鈴木(1990)による〔『エネルギー・環境・生命』(10-12p)から〕


1.3 エネルギーとは
 エネルギーとは“仕事をする潜在的能力”、すなわち仕事をさせるようにするもとのものである。私たちを取り巻く自然界には、いろいろな形態のエネルギーが存在する。それらは一般には次のように分類することができる。
 (1) 力学的エネルギー(運動エネルギーと位置エネルギー)
 (2) 熱エネルギー
 (3) 光エネルギー
 (4) 電気エネルギー
 (5) 化学エネルギー
 (6) 核エネルギー
 これらのエネルギーは、相互に形態を変えうる。たとえば、発電用のダムの水は高い所にあるために力学的位置エネルギーをもっている。それが発電所の送水管に吸い込まれると運動エネルギーに変わり、水力タービンを回す。その結果、発電機が回転して電気エネルギーに変換される。火力発電では、化石燃料のもつ化学エネルギーが熱エネルギーを経由して力学的エネルギーに変わり、タービンを回転させて発電機を動かし、電気エネルギーに変換される。原子力発電では、核分裂によって発生する核エネルギーを熱エネルギーに変換し、それからあとは火力発電の場合と同様にして電気エネルギーをつくっている。このようなエネルギー変換のいろいろな例をまとめて図1.6(略)に示す。
 しかし、このようなエネルギーの形態の変化が起こっても、エネルギーの総量は常に一定に保たれている。つまり、エネルギーは新たにつくり出すことも、消滅させることもできない性格をもっている(熱力学第一法則)。私たちは日常、「エネルギーを消費する」というが、これは使いやすい形態のエネルギーが、低い温度の熱エネルギーとなって有効に利用できなくなったり、広範囲に拡散してエネルギーの価値が失われたりすることであって(熱力学第二法則の一つの表現)、エネルギー自体がなくなることではない。
 エネルギー資源をいかに有効に、私たちの目的にかなうように使うか、あるいは今日まで使われていなかったエネルギー資源を、どうすれば使いやすい形態に変えることができるかを究明するのが“エネルギー変換技術”である。エネルギー資源がどういう形態で存在するかを表1.3(略)に示した。電気エネルギーは、エネルギー資源から変換してはじめて得られるので、資源から直接得られる1次エネルギーに対して2次エネルギーといわれている。エネルギーの質の良さからいうと、電気エネルギーが最良である。
 使いやすい、質の良いエネルギーに変えようとすると、必ずもとのエネルギーのいくらかは利用されないまま外に放出されてエネルギーの損失をまねく。これは熱力学第二法則といわれ、エネルギー変換の根本法則の一つである。この法則を破ることはできないが、できるだけ理想に近い方法で変換を行い、一定のエネルギー資源からできるだけ多くの有効仕事を取り出すことも、エネルギー変換技術の大きな目的の一つである。エネルギーの使用量が増大すると、外に放出される熱量も増えて不経済である。また、それが環境や生態系に及ぼす影響も憂慮されている。』