ファン・デル・ワールス力(van der Waals
force)@
『不対電子をもたない分子間(原子間)にはたらく引力で、ふつう分散力を意味する。原子間距離rに対し、そのポテンシャルはV(r)=−C/r6で表わされる。中性原子をゆるく結合させ、ファン・デル・ワールス・クラスターをつくることがある。液体の凝集や、接着などにも本質的な力である。』
フィックの法則(Fick's law)I
『拡散の第一法則(first law of diffusion)および拡散の第二法則(second law of diffusion)のこと。溶液中における溶質の拡散について拡散量(第一法則)および濃度(第二法則)の時間変化を示す法則。溶液中で溶質が自由拡散するとき、拡散の起こる方法に垂直な断面Aを通って単位時間に通過する溶質の量dnは、拡散方向への溶質の濃度勾配dc/dxに比例する。
dn=−DA(dc/dx)dt
ここでDは拡散係数である。これをフィックの第一法則という。また、拡散が進むにつれて濃度勾配dc/dxも時間とともに変化するので、ある場所における濃度の時間変化は次式で与えられる
(∂c/∂t)x=D(∂2c/∂x2)t
これをフィックの第二法則という。フィックの法則は拡散に関する最も基本的な法則で、気体、溶液、固体を通じて適用され、高分子固体内の低分子の拡散にも当てはまる。』
風化(weathering)C
『動詞のweatherは「外気に当てて干す・難関を切り抜ける」などの意味もあるが、「外気の影響で変化する・いたむ」の意味は比較的新しく、《OED》は1757年のものを初出としている。岩石の「風化」の意味では、1757年ヘンケルの文例
This leady clay……derived from a lead ore, weathered and reduced
to earth (この鉛をふくんだ粘土は、鉛鉱石が風化して土に化したものである)というのがはじめてらしい。
ドイツ語のVerwitterungは英語のweatheringに近く、ロシア語のvivjetrivanjeは日本語の「風化」に近い。フランス語のalterationは単に「変質」の意。
風化は「人を教え導き、善に感化させる」の意味では中国の古典にも見られるが、地質学的な用法でweatheringを「風化」と訳したのは富士谷孝雄(明治16年・1883)がはじめのようである。』 →風化作用
フガシティー(fugacity)@
『ルイスが実在気体を熱力学的に論じるために導入した量で(1901)、逃散能、逃散度ともいう。実在気体のモルギブズ自由エネルギーG
を用いて、フガシティーf は、 G = G゜ (T ) + RT log f
(T, p )
により定義される。G゜ は標準状態のモルギブズ自由エネルギー、T 、p は絶対温度と圧力である。f
は圧力の次元をもち、十分低圧で圧力に等しくなる。すなわち、
lim
(f /p )=1。
p→0
同様に実在混合気体で成分i のフガシティーf i は、化学ポテンシャルμi を用いて、 μi = μi゜
(T ) + RT log f i
により定義される。このときの成分i の分圧をp i とすると、γi =f i /p
i を活量係数という。またモル分率をx i とすると、f i
=x i f の関係が近似的に成り立つ。これをルイス-ランドルの規則という。』