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最終更新日:2017年1月30日
固体物質(Solid Substance)のバルク(Bulk、全試料)での元素分析(Elemental
Analysis)を行う汎用的な機器分析法(Instrumental
Analysis Method)の1つがXRF(X-ray Fluorescence
Analitical Method)である。 通常は粉末(Powder)にして均質にした(Homogenized)試料〔硼酸リチウム(Lithium Borate)などの溶剤(Flux)を用いて高温でガラス化(Vitrify)するか、プレス(Press)で圧縮成形する〕にX線(X-ray)を照射して(Irradiate)、試料中の元素(Element)から発生する特性X線〔Characteristic X-ray:このようにX線によって発生する場合は、蛍光X線(X-ray Fluorescence)と呼ぶ〕の波長〔Wavelength:あるいはエネルギー(Energy)〕と強度(Intensity)を検出することで、試料の元素(Element)の種類と濃度(Concentration)を決定する。EPMA(Electron Probe Micro Analysis)と同様に、検出方法の違いにより、波長分散型(Wavelength Dispersive Type)とエネルギー分散型(Energy Dispersive Type)とに分けられる。 |
リンク |
XRF(X-Ray Fluorescence Spectroscopy、 蛍光X線分析法) |
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RISTによる『蛍光X線分析の原理と応用』(2009/2)から |
分析法 |
物質を同定するためには、構造(一般的には結晶構造)と化学組成を決定する必要がある。物質の状態(固体・液体・気体)により分析法が異なることは普通であり、固体の場合はさらに固体のままで測定するか、溶解して液体として測定するかに分けられる。化学組成についても、元素の組成かあるいは化学種の組成かによって異なる。
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無機 |
固体 (主に鉱物) |
非溶解−塊状 |
光学顕微鏡7)、 電子顕微鏡(SEM)5) |
X線単結晶法、 電子顕微鏡(TEM)6) |
EPMA、 発光分光3) |
核磁気共鳴(NMR)、 XPS、 XAFS |
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質量分析(MS)2) |
非溶解−粉末 | XRD | XRF | |||||||
溶解 |
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原子吸光(AA)、 ICP(-AES、-MS)4) |
クロマトグラフィー | 質量分析(MS) | ||||
液体 |
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X線 |
原子吸光(AA)、 ICP(-AES、-MS)4) |
クロマトグラフィー | 質量分析(MS) | ||||
気体 |
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クロマトグラフィー、 赤外分光(IR) |
質量分析(MS) | |||||
有機 |
光学顕微鏡7)、 電子顕微鏡(SEM)5) |
電子顕微鏡(TEM)6)、 SAXS |
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XAFS |
赤外分光(IR)、 近赤外線分光(NIR)、 クロマトグラフィー、 電気泳動 |
質量分析(MS) | |||
1) 放射光(シンクロトロン)を用いた各種分析法が用いられてきている。 2) 固体試料に対する質量分析法には、二次イオン質量分析法(SIMS、Secondary Ion Mass Spectrometry)があり、二次イオン質量分析器を搭載した分析装置であるSHRIMP(Sensitive High Resolution Ion Microprobe)は代表的である。質量分析器(計)は、同位体分析だけでなく、超微量元素分析にも用いられている。 3) スパーク放電発光分光。 4) ICP(Inductively Coupled Plasma、誘導結合プラズマ)を用いた発光分光分析であり、 ICP-AES(ICP-Atomic Emission Spectrometry、ICP-OES、ICP-Optical Emission Spectrometry)はICP発光分光で、ICP-MS(ICP-Mass Spectrometry)はICP質量分析である。ICP-MSは超微量元素分析のために用いられることが多い。 5) SEM=Scanning Electron Microscope、走査型電子顕微鏡、走査電顕。 6) TEM=Transmission Electron Microscope、透過型電子顕微鏡、透過電顕。 7) 可視光および紫外線などの様々な電磁波を用いた、透過型および反射型(落射式)および各種光学顕微鏡。レーザー光を用いたものも含まれる。結晶質の試料には、偏光板を挿入した偏光顕微鏡が一般に用いられる。 |
《XAFS》(X-ray Absorption Fine Structure)
《XPS/ESCA》(X線光電子分光、X-ray Photoelectron Spectroscopy、Electron Spectroscopy for Chemical Analysis、エスカ)
《SAXS》(Small Angle X-ray Scattering、X線小角散乱)
XAFS(エックス線吸収微細構造) |
X線吸収微細構造(X-ray absorption fine structure)は、X線吸収スペクトル上でX線の吸収端付近に見られる固有の構造である。英語の頭文字から
XAFS(ザフス,エクザフスと呼ぶ人もいる)と略される。XAFS の解析によってX線吸収原子の電子状態やその周辺構造(隣接原子までの距離やその個数)などの情報を得ることができる。X線結晶構造解析とは異なり、試料が長距離秩序を必要とせず、結晶物質に限られない。 XAFS はそのエネルギー領域によってXANES(ゼインズ、ザーネス)、EXAFS(エクサフスあるいはエクザフス) に分けられる(XANES の一部分を吸収端領域と呼ぶ場合もある)。XAFS という頭字語は XANES と EXAFS を合わせた領域を指す言葉として後から考案された。 |
エックス線吸収スペクトルの例。横軸はエックス線のエネルギー(吸収端をゼロとする)、縦軸はエックス線の吸収量である。 |
ウィキペディア(HP/2015/8)による『エックス線吸収微細構造』から |
XANESの起源 |
励起先 ・内殻電子の非占有準位および準連続準位への励起 ・励起前後のエネルギー差分のエネルギーをもつX線を吸収→吸収スペクトルにピーク スペクトルの形状 ・励起前後の準位の微細構造を反映した位置にピークや肩 → 混成軌道など ⇒ 対称性に敏感 ・カチオン: 原子価数が大きい程、高エネルギー側に吸収端 XANESから得られる情報 ・原子の化学状態(電子状態) ・配位の対称性 ・混合物の場合:混合比 |
EXAFS振動の起源 励起先 |
EXAFSの解析 |
EXAFSから得られる情報 目的原子の周りの局所構造 ・原子間距離: 精度 〜 0.01Å(相対的) ・配位数: 〜±10% ・元素種: 周期律表で一段 ・モデル構造の判定: 一意的ではない 位置の揺らぎ ・熱振動 ・非対称性 留意点 ・これらの全てについて情報が得られる訳ではない ・多くの場合、第一近接の原子についての情報のみ |
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XANESとEXAFSの得意不得意 山本孝, SPring-8講習会テキスト 2009 |
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XAFS解析の流れ |
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本間(2009/12)による『XAFS(X線吸収微細構造)の紹介』から |