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鉱物資源を考える(4) |
『X. どのくらいあるか
1. 地質学的な量と鉱業的な量
(1) 鉱床の量と粗鉱の量 探査の結果地質学的に見つけられた鉱床全体の中で、実際に採掘の直接対象となる部分は、種々の自然的・技術的・経済的その他の理由で、一般的にはその全部ではない。例えば、一つの鉱体内での目的鉱物・目的成分の品位分布は極めて不規則なのが普通なので、地質学的には明らかに鉱床の一部でありながら、局部的な低品位のために採掘の直接対象となり得ない部分が、どの鉱床にも何がしか必らずある。あるいは、その規模が部分的に小さすぎるために採掘対象から外される場合もある。一方それらとは逆に、鉱床の形・大きさ・母岩の性質などに関係して、鉱石採掘の際母岩の一部の混る事が技術的・経済的に避け得ない場合もしばしば起る。この場合の母岩の破片はズリと呼ばれる。実際に採掘される粗鉱中でのズリの占める割合い(ズリ混入率)は、日本での実例を挙げると、計画上でのズリ量/粗鉱量の重量比で金属鉱床の場合には10-40%、非金属鉱床の場合には1-20%程度と言われている(資源エネルギー庁、1982)。つまり、探査の結果発見された自然物としての鉱床に対して、種々の条件を入れて採鉱計画を立て、実際に掘るべき場所(鉱画)を決めるのに当っては、ある場合には鉱床の一部を欠き、またある場合には母岩の一部の加わる事が、ごく普通に起る。なお採鉱工程での実収率は、上の場合の外に、計画上の可採粗鉱量と実際に採掘された粗鉱量との重量比で示される場合もある。
上のような事情で、探査の結果確かめられた鉱床の形・大きさ・鉱床内の品位分布・鉱石の比重などについての諸測定資料を基に計算される自然物としての鉱床の存在量、すなわち鉱床の質量(これを鉱床量とよぶ。場合によってはその中での目的鉱物・目的成分の総含有量で表わされる事も多い)と、採鉱計画上定められた鉱画から実際に採掘を予定される部分の質量(可採粗鉱量。これもその中での目的鉱物・目的成分の総含有量で示される事もある)とは、同じ一つの特定鉱床に対して一般には一致しない。前者は自然に与えられた量(地質学的な量)だが、後者は自然条件と共に技術的・経済的条件なども加わって、いわば人為的に決められる量(鉱業的な量)である。また同じ理由で、鉱床全体の平均品位あるいは鉱床中での目的鉱物・目的成分の総含有量は、自然に決っている地質学的な量だが、採掘される粗鉱の平均品位あるいはその中での目的鉱物・目的成分の総含有量は、ズリ混入率がどのくらいかあるいは採掘限界品位をどのように定めるかなどの諸条件に従って、いろいろに変わり得る鉱業的な量である。
これにより一般的に言いかえると、鉱床量などの地質学的な量は、一つの特定鉱床に対しては自然に決っている特定の量だが、それに対する可採粗鉱量などの鉱業的な量は、前者とは違ってその時々に考えられる技術的・経済的諸条件にも左右されて、同じ一つの特定鉱床に対しても増したり減ったりし得る可変量である。これらの関係を表X-1にまとめ、またそれを模式的に図X-1に示す。
表X-1 地質学と鉱業との間での概念・量の違い(1) | ||
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鉱床(その定義の中に鉱業上の概念を入れない) |
有用鉱床(economic mineral deposits)*1 経済限界下鉱床(subeconomic mineral deposits) |
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鉱床量(geologic bodyとしての質量) |
採鉱計画−鉱画・ズリ混入率・採掘限界品位・粗鉱平均品位 埋蔵鉱量(reserve)*2 可採粗鉱量(minable ore reserve) |
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鉱床中での品位分布 鉱床での平均品位 |
採掘限界品位(cut-off grade) 粗鉱平均品位(mean ore grade) |
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鉱床中の目的鉱物・目的成分の含有量 同品位分布 |
粗鉱中の目的鉱物・目的成分の含有量 同品位別分布 |
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総鉱物資源量 (total mineral resources) |
埋蔵鉱量(reserve) 准埋蔵鉱量(marginal reserve) 経済限界下鉱物資源量(subeconomic resources) |
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潜在鉱物資源量(undiscovered resources) | ||
大陸地殻上部での総鉱床量 海洋地殻上での総鉱床量 |
大陸地殻上部での総鉱物資源量 海洋地殻上での総鉱物資源量 |
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*1 鉱物資源の対象としては、鉱種によっては普通の岩石の一部も含まれる。*2 ここでの埋蔵鉱量(reserve)の定義は、後に示す2.鉱物資源およびその量の区分を参照。 |
2.鉱物資源およびその量の区分
先に述べたように、鉱物資源の量に関するこれまでの区分は、何らかの地質学的な具体的資料の得られた、すなわち低どの差こそあれ地質学的にその存在・性質などがすでに知られた鉱床(既知鉱床)、しかもそのほとんどが有用鉱床に対して、その存在量(鉱床量)または可採粗鉱量あるいはその中での目的鉱物・目的成分含有量などを、確からしさの程度によって確定・推定・予想の3段階に区分するものだった。
しかし、近年では鉱物資源に関しても相当長い将来にわたっての予測・評価という事が重要な問題となって来たのに対応して、単にすでに存在の知られた有用鉱床に対してのみならず、すでに見つけてはあるが低品位その他の種々の理由で、少なくともここ当分の間はまったく利用し難いと考えられるような鉱床に対しても、同じ区分システムの中に組み入れてその存在量を考えに入れる必要が大きくなって来た。さらに鉱業的には未開発の地域についても、そこの地質環境に関する基礎知識および鉱床の出来方に関する一般的な知識・理論が進んで来ると、それら両者の組み合せによって未知の地域にどんな鉱種・型式の鉱床がありそうか、また場合によってはどのくらいありそうか、などの推定も理論的にある程度可能となって来た。もちろん、それらの存在量についての見積りが出来たとしても、その値は既知鉱床に対するものより確からしさの程度がずっと低いのは止むを得ない。
上の事情を反映して、最近各国の政府機関や研究機関などから鉱物資源およびその量の新らしい区分や命名法がいくつか発表されている(例えば、カナダ−Zwartendyke,J.(ed.), 1975;アメリカ合州国−USGS, 1976,
USBM & USGS, 1980;国連−Schanz,J.J.,Jr., 1980など)。これらはいずれも、基本的な考え方として一方ではその地質学的な確からしさ、他方ではその経済的利用可能性の大きさとの2本の柱を中心に行われている。ここではその1例として、アメリカ合州国鉱山局と同地質調査所とが共同して決めた方法(USBM & USGS, 1980;立見辰雄、1983)を紹介しておこう。表X-2はその結果をまとめて示したものである。この方法では、横軸に見積り値の地質学的な確からしさの程度(右から左に行くほど高い)、縦軸には経済的利用可能性の程度(下から上に行くほど高い)とを、それぞれ採ってある。前者は既知鉱床−既知鉱物資源量と潜在(未発見)鉱床−潜在鉱物資源量とにまず2大別し、それらは表のようにさらに細分されている。後者は有用鉱床−埋蔵鉱量・准埋蔵鉱量と経済限界下鉱床−経済限界下鉱物資源量とに分けられると理解して良いだろう。これらを量に関して別なまとめ方をすれば表X-3のようになる。
表X-2 鉱物資源量の区分(1)(USBM & USGS, 1980) | |||||
累積 生産量 |
既知鉱物資源量 | 潜在鉱物資源量 | |||
確認 | 予測 | 確からしさの程度 | |||
精測 | 概測 | 仮定 | 純理的 | ||
経済的 |
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予測 埋蔵鉱量 |
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准経済的 |
|
予測 准埋蔵鉱量 |
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経済限界下 |
鉱物資源量 |
予測 経済限界下 鉱物資源量 |
|||
その他の産出 | 非在来型および極低品位鉱床の量 |
表X-3 鉱物資源量の区分(2) | ||
総鉱物 資源量 |
既知 鉱物 資源量 |
1.埋蔵鉱量(reserve)* a. すでに見つけてあり、かつ現在の諸条件の下で経済的に利用可能な鉱床〔有用鉱床〕に関する量−埋蔵鉱量 b. 上に準ずるが、特に経済性の点で限界すれすれのもの−准埋蔵鉱量 |
2.鉱物資源量(resources) a. すでに見つけてあるが、低品位その他の理由で、現在では利用し得ない鉱床に関する量−既知経済限界下鉱物資源量 |
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潜在− | b. 未知の地域にその存在が地質学的に期待される鉱床に関する量−潜在鉱物資源量 | |
* ここでは確認(精測+概測)および予測の両者を含む。ただし、埋蔵鉱量と記した場合、しばしば前者のみを指す事がある。また、日本工業規格JIS-M1001による“埋蔵鉱量”の定義は、その文面からすれば本来の鉱床量と一致するようにとれるが、実際の各企業での計算の場合には、それぞれの鉱床に対して具体的に決めたある鉱石品位以上の部分についてのみを計算している場合が多いように思われる。 |
3. 既採掘量と既知鉱物資源量の見積り
(1) 既採掘量 これまでにすでにどのくらいの量の鉱石を掘ってしまったか(既採掘量)については、過去の記録を丹念に拾い集めて集計すれば結果が得られる。しかし、近年の記録はともかくとして、何100年も何1000年も前の古い事となると、その正確な資料を残りなく得る事は実際上出来ない。この分については勢い少数の資料からの推計に頼る事になるので、それだけ確からしさに劣るのも止むを得ない。しかしすでに述べたように、各種鉱石の年生産量は産業革命以降急激に増して来ており、従ってこれまでの既採掘量の大部分はこの僅か200年ほどの短期間の分によって占められている。この間の記録は比較的よく残されているので、それら全てを集計して得られる既採掘量に関する最終結果は、少なくとも2-3桁ぐらいまでに数値だったら、大きな誤りを犯す事はほぼ無いと考えても良いだろう。
ここには、資料の得られた銅・鉛・亜鉛・ニッケル・金・ウランの6鉱種についての1979年度末までの全世界既採掘量を表X-4として掲げる。なおこの表には、1980年度でのそれらの埋蔵鉱量の値もつけ加えてある。例えば銅については、鉱石中含銅量にして1979年度末までにおよそ2.3億トンを掘り、1980年度までに全世界ですでに見つけてしまった銅の有用鉱床の鉱石中含銅量は前の値に埋蔵鉱量の値を足しておよそ7.3億トンという事になる。この値をここでは一応既発見量と呼ぶ事にしよう。もちろん、本来の意味での既発見量は、さらに既知経済限界下の鉱物資源量(海洋地殻表層部の分も含む)をも加えた値だから、この数値よりももっと大きい筈である。
表X-4 銅・鉛・亜鉛・ニッケル・金・ウラン鉱物資源の既採掘量と既発見量 | ||||||||||
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(t) |
既採掘量(鉱石中含金属量) |
埋蔵鉱量*3 (1980 含金属量) |
既発見量(B)*4 (〜1980 含金属量) |
A/B (1980 %) |
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期間T*1 | 量 | 期間U*2 | 量 |
計(A) (〜1979) |
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界 |
Cu | ×106 | 〜1972 | 180 | 1973-79 | 51.8 | 232 | 494 | 726 | 32.0 |
Pb | ×106 | 〜1965 | 141 | 1966-79 | 39.6 | 181 | 127 | 308 | 58.8 | |
Zn | ×106 | 〜1965 | 155 | 1966-79 | 76.8 | 232 | 162 | 394 | 58.9 | |
Ni | ×106 | 〜1979 | 11.6*5 | 11.6 | 73.1 | 84.7 | 13.7 | |||
Au | ×103 | 〜1975 | 85*6 | 1976-79 | 4.9 | 90 | 32.3 | 122 | 73.8 | |
U*7 | ×103 | 〜1974 | 429 | 1975-79 | 142 | 571 |
79 2.59×106 |
79 3.16×106 |
79 18.1 |
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本 |
Cu | ×106 | 〜1959 | 5.0*8 | 1960-79 | 1.9*9 | 6.9 | 0.96*10 | 7.9 | 87.3 |
Pb | ×106 | 〜1959 | 0.62 | 1960-79 | 1.1 | 1.7 | 0.76 | 2.5 | 68.0 | |
Zn | ×106 | 〜1959 | 7.57 | 1960-79 | 4.6 | 12.2 | 4.21 | 16.4 | 74.4 | |
Au | ×103 | 〜1959 | 0.50 | 1960-79 | 0.13 | 0.63 | 0.04 | 0.67 | 94.0 | |
*1 Pelissonnier,H.(1972,75)、矢島淳吉(1976)。*2 1966-68:Metalgesel schaft, 1966-68;1969-79:USBM(1981)、USBM Bull. 671。*3 USBM(1981)。*4 既採掘量+埋蔵鉱量。*5 Riss,J.R. & Travis,G.A.(1981)。*6 Boyle,R.W.(1979)。*7 動力炉核燃料事業団(1980)。ソ連圏を含まない。*8 関根良弘(1962)。*9 資源エネルギー庁(1980) 資源統計年報1979.*10 同左(1982) 鉱業便覧昭和56年度版。 |
表X-5 既知鉱物資源量(鉱石中含有目的成分量、1980) | |||||||
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(トン) |
(〜1979) |
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その他 | 合計 | 予測埋蔵鉱量 | 鉱物資源量 | |||
Fe*3 | ×109 | 93.4 | 104 | 197 | |||
Mn | ×109 | 1.36 | 1.45 | 2.81 | 6 | 16.3 | |
Cr*4 | ×109 | 3.36 | 29.3 | 32.7 | |||
Ni | ×106 | 11.6 | 60.0 | 168 | 228 | 290 | 760 |
Co | ×106 | 2.40 | 3.04 | 5.44 | 60 | ||
Mo | ×106 | 9.48 | 11.4 | 20.9 | |||
Ti | ×106 | 273 | 424 | 697 | |||
Cu | ×109 | 0.232 | 0.494 | 1.13*5 | 1.62*5 | 0.240 | 0.689 |
Pb | ×106 | 181 | 127*6 | 161*7 | 288 | ||
Zn | ×106 | 232 | 162*6 | 163*7 | 325 | ||
Sn | ×106 | 10.0 | 27.0 | 37.0 | |||
Sb | ×106 | 4.36*6 | 0.81*7 | 5.17 | |||
Au | ×103 | 90 | 32.3 | 29.0 | 61.3 | ||
Ag | ×103 | 253 | 517 | 770 | |||
Pt族 | ×103 | 36.7 | 63.3 | 100 | |||
Al*8 | ×109 | 4.72 | 3.31*5 | 8.03*5 | |||
P*4 | ×109 | 34.5 | 95 | 130 | |||
K | ×109 | 7.6 | 112 | 120 | |||
S | ×109 | 1.77 | 4.67 | 6.44 | |||
工業用ダイアモンド*4 | ×100 | 136 | |||||
石綿*4 | ×106 | 142 | 105 | 247 | |||
石墨*4 | ×106 | 27.1 | 127 | 154 | |||
カイアナイト類*4 | ×106 | 136 | 317 | 453 | |||
カオリン*4 | ×109 | 11.1 | |||||
耐火粘土*4 | ×109 | 68.9 | |||||
滑石類*4 | ×109 | 0.30 | 1.2 | 1.5 | |||
*1:USBM(1981) Mineral Facts and Problems、*2:Aacher,A.A.(1979)、*3:回収可能量、*4:鉱石量、*5:潜在鉱物資源量を含む、*6:確認埋蔵鉱量のみ、*7:予測埋蔵鉱量+一部の既知経済限界下および潜在鉱物資源量、*8:ボーキサイト鉱床のみ |
表X-6 世界自由経済圏(含ユーゴスラビア)の銅の埋蔵鉱量(×106t Cu;1979) | |||||
A (251) |
B (49) |
C (516) |
計 (816) |
% | |
ヨーロッパ 鉱石量 品位 |
4.84 0.67 |
3.27 0.46 |
0.82 0.54 |
8.93 0.56 |
2.01 |
北アメリカ |
56.41 0.70 |
9.73 0.77 |
86.75 0.56 |
152.89 0.62 |
34.43 |
ラテンアメリカ |
80.52 1.00 |
27.70 0.69 |
47.35 0.71 |
155.57 0.83 |
35.03 |
アフリカ |
52.31 2.54 |
0.99 1.37 |
12.16 1.75 |
65.46 2.38 |
14.74 |
アジア |
18.90 0.66 |
2.82 0.66 |
14.93 0.53 |
36.65 0.60 |
8.25 |
オセアニア |
8.27 0.90 |
0.30 1.40 |
16.02 0.61 |
24.59 0.69 |
5.54 |
|
221.25 0.98 |
44.81 0.69 |
178.03 0.62 |
444.09 0.77 |
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A−現在稼行中の鉱山、B−開発年度のほぼ確定している鉱床および一時休山していたが近い将来再開が確実視されている鉱山、C−探鉱中または探鉱は終了したが未開発の鉱床(鈴木昌也ほか、1980) |
表X-7 深海底マンガン団塊鉱床の鉱物資源量 | ||
予測埋蔵鉱量 | 資源量 | |
仮定採掘限界品位(%、Ni+Cu) | 1.76 | 0.88 |
平均品位(%、Ni+Cu) | 2.29 | 1.57 |
仮定最低存在量(wet、kg/m2) | 5 | 2.5 |
仮定平均粒径(cm)* | 3.68 | 3.68 |
平均存在量(wet、kg/m2) | 15 | 13.5 |
上記品位・存在量を持つ地域の面積(×106km2) | 2.2 | 18.5 |
総団塊量(wet、×109 t) | 33 | 250 |
同上(dry、×109 t) | 23 | 175 |
仮定ニッケル品位(%) | 1.26 | 0.86 |
含ニッケル量(×106 t) | 290 | 1,500 |
仮定銅品位(%) | 1.03 | 0.71 |
含銅量(×106 t) | 240 | 1,240 |
仮定コバルト品位(%) | 0.25 | ? |
含コバルト量(×106 t) | 60 | ? |
仮定マンガン品位(%) | 27.5 | ? |
含マンガン量(×9 t) | 6 | ? |
平均粒径がこれより小さいと鉱量が減る。例えば2.54cm(1インチ)になるとほぼ30%減少(Archer,A.A.,1979) |
表X-8 紅海海底Atlantis U Deepでの閃亜鉛鉱鉱床の鉱物資源量 | ||||
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(×107m3) |
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(×103gr/m3) |
(×105t) |
T | 36.39 | 1.56 |
Zn−4.99 Cu−0.936 |
Zn−19.9 Cu−3.75 |
U | 18.95 | 1.58 |
Zn−2.05 Cu−0.79 |
Zn−4.28 Cu−1.54 |
V | 28.67 | 1.67 |
Zn−2.51 Cu−0.835 |
Zn−32.2 Cu−8.05 |
Total | 84.01 | 1.60 |
Zn−3.48 Cu−0.869 |
Zn−32.2 Cu−8.05 Pb−0.8 Au−45t Ag−4.5×103t |
(Hackett,J.P.,Jr. & Bischoff,J.L., 1973) |
表X-9 カナダINCO社のニッケル鉱石年生産量と埋蔵鉱量の変遷 | ||||
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×106t |
×106t |
年生産量比 |
×106t |
1954 | 13.2 | 237 | 18 | − |
59 | 13.9 | 240 | 17 | |
65 | 17.9 | 276 | 15 | 17.9 |
66 | 15.9 | 276 | 17 | 34.9 |
67 | 18.5 | 295 | 16 | 48.5 |
68 | 22.6 | 325 | 15 | 33.6 |
69 | 17.1 | 336 | 20 | 26.1 |
70 | 25.7 | 345 | 13 | 28.7 |
71 | 25.0 | 348 | 14 | 28.0 |
72 | 17.4 | 351 | 20 | 19.4 |
73 | 17.9 | 353 | 20 | 26.9 |
74 | 362 | |||
1964年度以降はSudburyおよびManitoba両地域の諸鉱山のすべてを含む。年発見量は年生産量と埋蔵鉱量の値より計算。(McAlister,A.L., 1976) |
4. 鉱化度
(1) McKelveyの経験式 私たちが将来とも利用し得る鉱物資源の総量は、いったいどのくらい地殻内あるいはその表層部にあるものなのだろうか。この量については、これまでに何人もの研究者が見積りを行っている。その中で比較的最近になって発表された値は、例えばErickson(1973)やSkinner(1976)の値のように一部を除いて多くの鉱種については少なくとも桁数では一致していて、その間に大きな隔たりは無い(後掲表X-12参照:略)。このような事情となった一つの理由として、次の事が挙げられよう。
アメリカ合州国地質調査所長を勤めた事のあるMcKelveyは、1960年に極めて注目すべき内容の論文を発表した。彼によると、アメリカ合州国で当時知られていた各鉱種の埋蔵鉱量(ショート・トン、r)と各元素の地殻存在度(%、A)とを比較してみると、その間にはある一定の規則性が認められて、両者の間には、
r=A×10n (n=6〜11、元素の種類により異なる)
という関係が成り立つという経験式が得られた。そしてこの関係を基とし、またアメリカ合州国の国土面積と全世界の陸地面積(ただし極地方を除く)との比較から各鉱種の世界埋蔵鉱量R(ショート・トン)は、
R=17.3×A×109〜10
で与えられると結論した。McKelveyが経験的に見出したこのR∝Aという関係は、地球科学の立場から見て極めて興味深いものと言ってよいだろう。前に触れたEricksonやSkinnerの得た値は、いずれもこのMcKelveyの経験式での係数や桁数に対して、より新らしい資料を使って考えなおし再計算したものである。
ところで、上の関係を地球科学の立場からより正しい意味のあるものとするためには、次の点を考える必要があるように思われる。それは、ここに取り上げられた埋蔵鉱量の値は鉱業的な量だという事である。従ってこの値は、各元素の自然的特徴であるそれらの地殻存在度にももちろん何らかの関係を持っているのに違いないが、同時に技術的・経済的などの人為的条件にも大きく関係している筈のものである。そこで、元素の地殻存在度と鉱床に関する何らかの量とが互いに関係しているとするのならば、鉱業的な量に対してではなくて、まず自然の地質学的な量である鉱床量に対して成り立つと考える方が良いと思われる。
(2) 鉱化度 ここでは上の事を考えに入れて、これから述べる鉱化度という考え方に立って、もう一度McKelveyの経験式を考えなおしてみる事としよう(立見辰雄、1979)。
先に、鉱床とはある特定の鉱物種または化学成分が、普通の岩石の示す変化の範囲を超えて、特に多量に濃集しているような特殊な岩石だと述べた。ここではまずある限られた地域(例えば日本列島・北アメリカ大陸とかあるいは広い面積を占めるある一国の国土とかどれでもよい)を作る地殻部分について、ある元素がどのように分布しているのかを一般的に考えてみよう。この元素は、ここに考える地殻部分を作る多種の岩石中に、種々の鉱物の主成分としてあるいはその中の微量成分としてなどいろいろな形で、少量ずつ広く分散して存在しているだろうし、またその一部は、この元素(現実にはそれを多く含む鉱物)の鉱床を作って局部的に濃集もしているだろう。今この元素iのこの地殻部分に存在している全量をti(トン)とし、そのうちで鉱床となって濃集している分をri(トン)とした時、ri/tiの比をこの元素のこの地殻部分での鉱化度と呼ぶ事とする。別な言い方をすれば、今考えている地殻部分はこの元素に関してどのくらいの強さで鉱化されているかの度合いをこの比の値が示すという事になる。
上の事をより一般化して表わせば、次のようになる。ある与えられた質量m(トン)を持つ地殻部分についてのある元素i(その大陸地殻存在度をAi(ppm)とする)の鉱化度mfiは、この地殻部分に存在する元素iの全量をti(トン)とし、そのうち鉱床となって濃集している分をri(トン)とすれば mfi=ri/ti で表わされる。今ここで、ここに考える地殻部分がある程度以上に大きくて、そこを作る多種岩石中の分散して存在している元素iのこの地殻部分全体を通じての平均的な存在度は、この元素の大陸地殻存在度の値で代表され得ると考えられるような場合に限るとすれば、
ti=m(トン)・Ai(ppm)・10-6(トン)
なので、従ってこの場合の鉱化度は次式で与えられる。
mfi=ri/m・Ai・10-6
(3) 地域別鉱化度
a) 一つの具体例 南アメリカ大陸太平洋岸アンデス山脈地域は、そこでの地質環境の特質上、銅の鉱化作用の強さという点では、世界的に優れた地域の一つに算えられている。この地域には、これまでに多くのしかも大規模な銅鉱床が発見・稼行されており、現にチリ・ペルーの2ヶ国は世界でも有数の銅鉱石産出国である。1978年度での全世界銅鉱石生産量(鉱石中含銅量)のおよそ20%はこの2ヶ国で占められた。また、全世界(ユーゴスラビアを含み、他の共産圏諸国を除く)の銅埋蔵鉱量(鉱石中含銅量、1979)中でラテンアメリカ諸国の占める割合いは、実に35%を超えると、見積られており(鈴木昌也ほか、1980)、その大部分はこのアンデス山脈地域に在る銅鉱床によっている。
この地域に知られる各種の銅鉱床の中では、斑岩銅鉱床と呼ばれる型式のものが、一つ一つの鉱床の規模も大きくかつ発見された鉱床の数も多い。北はコロンビアから南はチリ中央部に到るまでのこの地域の斑岩銅鉱床については、探査も比較的に良く進んでいて、1978年にHollisterが発表した資料によると、この地域の主な斑岩銅鉱床全体の埋蔵鉱量(鉱石中含銅量)は約1.7億トンと見積られている。この地域にはもちろん他の型式の銅鉱床もたくさん知られているが、それらの規模は斑岩銅鉱床のそれにくらべれば一般には小さいので、この値をこの地域でのすべての既知有用銅鉱床中に濃集している銅の総量と見なしても、第1近似としてはそれほど大きな誤りは無いと考えてもよいだろう。もちろん、この地域の真の銅の鉱化度を知るためには、既知・潜在あるいは有用・経済限界下のいずれをも問わず、この地域に存在しまたは存在するであろう各種の銅鉱床すべての中の含銅量を考え、さらにそれらの既採掘量をも併せ考えなければならないのだが、それらに関する具体的資料を得る事はむずかしいので、今は取りあえずこの値を基に考えるよりほかに方法がない。
一方、ここで考えるある限られた範囲の地殻をどのくらいに考えたら良いのかは、本来ならば南アメリカ大陸太平洋岸アンデス山脈地域の地質環境や地質構造を具体的に調べ上げた上で、この問題を考えるのに適当と考えられる範囲を決める必要がある。しかしここではごくおおまかに考えて、南北4,500キロメートル・東西200キロメートル・深さ5キロメートル(表面積は9×10^5平方キロメートル、日本の2.5倍弱)の範囲の地殻部分を考える事としよう。この地殻部分内にはもちろん極めて多種の地層・岩体が分布し、複雑な地質構造を作って重なり合っている。またそれぞれの岩石種ごとにその平均含銅量も幅広く変っている。しかし、この程度の大きさの地殻部分を1単位として考えるとすれば、この地殻部分全体を通じての銅の平均存在度としてその大陸地殻存在度の値55ppmをとっても、少なくとも第1近似としては、許されよう。このように考え、かつこの地殻部分の平均比重を2.7として試算すれば、この地殻部分内に存在する銅の全量は6.7×1011トンとなる。
ここで、この地殻部分内で鉱床を作って濃集している銅量として先の1.7×108トンを考えれば、ここでの銅の鉱化度はr/t=2.5×10-4となる。今ここに1例として考えて来た南アメリカ大陸太平洋岸アンデス山脈地域の大陸地殻上部(深さ5キロメートル)では、すでに述べたようにこの地域が世界でも有数の銅鉱石産出地域または銅の埋蔵鉱量も極めて大きい地域、すなわち銅の鉱化作用の強い地域と考えられるのにもかかわらず、そこに存在する全銅量のうち僅か0.025%に相当する分しか鉱床を作って濃集していないという事になる。鉱床というものが如何に特殊な岩石であるかは、この事からも判って頂けるだろう。もちろん、これまでに注意して来た多くの事から考えれば、ここに得たこの地殻部分での銅の鉱化度としての2.5×10-4という値は、決して真の鉱化度の値ではなく、いわば現在試算し得る範囲内での最小値であるのにすぎない。
b) 世界各地域での個別的鉱化度 最近世界各国の国別または地域別の各種鉱物資源の埋蔵鉱量あるいは一部では他の鉱物資源量の値が発表されて来ており、いくつかの国または地域ごとの個別的な鉱化度を試算出来るようになった。その結果を表X-10として示す。これらはいずれも、深さ5キロメートルまでの大陸地殻上部を考え、そこでの平均の比重を2.7と仮定して試算してある。実は本来ならまず最初には、国別という人為的な囲いではなくて、地殻の長い歴史の特徴をそれぞれに反映している特定の地質構造区あるいは鉱床区などと言った地質学的な構造区分ごとに、それぞれの鉱化度を試算したいのだが、それに適した基礎資料は極めて少ないので、ここでは主に国別で行うのも現状では止むを得ない。この意を少しでも表わそうと思って、表X-10に載っている各国別の鉱化度は、若い構造帯(日本・メキシコ)・多くの異った地質環境を含む大陸(北アメリカ・オーストラリア・カナダ)・先カンブリア時代楯状地(カナダ・南ア共和国内のそれぞれ一部地域)と大分無理して分けてある。ただし先カンブリア時代楯状地に関するものは、原資料ですでにその国の中でのこの地質構造区に属する地域のみについての資料が発表されているものである。
表X-10 地域別鉱化度 | ||||||||||
地殻 存在度 (Mason, 1966) (ppm) |
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(アメリカ合州国+カナダ) |
オーストラリア*5 |
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カナダ*7 | 南ア共和国*8 | ||||
M=2.25×1019t n=0.2 |
3.7×105km2 5.0×1015t |
1.97×106km2 2.66×1016t |
1.9×107km2 2.6×1017t |
7.69×106km2 1.04×1017t |
9.98×106km2 1.35×1017t |
2.3×106km2 3.1×1016t |
1.22×106km2 1.65×1016t |
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既採掘量+ 埋蔵鉱量(80) |
既採掘量+ 埋蔵鉱量(60) |
確認埋蔵鉱量(78) |
埋蔵鉱量(80) A |
総鉱物資源量(80) B |
埋蔵鉱量(75) | 埋蔵鉱量(76) |
既採掘量+ 埋蔵鉱量(78) |
既採掘量+ 総鉱物資源量(80) |
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Fe | 50,000 | 2.7×10-7 | 1.3×10-7 | 1.1×10-5 | 3.4×10-5 | 3.4×10-6 | 3.2×10-6 | |||
Mn | 950 | 7.1×10-7 | 1.3×10-6 | 3.6×10-6 | 5.0×10-6 | 2.4×10-4 | ||||
Cr | 100 | 1.1×10-6 | 2.8×10-4 | |||||||
Ni | 75 | 2.5×10-7 | 4.6×10-6 | 1.9×10-5 | 2.4×10-7 | 7.9×10-7 | 6.6×10-6 | 1.9×10-5 | ||
Co | 25 | 1.6×10-7 | 4.6×10-8 | 1.6×10-6 | 1.5×10-8 | |||||
W | 1.5 | 2.6×10-6 | 1.0×10-5 | 2.7×10-5 | 3.9×10-7 | |||||
Mo | 1.5 | 1.0×10-6 | 1.4×10-4 | 2.6×10-4 | 6.7×10-6 | |||||
Ti | 4,400 | 5.2×10-7 | 1.5×10-6 | |||||||
Cu | 55 | 2.9×10-6 | 2.3×10-5 | 1.5×10-5 | 8.7×10-5 | 3.6×10-4 | 1.0×10-6 | 3.7×10-6 | 1.2×10-5 | 2.8×10-5 |
Pb | 13 | 5.4×10-6 | 2.0×10-5 | 1.4×10-5 | 1.2×10-4 | 3.1×10-4 | 1.0×10-5 | 8.5×10-6 | 3.1×10-5 | |
Zn | 70 | 1.3×10-6 | 3.0×10-5 | 1.6×10-6 | 2.5×10-5 | 7.0×10-5 | 2.7×10-6 | 4.6×10-6 | 9.6×10-6 | 1.4×10-5 |
Sn | 2 | 5.9×10-6 | 1.3×10-6 | 7.7×10-6 | 1.6×10-6 | |||||
Sb | 0.2 | 7.0×10-5 | 3.3×10-5 | 3.8×10-5 | 3.8×10-6 | 2.1×10-4 | ||||
Mg | 0.08 | 1.7×10-5 | 7.8×10-6 | 1.9×10-5 | ||||||
Au | 0.004 | 6.8×10-6 | 3.1×10-5 | 1.7×10-5 | 9.1×10-5 | 3.8×10-7 | 4.5×10-6 | 3.4×10-4 | 7.8×10-4 | |
Ag | 0.07 | 3.4×10-5 | 1.3×10-5 | 5.3×10-5 | 1.5×10-4 | 3.3×10-6 | 1.6×10-5 | 1.0×10-5 | 6.6×10-6 | |
Pt gr | 0.01 | 1.1×10-6 | 3.0×10-6 | 3.8×10-4 | ||||||
U | 1.8 | 3.9×10-7 | 2.1×10-6 | 9.2×10-7 | 1.3×10-6 | 1.4×10-6 | 1.2×10-5 | 1.8×10-5 | ||
Al | 81,300 | 4.7×10-9 | 2.4×10-8 | 3.5×10-7 | ||||||
計算の基礎とした各種鉱物資源量に関する資料はそれぞれつぎによる−*1:別表X-4、*2:関根(1962)、*3:EIR(1980)、*4:USBM(1981)、 *5:Aust.B.M.R., Miner.Res.Sect.(1975)、*6:McKintosh,J.A. & Crauston,D.A.(1977)、*7:Derry,D.R.(1980)、*8:Van Biljon,W.J.(1980) |
表X-11 古くから使われて来た金属元素の大陸地殻上部での鉱化度 | |||||
鉱種 |
−1979、×108 t |
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1980、×108 t*2 | 鉱化度 | 1980、×108 t | 鉱化度 | ||
Cu | 2.32 | 4.94 | 2.0×10-6 | 7.26 | 2.9×10-6 |
Pb | 1.81 | 1.27 | 2.2×10-6 | 3.08 | 5.3×10-6 |
Zn | 2.32 | 1.62 | 5.1×10-7 | 3.94 | 1.3×10-6 |
Au | 9.0×104 | 3.23×104 | 1.8×10-6 | 1.22×105 | 6.8×10-6 |
Ni | 0.12*3 | 0.73*3 | 2.2×10-7 | 0.85 | 2.5×10-7 |
U | 0.57 | 2.59×106 | 3.2×10-7 | 3.16×106 | 3.9×10-7 |
*1 表X-4、*2 USBM,1981、*3 Riss,J.R. & Travis,G.A.,1981、この試算では大陸地殻上部に対して、M=2.25×1019 t、n=0.2をとってある。 |
5. 総鉱床量の見積り
(1) 大陸地殻上部 ここで、鉱化度とは何であったかをもう一度思い出して頂こう。鉱化度(mfi)とはある限られた地殻部分(質量mトン)中に存在するある元素i(その大陸地殻存在はAi ppm)の全量をtiトン、そのうち鉱床となって濃集している分をriトンとした時、mfi=ri/ti で与えられるものである。今ある程度以上の大きさを持つ地殻部分を対象として考え、第1近似としては ti=m・Ai・10-6(トン)が成り立つような場合には mfi=ri/m・Ai・10-6 となる。これを変形すれば、
ri=m・Ai・10-6・mfi (トン)
が得られる。
次にこれを大陸地殻上部全体にまで押し進めて考える事にしよう。大陸地殻全体の質量をMトン、そのうち大陸地殻上部の占める範囲(実際には、将来とも固態鉱物資源の採掘の及び得ると期待される範囲)の大陸地殻全体に対する割合いをn%、大陸地殻上部を通じての各元素に共通した平均の鉱化度をMF、各元素iの大陸地殻存在度をAi(ppm)とし、ある元素iが大陸地殻上部で鉱床を作って濃集している分の総量(その元素の大陸地殻上部での総鉱床量)をRiトンとすれば、前式から、
Ri(トン)=M(トン)・0.n・Ai(ppm)・10-6・MF
となる。ここで、
M=22.5×1018トン、MF=10-4または10-5、
n=0.2または0.3(大陸地殻の平均の厚さを仮に平均35キロメートルとすれば、地表からの深さで7-10キロメートル前後までの範囲)
として計算すれば、次の4式を得る。
A. Ri=6.8Ai×108 (トン)(〔MF〕=10-4、n=0.3)
B. Ri=4.5Ai×108 (トン)(〔MF〕=10-4、n=0.2)
C. Ri=6.8Ai×107 (トン)(〔MF〕=10-5、n=0.3)
D. Ri=4.5Ai×107 (トン)(〔MF〕=10-5、n=0.2)
例えば銅についてACu=55ppmとして試算すれば、
RCu=3.7×1010、2.5×1010、3.7×109、2.5×109 (トン)
を得る。これは、大陸地殻上部(地表からの深さ7-10キロメートルまでの範囲)での銅の総鉱床量(目的成分含有量)は、きつく見積って約25億トン、ごく緩く見積ればおよそ370億トン前後ありそうだという事を意味している。しかし、これでは見積り値とは言えあまりにも大きな幅がありすぎて、このような試算にどれだけの意味があるのかと疑問に思われる人も多いかも知れない。もちろんこれらの値は、現在私たちが持っている地球や岩石・鉱床などについての基礎知識を基にし、それに多くの仮定を置いた上で試算した値であって、まだまだ不正確な点の多いものである事に間違いはない。しかし現在の知識を基にしての一つの具体的な解答ではある。今後の問題は、このような事を考えかつそれを具体的に試算するのに必要な地球科学上の基礎研究を進めると共に、必要な基礎数値資料をより精しくかつ正確に求め、また仮定事項の内容をさらに十分吟味しなおして、より真に近い値を求め得るよう努力する事にあろう。
表X-12 大陸地殻上部での総鉱床量および鉱物資源量の見積り | ||||||||||||
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(ppm) |
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(1979) |
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D | F*3 | E*4 | S*5 | 既採掘量(〜'79)(A) | 埋蔵鉱量 | その他 | 計(B) | A+B | |||
Fe | 50,000 | 3.4×1013 | 2.3×1012 | 1.3×1011 | 2.0×1012 | − | 9.34×1010 | 1.04×1011 | 1.97×1011 | |||
Mn | 950 | 6.5×1011 | 4.3×1010 | 5×108 | 4.2×1010 | − | 1.36×109 | 1.45×109 | 2.81×109 | 6.0×109 | ||
Cr | 100 | 6.8×1010 | 4.5×109 | 7×108 | 3.3×109 | − | 3.36×109 | 2.93×1010 | 3.27×1010 | |||
Ni | 75 | 5.1×1010 | 3.4×109 | 5×107 | 2.6×109 | 1.2×109 | 1.16×107 | 6.00×107 | 1.68×108 | 2.28×108 | 2.40×108 | 2.9×108 |
Co | 25 | 1.7×1010 | 1.1×108 | 3×106 | 7.6×108 | − | 2.40×106 | 3.04×106 | 5.44×106 | 6.0×107 | ||
Mo | 1.5 | 1.0×109 | 6.8×107 | 4×106 | 4.7×107 | 2.0×107 | 9.48×106 | 1.14×107 | 2.09×107 | |||
W | 1.5 | 1.0×109 | 6.8×109 | 1×106 | 5.1×107 | 1.7×107 | 2.59×106 | 4.17×106 | 6.76×106 | |||
Ti | 4,000 | 3.0×1012 | 2.0×1011 | − | 2.3×1011 | − | 2.73×108 | 4.24×108 | 6.97×108 | |||
Nb | 20 | 1.4×1010 | 9.0×108 | − | − | 3.4×108 | 4.08×106 | 1.31×107 | 1.72×107 | |||
Be | 2.8 | 1.9×109 | 1.3×108 | − | 6.4×107 | − | 3.80×105 | 7.3×105 | 1.1×106 | |||
Cu | 55 | 3.7×1010 | 2.5×109 | 2.5×108 | 2.1×109 | 1.0×109 | 2.32×108 | 4.94×108 | 1.13×109 | 1.63×109 | 1.86×109 | 2.4×108 |
Pb | 13 | 8.8×109 | 5.9×108 | 1.5×108 | 5.5×108 | 1.7×108 | 1.88×108 | 1.27×108 | 1.61×108 | 2.88×108 | 4.76×108 | |
Zn | 70 | 4.8×1010 | 3.2×109 | 2.5×108 | 3.4×109 | − | 2.33×108 | 1.62×108 | 1.63×108 | 3.25×108 | 5.58×108 | 3.2×106 |
Sn | 2 | 1.4×109 | 9.0×107 | 7×106 | 6.8×107 | 2.5×107 | 1.00×107 | 2.70×107 | 3.70×107 | |||
Sb | 0.2 | 1.4×108 | 9.0×106 | − | 1.9×107 | − | 4.36×106 | 8.1×105 | 5.17×106 | |||
Ga | 15 | 1.0×1010 | 6.8×108 | − | − | − | 1.10×105 | 5.5×104 | 1.65×105 | |||
Au | 0.004 | 2.7×106 | 1.8×105 | 3×104 | 1.5×105 | 3.4×104 | 9.0×104 | 3.23×104 | 2.90×104 | 6.13×104 | 1.51×105 | |
Ag | 0.07 | 4.8×107 | 3.2×106 | − | 2.8×106 | 1.3×106 | 2.53×105 | 5.17×105 | 7.70×105 | 4.5×103 | ||
Pt | 0.01 | 6.8×106 | 4.5×105 | − | 1.2×106 | 8.4×104 | 3.67×104 | 6.33×104 | 1.00×105 | |||
U*8 | 1.8 | 1.2×109 | 8.1×107 | 1×106 | 9.3×107 | 2.7×107 | 4.7×105 | 1.75×106 | 3.27×106 | 5.02×106 | ||
Al | 81,300 | 5.5×1013 | 3.7×1012 | 2×109 | 3.5×1012 | − | 4.72×109 | 3.31×109 | 8.03×109 | |||
Mg | 20,900 | 1.4×1013 | 9.4×1011 | − | − | − | 2.79×109 | 9.5×108 | 3.74×109 | |||
P | 1,050 | 7.1×1011 | 4.7×1010 | 7×109 | 5.1×1010 | − | 3.45×1010 | 9.5×1010 | 1.30×1011 | |||
K | 25,900 | 1.8×1013 | 1.2×1012 | 4.3×1010 | − | − | 7.55×109 | 1.12×1011 | 1.20×1011 | |||
(数値は鉱床・鉱石中の目的成分含有量、ただしクロム・燐は鉱石量。) *1:Mason,B.(1966)、*2:立見(1979)を改定、*3:Friedensburg,F.(1957)“予想開発鉱量”、地表より3km以浅、*4:Erickson,R.L.(1973)“回収可能資源量”、4.2A(ppm)×107(t)、*5:Skinner,B.J.(1976)深さ10kmまでの大陸地殻中の全金属量の0.01%が採鉱・選鉱可能な鉱物中に存在と仮定、*6:USBM(1981)その他の大部分は既知鉱物資源量、一部に潜在鉱物資源量を含む、*7:マンガン・ニッケル・コバルト・銅はArcher,A.A.(1979)亜鉛・銀はHackett,j.P.,Jr.& Bischoff,J.L.(1973)、*8:鉱物資源量はOECD/IAEA−NEA(1981)、共産圏を除く。 |
6. 総鉱物資源量の見積り
(1) 総鉱床量のうちどれだけが鉱物資源として利用し得るか これまでは、ある特定の鉱物種または化学成分の鉱床について、大陸地殻上部に存在するであろうすべての鉱床中に、それらがどのくらいの量濃集しているのか、すなわち総鉱床量を見積ってみた。しかし、この量のすべてが直ちに将来とも実際に利用可能な鉱物資源量と考えてよいのかどうかは、改めて十分に考えてみる必要がある。
天然に産する鉱床を実際に探査・開発・利用するためには、私たちはこれに多くの技術的・経済的その他の働きかけを行う必要がある。しかも、現在または近い将来の事だけではなくて、将来何10年もあるいはそれ以上もの長い先にはどこまで働きかけ得るようになるのだろうかとの見透しも立てなければならない。例えば、
i) 将来とも地表面下・海面下または海底面下何キロメートルの深さのところまで鉱床探査を具体的に行い、かつ評価に必要な資料・試料を得る事が出来るようになるのだろうか。(探査・評価)
ii) 将来とも地表面下・海面下または海底面下何キロメートルの深さのところまで固態鉱物資源の採掘を実際に行えるようになるのだろうか。(採掘)
iii) 将来とも採掘限界品位や粗鉱平均品位などをどの程度まで下げ得るようになるのだろうか。(採鉱・選鉱)
iv) 将来とも製錬給鉱品位はどの程度にまで下げ得るようになるのだろうか。また製錬可能な鉱物の種類を現在以上にどれだけ増す事が出来るようになるのだろうか。(製錬)
v) 鉱業諸工程での実収率を将来ともどの程度にまで上げ得るのだろうか。
vi) 鉱業諸工程で必要なエネルギー量を将来ともどの程度にまで下げ得るのだろうか。またこれに必要なエネルギーを望む時に何時までも十分に確保出来るのだろうか。
vii) 将来の鉱産物の需要量や価格に関連して、将来の社会生活・産業活動の構造あるいは人口増加などはどのように変化するのだろうか。
viii) 鉱業諸工程に伴う廃棄物処理はどのようにしたらよいのか。
などの諸問題の見透し如何によって、将来とも利用可能となるべき鉱物資源量の見積り値は大きな影響を受ける。もちろん、私たちはこれらの点についての調査・開発にこれまで大きな努力を払い続けて来たし、また将来も続けるだろう。それで、少なくとも抽象的に言えば、まだここ暫くの間は、まだまだより深いところまで、またより低品位の鉱床をも、探査・開発・利用出来るだろう事に間違いはない。しかし一方で、種々の理由からこれらが無制限に続き得るものとも考え難い。
上に挙げた諸条件のすべてについてここに具体的な見透しを立てる事は、明らかに筆者の能力を遙かに越えている。従って、この項のまとめとして今言える事は、少なくとも鉱床を唯一の源として考えるような鉱物資源に対しては、これまでに考えて来た総鉱床量の値は、考え得る総鉱物資源量の最高値、どんなに努力しても超える事の出来ない自然的な制限という事に止る。
(2) 鉱物学的障壁 上に挙げた多くの問題点の中で鉱業に必要なエネルギーに関連しては、すでに第4章の一部で少しだが触れておいた。ここには鉱物的な問題点を少し考えてみる事にしよう。
鉱物中のある特定成分を抽出・利用する場合に現在利用されている鉱物の種類はたくさんあるが、その大部分は比較的に言って化学的に分解し易い酸化鉱物・硫化鉱物・炭酸塩鉱物などの種類のものである。これに対して、珪酸塩鉱物・含水珪酸塩鉱物の中で現在よく利用されているものは、テフロ石(Mn2SiO4−Mn)・ベルトランダイト(Be4Si2O7(OH)2−Be)・緑柱石(Be3Al2Si2O8−Be)・コフィン石(U(SiO4)1-x(OH)4x−U)・霞石(NaAlAiO4−Al)・リシア輝石(LiAlSi2O6−Li)・リシア雲母(K(Li,Al)SiO4(OH)2−Li)などのごく限られた種類のものにしかすぎない。これは、珪酸塩鉱物の方が一般的に言って化学的に分解し難い、言いかえるとそれに必要なエネルギー量が大きいからに外ならない。
ところで銅のような場合には、周知のように現在最も利用されている鉱物は黄銅鉱(CuFeS2)である。この鉱物は、種々の型式の銅鉱床を作って濃集していると同時に、各種の普通の岩石、特に火成岩類、中にもごく少量ながら広く分散して産出している。例えば、ごく普通の花崗岩類を顕微鏡下に観察すると、1−2平方センチメートル程度の面積の中に少数ではあるが黄銅鉱の微粒を見出す事は決してむずかしくはない。従って少なくとも原理的には、このような産状の黄銅鉱も在来の手法により選鉱して人為的に再濃集させる事は不可能ではない。しかし、経済的な点を考えに入れれば、無論現実的にはこれは無理である。ここで問題はもう一つ別な点にもある。それは、普通の岩石中の銅分は、このように銅の硫化鉱物の微粒として散点する分のほかに、この岩石を作る他種の鉱物、特に量の多い普通の造岩鉱物である珪酸塩鉱物、の結晶構造中にその微量成分として含まれている分もあるという事である。場合によっては量的には後者の分の方が多い事すらある。このように岩石・鉱床中での銅の存在状態(産状)には上の2種があって、利用という観点からするとこれらの間には大きな差がある。後者の場合には、選鉱という在来の手法ではその人為的濃集に著るしい制限があり、また母鉱物の分解には多大のエネルギーを必要とする。
そこで仮に将来、それまで利用して来た銅の有用鉱床がまったく無くなってしまえば、次善の策として後者のような産状の銅分を回収・利用せざるを得ない事になるが、それには必要エネルギーその他の問題から実際上は極めて困難と考えざるを得ない。Skinnerはこの事を鉱物資源利用の場合の鉱物学的障壁と呼んだ(Skinner,B.J., 1976)。彼によれば、多くの非鉄金属(彼の言う地球化学的に乏しい金属)がその好例をなす。この関係を示したのが図X-7である。
図X-7 鉱物学的障壁(Skinner,B.J., 1976)
T−地球化学的に乏しい金属。
U−地球化学的に豊富な金属。
A−硫化物中に主成分として存在している場合。
B−他種鉱物中の結晶構造中に微量成分として存在している場合。
C−鉱物学的障壁。(別ウィンドウに拡大)
(3) 通常の岩石の利用 これまでは、ある特定鉱物種または化学成分の鉱物資源はすべてそれらの鉱床を源として考える事を前提としていた。しかし実際には仮に金属鉱物資源を例としてすら、その源は鉱床だけに限られずに、普通の岩石を利用している場合が無いわけではない。例えば、金属アルミニウムを得る源は、世界のほとんどの国ではいずれもボーキサイト鉱床のみである。しかし先に述べたように、ソ連邦ではもう随分以前からその源の一つとして、霞石閃長岩という火成岩の1種の主要構成鉱物である霞石(NaAlSiO4、Al−19.0%)を利用している。また、アノーソサイトと呼ばれる火成岩の主要構成鉱物であるアノーサイト(斜長石の1種CaAl2Si2O8、Al−19.4%)を原料として金属アルミニウムを得ようとする試みが、例えばカナダなどで最近精力的に研究されている。これら霞石閃長岩とかアノーソサイトとかいう岩石は、巨大な岩体として世界各地にその存在が知られており、それらの世界全体での存在量も相当大きい。このほか、アルミニウム分に富むある種の粘土鉱物より成る礬土頁岩(写真X-1,2)のような粘土質堆積岩も、将来のアルミニウム鉱物資源の一つとして名が挙げられている。実際に世界第2次対戦中、日本は中国東北地方の在る礬土頁岩から金属アルミニウムを作っていた。
写真X-1 中国河南省焦作の“礬土頁岩”鉱床。
現在でもアルミニウム資源として稼行し、Alの他、Ga、Y、Nbなどを回収している。(別ウィンドウに拡大)
写真X-2 鉱石にみられるウーライト組織を持つダイアスポア。
×80、単ニコル。(別ウィンドウに拡大)
このように、ある種の金属鉱物資源としてすら、単にそれらの鉱床のみならず、普通の岩石の中にも、問題とする元素を主成分の一つとする鉱物に富むものの場合には、それらの鉱物資源として考え得るものも存在する。もちろんこれらは、ごく特別な例を除けば、現在のところ既知経済限界下鉱物資源量あるいは潜在鉱物資源量としてすら、まったく算え上げられていない場合が多い。しかし50-100年先の長い将来の事まで考えに入れるのならば、このような事も十分可能になる場合も増えて来ると思われるので、今からこの方面の基礎的研究や調査を積極的に手懸けておく事が必要だろう。
非金属または工業用原料鉱物資源の場合には、上の関係は金属鉱物資源の場合よりもずっと一般的である。セメント原料としての石灰岩や耐火物・金属マグネシウム原料としてのドロマイトなどのごく普通の炭酸塩岩類の利用は、その良い例をなしている。石材・骨材・砂利・砂もまったくこの好例である。
(4) 固体地球以外に在る鉱物資源 海洋水中に溶け込んでいる各種の成分は、もちろん鉱物ではないが、便宜上ここに取り上げておく事としよう。すでに古くから私たちは、太陽熱その他を利用して海洋水を蒸発・濃縮させ、最終的にはそこからの析出物を精製して塩化ナトリウム(食塩)などの海洋水中のある種の溶解成分を分離・利用してきた。現在いろいろな地質時代の地層の1種として見出されている岩塩層・加里塩層・石膏層などのいわゆる蒸発岩層は、大昔に同じ作用が自然界で大規模に行われて生じたものである。
一方、その溶存量は0.01-0.00001ミリグラム/リットル程度と極めて低いが、実に多くの成分が海洋水中に溶け込んでいる。海洋水全体の量は極めて莫大(1.4×1018トン)なので、その中に含まれているこれら微量成分の総量もまた結構大きな値を持っている。例えば、銅・ウランなどはいずれもほぼ30億トン前後、金は600万トン弱と計算されている。これらの値は、大陸地殻上部でのそれらの総鉱床量にくらべても、注目に値する大きさである。これら海洋水中の有用成分の抽出・利用は、古くから人々の関心を集め、また実際に試みられた事もある。しかし何分にもそれらの濃度がごく低いので、これらを海洋水中から大量に得ようとすると、それに必要な海洋水量も大きく、またその操作に必要なエネルギー量も莫大となる。仮に技術的困難が解決されたとしても、余程経済条件に恵まれないと、その実行は容易な事ではない。現在日本でも、海洋水中からウランを回収・利用しようとの技術的研究が大分前から続けられて来ており、その一次濃集には成功しているが、最終的な利用は経済的にはまだ前途は遠い。
陸地上の水、特に乾燥地帯での湖沼水・地下水に関しては、絶え間の無い蒸発作用の結果としてある種の成分に富むようになり、ありはその一部が析出・沈澱・堆積したりする事がしばしば起る。現世の塩湖水からの天然での析出または人為的な抽出などによる塩化ナトリウムやリチウム・硼素・カリウムなどの化合物の利用が各地で行われており、それらはいずれもすでに各種の鉱物資源量見積りの際の計算に組み入れられている。
地球外の、例えば月その他の天体から必要な鉱物資源を得る事は、考える事は容易であり、またロマンもあるが、本当にどこにどんなものがどれだけあるかなどの点を具体的に調べる事や、また実際にその調査・採掘・運搬などの技術的・経済的可能性の将来をはっきり見透す事は、現在のところでは極めてむずかしい。現在またはここ30−50年程度の比較的近い将来に私たちに与えられるであろう諸条件の下では、まず第1に考えるべき事は、やはり手近かの大陸および海洋地殻内の鉱物資源を如何に上手に探査・開発・利用するかを考え、固体地球内の鉱物資源の種類と量とをさらに大きくする為の努力に勤める事ではないだろうか。
(5) 再利用 資源の再利用が声高く叫ばれるようになったのはもう随分以前の事であった。なかでも屑鉄・屑鋼・屑銅などの再利用の歴史は到って古い。鉱物資源の有効利用という点では、これを補完するという事で再利用はもっと考えられて良い利点を十分持っている。それでは実際にはこれはどの程度にまで実行されているのだろうか。
ここには、金属鉱物資源の再利用の現実について具体的な資料を表X-13に示す。この度合いの大小は、種々の事情から金属の種類によって随分違っている。この表を一見すれば、例えば鉛・アンチモンのそれが他に比較して特に高い事がすぐ判るだろう。この表には載っていないが、鉄の場合もその再利用度は高い。これは、この種の金属の利用の仕方としてそれぞれの金属・合金を主体とした商品(例えば、鉄−鋼製品、鉛−蓄電池、アンチモン−活字、銅−銅製品など)の使用量が大きく、かつそれらの回収・選別もまた比較的に容易などの事情が関連している。しかも、これらの大部分は先進工業国自身の中で多く使われていて、言いかえれば自国内にあって、鉱石・精鉱などの海外からの輸入とは違って、それらの確保がより安定している便利さもある。
表X-13 金属鉱物資源再利用度 | ||||
1976 |
1978 |
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Cr | 7.8 | 10.2 | 9.4 | |
Ni | 24.7 | 19.6 | 22.8 | |
Co | 5.1 | 5.6 | 11.1 | |
W | 13.2 | 14.4 | 15.1 | |
Cu | 9.0 | 21.1 | 19.8 | 25.0 |
Pb | 25.7 | 45.6 | 33.4 | 41.7 |
Zn | 11.2 | 6.3*3 | 5.6*3 | 6.6*3 |
Sn | 25.0 | 10.7 | 10.8 | |
Sb | 58.6 | 50.9 | 47.5 | |
Hg | 7.3 | 6.8 | 8.8 | |
Au | 29.2 | 11.7 | 11.6 | |
Ag | 23.2 | 26.7 | 32.2 | |
Al | 8.5*3 | 6.0*3 | 9.5*3 | |
*1:小佐野一男(1978)、*2:USBM(1981)、*3:非金属としての使用分をも含む |
表X-14 再利用によってもたらされるエネルギー節約量 | ||||
エネルギー量(kcal/g) |
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(一次金属)比% |
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Fe | 3.7 | 1.4 | 37.8 | 2.3 |
Ti | 108.5 | 45.1 | 41.6 | 63.4 |
Cu | 11.6 | 1.5 | 12.9 | 10.1 |
Al | 44.2 | 1.7 | 3.8 | 42.5 |
Mg | 78.1 | 1.6 | 2.0 | 76.5 |
(Rome Club Rept. no.4, 1976) |