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【な】
- 内菌根(endomycorrhiza、endotrophic
mycorrhiza)J
『内生菌根。菌根のうちで、菌糸が高等植物の根の皮層組織の細胞内に侵入して、共生的または寄生的な生活をしているもの。不完全菌類のRhizoctoniaの類が種々の雑草の根の皮層に寄生し、またラン科植物の根の皮層細胞内に共生して内菌根をつくる。リンドウ科・ツツジ科などに属する多くの植物の根にも見られ、しばしば根の内部に菌が侵入して特別な層を形成する。ラン科植物の種子は未分化の状態で休眠するため、その発芽には菌根の形成が大きな役割をもつ。これは菌が種々の有機物質を吸収し、ラン科植物が利用できる形にするものと考えられているが、遊離窒素を同化する事実は知られていない。なお、外生的内菌根(ectoendotrophic
mycorrhiza)は、菌糸が柔組織の中層に伸長し、ところどころ細胞内に樹枝状の吸器を入れて生活する菌根で、オランダイチゴの根などに見られる。』
- 内圏錯体(inner-sphere complex)I
『金属イオンあるいは金属錯体と配位子が溶媒分子などを介さないで直接結合して生成する錯体。』
- 内鞘(ないしょう)(pericycle)H
『内皮のすぐ内側にある維管束柱の組織で、柔細胞と、ときには繊維から構成される。』
内鞘(pericycle)J
『周囲形成層(pericambium)。植物の内皮(2輪あるときは外輪だけ)のすぐ内側に接する柔組織の1ないし数細胞層。高等植物の茎または根にみられるが、往々欠くものもある。根では内鞘の数細胞が二次的に活動をはじめて、外方へ伸びて並層分裂をはじめ側根の原基となる。通常、側根は根のまわりに縦の数列となって生ずるが、その列の数は原生木部の数に応じて原生木部あるいは原生師部に接してn
列に縦生する(ダイコン:2、サツマイモ:5)のが普通。』
内しょう(鞘)(ないしょう)K
『植物の根や茎の内皮のすぐ内側で木部や師(篩)部よりも外側の部分。柔細胞から成るのがふつうである。根から側根が出るとき、その原基は内鞘の細胞から生じることが多い。』
- 内乳(endosperm)H
『内胚乳ともいう。被子植物の胚を包んでそれを養う栄養組織。(1)被子植物では、通常、受精後に三倍体の内乳核が分裂して胚嚢中に形成される。いくつかの種子植物(無胚乳)では、内乳は種子が成熟するまでに、胚にほとんど吸収されてしまう(例、エンドウなど、マメ類の種子)。他の種子(有胚乳)では、内乳の部分は種子が発芽するまで吸収されずに残る(例、コムギ、トウゴマ)。(2)球果植物などでは、受精前に胚嚢中で細胞分裂により形成される雌性配偶体組織をいうこともある。外層は種子中に残る。周乳と比較せよ。』
内乳(ないにゅう)K
『種子の発芽の際に用いられる養分(胚乳)を貯蔵している組織のうち、雌性配偶体の内部に起源をもつもの。雌性配偶体の周辺の組織が起源となった場合は周乳という。裸子植物の内乳は雌性配偶体そのものに由来し、被子植物では雌性配偶体(胚嚢)のなかの1個の細胞である中央細胞が重複受精の結果3n核をもったものに由来する。内乳(組織の名)を胚乳(物質の名)とよぶ誤りがしばしば見受けられる。』
- 内皮(endodermis)H
『【植】維管束領域(中心柱)を取り囲む鞘を形成する1層の細胞。根において最も明瞭に観察される。茎ではデンプン粒が含まれていることにより同定可能な場合がある(デンプン鞘)。普通は皮層の最も内側の層として扱われる。根の非常に若い内皮の特徴として、帯状の不浸透性の細胞壁物質(カスパリー線)が放射方向と上下方向の細胞壁に見られる。特に単子葉類では、内皮細胞(通過細胞を除く)は古くなるにつれて壁表面全体にわたる内側の壁へのスベリン層の沈着によりさらに修飾される。内皮細胞はまた、特に接線方向の壁にセルロース層が沈着することによりしばしば木化する。水や溶質は内皮細胞の原形質体(プロトプラスト)を通過するため、内皮は皮層と維管束の間の物質輸送の調節において生理学的に重要である。』
内皮(ないひ)K
『動物では心臓や血管やリンパ管のような体外に開いていない管の内面を覆っている扁平(へんぺい)な上皮を、植物では根や茎の中心柱を取り巻く1細胞層から成る組織で、皮層の最内層を成すものをいう。』
- ナヴィエ-ストークス方程式(Navier-Stokes
equation)@
『流体の密度をρ、粘性率をμ(一定)、速度をv(u,v,w)、圧力をp、流体の単位質量にはたらく外力をK(X,Y,Z)とすれば、
ρ(Dv/Dt)=ρK−grad p+(1/3)μ grad Θ+μΔv、
すなわち、成分で表わせば
ρ(Du/Dt)=ρX−(∂p/∂x)+(1/3)μ(∂Θ/∂x)+μΔu、…
が成り立つ。これをナヴィエ-ストークス方程式という。Θ=div v=∂u/∂x+∂v/∂y+∂w/∂xz、Δ=∂2/∂x2+∂2/∂y2+∂2/∂z2、D/Dt=∂/∂t+u∂/∂x+v∂/∂y+w∂/∂zである。D/Dtはラグランジュ微分よばれ、流体といっしょに動く観察者から見た時間変化を表わす。理論的には、連続物質に対してニュートンの運動方程式を適用して導かれる。また気体分子集団に対するボルツマン方程式からも導ける。縮まない流体では連続の方程式によってΘ=0であるから、
ρ(Dv/Dt)=ρK−grad p+μΔv
と簡単化される。ナヴィエ-ストークス方程式でμ=0とおけば、完全流体に対するオイラー方程式が得られる。ナヴィエ-ストークス方程式は非線形であり、ポアズイユの流れ、クエットの流れなど、特別な場合以外には厳密解はないために、古典力学に属しながらいまだに未解決の問題が多い。線形化して近似的に解く方法として、オセーン近似、ストークス近似がある。流れに平行な平板にそう流れ(境界層)については、境界層近似が適用される。とくに境界層の解からは、特異摂動法とよばれる非線形微分方程式の一般的近似解法が発達した。ナヴィエ-ストークス方程式の両辺に
rot を作用させると渦度方程式になる。乱流もナヴィエ-ストークス方程式に従うと考えられている。』
- 流れの関数(stream function)@
『縮まない流体の2次元の流れでは、流れのおこる平面をxy面、速度のx,y成分を(u,v)とすれば、連続の方程式は
∂u/∂x+∂v/∂y=0
となり、u=∂Ψ/∂y、v=−∂Ψ/∂xのような関数Ψが存在する。Ψ=一定、の曲線はdx/u=dy/vを満足するから流線である。Ψを流れの関数という。縮む流体についても、流れが定常であれば、連続の方程式は
(∂/∂x)(ρu)+(∂/∂y)(ρv)=0
であるから、u=(1/ρ)(∂Ψ/∂y)、v=−(1/ρ)(∂Ψ/∂x)のような流れの関数Ψが考えられる。ρは流体の密度。3次元でも、軸対称の場合には流れの関数が存在する。対称軸をx軸、動径方向にr軸をとれば、連続の方程式は
(∂/∂x)(ru)+(∂/∂r)(rv)=0
であり、これからu=(1/r)(∂Ψ/∂r)、v=−(1/r)(∂Ψ/∂x)のように関数Ψを定義すればよい。これをストークスの流れの関数(Stokes'
stream function)とよぶ。』
【に】
- 二座配位子(bidentate ligand)I
『ある配位子が2個の配位基で配位しているとき、その配位子を二座配位子という。多座配位子のうちで最も簡単なものである。炭酸イオンCO32-は、2個の酸素原子で配位すると二座配位子であるが、単座配位子として1個の酸素原子のみで配位することもある。二座配位子によって形成されたキレート環は、五員環、ついで六員環の場合が最も安定であり、その例も多い。』
- 二次代謝(産)物(secondary metabolite)H
『アルカロイド、キノン、植物精油(テルペノイドを含む)、グリコシド、(カルシゲノン、サポニンを含む)フラボニオド、ラフィド(オキサロ酸カルシウムの針状結晶)など、化学的には関連性のない多様な物質。これらの物質で被子植物の分類上の科や群を特徴づけることができる。このような化学物質が植物体内に存在すると食べにくくなり、動物が忌避する原因となる。このような物質を生産して細胞や組織内に蓄積する能力は、進化的に重要な手段であり、植物を多くの草食動物から生化学的に防御する。ある菌類は毒性が高く発がん性のある二次代謝産物を生産する。また緑藻類のサボテングサ属は、草食性の魚類による摂食を大幅に減少させる物質を含んでいる。微生物では、二次代謝産物は増殖期には生産されない(成長や生殖には不可欠ではない)が、定常期になると生産される。二次代謝産物の生産は、多くの複雑な酸素反応の段階を必要とする。産業的に重要なものに、抗生物質があげられる。
- 2次反応(second-order reaction)@
『反応次数が2の化学反応をいい、ふつうは反応速度が反応物の濃度の2次式で表わされるものをさす。たとえば、反応物AおよびBの濃度がはじめそれぞれa、bで、t時間後にそれぞれa-xとb-xに変わるとき、その時刻の反応による濃度変化速度がdx/dt=k(a-x)(b-x)で与えられる場合などである。kは速度定数である。この式を積分すると
k=(1/t)[1/(b-a)] log [a(b-x)/b(a-x)] (a≠b)
の関係が得られ、これから実測値xを用いてkを求めることができる。そのほか、反応による濃度変化速度がdx/dt=k(a-x)2の形で表わされる場合があり、このとき反応の半減期は初濃度aに反比例して変化する。2次反応の例はきわめて多く、エステルのけん化や一酸化二窒素の分解などはよく知られた例である。』
- 2:1層(2:1 layer)B
『2枚の四面体シートが頂点酸素を内側にして向かい合い、その間に1枚の八面体シートが入り、四面体シートの頂点酸素と八面体シートの両表面の陰イオンの2/3を共有して接合することによって形成される複合層(図:略)。その組成はR2〜3(Si,Al)4O10(OH)2(RはAl、Mg、Fe2+など)と書かれ、珪酸塩の形であるので、1:1層とともに珪酸塩層とよばれることもある。2:1層は一般に陽イオン置換のために負の荷電を帯びており、これとつり合う正の荷電をもった陽イオン、八面体シートなどと交互に積み重なって結晶を作っている。このような構造を2:1型構造といい、ときに3層構造(three-layer
structure)ともよばれる。〔白水晴雄〕』
- ⇒ニッチ(生態的地位)
- 2八面体型(dioctahedral)B
『層状珪酸塩の2:1層あるいは1:1層の八面体シート中の陽イオンの位置は、最小構造単位中に3位置あるが、この中の2つが陽イオンで占められ、残りの1つは空位となっている型。主としてAl3+が八面体陽イオンとして含まれ、Fe3+、Cr3+、Mg2+、Fe2+なども入るが、多くの場合はこれらはきわめて少量である。一般に、色は白あるいは白色に近い。多くの粘土鉱物がこの型に属し、パイロフィライト、白雲母、2八面体型雲母粘土鉱物(セリサイト、イライト、セラドナイト、海緑石)、モンモリロナイト、カオリン鉱物などがある。3八面体型とは構造的に種々の点で異なり、八面体シートと四面体シートの接合のための大きさの調整については、次のような特徴がある。八面体陽イオンが一般に小型のAlであるために、四面体シートのほうが拡がりが大きく、これを四面体の回転と傾斜によって拡がりを縮め、一方、八面体シートは陽イオン空位の八面体が拡大している。単位胞のbの大きさは通常8.95〜9.0Å。有色の、Feを含むものは9.0〜9.1Å。〔白水晴雄〕』
- 二命名法(binomial nomenclature)J
『二名法。命名規約によって、種の学名をラテン語で属名と種小名との2語の組合せ、すなわち二名式名(二名
binomen、binomial name)で表現する方式。たとえば、アカマツ Pinus densiflors、ドブネズミ
Rattus norvegicus、黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureus
などのように表わす。終りに命名者の名をつけることが植物や細菌の命名規約では必須とされているが、動物では省いてもよいことになっている。属以上の名称は1単語で表現する単名式名(単名
uninomen、uninomial name)、亜種は三命名法(trinomial nomenclature)すなわち種名のあとに亜種小名を付した三名式名(三名
trinomen、trinomial name)で表わされる。』
二名法(にめいほう)K
『世界共通の生物の名称として用いられる学名の表記法。生物分類は種を基本とし、種の学名は、それが含まれる属の学名を最初に、次に種小名をそれぞれラテン語またはラテン語化した語で表記する。』
【ぬ】
- ヌクレオチド(nucleotide)H
『プリン塩基またはピリミジン塩基が、リン酸化したリボースまたはデオキシリボース(デオキシヌクレオチドの場合)に結合した分子。リン酸化したヌクレオシド。ヌクレイチドとデオキシヌクレオチドは、それぞれホスホジエステル結合でつながってRNAとDNAを構成する単量体である。サイクリックAMPのような環状ヌクレオチドでは、リン酸部分がリボースの3'位と5'位の水酸基間のジエステル結合を形成する。ヌクレオシド三リン酸またはデオキシヌクレオシド三リン酸を基質とするポリメラーゼによって、ヌクレオチドは核酸に取り込まれる。』
ヌクレオチドK
『ヌクレオシドが糖部分でリン酸とエステル結合したもの。核酸の構成単位はリン酸基を一つだけもつヌクレオチドだが、単体としてはADPやATPのようにリン酸基を2ないし3個もつものや、NADなどのように、ヌクレオチドが2個結合したものも存在する。』
【ね】
- 根(root)H
『維管束植物の器官で、通常は土壌中へと下方に向かって成長し、植物を固着させ、水や栄養分となる無機塩類を吸収する。最初の根は胚に由来し、一次根となる。双子葉類や裸子植物では、この根は主根となり、垂直に下方へと伸長し、成長する方向に沿って側根を生じる。単子葉類では、一次根は通常は短命であり、根系は不定根から発達し、その側枝はひげ根の系を生じる。根は土に対する位置関係からは、茎と区別することができない。いくつかの植物では根が完全に地上にあるし、また地下茎をもつ植物もある(例、根茎)。外見的には、根は第一に葉や芽をもたない点で茎とは異なり、また根の先端には保護的役割を果たす細胞層である根冠がある。内部でも、根は外原型の原生木部をもつ維管束組織を中心部にもつ点において、茎とは異なる。多くの根は重要な貯蔵器官であり、そのいくつかは経済的にも重要である(例、ジャガイモ、ニンジン、パースニップ、サトウダイコン)。』
根(root)J
〔1〕維管束植物において、茎とともに軸をなす器官。通常は体の支持および水の吸収を主な機能とし、地下にある。古生マツバラン類で茎の方が先に存在することなどからみて、陸上植物への進化により発達した器官と考えられる。他の植物器官に比し形態的一致が著しく、これは地中の環境に変化がとぼしいためと考えられる。先端に根冠があり、内部的には内皮にかこまれた放射中心柱がある。分枝は常に内皮の内側の内鞘から内生的に生じ、茎および葉が外生的に形成されるのと極めて対立的。裸子植物と双子葉類とでは幼根が伸長して主根となり、木生のものは形成層を生じて肥大する。単子葉類では幼根の成長は発芽後まもなく停止し、不定根の伸長により鬚根(ひげね)となるのが普通。先端から少し後方に、表皮細胞の変形としての根毛がある。肥大して貯蔵の役をするようになった根を貯蔵根という。なお根の変型として根針・気根・呼吸根・同化根などがある。
〔2〕藻類や固着動物などが基盤に固着している部分を、形態的類似から便宜的に根とよぶことがある。』
根(ね)K
『維管束植物の基本的な器官の一つ。先端にはふつう根冠があり、それに覆われて分裂組織(根端分裂組織)がある。ここでの細胞分裂は根の伸長をもたらすだけで側生器官をつくらず、この点も茎と異なる。すべての根は内部に放射中心柱をもつ。多くの根は地中にあり、水を吸収することと植物体を地面に固着させることが主な役目であるが、著しく肥大して多量の養分を貯蔵するもの、空気中に出て酸素を取り入れる役をするものなど、特殊な形や機能をもつ根もある。』
- 粘液(mucus、mucilage、slime)J
『生物体内で生成される粘稠な液の総称。それを生産し分泌する腺を粘液腺という。植物の粘液腺は表皮中に分布していることが多く、ムシトリナデシコの茎・ムシトリスミレの葉面・モウセンゴケの腺毛などの粘液は著名である(食虫植物)。環形動物・軟体動物・両生類の皮膚の表皮細胞間に介在している皮膚腺も粘液腺の一種である。粘液は体表を保護するばかりでなく、感覚を助けるなど多様なはたらきをしている。粘液を構成する成分(ムチン)は生物によってさまざまであるが、糖蛋白質・糖類・無機塩類於などが主なものである。以上のほか、細菌の脇莢膜物質も粘液の一種とされることが多い。』
粘液(ねんえき)K
『生物体内で生成される粘性の高い液体で、主として体表や体内の上皮表面の保護に役立つ。成分はムチンと総称されている。動物の上皮組織には粘液を分泌する粘液細胞・粘液腺が発達している例が多い。口腔、食道や気道などの粘膜上皮もこれによって保護されている。植物では食虫植物の捕虫に役立つ粘液などが知られている。』
- 粘土(clay)B
『2とおりの定義が用いられている。
@性質による規定: いくつかの特定の性質の組合せによって性状が指定される鉱物粒子集合体の総称。通常次の3つの性質が挙げられている。
1.微粒子の集合体。
2.適量の水とよく混ぜ合わせたとき、一般に目立った可塑性を示す。
3.高温に十分加熱すると焼き固まる。
A粒径に基づく規定:
1.特定の粒径範囲をさす。この範囲の選定は、異なった専門分野間で、また同一専門分野内でも、必ずしも一定していないが、たとえば2μm以下の粒径範囲。
2.粒径区分に基づく粒径組成の特定の範囲をさす。この区分、範囲の選定もまた専門分野によりまた研究者により、必ずしも一定していない(図:略)。
これらの定義は無関係なものではなく、微細な粒子が取り上げられている点で共通しており、微粒子であるということが粘土を規定する上で、重要な一性質であることが示されている。@の定義では、挙げられた諸性質が組み合わさって認められることが重要で、それらの中のいずれか1つのみが認められても必ずしも粘土を規定するに十分とはいえない。Aでは粒径に関する区分名として粘土という名前が用いられている。したがって、この定義に関する限りでは、粒径以外のことがらについては、なにも述べられていない。しかし、ここに選定されたような、粘土と名づけられる粒径範囲、また粒径組成をもつ粒子集合体には、原則として(もちろん例外はあるが)、@に挙げた性質が認められる。したがって上記の2とおりの定義は両立しうる。』〔以下はこちらを参照〕
→『粘土と粘土鉱物』のページを参照。
- 粘土鉱物(clay mineral)A
『粘土の構成鉱物。含水珪酸塩鉱物であり、層状結晶構造を有するものが大部分である。大きなサイズの結晶は一般に存在しない。四面体シートと八面体シートがそれぞれ1枚ずつからなる1:1型層状構造を有する粘土鉱物には、カオリン鉱物・蛇紋石鉱物があり、四面体シート2枚と八面体シート1枚の組合せからなる2:1型層状構造を有するものには、パイロフィライト・滑石・スメクタイトグループ・バーミキュライト・雲母・脆雲母がある。2:1型の珪酸塩層の層間に、さらに1枚の八面体シートが挟まった層構造をもつ2:1:1型のものには、緑泥石族がある。その他レクトライト・コレンサイト・トスダイトなどの混合層鉱物、セピオライト・パリゴルスキー石などの層状珪酸塩の変種、イモゴライトやアロフェンなどの準結晶質あるいは非結晶質粘土鉱物がある。(図:略)〔嶋崎吉彦・富田克利〕』
粘土鉱物(clay mineral)B
『粘土の主要構成鉱物であって、粘土の特性の発現の源になっている鉱物。単一結晶とみなされる範囲の大きさ(単一結晶粒径)は微小であるが、結晶構造の規則−不規則の変化幅は広く、結晶性粘土鉱物と、低結晶質ないし非晶質粘土鉱物とに大別される。結晶性粘土鉱物は、層状珪酸塩に属する。Si(Alが一部置換して存在することもある)と酸素の結合単位であるSi-Oの四面体式配置体が連結して生ずる四面体シートの構造いかんによって、層構造と層−リボン構造とに大別される。主要化学成分を列記すれば、その数は地殻の主要化学成分に匹敵する。酸化物の形で表せば、SiO2、Al2O3、Fe2O3、FeO、MgO、CaO、K2O、Na2Oに加えてH2Oとなる。低結晶ないし非晶質粘土鉱物の主要化学成分には、SiO2、Al2O3、Fe2O3、MnO、H2Oが挙げられ、この中で特にSiO2−Al2O3−H2Oの組合せをもつものが多い。特に非晶質粘土鉱物とよばれている例では、シリカゲルとアルミナゲルの単なる機械的な混合ゲルとみなされるよりは、むしろシリカ−アルミナゲルとよばれるように、いわゆる結合ゲルとみなされるものが多い。粘土鉱物の中でも、発見されている種類の多い点、また分布の広い点について主要とみなされるものは、結晶性粘土鉱物であるが、アルミニウム質の非晶質粘土鉱物も、火山灰起源の粘土の主構成鉱物として重要である。』〔以下はこちらを参照〕
- 粘土・腐植複合体(clay-humus complexes)B
『陽イオンおよび陰イオン交換、多価陽イオンによる架橋、水素結合、ファンデルワールス力などによって、腐植が粘土と結合した状態のものをいう。粘土が膨脹型の場合には、その層間にも有機物は保持される。
土壌から粘土・腐植複合体を分離するには、比重1.75ないし2.0の液体(ベンゼン-ブロモホルム、Toulet溶液など)中での沈降が用いられる。11例の測定結果によれば、土壌の全炭素のうち、52ないし98%が粘土と結合した状態の炭素であったという。〔熊田恭一〕』
【の】
- 能動輸送(active transport)H
『エネルギーに依存して物質を細胞膜を透過して運ぶこと。化学的あるいは電気化学的な濃度勾配に逆らって(すなわち‘上り勾配’で)物質を運び蓄積する。この過程には、膜中のタンパク質(多くの場合、膜を貫通している)からなる‘ポンプ’が関与しており、これが輸送を行っている。エネルギーの供給源として、通常はATPまたは膜を隔てたプロトン勾配が必要である。プロトン勾配は酸化還元反応、光化学反応またはATPの加水分解によって形成される。プロトン勾配が利用される場合、勾配の崩壊によってプロトンとともに物質が共輸送、または対向輸送される。その代わりに、膜を隔てた不均一なイオン分布に起因する膜電位によって、特定のイオンが特別な輸送系を通じて膜を通過する。おそらく、すべての細胞が能動輸送を行っている。』
能動輸送(のうどうゆそう)K
『濃度あるいは電気的勾配に逆らって物質を細胞膜内外へ取り入れたり排出したりする仕組み。生物学的仕事の一つであり、ATPの加水分解によるエネルギーの供給を必要とする。これに対し、単純に濃度あるいは電気的勾配にしたがって生じる物質の移動を受動輸送という。』
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