1-1 石油の定義
地質学で“石油”という単語を使うときには、一般に工業的に精製された油(refined oil)は除外されており、厳密には“原油(crude
oil)”を意味する。“原油”とは“天然に産出して、地表条件では液状をなす炭化水素類の混合体”と定義されている。しかし、英語で一般に石油を表わす“petroleum”という単語の内容には、液体の油(oil)、気体の天然ガス(natural
gas)、および固体の炭化水素類がすべて含められている。日本でも石油関係者は、同様の意味で“石油”という単語を使うことが普通である。
本書でも、とくに区別する必要がある場合以外には、液体に気体と固体を含めた炭化水素類全部に対して、“石油”という単語を用いる。
さらに、“石油”という単語は、次のような意味で使われることもあるので、注意しなければならない。“石油鉱床(油田、ガス田)”のことを単に“石油”とよぶ場合で、たとえば“石油の形成”というときには、“石油鉱床の形成”を意味することが多い。また、“石油に類似した物質”のことも、単に“石油”とか“石油炭化水素”とよぶこともある。“石油の移動”という場合が、これにあたる。
このように、“石油”という単語には、内容のほかに使い方にも混乱がある。前後の文脈から、その意味を正しく判断しなければならない。
〔氏家(1994)による〔『石油地質学概論−第二版−』(1-2p)から〕〕【見る→】 |