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【か】
- 科(familia、family)J
『〔1〕生物分類のリンネ式階層分類体系において、目の次下位、属の上位におかれる基本的階級、もしくはその階級にあるタクソン。科の名称は、基準属の名称の語尾に動物では-idaeを、植物や細菌では-aceaeを付して示すことが命名規約で定められている。
〔2〕植物生態学においては、familyは族を表わす。』
科(か)K
『生物分類の階級の一つ。目(もく)の下で属の上に位置する。』
- 界(regnum、kingdom)J
『生物分類のリンネ式階層分類体系において、最高位におかれる基本的階級、もしくはその階級にあるタクソン。界の名称は国際動物命名規約の規制を受けない。C.
von リンネは、地球上の全生物を動物界(Animalia)と植物界(Plantae)に分けた(二界説)。この体系は一般常識的なものとして広く普及したが、現在では、L.
Margulis とR.H. Whittaker の提唱する五界説が受けいれられている。なお、この上位にsuperkingdomなどを設ける考えもある。』
界(かい)K
『生物を分類する最上位の分類階級。リンネ以来、生物は動物界と植物界に分類されてきたが、近年は原生生物・植物・動物の3界に分けるようになった。さらに原核生物・原生生物・植物・菌類・動物の5界に大別することもある。』
- 外菌根(ectomycorrhiza、ectotrophic
mycorrhiza)J
『外生菌根。菌根のうち、菌糸が高等植物の根をおおって、その表面または表面に近い組織中に繁殖し、菌被(菌套)をつくっているもの。カバノキ科・ブナ科・マツ科その他の樹木の根に、多くの担子菌類とくにマツタケ類の菌(イグチ・フウセンタケ・ベニタケなどの諸属)が着いて生ずることが多い。』
- 外圏錯体(outer-sphere complex)I
『金属錯イオン(電荷をもたない錯体分子の場合もある)がその構造を保持したままで、他の分子やイオンと相互作用をし、一体となって挙動するとき外圏錯体とよぶ。相互作用としては静電相互作用(この中には水素結合も含まれる)が最も重要で、そのほかに疎水相互作用、ファンデルワールス力などがある。反対符号の電荷をもつイオンどうしが形成する外圏錯体はイオン対ともよばれる。疎水相互作用などにより、同符号の電荷をもつイオン間でも外圏錯体を形成することがある。』
- 解膠剤〔かいこうざい:deflocculant、dispersing
agent、peptizing aent(分散剤)〕B
『媒液中でのコロイド粒子を安定なゾルとするために用いられる薬剤をいう。解膠あるいは凝膠の現象は、粒子間に作用する2つの力、すなわち電気二重層間の静電気的反発力と、ファンデルワールス力による吸引力の合力によってきまる。ファンデルワールス力は粒子ペアーが決まれば媒液のいかんにかかわらず不変(粘土のように粒子の形が不等方の場合は会合の仕方でファンデルワールス力が異なる)であるから、反発力を増大(減少)させるもの、すなわち、電気二重層の厚みを増大(減少)させるものが解膠剤(凝膠剤)となる。粘土鉱物では負に帯電することが多く、したがってこの場合は陽イオンを吸着し、対イオンとなる。対イオンは解膠(凝膠)させる場合は1価陽イオン(多価の陽イオン)を必要とする。また、粘土鉱物の多くはZ軸に平行方向の端面は、酸性領域では正に帯電するので、負に帯電したZ軸にほぼ直角な層面と静電気的に引き合い、いわゆる相互凝膠を起こすので、これを防止するために媒液をアルカリ性(ほぼpH
9以上)とする必要がある。
以上から、解膠剤としては1価陽イオンの水酸化物が有効で、NaOHやNa2CO3あるいは珪酸ナトリウム(Na2O・2〜3SiO2)などが用いられる。珪酸ナトリウムは解膠効果をそこねる2価のCa2+やMg2+を珪酸塩として沈降させこれらイオンをマスクする作用や、SO32-イオンやコロイド性SiO2が粒子に吸着され全表面に負の荷電を与えるようないわゆる保護コロイドとしての作用が期待される場合が多い。
粘土を含む多くの無機質コロイドの解膠剤としては、リン酸ナトリウムの各種重合物が広く用いられている。これはCa2+やMg2+をリン酸塩の形として捕え解膠しやすくすることがひとつのねらいである。このほかの解膠剤としての役割としては、正に帯電する可能性のある粒子の結晶面をマスクして外側に向かって負に帯電させ、いわゆる相互凝膠の防止があげられる。粘土鉱物では図(略)に示したように、端面Al3+の位置にリン酸塩が吸着され、外側に向かって負の帯電を起こす。
解膠剤には以上の無機質の他に有機質のものがあり、セラミック工業のほかにも広く用いられている。リグニンスルフォン酸ナトリウムやカルボオキシメチールセルローズがこれである。いずれも分子量が数百から数百万という高分子で、その間の重合度の種々のものがある。これら分子が水素結合や物理吸着で粘土粒子に吸着され外側に向かって負に帯電する。この場合の対イオンはNa+である。高分子解膠剤でも無機質解膠剤と同じく添加量は適当でなければならない。また、対象となるコロイド粒子の種類によって最も適当な重合度がある。多価の陽イオンは少量存在していても解膠が妨げられるので、これら多価陽イオンをキレート化合物として捕えて、解膠させることも行われる。これに相当する解膠剤としては、うるし科の樹皮液クエブラッチョ(Quebracho)がある。〔奥田 進〕』
- 解糖(glycolysis)H
『グルコース(通常、リン酸化されたもの)の嫌気的分解で、細胞質ゾル中でピルビン酸を生成し、呼吸の好気的段階にグルコースを供給する最初の過程を形成する。呼吸は通常、ミトコンドリアで行われる。ミトコンドリアのない細胞(およびメソソームのない原核細胞)では、低酸素条件の場合は、条件的嫌気細胞(例、横紋筋繊維)と同様に、解糖によってほとんどのATP合成を行う。その経路を図15(略)に示す。グルコース1分子から、2分子のATPと2分子のNADHを生成する。NADHはピルビン酸の乳酸への還元や、アセトアルデヒドのアルコールへの還元に使われるほか、肝細胞で生じるような、補酵素Aからの脂肪酸とステロイドの合成に利用される。
解糖系で最も重要なのは、フルクトース1,6-ビスリン酸分子を2つのトリオースリン酸分子に加水分解することである。この結果、経路の残りの段階では、最初のグルコースリン酸分子に対して2倍の分子が生じることになる。フルクトース6-リン酸からフルクトース1,6-ビスリン酸への変換が解糖系の主な律速段階であり、この段階に働くホスホフルクトキナーゼは調節酵素として細胞質ゾルの(AMP+ADP):ATPの比率に従って作用し、高いATP濃度下では解糖は阻害される。解糖系に関与する酵素群は、遺伝子増幅を含む過程によって単一の祖先酵素から進化してきたらしい。
解糖(かいとう)K
『グリコーゲンまたはグルコースを嫌気的にピルビン酸に分解し、ATPを生じる過程が解糖系で、解糖系でおこなわれる反応を解糖という。ほとんどすべての生物がこの代謝系をもっている。筋肉などではピルビン酸はさらに乳酸となるが、ここまでの反応を解糖とよぶこともある。解糖系は細胞質にある可溶性酵素によって進行する反応系である。』
- 外皮(exodermis)H
『密に接した皮層細胞の層で、コルク化した細胞壁をもち、根の古い部分でしおれた有毛層と入れ替わる。』
- 外部比表面積(outer specific surface
area)B
『粉体の外部表面による比表面積のこと。
粉体の全表面積は粒子の外部表面による外部表面積と、細孔壁などによる内部表面積の2種類から成ると考えることができる。両者の区別が明確な粉体もあるが、その区別が判然としないものもある。比表面積の測定法のうち、外部比表面積を単独に分離して測定できる方法はない。しかしながら、Lea-Nurse法やBlaine法など透過法による比表面積は外部比表面積に近いものと考えることができる。その他、顕微鏡法や沈降法などによる粒度分析の結果に基づいて外部比表面積を見積もることもできる。〔井川博行〕』
- 解離(dissociation)@
『物質がその成分原子、イオン、原子団などに可逆的に分解する反応をいう。一般に高温ほど分解が進む傾向があり、加熱による解離を熱解離という。また水溶液中などで電解質がイオンに解離する場合をとくにイオン解離または電離という。解離反応の平衡状態(解離平衡)に対して質量作用の法則が適用され、その平衡定数をとくに解離定数という。また解離平衡において解離している分子数の全分子数に対する割合を解離度という。電離に対する解離定数、解離度をそれぞれ電離定数、電離度ということがある。』
- 化学吸着(chemisorption)@
『化合物の生成をひきおこす力と同程度の力によっておこる吸着を意味し、固体表面への化学吸着は一種の表面化合物の形成とみることができる。このとき吸着分子の解離がおこって表面化合物を形成することがあり、この場合とくに解離吸着という。吸着熱は40〜400kJ/molにおよび、物理吸着の場合とくらべてはるかに大きい。化学吸着は表面が吸着分子の単分子層でおおわれたところで終るが、化学吸着層の上に物理吸着がおこる場合もある。吸着のさいに活性化エネルギーを必要とするものを活性化吸着という。化学吸着は不均一触媒の作用とも密接な関係がある。』
- 化学親和力(chemical affinity)@
『古くから化学反応のときに物質間にはたらくと考えられてきた特別な力を化学親和力という。化学親和力の本性について長い間議論があり、たとえばトムセン(1852)やベルトロー(1867)は化学反応に伴う発熱量を化学親和力の尺度と考えたが、自発的に吸熱反応がおこる場合もあることからもわかるように、これは誤りで、正しい解答は熱力学によって初めて与えられた。それによると化学親和力の大きさは化学反応が可逆的に進行するときに得られる最大仕事(最小仕事の符号を変えたもの)、すなわち定温定圧の条件ではギブズ自由エネルギーGの減少量、定温定積の条件ではヘルムホルツ自由エネルギーFの減少量で与えられる。ド・ドンデル(Th.De
Donder)は、化学反応に伴う非補償熱(uncompensated heat)Q'を用いて、A=dQ'/dξによって化学親和力Aを一般的に定義した(1922)。ξは反応進行度である。定温定圧反応ではA=−dG/dξ、定温定積反応ではA=−dF/dξとなる。』
- 化学的酸素要求量(chemical oxygen demand)K
『Chemical Oxygen Demandのことで、略号COD。水質汚濁度を表わす指標の一つで、主に水中に含まれる有機物が酸化剤によって酸化されるとき、消費する酸化剤の量を、それに相当する酸素の量で表現したもの。わが国では排水規制や環境基準には、酸化剤として過マンガン酸カリウムだけが用いらされている。』
- 化学当量(chemical equivalent)@
『化学反応性にもとづいて定められた元素(単体)または化合物の一定量。単に当量ともいう。
1)元素の化学当量。酸素の7.999g(酸素原子の1/2molに相当する)と化合する元素の質量をWgとするとき、Wをその元素の化学当量という。直接酸素と化合しない元素の化学当量は酸素以外の適当な元素を仲介にして定めることができる。元素の原子量と化学当量との比はその元素の原子価の値に等しい。またWgをその元素(単体)の量の単位として用い、1当量という。
2)酸および塩基の化学当量。酸として作用する1当量の水素を含む酸の量およびこれを中和する塩基の量をいう。
3)酸化剤および還元剤の化学当量。還元作用に関与する水素の1当量を含む還元剤の量およびこれに相当する酸化剤の量をいう。』
- 核(nucleus、複数はnuclei)H
『(1)真核細胞において、細胞の体積の10%を占める染色体を含む細胞小器官。細胞質とともに細胞の原形質を形成する。真核細胞には核のない細胞や1つ以上の核をもつ細胞があるが、いずれも単核の細胞に由来する。
核の大きさはさまざまで、同じ細胞中でも変化し、活発に合成を行う細胞(例、分泌細胞)で大きくなる傾向がある。それぞれの核は二重の核膜で包まれ、核膜には内径30〜100nmの穴(核膜孔)を形成する複合体があり、内側と外側はつながっている。核膜孔複合体は核膜を介した核質の分子の能動輸送に関与し、虹彩のように開閉する構造をしていると考えられ、タンパク質を核内に、RNAを核外に同時に輸送することができる。核膜の内膜には中間径フィラメント(主にラミン)の接着部位があり、薄い核ラミナ構造を形成し、間期において染色質の繊維を支えている。ラミンはサイクリン存在下で細胞周期を開始するキナーゼの標的であると考えられている。その他の中間径フィラメントは、外膜の細胞質側の表面を覆っている。高等真核生物(例えば、ケイ藻類、渦鞭毛藻類、菌類を除く)の有糸分裂および減数分裂お前期におけるラミンのリン酸化は、核膜の消失と関係している。一方、後期におけるラミンの脱リン酸化によって核膜の小胞が染色体の周囲に形成され、これが徐々に融合して核膜を再形成する。通常、核膜の外膜はところどころで小胞体と連絡している。核質は部分的なドメイン構造(例、核小体、コイル体)を発達させ、酵素、プロテアソーム、RNP、高速移動群タンパク質、その他のタンパク質を含む。これらのうちのいくつかは、しばしば特定の染色体上に核小体形成体として縦に並んでいる複数コピーのリボソームRNA遺伝子からのrRNAの転写に関与している。核はタンパク質を合成できず、適当なソーティングシグナルのペプチドを付加されたタンパク質が、細胞質から核膜孔を通して移入される。
適当な染色法によって、間期の核の染色体を薄い染色質の粒として観察することができる。間期の核は比較的凝縮していない染色質を含む。染色質は核分裂の際に凝縮して(コイル状になって短く太くなる)染色体となり、これは光学顕微鏡で観察できる。繊毛虫類と他のいくつかの原生動物では2種類の核をもつものがある。大核は細胞の日々の生存にかかわる機能を担い、1つまたは複数個ある小核は接合に関与している。大核はゲノムの大部分を複数コピーもち、これはしばしば断片化されている。大核が無糸分裂によって増えるのに対し、小核は有糸分裂によって増える。成熟した真核細胞で核が消失したもの(例、哺乳類の赤血球)は‘寿命の長い’mRNAによってタンパク質合成を行っている。核移植実験は、細胞分化に関して多くを明らかにした。核は細胞質に対して(mRNAの形で)情報を与えるだけでなく、例えば成長因子やステロイドホルモンと核内受容体との複合体などによって、細胞質側からの‘指令’を受けている。また核膜は、成熟したmRNAのみを細胞質に移動させ、どのタンパク質を合成するかを調節しているらしい。核をもたない原核生物には、このような調節はできない。
(2)神経核。脊椎動物の脳における神経細胞体の集団(神経節)で、解剖学的に区別される構造。例えば、視床内の外側膝状核は2本の視神経の神経細胞体を含んでいる。
(3)原子核。化学元素の原子の中央部分。1つ以上の陽子とたいていは1つ以上の中性子を含んでいる。』
核(かく)K
『真核生物の細胞内の染色糸を含む領域で、核膜に囲まれた構造。核膜は細胞膜と同様の脂質二重層の単位膜が扁平(へんぺい)な袋状となり、外膜と内膜の二重膜構造をとる。外膜は一部で小胞体とつながり、内膜と融合した部位では核膜孔となって核と細胞質間の通路となる。一般に分裂期には核膜は消失し、染色糸は凝縮して染色体となる。』
- 拡散(diffusion)@
『異種の粒子の混合系が熱平衡状態に近づく際におこる濃度分布の変化の過程。一様な温度の静止混合流体中の濃度が均一でないときには、濃度を一様分布に近づける変化がおこる。また温度の分布が一様でなければ熱拡散がおこる。浸透は隔膜を通じて行なわれる拡散である。一般に構成粒子の熱運動によっておこる。同種分子が単に位置を交換するのも同じ現象で、自己拡散といい、放射性同位体をトレーサーとして観測される。粒子の濃度をc、重力、遠心力など粒子に作用する力をF、移動度をμとすれば、平均自由行路が十分短いかぎり、粒子の流れの密度jは
j=−D grad c+μcF
であり。濃度の変化に対しては拡散方程式
∂c/∂t=D△c−div(μcF)
が成り立つ。Dは拡散係数である。化学反応、相変化などが伴う場合には
∂c/∂t=D△c+f(c)
の形の式が成り立つ。f(c)は一般に非線形で空間的時間的なパターン形成が生じうる。』
拡散(かくさん)K
『物質の分子運動による移動。濃度分布が一様でない気体や液体は拡散によって、時間とともに一様な濃度分布に近づく。水溶液中で溶質分子の濃度差が存在すると、溶質分子は分子運動の結果濃度勾配にしたがって移動し、濃度が均一になる。このとき溶媒分子である水分子は溶質と逆方向に拡散する。』
- 拡散律速(diffusion-controlling)@
『化学反応などの速度過程が物質の拡散速度によって支配される状態をいう。溶液内の無機イオン間の反応は一般に活性化エネルギーが小さく、イオン相互の衝突によって直ちにおこるので、その反応速度はイオンの電荷間の吸引、反発の影響をふくめた拡散の速度に支配される。固相反応、腐食、溶解などの不均一系反応では、境界面に生じた拡散層を通しての物質移動の速度がみかけの反応速度となる。不均一系触媒反応において、触媒表面上の吸着分子をふくむ反応の速度がきわめて大きいときは、反応分子の表面への拡散あるいは生成分子の均一相への拡散が律速段階となることがある。とくに多孔質触媒による反応では反応分子の細孔内拡散によって反応速度が支配される。また、電極反応で電極における電荷移動反応の速度が大きいとき、電解電流は拡散に支配される拡散電流となる。』
- 核小体(nucleolus、複数はnucleoli)H
『仁ともいう。核の体積の最大25%を占める球状の構造体。間期の核内には、塩基性色素で染められる1個以上の核小体が認められる。その大きさは活性の高さを反映する。染色体特異的な高度に増幅されたリボソームRNA遺伝子の縦列(核小体形成体)とその転写産物(リボソームRNA配列)が存在する凝縮していない染色質領域および、特定のRNA結合タンパク質、リボソームタンパク質、リボソーム形成の初期に機能するすべての要素から構成される。通常、核小体は核分裂の初期にだんだん小さくなり消失するが、終期にRNA合成が再開するときに再び現れる。核小体のRNAとタンパク質は、核小体自身が分解している間は染色体により運ばれているらしい。ミドリムシ植物では、核小体(=エンドソーム)は有糸分裂の間も分解しない。』
核小体(かくしょうたい)K
『真核細胞の核内でリボソームをつくる区域で、仁ともいったが、教育用語としては、学術(動)・(植)にしたがい、わかりやすい核小体に統一した。タンパク質とRNAから成る小球体で、細胞核の中心付近に1-数個存在する。リボソームRNA(rRNA)の合成の場でもある。』
- 核生成(nucleation)I
『試料溶液に沈殿剤を加えるとき、あるいは溶液を濃縮するとき、過飽和により結晶の種が集まってできることをいう。核が成長することによって大きな結晶になる。』
- 核膜(nuclear membrane、nuclear
envelope)J
『真核生物の核と細胞質との界面にある二重構造膜。同心円状の2枚の薄膜はそれぞれ厚さ6〜8nmで、幅15nm程の電子密度の低い空間をはさんでほぼ平行に並ぶ。膜には物質の移動に関係した多くの核孔があり、核膜の外膜と内膜はこの部分で連絡している。多くの場合、外膜は小胞体の一部と連続している。核膜のこの基本構造は生物種によって異なる。例えば、緑藻類のチリモは1枚の核膜があるだけだが、アメーバやある種の脊椎動物細胞では、核膜の内側に第三の裏打ち構造があり三層構造を示す。また、渦鞭毛虫類の夜光虫は二重膜構造をもつが、その核膜には核孔がない。高等真核生物の有糸分裂前期に、核膜は小胞や小胞体と区別できないようないくつかの断片になるが、分裂終期には、娘染色体群表面に再構成され、娘核の核膜となる。一方、下等真核生物の多くのものでは分裂期を通じ、核膜は消失せずに存在することが知られている。』
核膜(かくまく)K
『真核細胞の核と細胞質を隔てる膜で、核を同心円状に取り巻く2層の膜より成る。核膜には核膜孔が存在する。核に接する内側の膜は核内の構造と連絡して核の形状を保ち、細胞質側の膜は小胞体とつながっている。分裂時には小胞として解離し、のちにふたたび会合する。』
- 核膜孔(nuclear pore)H
『核孔ともいう。』
核膜孔(かくまくこう)K
『核膜に多数存在し、核と細胞質を直接つなぐ通路で、多種のタンパク質によって構成されている。中心の細い通路は核と細胞質ゾル間の物質の通り道で、小さな分子は拡散による移動が可能であるが、大きなRNAやタンパク質分子は、核膜孔を構成するタンパク質が関与する特殊な能動輸送によって移送される。核孔ともいうが、核膜にあいた通路なので、教育用語としては核膜孔に統一する。』
- 学名(nomen、scientific name)J
『学術的な目的に用いられる生物の名称で、特に命名規約に基づいてタクソンに付けられる名称。すべてラテン語、もしくはラテン語以外の単語はラテン語化して扱われる。属階級群以上は1単語からなる単名式名(単名
uninominal name、uninomen)で、種階級群以下は二名式名、三名式名(植物では四名式名もある)で表わされる。これに対し、命名規約と関係なく各言語域で日常的に使われる生物の名称を俗称(俗名
vernacular names)という。』
学名(がくめい)K
『リンネがその著書『自然の体系』のなかで提唱した規約に準じて、あらゆる生物につけられる世界共通の名。動物、植物および細菌の学名に対してそれぞれの国際命名規約がある。ラテン文字(ローマ字)を用い、ラテン語またはラテン語化した語で表現する。種を表わす学名は二名法による。』
- 火山灰土(volcanic ash soil、Andosol)B
『わが国では、火山砕屑物(テフラ)を母材とする土壌を広く火山灰土とよび、腐植質火山灰土、黒色土、火山性黒色土、腐植質アロフェン土、黒ぼく土、草原様褐色森林土などといった土壌分類上の名称が提案されてきた。火山灰土にほぼ相当する諸外国の名称としては、アンドソルAndosol(FAO-Unesco,フランス)、アンデプト(Andept、米国)、火山性土(volcanic
soil、ソ連)、黄褐色ロームおよび黄褐色軽石土壌(yellow-brown loam、yellow-brown pumice
soil、ニュージーランド)などがある。現在わが国で広く使用されている火山灰土の分類としては、耕地土壌に関するもの(農水省農業技術研究所化学部土壌第3科、1983年)と林野土壌に関するもの(農水省林業試験場土壌部、1975年)とがある。耕地の火山灰土は、排水条件によって、黒ぼく土、多湿黒ぼく土、黒ぼくグライ土の3つの土壌群に分けられ、さらに腐植層の厚さと腐植含量とによって、細分類される。林野の火山灰土は、おもに黒色土壌群と褐色森林土壌群に含まれる。黒色土壌群はA層の厚さと色によって、黒色土と淡黒色土に分けられる。一方、外国の火山灰土の分類をみると、FAO-Unescoの場合には、アンドソルをA層の性質や母材である火山砕屑物の含量によって、オクリック、モーリック、ヒューミック、ヴィトリックの4種類に細分類する。米国では、アンデプト亜目はクリアンデプト、デュランデプト、ヒドランデプト、プラカンデプト、ヴィトランデプト、ユートランデプト、デストランデプトの7種の大群に分けられる。火山灰土の分布は、火山活動の盛んな地域に広い。世界的には、環太平洋火山帯に、わが国では、北海道、東北、関東、九州に集中的にみられる。火山灰の噴出源と火山灰土の分布の関係をみると、ふつう噴出源の東方に楕円状に分布する。これはふつうテフラが偏西風によって、噴出源の東方に運ばれ、楕円形に堆積するためである。
わが国の発達した火山灰土の断面形態をみると、ふつうA層は25〜50cmの厚さをもち、黒色味が強く、腐植含量が高い(10〜30%)。またA層は上部ほど粒状構造が発達し、多孔質で軽く、砕けやすい。B層は暗灰色ないし暗褐色で、弱い塊状ないし柱状構造が発達し、粘土の集積移動が明らかでない。比較的年代が新しい火山灰土の場合には、B層の発達が弱く、A層の下位には風化の進んでいないテフラがC層となっている。火山灰土はA層とその下位の層界が明瞭である。なお外国の火山灰土の場合には、わが国のような厚い黒色味の強いA層をもつ火山灰土は少ない。
火山灰土中に見いだされる粘土鉱物の種類は多様であるが、ふつうの土壌に比べると、非晶質成分と準晶質鉱物(イモゴライト)に富むのが特徴である。これに加えて、最近では2:1型粘土鉱物に富む火山灰土も多く見いだされている。非晶質成分には、アロフェンのほか珪素(オパーリンシリカ)、アルミニウム、鉄などの遊離酸化物または水酸化物、腐植とアルミニウム・鉄の複合体などが含まれる。
火山灰土の物理的特性としては、固相率が低いために仮比重が小さいこと、砕けやすいこと、現場含水比が高いこと、乾燥による物理性の変化が大きいことなどがあげられる。また化学的特性としては、A層が黒色味の強い腐食を多量に含むこと、変異荷電をもつこと、フッ素やリン酸との反応性が高いこと、腐植と複合体を形成している活性アルミニウムと鉄が多いことなどがあげられる。従来、以上のような理化学的特性は、主としてアロフェンに帰せられていたが、最近では、非アロフェン質火山灰土でも、同様な理化学的特性を示すことが知られている。このような火山灰土の成因は、その母材が表面積が大きく、しかも風化抵抗性の小さい火山ガラスが多く含まれているために、急激に風化し、非晶質成分や準晶質成分が多く生成すること、ススキやチガヤなどのか本科植物が人為的に森林が破壊されたときに侵入し、火山灰土中に有機物を多量に供給したこと、活性のアルミニウム・鉄が腐植と複合体を形成することによって、微生物による腐植の分解が抑制され、また腐植酸の腐食化度が促進されたため、とみられている。〔庄子貞雄〕』
- 加水分解(hydrolysis)@
『水によるソルボリシス。
(1)塩の加水分解。塩に水を作用させて、それを構成する酸または塩基に分解する反応。弱酸または弱塩基からなる塩を水に溶かすと、もとの弱酸とOH-または弱塩基とH+(水和してH3O+)を生じる。
CH3COONa + H2O ⇔ CH3COOH + OH- +Na+
NH4Cl + H2O ⇔ NH3 + H3O+ + Cl-
塩の加水分解平衡に対して質量作用の法則を適用できるときは、その平衡定数(加水分解定数)は弱酸または弱塩基の電離定数と水のイオン積によって表わされる。
(2)金属イオンの加水分解。金属イオンが水溶液中でH+(水和してH3O+)またはOH-と配位化合物をつくる反応をいう。
[Cr(H2O)6]3+ + H2O ⇔ [Cr(H2O)5(OH)]2+ + H3O+
Be2+ + 3H2O ⇔ Be(OH)3- + 3H+
(3)有機化学では、エステル、ラクトン、アセタール、酸無水物、酸塩化物、酸アミドなどが水の作用によって酸、アルコール、アルデヒド、ケトン、アミンなどを生じる反応をいう。たとえばエステルとアミドの加水分解の反応は、
R・CONHR' + H2O → R・COOH + NH2R'
R・COOR' + H2O → R・COOH + R'OH
である。エステルの加水分解はけん化、ショ糖のそれは転化、デンプンやセルロースのそれは糖化とよばれている。』
加水分解(hydrolysis)H
『水分子の付加に伴って分子が切断される反応。いくつかの最も特徴的な生化学的過程は、加水分解反応による(例、消化、ATP分解、呼吸経路における脱リン酸化)。縮合反応と化学的に逆の反応。』
加水分解(かすいぶんかい)K
『ある化合物の化学結合部位に水分子が反応し、その化学結合が切断した両端に水分子から生じたH+とOH-のイオンが取り込まれて2個の分子を生成する反応をいう。自発的に起こる反応もあるが、生物にとって重要な加水分解反応の大部分は酵素の働きで進行する。例として、エステル(脂肪など)からのカルボン酸とアルコールの生成、タンパク質からのポリペプチドやアミノ酸の生成、多糖類からの低分子糖類の生成がある。』
- 活性化エネルギー(activation energy)@
『化学反応や拡散、粘性流などの輸送現象の過程で速度定数の温度変化を表わすアレニウスの式に含まれる定数の1つをいい、原系から遷移状態をへて生成系に移る過程で遷移状態と原系の状態とのエネルギー差に相当する。素反応では遷移状態(活性錯合体)と原系との内部エネルギー差として定義され、活性錯合体と原系の零点エネルギー準位の差をとくに量子論的活性化エネルギーということがある。活性化エネルギーの値は、ふつうの化学反応では数十〜数百kJ/molとなることが多いが、原子および遊離基の反応、無機イオン反応や輸送現象ではこれより小さい。これらの過程が進行するためには、系が活性化エネルギー以上のエネルギーをもつことが必要である。アレニウスの式から求められるみかけの活性化エネルギーの内容は活性化自由エネルギーの考察から明らかにされるが、一般の化学反応では活性化エンタルピー(活性化熱)との差が小さく、混同して使用されることが多い。』
活性化エネルギー(かっせいかえねるぎー)K
『化学反応が進行する際に初期状態から活性化を受けて一時的に高いエネルギーレベルにもち上げられ、エネルギーレベルの低い状態への反応が進行する。初期状態から高いエネルギーレベルにもち上げるのに要するエネルギーを活性化エネルギーといい、環境の熱エネルギーから供給される。』
- 活性化自由エネルギー(free energy of
activation)@
『化学反応において、活性錯合体の状態と原系との間の標準ギブズ・エネルギーの差僭*あるいはヘルムホルツ・エネルギーの差僥*をいう。活性化自由エネルギーを僭*としたとき、等温反応の速度定数kは
k=κ(kB/h)exp(−僭*/RT)
で与えられる。κは透過係数、Tは絶対温度。僭*はさらに圧力pが一定のとき、僭*=僣*−T儡*=僞*+p儼*−T儡*と表わされる。僣*、僞*、儡*、儼*はそれぞれ活性化エンタルピー(活性化熱)、活性化内部エネルギー、活性化エントロピー、活性化体積とよばれる。速度定数についてのアレニウスの式から得られる見かけの活性化エネルギー
Ea=RT2(∂log k/∂T)
は、等圧過程ではEa=僣*+RT、等積過程ではEa=僞*+RTとなる。一般に僣*、僞*はRTにくらべて大きいので、どちらもEaにほぼ等しい。触媒の作用により反応速度が増大するのは、主として僭*の低下による。
- 活性錯合体(activated complex)@
『化学反応で素反応の進行につれて反応系が原系の状態から生成系の状態に向かって原子配置を変える経過のなかで、ギブズ・エネルギー(定圧)あるいはヘルムホルツ・エネルギー(定積)の最も高い状態(遷移状態)またはその状態における反応系をいう。多くの反応でこの状態は、反応座標上のポテンシャルエネルギー極大の点、厳密にはエントロピー変化も含めてギブズ・エネルギーまたはヘルムホルツ・エネルギーが極大の点に当るが、この点は反応座標方向以外の方向の変位に対しては極小値となるいわゆる鞍点である。したがって活性錯合体は反応経路にそう変化以外は、並進、回転、振動などのすべての通常の運動を安定に行ないうる一種の複合分子と考えられるが、安定分子に比較して寿命はきわめて短い。遷移状態理論では、活性錯合体の概念を基礎として反応速度が求められる。』
- 活量(activity)I
『活動度ともいう。溶液がラウールの法則に従うとき、成分iの化学ポテンシャルμiはその成分のモル分率がxiのとき、
μi=μi゜+RT ln xi
で与えられる。μi゜は標準状態(xi=1のとき)の化学ポテンシャルである。ラウールの法則からはずれるときにも同じ形の式が使えると便利なので、xiの代わりにaiを用いて上式を成り立たせるようにしたとき、aiを成分iの活量という。aiとxiの比γi=ai/xiを活量係数(activity
coefficient)という。γiはxiによって変化し、xiが1に近づくにつれてγiも1に近づく。』
- 荷電(粘土の)(電荷)(charge)B
『粘土は空気中でも溶液中でも電気を帯びている。その原因には結晶の表面あるいは破面の破壊原子価によるものと結晶内のイオンの同形置換によるものとがある。前者の荷電はあまり強くないが、後者のものは強く溶液中で種々の陽イオンを吸着しあるいは交換する。同形置換によるものはモンモリロナイト、ゼオライトなどにみられ、一般に吸着力、触媒力が強くまたベントナイトのように陽イオンが水和して膨潤するものもある。陰イオンの交換は一般に破壊原子価によるものが多い。〔加藤忠蔵〕』
- 荷電一定粘土(constant surface-charge
clay)B
『表面荷電が同形置換によって生じている粘土、すなわち永久荷電(permanent charge)を有する粘土。同形置換による荷電の量(と符号)はpHや塩濃度のような外囲条件の影響を受けず、一定であるのでこのようによばれる。2:1型鉱物はほとんどこれに属するが、しかし、これら鉱物の破壊原子価はpHや塩濃度によって量と符号が変わるので、厳密には荷電一定ではない。
Gouy-Chapmanの拡散二重層理論によれば、粒子表面荷電密度σo(esu・cm-2)と表面電位φo(esu)は
σo=(2nεkT/π)1/2sinh(zeφo/2kT)
で関係づけられる。荷電一定粘土ではσoは一定であるので、表面電位はn(対イオンの平衡液中濃度、ion・cm-3)、ε(分散媒の誘電率、esu2・dyne-1・cm-2)、およびz(対イオンの原子価)の増減によって増減する。式中eは電荷(esu)、kはBoltzmann定数、Tは絶対温度(K)』
- 仮道管(かどうかん)(tracheid)H
『生きていない木部の要素で、被子植物以外の維管束植物に特徴的である。一つの細胞から形成され、先細に引き伸ばされ、厚い木化した細胞壁をもつ。堅い壁の中空の筒が組織の長軸方向に平行に配列し、部分的に重なり合い、隣接する仮道管との連絡は壁孔によっている。水の通道と機械的支持の機能を果たす。道管と比較すると原始的である。』
仮道管(かどうかん)K
『道管を構成する細胞(道管要素)に似ているが、道管要素では両端に細胞壁の消失した部分すなわち、せん(穿)孔があるのに対して、穿孔をもたない細胞。成熟の途中で内容物を失った死細胞で、細長くて通常は両端がとがり、二次壁をもつ部分と一次壁だけから成る部分とでさまざまな模様がある。シダ植物と裸子植物には道管がないのがふつうで、木部は主としてまたはもっぱら仮道管から成る。』
- 下皮(hypodermis)J
『内側の基本組織と区別されるときの表皮のすぐ内側の1ないし数細胞層。しばしば多層表皮の内側の層と見かけ上混同されやすいが、下皮は皮層に由来するので発生学的には全く異なる。』
- 花粉(かふん)(pollen)K
『種子植物の雄性生殖器官(被子植物ではおしべ、裸子植物では小胞子葉)に生じた袋(花粉嚢)のなかでつくられ、雌性生殖器官(被子植物ではめしべ、裸子植物では胚珠)に運ばれて種子形成に関与する粉状のもの。花粉は、シダ植物などの胞子に外観は似ているが、単細胞ではなく、未熟な雄性配偶体に相当する。』
- 花粉分析(花粉学)(pollen analysis(palynology))H
『過去の植物相と気候を、花粉粒(および他の胞子)を用いて再構築しようとする技術で、特に湖底の堆積物や泥炭に保存されている花粉などを利用する。それらの腐食しにくい性質や独特の紋様が、過去の種の豊富さを量的、質的に見積もることに役立ち、典型的には数十年から数千年の時間単位で分析することができる。』
- 花粉粒(かふんりゅう)(pollen grain)H
『種子植物の小胞子。成熟した、または未熟な小配偶体を含む。外壁であるエキシンには模様がある。』
- カルボン酸(carboxylic acid)@
『カルボキシル基-COOHをもつ有機化合物RCOOH(Rは炭化水素基)の総称。カルボキシル酸ともいう。代表的な有機酸であり、この酸に属する化合物はすこぶる多い。カルボキシル基を1個もつものをモノカルボン酸、2個もつものをジカルボン酸、3個もつものをトリカルボン酸のようによび、また炭化水素基の類別に従って、鎖式カルボン酸と芳香族カルボン酸、あるいは飽和カルボン酸と不飽和カルボン酸とに分類する。そのうち非常に多数を占めるものの1つは鎖式モノカルボン酸であって、一括して脂肪酸とよばれる。この系列中で最も簡単な構造の酸はギ酸HCOOHであり、次いで酢酸CH3COOHである。芳香族カルボン酸も多数あり、その中で最も簡単なものが安息香酸C6H5COOHである。シュウ酸はHOOCCOOHはジカルボン酸の、アクリル酸CH2=CHCOOHは不飽和カルボン酸の系列のそれぞれもっとも簡単なものである。
カルボン酸は水溶液中で電離して水素イオンH+とRCOO-とを生ずるが、その電離度は一般にあまり大きくない。カルボン酸の誘導体にはカルボキシル基の水素原子が置換した各種の塩RCOOMIやエステルRCOOR'があり、またカルボキシル基の水酸基が置換した各種のアシル化合物(残基RCO-をアシル基という)、酸アミドRCONH2、酸アジドRCON3、酸塩化物RCOCl、酸無水物などがある。なおニトリルRCNもカルボン酸誘導体とみなされている。またヒドロキシ酸、ケト酸、アルデヒド酸、フェノール酸、アミノ酸、ハロゲンカルボン酸などはカルボキシル基とそれ以外の官能基をもつ化合物である。
カルボン酸の製法にはつぎのものがある。
1)第1アルコールまたはアルデヒドの酸化、
RCH2OH → RCHO → RCOOH
2)ニトリルの加水分解、
RCN + 2H2O → RCOOH + NH3
3)グリニャール試薬に二酸化炭素を通じ、生成物を酸で処理する。
RMgBr + CO2 → RCOOMgBr
RCOOMgBr + HCl → RCOOH + MgClBr
4)エステルまたは酸塩化物の加水分解。
5)芳香族カルボン酸は、側鎖をもつ炭化水素の酸化、あるいは塩化アルミニウムの存在で炭化水素にクロロギ酸エステルまたはホスゲンを作用させても得られる。』
- 加齢(老化)(ag(e)ing(senescence))H
『エイジング、エージングともいう。機能しはじめてからの時間経過に伴って、細胞、組織、器官などの機能が徐々に低下していくこと。細菌や多くの原生動物は、無限に分裂を繰り返すことにより加齢を防いでいる。高等植物では無限に栄養繁殖できるように見えるものも多い。多くの単純な無脊椎動物は、再生によって老化を防ぐことができるようである。有性の後生動物の生殖細胞系は、潜在的に不死である(ワイズマン)。体細胞組織の分解に示されるように、加齢は体細胞突然変異が徐々に蓄積すること、あるいは選択がさほど強くかからない遺伝子が遅く発現することによって起こるのかもしれない。DNAメチル化ができなくなることが関与していると示唆されている。集団の観点からいえば、同系交配か、または遺伝的変異を減ずる何か別の要因による場合もある。多くの植物、特に一年生植物や二年生植物では、老化や個体の死は花成や果実形成の後に起こる(サイトカイニンは果実形成が終わるまで老化を遅らせるらしい)。新しい葉はしばしば古い葉の老化を促進するが、その効果は新しい葉を除去すると抑えられる場合がある。エチレンやアブシシン酸やオーキシンを含むいくつかの成長物質が、1つまたはそれ以上の植物の器官の老化に影響を与えるとされている。』
加齢(かれい)K
『時間経過につれて生物種のすべてのメンバーに生じる不可逆的な変化の過程。広義には、発生・成長・成熟・老化の全過程をさすが、狭義に用いて、老化(成長後にさまざまな生命機能の不可逆的な退行変化が生じる過程)をさすことも多い。厳密には加齢と老化は区別すべきである。』
- 岩海(がんかい)(block field)A
『森林限界上の山頂や斜面中の平坦部で、凍結・融解現象の繰返しによってその場所で生産された大型の角礫がるいるいと堆積している場所(景観)。岩塊原とも。節理の発達がよく、しかも破壊されて礫になっても、その後はなかなか細粒物質まで分解されにくい硬質の岩石からなる所に生じやすい。細粒物質への分解が容易に進められる岩質の所では、霜食の淘汰作用によって各種の構造土が形成され、岩海は消滅する。〔岩塚守公〕』
- 緩衝液(buffer)H
『酸(H+)またはアルカリ(OH-)の添加によるpHの変化に対抗する溶液。酸からプロトンを奪い、アルカリが添加されたときはプロトンを放出する。通常、弱酸と共役塩基、またはその逆の混合液からなる。細胞内と細胞外では緩衝液は異なる。細胞内では、リン酸第一塩-リン酸第二塩系の酸塩基対とATPのような有機リン酸が最も一般的な緩衝液であるが、細胞外では炭酸緩衝系(炭酸-炭酸水素塩)が一般的である。脊椎動物の血漿では、血漿タンパク質もまた主要な緩衝系の一つである。ヘモグロビンは塩素移動の際に緩衝液として働く。pHの変化はタンパク質の形や機能に影響を与える。』
緩衝液(かんしょうえき)K
『酸性物質あるいはアルカリ性物質が添加されても、溶液のpHが大きく変動しないように保つ作用(これを緩衝作用という)のある溶液をいう。弱酸とその塩、または弱塩基とその塩の混合溶液がこの作用をもつ場合が多い。生物の体液は緩衝作用をもっており、pHを一定に保つのに役立っている。』
=緩衝溶液
- 緩衝作用(土壌の)(buffer action of
soils)B
『酸または塩基が加えられたときに起こるH+濃度の変化を小さくする作用を緩衝作用といい、弱酸とそれらの塩の混合液は緩衝作用を示す。強い緩衝作用を示すpHは、弱酸を50%中和したときのpH、すなわちpKaに相当する。土壌の緩衝作用は粘土鉱物や有機・無機複合体のコロイドの働きによる。たとえば弱酸的なアルミニウムやシラノール基(SiOH)の働きによって、あるいはコロイドが酸・塩基平衡を支配するイオンを吸着し、または放出して緩衝力を発揮している。アルミニウムの水酸化ナトリウム滴定曲線には図(略)のa,b,cの3つの緩衝帯がある。アルミニウムの酸・塩基反応は
Al3++H2O ⇔ [AlOH]2++H+ (1)
[AlOH]2++H2O ⇔ [Al(OH)2]++H+ (2)
[Al(OH)2]++0.5H2O ⇔ [Al(OH)2.5]0.5++0.5H+ (3)
[Al(OH)2.5]0.5++0.5H2O ⇔ Al(OH)3+0.5H+ (4)
Al(OH)3+H2O ⇔ AlO2-+2H2O+H+ (5)
このうちa、pH5.4までは(1)、(2)、(3)の反応が同時連続的に反応してH+の増減をくいとめており、約pKa5の弱酸的行動を示している。bのpH8.5までは(4)の反応、cのpH10までは(5)の反応が関与している。ただしpH5.4までのアルミニウムの緩衝作用は主としてAl3+を交換保持できる永久陰荷電をもつ粘土鉱物に期待されるが、弱酸的な変異荷電をもつコロイドは、それぞれのpKaに応じた緩衝力を示している。たとえばSi,Al-OHはpKa7、Al-OH2は約pKa5で、それらのpH域で緩衝作用がみられる。有機・無機複合体のpKaはカルボキシル基(COOH)の4.7くらいと考えられている。緩衝作用は酸と塩基に反応する物質によるものであるから、カルシウム、マグネシウムなどの塩基も緩衝作用をもつ。そのためCECが大きく、しかも塩基飽和度の高いものは弱酸性から中性付近に強い緩衝能をもっている。
一般に土壌pHが4〜8の間にあるのは、これら各構成物の総合的な作用として理解される。なおH2CO3のpKaが6.3であるように、炭酸も重要な緩衝能をもっている。方解石に富む土壌では、特に炭酸ガス分圧が土壌pHの調節者になっている。土壌系の気相・液相間におけるガス交換平衡が緩衝能を支配している例である。〔岡島秀夫〕』
- 緩衝溶液(buffer solution)B
『酸やアルカリが添加されたとき、そのpHの変化を妨げる性質を緩衝作用といい、その性質をもっている溶液を緩衝溶液という。強酸と強塩基の塩である塩化ナトリウムや弱酸と弱塩基の塩である酢酸アンモニウムの水溶液のpHはともに大体7を示す。この両者の溶液1000mlに0.1mol/lのNaOH
1mlを添加して十分攪拌するとNaCl水溶液のpHは7より10に変化するが、CH3COONH4水溶液のpHはほとんど変化しない。このようにpHの変化を妨げる緩衝溶液は一般に弱酸とその塩または弱塩基とその塩の混合物からなっている。試薬の組合せによりpH
1〜12の緩衝溶液を用意することができる。一般に粘土はアルカリ溶液に対して緩衝作用をもち、特に陽イオン交換能をもつモンモリロナイトの中には強い緩衝作用をもっているものがある。〔加藤忠蔵〕』
=緩衝液
- 岩石なだれ(rockfall avalanche、rock
avalanche)A
『山地斜面を構成する風化岩屑や基盤岩の一部が急激に崩壊して落下した後、あまり水分を含まずに高速で斜面を移動する現象。岩屑なだれとも。傾斜20゜〜40゜の比較的急な斜面で地震や水蒸気爆発を誘因として発生。なだれ後の堆積物の中は大きな角礫が大部分で無層理。〔井上公夫〕』
【き】
- キーダイヤグラム(key diagram)A
『地下水や温泉水に含まれる主要溶存イオンをNa+K、Ca+Mg、Cl+SO4、HCO3+CO3の四つのグループに分け、陽イオン・陰イオンそれぞれのミリグラム当量の総和が100%となるように、菱形グラフ上に作成したダイヤグラム。これに、Na+K、Ca、Mg+Cl、SO4、HCO3+CO3の二つの三角ダイヤグラムを合わせたのがトリリニアダイヤグラムである。
次ページの図(略)に示すように、Tの領域は重炭酸カルシウム(マグネシウム)型(carbonate hardness type)で、普通の地下水は大半がこの型を示す。Uの領域は重炭酸ナトリウム型(carbonate
alkalitype)で、停滞的環境の地下水がよくこの型を示す。Vの領域は非炭酸カルシウム(マグネシウム)型(noncarbonate
hardness type)で、温泉水・化石水などにみられる。Wの領域は非炭酸ナトリウム型(noncarbonate alkali
type)で、海水および海水に汚染された地下水がこの型を示す。Xは中間型(intermediate type)で、河川水などはこの型に入るものが多い。この表示法は量的組成がわからないのが欠点で、濃度和に比例して円の大きさで表示する円図法や、矢印の長さで各成分量を表示するベクトル法をキーダイヤグラム上に併用することも行われる。〔参〕A.M.Piper
et al. (1953), Water-supply Pap. US Geol. Surv., No.1, 136。〔永井 茂・島田寛一・五月女玲子〕』
→『野外調査について』の『水』を参照。
- 気孔(stoma、複数はstomata)H
『【植】植物の表皮にある開口部あるいは穴。孔辺細胞とよばれる特殊化した細胞によって調節されている。特に葉に存在する。ここを通じて気体(水蒸気も含む)の交換(ガス交換)が行われる。気孔は普通、一般的な表皮細胞とは形が違う細胞に伴われている(副細胞という)。気孔は葉の両面にある場合があるが、普通は下面により多くある。水生植物では水面に浮いている葉の上面だけに生じる。沈水葉は普通、気孔がまったくない。乾生植物の葉は他の植物と比較して多数の気孔をもつ傾向がある。たまにしかない水の供給の期間に、ガス交換を高速度で行えるようにするためである。しかし、これらの気孔は、水の損失を減らすために適応して、葉の下面では陥没(ときには毛状)している。一般に、双子葉類の葉では気孔の配置は散在的で、一方、単子葉類の気孔は葉の長軸方向に平行な列に配置されている。』
気孔(きこう)K
『維管束植物の表皮のところどころにあり、気体の出入り口となる孔。表皮細胞が特殊化した孔辺細胞の対によって挟まれたすきま。孔辺細胞は膨圧に応じて変形するためそれにともなって気孔が開閉し、したがって気孔を通じて蒸散する水分の量やその他の気体の出入りが調節される。多くの植物では葉の下面に多いほか、上下両面に均等に分布する場合もあり、茎にもある。』
- 基質(substrate)H
『(1)酵素が作用する物質。
(2)動物が歩行したり、付着したりする地面などの固形物。』
基質(きしつ)K
『〔1〕酵素は特定の物質に作用してその物質を変化させるが、このとき酵素作用の対象となる物質を酵素の基質という。
〔2〕結合組織の細胞外にあって細胞が接着するための足場となる物質(フィブロネクチンなど)も基質というが、教育用語としては、他との混同を避けるために細胞外マトリックスとする。
〔3〕ミトコンドリアの内膜に取り囲まれる無構造的な領域も基質というが、これも他との混同を避けるために、ミトコンドリアのマトリックスという。』
- 偽柔組織(pseudoparenchyma)H
⇒菌糸組織
- 寄生(きせい)(parasitism)K
『他の生物の体内に入り込んだり、体表に付着して、その生物から主に栄養となる物質を摂取して生活すること。寄生する生物を寄生生物、寄生される生物を宿主という。寄生生物は宿主の利益を奪い損失を与える。寄生のうち生物の体内でおこなわれているものを内部寄生、生物の体外でおこなわれているものを外部寄生という。栄養などを完全に宿主に依存している場合を全寄生という。寄生植物でクロロフィルをもちながら寄生する場合を半寄生という。』
- 寄生生物(parasite)H
『寄生体、寄生者、寄生虫ともいう。共生生物の一型。他の生物(宿主)の内部(内部寄生生物)あるいは表面(外部寄生生物)に住み、宿主から栄養を摂取する生物。肉食であるか草食であるかなど、代謝的に宿主に依存している。草食性の毛虫と外部寄生性の吸虫との間の違いは、はっきりとしない。一般に、内部寄生生物は外部寄生生物よりも非常に特殊化し、寄生生活に適応している。またその生活環に、第1宿主と第2宿主を必要とするものがある。絶対寄生生物は宿主から独立しては生きられないが、条件的寄生生物はそうではない。部分寄生生物(例、ヤドリギ)は光合成を行いつつ寄生もする植物である。ときには、同種内の個体間の関係が寄生的になることもある(例、ある種のアンコウの雄は、雌に付着して血液を吸う)。胎盤を用いる生殖形態や、子の誕生が親の死を引き起こすような胎生(例、双翅目のMiastorや、多くのアブラムシやミジンコ)には、寄生に似た特徴が見られる。』
寄生生物(きせいせいぶつ)K
『寄生生活をする生物の総称。全生活史を通じて寄生生活を送るものや、生活史のなかのある時期だけに限って寄生生活を営むものなど種々の寄生様式がある。宿主の対語。』
- キチン(chitin)H
『窒素を含む多糖類で、多くの節足動物の外骨格、菌類の細胞壁、原生生物のツボカビ類の細胞壁に見られる。β-1,4-N-アセチルグルコサミン単位の繰り返しからなる。アセトアミド基にペプチド鎖が結合しているので、厳密にはプロテオグリカンである。機械的強度はかなり高く、隣の分子と水素結合でつながり、繊維を形成する。硬い構造と同時に化学薬品に対する抵抗性をもつ。リグノセルロースと並んで、生物の産生する物質のうちで最も多量なものの一つである。』
キチン(きちん)K
『アセチルグルコサミンが重合してできる多糖類で、昆虫や甲殻類などの外骨格を構成する成分である。生物界でセルロースについで量的に多い生体高分子である。』
- 規定度(normality)@
『溶液の濃度を示す単位の1つで、記号Nで表わす。溶液1dm3中に溶質の1グラム当量を含む溶液の濃度を1規定と定める。容量分析などで用いられ、この単位で示される濃度を規定度または当量濃度という。中和滴定などでは規定度を用いると定量値の計算に便利であるが、中和滴定以外では、たとえば過マンガン酸塩滴定の場合のように反応条件により当量が変化することがあるので注意を要する。』
- 基本組織(ground tissue)H
『【植】表皮(または周皮)と維管束組織以外の全組織。例えば、皮層や髄などの組織。』
- 逆混合(backmixing)@
『化学装置において滞留時間に分布があると反応や分離の効率が減少することが知られている。滞留時間に分布が生ずる原因は装置内の流速の分布や乱れの渦などであるが、これらの効果を総括して乱流拡散現象として扱うことが多い。すなわち、物質の濃度勾配に混合拡散係数を掛けて単位面積当りの乱流拡散による移動速度を得る。これを軸方向混合(拡散)、逆混合などとよぶ。この呼称は装置内の下流部に入れたトレーサーが上流部で検出されることによる。混合拡散係数をEz、平均流速をu、装置の有効部の長さをLとすると、uL/Ezで表わされるペクレ数が逆混合の影響の大きさを示す指標となる。これを実験的に求めるには、過渡応答の測定あるいは逆混合の測定(逆混合による上流側の軸方向濃度分布の測定)などが行なわれる。ペクレ数が無限大のときは滞留時間に分布が生じない。このような流れをピストン流れとよんでいる。逆にペクレ数が0のときは装置内で流体が完全に混合している。ピストン流れと完全混合は、装置内混合特性の両極端を示している。』
- 球果植物(Coniferophyta)H
『裸子植物の中で最も広く分布し種類の多い一群。針葉をもち、形成層による盛んな二次肥大成長を行う。胚珠と種子は裸出しており、精細胞は鞭毛をもたない。セコイア(Sequoia
sempivirens)、マツ、モミ、トウヒなどおよそ50属、550種を含む。球果類の歴史は少なくとも石炭紀の後期にまでさかのぼり、この時代のコルダイテス類が原始的な球果類である。現生の球果類の葉は乾燥に耐えるための特徴を備えており、このことは比較的乾燥して定温であったペルム紀にこの門の植物が多様化したことと関係がある。つまりペルム紀の地球規模での乾燥化が、球果類の葉のような適応を導いたと考えられている。メタセコイア属は第三紀まではユーラシアや北アメリカに多産し、1941年に最初は化石植物として記載された。その後、1944年に中国の四川省で生きた個体が発見されたのを皮切りに、多数の個体が中国に生育していることが明らかになった。』
- 吸器(haustorium、複数はhaustoria)H
『貫入し、栄養分を吸収する特殊化した構造。
(1)植物に寄生するある種の菌類では、生きた宿主の細胞の中に入る菌糸の枝の先にある。
(2)地衣類では、普通は藻類の細胞の間を貫通する。
(3)吸根ともいう。寄生植物の一部では(例、ネナシカズラ)、宿主の組織から物質を吸収する。』
- 吸収(absorption)I
『気体が低圧で液体に吸収される量についてはヘンリーの法則が成り立ち、その飽和吸収量は溶解度ともいわれる。気体の溶解度は温度の上昇により減少する。固体による吸収の現象は吸蔵ともいう。』
吸収(きゅうしゅう)K
『生体で一般的に細胞膜を通して細胞外から物質を取り入れることや、消化管壁から消化した栄養素を取り入れることや、植物などで根や葉などから水やいろいろな物質を体内に取り入れることなどのように、いろいろな形で物質を取り入れることの総称。』
- 吸蔵(occlusion)I
『気体や液体分子が一団となって固体中に取込まれること。気体が固体の気相酸化還元の際固体中に閉じ込められる場合や、結晶を生成させるとき母液が結晶中に含まれたりするのがその例である。沈殿剤を加え沈殿が析出するとき共存物質が不純物として含まれる現象も吸蔵という。この場合不純物は完全に結晶格子の内部に均一に入り込み固溶体を生成する。BaCrO4とPbCrO4、AgBrとAgCl、MgNH4PO4・6H2OとMgNH4AsO4・6H2Oなどがその例である。また不均一な固溶体を形成する場合もあるが、この場合は熟成中の再結晶現象で共沈した不純物が除かれ純粋な結晶になる。』
- 吸着(adsorption)@
『気相または液相中の物質が、その相と接触するほかの相(液相または固相)との界面において、相の内部と異なる濃度で平衡に達する現象。濃度が大きくなる場合を正吸着、小さくなる場合を負吸着という。相内部に対する界面での溶質の過剰量を吸着量とよび、気-液の界面における溶質吸着の場合は、ギブズの吸着式に従って濃度による界面張力の変化率に支配される。界面張力を実測することが困難な固-液あるいは固-気の界面には、フロイントリヒの吸着等温式、BET吸着等温式などが用いられる。固体表面の吸着現象は、その機構によって化学吸着と物理吸着とに分けられる。不均一系の化学反応では、その平衡あるいは反応速度が吸着と密接な関係をもち、不均一触媒の作用は必ず吸着の過程を含む。コロイド溶液の種々の性質、界面動電現象なども、しばしば吸着の影響を強くうける。活性炭や沸石などの多孔質物質はとくに吸着特性にすぐれ、吸着剤として脱臭、脱色などの目的に使われる。』
吸着(adsorption)I
『ニ相の界面で分子やイオンの濃度が内部の濃度よりも大きくなる現象をいう。特殊な例ではあるが、界面における濃度が相の内部より減少することがある。電解質水溶液表面ではイオン濃度が溶液内部よりも希薄になる。このような場合を負の吸着という。一般に有機化合物は水溶液の表面に濃縮され正の吸着が起こる。このような液体の表面では、溶質の吸着に伴って表面張力の変化が現れる。その変化はギブズの吸着式によって表される。吸着量は溶液濃度によって変化する。溶液中におかれた固体に溶質が吸着する現象は溶液の精製に利用される。吸着する溶質を吸着質、固体の方を吸着媒という。活性炭はよい吸着媒である。固体による気体の吸着の場合には、吸着量は圧力と温度との関数であり、一定温度での吸着量と平衡圧との関係式を吸着等温式(等温吸着式)という。BET等温吸着式は吸着測定によって粉体の表面積を求めるのに広く用いられる。吸着分子と表面との相互作用が単に物理的な力のみによる吸着を物理吸着といい、化学結合を伴う場合を化学吸着という。吸着力が弱くて固体表面が均一な場合、たとえばグラファイト表面に希ガスの吸着が起こる場合には、ある平衡圧で分子間凝集力のために吸着量が急増することがある。この現象を二次元凝縮(two
dimensional condensation)という。気体分子が固体表面と相互作用する場合には、単に固体表面に吸着するにとどまらず、さらに固体内部まで拡散する場合があり、これを吸収(absorption)という。吸着と吸収の両者が同時に起こる現象を収着という。』
- 吸着等温式(adsorption isotherm)I
『吸着平衡にある表面と気体分子との間において、吸着量は温度および気相の圧力によって決まる。温度が一定のとき、吸着量vは気相の圧力pによって表され、両者の関係式を吸着等温式または等温吸着式という。圧力一定のとき吸着量を温度の関数として表す式を吸着等圧式(adsorption
isobar)といい、吸着量一定のとき圧力と温度との関係を示す式を吸着等量式(adsorption isostere)という。吸着の実験的および理論的考察にとって、これらの式はいずれも重要なものであるが、中でも吸着等温式が最もしばしば用いられる。吸着等温式としてよく知られているものには次のようなものがある。
1) ヘンリーの等温吸着式: v=ap。aは定数。
2) ラングミュアの等温吸着式: v=avmp/(1+ap)。a、vmは定数。単分子層吸着が起こるときの式である。pが小さいときヘンリーの式となり、pが大きいときの飽和吸着量は単分子層吸着量vmである。
3) フロイントリッヒの等温吸着式: v=ap1/n。a、nは定数。
4) BET等温吸着式: v=vmcx/(1-x)(1-x+cx)。vm、cは定数。x=p/po、poは吸着質の飽和蒸気圧である。BET式では多分子層吸着を仮定している。』
- 休眠胞子(statospore、stomatocyst)H
『スタト胞子ともいう。黄金色植物に特徴的な、休眠している胞子。有性的にも無性的にもつくられ、そのケイ酸質の壁が特徴である。ケイ酸質の壁は装飾があることもないこともある。同じような胞子は、黄緑色植物のなかまによってもつくられる。』
- 共進化(coevolution)H
『2種またはそれ以上の生物種が相互に課する選択圧によって引き起こされる適応進化。植物と昆虫の多くの関係(食物植物と食植者、食物植物と花粉媒介者、営巣地供給者と草食獣に対する防御者)は、相互の適応を伴っている。宿主と寄生者、捕食者と被食者、清掃者と被清掃者などの大多数の関係は、共進化を伴う傾向がある。』
共進化(きょうしんか)K
『複数の種がたがいに影響を及ぼしあいながら進化していくこと。共生関係にある種だけでなく、捕食-被食者間、宿主-寄生生物間、競争者間などでも生じる。ホルモンと受容体などの分子進化にも用いられる。』
- 共生(symbiosis、複数はsymbioses)H
『普通は別種である親密な協力者(共生生物)と永久または長い期間ともに生き、少なくとも一方が利益あるいは害を得ること。片方が何らかの利益(しばしばより多くの食物)を得る一方、他方(宿主)はあまり深刻な不利益を被らない片利共生、片方が巣または住みかを所有者である他方の著しい不利益なしに共有する住込み共生、2種双方が利益を得て、いずれも不利益を被らない相利共生(狭義の共生)、片方が他方を犠牲にしてかなりの利益を得る寄生を含む。共生の中に種内の関係を含めることもある。』
共生(symbiosis、association)J
『異種の生物が一緒に生活している(living together)現象。この場合、互いに行動的あるいは生理的に緊密な結びつきを定常的に保っていることを意味するのがふつうである。したがって、同じ生息場所にすんでいる(co-existence、co-habitation)だけでは、この概念には入らない。共生者(symbiont、symbiote)にとっての生活上の意味・必須性、関係の持続性、共生者の空間的な位置関係などによって、共生はいろいろに類別・区分されている。ふつうには、共生者の生活上の利益・不利益の有無に基準を置いて、共生を相利共生・片利共生・寄生の三つに大きく区分する(ただしこの3用語を、共生者の空間的な位置関係や食物的・生理的な結びつきに重点をおいて定義する意見もある)。なお、symbiosisの語はしばしば相利共生の意に限って用いられ(特に英国系の研究者で)、さらに相利共生のうちでも、共生者の体組織が互いに入り組み合って生理的な結びつきが成立している場合に限定することもある。なお相互に直接的な接触のない共生的関係をパラシンビオシス(parasymbiosis)ともいうが、この語は中立作用を指すのにも用いられている。用語的な混乱はあるとしても、種間関係としての共生の生態的・進化史的意味を理解することは重要である。』
共生(きょうせい)K
『2種の生物がいっしょに生活していて、どちらも害を受けない現象。両方ともが、利益を得る場合も、一方だけが利益を得るが、他方に害を与えない場合もある。前者が相利共生、後者が片利共生である。動物と動物の場合が多いが、動物と植物、植物と植物の場合もある。』
- 共生生物(symbiont)H
『共生的な生物。』
- 強電解質(strong electrolyte)@
『強酸、強塩基またはそれらの塩類のように、濃厚水溶液においてもその成分イオンにほとんど完全に電離していると考えられる電解質をいう。強電解質溶液の電気伝導率は非常に大きく、その当量伝導率は濃度が小さくなるに従って無限希釈における値に漸近的に近づく。強電解質溶液と弱電解質溶液との性質の違いは、おもに強電解質が溶液中で完全に電離しているとして、イオン間の静電的な相互作用を考慮することによって説明される。この理論はビェルム(N.Bjerrum)、メルツ(P.Merz)、ミルナー(S.R.Milner)、ゴーシュ(I.C.Ghosh)が提出し、デバイ、E.ヒュッケルおよびオンサーガーがさらに発展させて、アレニウス以来の電離説の確立に寄与した。』
- 強熱減量(ignition loss)@
『試料を強熱した際に生じる質量の減少をいう。たとえば鉱物や無機化合物の場合、試料を1000〜1200℃で恒量になるまで加熱したときの減量を、原試料に対する百分率で示す。加熱の際に失われる成分は、水、二酸化炭素、二酸化硫黄、アンモニウム化合物、ハロゲン化アルカリなどの揮発成分である。一方、鉄やマンガンは酸化されて高次の酸化物になり、また硫化物のあるものが硫酸塩に酸化されて増量する。これらの増減が相殺された結果が強熱減量として現われるので、事情は複雑である。』
強熱減量(ignition loss)A
『試料を強熱した場合の重量減少量。ig.lossと略記。あらかじめ110℃で炉乾燥し、重量を計った試料をるつぼに入れて赤熱し再び重量を計り、赤熱した間に減少した量を求める。重量減少は、主として有機物の燃焼、炭酸塩などの分解、結晶水の脱出などによるので、これらの成分の含有量を知る目的で行う。土の場合には有機物の含有量の指数として用いる。〔桑原 徹〕』
強熱減量(灼熱減量)(loss of ignition)B
『試料を強熱したときの重量減。普通ガスバーナーで白熱状態まで熱するが、それによりH2O、CO2などはすべて追い出されるし、有機物の燃焼、Fe2+の酸化なども起こり、それらによる重量変化の総計が強熱減量として測られる。多くの粘土鉱物試料の場合、CO2や有機物は存在しないし、あっても酸処理、過酸化水素処理などで除いておけば、110℃乾燥試料について強熱減量を測り、それをFe2+の酸化に関して補正すれば、H2O(+)の量とみなすことができる。〔長沢敬之助〕』
強熱減量(ignition loss、weight loss on ignition)I
『試料を1000〜1200℃まで強熱したときの質量の減少をいう。』
- キンク(kink)A
『成長中の結晶面上に存在するステップの折れ曲がった所。面上に吸着した分子が最も安定に結晶に組み込まれる場所。〔砂川一郎〕』
- 菌根(mycorrhiza)H
『菌類と高等植物の根との間の共生関係。菌根は普通に見られるもので、維管束植物の大部分の群に見いだされる。菌根には以下のような2つの主要な型がある。
(a)内菌根(内生菌根)は最もよく見られるもので、すべての維管束植物のおよそ80%に見られる。菌根を構成する菌類は、接合菌類の一種である。この関係は種特異性があまり高くない。菌類の菌糸は植物体の根の皮層内に見られ、皮層の細胞内でらせんを形成したり、ふくらんだり、細かく枝分かれしたりしている。この菌糸はまた、まわりの土壌中にも広がっている。細胞内の特徴的なふくらみには2つの型があり、嚢状体と樹枝状体とよばれる。このような菌根は、土壌がしっかりリンを保持する傾向にあるために極端に少量しか利用できないような熱帯においては特に重要である。
(b)外菌根(外生菌根)は種特異的な共生関係で、特定の高木や低木に特徴的に見られる。そのような樹木にはブナ科、ヤナギ科、マツ科のほか、少数の熱帯の高木が含まれる。高木限界に生育する高木は、例外なく外菌根をもち、その中で菌類は根を取り巻いている。菌糸は個々の細胞に貫入することはない。菌糸体はまわりの土壌中の広い範囲に広がり、有機炭素を植物体に渡す非常に重要な役割を担い、根毛に代わる機能を果しているため、しばしば根毛はない。担子菌類の種が最もよく外菌根の共生関係を形成するが、子嚢菌類のいくつかの種も見られる。』
菌根(mycorrhiza)J
『植物の根に菌類が侵入して形成される構造。ほとんどの植物の根に普遍的に認められる。菌根を形成する菌類を菌根菌とよぶ。次の三つの形態がある。
(1)外生菌根(ectomycorrhiza、ectotrophic
mycorrhiza)。おもに樹木の根と担子菌類が形成。細根の周囲に菌糸からなる厚い層すなわち菌鞘(seath、菌套
mantle)が発達し、ここから外部に菌糸束が伸びる。また根の皮層部の細胞間隙にも菌糸が侵入し、皮層細胞を菌糸が包みこんだハルティッヒネット(Hertig
net)を形成するが根の細胞内に菌糸が侵入することはない。
(2)内生菌根(endomycorrhiza、endotrophic
mycorrhiza)。根の皮層細胞内に菌糸が侵入する。
(a)コイル型菌根。主にラン科植物の根とリゾクトニア属(Rhizoctonia)菌との間で形成される。菌は根毛などから根に侵入、根の皮層細胞の細胞壁を貫通し細胞内(細胞膜内には入らない)にコイル状の菌糸塊を形成する。これはやがて菌球消化により吸収され、しだいに消滅していくとされる。なお、ランの種子の共生発芽(symbiotic
germination)にも菌根菌の関与があるとされる。
(b)VA菌根(VA mycorrhiza、vesicular-arbuscule mycorrhiza)。多くの広範囲にわたる植物の根とおもにアツギケカビ目(Endogonales)菌類とのあいだに形成。侵入した菌糸は嚢状体(vesicule)とよばれる養分貯蔵器官を皮層細胞間隙などに、および樹枝状体(arbuscule)とよばれる養分授受器官を細胞膜外に形成する。根の外部の土中にのばした菌糸に厚膜・大形のVA胞子を形成する。VA菌根類は人工培養が不可能なため、その分類はVA胞子の形態を標徴として行われる。
(3)内外生菌根(ectendomycorrhiza、ectendotrophic mycorrhiza)。上記(1)(2)の双方の形態を示す。ツツジ科植物の根などに見られる。
植物と菌根菌との間には、多くの場合、主に植物からは光合成産物、菌からは無機塩類が(ランの場合は菌から炭水化物が)相手に供給される相利共生的な関係があるといわれる。ただしこの関係は絶対的なものではなく、十分に解明されてはいない。一般に菌根の形成により植物の生育は助長され、病原菌に対する抵抗性は増大するとされる。(図:略)』
菌根(きんこん)K
『植物の根と菌類とが共生しているとき、その根をいう。菌糸が根の内部にあれば内菌根、根の表面にあれば外菌根という。』
- 菌糸(hypha、複数はhyphae)H
『(菌類の)筒状の糸状体あるいはひも状の葉状体で、しばしば中空。先端の成長によって長さが増大するが、タンパク質は菌糸体の全体を通じて合成され、細胞質流動によって菌糸の先端に運ばれる。隔壁で仕切られている場合もあるが、そうでないこともある。新しい菌糸は側方への分枝によって生じる。』
菌糸(hypha)J
『糸状菌類の栄養体を構成する基本構造で、通常、細長い糸状の細胞列。一般に子嚢菌類・担子菌類・不完全菌類では隔壁を生じて多細胞となり、ツボカビ類・卵菌類・接合菌類などでは無隔壁の多核体(coenocyte)である。菌糸は胞子の発芽管や菌核・厚壁胞子のような繁殖体から発達し、先端成長によって伸長する。分枝した菌糸の集団を菌糸体(mycelium)とよぶ。菌糸には培地や宿主の表面または内部に入って伸長する基底菌糸(基生菌糸
substrate hypha)と空中に伸び出す気中菌糸(気菌糸)の区別があり、生理的に異なった機能をもつ。放線菌では前者を一次菌糸、後者を二次菌糸とよび、一次菌糸の接合によって二次菌糸が生じるという説もある。基底菌糸はその表面から栄養を吸収し気中菌糸は栄養を基底菌糸からの移送に依存し、その一部は胞子形成器官などに分化する。菌糸は環境条件によって盛んに分枝と菌糸結合をくりかえし、菌糸細胞は変形して種々の菌糸組織をつくって、種によって定まった形の菌核や子実体、また吸器・付着器などを形成する。担子菌類では対応する接合型の菌糸間で体細胞接合がおこり、その前後で一次と二次の菌糸体が区別され、子実体は二次菌糸から発達する。隔壁形成は細胞膜の内側への陥入によって始まり、その求心的な伸長とともに細胞壁も内側に伸びて隔壁となる。細胞分裂が完了した後も隔壁孔によって細胞間の連絡が保たれている。子嚢菌類では単純孔隔壁(simple-pore
septumとよばれる簡単な構造であるが、担子菌類ではより複雑で、たる形の肥厚部に囲まれた狭い孔からなるたる形隔壁孔(dolipore)となっている。しかし、クロボキン類やサビキン類ではこの形の隔壁孔は見られない。菌糸壁の主成分はキチン・キトサン・セルロース・グルカン・マンナンなどの種々の炭水化物であるが菌の種類によって成分の組合せが異なる。細胞壁組成は菌糸の部位によっても変化し、菌糸の先端部の新しくできた一次細胞壁の上に細胞の成熟とともに二次細胞壁が重なり、厚さを増すとともに弾力性を失っていく。菌糸の先端部と基部に近い方では細胞構造も生理活性も大きな違いがあり、先端部では細胞壁形成に必要な多糖類と、蛋白質・核酸その他細胞膜成分などの合成活性が高く、それから離れるに従って液胞が発達し、酵素の分布にも相違が認められる。端子菌類のヒダナシタケ類では、子実体の菌糸の種類と構成は菌糸組織系とよばれ、科や属の分類に重要。』
菌糸(きんし)K
『大多数の菌類の構造上の単位。管状、糸状を呈し、頂端成長によって伸長する。菌類の栄養体は菌糸で構成され、それから生殖にかかわる細胞や器官が分化する。菌糸は隔壁の有無によって有隔壁菌糸と無隔壁菌糸に大別される。一般に前者は高等菌類に、後者は下等菌類にみられる。』
- 菌糸組織(plectenchyma)H
『菌類の菌糸からなる組織で、紡錘組織ではそれをつくる菌糸はゆるく波打って、菌糸と認識できるが、偽柔組織では密に集まった細胞からなり、もはや菌糸とは認められず、高等植物の柔組織に似ている。』
- 菌糸体(mycelium、複数はmycelia)H
『菌類の栄養相を構成する菌糸のかたまりを集合的にいう。例、キノコの菌糸。一部の細菌(例、放線細菌)は、菌糸体状の栄養形をもつ。』
- 菌類(Fungi;fungus、複数はfungi)H
『真核生物の一界。原則として多細胞生物で、葉緑体を欠く(そのため、腐生生物、寄生生物または共生生物)。門として、子嚢菌類、担子菌類、接合菌類、形態門である不完全菌類が含まれる。伝統的には、従属栄養の原生生物(卵菌類、ツボカビ類)も含むが、直接的な系統関係を示す証拠はほとんどない。菌類に似ている最古の化石は(最古の真核生物に混じって)9億年前の地層から出現するが、菌類と同定された最古の化石はオルドビス紀(5億年前〜4億5000万年前)のものである。最初の菌類はおそらく単細胞で、これから多核体のものが進化したのであろう。菌類の体を構成する単位は菌糸(集まって菌糸体を形成する)で、最も複雑な構造は胞子生産にかかわる生殖器官である。卵菌類とツボカビ類を菌界から除くと、すべての種は生活環のいかなる段階においても運動細胞(例、遊走子)を形成しない。細胞壁は基本的にキチンで構成される。グリコーゲンが主な貯蔵多糖類であるが、脂質も重要な貯蔵物質である。腐生性と寄生性の菌類は、しばしば仮根や吸器のような特殊化した菌糸を形成し、どちらも栄養分を吸収する。いろいろな胞子型を生じる複雑な生活環や特異な遺伝機構をもつものもある(例、かすがい連結、かぎ形形成、二核共存体)。』
菌類(fungi)J
『主として吸収型の従属栄養を行う真核生物の一群。いわゆるかび・きのこ・酵母類の総称で、真菌類のほかに粘菌類なども含めていい、最も広義には原核生物の細菌類を含める場合もある。形態・生態・生理などは極めて多様。栄養体は変形体、単細胞または菌糸で、細胞壁にキチンを含むものが多い。多くは有性世代と無性世代を含む複雑な生活環をもち、多様な形態の胞子を形成して繁殖する。世界中あらゆるところに分布する。生態系においては分解者として、物質の循環に大変重要な役割を担い、特に菌類の働きがなければ落葉などをはじめとする動植物遺体の分解は不可能であるとさえいわれる。また、腐生的な分解のほかに、動植物の病原体となるものや、他の生物と共生生活しているものも数多く知られる。その結果、動植物の病害、食品の腐敗、木材の腐朽、製品の劣化などの害作用をもたらすことも多い。一方、きのこなどのように食用とされたり、食品や有用物質の生産に利用されたりして人間の生活にとって有益なものもある。また、研究材料として利用され遺伝学、生理学、バイオテクノロジーなどの発展に大きく貢献したものもある。』
菌類(きんるい)K
『従属栄養生活を営む真核生物の一群で、酵母、カビ、キノコ類など。栄養体は葉緑体を欠き、ふつう単相、糸状ないしは単細胞状、多細胞性、非べん(鞭)毛性。』
【く】
- 空洞化(cavitation)H
『木部道管内で水柱にかかる張力が凝集力を超えたときに、空洞や気泡ができること。水ストレスを受けている場合に起こりうる。空洞化が起こると、水の流れの阻害を迂回する蒸散への別の流れが必要となるが、上記のようにしてできた空洞は、また根圧によってつぶれることもある。』
- 屈化性(くっかせい)(chemotropism)H
『【植】化学屈性ともいう。化学物質の濃度勾配が刺激となって起こる屈性。糖類の存在により、花粉管が柱頭を通って下方向に伸びていくのがその例。
【動】まれに走化性の同義語として使われる。』
- 屈光性(くっこうせい)(phototropism)H
『光屈性ともいう。光が刺激となる屈性。例えば、屋内の植物の茎が窓に向かって曲がることで、これは陰になった側の成長域の細胞が伸長することにより生じる。屈光性は、成長物質であるオーキシンの不均等な局在によって起こることが示されている。オーキシンは、シュートの光の当たっている側から暗い方へ移動する。このような反応は、特に400〜500nmの波長域の光の下で顕著であることから、この反応は青色光を吸収する色素を介して行われる。青色光吸収色素は、フラビン色素であることが示唆されている。』
光屈性(ひかりくっせい)K
『植物が光の方向に対し、その一部を一定の方向に曲げる現象。ふつうは光源側と影側の伸長の差によって曲がる。光源方向に曲がる正の光屈性や、影側に曲がる負の光屈性などがある。屈光性ともいうが、教育用語としては、刺激を示す語のあとに屈性をつける造語法にしたがい光屈性とする。向日性は正の光屈性で解釈される。』
- 屈日性(くつじつせい)(heliotropism)H
『日光屈性ともいう。多くの植物に見られる葉や花の日中の動きで、直射日光に対して垂直(横日性)、あるいは平行な状態を保つ(太陽追跡ともよばれる)。葉の屈光性とは違い、屈日植物の葉の動きは、非対称な成長によるものではない。ほとんどの場合、この動きには葉の基部にある葉枕が関与している。また、葉柄全体が葉枕のような特性をもつこともある。』
- 屈触性(くっしょくせい)(haptotropism、thigmotropism)H
『【植】接触屈性ともいう。ある部分への接触が刺激となる屈性。例、巻きひげの一面が小枝のような固い物質に触れた場合、その物質に巻きつく方向に屈曲する反応。』
接触屈性(せっしょくくっせい)K
『植物の体の一部が物に接触した刺激により曲がる現象。つるが巻きつく場合など、接触した側の組織と、反対側(外側)の組織の伸長速度に違いが生じ、その結果起こった偏差成長によって引き起こされる。屈触性ともいうが、教育用語としては屈性・走性の造語法にしたがい接触屈性を採用する。』
- 屈水性(くっすいせい)(hydrotropism)H
『水分屈性ともいう。水が刺激となって起こる屈性。』
- 屈性(くっせい)(tropism)H
『植物や定着性の動物での、刺激に対する屈曲成長による反応。屈曲の方向は刺激源の方向によって決められる。』
水分屈性(すいぶんくっせい)K
『植物の根が湿度の高い方向に向かって曲がる現象。根の成長には重力屈性の影響が強いが、重力屈性を示さない突然変異体を用いて重力屈性とは切り離して解析することが可能である。根冠が湿度を感じていると考えられている。屈水性、向水性、湿度屈性、屈湿性ともいうが、教育用語としては、水分という刺激を表わす語のあとに屈性をつけるという造語法にしたがい水分屈性に統一する。』
- 屈地性(くっちせい)(geotropism、gravitropism)H
『【植】重力屈性ともいう。植物のある部分の向きが重力刺激の影響を受けること。主茎は負の屈地性により垂直上方に成長し、水平に置かれると茎の先端部の成長部分で下側の細胞がより伸長し、上方に向きを変え、垂直方向を回復する。主根は正の屈地性により垂直下方に成長し、水平に置かれると、成長部分の上側の細胞がより伸長し、根は再び下方に向きを変える。シュートが水平に置かれると、上側と下側にジベレリンとオーキシンの濃度差が生じる。両者のこの差によって、上側よりも下側が伸長し、上向きの成長が見られるようになる。その結果、垂直方向の成長が回復すると、左右非対称な成長物質の濃度差が解消し、垂直方向に成長し続ける。根における成長物質の左右非対称性はよく解明されていない。根冠内のこれらの物質の勾配は、デンプンを含む色素体(アミロプラスト)が比較的短い距離を移動することによって形成されるという証拠がある。植物体が水平面に置かれると、これらの色素体は垂直に成長方向を変えようとしている根の細胞壁の縦の面から移動し、水平に置かれる前は垂直方向であった細胞壁に近いところで停止する。数時間後には根は下方に屈曲して、これらの色素体は元の位置にもどる。この色素体の移動が、どのようにして成長物質の勾配の形成に変換されるのかは、まだ解明されていない。根におけるオーキシン(IAA)の役割についての証拠はほとんどなく、根冠からは検出されていない。しかし、アブシシン酸が根冠で検出され、根冠から根の本体へ再分配されることが知られており、水平に置かれた根の伸長領域の下側の細胞に対して伸長阻害剤として働くことが知られている。』
重力屈性(じゅうりょくくっせい)K
『植物の根、茎、葉などが重力を感じて、重力の方向と一定の角度をもって曲がる現象。根は重力方向へ正の重力屈性を、茎は重力とは反対方向へ曲がる負の重力屈性を示す。屈地性ともいったが、教育用語としては、刺激を示す言葉のあとに屈性をつけるという造語法にしたがい重力屈性とする。』
- グライ(gley)B
『酸素不足の還元状態下で生成する主として第一鉄による青〜緑灰色の土層をグライ層とよび、この土層が生成する作用をグライ化作用、グライ化作用を主体として生成した土壌をグライ土という。語源はロシア語の「ぬかるみの土塊」の意味である。土層が水で飽和して空気(酸素)の侵入が妨げられたり、有機物の分解による酸素の消費によって生ずる。地下水面下のグライが典型であるが、下層の緻密な粘質土層のため浸透水が停滞した結果起こる停滞水グライ、グライ化の程度の弱い擬似グライ、また夏季の湛水と有機物分解の進行に伴う水田作土のグライなどがある。なお土層全体でなく局所的にグライ化した部分が含まれる場合はグライ斑という。〔大羽 裕〕』
- グライ化作用(gleization)A
『還元状態で進行する土壌生成作用の一つ。地下水位が高い土壌や湛水された土壌では、水が長期間孔隙を飽和するため酸素供給が制限され、微生物が残りの酸素を消費すると酸素不足となり、還元状態になる。第一鉄が生成し青〜緑色の土層(グライ層)が形成される。地下水位が高い低地や台地の凹地の土壌や湛水期間中の水田土壌などによくみられる。地下水位の季節的変動によって酸化・還元が反復される場合、鉄錆色と鉄が還元溶脱した灰色の部分からなる土層が形成され、これは擬似グライ化作用と呼び、グライ化作用と区別される。〔加藤芳朗・神山和則〕』
- グリコーゲン(glycogen)H
『動物細胞や多くの菌類の主要な貯蔵多糖で、しばしば‘動物のデンプン’とよばれる。グルコース単位がα-1,4結合したホモポリマーで、アミロペクチンに似た構造をもつが、より高度に枝分かれする。熱したKOH溶液で組織を分解することによって単離される。アミロペクチンと同様に、ヨウ素ヨウ化カリウム溶液で赤紫色を呈する。その加水分解過程はグリコーゲン分解(glycogenolysis)とよばれる。デンプンと同様、浸透性はないため、エネルギー貯蔵物質に適している。図24参照(略)。』
グリコーゲン(ぐりこーげん)K
『グルコースがグリコシド結合により連結された多糖類。動物細胞、とくに筋肉や肝臓に豊富に存在する。グルコースの貯蔵型とみることができ、細胞内ではグリコーゲン果粒として存在する。ホスホリラーゼなどの作用でグリコーゲンからグルコースを生じ、解糖のための基質として用いられる。グリコゲンともいうが、教育用語としては、慣用されるグリコーゲンを採用する。』
- クリープ(斜面の)(creep)A
『マスムーブメントのうち、斜面表層が重力によって長時間非常にゆっくりとした速度で下方に滑動する現象を指す。結晶片岩や砂岩泥岩薄互層のような層理面や片理面に沿って異方性の強い岩石で発達する。クリープしている所では、地層面が斜面近傍だけ局部的に緩傾斜になっていたり、樹木の根が斜面下方に凸に曲がっていたりすることが多い。大規模なクリープ帯では、ときどき末端崩壊が発生し、限界に達すると大規模な地すべり性崩壊(クリープ性大規模崩壊)に突然発展することがあるので注意が肝要である。二重山稜やはらみ出し地形がみられるので識別される。〔岩松 暉〕』
- グルコース(デキストロース)(glucose(dextrose))H
『ブドウ糖ともいう。最も広く存在するヘキソース(右旋性型をデキストロースという)。多くの二糖(例、スクロース)や多糖(例、デンプン、セルロース、グリコーゲン)の構成成分。アルドヘキソースの還元糖であり、(グルコース1-リン酸として)ほとんどの細胞で解糖の最初の基質となる。完全に酸化されると(解糖と酸素呼吸による)、細胞内条件下で大きなエネルギーが放出され、ADPとリン酸からグルコース1分子あたり36分子のATPが合成される。反応式は以下のとおり。
C6H12O6+6O2=6CO2+6H2O』
グルコース(ぐるこーす)K
『六炭糖の一種で、多くの生物にとって最も基本的なエネルギー源である。好気的条件では、解糖系とクエン酸回路によって分解され、酸化的リン酸化反応によりATPのエネルギーに変えられる。動物細胞におけるエネルギー貯蔵物質(貯蔵糖)であるグリコーゲン、植物における貯蔵糖であるデンプンはグルコースの重合物である。また、二糖類のマルトースはグルコース2分子が、スクロースはグルコースとフルクトースが結合したものである。ブドウ糖ともいうが、学術(化)にしたがい、教育用語にはグルコースを採用する。』
- 黒ボク土(Kuroboku soils)A
『(1)松井健(1964)が、腐植質の厚いA層をもつ土壌に対して提唱した成帯内成土壌型。下北半島の火山灰土壌がアロフェン・遊離アルミナのほかにかなりの層状粘土鉱物を含むことから、前者は表層での風化(脱塩基・脱珪酸)の進行で生成し、腐植化度の高い腐植集積に主要な役割を果たすが、後者はそれと平行して、この地域の成帯成土壌(褐色森林土)に働くシアリット化のために生成したとみなし、褐色森林土的土壌生成過程と、草原植生・母材の相互作用によるアロフェン・遊離酸化物の生成と植物集積過程が重なる点を重視した。林業試験場(現、森林総合研究所)の「黒色土壌」、東海地方の「黒ぼく」土壌など非火山灰起原の土壌も含めるため、母材アロフェンに重点を置く名称を避けた。類縁土壌型との関係と母材の火山性、非火山性の別で土壌亜型を設定。下北の火山灰土壌は褐色森林土火山性亜型に、東海の「黒ぼく」は赤黄色土的非火山性亜型に、腐植質アロフェン土は典型的火山性亜型に分類される。
(2)東海地方の「黒ぼく」土壌の暫定的名称。腐植に富む厚いA層をもつ非火山灰起原の土壌で、粘土組成も層状珪酸塩粘土鉱物を主とし、A層での腐植化度の高い腐植の集積・ばん土性は脱鉄処理可溶のアルミナに関係し、火山灰土壌のようにアロフェンをほとんど含まない。草原植生下、わずかに湿性の環境で生成したと推定される。林試の「黒色土壌」に相当。〔加藤芳郎〕』
黒ぼく土B
『火山灰土は、黒くて軽いという顕著な特徴をもつことから、しばしば黒ぼく土とよばれる。この他に、このような特徴を示す火山灰土の名称として、くろぼく、くろのっぽ、ろど、くろほや、くろおんじなどがある。最近の農耕地土壌の分類(農水省農業技術研究所化学部土壌第3科、1983年)でも、火山灰土の名称として、黒ボク土が採用されている。耕地の火山灰土は、排水条件によって、黒ぼく土、多湿黒ぼく土、黒ぼくグライ土の3土壌群に分けられる。黒ぼく土は「火山放出物の風化堆積層上部に暗褐色ないし黒色を呈する非泥炭質の腐植の集積した土壌」と定義されている。この土壌の断面形態としては、次のような点があげられている。Ao層は林地、原野の場合には、ふつうあまり発達しない。A層の厚さはふつう25〜50cmの範囲にあって、2〜3層に漸変的に分化している。またA層は上部ほど軟らかい粒状構造で膨軟、粗しょうで土塊は砕けやすい。下部は、弱度に発達した果核状構造で、やや緻密である。B層は暗灰色ないし暗黄褐色、BC層は黄色ないし黄褐色である。これらの層の構造は中程度に発達した角塊状ないし角柱状構造で、多孔質で、緻密である。一般理化学特性としては、膨潤水や吸湿水が多いこと、現地容積重と仮比重が小さく、孔隙率が大きいこと、炭素含量が高く、C/N比が大きいこと、リン酸吸収係数がきわめて大きいこと、珪ばん比(SiO2/Al2O3モル比)が小さく、ばん土性が強い点などがあげられている。
黒ぼく土はA層の厚さと腐植含量によって、厚層多腐植質黒ぼく土(A層の厚さが50cm以上で、その腐植含量がおおむね10%以上)、厚層腐植質黒ぼく土(A層の厚さが50cm以上で、その腐植含量がおおむね5〜10%)、表層多腐植質黒ぼく土(A層の厚さが25〜50cmで、その腐植含量が10%以上)、表層腐植質黒ぼく土(A層の厚さが25〜50cmで、その腐植含量が5〜10%)、淡色黒ぼく土(A層の腐植含量が5%以下で、5%をこえてもその厚さが薄い場合)に分けられる。黒ぼく土は、FAO-Unescoのアンドソル、米国のアンデプトにほぼ対応する。〔庄子貞雄〕』
- クロロフィル(chlorophyl)H
『腐生生物および寄生生物を除く、すべての藻類および高等植物で見られる緑色色素。光合成において光捕集を行う。ラン藻類を除いて、葉緑体の中に存在する。ラン藻類では、細胞周縁部の細胞質に分散している多数の光合成膜(チラコイド)に付着している。クロロフィルはマグネシウムを含むポルフィリン核をもつ。このポルフィリンは、ヘモグロビンやシトクロムの補欠分子族と似ており、エステル結合した長いフィトール側鎖をもつ。化学構造がわずかに異なる複数種のクロロフィル(a,b,c,d,e)が存在する。そのうちクロロフィルaのみが、すべての植物に共通して含まれる(ラン藻類ではクロロフィルaのみが含まれる)。光合成細菌には異なる種類のクロロフィル(バクテリオクロロフィル)が存在する。植物からアルコールまたはアセトンを使用して抽出し、クロマトグラフィーによって精製する。』
クロロフィルK
『光合成において最も重要な色素で、Mgを含むポルフィリンの部分にアルコールの一種フィトールが結合している。可視光のうち青色および赤色の光をよく吸収し、緑色の光はあまり吸収しないので、緑色を示す。緑色植物には、クロロフィルaとbの2種類が含まれる。クロロフィルcは、aとともに褐藻類やけい(珪)藻類に含まれる。葉緑素ともいうが、教育用語としては、学術(植)にしたがいクロロフィルを採用する。』
- 群集(community)H
『(1)群落ともいう(植物学)。ある特定の地域や物理的環境に共存している生物個体群の集まりをいう語で、特定の群集はある共通の環境を占めている。群集は、それを構成する個体や個体群にはない付加的な特徴をもつ組織化された単位であり、物質とエネルギーの流れの点から見て、一つの単位として機能する。生物群集は生態系のうち生命活動を行っている部分である。湖沼の堆積物上に展開する生物群集から広大な熱帯雨林のものまで、自然界のさまざまな大きさの集まりをさし、広い範囲で用いられる語である。』
- 群集(association)H
『(2)(植物の)特定の種が優占する極相植物群落で、優占種に基づいて名づけられる(例、落葉樹林のナラ-ブナ群集)。これは、生物群集の一部分として定義される。群集は、異なる地域の同様の環境下で繰り返し生じる生物種の集合である。群集は認識可能な実体として記述でき、その中に含まれる種は相互に緊密な生態的関係をもつため、群集の認識は生態学的研究の要である。』
【け】
- 蛍光X線分析(X-ray fluorescence
analysis)
@
『物質にX線を照射したときに出る蛍光X線を利用して行なう元素分析をいう。また他の線源により発生した特性X線を利用する場合が含まれることもある。元素に固有の蛍光X線を分光しないでその強度を測定する非分散方式と、X線分光器を用いて分光してから強度測定を行なう波長分散方式とがある。前者には半導体検出器を用いるエネルギー分散方式も含まれる。分析できるのは一般にはナトリウムより重い全元素であるが、波長分散方式ではホウ素からフッ素までの軽い元素も分析できることがある。試料は液体、固体ともに特別の前処理を必要とない場合が多く、いわゆる非破壊分析法として多種類試料の自動分析、工程管理、文化財調査などにも利用度が高い。』
蛍光X線分析(X-ray fluorescence analysis)A
『X線を用いて、試料を構成する元素の定性・定量分析を行う化学分析法。物質にX線を照射すると、その物質を構成する各元素に特有な特性X線が発生する。これを蛍光X線(XRF)といい、その波長またはエネルギーから元素の種類が、その強度から物質中の元素の含有量が得られる。分析装置は主にX線源・試料室・X線分光検出部からなる。X線源としてはX線管球が一般に用いられるが、シンクロトロン放射光や放射性同位元素もある。X線分光検出部には波長分散型とエネルギー分散型がある。試料調製としてはガラス円板作成や粉末加圧成型が行われる。地球科学においては地質試料の主成分や微量成分分析の手法として広く用いられている。〔小笠原正継〕』
X線蛍光分析(X-ray fluorescence analysis)B
『蛍光X線分析ともいい、XRFと略称される。試料物質にX線をあて、それから発生する二次X線(蛍光X線)を分光結晶によりスペクトルに分けてカウンターで記録する。試料(固体でも粉末でも液体でもよい)から発生する二次X線は、試料の構成元素に特有な波長をもった特性X線群から構成され、それにより構成元素の種類や量を知ることができるので、ひとつの分析法として用いられている。古くは希土類元素など通常の方法では分析しにくいものに対し用いられてきたが、X線装置の進歩により使いやすいX線蛍光分析装置が市販されるようになり、この方法が普及してきた。最近では分光結晶とカウンターに代わって半導体検出器を用いるエネルギー分散型の装置もつくられている。粘土、土壌などの珪酸塩鉱物の分析においても、補正計算に種々の問題があるが、多数の試料の日常の分析の方法としてすぐれているので、研究用や工場の品質管理用としてよく使われており、その際試料をフラックスとともに溶融しガラス円板として分析する方法がよい定量結果を与えるものとして用いられている。ただし、Feの2価と3価の区別とH2Oの分析はこの方法ではできない。
なお、X線蛍光法はこのような元素別の分析のほかに、たとえばAlの物質中における存在状態(4配位か6配位かなど)によりAlの特性X線の波長が少し変化することを利用して、状態分析の手段として使うことができる。〔長沢敬之助〕』
蛍光X線分析(fluorescent X-ray analysis)I
『X線蛍光分析(X-ray fluorescence analysis)、X線蛍光分光分析(X-ray fluorescence
spectrometry)ともいう。X線管やシンクロトロンなどから発生する強い一次X線を試料に当て、試料中の元素から発生する蛍光X線を各波長成分に分光し、波長から定性分析を、強度から定量分析を行ったり、波長のわずかな化学シフトから化学結合の状態などを調べる方法。通常Na以上の原子番号の元素が微量成分あるいは主成分として精度よく定量でき、非破壊簡易分析も可能なことから応用分野が広い。鉄鋼、非鉄金属、セメントなどの工場では自動化された装置が品質管理などに使われている。分析器には、1)分光結晶(analyzing
crystal)とよばれる面間隔既知の単結晶を用いて、ブラッグ反射を利用し各波長成分に分光して比例計数管やシンチレーション計数管で測定し、角度(θまたは2θ)対強度の関係のスペクトルを得る結晶分光または波長分散(wavelength
dispersion)方式と。2)エネルギー分散(energy dispersion)方式とよばれ、半導体検出器による測定後マルチチャンネル波高分析器で各波長成分に分け、エネルギー(keV)対強度の関係でスペクトルを示す方式がある。』
⇒『XRF』のページを参照。
- 珪酸塩鉱物(silicate minerals)A
『珪素を中心とした珪酸基([SiO4]4-)四面体(珪素酸素四面体)を基本にもつ一群の鉱物。多くの元素と化合物をつくり地球の固体の大部分を占める点で重要。またセラミックス原料や製品の重要な部分を占めている。珪酸塩鉱物の分類は歴史的には多珪酸塩を考え次のような命名がなされていた。オルソH4SiO4(H2n+2SinO3n+1);メタH2SiO3(H2nSinO3n);メソH2Si2O5(H2n-2SinO3n-1);パラH2Si3O7(H2n-4SinO3n-2)。しかし、これによっては複雑な組成を分類することができず、混乱を生じた。今日では結晶構造に基づく分類がSiO4の縮合の度合の順に以下のように分類されている。
1)ネソ珪酸塩(nesosilicates)鉱物:縮合のない単独のSiO4四面体を構造中にもつ鉱物で、かんらん石とざくろ石グループが代表的。ネソはギリシア語起原で「島」の意味、孤立した[SiO4]4-を表わす。
2)ソロ珪酸塩(sorosilicates)鉱物:2個のSiO4四面体が一つの酸素頂点を共有して縮合したソロ珪酸基[Si2O7]6-をもつグループ。代表的鉱物は異極鉱やゲーレナイトグループなどがあり、SiO4とSi2O7の両方をもつものにはベスビアナイト、緑れん石グループ、パンペリー石などがある。ソロはギリシア語起原の「グループ」の意。
3)サイクロ(またはシクロ)珪酸塩(cyclosilicates)鉱物:SiO4四面体が三つ以上(3、4、6、8、9、12個など)が酸素の頂点を共有して環(リング=シクロ)状に縮合した構造をもつ鉱物。ただし、8個以上の組合せはきわめてまれ。大隅石は6-リングが二つ重なった構造をもつ。次のイノ珪酸塩からテクト珪酸塩の構造中には部分的に見ると縮合のさらに進んだ種々のリング構造が存在するが、それらは、それぞれの分類に入れシクロ珪酸塩には含めない。
4)イノ珪酸塩(inosilicates)鉱物:鎖状(チェーン)珪酸塩鉱物とも。SiO4四面体が二つの酸素を共有して鎖状に無限にのびた単鎖(SiO3)構造をもつ鉱物群は輝石グループや青海石などにみられる。2本の鎖が並行に並び酸素を共有して二重鎖(Si2O5)をつくると角閃石グループ・ゾノトラ石などを形成。まれだが、三重鎖、三重鎖と二重鎖の組合せなどからなる鉱物もある。イノはギリシア語の「糸」または「鎖」の意。
5)フィロ珪酸塩(phyllosilicates)鉱物:層状(シート)珪酸塩鉱物とも。SiO4四面体が三つの酸素を共有して無限の二次元層(Si2O5)構造を形成。雲母、緑泥石、蛇紋石などが代表的グループ。一般に粘土鉱物と呼ばれているものもこのグループである。層間にアルカリ、アルカリ土類イオンなどと水分子などが入り、層に沿って劈開が発達。Siの一部がAlに置換されることもある。フィロはギリシア語の「葉」ないし「シート」の意・
6)テクト珪酸塩(tectosilicates)鉱物:SiO4四面体四つのすべての酸素が隣の四面体によって共有された構造で、最も縮合が進んだもの。三次元網目(SiO2)(フレームワーク珪酸塩、立体網珪酸塩とも)を形成。最も単純な組成をもつテクト珪酸塩鉱物の石英SiO2は酸化鉱物としても扱われる。SiO2はそれ自身電荷が閉じているので、Si4+の一部をAl3+などのイオン半径の似たものと置き換え、電荷を均衡させるためにアルカリ、アルカリ土類イオンが入って種々の構造の鉱物を形成する。代表的なものには、長石・かすみ石・沸石グループなどがある。テクトはギリシア語の「フレームワーク」の意。ラテン語のsilicis(火打石)に由来。(図:略)〔松原 聰・嶋崎吉彦〕』
- 形質(trait)H
『表現形質の様式に対して、ある特定の表現形質を意味する語。つまり、ショジョウバエの目の色は表現形質の様式であるが、赤眼は形質である。形質は常染色体か性染色体、また単一の遺伝子座かポリジーンによって支配される可能性がある。遺伝的異常に関して、ときに形質症状は病理症状と対照的である。前者はたいてい症状が穏やかで異型接合体において生じるが、後者は症状がより激しく同型接合体で生じる。』
- 形質(character)J
『〔1〕もともとは生物の分類の指標となる形態的要素をさす。その意味では特徴、標徴ともよばれる。いかなる形質に基づいて分類するかの原則的問題が、過去における人為分類より自然分類への過度の重要な契機となった。分類群の認識・識別の手がかりとされる形質を特に指標形質(taxonomic
character)とよぶ。
〔2〕G.J.メンデル以来の遺伝学においては、表現型として現われる各種の遺伝的性質をさす。そのうちの単位的な形質、すなわち単位形質をとらえて遺伝現象を分析することが遺伝学の一つの常套的な手段となった。』
形質(けいしつ)K
『個体発生あるいは生活史の途上にある個体を含め、ある生物またはある生物群を区別しうるいかなる特徴をもいう。観察可能な形態や性質であって、分類学上の特徴は分類形質、生理学上あるいは遺伝学上の特徴は生理的形質、遺伝形質などという。』
- 形質膜(plasma membrane、plasmalemma)H
『原形質膜ともいう。細胞の外側の膜。=細胞膜』
- 系統学(phylogenetics)H
『生物を分類する方法の一つで、系統発生を再構成し、種分化の歴史を解明する。種分化と形質の変化が協調している場合や、種分化が形質の変化に比べて速く進行していない場合に可能である。作成された系統樹は、仮説的な種分化の歴史的道筋を表し、厳密な検証が可能である。現在の主要な手法は分岐論である。系統学で利用される技術として、比較解剖学と比較発生学、DNAの塩基配列やタンパク質(シトクロムなど)のアミノ酸配列の決定、DNAハイブリッド形成、免疫拡散や免疫電気泳動などがある。表型学と比較せよ。』
- 系統発生(phylogeny)H
『進化の歴史。生物群間の系統的な関係であり、実際には仮説的な祖先-子孫関係によって表される。個体発生と比較せよ。』
系統発生(けいとうはっせい)K
『それぞれの分類群がどのように形成され、進化してきたかの歴史的過程。個体発生との対比でいうが、個体発生は同じ種のさまざまな個体で同じことが反復して演じられるのに対して、系統発生はそれぞれの分類群ごとに個別に異なった過程をとる。』
- 結晶水(water of crystallization)A
『結晶中にその結晶の主成分の一つとして含まれる水の分子。結晶水には、構造の骨組みの一部となっていて脱水すると結晶が壊れるものと、構造の骨組みは他のものからつくられ、その骨組みの間に弱く結合されて存在するものがある。後者の場合は脱水されても結晶は崩壊しない。後者の例は沸石類に典型的にみられる結晶水であるため沸石水と呼ばれる。〔丸茂文幸〕』
- ゲノム(genome)H
『細胞内または個体内の遺伝物質の全体をいう。細菌のゲノムは、最大約0.01pg(1ピコグラム=10-12g)のDNAを含む環状染色体からなる。哺乳類の一倍体のゲノムは約3〜6pgのDNAを含む。一方で、ある種の両生類や古生マツバラン類の植物は、一倍体ゲノムあたり優に100pgを超えるDNAを含むことがある。DNA含量は染色体数と相関することもしないこともあり、一般に動物よりも植物でよく適合する。真核生物のDNAの多くは、検出可能な細胞産物をコードする構造遺伝子の構成要素ではない。ゲノムサイズ(ゲノムの大きさ)の進化については議論が多い。』
ゲノムK
『その生物にとって、調和のとれた機能を営む上で、必要最小限の遺伝子群全体を含む染色体の1組のこと。したがって、配偶子がもつ染色体の1組の名称であり、それに含まれる遺伝子の全体を示す。たとえば、ヒトの体細胞は2セットのゲノムをもち、そのうちの1セットは父親から、他の1セットは母親から由来する。』
- ⇒原核細胞
- ⇒原核生物
- 原形質(protoplasm)H
『細胞の内容物で細胞膜を含むが、普通は分泌物や摂取した食物、大型の液胞は除外される。多くの真核細胞では、細胞質のほかに1つ以上の核も含まれる。原核細胞では核を欠いている。細胞壁が存在する場合、これは原形質ではない。各々の原形質単位はプロトプラストを構成する。』
原形質(げんけいしつ)K
『細胞をつくる物質。細胞膜・細胞質・核の3要素から成る。これに対して、細胞壁、液胞内の細胞液、卵黄粒、油滴、結晶体など、細胞の生成物である非生活質を後形質という。』
- 原形質体⇒プロトプラスト
- 原形質膜⇒形質膜
- 原形質連絡(plasmodesma、複数はplasmodesmata)H
『非常に細い原形質の管で(直径約30〜60nm)、生細胞の細胞壁を貫通している。また、隣り合う2つの細胞の細胞膜で裏打ちされており、両者の原形質を結びつけている。デスモチューブルとよばれる小胞体の管で横断されている。多くの原形質連絡は細胞分裂の間に管状の小胞体の糸としてつくられ、発達中の細胞板内に取り込まれる。細胞壁全体にある場合もある。また、一次壁孔域または壁孔対の間の膜に位置することもある。』
原形質連絡(げんけいしつれんらく)K
『隣りあう植物細胞間を連結する、直径40-50nmの、細胞膜に囲まれた糸状原形質。原形質連絡を使って種々の物質の細胞間移動がおこなわれる。原形質連絡を介して小胞体が二つの細胞質にまたがることがある。』
- 原子間力顕微鏡(atomic force microscope)I
『略称AFM。原子・分子オーダーの表面分析法の一種として走査型トンネル顕微鏡(STM)とともに最近発達してきた。表面実空間の原子配列の画像を非接触的に得る方法。AFMでは、試料の表面原子とダイヤモンド製の探針先端との間に働く原子間力(10-18N程度)を、探針の取付けられた金箔の板バネに伝え、その動きを圧電体の微動素子と細い金属プローブ(Au、Ptなど)との間に流れるトンネル電流の変化で検出する。STMでは試料の導電性が要求されるが(金属やグラファイト)、AFMは高分子や生体物質のような半絶縁性物質やマイカなどのバルク絶縁物にも適用できる。しかし、原子レベルで平滑な平面をもった基板の作成や、試料と基板との固定法など、基本的なところで未解決な問題が多く、振動や熱ドリフトによる人為的な誤動作もあり、まだ十分確立した手法になっていない。』
- 減数分裂(meiosis、複数はmeioses;reduction
division)H
『還元分裂ともいう。核が2回の分裂を経て4つになる過程で、生じるそれぞれの核は元の半数の染色体をもち、多くの場合、遺伝的に異なる単相(一倍体)の染色体組をもっている(図30参照:略)。真核生物の有性生殖に必要な過程であり、減数分裂がないと、受精によって次世代の染色体数は倍化する。減数分裂は、複相(二倍体)の親から生じるすべての配偶子の核が単相の染色体組をもつようにする。さらに、少なくとも有性生殖を行う異系交配集団において、子孫の間での遺伝的変異をつくり出す。これは、無作為な、および無作為でない遺伝的組換えの結果としてもたらされる。
減数分裂の第一分裂は、DNA複製(S期)によって開始される。有糸分裂と同様にそれぞれの染色体が2つの姉妹染色分体を形成するが、前期の最初の段階では姉妹染色分体は密着していて、複製していないような外観をしている(細糸期)。このとき染色体は核膜に付着したままになっている。次に相同な染色体が対合し(接合糸期)、シナプトネマルコンプレックスが相同染色体間に形成される。そのような染色体対は二価染色体とよばれるが、相同性が少ない場合(例、多くの脊椎動物における異型性の性染色体間)には対合は部分的である。対合が完成すると、二価染色体は短く太くなる(太糸期)。太糸期はしばしば何日も続き、この間に非姉妹染色分体間の乗換えによって、相同染色体間で組換えが生じる。続いてシナプトネマルコンプレックスが溶解し(複糸期)、2つの相同染色体は解離し、乗換えが生じたキアズマとして観察される部分でのみ接着する。染色体はほどけはじめ、RNA転写を再開する。移動期にはRNA合成は終了し(ランプブラシ染色体)、二価染色体は短く太くなり核膜から解離する。この段階ではじめて4本の染色分体が区別できるようになり、それらがセントロメアとキアズマでつながっているのがわかる。
第一分裂前期の後で核膜が消失し、第一分裂中期には二価染色体が細胞の両極の中間面に並ぶ。第一分裂後期では紡錘糸がセントロメアの動原体に接着し、それぞれの二価染色体を構成する染色分体の2本ずつが両極に引っぱられる。姉妹染色体分体は、有糸分裂後期に比べてより‘広がって’見える。二価染色体のどの染色体がどちらの極に移動するかは偶然に決まり、非相同染色体間の組換えは無作為なものとなる。それぞれの二分染色体には両親由来の染色分体が混ざっているが、生じる2つの染色体組は単相(一倍体)である。続いて第一分裂の短い終期と間期に進むか、あるいはすぐに第二分裂がはじまる。短時間の第二分裂前期には、通常は核膜が再合成され、染色体も再び凝縮する。核膜は再び崩壊し、次に紡錘体が第一分裂面に対して平行(例、植物の大胞子)、あるいは垂直に形成される。第二分裂の中期、後期、および終期はすばやく経過し、同一ではない姉妹染色分体が有糸分裂と同様に分離する。姉妹染色分体は、それぞれをつないでいたセントロメアが後期に分離するまでは、中期核板上に位置する。染色分体がどちらの極に移動するかは、やはり偶然に決まる。4組の単相の染色体組のまわりに核膜が形成され、減数分裂は完了する。脊椎動物の配偶子形成については、生活環、生殖細胞の成熟(卵形成、精子形成)を参照。』
減数分裂(げんすうぶんれつ)K
『複相(2n)の細胞が有糸分裂を2回繰り返すことによって染色体数を半減し、単相(n)の細胞を形成する核分裂の様式。通常生殖細胞の形成過程でみられる。第一分裂と第二分裂から成る。第一分裂では相同な2本の染色体(それぞれの染色体は複製を完了して2本ずつの染色分体から成っている)が対合したあと分離が起こって核あたりの染色体数が半減し、つづく第二分裂では各染色体の2本の染色分体が2極へ分離して全体で単相(n)の核が4個生じる。還元分裂、成熟分裂ともよばれるが、染色体数が半減することを重視し、教育用語としては減数分裂を採用する。』
- ⇒原生生物
- 原生中心柱(protostele)H
『中心柱の最も単純で原始的な型で、中心の核となる木部とそれを取り囲む筒状の師部とからなる。一部のシダ類やヒカゲノカズラ類の茎や、ほとんどすべての根に広く見られる。単一中心柱では木部は中心の棒を形成する。放射中心柱では木部に肋があり、横断面が星形になる。板状中心柱では、木部はいくつかの平行な縦方向の細長い板となり、師部の中に埋まっている。』
【こ】
- 綱(classis、class)J
『生物分類のリンネ式階層分類体系において、門の次下位、目の上位におかれる基本的階級、もしくはその階級にあるタクソン。タクソンとしての綱を分ける形質の評価は、各門ごとにしばしば異なる。例えば、渦鞭毛植物門は細胞壁にある溝状構造の位置と方向および鞭毛の出かたを根拠として帯鞭藻類と渦鞭藻類の2綱を設けるのに対し、紅色植物門では細胞連絡の有無に重点をおいて、原始紅藻類と真正紅藻類の2綱を設ける。国際動物命名規約の制約は受けない。国際植物命名規約では藻類には-phyceae、菌類には-mycetes、地衣類には-lichenes、シダ類以上には-opsidaの語尾を、それぞれの綱の目の名称の由来する属名の後につけることになっているが、古くは-eaeの語尾が使われていたし、蘚類のMusciのような例もある。なお亜綱は植物では藻類に-phycidae、菌類に-mycetidae、その他に-idaeの語尾をつけて区別する。なお、国際細菌命名規約では、綱の語尾は定められていない。』
綱(こう)K
『生物分類のかなり上位の階級の一つで、門の下で目(もく)の上に位置する。』
- 交換性陽イオン(exchangeable cation)B
『鉱物の構成成分のうち一部の陽イオンが、その鉱物を水溶液中にいれた場合に、水溶液中の陽イオンと容易に交換されることがあり、このような陽イオンを交換性陽イオンという。膨脹性粘土鉱物の層間陽イオンやゼオライトの細孔の中に含まれる陽イオンがその例である。〔長沢敬之助〕』
- ⇒光合成
- 酵素(enzyme)H
『細胞がつくるタンパク質触媒。1つまたはそれ以上の細胞内または細胞外の生化学反応を効率よく特異的に触媒する。酵素反応は常に可逆的である。ほぼすべての酵素は単一のポリペプチドか、あるいは2つまたはそれ以上のポリペプチドが非共有結合して(四次構造として)構成される球状タンパク質である。溶液中での3次元配置によって、酵素は他の分子(基質)に作用し、1種類(必ずしも1種類ではない)の化学反応を触媒する。
酵素は1つまたはそれ以上の活性部位(ドメイン)をもつ。活性部位で適合する基質と一時的かつ非共有的に結合し、1つまたはそれ以上の酵素-基質(ES)複合体を形成する。触媒作用は、その複合体が形成されている短い間に行われる。1つまたはそれ以上の産物が放出され、活性部位は再度露出し、新たな基質と結合する。活性部位は特定のコンフォメーションと電荷分布をもつ。それらは基質特異的であり、基質と結合すると、それらを構成しているアミノ酸の相対的な3次元位置が変わり(誘導適応という)、触媒作用に関与する反応が進行する。
酵素は、可逆反応の平衡点に達するまで反応速度を速めるだけである。結局は熱力学によって説明される。あるまだよくわかっていないやり方で、酵素は反応の活性化エネルギーを減少させることにより、低い温度でその反応を触媒することができる。このことは生物系にとって不可欠である。低水分量下に置かれると、多くの酵素は生体内で行われる反応の逆反応を触媒する。
現在では、RNA分子も反応の触媒として働くことが知られており、それ自身を基質とすることもある(スプライシング)。自身のRNA分子を基質としない場合、それらのRNA分子は、すべての意味で酵素として考えられる(リボザイム、テロメア)。
一般に、細胞は酵素ができること以上のことはできない。進化および多細胞化の間、細胞は異なった生化学的能力をもつようになり、互いに形態的および機能的に変化した。1つの酵素の1つの細胞中における存在は、それをコードしている1つまたはそれ以上のシストロンの発現によって決まる。このように、分化は分子生物学を通じて理解される(遺伝子発現)。
酵素は一般に球状タンパク質であるから、その形と機能は周囲の水溶液のpHの変化によって影響を受ける(変性)。極端なpHによる変性は通常は可逆的であるが、熱による変性は不可逆である。温度が上昇すると、酵素と基質分子が衝突する割合が上がることにより、ES複合体形成速度が増加し、反応速度が上がる。このことは、酵素の熱変性の増加と相反するが、最適温度では反応速度の増加が上回っている。最終的には反応は止まるが、まれに100℃を超えてはじめて反応が止まるものもある(古細菌)。
いかなる場合も、基質と結合する酵素分子の割合は基質濃度に依存する。基質濃度を上げていくと、酵素反応の初速度(V0)が最大値、Vmaxまで上がる(図33参照:略)。このとき、この基質濃度において酵素は飽和されているといい(すべての活性部位が最大限に基質で占められている)、これ以上基質を加えてもV0は増加しない。V0=1/2Vmaxとなる基質濃度の値を、酵素-基質反応におけるミカエリス定数(Km)とする。Km値が低いことは、酵素がその基質に対して高い親和性をもつことを示す。
ある酵素(例、アスパルターゼ)は1つの特異的な基質分子に結合するが、同じ種類の多くの基質に結合する酵素もある(例、エキソペプチダーゼはすべての末端ペプチド結合に作用する)。これらの違いは酵素の立体化学的特異性に基づく。多くの酵素は補欠分子族または拡散性の補酵素との結合を活性に必要とする。そのような酵素では、タンパク質部分をアポ酵素、機能のある酵素-補因子複合体をホロ酵素という。金属イオンを必要とする酵素は金属酵素とよばれることもある。最も一般的なイオンとして、Zn2+、Mg2+、Mn2+、Fe2+またはFe3+、Cu2+、K+およびNa+があげられる。これらのイオンは、活性部位に必要な電荷を供与している。
いくつかの酵素は多酵素複合体の一部として存在する。ほぼすべての場合において、酵素の形はES複合体を形成すると変化し、これが反応を行う部位の位置関係に適切な変化を与える。反応の間に、その酵素への基質の静電結合および疎水結合が壊れて解離し、その酵素は再び元の形にもどる。この誘導適合仮説は、X線結晶学的証拠により支持される。基質名の最後の2、3の文字を接尾辞アーゼ(-ase)で入れ替えたものが、酵素の一般名として使われている。例えば、スクラーゼ(sucrase)はスクロース(sucrose)を分解する酵素である。しかし、国際的な規約では、酵素は機能により6つの主要な群に分類されている。(1)酸化還元酵素(例、脱水素酵素)は、酸化還元反応を触媒する。(2)転移酵素は、1つの基質から1つの原子団を他に転移する。(3)加水分解酵素は、加水分解反応を触媒する。(4)リアーゼ(脱離酵素)は、二重結合の付加(飽和)を触媒する。(5)異性化酵素は、異性化を行う。(6)リガーゼ(合成酵素)は、ATPなどの開裂に共役して縮合反応を行う。
アロステリック酵素は、活性部位に加えて、エフェクターまたはモジュレーター(修飾物質)が結合できる立体特異性部位をもつ。それらが結合すると、活性部位の形が変化し、基質に結合できるように、またはできないようになる(それぞれアロステリック活性およびアロステリック阻害)。このように、その活性をもつ前に、基質の存在に加えて、ある物質の存在または消失を必要とする酵素は、制御経路の一部となりうる。いくつかの酵素は、2つまたはそれ以上のモジュレーターと反応し、その酵素活性をもつ時期においてより厳密な制御を受ける(調節酵素)。
生化学的経路のフィードバック阻害(あるいはレトロ阻害)は、初発段階の酵素が反応経路の最終産物によってアロステリック阻害されることにより引き起こされる。その産物は酵素のモジュレーター部位に非共有的に結合し、活性部位をアロステリックに閉じる。
単純な酵素剤の一つは競合(競争)阻害である。阻害剤は基質と競合して酵素の活性部位に結合する。その結合は可逆的であるので、阻害剤濃度が一定のとき、基質を増やすと阻害の割合は下がる。この阻害の非常に重要な例として、おそらく最も豊富に存在する酵素、リブロース二リン酸カルボキシラーゼがある。この酵素はC3光合成においてCO2を固定し、このときO2分子はCO2と競合的に活性部位に結合する(光呼吸)。不競合阻害では、阻害剤がES複合体と結合することにより、正常に産物を放出できなくなる。非競合阻害(アロステリック阻害の一種)では、阻害剤が酵素およびES複合体の活性部位以外に結合して活性部位の形を崩し、ES複合体の解離を妨げる。この過程は、可逆的あるいは不可逆的であっても、基質濃度によって影響されない。
いくつかの酵素は構成性であり、基質の利用と無関係に合成される。また、他の酵素は誘導性(例、肝臓中の酵素)であり、基質があるときにだけ合成される。これについての分子生物学的な説明は遺伝子発現によってある程度まで可能である。
細胞の細胞質ゾルに無秩序に存在する酵素もある一方、非常に局在して分布し、特定の膜や特定の細胞小器官の基質内のみに存在している酵素もある。後者の分布の一つの理由として、その分子が細胞全体に無秩序に存在すると、基質濃度が低すぎるため、基質濃度に対する反応の初速度(V0)が非常に高くなる必要があることがあげられる。他の利点として、両立しない反応を物理的に隔離することがあげられる。
現在では、いくつかの酵素およびそれらを含む細胞を、不溶性の支持物質に適切に固定する方法が利用されている(例、工業的に重要な反応)。固定媒質として、シリカゲル格子、コラーゲンマトリックスあるいはセルロース繊維がある。または、アルギン酸塩のビーズやポリマーミクロスフェアで酵素を包むことも可能である。酵素を回収できる、酵素産物の混入がない、ときには極端なpHや温度においてより酵素が安定になる、などの利点がある。固定は連続発酵に非常に有用である(バイオリアクター)。』
酵素(こうそ)K
『生体内の化学反応を生体の穏和な条件下でおこなわせる触媒。酵素の本体はタンパク質であり、その立体構造の一部である活性部位で基質と結合して反応を起こす。また、酵素によっては、活性の発現に低分子の成分(特定の補酵素やイオンなどの活性因子)を必要とするものもある。』
- 酵母(yeast)H
『酵母菌ともいう。広く分布する単細胞の子嚢菌類で、胞子形成によるよりも分裂や出芽によって増殖する。有性生殖は2つの細胞あるいは子嚢胞子が融合して接合子を形成するときに起こる。接合子はまた、複相の芽を生じるか子嚢として機能し、減数分裂を経て4つの単相の核を生じる。有糸分裂がここで起こることもある。接合子(子嚢として働く)の細胞壁の中で各々の核の周囲に細胞壁が形成され、4つあるいは8つの子嚢胞子となる。酵母には、炭水化物を発酵させ、その過程でグルコースを分解してエタノール(エチルアルコール)を生じる能力があるため、経済的な重要性が大きい。ビールやワインの醸造とパンの生産は、この能力に依存している。ビールとワインの醸造では酵母をアルコール生産のために利用し、パンの製造では二酸化炭素の生産に利用している。ほかの種も役に立つが、ワイン、ビール、発泡性飲料、清酒の製造に重要な多くの酵母はSaccharomyces
cerevisiae の系統のみである。酵母のいくつかの種はヒトの病原体(鵞口瘡やクリプトコッカス症などの病気の原因となる)として重要である。ほかに、S.
cerevisiae 遺伝学の研究のために重要な実験用生物であり、生物工学のDNAクローン化の際に宿主として使われるものもある。商業的にはタンパク質やビタミン類の原料としても用いられる。』
酵母(こうぼ)K
『生活環の大半を単細胞で過ごし、有性的には子嚢胞子や担子胞子を形成し、無性的には出芽、まれに分裂によって繁殖する菌類の仲間。元来アルコール発酵にかかわる単細胞の菌類をさしたが、現在では酵母の世界は拡大している。子嚢菌酵母、担子菌酵母、不完全酵母に三大別される。』
- 厚壁胞子(chlamydospore)H
『全体として菌類の成長に適さない状態で生き続けることができる厚い壁をもつ菌類の胞子。菌糸の細胞あるいはその一部から、無性的につくられる。』
- コケ植物(Bryophyta)H
『植物界の一門で、タイ類、セン類、ツノゴケ類からなる。種数は少ないが広範囲に分布している。生育環境は多様で、湿った土手、土の上、岩の上などに生え、(樹木の枝や幹、葉などに)着生するもの、または水生のものもある。植物体は小さく、扁平でほふくするか、または直立し、直立するものではその高さが30cmに及ぶものも知られている。また、葉のような器官をもつものもある。維管束組織は未発達。基物とは仮根で固着している。有性生殖は、多細胞の生殖器官で形成された雄性配偶子(精子)と雌性配偶子(卵)の接合による。造精器では鞭毛によって運動する雄性配偶子(精子)が形成され、造卵器には1個の雌性配偶子(卵)が含まれている。接合子は発達してさく(凵jを形成し、さくの中で減数分裂を経て胞子が形成される。胞子は発芽すると原糸体となり、原糸体から新しい植物体が形成される。世代交代は顕著で、葉状体、または茎葉体様の植物体が配偶体世代で、さく(およびさく柄)が胞子体世代である。胞子体世代は、配偶体から成長に必要な物質の供給を部分的に受けている。コケ植物は車軸藻類のような植物群から起原したと考えられている。』
コケ類(Bryophyta、bryophytes)J
『蘚苔類、コケ植物。緑色植物の一門。緑藻類から進化した群と推定される。ツノゴケ類・苔(たい)類・蘚類の3群からなる。この3群をそれぞれ独立した門とすることがある。核相nの有性世代がよく発達し造卵器・造精器を生じ、2nの無性世代は小形で栄養的に独立できず、胞子嚢・胞子嚢柄・足の3部からなって有性世代に依存した生活をする。この点シダ類や種子植物と対照的である。葉状体または茎葉の分化した茎葉体を形成するが、維管束系の発達は見られず、蘚類では通道組織として道束を分化する。おもに陸上植物で、化石としては最古のものはデボン紀に記録され、中部石炭紀以後にウロコゴケ(苔類)、上部石炭紀以後に蘚類、白亜紀以後にミズゴケが発見されている。コケ類とシダ植物は一括して造卵器植物(Archegoniatae)ということがあり、蘚類以上では体に茎・葉の分化が見られるので茎葉植物(Cormophyta)と総称することがある。』
コケ植物(こけしょくぶつ)K
『通常陸上生活をする緑色植物で、維管束をもたない。配偶体はよく発達し独立生活をするが、胞子体は小型で配偶体に依存生活をする点で、維管束植物と対照的である。ツノゴケ類、セン類、タイ類の3群から成る。』
- 個体発生(ontogeny)H
『ある個体の発生の全過程および生活史。系統発生と比較せよ。』
個体発生(こたいはっせい)K
『多細胞生物の個体がつくり上げられること。有性生殖により生じた受精卵や無性生殖細胞の胞子が発芽し、分裂を繰り返して、多数の細胞をつくり出す。その後、その種に特有な過程を経て形態形成が進み、固有の成体となる。』
- 固定層(fixed bed, packed bed)@
『固体触媒反応、吸着、イオン交換をはじめとする流体と固体との接触操作を目的として固体粒子を詰めた反応装置の総称。流動層、移動層など他の接触方式と比較して、操作が簡単であること、流れ方向の逆混合が小さく、滞留時間分布が小さいために効率が高いことなどが特徴である。一方熱移動の速度が小さいことが設計に際して考慮すべき点として挙げられる。これらの特性を考慮して具体的対象に適用された結果、数千本もの管型固定層を並列に用いる多管式、薄型層を直列に連ねる多段式など多種多様な型式が広く用いられている。』
- 古土壌(paleosol)A
『地質時代にできた土壌。次のような種類がある。
1)化石土壌(fossil soil):新しい被覆層下に埋没し、地表の自然環境から遮断され、土壌生成作用が中絶し、生物化石のように地層中に保存された古土壌。
2)レリック土壌(relic soil):地表に露出し、生圏内にとどまっていながら、現在の自然環境とは異なった条件下での生成時の特性を残している古土壌。
3)多元土壌(polygenetic soil):異なった時期の自然環境の影響を重複して受けた土壌。レリック土壌の大半はこれに属する。複合土壌(composite
soil)は二つ以上の母材にまたがって土壌断面が発達した土壌で、多元土壌の場合もあるが、古土壌とは限らない。〔松井 健〕』
古土壌(paleosol)B
『現世土壌(modern soil)と相対するものである。現世土壌が現在の地表環境(土壌生成因子の組合せ)の下で生成しつつあるのに対し、古土壌はそれ以前の環境(現在との異同や何年前かは問わない)下で形成されたが現在はそれとは違った状況に置かれているものである。その形成環境がたとえ現在と同じであっても、埋没あるいは削剥によって地表面に対する位置関係が変化してしまったものも含まれる。たとえば古土壌形成時のA層が埋没により上位に重なる現世土壌のB層やC層にあたる位置にきたり、削剥によって往時のB層が現在の地表に出てきたりしたときがそれにあたる。現在からどれだけ古くなくてはいけないかという制限を特に設けないほうがよい。この定義はこれまでのそれ、たとえば、地質時代(現世=完新世より前、つまり更新世およびそれより古い)に形成されたものとか現在の環境条件とまったく異なった条件下で形成されたもの、に比べかなり広義である。こうすると、わが国に多い完新世火山灰、砂丘砂断面中の埋没土も古土壌に含まれるようになる。
古土壌には、上記のような埋没土と形成以来ずっと地表に存在しつづけるレリック土とがある。埋没後地表の削剥で再露出したものも後者に含める。いずれにしても古土壌は形成時に獲得した性質を保つとともに、一部はその後の環境変化(気候や水文条件の変化)や埋没、削剥の影響を受けて変わりつつある。火山灰土壌(黒ぼく土)では、現世のA層でアロフェンができにくく、その代りにアルミニウム・腐植複合体やオパーリンシリカ、2:1型粘土鉱物ができやすいのに、埋没土A層ではアロフェンが盛んにできる。また、ローム層中の埋没土のうち上層にあるもの(立川ローム相当)はアロフェンを主とするが、下層になると(下末吉ローム相当)ハロイサイトを主とし、最下層では(多摩ローム相当)モンモリロナイトが優勢となる。厚い軽石層やスコリア層直下の埋没土にはハロイサイトが含まれやすい。これらの事例は、埋没による腐植物質(遊離のアルミニウムを奪取する)の供給遮断とか上位からの洗脱物質(特にSiO2)の下方への付加のためと解釈されている。
古土壌は、層位学、地史学の上で、形成時の年代や古環境の指示者として重視されるだけでなく、農林地の土壌、土木の施工対象、化学工業・農業用資材としても重要である。〔加藤芳朗〕』
- 固溶体(solid solution)@
『異なる物質が互いに均一に溶けあった固相をいう。全組成にわたって固溶体をつくる場合と、限られた組成範囲でだけ固溶体をつくる場合がある。融点曲線(固相線)が単調に変化する固溶体と、極小または極大を示す固溶体があるが、極値を示す組成の間では、分子間化合物や金属間化合物の場合のような特定の組成関係は存在しない。固溶体内の原子的混合には、A物質に特有な空間格子のすきまにB物質の原子が位置する侵入型(interstitial)と、B原子がA原子の固有位置を不規則に置換する置換型(substitutional)がある。純物質の結晶構造が同じ場合には完全固溶体を形成しやすい。多くの合金をはじめ、ハロゲン化アルカリなどの無機塩、分子性有機化合物で固溶体形成の例が知られている。』
- コルク(コルク組織)〔cork(phellem)〕H
『死んだ不透性の細胞からなる保護組織で、若い茎や根が肥大して直径を増すのに伴って表皮と入れ替わるコルク形成層によってつくられる。コルク細胞が分化する間に、内壁はスベリンという脂肪性物質の比較的厚い層で裏打ちされる。それにより、水や気体の透過が妨げられる。細胞壁は木化することもある。』
コルク組織(こるくそしき)K
『植物の茎や根がある程度成長したのち、それまでの表皮に代わって外面を覆う組織で、コルク形成層からつくられる。木本植物に顕著であるが、小規模のものは草本植物にもみられる。コルクガシ(ブナ科)のコルク組織は人間にとって利用価値が高く、また細胞発見の材料ともなった。』
- コルク形成層(cork cambium、phellogen)H
『【植】維管束植物の2つの側部分裂組織のうちの一つで、二次的な植物体を形成する二次組織をつくり出す。コルク形成層は、通常は二次木部と二次師部の形成後に起こるコルクの形成のもとになる。コルク形成層が繰り返し分裂することにより、細胞が放射状に密に配列する。そのほとんどがコルク細胞である。これらの細胞はコルク形成層の外表面に向かって形成され、内表面に向かっては、コルク皮層が形成される。コルク、コルク形成層、コルク皮層がいっしょになり、周皮を形成している。』
コルク形成層(こるくけいせいそう)K
『植物の茎や根がある程度肥大成長したのち表皮が失われる前に表面にほぼ沿って生じる分裂組織で、各細胞は内外に分裂することを繰り返し、外側につくられた細胞は壁にスベリンを蓄積してやがて死に、コルク組織を構成する。コルク形成層から内側に柔組織がつくられることがああり、この組織をコルク皮層という。』
⇔維管束形成層
- コルク皮層(ひそう)(phelloderm)H
『コルク形成層によって生じる組織。コルク皮層の細胞は成熟後も生きており、スベリンを欠き、皮層の柔組織の細胞に似ている。内側に周皮細胞が放射状に並んでいることで、皮層細胞とは区別できる。』
- ゴルジ装置(ゴルジ体、ゴルジ複合体)(Golgi apparatus(Golgi
body、Golgi complex))H
『真核生物の動的な細胞小器官であり、ほぼ平行に積み重なった相互に連絡する扁平な嚢(ゴルジ槽、シスターネ)が、細管でできた2つの複雑な網目構造(シスゴルジ網とトランスゴルジ網)の間にはさまれた構造をしている。小胞体(ER)の近くに位置するが、物理的には分離している。膜で囲まれた区画が連なったものであり、ここを経由して形質膜や分泌小胞、リソソームなどを構成する要素が(一部はエンドソームを経由して)輸送される(これはタンパク質ターゲッティングを必要とする)。積み重なったゴルジ槽は、膜の輸送に必要な細胞内での中心的な位置を保持したまま、微小管の‘マイナス’(形成)端へ向かって移動できる。ゴルジ装置の数は細胞あたり1から数百まで多様であり、動物細胞では互いに連絡していることが多いが、植物細胞では連絡していないことが多い。1つのゴルジ装置は最大30個(通常は約6個)のゴルジ槽で形成される。各ゴルジ槽には、(核に面した)シス面と、(核と反対方向の)トランス面がある。ERからの輸送小胞(非クラスリン被覆小胞を含む)はシスゴルジ網に到達して融合し、小胞の膜はゴルジ槽の膜に加わり、修飾を受ける糖タンパク質がゴルジ槽の内腔に送られる。糖タンパク質のオリゴ糖の一部が除去され、一方で別の糖単位が付加されて、おそらく小胞特異的に異なる種類の成熟糖タンパク質が生じる。糖タンパク質の多くは修飾の間、膜内に保持される。小胞を担体として、ゴルジ複合体の構成要素間での膜の輸送が行われる。小胞は一つの区画から出芽して次の区画と融合し、トランスゴルジ網に到達する。トランスゴルジ網からは2つの型の小胞が出芽する。被覆小胞(直径約50nm)と、より大きな分泌小胞(直径約1000nm)である。これらの動きについては、解明されていない点も多いが、リン脂質輸送タンパク質が関与していると考えられている。おそらく、膜の出芽領域と非出芽領域には異なる‘膜骨格’があり、‘内在性’ゴルジタンパク質の非出芽領域からの移動を制限している。非クラスリン被覆小胞は、COP(コートマータンパク質)のいくつかの型によって特徴づけられる。COPの除去は、適切な受容膜と小胞との融合に必要であり、2つの膜と低分子のRas様GTPアーゼをつなげる可溶性の‘融合タンパク質’に制御される。菌類の産物であるブレフェルジンAは、COPの除去を引き起こし、ゴルジ装置全体を崩壊させる。
有糸分裂の開始時には、開口分泌と飲食作用による膜の輸送は停止し、ゴルジ装置は管状のクラスターや小さな小胞に断片化される(核と比較せよ)。図38参照(略)。
植物細胞では、ゴルジ装置は分泌に関与する。例えば、ゴルジ装置は細胞壁の多糖類を合成し、この多糖はゴルジ槽から出芽する小胞中に集まる。これらの分泌小胞が移動して形質膜と融合し、小胞の内容物である多糖が外部へ放出されて、細胞壁の一部になる。一部の藻類では小胞が細胞表面に輸送される前に、ゴルジ装置から出芽した小胞内に鱗片(有機物または無機物からなる)が形成される。ケイ藻類(ケイ藻植物)でも、ゴルジ装置は形質膜の下に集まる半透明の小胞を生じる。これらの小胞が融合して、内部でケイ酸質の細胞壁を合成するケイ酸蓄積小胞を形成する。』
ゴルジ体(ごるじたい)K
『真核細胞の、通常核に近接して存在する扁平(へんぺい)な袋状の膜によって構成される構造。多糖類の主要な合成の場であり、小胞体から送られたタンパク質、脂質を取り込み、加工、選別、濃縮したのちに分泌果粒やリソソームをつくる。ゴルジ装置、ゴルジ複合体、ディクチオソーム(植物)などの表現があるが、教育用語としては最も簡潔にゴルジ体に統一した。』
- コロニー(colony)H
『(1)群体ともいう。植物や動物のある程度(しばしば完全に)独立した複数の個体が集合して、相利共生的に相互作用しながら生活している体制。オオヒゲマワリ(ボルボックス)などの藻類や、ある種の繊毛虫のように、コロニーが多細胞体制に近づいて、多細胞体制に至る過渡的な段階にあると考えられるようなものもあるが、完全な多細胞体制に見られる細胞間の連絡や分業は、通常は不十分である。刺胞動物や外肛動物のコロニーでは、個体(個虫という)の間に多型が見られ、それに伴いコロニー内での個虫の分業が見られる。このようなコロニーを形成する生物はすべて、無性的な出芽で増殖する能力があり、コロニー形成の起原は出芽した個虫が分離できなくなったことにあると考えられている。個体間の著しい分業が見られる集団性昆虫(例、膜翅類、等翅類)のコロニーは、上述の例とは異なる。脊椎動物では、鳥類や哺乳類のいくつかの種がコロニーを形成して生活や繁殖を行い、これを反映した多くの行動的な適応が見られる。
(2)集落ともいう。1個の細胞から増殖した微生物(例、細菌、酵母など)のかたまりで、寒天培地のような栄養源の表面に形成される。』
コロニーK
『〔1〕同種の生物が密に集合して生活している状態。ハチ、アリ、シロアリなどのコロニーでは、膨大な数の個体が緊密な連絡をとって組織化された社会生活をしている。サンゴ、カイメンなどの多数の個体がくっつきあった集合構造は、教育用語としては群体とよんで区別する。
〔2〕複数種の個体の集合もコロニーとよぶ場合がある。
〔3〕細菌や菌類あるいは培養細胞の集落もコロニーという。この場合は、1個の細胞の分裂・増殖によってできる細胞の塊をさす。』
- 根圧(こんあつ)(root pressure)H
『水が根の生細胞から木部へ移動するときの圧力で、地上部を切った植物の切り口からの液の滲出によって示される。長時間継続する場合もあり、溶質の能動輸送によって、水ポテンシャルの勾配を維持することで上昇する。』
根圧(こんあつ)K
『根の吸水によって道管内の水を押し上げる圧力をさす。茎の切断面や幹にあけた穴に検圧計を取りつけて測定することができる。』
- 混合層鉱物〔interstratified (mixed-layer)
mineral〕A
『2種またはそれ以上の粘土鉱物が、層面を平行にして、種々の積重なり方をしてできている粘土鉱物。積重なり方には、成分層が規則正しく交互に積み重なった完全規則型、まったく不規則の完全不規則型、部分的な不規則型のものなどがある。二成分系(A、B)の構造では、各成分層の比率PA:PBと、成分層のつながる確率PAA、PAB、PBA、PBBで示される。雲母(A)/スメクタイト(B)の1:1の完全規則型は、PA=0.5、PB=0.5、PAA=0、PAB=1.0、PBB=0、PBA=1.0である。雲母/スメクタイト、緑泥石/スメクタイトなどがよくみられるものである。風化、熱水変質、続成作用などによって生成。〔須藤俊男・富田克利〕』
- 根冠(root cap)H
『根の頂端にある成長点を覆う、ゆるく配列した細胞群からなる帽子状の組織。頂端分裂組織を保護し、根が土に入っていくのを助ける。根が伸長して根冠が前方に向かって押されるにつれて、根冠の外層の細胞は脱落し、粘性のある覆いを根のまわりに形成する。このようにして、根の土壌中での進行を滑らかにしている。細胞が脱落するのと同じ速さで、頂端分裂組織によって細胞が補充される。この粘性のある物質は、高度に水和した多糖類(おそらくペクチン)であり、根冠の外層の細胞によって分泌される。これはゴルジ装置の小胞に蓄積され、小胞は形質膜に融合して、その粘液を細胞壁へと放出する。この粘液はその後、細胞壁を通過し、小滴となって外側に抜け出す。根冠は保護的役割に加えて、根の重力に対する反応を制御する重要な役割を果たしている。』
根冠(rootcap)J
『根端の最先端の部分を構成する、根の頂端分裂組織から外側に向けて増殖される柔組織。成長につれて最先端(最外側)の細胞から脱離していく。澱粉粒を含むが、貯蔵物質としての意義は少なく、重力の方向を感じるのに役に立つと考えられる。また粘液を分泌する場合や機械的に強い細胞壁をもつものも知られている。一般に、根冠は根端の分裂組織を保護し、土壌中へ根が伸長するのに役立つといわれるが、根の成長点は胚における幼根の分化以来、側根・不定根の分化において必ず内生的に形成される(すなわち根の頂端分裂組織の外側に必ず他の組織が存在する)から、根冠は根の発生・成長過程において一つの重要な生理的環境をなすと考えられる。トチノキやある種の水生植物の根・ヤドリギの寄生根などには根冠を欠くが、これは希な例。』
根冠(こんかん)K
『根の最先端にあって根端分裂組織をキャップ状に覆う組織。根の伸長にともなって外側の細胞からしだいに死ぬが、絶えず分裂組織により内側から細胞を補給される。細胞内のデンプン粒が根の重力屈性に関与しているといわれる。』
- 根系(root system)J
『一つの系としての植物の地下部全体。固着器官であると同時に、水分および栄養塩類の吸収を行う。その形は、主根(tap-root)が側根よりも勢いよく真直ぐ伸びる主根系、あまり分岐しない多数の細い根が群がり出るひげ根系など多様。砂地や砂漠など土壌の乾く所の植物では地下水に向かって深く伸び、よく分岐して吸収面積を増し、耐乾性が大きい。沼沢地や湿原の過湿で通気の悪い土壌では分岐が少なくて発達しない。一般に軟らかい土では硬い土よりもよく発達する。根系の伸びる速度は植物により、条件により異なるが、1日に1〜2cmに達する場合も多い。根をとり囲む土壌を根圏(rhizosphere)といい、根の存在によって土壌構造や土壌微生物相などの生物的特性が、根圏以外の土壌と大きく異なる。』
根系(こんけい)K
『植物の地下器官の全体をまとめてとらえた語。狭義には、地下茎を除き根だけを全部まとめたもの。主根が長くまっすぐに伸び側根がそれにくらべて短い場合は主根系とよび、多数のあまり分枝しない細い根が集まっている場合はひげ根系とよぶ。』
- 根茎(rhizome)J
『茎の特殊形態の一つで、一見して根のように見えるものの総称。地中または地上を長く横走し、ときには塊状になるがしばしば背腹性をもち、腹側へ根を、背側へ地上茎や葉を出す。タケ・ヨシなどの地下茎、シダ類に見られる茎がこの例。シケシダは地中を長く走り、オシダは地中で直立し、ミヤコジマハナヤスリは塊状になる。このほか地上を這うもの(アオネカズラ)などがある。』
根茎(こんけい)
『根のようにみえる茎。葉(しばしば鱗片状ではあるが)をつけていること、横断面でみられる木部と師(篩)部の配置、などによって真の根と見分けられる。地下または地表付近を横向きに長く伸びているものが多いが、浅い地下で短く直立しているものもある。』
- 根圏(rhizosphere)H
『根のすぐまわりの土壌の領域で、根によって変化を生じている。微生物の活動が活発化し、そのまわりの土壌に比べ生物の割合が変化していることが特徴である。』
- 根状菌糸束(rhizomorph)H
『一部の菌類によってつくられる根のような菌糸の束で、葉状体のある部分から別の部分へと養分を輸送し、頂端成長によって伸長する。内部が複雑に分化していることもある。』
- 根毛(root hair(pilus、複数はpili))H
『根の表皮細胞が外へ向かって管状に成長したもので、土壌粒子と密着する薄くて繊細な細胞壁をもつ。根毛は、根端の細胞分裂が活発な領域のすぐ地上部側に多数がつくられ、毛の生えた層を形成する。これらは、根がイオンや水を吸収するための表面積を非常に増加させる。根毛は根の頂端分裂組織によってつくられる新しい根の組織によって常に入れ替えられている。水やこれに溶けたイオンは、根毛から皮層、内皮、内鞘を抜けて木部へと移動し、それから根や茎を上方に向かって通り抜け、最終的に葉へと移動する。このような移動は、アポプラスト(細胞壁の連続体)あるいはシンプラスト(原形質系)を通して起こるのであろう。』
根毛(root hair)J
『根の表皮系起原の毛状の細胞。根端から少し隔たった、伸長の終わった部分に生じ、水やそれに溶解した物質を吸収する。根毛は径が数μmないし十数μm、長さが数十から千数百μmぐらいで分岐することはまれ。ふつう核はその先端部に見出される。細胞壁は薄い。根毛細胞は一般に短命で、ある程度古くなると潰滅したり、あるいは木化したり、スベリン化して厚壁化し機能を失う。根毛となる細胞はふつう他の表皮細胞に比べて根の主軸にそって短い。植物によってはかなり早くから根毛形成細胞(trichoblast)の分化が認められるものもあり、このような細胞では一般に原形質が豊かでその流動もよく認められる。(図:略)』
根毛(こんもう)K
『根端からやや離れたところで根の表皮の細胞の一部分が細長く伸びてできた毛。細胞壁は薄く、表面積を著しく増大することによって水とそれに溶けたイオンを吸収する役をすると考えられる。また、1本では弱くても多数が土壌の粒子の間に入り込むことによって植物体を地面に固着させる役をする。根毛の寿命は短いが、根の伸長につれて次々に先のほうに新しい根毛が生じる。』
- 根粒(root nodule)H
『マメ科植物(例、エンドウ、インゲンマメ、シロツメクサ)の根に見られる小さなこぶ状の構造で、窒素固定細菌の感染により生じる。』
根粒(根瘤)(root nodule、root tubercle)J
『マメ科植物の根に根粒菌が侵入した場合に形成されるこぶ状の構造。根粒菌と宿主植物の関係はかなり特異的で、根粒が形成される状態では窒素固定が行われる。またヤマモモやハンノキの根に微生物が寄生した場合にも根粒は形成され、窒素固定が行われる。マメ科植物の根粒中には多量のヘモグロビン(レグヘモグロビン)が形成される。』
根粒(こんりゅう)K
『一般に根粒菌(細菌)によりマメ科植物の根に形成される粒状組織。根粒菌は根粒中で大気中の窒素ガスをアンモニアに固定し、宿主植物に窒素源として供給し、宿主植物は炭素源など根粒菌へ栄養分を提供するという共生関係を維持している。』
- 根粒菌(leguminous bacteria、root
nodule bacteria)J
『リゾビウム科Rhizobium属の、マメ科植物の根に侵入して根粒を作る細菌の一群。遊離状態では運動性のあるグラム陰性の桿菌であるが、根粒中では運動性を失い、形も変化して枝分れした根棒状などのバクテロイド(bacteroid)になる。この属の細菌は種によって、寄生(マメ科植物)の寄生範囲が限定されている。寄生して根粒を形成した状態では顕著な窒素固定を行い、アンモニウム塩などを窒素源としたときは、マメ科植物外でも成長でき、純粋分離されている。好気性であるが、酸素分圧が低いときは窒素固定によりある程度の増殖が可能。このようにして窒素固定で生育した菌やバクテロイドは窒素固定酵素ニトロゲナーゼを含む。なお、マメ科以外の植物(ハンノキ・ドクウツギなど)の根に寄生して根粒を作り窒素固定を行うFrankia属放線菌も、広義の根粒菌といえる。』
根粒菌(こんりゅうきん)K
『主にマメ科植物の根に根粒を形成し、その細胞内に共生する細菌。根粒組織内で大気中の窒素ガスをアンモニアに還元し、宿主植物へ窒素栄養として供給するので農業上有用な細菌である。』
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