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東日本大震災−用語−

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• 東日本大震災の『リンク』は別ページ

用語−放射能関連−

※関連時事用語のいくつかの説明（五十音順）（リンクは主にウィキペディア）。

・核分裂生成物（かくぶんれつせいせいぶつ）
・核分裂反応（かくぶんれつはんのう）
・コウナゴ（こうなご）
・暫定規制値（ざんていきせいち、暫定基準値、ざんていきじゅんち）
・自発核分裂（じはつかくぶんれつ）
・シルトフェンス（しるとふぇんす）
・スピーディ（すぴーでぃ）
・内部被ばく（ないぶひばく）
・避難区域（ひなんくいき）
・プルサーマル（ぷるさーまる）
・ベクレルとシーベルト（べくれるとしーべると）
・放射性降下物（ほうしゃせいこうかぶつ）
・放射性ストロンチウム（ほうしゃせいすとろんちうむ）
・放射性セシウム（ほうしゃせいせしうむ）
・放射性物質（ほうしゃせいぶっしつ）
・放射性ヨウ素（ほうしゃせいようそ）
・放射線（ほうしゃせん）
・マスク（ますく）

• 核分裂生成物（かくぶんれつせいせいぶつ）：英語ではNuclear fission product。質量収率曲線【参照】により示されるように、核分裂生成物は、質量数で95付近と140付近の2種類に分かれ、具体的な生成物の種類（核種）と量（収率）は生成条件の違いによって異なるが、ウィキペディアの『Fission product yield』および『Nuclear fission product』からいくつかのデータを以下の表に示す。【『放射能とは』や『核分裂』のページを参照】
  

  ウラン235の熱中性子による核分裂（抜粋、補筆）（ウィキペディア（HP/2011/4）による『Fission product yield』から） 収率（Yield） （％） 同位体（Isotope） 半減期（Halflife） 備考（Comment） 6.7896 133Cs →134Cs 2.065年（134Cs） 中性子捕獲（29バーン）により安定な133Csから134Csへゆっくり変わり、それ自身はベータ崩壊が134Xeで止まるため収率は低い；さらに135Csに変わる（140バーン） 6.3333 135I→135Xe 6.57時間 最も重要な中性子毒（反応断面積が大きい）；中性子捕獲により135Xeの10〜50％が136Xeに変わる；残りは135Cs（230万年）に崩壊する（9.14時間） 6.2956 93Zr 153万年 　 6.0899 137Cs 30.17年 　 6.0507 99Tc 21.1万年 核変換による廃棄物の候補 5.7518 90Sr 28.9年 　 2.8336 131I 8.02日 　 2.2713 147Pm 2.62年 　 1.0888 149Sm 安定 中性子毒として2番目に重要 0.6576 129I 1570万年 核変換による廃棄物の候補 0.4203 151Sm 90年 中性子毒；大部分は安定な152Smへ変わる 主な核分裂生成物（抜粋、補筆）（ウィキペディア（HP/2011/4）による『Nuclear fission product／Fission product yield』から） 核種 半減期 収率 （％） エネルギー （KeV） 崩壊の型 135Cs 230万年 6.9110 269 β 137Cs 30.23年 6.337 1176 βおよびγ 99Tc 21.1万年 6.1385 294 β 93Zr 153万年 5.4575 91 βおよびγ 90Sr 28.9年 4.505 2826 β 107Pd 650万年 1.2499 33 β 129I 1570万年 0.8410 194 βおよびγ 151Sm 90年 0.5314 77 β

• 核分裂反応（かくぶんれつはんのう）：核分裂性物質である核種の中で最も重要なものがウラン235（²³⁵92U）である《他にウラン233（²³³92U）〔←トリウム232（²³²90Th）から生成〕やプルトニウム239（²³⁹94Pu）なども》。その核分裂反応は次式で示される。
  　n（熱中性子）＋ウラン235→ウラン236（不安定）→核分裂片1＋核分裂片2
  　ここで、核分裂片1と核分裂片2において、質量数（＝中性子数＋陽子数）の合計は236で、陽子数の合計は92である。核分裂片1（質量数90〜100程度）は、例えばストロンチウム（⁹⁰38Sr）やジルコニウム（⁹³40Zr）やテクネチウム（⁹⁹43Tc）などで、核分裂片2（質量数135〜145程度）は、例えばセシウム〔¹³³55Cs（安定）→¹³⁴55Cs、¹³⁵54Xe→¹³⁶54Xe→¹³⁵55Cs、¹³⁷55Cs〕やヨウ素（¹³⁵53I、¹³¹53I、¹²⁹53I）などである。
  　核分裂片1と核分裂片2は、さらに中性子を放出して（この中性子が次の核分裂を起こし、それが繰り返されれば核分裂連鎖反応となる。ただし、発生する中性子は高速なので、減速させて熱中性子にしなければならない）、同じ元素で質量数の小さい放射性同位体に変わっていく。さらに質量数は変わらずに、ベータ（β）崩壊によって中性子が陽子に変わっていけば、陽子数の大きい元素が次々に生成される。これは5回くらい変わることが多い。これらはフィッション・チェーンと呼ばれ、これらの核分裂生成物が使用済核燃料放射性物質（放射能）の主体を構成することになる。
  　どのような質量数のフィッション・チェーンが、どのような割合で生成されるかは、核分裂性物質の種類や照射中性子エネルギーなどにより変化する。そしてその傾向は、質量数と核分裂収率（％）を座標軸にした質量収率曲線【参照】で表わされる。【『放射能とは』や『核分裂』のページを参照】
• コウナゴ（こうなご）：コウナゴ（小女子）はイカナゴ（Ammodytes personatus：スズキ目イカナゴ科の魚類）の東日本における稚魚の別名。体長5cm程度。コウナゴ漁の漁獲量は北海道や兵庫県で多い。海洋における食物連鎖の生態系ピラミッドの一番下に位置する生物はプランクトン（植物性および動物性）であるが、それらを餌とする魚類の代表的な種として、福島第一原子力発電所事故の放射能漏洩問題に関係して注目された。生物濃縮の問題もある。
• 暫定規制値（ざんていきせいち、暫定基準値、ざんていきじゅんち）：福島第一原子力発電所事故に伴い、放出された放射能の影響を受けた食品に対して、食品衛生法に基づいて設定された値。放射性ヨウ素については、飲料水と牛乳などは300ベクレル／kg（乳児は100）で、野菜類と魚介類は2,000ベクレル／kg。放射性セシウムについては、飲料水と牛乳などは200ベクレル／kgで、野菜類と穀類とその他は500ベクレル／kg。これらの値に従って、出荷制限や摂取制限が行われた。放射性物質による年間の許容量の暫定値として、食品安全委員会（2011/3）は、放射性ヨウ素（ヨウ素131＝¹³¹I）については甲状腺等価線量50mSv（ミリシーベルト）（実効線量で2mSvに相当）、および放射性セシウム（セシウム134、137＝¹³⁴Cs＋¹³⁷Cs）については実効線量5mSvを決めている【食品安全委員会（2011/3）による『放射性物質に関する緊急とりまとめ』から】。
  

  飲食物摂取制限に関する指標 核種 原子力施設等の防災対策に係る指針における摂取制限に関する指標値（Bq/kg） 放射性ヨウ素 （混合核種の代表核種：131I） 飲料水 300 牛乳・乳製品 注） 野菜類（根菜、芋類を除く。） 2,000 放射性セシウム 飲料水 200 牛乳・乳製品 野菜類 500 穀類 肉・卵・魚・その他 ウラン 乳幼児用食品 20 飲料水 牛乳・乳製品 野菜類 100 穀類 肉・卵・魚・その他 プルトニウム及び超ウラン元素のアルファ核種 （238Pu、239Pu、240Pu、242Pu、241Am、242Cm、243Cm、244Cm放射能濃度の合計） 乳幼児用食品 1 飲料水 牛乳・乳製品 野菜類 10 穀物 肉・卵・魚・その他 注）100 Bq/kgを超えるものは、乳児用調製粉乳及び直接飲用に供する乳に使用しないよう指導すること。 厚生労働省医薬食品局食品安全部長（HP/2011/4）による『放射能汚染された食品の取り扱いについて』から（2011/3/17） 『放射能汚染された食品の取り扱いについて 　平成23年3月11日、東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故に係る内閣総理大臣による原子力緊急事態宣言が発出されたところである。 　このため、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もって国民の健康の保護を図ることを目的とする食品衛生法の観点から、当分の間、別添の原子力安全委員会により示された指標値を暫定規制値とし、これを上回る食品については、食品衛生法第6条第2号に当たるものとして食用に供されることがないよう販売その他について十分処置されたい。 　なお、検査に当たっては、平成14年5月9日付け事務連絡「緊急時における食品の放射能測定マニュアルの送付について」を参照し、実施すること』 【参考】 岸本（HP/2011/4）による『基準値の根拠を追う：放射性ヨウ素の暫定規制値のケース』（2011/4/6） 食品安全委員会（HP/2011/4）による『放射性物質に関する緊急とりまとめ』（2011/3） 原子力安全委員会（HP/2011/4）による『原子力施設等の防災対策について』（1980/6〜） 厚生労働省医薬局食品保健部監視安全課（HP/2011/4）による『緊急時における食品の放射能測定マニュアル』（2002/3）

• 自発核分裂（じはつかくぶんれつ）：通常の核分裂反応は中性子の照射によって起こるが、質量数の非常に大きい同位体に自発的に発生する核分裂である。2011年に発生した福島第一原子力発電所事故の放射能漏洩問題に関係して注目された。具体的には、2号機原子炉格納容器ガス管理システム入口から10/28に採取した試料からキセノン（Xe）133（検出限界0.4 Bq/cm³未満、半減期約5日）とキセノン135（検出限界0.16 Bq/cm³未満、半減期約9時間）が極微量検出されたが（1/10万 Bq/cm³?）、これは核分裂の連鎖反応ではなく自発核分裂〔キュリウム（Cm）242とキュリウム244〕と判断された（11/3）。
• シルトフェンス（しるとふぇんす）：2011年に発生した福島第一原子力発電所事故の放射能漏洩問題に関係して注目された。海洋への放射能汚染水の流出拡散を防ぐための汚濁防止幕（カーテン状）として使われたが、一般には湾岸工事等による海洋汚染防止のために用いられている。シルトフェンス（silt fence）とは、汚濁を起こす物質の主な粒子サイズであるシルト（silt）に対するフェンス（fence）という意味であり、前田工繊製などが用いられた。シルトの粒径は1/16mm（約63μm）〜1/256mm（約4μm）と定義されることが普通であるが、通常のシルトフェンスの孔径は数十μm〜数百μmであり、粒子の大きさから流出拡散を防ぐ設計ではない。因みに、放射性物質の粒径も数十μm以下のものが大部分を占めると予想されている。
  

  前田工繊（HP/2011/4）による『OKシルトフェンス 垂下式』から

• スピーディ（すぴーでぃ）：緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム（SPEEDI、System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information）の略称。周辺環境への放射性物質の影響（大気中濃度および被ばく線量など）を、放出源情報・気象条件・地形データを基に迅速に予測するシステム【文部科学省の環境防災Nネットによる】。（財）原子力安全技術センターに設置された中央情報処理計算機を中心に、文部科学省・原子力安全委員会・経済産業省・緊急事態応急対策拠点施設（オフサイトセンター）・地方公共団体・（財）日本気象協会とが専用回線により接続されている【文部科学省による『SPEEDI』から】。ただし、福島第一原子力発電所事故では、このシステムによる結果の公表は限られていたため、諸外国の関係組織による放射能飛散シミュレーション結果が日本に伝えられ、混乱を生んだ。これは、システム用の入力データを入手できなかったためであるが、その後、制約条件下で計算された結果が公表されている（『文部科学省　緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム（SPEEDI）による計算結果』参照）。【『放射能汚染』のページを参照】
  

  原子力百科事典ATOMICA（HP/2011/5）による『SPEEDIによる計算の流れ』から〔原子力安全委員会（HP/2011/5）による『文部科学省　緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム（SPEEDI）による計算結果』から〕

• 内部被ばく（ないぶひばく）：放射線による被ばく（被曝）には、内部被ばくと外部被ばくがあり、飲食（経口）および呼吸（経気道）あるいは皮膚（経皮）から体内へ摂取された放射性物質からの被ばくを体内被ばくという。内部被ばく量を推定する方法には、外部被ばく量から換算する方法や、ホールボディカウンター（現在の日本には50台もない：対象はガンマ線）検査あるいはバイオアッセイ（毛髪等）についての検査などがある。また、放射性核種（放射性同位体）により体内の器官に濃集する傾向が異なるため、それを利用する場合もある。例えば、ヨウ素の場合は甲状腺に集まりやすいため、この器官をターゲットにして検査を行う。さらに、ストロンチウムはカルシウムと挙動が類似するため、骨などに固定されやすいため注意が必要とされる。【『放射線による内部被ばくについて』や『内部被ばくに関する線量換算係数』（緊急被ばく医療ポケットブック）を参照】
• 避難区域（ひなんくいき）：原子力災害対策特別措置法に基づき、福島第一原子力発電所から半径20km以内には震災発生後の早期から避難指示が出され避難区域が設定された。さらに20〜30kmは屋内退避区域となり、この区域は後に自主避難の対象とされた。その後、約1ヵ月後に計画的避難区域と緊急時避難準備区域が設定された。計画的避難区域は半径20km以遠で事故発生から1年の期間内に積算線量が20mSv（ミリシーベルト）【国際放射線防護委員会（ICRP）と国際原子力機関（IAEA）の緊急時被曝状況における放射線防護の基準値《年間20〜100mSv》に基づく】に達するおそれのある区域である。また、屋内退避区域の中で計画的避難区域に該当しない区域は緊急時避難準備区域とされた【首相官邸による】。もし、1日24時間被曝をした場合に1年間（365日）で20mSv/y（累積量）に達する時間量は約2.3μSv（マイクロシーベルト）/hである。また、学校等で児童 生徒に許容できる量は3.8μSv/yとされた〔3.8μSv/h×8時間（屋外）＋1.52μSv/h×16時間（木造家屋の屋内）≒20mSv/y〕【文部科学省・厚生労働省（2011/4/19）による『避難区域等の外の地域の学校等の校舎・校庭等の利用判断に係る暫定的考え方』から】。その後、避難区域は警戒区域とされた（4/22から）。
  　ただし、ICRPは、公衆の実効線量限度は１mSv/yとしている。【原子力百科事典ATOMICA（HP/2011/4）による『ICRP勧告（1990年）による個人の線量限度の考え』などから】
• プルサーマル（ぷるさーまる）：プルトニウム239とウランの混合酸化物であるMOX（もっくす）を核燃料として軽水炉で使用することを指す。プルトニウムを熱中性子炉で使うことから、プルトニウム（plutonium）＋サーマルニュートロン・リアクター（thermal neutron reactor）の略の和製英語である。MOXの専用炉は高速増殖炉（名前の由来は高速中性子によりプルトニウムを増殖させることからきている）と呼ばれる。【『プルトニウム』のページを参照】
• ベクレルとシーベルト（べくれるとしーべると）：放射性物質から放出される放射線の大きさの単位はベクレル（Becquerel、Bq：旧単位はキュリー）、放射線が人体に与える影響の大きさの単位はシーベルト（Sievert、Sv：旧単位はレム）である。これ以外に、放射線によって与えられるエネルギーの大きさの単位はグレイ（旧単位はラド）で示される。ベクレルとシーベルトは、放射線の性質（放射性物質の種類など）およびそれを受ける物質の性質を仮定すれば、ある程度換算は可能である。ただし、実効線量係数などの換算のためのデータ【ICRP（国際放射線防護委員会）によるものがよく使われる】が必要である。また、シーベルトの値は大きいため、千（＝10³）分の1の接頭辞であるミリ（m）や百万（10⁶）分の1のマイクロ（μ）が単位の前に付けられることが多い。換算の計算例はこちらを参照。なお、cpm（counts per minute、カウント毎分）は測定機器における計数率である。【『放射能とは』のページを参照】
• 放射性降下物（ほうしゃせいこうかぶつ）：核実験（核爆発）や原子力事故により生じた放射性の塵のことであり、フォールアウトとも言われ、一般には死の灰として知られる。エアロゾルの測定法については原子力百科事典ATOMICAによる『エアロゾルの測定』を参照。チェルノブイリ原発事故の場合に放射性物質は、主に、�@貴ガス放射能〔クリプトン（36Kr）やキセノン（54Xe）〕、�A放射性ヨウ素（53I）は蒸気・微粒子・有機ヨウ素化合物の混合物、�Bエアロゾル〔セシウム（55Cs）やテルル（52Te）〕、として放出された。粒子状物質の大きさは、0.3〜1.5μmおよび10μmの2つの範囲が主体で、大きな粒子にはジルコニウム95（⁹⁵40Zr）・ニオブ95（⁹⁵41Nb）・ランタン140（¹⁴⁰57La）・セリウム144（¹⁴⁴58Ce）・ウラン（92U）酸化物に含まれたネプツニウム（93Np）-プルトニウム（94Pu）-超ウラン元素の大部分が存在した。【Chernobyl Disaster（HP/2011/4）による】　また、大気中エアロゾルの研究から、ヨウ素131（¹³¹53I）＜セシウム137（¹³⁷55Cs）、ルテニウム103（¹⁰³44Ru）＜＜ストロンチウム90（⁹⁰38Sr）＜プルトニウム（239、240）（^239、24094Pu）という順序であり、ヨウ素131・セシウム137・ルテニウム103の平均粒径はミクロン以下であった。これらのうち、0.43μm以下に全体の放射能の半分が存在し、粒径の増加とともに急速に放射能が減少する分布を示した。さらに、1.1μm以下にヨウ素131の8割強、セシウム137の9割、ルテニウム103の9割強、が含まれていた。事故発生から5月末までの観測では、粒径分布は時間とともに変化し、セシウム137は0.4μm から0.7〜0.8μmと増加し、ルテニウム103も同様な傾向を示した。【気象研究所（ＨＰ/2011/4）による『2．大気浮遊塵』から】【『放射能汚染』のページを参照】
• 放射性ストロンチウム（ほうしゃせいすとろんちうむ）：原子番号38。ストロンチウムの同位体のうち、天然のものは4種類であるが、人工のものは多い。人工の⁹⁰Sr〔半減期約29年→β崩壊→⁹⁰39Y（半減期64時間）→β崩壊→⁹⁰40Zr〕が最も重要である。ストロンチウムの化学的挙動は、カルシウム（20Ca）に似ている。
• 放射性セシウム（ほうしゃせいせしうむ）：原子番号55。セシウムの同位体は多いが、安定同位体は¹³³Csのみである。ウラニウムの核分裂によって生成されるセシウムは、¹³³Cs〔中性子捕獲により¹³⁴Cs（半減期2年）になる〕と¹³⁷Cs〔ヨウ素（53I）やキセノン（54Xe）の同位体のβ崩壊により生成：半減期30年→^137m56Baを生成〕が代表的である。原子炉の核分裂生成物の指標として用いられることが多い。
• 放射性物質（ほうしゃせいぶっしつ）：原子炉の事故の場合、核分裂生成物が最も重要である。ガス状の場合よりも、エアロゾル状（微粒子の固体や液体）の場合の影響が大きい。従って、外部被曝が問題になるが、実際には内部被曝（経口または吸入）による影響が重要である場合が多い。具体的には、放射性ヨウ素〔ヨウ素131（¹³¹I）〕や放射性セシウム〔セシウム137（¹³⁷Cs）〕などが注目される。これらは主にベータ（β）線を放出する。核燃料の場合は、ウラン（92U）とプルトニウム（94Pu）が代表的である（酸化物）。これらはアルファ（α）線やガンマ（γ）線や中性子線などを放出する。【『放射能とは』のページを参照】
• 放射性ヨウ素（ほうしゃせいようそ）：原子番号53。ヨウ素の同位体は多いが、安定同位体は¹²⁷Iのみである。核分裂により生成する同位体の代表は、¹²⁹I（半減期1,600万年）・¹³¹I（半減期8日→β崩壊→^131m54Xe）・¹³²I（半減期2時間）・¹³³I（半減期21時間）・¹³⁵I（半減期7時間）である。原子炉の核分裂生成物の代表的な核種である。ヨウ素は揮発性が大きいため、放射能汚染の指標としてよく用いられる。ヨウ素は甲状腺ホルモンを合成するのに必要であるので人体の甲状腺に集中するが、特に乳幼児において重要であるので影響も大きい。従って、被曝前にヨウ素剤を服用する対処がとられる場合がある。
• 放射線（ほうしゃせん）：原子炉の事故の場合、粒子線と呼ばれるアルファ（α）線〔ヘリウムの原子核（⁴2He²⁺）〕・ベータ（β）線（普通は中性子から放出される電子）・中性子線が代表的であり、電磁放射線と呼ばれるガンマ（γ）線も伴う場合が多い。エネルギーの大きさは、一般にα＞β＞γの順であり、到達距離（透過能力）は、α＜β＜＜γの順である。α線とβ線は内部被曝の場合に問題にされ、γ線は外部被曝の場合に問題にされることが多い。中性子線は核分裂により発生するため、核分裂性物質であるウラン235やプルトニウム239が飛散した場合に問題とされる。因みに、放射能とは放射線を出す能力を指すが、その物質を指して使われることも多い。【『放射能とは』のページを参照】
• マスク（ますく）：放射性物質による被曝は外部被曝と内部被曝に分けられるが、内部被曝は放射性物質を体内に呼吸（吸入摂取）や飲食（経口摂取）により取り込んだ場合に起こる。その放射性物質の由来は放射性降下物の場合が主要である。とくに吸入摂取を防護するためにはマスクの使用が有効である。放射性降下物に示した放射性物質の大きさから判断すると、『N95』マスクが望ましいと考えられる。
  

  マスクの種類と補足粒子（『鳥取県の新型インフルエンザ対応』から）

  マスクの種類と捕捉粒子	製品	捕捉粒子の大きさ	捕捉可能粒子
  	不織布製（市販製品の主流）	5ミクロン以上	飛沫
  	Ｎ９５（医療用）	0.3ミクロン以上	飛沫核
  	ナノフィルター（市販されている）	0.03ミクロン以上	ウィルス
  飛沫などの大きさ	インフルエンザウィルス粒子の大きさ（Ａ、Ｂ、Ｃ型）	直径0.08〜0.12ミクロン
  	ウィルスを含む気道からの飛沫物質	5ミクロン以上
  	ウィルスを含む気道からの飛沫核	0.3ミクロン以上
  １ミクロンは1mmの1000分の1、インフルエンザウィルスは約0.1ミクロン 飛沫核物質：ウィルスを含む飛沫粒子が直径２ミクロン以下になると、空気中で水分が蒸発し、乾燥縮小した飛沫核になり、長時間空気中に浮遊し、これが吸入される（＝空気感染）

  
  ※N95マスク（Particulate Respirator Type N95）とは、NIOSH（National Institute for Occupational Safety and Health、米国労働安全衛生研究所）認定のN95規格に適合したマスク。Nは耐油性が無いことを表し（Not resistant to oil）、95は試験粒子（空力学的質量径でおおよそ0.3μm）を95%以上捕集できることを表している。