|
最終更新日:2016年12月25日
地表に取り出された資源(Resource)は、次に必要な部分のみが選別されることになる。鉱物資源(Mineral Resource)では、取り出された資源は原鉱(Crude Ore)とか粗鉱とかよばれる。 原鉱から目的の元素(Element)を含んだ鉱物(鉱石鉱物、Ore Mineral)を分離することを選鉱(Ore Dressing、Beneficiation)と呼ぶ〔不用鉱物は脈石(Gangue)と呼ばれる〕。これは、表面張力(Surface Tension)や比重(Specific Gravity)や磁性(Magnetism)などの性質の違いを利用して分離する。そのためには、前もって原鉱を鉱石鉱物の粒子サイズ以下に粉砕(Crush & Grind)しておく必要がある。選鉱として最も一般的なのは表面張力の違いを利用する浮遊選鉱(浮選、Flotation Method)である。得られた資源は精鉱(Concentrate)と呼ぶことが多い。また、不要なものはズリ(捨石)とか尾鉱(Tailing、Slime、Tailings Pile、Tail、Leach Residue、Slicken)と呼ぶことが多い〔石炭(Coal)の場合はボタ(Slag Heap)とも呼ばれる〕。 次に、目的鉱物の中の目的元素をそれ以外の元素から分離する製錬(Smelting)を行う。これには高温で行う乾式(Dry)製錬と低温での湿式(Wet)製錬とがある。特に高品位(High Grade)の精製を行う場合には精錬(Refining)と呼ばれることもあるが、言葉の使い方は一定ではない。この場合に得られた資源についての共通の名称は無く、個別の資源名である鉱種(Mineral Commodity Class/Type)名〔鉱石鉱物(Ore Mineral)名の場合も、元素(Element)名の場合も、それ以外の場合もある〕が使われるようである。不用な方は、乾式製錬であればスラグ(Slag)とか鉱滓(こうさい)とか呼ばれることが多い(ただし、これらも最近は別の用途に利用されることが多い)。 |
選鉱とは |
|
製錬所 |
製錬とは |
|
鉄鋼製錬 |
1.焼結鉱、石灰石 2.コークス 3.ベルトコンベヤ 4.投入口 5.焼結鉱、塊鉱石、石灰石 6.コークス 7.熱風管 8.スラグ 9.溶銑 10.スラグ車 11.トーピードカー 12.ガス分離器 13.熱風炉 14.煙突 15.冷風 16.微粉炭 17.粉砕機 18.分配器 ウィキペディアによる『高炉』から |
現代の転炉 赤色は溶鋼で、黄色はスラグ。 ウィキペディアによる『転炉』から |
|
|
|
|
|
RH=Ruhrstahl-Hausen真空脱ガス装置、LF=Ladle Furnace、AOD=Argon Oxygen Decarburization炉、VOD=Vacuum Oxygen Decarburization炉:AODとVODは主にステンレス鋼の最終精錬用。 |
|
JFE21世紀財団による鉄鋼プロセス工学入門の中の『2章 製・精錬および連続鋳造』から |
鉄と炭素の状態図 |
転炉法による製鋼プロセス 転炉法は、脱炭精錬前に溶銑中の燐や硫黄を取る「溶銑予備処理」と、炭素を取る「一次精錬」、溶鋼中の水素・窒素や、必要に応じて硫黄を取り除き成分調整として合金添加を行う「二次精錬」から成る |
1856 年に登場した「平炉(蓄熱炉)」では、銑鉄とスクラップを入れて、蓄熱室で加熱した空気で燃料を燃焼させ、その熱を反射盤で炉全体に回し溶鋼を作る |
|
酸素製鋼法の変遷 ―約150年の歴史を経て進化を遂げてきた転炉法 |
|
新日本製鐵によるモノづくりの原点−科学の世界から |
たたら |
足踏み鞴(ふいご)を蹈鞴(たたら)と呼び、この蹈鞴を用いた製鉄法が踏鞴製鉄(たたらせいてつ)である。類似用語のたたら吹き(鑪吹き、踏鞴吹き、鈩吹き)は日本独自の製鋼法である。
鉄の利用は、鉄鉱石の採掘→選鉱(鉄鉱石鉱物とその他の鉱物を分離すること)→製錬(鉄鉱石鉱物の中の鉄とその他の元素を分離すること:鉄の場合は製鉄と呼ぶ)→加工(さまざまな方法がある)となるが、現代以前では、製錬(踏鞴製鉄)の前の採掘・選鉱として鉄穴流し(かんなながし)が有名である。これは、土砂状のマサなどを対象に、河川水などを利用して比重選鉱を行い、含まれる鉄鉱物(主に磁鉄鉱やチタン鉄鉱などの酸化鉄であり、砂鉄と呼ばれる)を分離・濃集する方法である。
(リンクはウィキペディア)
第339図 鳥取県下の製鉄遺跡出土砂鉄・製錬滓の化学組成 |
第340図 中国地方(岡山・広島・島根県)の製鉄遺跡出土砂鉄・製錬滓の化学組成 |
大澤・鈴木(2013)による〔鳥取県埋蔵文化財センター・国土交通省倉吉河川国道事務所による『鳥取県埋蔵文化財センター調査報告書 49下市築地ノ峯東通第2遺跡(自然科学分析・写真図版編)』の中の第7章 自然科学分析の成果〕の『第9節 製鉄関連遺物の金属学的調査』から |
図−7 鉄穴流しの跡地 国土交通省中国地方整備局出雲河川事務所(2012/3)による『斐伊川水系河川維持管理計画』から |
|
|
|
|
|
||||
たたら(蹈鞴、鑪) | 近世たたら製鉄(完成は18世紀末) | ケラ押し法 | ケラ=鋼のもとになる塊(素鋼塊、そこうかい) |
真砂(まさ)砂鉄 (融点1420℃) |
酸性岩類の花崗岩系(鉄分1〜2%)を母岩とし、チタン分が少ない。 チタン磁鉄鉱(磁鉄鉱+ウルボスピネル(Fe2TiO4))やフェロチタン鉄鉱。 |
砂鉄13トンと木炭約13トンから、ケラ2.8トンとズク0.8トン。ケラ2.8トンから玉鋼(たまはがね:炭素量1〜1.5%の鋼)1トン以下。 | 中国地方山陰側。 | 直接製鉄法 |
鉄穴(かんな)流し法:砂鉄の採取法(17世紀前半頃から) | ||||||||
ズク押し法 | ズク=銑鉄 |
赤目(あこめ)砂鉄 (融点1390℃) |
塩基性岩類の閃緑岩系(鉄分6〜9%)を母岩としチタン分が多く、TiO2として5%以上を含んでいる。 フェロチタン鉄鉱(ヘマタイト(Fe2O3)+イルメナイト(FeTiO3))。 |
全国的に多い。 中国地方山陽側および山陰側。 |
日本式間接製鉄法 | |||
古代では砂鉄〔中国地方では山陰側(チタン磁鉄鉱帯(真砂砂鉄地帯))〕よりも鉄鉱石〔中国地方では山陽側(フェロチタン鉄鉱系(赤目砂鉄地帯))〕を用いていた。 和鋼=たたら製鉄により製造された鋼。 日本刀は玉鋼を原料とする。 スラグは鉄滓(てっさい)と呼ぶ。 チタン磁鉄鉱はウルボスピネル(ulvospinel(oの頭に¨))−磁鉄鉱(magnetite)系列の固溶体であり、フェロチタン鉄鉱はイルメナイト(ilmenite)−赤鉄鉱(hematite)系列の固溶体である(『Fe-S-O系』のページの『Fe-Ti-O』、および『金属鉱物資源』のページの『相図』を参照)。 |
ヒ(けら)押し法と銑(ずく)押し法
『私達が通常「鉄」と呼んでいるものは、基本的には、含まれる炭素(C)の量によって性質が大きく変化し、用途も変わるので、冶金学的な分類としては、炭素量0.02%以下を鉄、2.1%以上(1.7%以上との区別もある)を銑鉄(せんてつ)、その中間を鋼(はがね)と呼んでいます。 和鋼博物館によるたたらの話の『3.和鋼・和鉄・和銑?』から |
斐伊川水系における鉄穴流し跡地の分布と近世以降の平野の拡大 出雲河川事務所による『鉄穴流しと天井川』から(ただし国立国会図書館による2009年2月のアーカイブWARP) |
|
|
|
|
|
|
貞方(1994)による『中国地方における鉄穴流しによる地形環境変貌についての自然地理学的研究』から |
図1 中国山地の鉄穴流し跡地の分布 島根・広島・鳥取・岡山各県境が接する中国脊梁山地一帯に跡地は広く分布する。とくに、島根県の矢上町、同じく横田町、広島県の東城町小奴可、鳥取県日南町などが跡地の集中域で、その合計面積は1万9千ヘクタールに及ぶ。いずれの地でも数メートルから最大10メートル程度の厚さの掘り崩しが行われ、あわせて9〜12億立方メートルの廃土が生産された。 貞方(HP/2013/5)による『たたら製鉄により作り変えられた中国地方の山地と平野−自然環境の保全とは−』から |
石炭選鉱 |