『レアメタル』の本(『なぞの金属・レアメタル―知らずに語れないハイテクを支える鉱物資源―』)が
技術評論社から『知りたい!サイエンス』の1冊として発売されました(2009年2月6日)





レアメタルとは?レアメタル諸量資源全般の分類地球構成物質一覧情報源ベースメタルの埋蔵量と生産量

レアメタルとは?

 日本では、一般に経済産業省の関係組織が決めた31鉱種47元素を指します。化学的性質の類似性から希土類(レアアース)とされる17元素が資源的には1鉱種にまとめられているために、希土類以外では合計30元素からなります。これらは、先端産業に必要(将来も含めて)なもので、比較的消費量が少ないことと、大部分が金属の性質を持つ単一元素物質を形成するために、希な(rare;レア)金属(metal;メタル)と総称されています。
 日本以外ではレアメタルという呼び方はあまり使われませんし、定義も異なります。さらに、日本でも時代によって(状況によって)変わることになります。

日本のレアメタル31鉱種47元素(黄色)

族\周期

Ia

1

IIa

2

IIIa

3

IVa

4

Va

5

VIa

6

VIIa

7

VIII

8 9 10

Ib

11

IIb

12

IIIb

13

IVb

14

Vb

15

VIb

16

VIIb

17

0

18

1 1
H
  2
He
2 3
Li
4
Be
  5
B
6
C
7
N
8
O
9
F
10
Ne
3 11
Na
12
Mg
13
Al
14
Si
15
P
16
S
17
Cl
18
Ar
4 19
K
20
Ca
21
Sc
22
Ti
23
V
24
Cr
25
Mn
26
Fe
27
Co
28
Ni
29
Cu
30
Zn
31
Ga
32
Ge
33
As
34
Se
35
Br
36
Kr
5 37
Rb
38
Sr
39
Y
40
Zr
41
Nb
42
Mo
43
Tc
44
Ru
45
Rh
46
Pd
47
Ag
48
Cd
49
In
50
Sn
51
Sb
52
Te
53
I
54
Xe
6 55
Cs
56
Ba
* 72
Hf
73
Ta
74
W
75
Re
76
Os
77
Ir
78
Pt
79
Au
80
Hg
81
Tl
82
Pb
83
Bi
84
Po
85
At
86
Rn

7
87
Fr
88
Ra
** 104
Rf
105
Db
106
Sg
107
Bh
108
Hs
109
Mt
110
Ds
111
Rg
112
Cn
113
Uut
114
Uuq
115
Uup
116
Uuh
117
Uus
118
Uuo

*ランタノイド
(6IIIa)
Lanthanoid

57
La
58
Ce
59
Pr
60
Nd
61
Pm
62
Sm
63
Eu
64
Gd
65
Tb
66
Dy
67
Ho
68
Er
69
Tm
70
Yb
71
Lu
**アクチノイド
(7IIIa)
Actinoid

89
Ac
90
Th
91
Pa
92
U
93
Np
94
Pu
95
Am
96
Cm
97
Bk
98
Cf
99
Es
100
Fm
101
Md
102
No
103
Lr

放射性同位体のみ(61Pmも)

レアメタル

(希土類は、ランタノイド15元素+21番Sc+39番Yの17元素)


レアメタル諸量

(独)物質・材料研究機構(2007)による『元素戦略アウトルック 材料と全面代替戦略〜NIMSにおける取り組みからその可能性を探る〜』から
『第1章 全面代替に向けた材料戦略の視点』の『2. 元素戦略研究の必要性−データで見る元素リスクの現状−』(原田幸明氏による)の中の図:
2.1 宇宙存在度/2.2 地殻存在度/2.3 年間生産量/2.4 価格/2.5 市場規模/2.6 既存埋蔵量可採年/2.7 資源疲弊加速係数/2.8 年間総資源疲弊加速度/2.9 関与物質総量(エコロジカルリュックサック)/2.10 年間総関与物質総量/2.11 年間総資源疲弊加速度と年間総関与物質総量からみた各元素の位置/2.12 資源の偏在度

資源全般の分類

資源全般の分類(案)

大分類

中分類

小分類

個別資源

将来の資源

備考
人的資源 人口 人口 (人口増か人口減か、労働力比率) 競争力を持つ実質的な人口が重要
科学・技術力(教育) 科学・技術力 (能力) 教育が重要
文化力(教育) 文化力 文化力 (能力) 教育が重要
情報力 情報力 (能力) 教育が重要
経済力 経済力 (能力) 教育が重要
軍事力 軍事力    
環境資源 国土面積 国土面積    
自然環境 気候 気候 (気候変動の影響) 温暖(非寒冷)、湿潤(非乾燥)
土地能力 土地能力 (気候変動の影響) 非砂漠、非凍土
大気環境   大気資源? 大気汚染の影響?
水環境 水資源   水(表流水・地下水)汚染の影響
土壌環境 土壌資源   土壌汚染の影響
生物環境 生態系   地球環境問題の影響
地盤環境     地震の程度
社会環境 社会環境      
その他 観光資源(自然環境+社会環境)      
エネルギー・物質資源@
(地球資源)
エネルギー資源 化石燃料   石油、石炭、天然ガス オイルシェール、オイルサンド、メタンハイドレート? ただし、オイルシェールとオイルサンドは一部利用中
核燃料 (原子力)  ウラニウム(核分裂) トリチウム(核融合)?  
自然エネルギーなど   非生物 太陽光、太陽熱、水力、風力、地熱など 潮力、波力  
生物 バイオマス    
鉱物資源 金属鉱物資源   鉄、アルミニウム、銅、レアメタルなど マンガン団塊?、コバルト・リッチ・クラスト、海底熱水鉱床  
非金属鉱物資源 非金属鉱物資源 石灰石など    
砕石資源 砂利、砂など    
石材資源 各種岩石    
宝石資源 宝石    
生物資源 食糧資源 水産物など    
森林資源 木材、パルプなど    
水資源   降水、表流水、地下水など    
その他 医薬用資源      
エネルギー・物質資源A エネルギー資源 (人工的なエネルギー利用形態も含む) 廃棄物利用、バイオマス利用など 燃料電池(発電)、バイオマス利用など  
物質資源 (おもに化石燃料などから作られるもの) プラスチックおよびその他の高分子(繊維、ゴム、塗料、接着剤)など    
生物資源 (養殖や栽培や飼育や植林などによる) 水産物、農産物、畜産物、林産物など    
その他 医薬用資源(遺伝子操作を含む)      
エネルギー・物質資源は、自然本来の資源を@とし、人工的な資源をAとした。

地球構成物質一覧

地球構成物質一覧(案)

分類

 備考
非生物源
(天然)
無機物 固態 鉱物〔岩石、土壌、レゴリス〕、氷河、浮遊物質〔水中〕、エーロゾル〔大気中〕 主に地圏(地殻、マントル、核)、地球外物質(隕石など):鉱物の種の総数は約4000。
液態 、溶存物質、エーロゾル 主に水圏
気態 大気(窒素ガス、酸素ガス、水蒸気など) 主に気圏
有機物 固態    
液態    
気態 メタンガスなど 主に気圏
生物源
(天然)
生体 有機物 固態 生体バイオマス(植物、動物など) 生物圏:生物の種の総数は約200万。
液態 生体バイオマス由来物質 天然物化合物
気態 生体バイオマス由来物質 天然物化合物
無機物 固態 サンゴ礁(石灰質部分)など  
液態    
気態    
非生体(死体) 有機物 固態 石炭、化石の一部、死体バイオマス 化石燃料(石炭)
液態 石油、シェール・オイル/サンド・オイル〔固態に近い〕 化石燃料(石油)
気態 天然ガス、メタンハイドレート 化石燃料(天然ガス)
無機物 固態 石灰岩など  
液態    
気態    
人間源
(人工)
有機物 固態 プラスチック、高分子化合物など CAS(Chemical Abstracts Service)による収録件数の総数では、2009年1月現在で、有機化合物と無機化合物が約4200万件弱、バイオシーケンス(タンパク質のアミノ酸配列や遺伝子の核酸配列など)が約6000万件強、合計1億種類を超える。
液態 石油製品など
気態 LPG、フロンガスなど
無機物 固態 各種金属(合金を含む)、セラミックス、ガラスなど
液態 各種薬品など
気態 炭酸ガス、各種ガス類など

情報源

情報源 

※筆者名の次の( )の中の西暦の数字の部分にあるHPはホームページを意味します。また、印刷物であっても、インターネットから見ることができる場合には、そのアドレスを付記しています。

(日本語:五十音順)

(英語:アルファベット順)

ベースメタルの埋蔵量と生産量

表 ベースメタルの埋蔵量と生産量
 米国地質調査所(USGS)の『Mineral Commodity Summaries 2008』のデータから作表。2007年のデータ。

原子番号

元素記号

鉱種など

埋蔵量ベース
(トン)

埋蔵量ベース

埋蔵量
(トン)

埋蔵量

生産量
(トン)
2007年

生産量

第1位国

第1位国

第1位国

13 Al ボーキサイト 32,000,000,000
(グロス量)
ギニア 26.9 25,000,000,000
(グロス量)
ギニア 29.6 190,000,000
(グロス量)
豪州

33.7
(製錬)             38,000,000
(金属量)
中国 31.6
26 Fe 鉄鉱石(粗鉱)
鉄鉱石(金属)
340,000,000,000
160,000,000,000
ウクライナ
ロシア
20.0
19.4
150,000,000,000
73,000,000,000
ウクライナ
ロシア
20.0
19.2
1,900,000,000
(グロス量)
中国 31.6
(銑鉄)              940,000,000 中国 49.5
(粗鋼)             1,320,000,000 中国 36.5
29 Cu 940,000,000 チリ 38.3 490,000,000 チリ 30.6 15,600,000
(金属量)
チリ 36.5
30 Zn 亜鉛 480,000,000
(金属量)
豪州 20.8 180,000,000
(金属量)
豪州 23.3 10,500,000
(金属量)
中国 26.7
50 Sn スズ 11,000,000
(金属量)
中国 31.8 6,100,000
(金属量)
中国 27.9 300,000
(金属量)
中国 43.3
82 Pb 170,000,000
(金属量)
豪州 34.7 79,000,000
(金属量)
豪州 30.4 3,550,000
(金属量)
中国 37.2

ベースメタルとは?
 ベースメタルはbase metalから来ています。この言葉も曖昧な使われ方をしていますが、レアメタルに比べて消費量の多い金属(元素)を指す場合が多いようです。別途、貴金属(precious metal/noble metal)という言葉があり、こちらは金(Au)や白金(Pt)などの一般的に高価な金属を指しますが、それに対する卑金属という意味でbase metalという言葉が使われることもあります。ベースメタルには、消費量が最も多い鉄(Fe)や、次に多いアルミニウム(Al)を始め、銅(Cu)・亜鉛(Zn)・鉛(Pb)などが含まれるのが普通です。


ホーム