの対称の要素に並進を含む対称（らせん軸と映進軸）を加えると、この組合せは230通り存在する。点群と同様、この対称操作は群の性質をもっている。これを空間群という。〔河原　昭〕』
• クェーサー（quasar）�@
  『写真観測では恒星状に見えるがスペクトル線が大きな赤方偏移を示すので、宇宙論的距離にある銀河の活動的中心核と考えられている天体。1963年シュミット（B.Schmidt）によって電波源3C273がはじめてこの種の新しい天体として同定された。現在では数千個のクェーサーが知られている。QSO（quasi-stellar object）ともよばれる。水素のパルマー線などは幅の広い輝線を示し、セイファート銀河と類似の性質を示す。また赤外線、紫外線、X線なども強く、セイファート銀河よりも10倍から100倍くらい明るい。クェーサーの数％は非常に強い電波を放出しているが、大部分は電波は弱い。』
• 雲（cloud）�A
  『空気中に浮かぶ水滴または氷晶の集りで目に見えるもの。霧とは地表面との関係のみで区別される。自由大気中にあっては、上昇気流中の水蒸気の凝結または昇華の結果、あるいは霧の接地部分が気化した場合に生ずる。雲は空気中に浮遊する粒子上に水蒸気が凝結して生じ、-15℃くらいまで液体の水の粒子として存在するのが普通である。〔吉村　稔〕』
• クラーク数（Clarke number）�A
  『地表付近におけるそれぞれの元素の平均存在度をパーセントで表した数値。F.W.ClarkeとH.S.Washington（1924）は火成岩の分析例のうちから5,159個の分析を正確なものと評価、この単純な平均値を地下16kmまでの岩石圏の化学組成とみなして、これに海水と大気を合算して地球表層部の平均化学組成を算出した。この種の数値にクラーク数の名を与えたのはA.E.Fersman（1933）である。現在この語は元素の地殻存在度の意味に用いられたり、地殻に限らず、一般的に元素の存在度と同義に用いられたりしているが、1924年当時と異なり、地殻の概念が確立された現在、この語の使用は避けたほうが望ましい。〔松井義人〕』
• クラトン（craton）�A
  『ふつう、カンブリア紀以前に安定化した大陸地殻の一部を指し、楯状地と卓状地を合わせた地域に相当する。剛塊とも。先カンブリア時代のより古い時代に安定化した地域を、より後期の変動帯と区別する意味で用いることもある（例えば始生代クラトン）。造山帯に対立する概念として、L.Kober（1921）がKratogenと提唱したものを、H.StilleがKratonに改めた。造山（変動）帯が安定化することを剛塊（クラトン）化という。Koberは大洋地域もまた安定地域と考えたので、大陸のそれを高位クラトン（Hochkraton）、大洋のそれを低位クラトン（Niedrigkraton）と区別したが、この区別は用いられていない。kratosは、ギリシア語で「強さ」を意味する。〔参〕L.Kober（1921）, Der Bau der Erde, Borntraeger。〔山下　昇・加納　隆〕』
  craton (cra'-ton)�L
  『A part of the Earth's crust that has attained stability, and has been little deformed for a prolonged period. As originally defined, cratons included parts of both continents and ocean basins, but modern knowledge of the ocean basins indicates that existence of cratons there is unlikely, so the term is now restricted to continental areas of largely Precambrian age. The extensive central cratons of the continents, including both shields and platforms, have been called hedreocratons. Parts of the more mature Phanerozoic fold belts have now achieved, or are approaching, a cratonic condition. Also spelled: kraton.』
• グラニュライト（granulite）�A
  『ドイツSachsen地方に分布する長石・石英・ざくろ石を主とし細粒等粒状の変成岩で、雲母・角閃石を欠くために片理の未発達な岩石につけられた名称。白粒岩とも。C.S.Weiss（1803）命名。その後この岩石はグラニュライト相に属することがわかり、現在ではグラニュライト相の等粒状岩石をグラニュライトと呼ぶようになった。そのため、輝石グラニュライト、珪長質グラニュライトなどの呼び名が必要。一般には含水鉱物よりも無水鉱物に富み、高温のグラニュライトでは含水鉱物が出現しない。苦鉄質岩や珪長質岩では特徴的に斜方輝石を含む。泥質岩では白雲母を欠き、斜方輝石・ざくろ石・菫青石などが含まれる。グラニュライト相の変成岩であっても、大理石や超苦鉄質岩をグラニュライトとは呼ばない。チャーノッカイト、マンゲライト、エンダーバイトなどの花崗岩〜トーナル岩質の組成をもつ岩石も斜方輝石を特徴的に含むが、それらを火成岩とみなす議論もある。フランスではA.Michel-Levy（後ろのeの頭に´）（1874）以来、白雲母花崗岩の意に用いることがある。北欧のレプタイト、フランスのレプチナイトもグラニュライトと同義。〔端山好和・小山内康人〕』
  granulite〔ign〕（gran'-u-lite）�L
  『A muscovite-bearing granite, esp. in the French literature. Obsolescent; not recommended usage.』
  granulite〔meta〕
  『(a) A metamorphic rock consisting of even-sized, interlocking mineral grains less than 10% of which have any obvious preferred orientation. (b) A relatively coarse, granular rock formed at the high temperatures of the granulite facies, which may exhibit a crude gneissic structure due to the parallelism of flat lenses of quartz and/or feldspar. The texture is typically granuloblastic.』
  granulite〔sed〕
  『A sedimentary rock composed of sand-sized aggregates of constructional (nonclastic) origin, simulating in texture an arenite of clastic origin; e.g. a rock formed of lapilli or of oolitic grains. The term was introduced by Grabau (1911, 9.1007). Syn: granulyte.』
• グラニュライト相（granulite facies）�A
  『角閃岩相よりも高温で輝石ホルンフェルス相よりも高圧の変成相。白粒岩相とも。さらに高圧ではエクロジャイト相となる。P.Eskola（1929）提唱。典型的なグラニュライト相は角閃石や雲母のような含水鉱物を欠き、比較的パイロープ成分に富むざくろ石や斜方輝石の出現が特徴。苦鉄質岩では温度上昇過程で角閃岩中のホルンブレンドが分解して斜方輝石・単斜輝石・斜長石になるが、角閃岩相とは漸移的である。ホルンブレンドの分解は、全岩化学組成などさまざまな要因により広範な温度範囲をもつ。したがって斜方輝石が出現しはじめるところをもってグラニュライト相の始まりとしているが、低温のグラニュライト相（角閃石グラニュライト亜相）では、斜方輝石は一般にホルンブレンドと平衡に共存する。さらに高温では無水鉱物だけからなる輝石グラニュライト亜相となる。泥質岩では、白雲母は安定に存在せず、黒雲母も分解して斜方輝石・カリ長石・ざくろ石・菫青石が形成される。アルミノ珪酸塩鉱物は一般に珪線石である。このようなグラニュライト相変成岩を形成する脱水反応は、温度上昇のほか、H2Oの活動度の低下でも説明される。インドや南極などの高温・高圧のグラニュライト地域では、サフィリン＋石英、斜方輝石＋珪線石＋石英などの鉱物共生や大隈石の出現が特徴的。苦鉄質岩・泥質岩ともに、グラニュライト相では部分溶融する可能性が高い。この相の岩石は、先カンブリア時代の古い造山帯の中心部に広い面積を占めて分布していることが多いが、顕生代の造山帯の特に高温変成域にも多産する。インド半島、アフリカ、南極大陸、オーストラリア、グリーンランドなどに産するチャーノッカイトもこの変成相に属する。日本では日高変成帯、阿武隈変成帯、黒瀬川構造帯、肥後変成帯などに分布が知られており、飛騨変成帯や領家変成帯でも出現する可能性が指摘されている。また、二上山や雨滝山などの新生代火山岩中の捕獲岩としても多数出現する。〔端山好和・小山内康人〕』
  granulite facies
  『The set of metamorphic mineral assemblages (facies) in which basic rocks are represented by diopside + hypersthene + plagioclase, with amphibole generally minor in amount. Almandine is characteristic of basic and pelitic rocks. Pelitic assemblages show the association of sillimanite or kyanite with perthitic feldspar and almandine, often also with cordierite; muscovite is absent and biotite small in amount. The facies is typical of deep-seated regional dynamothermal metamorphism, at temperatures in excess of 650℃. Cf: pyroxene-hornfels facies.』
• クレーター（crater）�A
  『ギリシア語で「コップ」あるいは「お椀」を意味するχρατερび由来する語で、ガリレオが月の円形の凹地に対して命名。現在では、地球を含めた太陽系の惑星、衛星の円形の凹地に対して、成因には関係なく一般的に使われる。大きさは直径1m以下のものから2,000km以上のものまである。成因がはっきりしている場合には、火山性クレーター・衝突クレーターのように使うのが望ましい。〔白尾元理〕』

【け】

• 系統樹（けいとうじゅ）�K
  『分類群は多様化の結果生じたとの考えにもとづき、相互にどのような類縁関係をもっているかを、幹から枝分かれする樹木の形で表現したもので、枝の分岐点が種分化（あるいは系統的分化）の起こったことを示す。系統樹を含め、関係を樹木の形で表現するすべての図を樹状図という。』
• 結晶（ctystal）�@
  『空間的に周期的な原子配列をもった固体物質で、空間格子構造をとる。天然の水晶など典型的な結晶は特定の結晶面や軸を示し、面角（結晶面のなす角度）や面の方位（面指数）の間に物質固有の対称性、規則性をもつ。これは結晶中の原子の周期的規則配列に由来する。たとえば結晶面、あるいは空間格子の格子面は必ず原子の配列面に相当する。X線回折などによって周期性の単位である単位格子（単位胞）の大きさや形や原子配置を決定でき、結晶の種類に従って格子定数ないし結晶データとして整理されている。金属結晶などは必ずしも結晶学的外形を示さず、また多結晶集合体として存在するものも多い。一方、ポリエチレンなどの高分子材料やヘモグロビン、ウイルスなどの生体高分子物質も結晶を形成することがある。結晶は晶系、点群などによって理想的に分類されるが、実在の結晶には、不純物原子、原子空孔、転位、積層不整、結晶粒界、小傾角粒界などの格子欠陥が存在する。大きなできるだけ完全な結晶を作成する技術は工業上重要である。多結晶体中の結晶の方位配列の異方性や結晶中の格子欠陥の不均質分布状態を結晶集合組織という。ブラッグ反射（X線の反射）など結晶の回折現象に関連して、消衰効果、異常透過などの特異な問題がある。』
  結晶（crystal）�A
  『物質のうち原子の規則正しい周期的な配列から成り立っているものを結晶という。結晶に対してこのような周期的な配列をもたない物質を非結晶（ガラス）という。原子が周期的に配列している結果として、結晶は規則正しい平面によって取り囲まれた形態をとる。これらの平面を結晶面といい、原子が配列している結晶内のいくつかの主要な平面（原子網面）に平行である。結晶には対称の要素があり、これによって結晶形態では32の晶族、結晶構造では230の空間群に分類される。これらはまた、その座標軸のとり方によって七つの結晶系に配属される。結晶の化学組成は通常一定で均質であり、また、その物理的性質は方向によって異なる。これを異方性といい、光学的性質・結晶面の発達や成長・膨張率などにみられる。原子配列の方位がそろっている部分だけから成り立っている一つの結晶を単結晶という。二つ以上の結晶が規則的な関係で接しているものを双晶という。また方位がでたらめな無数の細かい結晶が集合している場合を多結晶（または粉末結晶）という。以上を総括して顕晶質結晶という。これに対して顕微鏡下でようやく結晶の集合と判定できる程度の微細なものを微晶質結晶という。〔高野幸雄〕』
  結晶（crystal）�I
  『固体であって、その内部構造が三次元的に構成原子（またはその集団）の規則正しい繰返しでできているものをいう。狭義には一定の外形をもつ単結晶を指すこともある。結晶はその対称によって七つの結晶系のどれかに属する。一般に方向によって性質が異なる（これを異方性という）。そのような性質としては屈折率、光の吸収、弾性率などの力学的性質、誘電率や電気伝導度などの電気的性質などがある。熱分解などの化学変化を起こさない場合には明確な固有の融点をもつので、物質同定の目的に使われる。構成する単位によって、金属結晶、イオン結晶、分子性結晶に分類され、さらにダイヤモンドのような共有結合結晶、氷のような水素結合結晶を上の分類に加えることがある。いろいろな性質に注目した分類も便宜的に行われている（単軸結晶と複軸結晶、絶縁体結晶、強誘電性結晶など）。結晶の構造は生成条件によって異なる場合があり（多形の現象）、それらが相互に、あるいは一方向のみに転移を起こす。理想的には固定した組成をもつが、FeS1-xのような非量論的化合物も結晶として存在しうる。A、B 2物質が混合して可変組成の結晶（固溶体）や定組成の結晶をつくることがある。後者は分子間化合物あるいは金属間化合物であって、融点がその組成で極大をもつ相図を与える。固溶体ではA、Bは通常乱雑に混合しているが、AとBを区別しなければ三次元的な規則配列が保たれている。包接化合物はAがつくる規則正しい空洞のある結晶内にB成分が収容された形の可変組成の結晶である。タンパク質などの生体物質も結晶になるものが多数あるが、合成高分子化合物は一般に結晶性の部分と非晶質の部分を含んでいる。結晶の構造を決定する方法としてはX線や中性子線の回折が最も主要である。結晶と液体との中間的な状態として、液晶（p-アゾキシアニソールなど）、柔粘性結晶（ショウノウ）、ガラス性結晶（シクロヘキサノール）が知られており、また三次元規則性が完全には成立しない不整合構造（K2SeO4）も知られている。』
  →『結晶学とは』のページを参照。
• 晶系（crystal system）�@
  『結晶を対称性によって系統的に分類する形式。基準となる結晶軸a 、b 、c は高い対称次数の回転軸またはよく出現する結晶面のなす稜に選び、立方（等軸）、正方、斜方（直方）、単斜、三斜、六方、三方（菱面体）の7晶系がある。結晶ともいう。軸角α、β、γ（それぞれ、b -c 、c -a 、a -b の軸間の角度）と軸率（軸a 、b 、c の長さの比）を下に示す。晶系は空間格子のブラヴェ格子と密接な関係にあり、点群（結晶群）の分類ともなっている。六方晶系、三方晶系では4本の結晶軸（主軸1本、副軸3本）を選ぶ。

  晶系	軸角	軸率（軸比）
  立方晶系	90゜　90゜　90゜	１：１：１
  	4方向に3回（回転）軸、3方向に4回軸。
  正方晶系	90゜　90゜　90゜	１：１：c
  	c 軸は4回軸または回反軸。
  斜方晶系	90゜　90゜　90゜	a ：b ：c
  	直交3軸が2回軸または1個の2回軸とそれを含む2個の直交鏡映面。
  単斜晶系	90゜　β　90゜	a ：b ：c
  	前後軸a と上下軸c が斜交。
  三斜晶系	α　β　γ	a ：b ：c
  	たかだか対称中心がある。
  六方晶系、 三方晶系 （＝菱面体晶系）	平面内で120゜をなす3軸とそれらに垂直なc 軸。	１：１：１：c
  	六方晶のc 軸は6回軸または回反軸、三方晶では3回軸または回反軸。

  』
  結晶系（crystal system）�A
  『結晶はその単位格子または形態の対称性において七つ（立方晶系（等軸晶系）、正方晶系、斜方晶系（直方晶系）、単斜晶系、三斜晶系、三方晶系（菱面体晶系）、六方晶系）に分類され、これを結晶系（または晶系）という。三方晶系を六方晶系に含めて六つに分類することもある。X線回折により単位格子の概念が一般化するまでは、結晶系は結晶の形態の研究によって分類され、その結果、例えばその結晶の形態の特徴から命名された斜方晶系は、単位格子の型からは「直方（体）晶系」というほうが適当である。しかし、これは一般に普及しておらず、本事典では斜方を用いた。立方晶系は等軸晶系と呼ばれることも多いが、本事典では前者を用いた。文字どおり等軸は、三方晶系に分類される菱面体格子（rhombohedral lattice）でも成り立ち、区別できないからである。結晶系を構成する単位格子の平行六面体の八つの頂点にのみ格子点が存在する単純格子に対して並進対称操作を行って複合格子をつくり、単純格子、面心格子、底心格子、体心格子に整理すると14種の空間格子ができる。〔溝田忠人〕』
• 結晶格子（crystal lattice）�A
  『結晶は理想的には構成原子が規則正しく三次元的に配列しているので、この原子配列の繰返しの最小単位を包含する平行六面体が整然と三次元的に積み重なっているとみることもできる。この平行六面体の稜の連なりを格子に連想して、結晶格子という。結晶格子の単位である平行六面体を単位格子という。結晶格子はその形（対称性）と同価点の存在のしかたにより14種の空間格子（Bravais格子）に分類される。単位格子または空間格子を結晶格子という場合もある。〔溝田忠人〕』
• 結晶軸（crystal-axis）�A
  『結晶は三次元の空間に広がったものであるので、これを記載するための座標軸として、上下にc 軸、前後にa 軸、左右にb 軸をとる。単位格子ではその稜の方向に相当し、その稜の長さは、それぞれco、ao、boと表される。結晶軸のうちc 軸は、その結晶の主要な回転軸の方向にとられるのでこれを主軸と呼び、他を側軸という。単斜晶系では歴史的にb 軸を主軸（2回対称軸）にとることが多い。六方晶系では側軸は3本とられる。通常3軸の関係は右手系にとる。a 軸をb 軸の方向へ回転させたときc 軸方向にねじが進む関係である。各軸の長さはa 軸を最も長く、c 軸を最も短くとるように定められているが、歴史的には必ずしも守られていないことがある。〔高野幸雄〕』
• 結晶分化作用（crystallization differentiation）�A
  『マグマが結晶作用を行うことに起因する分化作用。晶出分化作用とも。かつてマグマの周辺部の比較的低温な所から順次各種の鉱物が晶出する作用、または晶出する結晶が順次下部へ沈下集積する作用などにより、岩体中に分化が起こるという説などが提唱されたが、結晶分化作用が分化の最も重要な原因であることが一般に認められるに至ったのは、N.L.Bowen（1928）が反応原理に基づいて、分別結晶作用によるマグマの分化作用の重要性を明らかにしてからである。〔山崎正男〕』
• 結晶面（crystal plane）�A
  『外的な制約なしに成長した結晶は、通常平滑な平面で囲まれている。この平面を結晶面という。これらの面は結晶内の主要な原子の配列した面（原子網面）に平行である。また結晶軸を座標としたミラー指数で表される。〔河原　昭〕』
  結晶面（crystal face、crystal plane）�I
  『一般に結晶は少数のよく発達した面によって囲まれているが、この面のことを狭義の結晶面という。結晶面の記述には有理指数の法則から導かれるミラー指数が用いられる。古くはWeissの指数（ワイス系）が用いられた。広義には、結晶の格子点を通る平行な面の集合をいい、二つの結晶面の交線は稜とよばれる。』
• ケプラー（Kepler, Johannes）�@
  『1571.12.27-1630.11.15。ドイツの天文学者。初め神学の研究を志したが、1594年グラーツ大学で数学、天文学を講じた。1599年皇帝フェルディナンド2世の新教徒迫害のため、グラーツを追われて、1600年プラハでティコ・ブラーエの助手となり、1601年皇帝ルドルフ2世に仕えた。ティコ・ブラーエが多年観測した火星の位置にもとづいて、‘ケプラーの法則’を導き出し、同時に天体の運動をはじめて太陽からの力によって説明しようと試みて、近代力学成立の先駆をなした。貧困と不幸の生涯を天文学に捧げた。〔主著〕Astronomia nova, 1609; Epitome astronomiae Copernicanae, 1618-21; Harmonice mundi, 1619．』
• ケルビン（kelvin）�@
  『物理量としての温度（熱力学温度）の単位。SI基本単位の１つ。記号はK。ケルヴィン卿にちなむ。水の3重点の熱力学温度の1/273.16と定義される。ケルビンと記号Kは、温度間隔または温度差を表わすのにも用いる。ケルビンで表わされる熱力学温度Tとセルシウス温度 t との間には t = T - 273.15 の関係が成り立つ。』
• 原核細胞（げんかくさいぼう）�K
  『核膜がなく、核様体をつくり、有糸分裂をおこなわず、原形質流動はみられず、葉緑体、ミトコンドリアなどの細胞小器官も分化していない細胞。真核細胞の対語。』
• 原核生物（prokaryote、procaryote）�H
  『細菌、ラン藻類、原核緑色生物、マイコプラズマ、古細菌を含む。一般に単細胞または糸状体となる微小な生物（直径最大3μm）。DNAは核膜に覆われていない。原核細胞は有核の細胞から進化したものではない。形質膜はしばしば折りたたまれ、細胞の内部で複雑に入り組んでいる。細胞質には、真核生物のものより小さいリボソームが含まれており、顆粒状の封入物も見られる。真核生物に特徴的なチューブリン、アクチン、ヒストンはなく、そのため細胞分裂や細胞運動の方法が真核生物とは異なる。遺伝暗号は真核生物のものと非常によく似ている。細胞分裂は一般に染色体の複製から一定期間をおいて起こるため、原核細胞は一般に少なくとも2つの染色体を含む。各染色体はDNAと非ヒストンタンパク質からなり、しばしば一時的に形質膜に付着する。ミトコンドリアや葉緑体はないが、類似の機能を示す構造をもつ。原核生物と真核生物を2つの超界とする考えもある。この場合、モネラは原核生物の一つの界を形成することになる。』
  原核生物（prokaryotes、Prokaryota）�J
  『前核生物、裸核生物。原核細胞からなる単細胞性の生物。生物をその構成細胞に核が有るか無いかで二分するときの一つで、真核生物と対置される。生物五界説におけるモネラ界はこれにあたる。伝統的に細菌と藍色細菌（藍藻）とに二分されてきたが、C.R.Woeseらは細菌の中の特殊な一群を古細菌として区別した。さらに彼らは、おもに分子系統学的研究により、全生物を真正細菌（Eubacteria、原核生物から古細菌を除いたもの）、古細菌（Archaebacteria、Archaea）および真核生物に3大別する体系を提唱しているが、異論もある。』
  原核生物（げんかくせいぶつ）�K
  『原核細胞から成る生物。細菌、古細菌およびラン藻類を含む。真核生物の対語。』
• 原子（atom）�I
  『原子は物質の構成要素であって、正電荷をもつ１個の原子核と、それをとりまく１または複数個の電子（核外電子）とによって構成された電気的に中性な粒子で、その大きさは半径およそ1〜2×10^-10m（0.1〜0.2nm）である。原子核は大きさが半径10^-14m以下で、陽子と中性子とから成る。陽子と中性子の質量は1.67×10^-27kgでほぼ等しく、これは電子の質量の約1840倍であるから、原子核が原子の質量のほとんど全部を担っており、陽子と中性子の数の和である質量数は原子の質量を表している。陽子は1電気素量（1.60×10^-19C）の正電荷をもち、電子は同じ大きさの負電荷をもっているから、中性原子の核外電子数は原子核を構成する陽子数に等しく、これはまた元素の原子番号に等しい。原子の化学的性質は核外電子によって決まるから、質量数が違っていても核電荷が等しい原子核をもつ原子は同じ元素に属する。このような原子を互いに同位体であるという。原子核に直接関係する諸性質（核の安定性、放射性、核磁気モーメントなど）は同位体ごとに異なる。安定な同位体はスズでは10種あるが、フッ素やアルミニウムでは１種のみであり、83番以上の元素およびテクネチウム、プロメチウムには安定なものがない。万物の窮極的な構成要素として極微の粒子を考える原子説の最古の提唱者としては、ギリシャのDemokritos（eの頭に-）（B.C.420年ころ）が知られている。彼は全世界はatomos（分割不可能なもの）と空間とから成るとした。以来この原子説は存続したが思索の域を出なかった。18世紀末にA.Lavoisierによって化学が近代科学となって間もなく、1808年J.Daltonは新原子仮説に基づく化学体系を発表し、当時認められていた質量保存の法則、定比例の法則などを統一的に説明した。その仮説を要約すれば次のようになる。「物質は不滅・分割不能の原子から成り、化学反応はそれらの組み替えにすぎない。各元素の原子はそれぞれ同質である。化合物は“複合原子”から成り、それに含まれる各原子の数は化合物ごとに決まっている」。化学的知識が蓄積され不動のものとなっていったのに対し、この原子仮説は20世紀になって原子の存在が直接的に証明されるまでは、100年にわたって仮説であった。核外電子の状態は量子力学に基づいて波動関数により記述され、それを原子軌道関数という。各軌道関数は主量子数n 、方位量子数l 、磁気量子数m で決まる。原子内の各電子はn , l , m の一組の値で記述され、全体として電子配置が決まり、それによって各元素の化学的性質が決まる。』
• 原始海水（primeval sea water）�I
  『現在の地球の大気、海水、生体の材料物質である二次原始大気は、地球形成後の初めの5億年くらいの間に85％以上が出つくした。H2O、H2、He、CO2、CO、HCｌ、N2、SO2（H2S）から成る二次原始大気は地球内部の岩石と接触しながら脱ガスするが、最終的にはほぼ上記の化学形で大気に出てくると考えられる。374℃以下になると水蒸気は液体の水となり、その水にHClが溶けて原始海水は 0.5 mol・dm^-3に近い水溶液ということになる。これが玄武岩状岩石に接し、Fe、Al、Ca、Mg、Na、Kなどを溶出し、自らは中和される。中性になると水にCO2が溶け、Alなどの水和酸化物、CaCO3が沈殿し、玄武岩は粘土に変質する。水−岩石相互作用で海水の主要化学組成が現在のそれに近くなるのに長時間を必要とせず、少なくとも20億年前（たぶん30億年以前と考えてよかろう）には海水の量も化学組成も現在のそれらに近くなっていたものと思われる。』
• 原子核（atomic nucleus）�I
  『単に核（nucleus）ともいい、原子の中心にあって陽電荷を帯びている物体。大きさは半径10^-13〜10^-12cm程度で、原子の半径が10^-8cmぐらいであるから、10万分の1ぐらいの相対的な大きさである。原子の大きさを半径1kmの球とすると、原子核はその中心にある半径1cmぐらいの小球に相当する。原子核は、陽電荷を帯びている陽子（proton）と電荷をもたない中性の中性子（neutron）とから構成されている。陽子の数はその元素の原子番号に等しく、同数の電子を原子核のまわりに配置することにより、中性の原子となる。したがって、陽子数がその原子の化学的性質を決定する。中性子数は、原子のもつ電子数には無関係であるので、原子の化学的性質には関与せず、原子核の物理的性質に関係がある。陽子数と中性子数の和をその原子核の質量数という。原子核の性質を決定するものは、陽子数、質量数とエネルギー状態の三つである。この三つがそれぞれ等しい原子核は同じ種類の原子核であり、この３者で定められる原子核、あるいはその原子核をもつ原子を核種（nuclide）という。』
• 原子記号（atomic symbol）→元素記号（symbol of elements）
• 原始大気（primitive atmosphere、primordial atmosphere、protoatmosphere）�A
  『地球進化の初期に存在していたと推定される大気。地球形成時にすでに地表に存在していたとされる一次大気や、地球核形成や地球進化の際に、地球内部からの脱ガスにより形成された二次大気などを含む。地球の場合、これらがどのような割合で含まれているかは大気の起原に関する重要な問題であり、従来はほとんどが二次大気であると考えられてきた。しかし1990年初めごろから、地球内部のネオン同位体比がマントル全体として大気のものとは異なる可能性が指摘され、その理由を説明するために、一次大気の存在が改めて検討されるようになってきている。〔兼岡一郎〕』
  原始大気（primeval atmosphere）�I
  『今から45億年前、固体の地球ができたころ、その固体は宇宙元素存在度をもつ大変濃い原始大気（一次原始大気）に囲まれていたと考えられている。この一次原始大気は何らかの力で地球圏外に吹きとばされてしまった。そのあと地球内部から二次原始大気が火山や温泉を通して地球表面に脱ガスしてたまり、これが事実上の現地球の大気、水圏、生物圏の材料物質となった。二次原始大気は初めの5億年ほどの間に少なくとも85％以上が出つくしてしまったと考えられる。二次原始大気の組成と量は地球上に分布する揮発性物質から推定される。ただし、軽いH2とHeは二次原始大気に含まれていたであろうが、地球の重力圏外に逃失したであろう。H2の量は原始大気の化学形を考えるうえで重要である。温度の設定でH2の見積もり量は違ってくるが、それを見積もって二次原始大気の化学形を検討すると、事実上の原始大気である二次原始大気の化学形は酸化型のH2O、H2、CO2（CO）、HCｌ、N2、SO2（H2S）であると推論される。しかし一方では、H2、H2O、CH4、HCｌ、NH3、H2Sの還元型であるという説もある。』
• 原始太陽系星雲（primordial solar nebula）�A
  『原始太陽を取り巻いて存在していたガスと塵からなる円盤状の雲。この中から惑星が形成されたと考えられる。いくつかのモデルが提案されているが、ロシアのS.Safronov（1972）や林忠四郎ほか（1972）などによる、太陽質量の1/100程度の質量のものだったとする考えが一般的。円盤状の原始太陽系星雲は、太陽に引かれて落下していくガスの運動エネルギーが熱に転化するため、初めは相当な高温（地球軌道付近で2,000K）であったが、やがて力学的平衡状態に落ち着くにつれて温度が下がっていく。この過程で、惑星の材料となる塵の凝縮が進んだと考えられている。〔小森長生〕』
• 原始惑星（protoplanet）�A
  『原始太陽系星雲の中で微惑星の衝突・合体が進み、月の数分の1程度の大きさ、10²⁵g程度の質量の天体に成長したもの。この程度の大きさになると、重力もかなり働くようになるので、原始惑星は周辺の星間ガスを自身の重力圏に取り込んで、濃い原始大気（一次大気）をまとっていたとみられる。さらに、原始惑星の重力圏に捕らえられた微惑星が次々と落下し、雪だるま式に太って、今日みられる大きさの惑星ができ上がったと考えられている。〔小森長生〕』
• 原生生物（界）（protists、Protista）�J
  『プロティスタ。生物分類上の一界で、単独または群体をつくる単細胞性真核生物の一群。C.von リンネ（1735）以来、生物の大分類として置かれていた植物（regnum plantarum、Plantae）・動物（regnum animale、Animalia）の2界に対して、E.H. ヘッケル（1866、1878）が第三の生物界として設定、これに細菌類（モネラMoneraとして区別）・真菌類・単細胞藻類・原生動物・海綿類を属させたが、最終的には単細胞生物に限定した。その後、生物大分類にはいくつかの体系が提案され、それに応じて原生生物の位置づけ・定義も多様である。すなわち生物界を原生生物（コケ植物・シダ植物・種子植物・後生動物を除く他の全生物）・植物・動物の3界（R.Stanier, M.Douderoff & E.Adelberg, 1970）、原生生物（単細胞藻類・真菌類を含めない）・植物・動物の3界（H.Curtis, 1968）、モネラ（原核生物）・原生生物（多細胞藻類・真菌類を含める）・植物・動物の4界（H.F.Copeland, 1938）、原生生物（モネラを含める）・真菌（菌、Fungi）・植物・動物の4界（R.H.Whittaker, 1959）、とする諸説がある。他方、原生生物を界として認めない考えもあった。しかし現在ではモネラ、原生生物、真菌（菌）、動物、植物の5界に分ける五界説が一般的となってきている。この説のなかでも、Whittaker（1969）の方式では原生生物は基本的に真核単細胞生物と規定されているが、L.Margulis（1971、1974）やWhittaker & Margulis（1978）はこれに多数の真核多細胞生物群を加えて再定義し、名称もプロティスタからプロトクティスタ（Protoctista、J.Hogg（1860）が提唱、H.F.Copeland（1956）が採用）と改めた（正式な改称はWhittaker & K.V.Schwartz、1982）。この説によれば、原生生物は、‘胚を作らず、組織の分化または形成も行わず、波動毛（undulipodia）をもつ場合は微小管が9＋2構造に配列する真核生物’と定義される。この場合、原生動物のほかに、細胞性粘菌・変形菌、波動毛をもつ菌類（ミズカビ類）と多細胞の海藻類など植物性原生生物も含まれることになるが、これには八界説（T.Cavalier-Smith、1987）の立場などから批判がある。』
  原生生物（げんせいせいぶつ）�K
  『1個の細胞が栄養摂取と生殖作用を営む単独または群体をつくる単細胞生物の総称。初め、動物・植物の2界に対して第三の生物界として設定されたが、その内容は歴史的に変化してきた。現在は、動物界・植物界・菌界・モネラ界に属さない雑多な生物の総称とされることが多い。』
• 顕生累代（Phanerozoic eon）�A
  『約46億年前とされる地球形成以降の時代は、化石のまれな隠生累代と化石の多い顕生累代に二分される。ギリシア語で、phanerosは「顕著な」、zoeは「生物」を意味し、多くの生物が生存し、化石として地層中にたくさん残された時代の意味。カンブリア紀〜完新世を指し、古生代・中生代・新生代に大きく三分される。隠生累代は先カンブリア時代と同義。隠生代・顕生代とも表記する。〔中村耕二〕』
• 元素（element）�I
  『化学元素（chemical element）ともいう。物質構成の基本単位は原子であるが、同一の原子番号を有する原子の種類を元素という。同一の原子番号を有する原子のみから成る物質、すなわち単体を元素ということもあるが、両者は区別すべきである。1988年現在、107番までの元素が公式に確認されており、109番元素の報告も広く認められている。103番までの元素は公式の元素名と元素記号がある。ほとんどの元素名および記号は元素とともに単体をも表す（例外とし“炭素”は元素のみを、ダイヤモンド、オゾンなどの名称は単体を表す）。原子番号１〜92の元素の多くは天然に発見されたが、43Tc、61Pm、85At、87Frおよび原子番号93以降の元素の存在が初めて認められたのは人工元素としてである。そのうち、Pm、Frなどは天然にも微量存在する。多くの元素は質量数の異なる核種（同位体）が存在する。Be、Na、Coなどは天然には1種の核種のみが存在する。これらの元素でも種々の放射性核種（¹⁰Be、²²Na、⁶⁰Coなど）が人工的につくられている。元素の性質は多様であるが、多様性は原子の核電荷および電子構造に由来すると考えられている。元素はその性質に応じて、金属と非金属、典型元素と遷移元素、陽性元素と陰性元素などに分類される。さらに互いに性質の似たものはアルカリ金属、ハロゲンなど18個の族に分類される。このような分類は、周期表に基づいている。天然の産出状態により、親気元素、親銅元素、親石元素、親鉄元素に分類される。すべての物質は限られた種類の要素から成るという概念は古代からあった。元素のうち、金、銀、銅、鉄、スズ、鉛、水銀、炭素、硫黄は古代から知られていたが、古代人はこれらが元素の一部とは考えず、ごく少数のものを万物の根源とした。近代的元素観は1661年R.Boyleが“それ以上分解できない単純な物質”として元素を定義したのに始まる。当時は具体的な元素として知られているものも少なく、単体と元素の区別も明瞭でなかった。このような元素観に基づく科学的な実験、18世紀末特にA.L.Lavoisier以後の定量的な研究の結果、元素の数も増え、化学反応における量的関係も明らかになってきた。このような背景のもとに1803〜1808年J.Daltonは原子説を発表した。１）すべての物質は微小な粒子である原子から成る、２）各元素にはそれぞれ固有の大きさ、重さ（原子量）を有する原子が対応する、３）異種原子が簡単な整数比で結合したものが化合物である、４）原子は不生不滅であるという彼の原子説は近代的な元素観の基礎となった。その後、気体反応の法則の確立、アボガドロの仮説などにより修正を加えられ、単体と元素との区別も明確になったが、ある元素の原子はすべて同じ、元素は不変であるという元素の概念は長い間支配的であった。19世紀末から20世紀初めにかけて、放射性核種の発見、原子番号の意義の理解、同位体の発見、人工元素の製造などによって現代の元素観が確立した。』
  →『元素とは』、『元素一覧』のページを参照。
• 元素記号（symbol of elements）�I
  『原子記号（atomic symbol）ともいい、元素の種類を表す記号である。公式にIUPACで制定されているのは原子番号１番のHから103番のLrまで103個である。各元素記号は見返しの原子量表（略）に原子番号順、五十音順に記載されている。これらは元素のラテン語名、英語名、ドイツ語名などから、最初の１文字または２文字、ときには最初の１文字と名称中の適当な１文字との組合わせから成る。ラテン語に由来するものにはFe（Ferrum）、Ag（Argentum）、Sb（Stibium）などが、英語に由来するものにはN（nitrogen）、O（oxygen）などが、ドイツ語に由来するものにはW（Wolfram）、Na（Natrium）などがある。なお、104番以降の元素にはIUPACで制定した命名法に基づく元素記号（例：Unq）がある。元素記号は原子の種類を表すためにも使われる。このときは質量数を左肩につける。その他必要に応じて元素記号に図のような数字を添えることがある。たとえば¹⁸8O2^2-は質量数18の酸素から成る過酸化物イオンを表す。

  A E m Z n E ：　元素記号 A ：　質量数 Z ：　原子番号 m ：　イオンの価数（アラビア数字に＋または−をつける）または酸化数（ローマ数字） n ：　原子の個数

  特別な記号としてD（重水素、ジュウテリウム）、T（三重水素、トリチウム）が使われることもある。元素記号は量をも表す。たとえばNaあ１個あるいは１mol のナトリウム原子、１mol のナトリウム金属を表すことがあるとともにナトリウムの原子量を表すこともある。Na、P、S、Feなど多くの記号は元素ばかりではなく、単体を表すためにも使われる。N、O、F、Cl、I など少数の記号は単体を表す際には用いないのが普通で、これらの元素の単体はN2、O2、F2、Cl2、I2 のように分子式で表される。なお、IUPACの記号以外に現在使われている記号には104番元素のRf（ラザホジウム）あるいはKu（クルチャトビウム）、105番元素のHa（ハーニウム）などがある。』
• 元素の存在度（abundance of the elements）�@
  『ある系に含まれる元素の量比。対象とする系について全元素の総量が既知のとき求まる絶対存在度は、含有量と同義。相対存在度は、ある特定の元素（水素やケイ素など）に対する原子比あるいは重量比を意味する。
  （１）宇宙存在度。太陽系が生まれるもとになった始原物質の元素存在度で、太陽系は銀河系内のある領域の物質を集めて生成したので、銀河系内における太陽系近傍の平均的な元素存在度とみなすことができる。宇宙全体の平均的存在度でもなければ、現在の太陽系の平均的存在度でもない。宇宙存在度は、隕石の中で最も始原的と考えられているC1コンドライトの化学組成と太陽スペクトルの解析による太陽大気の元素存在度をもとに推定されている。水素とヘリウムがいちじるしく多く、次いで酸素、炭素、ネオン、窒素、マグネシウム、ケイ素、鉄、硫黄の順であるが、全体的傾向は、原子番号45番付近までは指数関数的に減少し、それ以上ではほぼ一定である。ただし、軽元素でもリチウム、ベリリウム、ホウ素はいちじるしく少ない。また、原子番号偶数番の元素は両側の奇数番の元素より存在度が大きい（ハーキンズの法則）。これらの特徴は、元素が恒星の進化に伴う種々の核反応で合成されたことを示している。
  （２）地殻存在度（crustal abundance）は、歴史的には、クラークら（1924）の推定（クラーク数）以来求められている。しかし、地殻そのものが地震学的には定義できても、構成物質の点で現在でも明確でないので、その元素存在度は、地殻の構成モデルによって種々の値が出されている。ごく大まかな値として、玄武岩質岩石：花崗岩質岩石＝１：１の混合物を地殻の平均組成とみなす傾向が強い。重量存在度では、多い方から酸素、ケイ素、アルミニウム、鉄、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムの順である。地殻存在度同様、マントルの元素存在度もモデルによっており、全地球の化学組成も推定の域を出ない。
  （３）海水中の存在度は、水を構成する水素と酸素とを除くと、多い方から塩素、ナトリウム、マグネシウム、硫黄、カルシウム、カリウムである。溶存成分総量は、地域的に多少の違いがあるが、主要成分元素の相対比は一定である。』
  元素の存在度（abundances of elements）�A
  『元素組成ないし元素含有量とほぼ同義。存在量、存在比、頻出度などともいう。相対存在度はある特定の元素（例えばSi）に対する原子比または重量比を意味し、絶対存在度は全元素の量に対する比を意味する。炭素質コンドライト（C１）隕石の非揮発性元素存在度が太陽大気のそれに似ていることから、C1隕石を太陽系の始原的固相物質とみなし、主要元素の存在度は太陽や恒星大気の存在度を、微量元素のそれはC1隕石の分析値をとり、Siを仲立ちにした相対値を「元素の宇宙存在度」という。太陽内部の物質循環の早さから、太陽大気の元素存在度が太陽内部の組成を反映したものと考えられることと、太陽が天の川銀河の平均的な主系列星であることから、得られている値は銀河宇宙の真の元素存在度に近いものと考えられる。H・He・Oなど軽元素に富み、原子番号45付近まで指数関数的に減少すること、原子番号が偶数の元素は、隣り合う原子番号が奇数の元素より存在度が多いなどの特徴がある。〔田中　剛・松井義人〕』
• 玄武岩（basalt）�A
  『苦鉄質火山岩の総称。アルカリ-シリカ図の上の分類では、全岩SiO2量が45〜52wt％、Na2O＋K2O＜5wt％（IUGSによる；R.W. Le Maitre、1989）の火山岩に使用。広義には、アルカリかんらん石玄武岩・アルカリ玄武岩をも含める。古くは、かんらん石を含む火山岩すべてに用いられていたが、F.Zirkel（1866）は細粒緻密な苦鉄質岩に限定し、ドレライトと区別した。またH.Rosenbusch（1877）は新第三紀以降に噴出したものに限り、古いものをメラファイアー（melaphyre）と呼んだ。狭義の玄武岩は短冊状斜長石、粒状輝石（オージャイト・ピジョン輝石・ハイパーシン）、磁鉄鉱などからなるサブオフィチック・間粒状・填間状などの組織を示し、これらを玄武岩組織（basaltic texture）と呼ぶことがある。玄武岩は火山岩のなかで最も多量で、汎世界的に分布する。玄武岩台地・火山島・海嶺および造山帯で玄武岩-安山岩-流紋岩系の一部として産する。basaltの語源はエジプトの石像の石、またはエチオピアの黒い緻密な大理石bsal（bsel）にちなむといわれる（C.Plinii、1668）。日本語の玄武岩の語は、兵庫県但馬の玄武洞の岩石にちなみ小藤文次郎（1884）が命名。〔大場与志男〕』
  玄武岩（basalt）�C
  『この火山岩としては、もっともふつうの岩石の名は、岩石名として一番古いもので、ローマの政治家・軍人にして博物学者であったプリニウスの『博物誌』に記されている。彼の記載によると「エジプト人はエチオピアに産するマーブル（大理石）の一種で、鉄のような色と固さを持つ石をbasaltesとよび、石像などをつくっている」という。彼のあげた石が現在の玄武岩にあたるかどうかは確かではないが、とにかく、彼の『博物誌』は中世を通して尊重され、活字印刷術の発明後、すぐにラテン語で出版され、また各国語にも訳された。プリニウスのいうbasaltesは、たぶんいまでいう閃長岩Syeniteの一種であろうと推測されている。プリニウス以前の語源としては、ギリシャ語のbasanos（試金石の意）に関係があるからとか、この石が豊富に産出されたヨルダン東部の地名Bashan（聖書ではオグ王国とされているところ）に由来し、「Bashanの石」の意ともいう。
  　日本でも、この石は古くから石材として用いられ、いろいろな名でよばれた。たとえば『雲根誌』には但馬（兵庫県）の石山石をあげており、またこれは灘石ともいうという。明治初年にはBasaltesに対して柱石（タルキイシ）、柱形石などの訳があてられているが、これは柱状節理に注目した石材名である。英語でもbasaltiformとは六角柱状の意である。
  　このありふれた岩石名が『薩摩辞書』に「石の名、未詳」とだけしかでていないのは興味深い。
  　玄武岩の訳は、兵庫県の玄武洞の名にちなんで小藤文次郎が命名したもの（明治17年・1884）。
  　翌年1885年の万国地質学会議の参加出品記事に「玄武岩（バサルト）」の名がみえる。この玄武洞そのものの名は、寛政の三博士の一人である柴野栗山（しばのりつざん）の命名によるもので、玄武はもちろん中国古代の四神のひとつである亀の霊獣で、また北方の神である。玄の字は玄米・玄人（くろうと）などでわかるように黒を意味する。
  　栗山の命名は、この岩石の六角の柱状節理・黒い色に注目してのことと思われる。現地には、現在、青龍洞などの名の小洞があるが、これは玄武洞にならって大正14年観光用に名づけられたもの。なお玄武洞は『雲根誌』にもいうように、石材として採掘されていたため凹んで洞穴状になったもので、自然の洞穴ではない。』
  basalt [petrology] (ba-salt', ba'-salt)�L
  『(a) In the IUGS classification, a volcanic rock defined modally by Q/(Q+A+P) between 0 and 20％ or F/(F+A+P) between 0 and 10％, P/(A+P)＞65％, and M＞35％. Because modes are difficult to estimate for these rocks, basalt is also defined in the TAS diagram as rock falling in the area bounded by points with the SiO2 and total alkali coordinates: 45, 0; 45, 5; 52, 0; 52, 5. (b) A general term for dark-colored mafic igneous rocks, commonly extrusive but locally intrusive (e.g. as dikes), composed chiefly of calcic plagioclase and clinopyroxene; the fine-grained equivalent of gabbro. Nepheline, olivine, orthopyroxene, and quartz may be present in the CIPW norm, but not all simultaneously: nepheline and olivine can occur together, as can olivine and orthopyroxene, and orthopyroxene and quartz, but nepheline does not coexist with orthopyroxene or quartz, nor quartz with nepheline or olivine. These associations and incompatibilities are discussed by Yoder and Tilley (1962) and by Muir and Tilley (1961). Cf: basaltic rocks.』

【こ】

• 紅炎（prominence）�@
  『太陽コロナ中に浮かぶ、やや高密度、低温、強磁場の領域で、紅色に輝くことからこの名がある。プロミネンスともいう。比較的安定で長寿命の静穏域紅炎と、短時間だけ出現する活動域紅炎に大別される。静穏域紅炎は数カ月の寿命をもち、その形は高さ１〜10万km、幅数千〜2万km、長さ数万〜数十万kmの垂直に立ったシート状で、磁場の極性が変わる線上に位置している。温度はコロナ中にあるにもかかわらず約7000Kと低く、磁場は5〜10ガウス程度。黒点の出現する領域に集中する傾向がある。静穏域紅炎は、ときおり10²〜10³km/sの速度でアーチ状に急上昇を始め、太陽表面から離れていく。電磁流体的な不安定性がその原因とされている。活動域紅炎は、静穏域紅炎の前駆段階のものと、フレアに伴うものに分けられ、後者は太陽面爆発時の磁力線に沿って流れるジェット流で、ときには磁場を引きちぎり太陽から脱出するものもある。形状の変化から上昇紅炎、サージ、スプレイ、ループなどの種類に分類されている。太陽単色像にみられる暗く細い暗条は紅炎を太陽面に投影したものと考えられている。』
• こうごうせい（光合成）→ひかりごうせい
• 向斜（こうしゃ）（syncline）�A
  『層序的に上位の地層が中心に出ている褶曲構造。一般には、褶曲している地層の谷に当たる部分。垂直的に最も低い点を次々に結んでできる線を底、両側の斜面に当たる部分を脚あるいは翼、両側の脚を二等分する面を向斜軸面、向斜軸面と各層の交線を向斜軸という。〔鈴木尉元〕』
  ⇔背斜
• ⇒鉱床
• 更新世（Pleistocene）�A
  『第四紀を二分する古いほうの世。最新世、洪積世とも。この時代の堆積岩や火成岩を更新統、最新統という。C.Lyell（1833）が軟体動物化石種の90〜95％が現生種で占められる時期をNewer Plioceneと命名。1839年、これをPleistoceneと改名。1948年ロンドンで開催された第18回万国地質学会議（IGC）でイタリアの新生界のなかに鮮新/更新統の境界を設けることが勧告され、古地磁気層序のオルドバイ・サブクロン直上に設定、カラブリア地方のブリカが模式地として提案された。年代は約160万〜約1万年前まで。〔熊井久雄・中川久夫〕』
• 降水量（precipitation、amount of precipitation）�A
  『液相・固相を問わず、大気中から地上に落下したすべての形態の水の量。一定の地点において、一定時間内に落下した水の量を水深（mm）で表す。降水高（height of precipitation）とも。雨は雨量計で測るから、少量の露・霜・霧なども含まれる。雪は秤型雪量計によって測り、融かして水とした場合の水深で表す。雪は軽いため地物の影響を受けやすく、その分布も局地性が大きい。山地の降水量の精度が平地に比べて劣る一因は、雪量の観測が不十分な点にある。〔榧根　勇〕』
• 恒星（fixed star）�A
  『宇宙空間に存在し、自ら光や熱を放つ高温のガス球。太陽も恒星の一つ。惑星に対する用語で、本来は天球上の見かけの位置や明るさが変わらない星という意味であるが、実際には恒星も運動しており、見かけの位置の変化を固有運動（proper motion）として検出できる。また明るさを変える星も多く、変光星（variable star）と呼ばれる。明るさは等級で表し、１等級小さくなると2.512倍明るくなる。肉眼では6等級まで見え、その数は約6,000個。小さい恒星と大きい恒星では、質量は太陽単位で0.2〜50倍程度、半径は同0.3〜1,000倍程度の違いがある。表面温度は3,000〜10万K程度で、中心温度は1,000万〜数十億Kの範囲にある。エネルギー源は恒星中心での熱核融合反応（CNOサイクルなど）で、そのガス圧が重力を支えている。星間雲の収縮によって原始星が形成されるが、それを取り巻く回転ガス円盤や円盤に垂直な方向への双極分子流が電波や赤外線で観測され、恒星形成初期の一般的な現象として認識されるようになった。原始星の中心部でHの核融合反応が始まると主系列星となり、一生のほとんどをこの段階で過ごす。主系列星時代の長さやそれ以降の進化のようすは、その星の質量によってほぼ規定される。太陽質量の0.8〜約7倍の星はHeの核融合反応まで進んで巨星となり、その後、外層を失い白色矮（わい）星を残す。太陽質量の7〜8倍ではCの核融合反応まで進み、その激しい燃焼の結果、超新星爆発を起こしてすべてが吹き飛ぶ。太陽質量の8〜10倍程度の星では炭素の核反応の結果としてNe・O・Mgからなる中心核が形成され、超新星爆発の後、中性子星を残す。太陽質量の10倍以上の星は、さらに反応が進みFeの中心核をつくり、やがて超新星爆発を起こして中性子星やブラックホールを残す。〔黒田武彦〕』
• 光年（light-year）�@
  『光が真空中を１回帰年（＝365.2422日）間に進行する距離で、天体間の距離の単位として用いる。１光年は0.94605×10¹³ kmに等しい。』
• 後背湿地（back slough、back marsh、back swamp）�A
  『氾濫原上で自然堤防の背後にできる沼沢性の低湿地。洪水時に流路からあふれ出した水は流路の両側に広がるが、減水が始まると自然堤防に妨げられて元の流路に戻れないために、長時間、流路の両側の低地部に湛水して沼や湿地となり自然の蒸発を待つ。通常、平野部を流れる河川では後背湿地が水田化し、それよりやや高燥な自然堤防上に集落、畑地などがのり、土地利用の状態から両者の分布が推定できる。〔高山茂美〕』
• 鉱物（mineral）�A
  『自然の物質のうち、物理的・化学的にほぼ均一で一定の性質を有する無機質の固体物質をいう。より厳密、狭義には「天然に産する無機質の均質物質で規則的原子配列をもち、ほぼ一定の化学組成をもつもの」として非晶質物質を除く。生体関連物質とその化石化したもの、地表の通常の条件で不安定なもの、非晶質物質など、個々のケースについて紛らわしいものがあるが、これらについてはIMAの新鉱物鉱物名委員会による説明が与えられている（E.H.Nickel、1995）。現在、4,000種近い鉱物種が知られている。語源は、ラテン語でmineralis＝「minera（鉱山）に関係したもの」に由来する。リンネは自然界を動物・植物・鉱物の三界に分け、生物以外を鉱物と呼んだ。本草学や博物学での金石はリンネのいう鉱物にほぼ相当する。小藤文次郎（1884）がmineralの訳として鉱物の語をつくった。〔参〕E.H.Nickel（1995）、Canadian Mineralogist、Vol.33。〔赤井純治〕』
  鉱物（mineral）�C
  『もと鉱山から産するもの、また土地を掘ってえられるもの全体をさしていた言葉mineralが、次第に無機物をさすようになり、19世紀に入ってから現在のように自然に産する無機物で、化学的成分や物理性がほぼ同一のものをさすようになった。mineralはラテン語mineralis（mineraに関係する）に由来し、このmineraは鉱山の意であるが、元来は金属や宝石が成長すると考えられていた母岩のことをさした。
  　江戸時代の本草学では自然の金属を金、現在の鉱物・岩石を石とし、全体を金石とよんだ。それには石器なども含んでいるが、ほぼリンネの自然の三大分類の鉱物にあたる。それらを研究する学問が、明治初期には金石学とよばれたが、西欧の科学が導入されるにつれ、金石学は鉱物のみを扱うようになり、小藤文次郎がMineralおよびMineralogyの訳として、鉱物および鉱物学の語をつくった（明治17年・1884）。なお本草学の系統の金石学とは別に、中国では古代の青銅器や石碑に刻まれた文字を金石文とよび、清朝末期にそれを研究する学問として金石学が盛んになった。現在中国では鉱物および鉱物学を用いているが、これは日本からの輸入による。』
  mineral (min'-er-al)�L
  『(a) A naturally occurring inorganic element or compound having a periodically repeating arrangement of atoms and characteristic chemical composition, resulting in distinctive physical properties. (b) An element or chemical compound that is crystalline and that has formed as a result of geologic processes. Materials formed by geologic processes from artificial substances are no longer accepted (after 1995) as new minerals (Nickel, 1995). Mercury, a liquid, is a traditional exception to the crystallinity rule. Water is not a mineral (although ice is), and crystalline biologic and artificial materials are not minerals. Cf: mineraloid. properties. (c) Any naturally formed inorganic material, i.e. a member of the mineral kingdom as opposed to the plant and animal kingdoms.』
  →『鉱物の定義と分類』のページを参照。
• 鉱物学（mineralogy）�A
  『鉱物を対象とする科学で、ある地域、ある場に産出する鉱物の種類、共生関係、産状、成因を究明するほか、各鉱物の結晶学的性質、組織、物理・化学的性質、生成条件、安定性など鉱物のすべての性質につき全面的に研究する学問分野。地球科学･宇宙科学のなかの基礎的分野であるとともに、他の関連諸分野との境界領域的な課題がますます多くなってきている。つまり、結晶学、岩石学、地質学、地球化学、宇宙化学、隕石学、地球物理学、結晶成長学、無機化学、古生物学、生物学、環境科学、鉱工業、セラミックスなど材料工学分野等の応用諸分野などと密接に関連している。小藤文次郎（1884）が鉱物および鉱物学の語をつくった。〔赤井純治〕』
• 湖沼（こしょう）（lake、pond）�A
  『四方を陸地に囲まれ、海とは離れた静止した水塊。海岸地域の汽水湖は海水の入り方で、海か湖沼かに区分せざるを得ない。湖は沿岸植物の侵入しない深度をもつもの、沼は浅く沈水植物の生育するものとする。地名としては湖沼は必ずしもこれに従わない。人造湖は成因としては湖沼と異なるが、水塊の性格は河川と湖沼の中間的。〔堀内清司〕』
• 古生代〔Palaeozoic（era）〕�A
  『顕生代を動物化石の変遷をもとに三分した最初の地質時代で、約5.7億〜2.45億年前。無脊椎海生動物の栄えた前半の旧古生代と、陸上の動植物の繁栄した後半の新古生代とに分けられ、前者はカンブリア紀・オルドビス紀・シルル紀に、後者はデボン紀・石炭紀・ペルム紀にそれぞれ三分される。また各時代の特徴ある動物群により、カンブリア〜シルル紀を海生無脊椎動物時代、デボン紀を魚類時代、石炭〜ペルム紀を両生類時代とも呼ぶ。旧古生代には三葉虫・筆石・サンゴ・オウムガイ・腕足類・棘皮動物などの無脊椎動物が栄えた。オルドビス紀に最初の脊椎動物の魚類が出現し、デボン紀に全盛をきわめた。新古生代には前述の無脊椎動物のほかに、フズリナ・アンモナイトなどが加わり、新たに両生類が出現し、石炭〜ペルム紀に主役を果たした。植物では、旧古生代は菌藻類により代表され、デボン紀前〜中期にはマツバラン類が、デボン紀後期〜ペルム紀前期にはシダ植物が栄え、ペルム紀後期には裸子植物時代が始まった。石炭〜ぺルム紀には各地で大森林を形成し、この時代の地層中に多量の石炭を埋蔵する。旧古生代には北西ヨーロッパ・グリーンランド・北米・中国北部などを舞台にカレドニア造山運動が、新古生代には中部ヨーロッパ・ウラル・北米・中国などでバリスカン造山運動があった。気候は一般に温和で、全世界ほぼ一様であったが、ペルム紀末期に北米・インド・オーストラリア南部・南アフリカなどに大陸氷河の広がった証拠があるほか、オルドビス系・シルル系・デボン系・上部石炭系中には氷河成層がみられる。〔中村耕二〕』
• 古地球磁場強度（paleointensity）�A
  『古地磁気学で決定する過去の地磁気強度。古地磁気強度とも。従来は熱残留磁化（TRM）起原の自然残留磁化（NRM）をもつ火山岩や考古学の土器や煉瓦などによるものを指したが、最近は堆積物による相対的な地磁気強度も研究されるようになり、後者を相対古地球磁場強度として前者と区別する。古地球磁場強度を求める実験は、TRMが弱磁場に比例することを利用する。ここで古地球磁場強度FA中で冷却した火山岩などのNRMの大きさをMN、いったん磁性鉱物のキュリー点以上に加熱し実験室磁場FL中で冷却し獲得したTRMの大きさをMTとすると、古地球磁場強度はFA＝FL（MN/MT）で与えられる。NRMの段階熱消磁と部分熱残留磁化（PTRM）の獲得を常温から交互に温度ステップをしだいに上げながら行うのがテリエ法で、岩石磁気の変化が発生した温度以下のデータから正しい結果が求められる。また、加熱は高温まで一挙に行い交流消磁を主体とする、非履歴性残留磁化（ARM）を用いて岩石磁気のチェックを行うのがショーの方法である。この2種類の方法以外は結果の信頼性は低い。〔田中秀文〕』
• 古地磁気学（paleomagnetism）�A
  『過去の地球磁場を岩石ないしは考古遺物の残留磁化を用いて復元する学問。古地磁気学の目的は大きく三つに分けることができる。
  １）地球磁場の性質の研究。人類による記録が始まる以前の地球磁場のふるまいを知るには古地磁気学によるほかない。地球磁場の性質の研究は地球の外核の性質の研究にも連なり、ひいては地球の熱史を知るための情報も期待される。
  ２）地塊の移動・回転などの検出。岩石の生成時の地球磁場は真北からさほどはずれていなかったと仮定すると、測定された残留磁化の偏角は地塊の回転を示すことになる。伏角からは緯度が推定でき、南北方向の移動がわかる。また、一つの地塊について複数の時代の古地磁気がわかれば、経度方向の移動も知ることができる。この手法は大陸移動説の復活に大きく貢献した。
  ３）年代の推定。磁気層位学と呼ばれる分野で、逆転などの地球磁場変動の年代表を用意して、年代不詳の岩石等の古地磁気をそれと比較することによって年代を推定する。
  このように古地磁気学は地球科学の他の分野に有用な情報を提供するが、岩石の磁化の測定から古地磁気の推定までの過程は単純でない。磁性鉱物の主要な元素である鉄イオンは周囲の状況で価数が変化し、場合によっては磁化が大きく変化する。特に堆積岩の古地磁気を利用する場合には、さまざまな消磁法や磁化獲得時期のテストがきわめて重要である。〔渋谷秀敏〕』
• コペルニクス（Copernicus, Nicolaus）�@
  『1473.2.19-1543.5.24。ポーランドの天文学者。クラクフに学びのちイタリアに留学、その間牧師を希望し、かつ医学、法律を修めたが、天文学、数学に対する愛好の心を深くした。のちハイルズベルグで牧師となり、次いでフライエンブルク聖堂の参事会員となって生涯を過ごした。この傍らプトレマイオスの宇宙体系の改革を企て、太陽を宇宙の中心におく地動説の体系を作りあげた。円軌道に固執するなどギリシア的理念に忠実であろうとしたが、その宇宙体系は中世の階層秩序的宇宙観を打破し、近代的宇宙観・自然観への道を開くうえに決定的な役割を演じた。その宇宙体系を全面的に展開した“天球の回転について”（De revolutionibus orbium coelestium、6巻、1543）は1543年その死の直前に公けにされた。』
• 固溶体（solid solution）�A
  『複数の物質が均一に溶け合った固相。金属の合金や鉱物などに代表的な例がある。混晶とも。溶け方には置換型と浸入型がある。金属や鉱物の多くは置換型で、一方の成分が他の成分を置換して溶け合う。例えば、斜長石はアルバイトとアノーサイトの固溶体で、NaSiとCaAlとが置換する。浸入型は一方の成分の結晶格子のすきまに他方が入りこむもので、FeとCの固溶体はこの例。全組成範囲で固溶体をつくる場合と、ある限られた範囲でのみ固溶体をつくる場合がある。〔松本　隆・松葉谷治〕』
• コリオリ力（Coriolis force）�@
  『回転座標系において運動物体にはたらく見かけの力の１つ。慣性系に対する座標系の角速度ベクトルωが一定ならば、見かけの力は、遠心力とこの力 2mv×ωとである。mは物体の質量、ｖは回転座標系から見た物体の速度。』
  コリオリの力（Coriolis' force）�A
  『地球が自転しているために現れる見かけの力。偏（転）向力とも。北半球では風を運動方向に対して直角に右向きに曲げるように作用し、南半球では左向きに曲げるように作用する。地球の自転の角速度をω、西から東へ吹く成分をu、南から北へ吹く成分をvとし、f＝2ωsinφ（φはその地点の緯度）をコリオリ係数とすると、コリオリの力はdu/dt＝fv、dv/dt＝-fuで表される。〔榧根　勇〕』
• コロナ（corona）�@
  『太陽の最外層で、彩層より外側の部分をいう。皆既日食のときに見られるが、平時でもコロナグラフなどで観測できる。全光度は満月の半分ぐらいで、そのスペクトルには、内側の層から出た光が惑星間空間の微粒子で散乱されたものも含まれる。コロナからの光は、内側の層からの光がコロナの自由電子でトムソン散乱されて偏光性をもつ連続スペクトルになったもの（Kコロナ）、コロナに混った塵によるレーリー散乱光（Fコロナ）と、コロナ線とよばれる高電離したイオンの出す輝線スペクトル（Eコロナ）とからなる。また、コロナ線が高度に電離された金属原子イオンの線であること、および太陽電波の測定、ロケットによる軟X線の観測結果から、コロナの温度は10⁶K程度であるとみなされている。太陽内部の対流層から表層をこえて非熱的に運ばれるエネルギーが高温の原因と考えられる。コロナ全体の形は太陽活動極大期には円形に近く、極小期には扁平な形となる。その大きさは太陽半径の数十倍に及ぶ。極小期にはコロナストリーマーとよばれる磁力線の筋状の構造がみられる。コロナは一様ではなく、黒点上空にあって明るいコロナコンデンセーションやコロナホールとよばれる低温領域が存在する。コロナ外層の希薄な部分は惑星間空間までひろがり、さらに自身の圧力によって太陽風を送り出している。コロナには紅炎が現われる。なお、銀河系などのハロをコロナともいう。』
• コンチネンタルライズ（continental rise）�A
  『大陸斜面の基部にある滑らかな斜面。勾配1/40〜1/2,000で、深さ1,400〜5,100m。上限は大陸斜面と漸移するが、下限の境は深海海丘または深海平原としばしば急変する。米国東岸では上部と下部に分かれ、ハッテラス岬の南では多数の階段状の平坦面に変わる。ライズは陸棚から混濁流などによって運ばれてきたシルト・粘土の堆積物のつくる扇状地あるいは被覆層で、音波探査は楔形の断面をもつ堆積体であることを示している。〔茂木昭夫〕』
• コンドライト（chondrites）�A
  『石質隕石のうちコンドルールを含むことで特徴づけられる一群。球状隕石とも。変質・変成作用によりコンドルールを失ったものもある。コンドルール、包有物、岩石・鉱物片およびマトリックス物質等からなる。またそこには星間物質も含まれる。地上に落下する全隕石の80％を占める。揮発性成分を除いた化学組成が太陽大気の元素存在度に概して近いこと、形成年代が約45.5億年前であること、全体として溶融・分化していない組織を示すことなどから、太陽系の始原物質を最もよく保存したものと考えられている。ユーリー-クレイグ図をもとに化学組成や酸化還元状態の異なるエンスタタイト（E）、H、L、LL、炭素質（C）コンドライトの五つの化学的グループに細分されるが、これらに属さないもの（特異隕石）も少数ある。H・L・LLコンドライトは落下コンドライトの92％を占め、まとめて普通コンドライトと呼ばれる。さらにコンドライトは変質・変成作用の程度を反映する組織・組成の特徴からVan Schmus and Wood（1967）の提唱した1〜6（7）の岩石学的タイプに区分される。岩石学的タイプ3に属するものは非平衡コンドライトとも呼ばれる。以上二つの基準により各コンドライトはH5（Hコンドライトで岩石学的タイプが5）のように分類される。（化学組成表：略）〔木村　眞〕』
• コンドルール（chondrule）�A
  『コンドライトを特徴づける0.5〜2mm程度のサイズの球状の物質。球粒、コンドリュールとも。主に珪酸塩鉱物からなり、普通コンドライトでは体積の70％近く、炭素質コンドライトでは30〜50％程度を占めるものがある。形が球状であること、急冷組織・ガラス・融残り結晶の存在などから、重力のきわめて小さな環境で、前駆の珪酸塩鉱物の集合体が何らかの加熱現象により溶融したものと考えられる。原始太陽系星雲中で形成されたと考えられているが、熱源は不明である。〔永原裕子〕』