あ |
アインシュタイン、アルベルト(1879〜1955) |
Albert
Einstein |
ドイツ生まれのユダヤ人の理論物理学者。
特殊相対性理論および一般相対性理論、相対性宇宙論、ブラウン運動の起源を説明する揺動散逸定理、光量子仮説による光の粒子と波動の二重性、アインシュタインの固体比熱理論、零点エネルギー、半古典型のシュレディンガー方程式、ボーズ=アインシュタイン凝縮などを提唱した業績により、20世紀最大の物理学者とも、現代物理学の父とも呼ばれる。特に彼の特殊相対性理論と一般相対性理論が有名だが、光量子仮説に基づく光電効果の理論的解明によって1921年のノーベル物理学賞を受賞した。
音楽学者でモーツァルト研究者のアルフレート・アインシュタインは従弟とされる場合があるが、異説もある。数多くの業績のほか、世界中に広くその存在が認知されており、しばしば天才の代名詞として引き合いに出される。1999年、アメリカのニュース週刊誌『TIME』は、アルベルトを『パーソン・オブ・ザ・センチュリー』(20世紀の人)に選出した。
1968年に発行された旧5イスラエル・リラ紙幣に肖像が使用されていた。 |
アインシュタイン方程式 |
Einstein
field
equations |
アインシュタイン方程式(the Einstein
equations)は、アルベルト・アインシュタインが1916年に一般相対性理論の中で導いた、万有引力・重力場を記述する場の方程式
(Field
equation)である。アイザック・ニュートンが導いた万有引力の法則を、強い重力場に対して適用できるように拡張した方程式であり、対象とする物理的現象は中性子星やブラックホールなどの高密度・大質量天体や、宇宙全体の幾何学などになる。アインシュタインの重力場の方程式(Einstein's field equations of General Relativity)とも呼ばれ、このため EFE とも略される。 |
一般相対性理論(→特殊相対性理論) |
General
relativity |
アルベルト・アインシュタインが1905年の特殊相対性理論に続いて1915年
- 1916年に発表した物理学の理論である。
一般相対論(General relativity)ともいい、ニュートン力学で記述すると誤差が大きくなる現象(光速度に近い運動や、大きな重力場における運動)を正しく記述できる。
一般相対性原理と一般共変性原理および等価原理を理論的な柱とし、リーマン幾何学を数学的土台として構築された古典論的な重力場の理論であり、古典物理学の金字塔である。測地線の方程式とアインシュタイン方程式(重力場の方程式)が帰結である。時間と空間を結びつけるこの理論では、アイザック・ニュートンによって万有引力として説明された現象が、もはやニュートン力学的な意味での力ではなく、時空連続体の歪みとして説明される。 |
宇宙 |
Universe |
天文学的にみた宇宙(Universe)。この意味では、「観測可能な宇宙」を指すこともあり、「観測可能な空間」の外側に広がる3次元空間的に繋がった広大な宇宙全体を指すこともある。
「宇宙」という言葉の確定した起源や意味は不明だが、次のような説がある。
・ 「宇」は「天地四方上下」(つまり上下前後左右、三次元空間全体)「宙」は「往古来今」(つまり過去・現在・未来、時間全体)を意味し、「宇宙」で時空(時間と空間)の全体を意味する(漢代の書物・「淮南子斉俗訓」)。
・ 「宇」は「天」、「宙」は「地」を意味し、「宇宙」で「天地」のことを表す。
それぞれの観点から見た場合の「宇宙」の定義には、以下のようなものがある。
哲学的・宗教的観点から見た場合、宇宙全体の一部でありながら全体と類似したものを「小宇宙」と呼ぶのに対して、宇宙全体のことを「大宇宙」と呼ぶ。
天文学的観点から見た場合、「宇宙」はすべての天体・空間を含む領域をいう。銀河のことを「小宇宙」と呼ぶのに対して「大宇宙」ともいう。
一説には観測できる領域は宇宙の地平線の内側に限定されるが、大宇宙はそれよりはるかに大きいと考えられている。
物理学的観点から見た場合、「宇宙」は物質・エネルギーを含む時空連続体のまとまりである。
現代物理学における「宇宙」は、物理学的な「世界」全体ではなく、生成・膨張・収縮・消滅する物理系の一つである。理論的には無数の宇宙が生成・消滅を繰り返しているとも考えられている。
「地球の大気圏外の空間」という意味では、国際航空連盟
(FAI) の規定によると高度 100
km 以上のことを指す。アメリカ軍では高度50ノーチカルマイル (92.6 km) 以上の高空を「宇宙」と定めている。 |
エーテル |
Luminiferous
aether |
エーテル (aether, ether,
luminiferous aether) は、主に19世紀までの物理学で、光が伝播するために必要だと思われた媒質を表す術語である。現代では特殊相対性理論などの理論がエーテルの概念を用いずに確立されており、エーテルは廃れた物理学理論の一部であると考えられている。
このエーテルの語源はギリシア語のアイテールであり、ラテン語を経由して英語になった。アイテールの原義は「燃やす」または「輝く」であり、古代ギリシア以来、天空を満たす物質を指して用いられた。英語ではイーサーのように読まれる。 |
か |
解析力学 |
Analytical
mechanics |
ニュートン力学を数学の解析学の手法を用いて記述する、数学的に洗練された形式。解析力学の体系は基本的にはラグランジュ力学とハミルトン力学により構成される。
力のつりあいについてのダランベールの原理から始め、つりあいを微小な変位による仕事の関係式に置き換える仮想仕事の原理によってエネルギーの問題に移した。
幾何光学における変分原理であるフェルマーの原理からの類推で、古典力学において最小作用の原理(モーペルテューイの原理)が発見された。これにより、力学系の問題は、作用積分とよばれる量を最小にするような軌道をもとめる数学の問題になった。
座標を一般化座標に拡張し、ラグランジュ方程式が導き出された。
さらに、ラグランジアンから一般化運動量を定め、座標と運動量のルジャンドル変換によって、ハミルトン力学が導かれた。
ラグランジュ方程式は微分方程式を与えるのに対して、ハミルトンの正準方程式は積分を与える。
さらにこれから、ハミルトン・ヤコビの偏微分方程式が、得られる。
ラグランジュ形式は微分幾何学とも相性がよく、相対性理論の分野では必須である。
ハミルトン形式はその後の量子力学とくに行列力学へと続く。 |
回折 |
Diffraction |
媒質中を伝わる波(または波動)に対し障害物が存在する時、波がその障害物の背後など、つまり一見すると幾何学的には到達できない領域に回り込んで伝わっていく現象のことを言う。1665年にイタリアの数学者・物理学者であったフランチェスコ・マリア・グリマルディにより初めて報告された。
障害物に対して波長が大きいほど回折角(障害物の背後に回り込む角度)は大きい。
回折は音波、水の波、電磁波(可視光やX線など)を含むあらゆる波について起こる。単色光を十分に狭いスリットに通しスクリーンに当てると回折によって光のあたる範囲が広がり、干渉によって縞模様ができる。この現象は、量子性が顕著となる粒子のビーム(例:電子線、中性子線など)でも起こる(参照:物質波)。電子線や中性子線などを結晶などに当てて得られる回折図形から結晶構造の解析を行うことができる。これは電磁波であるX線でも同様な結晶構造の解析を行うことができる。それぞれ電子回折法、中性子回折法、X線回折法として結晶構造の解析手法が確立されている。写真撮影においても、絞りを小さく絞ると光の回折現象により画像の鮮明さが低下する。この現象については小絞りボケの項を参照されたい。 |
拡散 |
Diffusion |
粒子、熱、運動量などが自発的に散らばり広がる物理現象である。この現象は着色した水を無色の水に滴下したとき、煙が空気中に広がるときなど、日常よく見られる。これらは、化学反応や外力ではなく、流体の乱雑な運動の結果として起こるものである。 |
干渉 |
Interference |
物理学における波の干渉とは、複数の波の重ね合わせによって新しい波形ができることである。互いにコヒーレントな(相関性が高い)波のとき干渉が顕著に現れる。このような波は、同じ波源から出た波や、同じもしくは近い周波数を持つ波である。 |
基本相互作用(四つの力) |
Fundamental
interaction |
物理学で素粒子の間に相互にはたらく基本的な相互作用。
素粒子の相互作用、自然界の四つの力、相互作用とも。 |
屈折 |
Refraction |
光や音波などの波(波動)が異なる媒質の境界で進行方向を変えることである。波の進む速度が媒質によって異なるためと説明される。 |
原子 |
Atom |
原子という言葉には以下の3つの異なった意味がある。
・古代ギリシャのレウキッポス、デモクリトスたちが提唱した、分割不可能な存在。事物を構成する最小単位。哲学の概念であって、経験的検証によって実在が証明された対象を指すとは限らない。
・19世紀前半に提唱され、20世紀前半に確立された、元素の最小単位。その実態は原子核と電子の電磁相互作用による束縛状態である。物質のひとつの中間単位であり、内部構造を持つため、上述の概念「究極の分割不可能な単位」に該当するものではない。
・上述の原子の概念を拡張し、一般に複数の粒子の電磁相互作用による束縛状態を原子と定義した時、この意味における原子のうち、原子核と電子のみからなるもの以外をエキゾチック原子と言う。
原子という言葉は日常生活及び自然科学の文脈においてはほぼ2番目の意味で用いられるが、哲学の文脈と哲学的な話題では1番目の意味で用いられることもある。 |
原子核 |
Atomic
nucleus |
原子核は、単に核ともいい、電子と共に原子を構成している。原子の中心に位置し核子の塊であり、正電荷を帯びている。核子は、通常の水素原子(軽水素)では陽子1個のみ、その他の原子では陽子と中性子から成る。陽子と中性子の個数によって原子核の種類(核種)が決まる。 |
元素⇒(本サイトの『化学』参照)
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光学 |
Optics |
光の振舞いと性質および光と物質の相互作用について研究する、物理学のひとつの部門。光学現象を説明し、またそれによって裏付けられる。
光学で通常扱うのは、電磁波のうち光と呼ばれる波長域(可視光、あるいはより広く赤外線から紫外線まで)である。光は電磁波の一種であるため、光学は電磁気学の一部門でもあり、電波やX線・マイクロ波などと類似の現象がみられる。光の量子的性質による光学現象もあり、量子力学に関連するそのような分野は量子光学と呼ばれる。 |
光速 |
Speed of
light |
光速、あるいは光速度とは、光が伝播する速さのことである。真空中における光速の値は
299 792 458 m/s(≒30万キロメートル毎秒)と定義されている。つまり、太陽から地球まで約8分20秒、月から地球は、2秒もかからない。俗に「1秒間に地球を7回半回る速さ」とも表現される。
光速は宇宙における最大速度であり、時間と空間の基準となる物理学における特別な意味を持つ値でもある。
現代の国際単位系では長さの単位メートルは光速と秒により定義されている。光速度は電磁場の伝播速度でもあり、マクスウェルの方程式で媒質を真空にすると光速が一定となるということが相対性理論の根本原理になっている。
重力作用も光速で伝播することが相対性理論で予言され、2002年に観測により確認された。 |
黒体 |
Black body |
黒体(こくたい)あるいは完全放射体とは、外部から入射する電磁波を、あらゆる波長にわたって完全に吸収し、また熱放射できる物体のこと。 |
古典力学 |
Classical
mechanics |
量子力学が出現する以前のニュートン力学や相対論的力学。
物理学における力学に関する研究、つまり適当な境界の下に幾何学的表現された物質やその集合体の運動を支配し、数学的に記述する物理法則群に関する研究のうちの主な二つうちの一つである。ちなみに、もう一つは量子力学にあたる。
古典力学は、マクロな物質の運動つまり、弾道計算から部分的には機械動作、天体力学、例えば宇宙船、衛星の運動、銀河に関する研究に使われている。そして、それらの領域に対して、とても精度の高い結果をもたらす、最も古く最も広範な科学、工学における領域のうちの一つである。古典力学以外の領域としては気体、液体、固体などを扱う多くの分野が存在している。加えて、古典力学は光速に近い場合には特殊相対性理論を用いることによってより一般な形式を与えることとなる。同様に、一般相対性理論は、より深いレベルで重力を扱うこととなり、量子力学では、分子や原子における、粒子と波動の二重性について扱うこととなる。 |
古典論(⇔量子論) |
|
物理学における古典論とは、物理学の理論・手法において量子力学を陽に扱わないもののことである。対義語は量子論。
現代物理学における基本理論の一つである量子力学は、ある対象に対して極めて高精度の結果を与える理論であり、物性物理学における問題のほとんどは原理的には量子力学によって完全に記述されると考えられる。量子力学的効果は、特に分子・原子レベルやより小さなスケールでは本質的な効果を持ち、量子力学を考慮しない場合は、例えば原子が安定に存在し得ない等、現実と大きく異なる結果となる。原子・分子レベルの現象の古典論的扱いと量子論的扱いによる結果の大きな差異は、量子論や自然の本質を理解する上で重要である。
なお、量子力学は数学的な取扱いが著しく困難であり、現実の複雑な系を量子力学を用いて描くことは不可能な場合がほとんどである。一方で量子力学的な効果は、原子レベルでは本質的な効果を持つが、マクロな系への効果は一般にわずかであり、実用的な理論・手法としては、量子力学的効果を無視したり、古典力学の範囲内で取扱い可能な形に埋め込んだりすることが行われる。このように量子力学を陽に扱うことを回避した理論・手法も古典論と呼ばれ、現代物理学における重要な部門の一つである。
古典論の体系の大半は、ニュートンから始まり量子力学にはいたらない期間に構築された非相対論的な古典力学であるが、量子力学と同時期あるいはそれ以降に構築され現代物理学の一角をなす相対性理論も、量子力学を考慮に入れない限りでは古典論に含まれる。このように物理学における「古典論」という言葉は、あくまで「量子論」の対義語であり、伝統的・現代的の対比で用いることは一般的ではない。 |
さ |
事象の地平面 |
Event
horizon |
物理学・相対性理論の概念で、情報伝達の境界面である。
シュヴァルツシルト面また、シュバルツシルト面と言われることもある。空間を2次元に単純化したモデルを考え、事象の地平線ということもある。
情報は光や電磁波などにより伝達され、その最大速度は光速であるが、光などでも到達できなくなる領域(距離)が存在し、ここより先の情報を我々は知ることができない。この境界を指し「事象の地平面」と呼ぶ。 |
磁性(本サイトの『岩石の種類』参照) |
Magnetism |
物理学において、磁性(magnetism)とは、物質が原子あるいは原子よりも小さいレベルで磁場に反応する性質であり、他の物質に対して引力や斥力を及ぼす性質の一つである。磁気とも言う。 |
磁場 |
Magnetic
field |
電気的現象・磁気的現象を記述するための物理的概念である。工学分野では、磁界ということもある。
単に磁場と言った場合は磁束密度Bもしくは、「磁場の強さ」Hのどちらかを指すものとして用いられるが、どちらを指しているのかは文脈により、また、どちらの解釈としても問題ない場合も多い。後述のとおりBとHは一定の関係にあるが、BとHの単位は国際単位系(SI)でそれぞれWb/m2,
A/m
であり、次元も異なる独立した二つの物理量である。H の単位はN/Wbで表すこともある。なお、CGS単位系における、磁場(の強さ)Hの単位は、Oeである。
この項では一般的な磁場の性質、及び‘ H ’を扱うこととする。
磁場は、空間の各点で向きと大きさを持つ物理量(ベクトル場)であり、電場の時間的変化または電流によって形成される。
磁場の大きさは、+1のN極が受ける力の大きさで表される。 磁場を図示する場合、N極からS極向きに磁力線の矢印を描く。
小学校などの理科の授業では、砂鉄が磁石の周りを囲むように引きつけられる現象をもって、磁場の存在を教える。
このことから、磁場の影響を受けるのは鉄だけであると思われがちだが、強力な磁場の中では、様々な物質が影響を受ける。
最近では、磁場や電場(電磁場、電磁波)が生物に与える影響について関心が寄せられている。 |
シュヴァルツシルト半径 |
Schwarzschild
radius |
ドイツの天文学者、カール・シュヴァルツシルトによって発見された時空領域の半径のことである。
1916年、シュヴァルツシルトはアインシュタインの重力場方程式の解を求め、非常に小さく重い星があったとすると、その星の中心からのある半径の球面内では曲率が無限大になり(現在はこの考えは誤りとされている)、光も脱出できなくなるほど曲がった時空領域が出現することに気づいた。その半径をシュヴァルツシルト半径または重力半径と呼び、シュヴァルツシルト半径よりも小さいサイズに収縮した天体はブラックホールと呼ばれる。 |
重力(→万有引力) |
Gravitation |
重力とは、
・地球上で物体が地面に近寄っていく現象や、それを引き起こすとされる「力」を呼ぶための呼称。人々が日々、物を持った時に感じているいわゆる「重さ」を作り出す原因のこと。
・物体が他の物体に引きよせられる現象の呼称。および(その現象は《力》が引き起こしていると見なす場合の)その「力」に対する呼称。
英語の gravity (グラヴィティ)の頭文字を取って、俗にG(ジー)と略されることがある。ただし、物理学の専門書や教科書においては慣習として、地球の重力は小文字のg、万有引力定数は大文字のGというように区別される。 |
シュレーディンガー、エルヴィン(1887〜1961) |
Erwin
Schrodinger
(oの頭に¨) |
エルヴィーン・ルードルフ・ヨーゼフ・アレクサンダー・シュレーディンガー(オーストリア語:Erwin
Rudolf Josef Alexander Schrodinger(oの頭に¨)、1887年8月12日 - 1961年1月4日)は、オーストリア=ハンガリー帝国ウィーン出身の理論物理学者。
1926年に波動形式の量子力学である「波動力学」を提唱。次いで量子力学の基本方程式であるシュレーディンガー方程式や、1935年にはシュレーディンガーの猫などを提唱し、量子力学の発展を築き上げたとして名高い。
1933年にイギリスの理論物理学者ポール・ディラックと共に「新形式の原子理論の発見」の業績によりノーベル物理学賞を受賞。
1937年にはマックス・プランク・メダルが授与された。
1983年から1997年まで発行されていた1000オーストリア・シリング紙幣に肖像が使用されていた。 |
シュレーディンガー描像 |
Schrodinger
(oの頭に¨)
picture |
量子論においてシュレーディンガー描像とは、系の時間発展について「オブザーバブルは時間変化せずに、状態が時間発展する」と考える方法である。
これは「状態は時間変化せず、オブザーバブルが時間発展する」と考えるハイゼンベルク描像や、「状態もオブザーバブルも時間発展する」と考える相互作用描像とは異なる考え方・定式化であるが、どの描像を用いても得られるオブザーバブルの期待値や測定値の確率分布は同じなので等価な理論である。 |
シュレーディンガー方程式 |
Schrodinger
(oの頭に¨)
equation |
量子力学における純粋状態(状態ベクトルまたは波動関数で表される)の時間発展を記述する方程式である。1926年にオーストリアの物理学者エルヴィン・シュレーディンガーが量子力学の一形式である波動力学の基礎方程式として提案した。
古典力学における運動方程式はニュートン力学の運動の第2法則であり、等価な式にオイラー=ラグランジュ方程式や正準方程式(ハミルトン方程式)がある。これらの方程式は、力学系の運動を解き、初期条件や系の配置を指定した時に任意の時間に力学系がどのように振る舞うかを数学的に予測するために使われる。
量子力学における、量子系(通常原子や分子、亜原子粒子など。自由か束縛されているか局在しているもの)のシュレーディンガー方程式は古典力学における運動の法則に対応する。単純な代数方程式ではないが、(一般には)線型偏微分方程式である。この微分方程式は系の波動関数(あるいは状態ベクトル)の時間発展を記述する。
コペンハーゲン解釈では、波動関数は物理系の完全な情報を与える。シュレーディンガー方程式の解は分子、原子、亜原子粒子だけではなく、巨視的な系やあるいは宇宙全体でさえ記述できるとされる。
ニュートンの運動の第2法則のように、シュレーディンガー方程式はヴェルナー・ハイゼンベルクの行列力学や、リチャード・P・ファインマンの経路積分のような等価な別の表現に書き換えることができる。
また第2法則と同じように、シュレーディンガー方程式における時間の扱いは、相対論的な記述にするには不都合である。この問題は行列力学では波動力学ほど深刻ではなく、経路積分の方法では全く問題にならない。シュレーディンガー方程式は、通常の波動方程式を偏微分し、ド・ブロイの仮説から、波の波長を粒子の運動量で置き替えることで導かれる。 |
スピン角運動量 |
Spin |
スピン角運動量(spin angular
momentum)は、電子やクォークなどの素粒子、およびそれらから構成されるハドロンや原子核や原子などの複合粒子が持つ角運動量で、量子力学的な自由度の
1 つである。単にスピンと呼ばれることもある。軌道角運動量は粒子の運動によって生じる角運動量だが、スピン角運動量は粒子が本来持っている角運動量なので、位置と運動量で記述することができない。スピン角運動量は軌道角運動量とともに、粒子の全角運動量に寄与する。
基本変数を「粒子の位置と運動量」とする量子論ではスピンを記述することができないため、粒子が持つ「内部自由度(固有角運動量、内部角運動量とも呼ぶ)」としてスピンを基本変数に付け加える。この「位置と運動量とスピンなどの足りないもの」を基本変数とする量子論が「量子力学」である。基本変数を「場とその時間微分または共役運動量」に選ぶ量子論、つまり「場の量子論」では電子は粒子ではなく「電子場」として記述され、電子場は電磁場の「偏光」(電磁場の向きが右回りに回転するか左回りに回転するか)に似た属性を持つ。これがスピンであり、場の自転のようなものなので、角運動量を伴う。その角運動量ベクトルで、スピンの向きと大きさを表す。このスピンの例でわかるように、古典的に場であったもの(電磁場など)だけでなく、電子のような古典的には粒子とみなされてきた物理系であっても、場を基本変数にしたほうが良く、適用範囲も広いことが判っている。 |
摂動 |
Perturbation
theory |
摂動(せつどう、perturbation)とは、一般に力学系において、主要な力の寄与(主要項)による運動が、他の副次的な力の寄与(摂動項)によって乱される現象である。摂動という語は元来、古典力学において、ある天体の運動が他の天体から受ける引力によって乱れることを指していたが、その類推から量子力学において、粒子の運動が複数粒子の間に相互作用が働くことによって乱れることも指すようになった。なお、転じて摂動現象をもたらす副次的な力のことを摂動と呼ぶ場合がある。 |
相対論的量子力学 |
Relativistic
quantum
mechanics |
量子力学に対して特殊相対性理論を適用した理論である。
基礎方程式はクライン-ゴルドン方程式である。素粒子散乱などの多粒子系高エネルギー物理を扱う際は、粒子をさらに場の概念に拡張した場の量子論が使われる。あつかう粒子の速度が光速に比べて十分小さい場合の量子力学(非相対論的量子力学)とは区別される。 |
素粒子(本サイトの『素粒子とは』参照) |
Elementary
particle |
物理学において素粒子(そりゅうし)とは、物質を構成する最小の単位のことである。基本粒子とほぼ同義語である。
素粒子は大きく二種類に分類され、物質を構成する粒子をフェルミ粒子、力を媒介する粒子をボース粒子と呼ぶ。物質を構成するフェルミ粒子は更に、クォークとレプトンに分類される。クォークやレプトンの大きさはわかっていないが、仮に有限の大きさがあるとしても陽子や、それより小さいスケールである「弱い相互作用」のスケールにおいても点とみなすことができることから標準模型(標準理論)では点粒子として扱われる。素粒子間の相互作用を伝え運ぶゲージ粒子のうち、重力を媒介するとされる重力子は未発見である。 |
た |
第一原理 |
First
principle |
他のものから推論することができない命題である。
自然科学での第一原理は、近似や経験的なパラメータ等を含まない最も根本となる基本法則をさし、そのことを前提にすると自然現象を説明することができるものである。第一原理には運動量の保存や物質の二重性など様々なものがある。理論計算の分野における第一原理の解釈は人により様々で、「既存の実験結果(事実)を含めて経験的パラメーター等を一切用いない」という強いものから、「実験結果に依らない」とする比較的緩い解釈まである。代表的第一原理は、ニュートン力学のような決定論と、確率論の根源をなす等確率の原理や熱力学に大別されその中間的性質として量子論的方法論が展開される。 |
中性子 |
Neutron |
バリオンの一種。原子核の構成要素の一つ。陽子1個でできている1Hと陽子3個で出来ている3Liの2つを例外として、すべての原子の原子核は、陽子と中性子だけから構成されている。陽子と中性子を核子と呼ぶ。質量数は1、電荷は0、1/2のスピン、-1/2のアイソスピン、0のストレンジネス、1/2の超電荷を持つ。原子核内で核子同士をまとめておく力についてはパイ中間子に詳しい。 |
ディラック、ポール(1902〜1984) |
Paul
Dirac |
ポール・エイドリアン・モーリス・ディラック(Paul
Adrien Maurice Dirac, 1902年8月8日・ブリストル - 1984年10月20日)はイギリスの理論物理学者。量子力学及び量子電磁気学の基礎づけについて多くの貢献をした。1933年にエルヴィン・シュレーディンガーと共にノーベル物理学賞を受賞している。
彼はケンブリッジ大学のルーカス教授職を務め、最後の14年間をフロリダ州立大学の教授として過ごした。 |
ディラック方程式 |
Dirac
equation |
フェルミ粒子に対する相対論的量子力学の基礎方程式である。
非相対論的なシュレーディンガー方程式を、相対論へ対応するための拡張として最初、クライン-ゴルドン方程式が考案されたが、これは負のエネルギー解と負の確率密度の問題が生じた(この問題は、その後登場した場の理論により回避できる)。また、この方程式にはスピンが出てこない問題もあった。
ポール・ディラックは1928年にディラック方程式を基礎方程式とする(特殊)相対論的量子力学を見出した。 ディラック方程式からは負の確率密度は生じず、スピンの概念が自然に出てくる。
しかしディラック方程式からは、自然界には存在しないような負のエネルギーの状態が現れるという問題があった。 しかしオスカル・クラインは、ある種の強いポテンシャルのもとで正エネルギーの電子が負エネルギー状態へ遷移しうることを示して、理論から負エネルギー状態を完全に排除することが困難であることを指摘した。
1930年にディラックは、「真空とは、負エネルギーの電子が完全に満たされた状態である」とするディラックの海の概念(空孔理論、Hole theory)を考案した。 ディラックは当初この空孔による粒子を陽子と考えたが、それは後に陽電子であることが指摘された(ヘルマン・ワイル、ロベルト・オッペンハイマーによる)。 ディラックの海の空孔は正のエネルギーを持ち、反粒子に対応する。
光による電子と陽電子の生成は、真空中の負エネルギー電子が光を吸収して正エネルギー状態へ遷移し、あとに空孔を残す現象として説明される。
デヴィッド・アンダーソンによる陽電子の発見(1932年)により、この空孔理論は現実の現象を説明する優れた理論であったが、その後、リチャード・P・ファインマン等により拡張、解釈の見直しが図られた(相対論的な場の量子論)。 その結果、真空での負エネルギーの電子の海(ディラックの海→空孔理論)を考えなくとも、電子と陽電子を対称に扱うことができるようになった。(詳しくは量子電磁力学を参照)。 |
電荷 |
Electric
charge |
素粒子が持つ性質の一つである。電荷の量を電荷量という。電荷量のことを単に電荷と呼ぶこともある。電荷を持つ粒子のことを単に電荷と呼ぶこともある。 |
電気 |
Electricity |
電荷の移動や相互作用によって発生するさまざまな物理現象の総称である。それには、雷、静電気といった容易に認識可能な現象も数多くあるが、電磁場や電磁誘導といったあまり日常的になじみのない概念も含まれる。
電気に関する現象は古くから研究されてきたが、科学としての進歩が見られるのは17世紀および18世紀になってからである。しかし電気を実用化できたのはさらに後のことで、産業や日常生活で使われるようになったのは19世紀後半だった。その後急速な電気テクノロジーの発展により、産業や社会が大きく変化することになった。電気のエネルギー源としての並外れた多才さにより、交通機関の動力源、空気調和、照明、などほとんど無制限の用途が生まれた。商用電源は現代産業社会の根幹であり、今後も当分の間はその位置に留まると見られている。また、多様な特性から電気通信、コンピュータなどが開発され、広く普及している。 |
電子 |
Electron |
宇宙を構成する素粒子のうちのレプトンの一つである。素粒子の標準模型では、第1世代の荷電レプトンとして位置づけられる。 |
電磁気学(本サイトの『発電・電力とは』および『電気工学』参照) |
Electromagnetism |
物理学の分野の1つであり、電気と磁気に関する現象を扱う学問である。工学分野では、電気磁気学と呼ばれることもある。 |
電磁気の単位 |
International
System of
Electrical
and Magnetic
Units |
電磁気の単位を単位系に組み込もうとするとき、電磁気に関係する物理量は、長さ・質量・時間だけでは表すことができないため、もうひとつ別の物理量を単位系に加える必要があるように思える。現在、単位系の国際標準となっている国際単位系
(SI) では、事実そうしている。しかし実際には、他にも方法がある。 |
電磁波(本サイトの『色と光』参照) |
Electromagnetic
radiation |
空間の電場と磁場の変化によって形成される波(波動)である。いわゆる光や電波は電磁波である。よくある「電界と磁界がお互いの電磁誘導によって交互に相手を発生させ合う」という説明は誤りであり、何らかの原因(電荷の運動や電流の変化等)によって生じた電磁場の時間変動が空間を伝播していく、ということが電磁波の本質である。
電場と磁場は真空中にも存在するため、波を伝える媒体となる物質(媒質)が何も存在しない真空中でも電磁波は伝わる。電磁波の電場と磁場の振動方向はお互いに直角であり、また電磁波の進行方向もこれらと直角である。基本的には電磁波は空間中を直進するが、物質が存在する空間では、吸収・屈折・散乱・回折・干渉・反射などの現象が起こる。また、重力場などの空間の歪みによって進行方向が曲がることが観測されている。
電磁波は線型な波動であり、 したがって重ね合わせの原理が成り立つ。そこで、
電磁波を特定方向に振動し, 特定方向のみに進む正弦波(平面波)の重ね合わせに分解して考えることが多い。そのような正弦波は、波長、振幅、伝播方向、偏光、位相という属性で完全に特徴付けられる。ある電磁波を多くの正弦波の重ね合わせとみなしたとき、波長ごとの成分をスペクトルという。
電磁波は, 特にその波長によって物体との相互作用が異なる。そこで、波長帯ごとに電磁波は違う呼び方をされることがある。すなわち,
波長の長い方から、電波・赤外線・可視光線・紫外線・X線・ガンマ線などと呼ばれる。我々の目で見えるのは可視光線のみだが、その範囲
(波長0.4 μm - 0.7 μm)
は電磁波の中でも極めて狭い。
真空中を伝播する電磁波の速さは、観測者がどのような方向に、どのような速度で動きながら測定したとしても、一定値 299,792,458
m/s(約30万キロメートル毎秒)になる。これを光速度不変の原理という。これは様々な実験により,
確かめられている。この真空中の光速度は、最も重要な物理定数の一つである。この光速度不変の原理を基にしてアインシュタインが特殊相対性理論を構築し、それまでの時間と空間の概念を一変させたことはとりわけ有名である。一方、物質(媒質)中を伝播する電磁波の速度は、真空中の光速度を物質の屈折率で割った速度になる。例えば、屈折率が
2.417 のダイヤモンドの中を伝播する可視光の速度は、真空中の光速度の約41%に低下する。ところで、電磁波が、異なる屈折率の物質が接している境界を伝播するとき、その伝播速度が変化することから、屈折が起こる。これを利用したものにレンズがあり、メガネやカメラなどに使われている。なお、屈折する角度は、電磁波の波長に依存する。これを分散と呼ぶ。虹が7色に見えるのは、太陽光が霧などの微小な水滴を通るとき、波長が長い赤色光よりも、波長の短い紫色光の方が、分散によってより大きく屈折するためである。 |
電磁場 |
Electromagnetic
field
(EMF) |
電磁場あるいは電磁界とは電場(電界)と磁場(磁界)の総称。
電場と磁場は時間的に変化する場合には、互いに誘起しあいながらさらにまた変化していくので、まとめて呼ばれる。 電磁場の変動が波動として空間中を伝播するとき、これを電磁波という。
電場、磁場が時間的に一定で 0 でない場合は、それぞれは分離され静電場、静磁場として別々に扱われる。
電磁場という用語を単なる概念として用いる場合と、物理量として用いる場合がある。 概念として用いる場合は電場の強度と電束密度、あるいは磁場の強度と磁束密度を明確に区別せずに用いるが、物理量として用いる場合は電場の強度と磁束密度の組であることが多い。
また、これらの物理量は電磁ポテンシャルによっても記述され、ラグランジュ形式などで扱う場合は電磁ポテンシャルが基本的な物理量として扱われる。このような場合には電磁ポテンシャルを指して電磁場という事もある。
電磁場のふるまいは、マクスウェルの方程式、あるいは量子電磁力学(QED)によって記述される。マクスウェルの方程式を解いて、電磁場のふるまいについて解析することを電磁場解析と言う。 |
電場 |
Electric
field |
電場または電界は、電荷に力を及ぼす空間の性質の一つ。E
の文字を使って表されることが多い。おもに理学系では「電場」、工学系では「電界」ということが多い。また、電束密度と明確に区別するために「電場の強さ」ともいう。時間によって変化しない電場を静電場または静電界とよぶ。 |
統計力学 |
Statistical
mechanics |
系の微視的な物理法則を基に、巨視的な性質を導き出すための学問である。統計物理学、統計熱力学とも呼ばれる。
歴史的には系の熱力学的な性質を気体分子運動論の立場から演繹することを目的としてボルツマン、マクスウェルらによって始められた。 |
特殊相対性理論(→一般相対性理論) |
Special
relativity |
アルベルト・アインシュタインが1905年に発表した電磁気学の理論である。特殊相対論と呼ばれる事もある。
19世紀末頃において、マックスウェル方程式は当時観測可能な電磁気現象をほとんど説明したが、その理論の前提として電場と磁場はエーテルなる絶対空間に固定された媒質を介して伝わるものであるとされていた。つまりはマックスウェル方程式はエーテルに対して静止した座標系から観測される電磁気現象を記述する理論であった。素朴な疑問としてエーテルに対して運動している座標系から観測される電磁気現象の理論とマックスウェル方程式との関係が探られた。ヘルツ、ローレンツ、フィッツジェラルド、ポアンカレなどはいくつかの理論を提唱したが、運動する物体が実際に収縮する(ローレンツ)などの現実には受け入れがたい理論であった。それらとはほぼ独立にアルベルト・アインシュタインは「Zur Elektrodynamik bewegter Korper(oの頭に¨) 」(「運動している物体の電気力学について」)において、特殊相対性原理と光速不変の原理というものを導入することで運動座標系における電磁気現象を簡潔に静止座標系におけるマックスウェル方程式に帰着させる理論を提唱した。その理論が特殊相対性理論である。特殊相対性理論により絶対座標系(エーテルの存在)は否定され、その理論的帰結として磁場は電場の相対論効果であることが示唆された。 |
ド・ブロイ波 |
Matter
wave |
ド・ブロイ波(ド・ブロイは、de Broglie
wave)は、1924年、ルイ・ド・ブロイが提唱した粒子性と波動性を結びつける考え方。ド・ブローイ波、物質波ともいう。 |
な |
ニュートン、アイザック(1642〜1727) |
Isaac
Newton |
サー・アイザック・ニュートン(Sir
Isaac Newton, ユリウス暦:1642年12月25日
- 1727年3月20日、グレゴリオ暦:1643年1月4日
- 1727年3月31日)は、イングランドの哲学者、自然哲学者、数学者。神学者。
ニュートン力学を確立し、古典力学や近代物理学の祖となった。古典力学は自然科学・工学・技術の分野の基礎となるものであり、近代科学文明の成立に影響を与えた。 |
ニュートン力学 |
Newton's
laws
of motion |
ニュートン力学(Newtonian
mechanics)とは、アイザック・ニュートンが、運動の法則(Laws
of motion)を基礎として構築した、力学の体系のことである。 |
熱 |
Heat |
慣用的には、肌で触れてわかる熱さや冷たさといった感覚である温度の元となるエネルギーという概念を指していると考えられているが、物理学では熱とエネルギーは明確に区別される概念である。
熱力学における熱とは、1つの物体や系から別の物体や系への熱接触によるエネルギー伝達の過程であり、ある物体に熱力学的な仕事をすることでその物体に伝達されたエネルギーと定義される。
関連する内部エネルギーという用語は、物体の温度を上げることで増加するエネルギーにほぼ相当する。熱は熱エネルギーともほぼ対応しているが、正確には物体から物体へ熱エネルギーが伝達する過程が「熱」として認識される。
物体間の熱によるエネルギー伝達は、熱放射、熱伝導、熱伝達(対流)に分類される。温度とは内部エネルギーやエンタルピーの測定値であり、熱伝達を生じさせる基本的動きのレベルである。物体(あるいは物体のある部分)から他に熱によってエネルギーが伝達されるのは、それらの間に温度差がある場合だけである(熱力学第二法則)。同じまたは高い温度の物体へ熱によってエネルギーを伝達するには、ヒートポンプのような機械力を使うか、鏡やレンズで放射を集中させてエネルギー密度を高めなければならない。 |
熱力学(本サイトの『地質温度計/圧力計とは』参照) |
Thermodynamics |
物理学の一分野で、熱や圧力現象を物質の巨視的性質から扱う学問。アボガドロ定数個程度の分子から成る物質の巨視的な性質を巨視的な物理量(エネルギー、温度、エントロピー、圧力、体積、物質量または分子数、化学ポテンシャルなど)を用いて記述する。
なお、熱力学には大きく分けて「平衡系の熱力学」と「非平衡系の熱力学」がある。「非平衡系の熱力学」はまだ、限られた状況でしか成り立たないような理論しかできていないので、単に「熱力学」と言えば、普通は「平衡系の熱力学」のことを指す。 |
粘度 |
Viscosity |
物質のねばりの度合である。粘性率、粘性係数、または(動粘度と区別する際には) 絶対粘度とも呼ぶ。一般には流体が持つ性質とされるが、粘弾性などの性質を持つ固体でも用いられる。
量記号にはμまたはηが用いられる。SI単位はPa・s(パスカル秒)である。CGS単位系ではP(ポアズ)が用いられた。cm2/s = 10-4m2/s
= 1 St(ストークス)も使われる(即ち、1 mm2/s = 1
cSt(センチストークス))。工業的にはセイボルト秒も使われる。 |
は |
ハイゼンベルク、ヴェルナー(1901〜1976) |
Werner
Heisenberg |
ヴェルナー・カール・ハイゼンベルク(Werner
Karl Heisenberg, 1901年12月5日 - 1976年2月1日)は、ドイツの理論物理学者。行列力学と不確定性原理によって量子力学に絶大な貢献をした。 |
ハイゼンベルク描像 |
Heisenberg
picture |
物理学において、ハイゼンベルク描像(Heisenberg representation, Heisenberg picture)とは量子力学を定式化するにあたり、演算子(可観測量やその他)が時間発展し、状態ベクトルは時間に依存しないとする理論形式のこと。状態ベクトルが時間発展し、演算子が時間に依存しないシュレーディンガー描像とは等価の結果を与える。
ハイゼンベルク力学とも呼ばれる行列力学は、時間発展はハイゼンベルク描像であるとし、適当な基底を選んで演算子を行列表示したものに相当する。 |
パウリの排他原理 |
Pauli
exclusion
principle |
2 つ以上のフェルミ粒子は同一の量子状態を占めることはできない、というものであり、1925年にヴォルフガング・パウリが提出したフェルミ粒子に関する仮定である。パウリの定理、パウリの排他律、パウリの禁制などとも呼ばれる。
パウリの排他原理はすべてのフェルミ粒子に対して適用される一方、ボース粒子に対しては適用されない点に注意が必要である。 |
波動関数 |
Wave
function |
もともとは波動現象一般を表す関数のことだが、現在ではほぼ量子状態(より正確には純粋状態)を表す複素数値関数のことを指す。 |
波動方程式 |
Wave
equation |
の形状をとる定数係数二階線型偏微分方程式の事を言う。ただし、u = u(t,x,y,z) は波動方程式を満たす未知関数、s
は定数とする。波動方程式は振動、音、光、電磁波など振動・波動現象を記述するにあたって基本となる方程式である。 |
場の量子論 |
Quantum
field
theory |
量子化された場(素粒子物理ではこれが素粒子そのものに対応する)の性質を扱う理論である。
現代的な立場では、量子論の中でも、基本変数として「粒子や剛体の古典力学と同じもの(たとえば位置と運動量)」に選び、足りないもの(スピンなど)は適宜補った量子論を「量子力学」と呼び、基本変数として「場とその時間微分または共役運動量」に選んだ量子論を「場の量子論」と呼ぶ。量子力学は、場の量子論を低エネルギー状態に限った時の近似形として得られる。現代では、古典的に場であったもの(電磁場など)だけでなく、古典的に粒子とみなされてきた物理系(電子など)の量子論も、場を基本変数にしたほうが良いことが判っている。
場の量子論は、高エネルギーの系や、凝縮系(多体系)を記述する。場の量子論は特殊相対論的要請を満たす形式を備え、量子力学と特殊相対性理論の両方を満足する。素粒子物理、原子核物理学や物性物理といった領域で、基礎理論として用いられる。 |
ハミルトニアン |
Hamiltonian |
ハミルトニアン(ハミルトン関数、特性関数)は、物理学におけるエネルギーに対応する物理量である。各物理系の持つ多くの性質は、ハミルトニアンによって特徴づけられる。名称はイギリスの物理学者ウィリアム・ローワン・ハミルトンに因む。
ここでは、古典力学(解析力学)と量子力学の2つの体系に分けて説明するが、量子力学が古典力学から発展した経緯から、両者は密接に関連する。ハミルトニアンはそれぞれの体系に応じて関数または演算子もしくは行列の形式をとる。例えば、古典力学においてはハミルトニアンは正準変数の関数であり、量子力学では正準変数を量子化した演算子(もしくは行列)の形をとる。 |
ハミルトン力学(→解析力学) |
Hamiltonian
mechanics |
一般化座標と一般化運動量を基本変数として記述された古典力学である。イギリスの物理学者ウィリアム・ローワン・ハミルトンが創始した。ラグランジュ力学と同様にニュートン力学を再公式化した解析力学の一形式。
ハミルトン形式の解析力学はルジャンドル変換によってラグランジュ形式から移行する。
元々はニュートン的な力学の分野において成立したが、ラグランジュ形式と同様に幅広い分野へと応用されている。
特に量子力学においては、正準量子化の手続きによって、ハミルトン形式での物理量を演算子に置き換えることで量子化することが出来る。
また量子多体論において用いられるTDHF近似は、ある変換の下でハミルトン力学と等価である事が知られている。この事は古典力学が単なる量子力学の近似ではなく、この世界における何らかの事実を表しているという期待を持たせる。
ハミルトン形式では一般化座標に加えて一般化運動量によって記述されており、その方程式は対称な形となっている。力学変数が2倍に増えて運動方程式の数は増えるが、二階微分方程式が一階微分方程式となる。 |
半古典論(⇔古典論、量子論) |
Semiclassical
physics |
物理学において、半古典論とは、古典力学との対応原理に基づき、古典力学を援用した量子力学の近似理論。準古典論とも呼ばれる。こうした近似手法としては、プランク定数を古典力学と量子力学を結び付ける摂動パラメータとして扱い、シュレディンガー方程式の近似解を求めるWKB近似や、量子力学的な遷移確率を2状態を結ぶ経路の重ね合わせで表現するファイマン経路積分及びその古典軌道に基づく解析、物性物理における電子波束の古典粒子的な扱い等が挙げられる。近年の量子カオスの研究の中では、EBK量子化やグッツウィラーの跡公式等の議論から古典力学と量子力学の対応原理そのものの理解にも関心が集められている。 |
反射 |
Reflection |
光や音などの波がある面で跳ね返る反応のことである。 |
万有引力(→重力) |
Newton's
law of
universal
gravitation |
万有引力(ばんゆういんりょく、universal
gravitation)もしくは万有引力の法則とは、「地上において質点(物体)が地球に引き寄せられるだけではなく、この宇宙においてはどこでも全ての質点(物体)は互いに gravitation(=引き寄せる作用、引力、重力)を及ぼしあっている」とする考え方、概念、法則のことである。 |
表面張力 |
Surface
tension |
表面をできるだけ小さくしようとする傾向を持つ液体の性質、またその力のことで、界面張力の一種である。正確な定義を言うならば、液体表面の持つ、内部に比べて余剰な単位面積当たりの自由エネルギーである。液体表面が小さくなろうとするのは、熱力学第二法則よりギブズエネルギーが小さい状態は安定するため、エネルギーの大きい表面分子が小さい内部分子に置き換わろうとするためである。
分子間力(液体の分子間に作用する力)により、分子がお互いを引き合って凝縮しようとする。液体中の特定の分子は、それ以外の分子全てに引き寄せられるため、その合力は(まるで地球の重力のように)液体中心部へ向く。その結果、液体は表面積が少ない球形になろうとする。水滴やシャボン玉が丸くなるのも、この原理によるものであると言える。 |
ファラデー、マイケル(1791〜1867) |
Michael
Faraday |
ギリスの化学者・物理学者(あるいは当時の呼称では自然哲学者)で、電磁気学および電気化学の分野での貢献で知られている。
直流電流を流した電気伝導体の周囲の磁場を研究し、物理学における電磁場の基礎理論を確立。それを後にジェームズ・クラーク・マクスウェルが発展させた。同様に電磁誘導の法則、反磁性、電気分解の法則などを発見。磁性が光線に影響を与えること、2つの現象が根底で関連していることを明らかにした。電磁気を利用して回転する装置(電動機)を発明し、その後の電動機技術の基礎を築いた。それだけでなく電気を使ったテクノロジー全般が彼の業績から発展したものである。
化学者としては、ベンゼンを発見し、塩素の包接水和物を研究し、原始的な形のブンゼンバーナーを発明し、酸化数の体系を提案した。アノード、カソード、電極 (electrode)、イオンといった用語はファラデーが一般化させた。
ファラデーは高等教育を受けておらず、高度な数学もほとんど知らなかったが、史上最も影響を及ぼした科学者の1人とされている。科学史家は彼を科学史上最高の実験主義者と呼んでいる。静電容量のSI単位「ファラッド (F)」はファラデーに因んでいる。また、1モルの電子の電荷に相当するファラデー定数にも名を残している。ファラデーの電磁誘導の法則は、磁束の変化の割合と誘導起電力は比例するという法則である。
ファラデーは王立研究所の初代フラー教授職 (Fullerian
Professor of Chemistry) であり、死去するまでその職を務めた。
アルベルト・アインシュタインは壁にファラデー、ニュートン、マクスウェルの絵を貼っていたという。
ファラデーは信心深い人物で、1730年に創設されたキリスト教徒の一派であるサンデマン派(グラス派)に属していた。伝記作者は「神と自然の強い一体感がファラデーの生涯と仕事に影響している」と記している。 |
フェルミ、エンリコ(1901〜1954) |
Enrico
Fermi |
イタリア、ローマ出身の物理学者。統計力学、核物理学および量子力学の分野で顕著な業績を残しており、放射性元素の発見で1938年のノーベル賞を受賞している。実験家と理論家との二つの顔を持ち、双方において世界最高レベルの業績を残した、史上稀に見る物理学者であった。 |
フェルミ粒子(⇔ボース粒子) |
Fermion |
フェルミオン(Fermion)とも呼ばれるスピン角運動量の大きさがの半整数 (1/2, 3/2, 5/2, …) 倍の量子力学的粒子であり、その代表は電子である。その名前は、イタリア=アメリカの物理学者エンリコ・フェルミ
(Enrico Fermi) に由来する。 |
不確定性原理 |
Uncertainty
principle |
量子力学では、量子(たとえば電子)について、その位置と運動量を、同時に、かつ、いくらでも高い精度で確定することはできず、片方の精度を上げようとすれば、もう片方の精度が下がる、という関係(不確定性関係)を量子自身が(測定可能かどうか、ということではなく)持っている、という原理である。
その後の量子力学の発展により、現代ではより原理的な量子の性質から導出されるものとなっている。
当初これを考えたハイゼンベルクが、測定の問題として考えたことから、しばしば量子力学における観察者効果などと混同されることもある。また、当初のハイゼンベルクが示した(「ハイゼンベルクの不確定性原理」として、不確定性関係とは区別することがある)「測定の限界」については、小澤らにより越えられることが示唆され、確認されている。 |
物理法則(物理法則一覧)(こちらも参照) |
Physical
law |
主として、物理学の中で提唱されている法則のことである。 |
ブラウン運動 |
Brownian
motion |
液体のような溶媒中(媒質としては気体、固体もあり得る)に浮遊する微粒子(例:コロイド)が、不規則(ランダム)に運動する現象である。1827年(1828年という記述もあり)、ロバート・ブラウンが、水の浸透圧で破裂した花粉から水中に流出し浮遊した微粒子を、顕微鏡下で観察中に発見し、論文「植物の花粉に含まれている微粒子について」で発表した。
長い間原因が不明のままであったが、1905年、アインシュタインにより、熱運動する媒質の分子の不規則な衝突によって引き起こされる現象であるとして説明する理論が発表された(この成果より、当時認められていなかった原子および分子の存在が初めて具体的に確認された)。
ブラウン運動はかなり広い意味で使用されることもあり、類似した現象として、電気回路における熱雑音(ランジュバン方程式)や、希薄な気体中に置かれた、微小な鏡の不規則な振動(気体分子による)などもブラウン運動の範疇として説明される。 |
ブラ-ケット記法 |
Bra-ket
notation |
量子力学における量子状態を記述するための標準的な記法である。
この名称は、2つの状態の内積がブラケットを用いて<φ|ψ>
のように表され、この左半分 <φ|をブラベクトル、右半分|ψ>
をケットベクトルと呼ぶことによる。この記法はポール・ディラックが発明したため、ディラックの記法とも呼ぶ。 |
ブラックホール |
Black
hole |
極めて高密度かつ大質量で、強い重力のために物質だけでなく光さえ脱出することができない天体である。名称は、アメリカの物理学者ジョン・ホイーラーが1967年に命名した。それ以前は、崩壊した星を意味する“collapsar” (コラプサー) などと呼ばれていた。
ブラックホールはその特性上、直接的な観測を行うことは困難である。しかし他の天体との相互作用を介して間接的な観測が行われている。X線源の精密な観測と質量推定によって、いくつかの天体はブラックホールであると考えられている。 |
プランク、マックス(1858〜1947) |
Max
Planck |
マックス・カール・エルンスト・ルートヴィヒ・プランク(Max
Karl Ernst Ludwig Planck, 1858年4月23日 - 1947年10月4日)はドイツの物理学者で量子論の創始者の一人である。「量子論の父」とも呼ばれている。科学の方法論に関して、エルンスト・マッハらの実証主義に対し、実在論的立場から激しい論争を繰り広げた。1918年にノーベル物理学賞を受賞。 |
プランクの法則 |
Planck's
law |
物理学における黒体から輻射(放射)される電磁波の分光放射輝度、もしくはエネルギー密度の波長分布に関する公式。プランクの公式とも呼ばれる。ある温度
T における黒体からの電磁輻射の分光放射輝度を全波長領域において正しく説明することができる。1900年、ドイツの物理学者マックス・プランクによって導かれた。プランクはこの法則の導出を考える中で、輻射場の振動子のエネルギーが、あるエネルギー素量(現在ではエネルギー量子と呼ばれている)ε = hν の整数倍になっていると仮定した。このエネルギーの量子仮説(量子化)はその後の量子力学の幕開けに大きな影響を与えている。 |
フリードマン方程式 |
Friedmann
equations |
一般相対性理論のアインシュタイン方程式の厳密解の一つであるフリードマン・ルメートル・ロバートソン・ウォーカー計量(FLRW計量)から得られる時空の運動方程式である。標準ビッグバン宇宙モデルでの宇宙膨張を表す方程式であり、観測的宇宙論における宇宙論パラメータは、フリードマン方程式を元に導出される。1922年に、アレクサンドル・フリードマンが、宇宙モデルとして提出したものである。 |
偏光 |
Polarization |
電場および磁場が特定の(振動方向が規則的な)方向にのみ振動する光のこと。電磁波の場合は偏波と呼ぶ。光波の偏光に規則性がなく、直交している電界成分の位相関係がでたらめな場合を非偏光あるいは自然光と呼ぶ。
光電界の振幅は直交する2方向の振動成分に分解できることが分かっている。普通の光は、あらゆる方向に振動している光が混合しており、偏光と自然光の中間の状態(部分偏光)にある。このような光は一部の結晶や光学フィルターを通すことによって偏光を得ることができる。 |
ボーア、ニールス(1885〜1962) |
Niels
Bohr |
ニールス・ヘンリク・ダヴィド・ボーア(Niels
Henrik David Bohr デンマーク語ではネルス・ボアと発音、1885年10月7日
- 1962年11月18日)は、デンマークの理論物理学者。量子論の育ての親として、前期量子論の展開を指導、量子力学の確立に大いに貢献した。 |
ボース粒子(⇔フェルミ粒子) |
Boson |
スピン角運動量の大きさがの整数倍の量子力学的粒子である。ボソンまたはボゾン (Boson) とも呼ばれ、その名称はインドの物理学者、サティエンドラ・ボース (Satyendra Nath Bose) に由来する。 |
ま |
マクスウェル、ジェームズ・クラーク(1831〜1879) |
James
Clerk
Maxwell |
イギリスの理論物理学者である。姓はマックスウェルと表記されることもある。
マイケル・ファラデーによる電磁場理論をもとに、1864年にマクスウェルの方程式を導いて古典電磁気学を確立した。さらに電磁波の存在を理論的に予想しその伝播速度が光の速度と同じであること、および横波であることを示した。これらの業績から電磁気学の最も偉大な学者の一人とされる。また、土星の環や気体分子運動論・熱力学・統計力学などの研究でも知られている。 |
マクスウェルの方程式 |
Maxwell's
equations |
電磁場のふるまいを記述する古典電磁気学の基礎方程式。マイケル・ファラデーが幾何学的考察から見出した電磁力に関する法則から1864年にジェームズ・クラーク・マクスウェルが数学的形式として整理し導いた。マクスウェル-ヘルツの電磁方程式、電磁方程式などとも呼ばれ、マクスウェルはマックスウェルとも表記される。
真空中の電磁気学に限れば、マクスウェルの方程式の一般解は、ジェフィメンコ方程式として与えられる。 |
毛細管現象 |
Capillary
action |
細い管状物体(毛細管)の内側の液体が管の中を上昇(場合によっては下降)する現象である。毛管現象とも呼ばれる。
例えば、現象として壁面のぬれやすさとの兼ね合いで管内の液面は水平ではなく、傾きをもっていることがある(ストローの中の液面を見れば、両端が壁面にそって高くなっている様子がわかる)。また、ガラス管では濡れ性の高い水の場合毛細管の液面は上昇するが、ガラスによってはじかれる、水銀の場合は毛細管の液面は下降する。
表面張力・壁面のぬれやすさ・液体の密度によって液体上昇の高さが決まる。
表面張力を測定する方法の一つとなっている。 |
や |
誘電率 |
Permittivity |
物質内で電荷とそれによって与えられる力との関係を示す係数である。電媒定数ともいう。各物質は固有の誘電率をもち、この値は外部から電場を与えたとき物質中の原子(あるいは分子)がどのように応答するか(誘電分極の仕方)によって定まる。 |
陽子(プロトン) |
Proton |
物理学におけるハドロンの一つである。中性子とともに原子核を構成することから、これらを核子と総称する。質量1.672
621 777(74)×10-27kgは電子質量の1836.152
672 45(75)倍に相当する。直径は1.7550fm(1.7750×10-15m)。
電荷は+1、スピンは1/2、アイソスピンは1/2、ストレンジネスは0であり、超電荷は1/2である。アップクォーク2個とダウンクォーク1個で構成されている。水素(軽水素)の原子核は、陽子1個のみから構成される。よって、水素イオン(H+、イオン化したH)は陽子そのものであるため、化学の領域では水素イオンをプロトンとよぶ。
化学的な水素イオンの性質については水素イオン、原子核内で核子同士をまとめておく力についてはパイ中間子を参照。 |
ら |
ラグランジュ力学(→解析力学) |
Lagrangian
mechanics |
一般化座標とその微分を基本変数として記述された古典力学である。フランスの物理学者ジョゼフ=ルイ・ラグランジュが創始した。後のハミルトン力学と同様にニュートン力学を再定式化した解析力学の一形式である。
ラグランジュ形式の解析力学は最小作用の原理によって構成される。
元々はニュートン的な力学の分野において成立したが、電磁気学や相対性理論でも応用することが出来て、これらの分野における基礎方程式(マクスウェル方程式、アインシュタイン方程式)を導き出すことが出来る。 また、量子力学においても、経路積分の方法は最小作用の原理に関連して考え出された方法である。
ラグランジュ形式では一般化座標によって記述されており、変数の取り方が任意である。
ニュートンの運動方程式はベクトルの方程式であり、デカルト座標以外では煩雑な座標変換が必要となるが、ラグランジュ形式においてはラグランジアンはスカラーであり座標変換が簡単である。
実際の計算上でも、例えば長さが一定の振り子などで円周上を運動する場合には、平面内の運動なのでニュートンの運動方程式では2つの方向の2変数が必要となるが、ラグランジュ形式では一般化座標として角度を選ぶことにより1変数の方程式が得られる。
もちろんニュートンの運動方程式はラグランジュ形式と等価なので適当な変換により同じ式が得られるが、ラグランジュ形式では直接得られる点で便利である。 |
力学 |
Mechanics |
物体や機械(machine)の運動、またそれらに働く力や相互作用を考察の対象とする学問分野の総称である。自然科学・工学・技術の分野で用いられることが多い言葉であるが、社会集団や個人の間の力関係のことを比喩的に「力学」という場合もある。物理学で単に「力学」と言えば、古典力学またはニュートン力学のことを指すことが多い。 |
流体力学 |
Fluid
mechanics |
流体力学(fluid dynamics
/ fluid mechanics)は連続体力学の一部であり、流体の変形や応力を扱う物理学である。大きく流体動力学 (fluid dynamics) と流体静力学
(fluid statics) に分かれるが、日本では流体動力学と流体力学の区別はない。工学分野では、水を対象とする水力学(水理学)や空気を対象とする空気力学という分野に分けて扱われることがある。 |
量子状態 |
Quantum
state |
量子論で記述される系(量子系)がとる状態のことである。
これは、系の古典的な(巨視的な)状態を指定したとき、物理量、あるいは
可観測量(オブザーバブル)の具体的な測定値が得られる頻度 (測定値の確率分布)によって構成される。
量子状態には、純粋状態と混合状態とがある。 |
量子電磁力学 |
Quantum
electrodynamics |
量子電磁力学(りょうしでんじりきがく、QED)とは、電子を始めとする荷電粒子間の電磁相互作用を量子論的に記述する場の量子論である。量子電気力学と訳される場合もある。 |
量子力学 |
Quantum
mechanics |
電磁波と物質の間のエネルギー交換に際して、電磁気学や熱・統計力学では説明できないエネルギーレベルの不連続性を理由付けるために導入された理論である。
ニュートン力学では、物体に、初期値すなわち「位置と運動量」を与えれば、その物体の運動は完全に決定される。
しかしながら、実は原子や分子、電子、素粒子などでは、位置と運動量の両方を同時に正確に確定することができない(不確定性原理)。
原子や電子が粒子としての特徴をもつと同時に波としての特徴をもつ(物質波の概念)ことが知られている。一方、光や電波のような電磁波もまた、波としての性質を持つと同時に粒子としての特徴をもつ(光量子仮説)ことが知られている。
このような性質をもっている量子という概念を導入すると、量子の確率分布を数学的に記述することができ(確率解釈)、粒子や電磁波の振る舞いを理解することができる。これを量子力学と呼ぶ。
1925年のハイゼンベルクの行列力学と、1926年のシュレーディンガーによる波動力学とがそれぞれ異なる数学的手法によって量子力学の基礎を完成させた。
19世紀に信じられていた決定論的な物理学とは異質であるため、これらの理論が提案された20世紀初頭にはその解釈をめぐって大論争が展開された。現在では、巨視的な物理から(原子スケール程度に)微視的な物理までをほぼ完全に記述できると考えられ、量子力学に基づいて多くの工学的な応用もなされている。更に微視的(素粒子スケール程度に)な物理までを記述する理論の研究も行われている。 |
量子論(⇔古典論) |
quantum
theory |
1900年にドイツのマックス・プランクがエネルギー量子仮説を発表し創始した、量子現象を扱う自然科学の理論の総称である。対義語は古典論。その数学的理論体系である量子力学や量子物理学と同一視されることが多いが、量子力学の応用は全ての自然科学領域に及んでいる。1927年頃に確立された量子力学に対して、それ以前の学説を前期量子論と呼んでいる。 |
ルジャンドル変換 |
Legendre
transformation |
凸解析において、関数の変数を変えるために用いられる変換である。解析力学や熱力学などで用いられる。
数学では、ある関数関係f
(x ) を、その引数がx ではなくf の微分であるような別の関数として表現したいことがときどきある。p
= df /dx を引数とする新しい関数をf*(p
)としたとき、この関数をもとの関数のルジャンドル変換と呼ぶ(アドリアン=マリ・ルジャンドルから)。 |
レイノルズ数 |
Reynolds
number
(Re) |
流体力学において慣性力と粘性力との比で定義される無次元数である。流れの中でのこれら2つの力の相対的な重要性を定量している。
概念は1851年にジョージ・ガブリエル・ストークスにより紹介されたが、レイノルズ数はオズボーン・レイノルズ
(1842--1912) の名にちなんで名づけられており、1883年にその利用法について普及させた。
流体力学上の問題について次元解析を行う場合にはレイノルズ数は便利であり、異なる実験ケース間での力学的相似性を評価するのに利用される。
また、レイノルズ数は層流や乱流のように異なる流れ領域を特徴づけるためにも利用される。層流については、低いレイノルズ数において発生し、そこでは粘性力が支配的であり、滑らかで安定した流れが特徴である。乱流については、高いレイノルズ数において発生し、そこでは慣性力が支配的であり、無秩序な渦や不安定な流れが特徴である。 |
連続体力学
(本サイトの『水の流れ』参照) |
Continuum
mechanics |
固体と流体の運動及び力学的挙動を解析する力学の一分野である。連続体力学では対象を巨視的に捉え、空間的に微分可能な連続体に理想化し、物体内部の各点における力学的な関係式を元に、変形・流動、波動の伝播、エネルギーの変換等を論じる。 |
ローレンツ、ヘンドリック(1853〜1928) |
Hendrik
Lorentz |
ヘンドリック・アントーン・ローレンツ(Hendrik
Antoon Lorentz、1853年7月18日 - 1928年2月4日)は、オランダの物理学者。ゼーマン効果の発見とその理論的解釈により、ピーター・ゼーマンとともに1902年のノーベル物理学賞を受賞した。ローレンツ力、ローレンツ変換などに名を残し、特に後者はアルベルト・アインシュタインが時空間を記述するのに利用した。 |