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最終更新日:2016年12月9日
最も身近な例が、原子力発電所(Nuclear Power Plant)における質量数(Mass Number)235のウラニウム(Uranium)の核分裂反応(Nuclear Fission Reaction)である。人類は原爆(Atomic Bomb)としても核分裂反応を経験した(因みに広島に投下されたのはウラニウムによるもので、長崎はプルトニウムによるもの)。プルトニウム〔Plutonium:主に質量数239の同位体(Isotope)が核分裂反応を起こす〕はウラニウムの核分裂に伴って生成され、天然(Nature)にはほとんど存在しない。 いずれにしても、核分裂反応は通常の化学反応(Chemical Reaction)に比べて莫大なエネルギーを放出するため、エネルギー資源(Energy Resource)としての利用が平和利用(Peaceful Use)の柱として進められてきた。 |
リンク |
核分裂 |
※核分裂性物質である核種の中で最も重要なものがウラン235(23592U)である【他にウラン233(23392U)〔←トリウム232(23290Th)〕やプルトニウム239(23994Pu)なども】。その核分裂反応は次式で示される。
n(熱中性子)+ウラン235→ウラン236(不安定)→核分裂片1+核分裂片2
ここで、核分裂片1と核分裂片2において、質量数(=中性子数+陽子数)の合計は236で、陽子数の合計は92である。核分裂片1(質量数90-100程度)は、例えばストロンチウム(9038Sr)やジルコニウム(9340Zr)やテクネチウム(9943Tc)などで、核分裂片2(質量数135-145程度)は、例えばセシウム〔13355Cs(安定)→13455Cs、13554Xe→13654Xe→13555Cs、13755Cs〕やヨウ素(13553I、13153I、12953I)などである。
核分裂片1と核分裂片2は、さらに中性子を放出して(この中性子が次の核分裂を起こし、それが繰り返されれば核分裂連鎖反応となる。ただし、発生する中性子は高速なので、減速させて熱中性子にしなければならない)、同じ元素で質量数の小さい放射性同位体に変わっていく。さらに質量数は変わらずに、ベータ崩壊によって中性子が陽子に変わっていけば、陽子数の大きい元素が次々に生成される。これは5回くらい変わることが多い。これらはフィッション・チェーンと呼ばれ、これらの核分裂生成物が使用済核燃料放射性物質(放射能)の主体を構成することになる。
どのような質量数のフィッション・チェーンが、どのような割合で生成されるかは、核分裂性物質の種類や照射中性子エネルギーなどにより変化する。そしてその傾向は、質量数と核分裂収率(%)を座標軸にした質量収率曲線で表わされる。
From Fluoride volatility: Blue elements have volatile fluorides or are already volatile; green elements do not but have volatile chlorides; red elements have neither, but the elements themselves are volatile at very high temperatures. Yields at 10 years after fission, not considering later neutron capture, fraction of 100% not 200%. Beta decay Kr-85→Rb, Sr-90→Zr, Ru-106→Pd, Sb-125→Te, Cs-137→Ba, Ce-144→Nd, Sm-151→Eu, Eu-155→Gd visible. |
Fission product yields by mass for thermal neutron fission of U-235, Pu-239, a combination of the two typical of current nuclear power reactors, and U-233 used in the thorium cycle |
Wikipedia(HP/2011/4)による『Fission product yield』から |
図1 核分裂生成物の質量数分布 〔出典〕W.マーシャル編:原子炉技術の発展(上)、裳華房、p.72 ATOMICA(HP/2011/3)による『原子核物理の基礎(4)核分裂反応 (03-06-03-04)』から |
出典:原子力手帳 原子は1つの原子核と複数の電子によって構成されています。電子とは、マイナスの電荷をもつものです。 |
出典:「原子力・エネルギー」図面集 2004-2005から抜粋 ウラン235に中性子をあてることで、ウラン235は核分裂を起こして核分裂生成物に変化します。この時に熱エネルギーが発生します。 |
〔電気事業連合会による日本の原子力の『原子力への取り組み』の『原子力発電のしくみ』の中の『核分裂のしくみ』から〕 |
図2 235Uの熱中性子による核分裂収率 (縦軸は収率、横軸は質量数) 片倉(2004)による『核分裂生成物収率データ評価ワーキンググループ』から ※質量数235のウラニウムは、熱中性子の照射によって分裂する性質を持つが、二つの分裂片は質量数90-100程度と135-145程度の元素(核種)に分かれる。これらはさらにβ壊変により変わる(フィッション・チェーン)。これらが核分裂生成物であり、死の灰(放射性降下物)を構成する。 |
核分裂エネルギー |
1回の核分裂で放出されるエネルギーは約200MeVである。これが次のように配分される。 鎌田(HP/2013/6)による『原子力を考える』の『核分裂で放出されるエネルギー』から |
ウラン原子(235U)の核分裂 原子力発電におけるウランの核分裂 ウィキペディア(HP/2013/6)による『核分裂反応』から 【参考】 |
岡本(HP/2013/6)による『原子力概論』の『核分裂とその連鎖反応』から |
原子炉では核分裂で発生した約2.5個の中性子のうち次の核分裂連鎖反応に用いられる1個を除く1.5個が原子炉を構成する材料に吸収されて中性子の結合エネルギー(約8MeV)に相当する捕獲γ線を放出するので、中性微子に持ち去られるエネルギーにほぼ相当するエネルギーが原子炉に与えられるため、最終的に1核分裂毎に約200MeVのエネルギーが原子炉内で熱として利用できることとなる。これは RISTによる原子力百科事典ATOMICAの『原子核物理の基礎(4)核分裂反応』(2006/3)による 【参考】プルトニウム燃料の特徴 http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=04-09-01-09 |
楠野(2002/7)による『プルサーマルの意味』から 【参考】 |
原子爆弾 |
〔日本原子力研究所(JAERI)の『原子力を学ぶ』の中の『原子力基礎知識』から〕 |
天然原子炉 |
Location |
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Map of the local area |
The OKLO mine today |
The remains of Zone 2 |
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〔Robert Loss氏によるNatural Fossil Fission Reactorsの『Where』から〕 |
地球には20億年前に自然にできた原子炉がありました。アフリカのガボン共和国のオクロという地区には、天然の原子炉があり、約60万年もの長い間核分裂の連鎖反応を続けていたことが分かっています。 |
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〔日本原子力研究所(JAERI)の『原子力を学ぶ』の中の『原子力基礎知識』から〕 |
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