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『鉱物資源を考える』


鉱物資源を考える(2)

V どこから得ているか
 1. 地球の構成と元素の分布
 (1) 地殻
   約6,400キロメートルという巨大な半径を持つほぼ球状の固体地球は、その構造の点で中心から外側に向って、核・マントル・地殻の三つの部分に大きく分けられている。その最上部を成す地殻の表面には、河川水・湖沼水・海洋水・大陸氷などから成る水圏があり、さらにその上には大気より成る気圏が取り巻いている。われわれ人類を含む生物群は、気・水両圏と地殻最上部との接する部分に、その活動の場を持っている。これら各部分の容積・平均密度・質量などは、先人のこれまでの研究結果によっておおよその事が判っている。例えば質量の点では、地球全体(5.98×1021トン)に対して地殻の占める割合いはその僅か0.4%(24×1018トン)であり、水圏のそれは0.024%(1.4×1018にすぎない(Mason,B., 1966)
 鉱物・化石エネルギー資源を考える場合に最も関係の深い部分は、これらの中で地殻である。地殻は、その構造・構成物質あるいは生い立ちなどいろいろな性質の上で、大陸およびその海面下延長部を構成している大陸地殻(厚さ数ないし80キロメートル程度;質量22.5×1018トン)と、深海底を作る海洋地殻(厚さ数ないし10キロメートル程度;質量6.1×1018トン)とに、大きく二つに分けられる(これら両者の質量は合せて28.6×1018トンとなり、前述のMasonの与えた質量より20%近く大きい。後者の値はRonovとYazoshevsky(1969)による)。大陸地殻は極めて多くの種類の岩石が複雑な構造を作りながら集って出来ており、しかもおよそ40億年前後という長い歴史の中で絶えず変化し続けて来ているので、部分々々による性質の変化が極めて著るしい。従って、その全体像を正しく画き出す事は決して容易な事ではない。これに対して現在の海洋地殻は、前者にくらべればその構造はより簡単で、かつその歴史もおよそ2億年前後とずっと短い。
 (2) 岩石・鉱物   地殻を作る第1の単元は、例えば石灰岩層とか花崗岩貫入岩体あるいは玄武岩熔岩流などのように、空間的にある限られた拡がりを持つ特定の地層や岩体である。これらは互いに極めて複雑な関係(地質学的には整合・不整合・貫入・断層などの構造的諸関係)で接し合い重なり合っていて、地殻の各部分の構造や組成を著るしく複雑にする大きな原因となっている。
 個々の地層や岩体はそれぞれに特定のある限られた性質を持つ岩石から成っており、これら岩石が地殻を構成する第2の単元となっている。岩石の種類は数多く、普通その出来方の違いによって火成岩類・堆積岩類・変成岩類に3大別されており、それぞれがまた細かく分類・命名されている。岩石をもう一段細かな見方をすると、その大部分は何種類もの鉱物の集りである。例えば花崗岩は、主に石英・長石・雲母より成り、副成分として磁鉄鉱・燐灰石・ジルコンなどを含んでいる。一方、例えばある種の石灰岩のように、ほとんど1種の鉱物(石灰岩の場合には方解石)のみより成る岩石もある。しかしこのような場合でも、石灰岩という岩石が方解石という鉱物の集合体である事には変わりはない。ある岩石がどんな種類の鉱物から成りかつそれらの存在量の割合いがどれほどか(鉱物組成)あるいは全体としてどんな種類の化学成分から成りかつそれらの存在量の割合がどれほどか(化学組成)は、岩石の種類によって大きく変るが、それぞれの岩石種ごとでは、その変化の範囲にはおおよその限りがある。
 地殻を構成する第3の単元である鉱物もまた何1,000種類にも分類され、それぞれに名前がつけられている。これらに共通した特徴の一つは、化学的に見るとそのほとんどは化合物であって、単一の元素から成る鉱物(化合物に対して単体と呼ばれる。鉱物の種類としては純粋な自然金や自然銀など)の種類はごく少ない。言いかえると、一般に鉱物は何種類もの元素の集合体である。さらに複雑なことに、多くの鉱物の化学組成は、同じ種類のものでも厳密には一定しておらず、例えば主成分をとって考えてみても、その存在量の割合いがある限られた範囲ではあるが変化する。1例を挙げてみよう。閃亜鉛鉱という鉱物は、亜鉛の源として重要な鉱物である。これは基本的には亜鉛と硫黄との化合物(硫化鉱物)であって、理想的にはZnSという組成式で表わされる。しかし実際に天然に産する閃亜鉛鉱を採集して分析してみると、主成分として亜鉛と硫黄のほかに、鉄・マンガン・カドミウムなどの諸元素がそれぞれ少量(n-0.n%程度)副成分としてほとんど常に含まれており、その分亜鉛の含量が少なくなっている。特に鉄はほとんどの閃亜鉛鉱中に相当量含まれているので、閃亜鉛鉱の化学組成式は(Zn,Fe)Sと記す方が実際に合っている。また微量(数100-数ppm)に含まれている成分の数も多い。従って、一口に閃亜鉛鉱と言っても、その化学組成は産地・産状の違いによって随分変化に富んでいる(写真V-1)。

写真V-1 閃亜鉛鉱(ZnS)の縞状結晶。この場合の縞状構造は主に少量の鉄含有量変化により生じている。細倉鉱山昭光ひ(金偏に通)産。透過顕微鏡写真、単ニコル。(別ウィンドウに拡大

 鉱物中のある特定成分を抽出して利用しようとする観点からは、場合によってはその主成分のみならず、このように少量ないし微量に含まれている成分までが極めて重要となることがしばしば起る。実際にある種の金属は、それを主成分とする鉱物からではなくて、他種鉱物中に副成分ないし微量成分として含まれている分が、主成分抽出の際の諸工程での副産物として回収・利用されている。カドミウム(閃亜鉛鉱中の微量成分)・レニウム(輝水鉛鉱中の微量成分)やゲルマニウム(閃亜鉛鉱や石炭の微量成分)などはその良い例をなしている。
 上のように見て来ると、地殻の構成は極めて複雑で、それぞれの構成単元別に見れば、
 地殻→地層・岩体→岩石→鉱物→元素
の順に大きい単元から小さな単元へといくつかの段階が区別される。場合によっては、元素をさらにその同位体に分けて考える事も必要となる。地殻に関する何らかの性質を考える場合には、それをこの何れの段階の単元で考えるのかによって、議論の内容はいろいろに分れ得る。逆に、具体的な問題ごとに対象とすべき単元を取り違えると、議論が成り立たなくなったり、あるいは誤った結論を得る事にもなりかねない。
 (3) 地殻における元素の分布   これまでの長年の研究の結果、岩石や鉱物について大量の化学分析資料が集るのにつれて、それぞれの岩石種や鉱物種ごとの化学組成の変化の範囲もおよそ判って来た。それは主成分のみならず、副成分や微量成分についても同様である。これらの資料を基にして、各岩石種や鉱物種ごとの平均の化学組成も算出されている。一方、地殻の場合、すなわち地殻の中での各種地層・岩体の接し具合いや重なり具合についても、単に地表付近のみならず、相当深いところまでおおまかながら見当をつける事が出来るようになった。言いかえれば、地殻の中での各岩石種ごとの存在量の割合いもおよその推定をつける事が出来る。これら両者の資料を組み合せれば、地殻全体の化学組成、あるいは各元素ごとの地殻全体での存在量の割合いを試算する事が出来る。後者の意味での値は、元素の地殻存在度と呼ばれている。
 表V-1に、いくつかの元素について大陸および海洋地殻での存在度と海洋水中での平均溶存量の値を示す。大陸地殻存在度の値で0.1%(1,000ppm)以上を示す元素は、多い方から順に酸素・珪素・アルミニウム・鉄・カルシウム・ナトリウム・カリウム・マグネシウム・チタン・水素・燐の僅か11種にすぎない。私たちの生活に広く利用されている銅・鉛・亜鉛・ニッケルなどの大陸地殻存在度はいずれも数10ppm程度、金・銀・白金などのそれはさらに小さく、0.0nppmまたはそれ以下にすぎない。
表V-1 元素の地殻存在度と海洋水中での平均溶存量
  地殻 海洋水
大陸地殻 海洋地殻
面積*1×106km2
質量*1×1018t
204.4
22.5
306.4
6.1
361.1
1.4
 

*2 (ppm)

(ppm)

*2  (mg/l)

Fe

50,000

77,600

0.01
Mn 950 1,320 0.002
Cr 100 120 0.00005
Ni 75 78 0.002
Co 25 50 0.0001
W 1.5 0.45 0.001
Mo 1.5 0.5 0.01
Cu 55 110 0.003
Pb 13 49 0.00003
Zn 70 82 0.01
Sn 2 3 0.0008
Hg 0.08 0.2 0.00003
Au 0.004 0.005 0.000004
Ag 0.07 0.06 0.00004
Pt 0.01 0.009  
Al 81,300 78,600 0.01
Mg 20,900 39,900 1,350
P 1,050 650 0.07
K 25,900 5,300 380
*1 Willie,P.J.(1971) 原典:Ronov & yazoshevsky(1969)
*2 Mason,B.(1966)

 一般的に言って、岩石の種類によってその化学組成は随分変るし、また一方元素を基準にして考えれば、それらの分布は岩石種ごとに大きく変っている。これを銅を例にとってもう少し詳しく調べた結果が表V-2である。これによると、地殻・水圏・気圏の3圏中にいろいろな形の化合物、また時に単体として分散して存在している銅の総量は、およそ1,520兆トンという実に莫大な量に達している。そのおよそ半分は大陸地殻の塩基性火成岩類中に、またおよそ4分の1は海洋地殻の同種岩石中に、さらにおよそ5分の1が大陸地殻の酸性火成岩類中に、それぞれ含まれている。しかし、これら両種の火成岩類中での銅の平均含有量はいずれも僅か100ppm以下にすぎず、これらの岩石を原料としてそれから銅を経済的に得ることは、現在ではもちろんだがよほど長い時間の後を考えるとしても、まず出来難いと考えるべきだろう。その際の最大の問題点は、岩石中に微量に含まれている銅鉱物の分離・濃集に必要なエネルギーの量が莫大と予想される事である。言いかえると、これら両種の火成岩類をそのまますぐ銅の鉱物資源として算え上げる事は出来ない。なお、通常の岩石中で銅に最も富むものは深海底泥質堆積物であって、その平均含有量はおよそ250ppmにも達し、時には1,000ppmを超すほど多量の銅を含む例も記録されている(Wedepohl,K.H., 1967)
表V-2 地殻・水圏・気圏での銅の存在量と分布
(Bowen,R. & Gunatilaka,A., 1977)
  質量
×1015t
銅の平均含有量
ppm
銅の含有量
×1010t
分布率

気圏

0.5 0.001 0.000036
水圏
 海洋水 1,420 0.002 0.28
 淡水 0.3 0.007 0.00021
 地下水 201 0.02 0.4
 氷 35 0.001 0.0035
大陸地殻
 火成岩・変成岩
  塩基性岩類 8,700 87 75,700 49.8
  花崗岩類 10,500 30 31,500 20.7
 堆積岩類
  泥岩類 750 45 3,375 2.2
  砂岩類 280 0.1 3
  石灰岩類 290 4 116 0.1
  蒸発岩類 30 20 6
海洋地殻
 塩基性岩類 4,400 80 38,300 25.2
 堆積物 217 140 3,000 2.0
生物圏 0.004 20 0.0008

合計
    152,000(1,520兆トン)  

 上に挙げた1,520兆トンという銅量は、地球上(ここでは便宜上核とマントルとを除いて考える)に存在している銅の全量−自然界での全存在量−であって、これらすべてが今後少なくとも50−100年ほどの間に(恐らくは考え得る全期間を通じて)私たちの生活に利用出来るであろう銅の全量−予測される銅の総鉱物資源量−ではないと考えるべき量である。なお人によっては究極資源量という言葉を使っているが、これがここでいう自然界での全存在量を指すのか、あるいは総鉱物資源量を指すのかは、極めてあいまいであるように思われる。
 (4) 水圏・気圏   海洋水・湖沼水などや大気は私たちにとって身近な存在で、地中深くにある岩石よりはずっと馴じみ深いものだろう。海洋水中には私たちの生活に役立つ有用成分が種類としては数多く溶け込んでいるが、それらの溶存量は一般にごく小さいので、それらの中で現在使用されているものは、塩化ナトリウム(食塩)などのごく一部にすぎない。例えば銅の場合には、その平均溶存量は海洋水1リットル中僅かに0.003ミリグラムにしかすぎず、これを経済的に取り出す事はむずかしい。一方、ウランの平均溶存量は銅のそれと同じ程度だが、その単位質量当りの価格が銅の場合よりずっと高いために、わが国でも現在これを海洋水中から取り出して利用しようとの研究が進められている。海洋水の総量は莫大なので、その中での総溶存量は銅の場合でも28億トンにも達する。この値は決して小さくはないが、地殻中の総存在量にくらべれば、それでも桁違いに小さい。
 気圏の場合には、大気の主成分である窒素・酸素や炭酸ガスなどを除けば、資源問題との関わりは合いはより薄い。

 2. 鉱床−地殻の中での特定鉱物種、特定化学成分の局部的濃集
 (1) 岩石と鉱床
   地殻を構成している岩石の種類は随分多いが、各岩石種ごとにその鉱物組成や化学組成の変化の範囲は、およそ一定している。また一般に、岩石は多種類の鉱物から成る集合体で、どれか1種のみが特に多いという場合は少ない。後者の例としては、石灰岩(主に方解石の集り)やヅンかんらん岩(主にかんらん石の集り)などがあり、これらは普通単鉱物岩と呼ばれている。
 これに対して、いろいろの岩石の中には、ある特定の鉱物種または特定の化学成分が、通常の各種岩石の示す変化の範囲を大きく超えて、特に多量に濃集しているような特殊の岩石が、世界各地に見つかっている。この意味での特殊な岩石を一般に「鉱床」と呼び、普通の岩石とは区別して取り扱われている。前に挙げた単鉱物岩は、この点では方解石やかんらん石の鉱床と言っても差し支えない。まえおきの所で述べた岩石・鉱物の利用の仕方の区分の4種類のうち、第1の岩石それ自身の持つ性質の利用の場合を除けば、他の大部分の場合は、この鉱床が鉱物資源としての意味を持つ事となる。
 銅を例にとって考えてみよう。通常の各種岩石中での銅の平均含有量は、いずれも100ppm以下で、ただ1種深海底泥質堆積物のみがこれより少し高いだけである。ところが、斑岩銅鉱床と呼ばれる特殊な岩石ではその平均含銅量は0.4-1.0%程度、塊状硫化物鉱床のあるものでは同じく数%、また含黄銅鉱石英脈の一部では10-20%などと、銅に特に富む特殊な岩石(銅の鉱床)の存在が広く知られており、これらはいずれも現在銅の重要な鉱物資源として利用されている。これらの中での含銅量を大陸地殻での銅の平均存在量(大陸地殻存在度)の値55ppmを基準として比較すると、その濃集の度合いはほぼ100倍から4,000倍にも及んでいる。通常これらの銅分は、最も普通には黄銅鉱(組成式CuFeS2、含銅量34.7%)という銅鉱物に由来する事が多く、岩石全体に黄銅鉱の粒がパラパラと散点している場合(鉱染鉱床)、これに富む細脈が網目状に広く発達しているもの(網状鉱床)などから、さらには局部的にはほとんど黄銅鉱のみから成る部分の存在(鉱脈鉱床・塊状硫化物鉱床の一部)まで、その濃集の様子を野外の露頭であるいは採集した標本について、肉眼的にも良く観察する事が出来る。
 (2) どのくらい濃集していれば鉱床とみなせるか   それでは、自然物として眺める立場からすれば、岩石(地層・岩体)と鉱床(鉱体)との境い目、すなわち対象とする特定の鉱物種や化学成分がどの程度濃集していればそれを鉱床として一般の岩石から区別するのかの目安は、いったいどの辺りにあるのだろうか。この境い目は、鉱物種や化学成分ごとにそれぞれ違っており、これをすべての場合についてはっきり具体的数値を示して断定するほどには、私たちのこの点に関する知識はまだ残念ながらまとまっていない。
 一つ具体的な例を挙げてこの点を考えてみよう。それはカナダのブリティッシュコロンビア州にあるベルカッパー銅鉱山での調査結果である(Carson et al., 1976)。この鉱山のある地域は、主に中生代から新生代初期(今からおよそ2億年から5,000万年前にかけてのころ)の時代の各種火山岩類と堆積岩類とから成り、その一部に新生代初期の酸性貫入岩体がいくつか貫入している。ここの銅鉱床は、黄銅鉱などの硫化鉱物が主に酸性貫入岩体の一部に広く散点したり、あるいはこれを主成分とする細脈が細目状に発達したりしているいわゆる斑岩銅鉱床と呼ばれる型のものである。

図V-1 カナダ ブリティッシュコロンビア州 ベル カッパー銅鉱床地域での各種岩石中の含銅量の変化
A−地質略図、B−地質断面略図、C−銅等品位線図、D−C図の部分拡大図。(Carson et al., 1978)(別ウィンドウに拡大

 図V-1のA・Bにこの地域の地質のあらましを示してある。この地域内の数多くの地点から各種岩石の標本を採集し、それらの含銅量を測った結果を簡略化してまとめて示したのが同図C(略)である。この図には、含銅量でそれぞえ200・500・3,000ppmの等含銅量線が画かれており、200ppm以下の場合には、測定点の位置のみが記されている。また同図D(略)には、同図C中央部を拡大して示し、そこには0.1・0.3・0.5・0.75%(0.1%=1000ppm)の等銅量線が画かれている。これらの図を見れば判るように、この地域の大部分では岩石の種類を問わずにそれらの含銅量は一般に100ppm以下、一部でその値を僅かに超す程度であるのに対して、中央に位置する酸性貫入岩体西部を中心とした区域では急激に含銅量が高まり(図V-1 A・B中の太い線がそのおおよその形を示している)、その一部では含銅量0.75%以上にも達している。一般の岩石にくらべて特に多量の銅分(ここの場合には主に黄銅鉱という銅鉱物として存在)の濃集している岩石、すなわち鉱床、がごく局部的にのみ存在している事がこれからよく判るだろう。この場合の普通の岩石と銅鉱体との自然的な境い目は、ごくおおざっぱに言って、含銅量では0.05%(500ppm)前後にあるとみなして良いのではないだろうか。
 銅鉱床の出来方(成因)にもいろいろな型があって、それぞれの場合により様子が違うが、ごく一般的に言えば、通常の岩石と自然物としての銅鉱床との境い目は、大き目にみておおよそ含銅量0.1-0.05%(1,000-500ppm)辺りのところにあるのではないだろうかと、現在の知識では推察される。 同様の事を鉄鉱床について調べると、この場合には含鉄量にしておよそ15%前後のところにあるらしい。
 この事を考えるのに次の例も参考となろう。現在すでにその存在・性質が地質学的に確かめられてはいるのだが、種々の技術的・経済的理由(その最大のものは品位の低さ)のために現在ではまったく利用し得ない鉱床(既知経済限界下鉱床)の場合や、他種鉱床中の副成分としてすでに利用されている場合などでの、目的成分の含有量(濃集度)については、次のような実例がある。
 既知経済限界下鉱床−黒色頁岩型ウラン鉱床−0.01%U、硫化物型ニッケル鉱床−0.3%Ni、ラテライト型ニッケル・コバルト鉱床−0.05%Coなど。
 副成分ー斑岩銅鉱床に伴うモリブデンまたは金−0.005%Mo、0.5ppmAuなど。
 これまでに挙げて来た種々の実例をまとめて考え、ごく一般的かつ極めて大胆に言えば、岩石と鉱床との自然的境い目は、それぞれの元素の大陸地殻存在度の値の10-100倍程度の辺りにあると言えるのかも知れない。ただし、鉄・アルミニウムなどのように大陸地殻存在度の特に大きい元素の場合には、この点様子が大分に違っている。なお、この間の実状は図V-3(後掲:略)を参照してほしい。
 (3) 有用鉱床−どのくらい濃集していれば現在利用出来るか   これまでに述べて来た事は、天然に産する自然物としての岩石や鉱床の性質についてであった。例えば銅の場合に、銅分が0.1-0.05%程度以上濃集していれば銅鉱床とみなせると言っても、それらのすべてが直ちに現在採掘の対象となり得るわけではない。天然の鉱床を対象として現実にそこに鉱山を開き、そこから鉱石を採掘してこれに各種の処理工程を加え、最終的に目的とする金属や工業用鉱物などの製品を得るという仕事(鉱業)を進める事が出来るかどうかは、鉱床の持つ自然科学的な諸性質だけではなくて、現在私たちが持っている鉱業技術や経済的その他多くの条件にも支配されている。探査活動によって地質学的に見つけられた鉱床のうちで実際にそこに鉱山の開かれ得たものの数は、これまでの経験上本当に少ない。

図V-2 各種鉱石の粗鉱平均品位下限値(A)と有用鉱床中での目的成分の最低濃集度(B)。(別ウィンドウに拡大

 これら諸条件の中で基本的に重要な性質の一つが、鉱床中での目的とする鉱物種または化学成分の濃集の度合い(鉱石の品位)である。いくつかの金属元素について現在鉱業の対象となり得るのに必要な最少の濃集度を採掘される鉱石(粗鉱)の平均品位の下限値で示すと、V-2・Aが得られる。この図から、この意味での濃集度は元素ごとに随分その値が変っている事が容易に判るだろう。高いものでは鉄・マンガン・アルミニウムなどの15-30%前後から、低いものでは金・白金などの3-4ppmまで、実に大きな幅がある。なお、鉱石の品位の表わし方には習慣的に種々のものがあり、元素単位のみではなくて、アルミニウム・クロムなどのように酸化物を単位とするものもある。しかしここでは、比較の便宜上すべて元素単位に統一してある。また誤解を避けるために次の事もつけ加えておこう。例えば、ここで金に対して4ppmの値が与えられているからと言って、これだけの平均品位を持つ金鉱床が見つかれば、現在世界中何処でも、またどんな型式の金鉱床に対しても、そこに金鉱山が開かれ得るというわけではない。この値は、現在操業している数多くの金鉱山の中で一番低い粗鉱平均品位を持っているところでは、その値が4ppmだという意味である。
 図V-2・Bは、各元素の現在での粗鉱平均品位下限値とそれらの大陸地殻存在度との比を求めて示したものである。つまり、大陸地殻存在度の何倍ぐらい濃集していれば、それぞれの鉱床が現在利用され得るのかについての目安となる一つの値(有用鉱床での目的成分濃集度の最低値)である。これによると鉄・アルミニウムのようにせいぜい数倍程度濃集すればこの条件に合う元素から、銅・鉛・亜鉛・金・白金などのように100-1,000倍程度の濃集を必要とするもの、さらにタングステン・水銀などのように1万-10万倍もの大きな値を必要とするものまで、極めて幅が広い。

図V-3 各元素の大陸地殻存在度と鉱床中での濃集度との関係
〇−単味の場合の粗鉱平均品位下限値
△−副成分として回収・利用されている場合の品位
×−経済限界下鉱床での品位。(別ウィンドウに拡大

 これらの事をもう一つ別な図で示してみよう(図V-3)。これには、各元素ごとの粗鉱平均品位下限値(単味、すなわち目的元素1種のみの鉱石の場合)のほかに、他種鉱石中の副産物として利用されている場合の品位、および現在すでに経済限界下鉱床としてその存在の良く知られているウラン・ニッケル・コバルトなどのある種の鉱床の場合のそれらの品位をも合せて記入してある。右上から左下りの直線(100A、1,000Aなど。Aは各元素の大陸地殻存在度)は、鉱床中での元素の濃集の程度をそれぞれの大陸地殻存在度との比較値のうち区切りのよい値で示したものである。この図からは次の2点を注意してほしい。まず第1に、各種粗鉱の平均品位下限値は、それぞれの鉱床の自然的な性質のほかに、技術的・経済的その他の人為的諸条件にも強く支配されているものだから、このような2軸をとった図面上ではむしろ不規則に分布するのは当然である。ここに記された4本の直線との間に特に意味のある関係で結ばれているわけではない。ただ、有用鉱床での最低濃集度がそれぞれの大陸地殻存在度の何倍になるかを示しているだけである。しかし第2に、既知経済限界下鉱床の品位を示す△印および他種鉱石中の副成分の場合のそれを示す×印が、いずれもほぼ10Aと100Aとの2本の線の間に位置している事実に注目してほしい。もし仮に、自然物としての鉱床と岩石との境い目の値が、それぞれの大陸地殻存在度と何らかの関係をもって決るものと考えるならば、その値はこの10-100Aの間にあるらしい事を上の分布が示していると考える事も出来よう。
 自然的・技術的・経済的その他の諸条件を満して現在(およびごく近い将来)鉱業の直接対象となり得るような鉱床は、自然物としての鉱床一般の中で特に有用鉱床として区別される。この有用鉱床となるための重要な目安の一つである粗鉱平均品位下限値は、決して一定不変の値ではない。これは、主に採鉱・選鉱・製錬など鉱業諸工程に関する先人の技術的努力と、それらの経済的価値の変化とによって、これまでどんどん下げられて来た。銅鉱床を例にとると、今からおよそ100年ほど以前にはこの値は銅10%前後であったが、今世紀初頭には5%前後、第2次世界大戦ごろには1%を切り、現在では0.5%前後にまで下って来ている(図V-4)。これを言いかえれば、自然物としての銅鉱床の中でその有用鉱床の占める割合いは、私たちの努力によって時代の経過と共に大きく拡げられて来た事になる。

図V-4 銅鉱石の粗鉱平均品位の時代に伴う低下(1830−1975年)。
〇−アメリカ合衆国(Probst,D.A. & Pratt,W.D., 1973)
×−ソ連邦(スミルノフ, 1969)。(別ウィンドウに拡大

 もう一つ別な表現をしておこう。自然物としての岩石と鉱床との境い目は、それらの持つ自然に与えられた諸性質によって決まっており、人間の自然への働きかけとは無関係に決ってしまっている。しかし鉱床と有用鉱床との境い目は、私たちの努力によって時代と共に変え得る性質のものであって、決して一定不変のものではない。

 3. 鉱石の品質
 鉱石の経済的価値を決める要因はたくさんある。そのうちの自然的なもの(地質学・鉱物学的要因)だけをとり上げても、a)目的とする鉱物種または化学成分の濃集度(品位)、b)鉱床の性質(形態・構造・母岩との関係・成因など−主に探査・採鉱技術に関係する)、c)鉱石の性質(鉱物組成・組織構造など−主に選鉱・製錬技術に関係する)などがある。これらの諸性質は、まず鉱床によって違い、同じ鉱床でも鉱床の出来方(成因に基づく型式)によって違い、さらに厄介な事に、一つの鉱床内でも部分によってしばしば異なって来るのが普通である。従って、実際の開発・利用に当っては、個々の鉱床ごとに上記の諸性質を詳しく具体的に調べた上でその価値を判断するほかはない。ここでは、それらのごく一端についてだけ考えてみよう。
 (1) 化学組成
 主目的成分の含有量
:鉱石の品質を判断するのに誰でもまず第1に考える事は、その中での目的鉱物種または化学成分の濃集度、すなわち鉱石の品位の事だろう。鉱物中のある特定成分の抽出利用の場合には、普通これは、鉱石中での目的成分の重量百分率(wt.%)で表わされる。濃集度の低い金や白金などの場合には、鉱石1トン中に目的成分が何グラムあるか(グラム/トン、ppmに相当する)で示される。これらの多くは元素単位で示されるが、習慣的に化合物を単位として示される場合も多い。例えば、アルミニウム鉱石−Al2O3、クロム鉱石−Cr2O3、モリブデン鉱石−MoS2、タングステン鉱石−WO3、燐鉱石−P2O5、カリ鉱石−K2Oなどである。時にはウラン鉱石のように、同じ鉱種でありながら元素単位であったり化合物単位(U3O8)であったりする例もある。またこれまでの商習慣上、ポンド・オンス・トロイオンス・フラスコなどメートル制以外の単位が使われる鉱種もある。トンの場合にも、メートル制のもの以外にショート・トンやロング・トンもあって、極めてまぎらわしい。ここでは比較の便宜上、すべての鉱種に対して割合いは出来得る限り重量百分率またはppm、また重量はメートル制で示すようにし、必要な場合はこれらに換算して示してある。
 すでに述べたように、一つの鉱床内でも部分によりその諸性質が幅広く変る事が多いので、そこから実際に採掘される鉱石の品位も場所場所によって相当に変る。大量に採掘される鉱石全体の平均の品位は粗鉱平均品位(平均の2字が省略される事が多い)と呼ばれる。実際に鉱床の各部分から採掘される鉱石の中で最も低い品位の値(それ以下の品位の部分は鉱石として採掘の直接対象とはしない)は採掘限界品位と呼ばれる。例えば、多くの斑岩銅鉱床の露天掘り採掘の場合には、最近での銅鉱石粗鉱平均品位は0.5-1.0%前後、採掘限界品位は0.3-0.5%前後である。これら両種の値は、同一鉱種・同一鉱床型式の場合ですら、個々の鉱床の諸性質の違いによってそれぞれに異なっている。また経済的条件の変化によっても変わり得る。
 副成分・微量成分の含有量−副産物と不純物:鉱石の主目的鉱物以外の他の構成鉱物あるいは各種構成鉱物中の微量成分の中には、現在経済的価値のあるものもあって、例え元の鉱石中でのそれらの平均含有量はごく少なくとも、鉱石を大量に処理する場合の選鉱や製錬の諸工程での副産物として回収・利用される事もある。このような場合には、鉱石の経済的価値はさらに高められる。
 例えば、斑岩銅鉱床は本質的には銅の鉱床だが、また同時にその一部にしばしば輝水鉛鉱(MoS2、モリブデンの現在唯一の有用鉱物)あるいは自然金をも少量ながら広く含んでいる事がある。これらはしばしば副産物として回収・利用されている。チリのエル・テニエンテ斑岩銅鉱床では、1978年度に1日当たりほぼ5.7万トンの鉱石を採掘した。この鉱石の粗鉱平均品位は銅1.5-1.6%で、このほかにもモリブデンを0.02-0.03%(MoS2含んでおり、その選鉱工程を通して1日当り銅精鉱(39.9%Cu)1875トンのほかにモリブデン精鉱(55.2%MoS2)14トンをも得ていた(Fernando Canas,P., 1980)。この鉱山の場合には、銅鉱物は黄銅鉱のみではなくて輝銅鉱(Cu2S、Cu-79.8%)などの2次鉱物をも含んでいるので、粗鉱および銅精鉱中での銅品位が他の多くの斑岩銅鉱床の場合よりもずっと高い。また、秋田県北部の黒鉱鉱床産鉱石は銅・鉛・亜鉛を主な対象とするものだが、その選鉱・製錬の諸工程を通じて、主目的成分であるこれら3種の金属のほかに、金・銀・カドミウム・ビスマス・ガリウム・インディウム・アンチモン・セレン・硫黄(硫酸)・鉄(黄鉄鉱の焼きかす−酸化鉄)および重晶石の11種もの副産物が得られている(Maeshiro.I., 1978)
 一方これに反して、目的成分以外の少量ないし微量成分が、主に製錬工程での最終製品中に残ってその性質に悪い影響を与えたり、あるいは有害な廃棄物となったりするために、操業上不利を招く場合がある。例えば、鉄鉱石中に少量含まれる硫化鉱物を源とする硫黄・砒素・銅や酸化鉱物として存在するSnなどが含まれていると、最終製品である銑鉄や粗鋼中にこれらが入って、製品の物理的性質を悪くするので、鉄鉱石中でのこれらの含有量は少ないほど良い。また銅鉱石の場合、その中の銅鉱物が黄銅鉱(CuFeS2、Cu-34.7%)ではなくて硫砒銅鉱(Cu3AsS4、Cu-48.4%)のように砒素を含む鉱物の場合には、製錬の際の廃棄物の一つとして砒素化合物を生じるので、例え元の鉱石中での銅品位が同じあるいは多少高くとも、その処理のため技術的・経済的に不利となる。これらの例に挙げたような諸成分は、それぞれの場合の鉱石中の不純物としてその存在がきらわれ、もとの鉱石の経済的価値を下げる原因となる。
 (2) 鉱物組成   鉱石は一般に、役に立つ鉱物(採掘の直接の対象となる鉱物−鉱石鉱物)と無価値な鉱物(採掘の対象とはならない鉱物−脈石鉱物)とが、複雑な組織・構造をなして集って出来ている鉱物集合体である。鉱石中に採掘の直接対象となる鉱物が唯1種しか含まれていない場合もあるが、またしばしば複数種の事もある。鉱石の採掘以降の各処理工程を十分有効に行うためには、その化学組成のほかに、鉱物組成や組織・構造をも事前に正確に知っておく必要がある。
 鉱石の化学組成のみならずその鉱物組成をも知る事の大切な1例として、アルミニウム鉱石の場合をここに挙げておこう。アルミニウム鉱床として現在最も重要なボーキサイト鉱床産鉱石は、一般に極めて複雑な鉱物組成を持っている。この中に含まれている含アルミニウム鉱物として普通に産する鉱物は、表V-3の左側の欄に掲げられている5種である。これら5種の鉱物および他の主な構成鉱物のボーキサイト鉱石中の集り具合いは、個々のボーキサイト鉱床ごとに、また同じ特定の鉱床でもその部分により、相当に広い幅で変っている。図V-5に、オーストラリア北東部にあるゴーブ ボーキサイト鉱床の一部における地質柱状図とそれに対応する鉱物組成変化図とを掲げた。これによると、同じ鉱床でも場所により、また同じ場所でも深さにより、その鉱物組成や組織構造が著るしく変化する様子の一端が良くうかがえるだろう。
表V-3 ボーキサイト鉱石の主な構成鉱物とバイヤー法による粗製錬の際のそれらの挙動

構成鉱物

浸出条件*1

種類

組成式
含有アルミニウム分(%)

温度(℃)

カセイソーダ溶液濃度(kg/m3

備考
Al2O3 Al
ギブス石 Al(OH)3 65.4 34.6 140-160 130-190  
ベーム石 γ-AlO(OH) 85.0 45.0 220-250 260-390 高温高濃度処理が必要
ダイアスポア α-AlO(OH) 85.0 45.0 バイヤー法では処理できない  
カオリナイト Al4〔Si4O10〕(OH)8 46.0 24.3 カセイソーダ溶液には反応するが、最終的にはナトリウム含水アルミノ珪酸塩として沈澱 カセイソーダが無駄に使われる
ハロイサイト Al4〔Si4O10〕(OH)8・4H2O 40.8 21.6
石英 SiO2

       
カセイソーダ溶液に不溶  
赤鉄鉱 Fe2O3        〃
針鉄鉱 α-FeO(OH)        〃
アナターゼ TiO2 ベーム石浸出条件下では一部溶出
*1 増子 昇(1980)


図V-5 オーストラリア ゴーブ ボーキサイト鉱床の鉱物組成変化(Grubb,P.L.C., 1970)。(別ウィンドウに拡大

 一方、ボーキサイト鉱石から金属アルミニウムを得るのには、現在のところほとんどの場合まずバイヤー法により中間産物としてアルミナ(酸化アルミニウム、Al2O3を作る必要がある。この工程では、鉱石を一度細かく砕いた後に適当な大きさ・形の塊りに焼結したものを、オートクレーブという特殊な炉の中で熱カセイソーダ溶液と反応させて、一度アルミ酸ソーダ溶液(NaAlO2溶液)を作り、その後これを加水分解させてアルミニウム分をアルミナとして分離・沈殿させる。問題は、この工程では含アルミニウム鉱物の種類によって、熱カセイソーダ溶液との反応の様子が随分違っている事である。表V-3右側の欄の浸出条件のところに、それが要約して記してある。このようにバイヤー法による場合には、ボーキサイト鉱石中の5種の含アルミニウム鉱物のうち実際に役立つものは、ギブス石とベーム石の2種である。このうちでもギブス石の方が処理温度も低くかつカセイソーダ溶液の濃度も低くて良いので、操作上より有利である。これに対して、カオリナイトやハロイサイトのような含水アルミニウム珪酸塩鉱物は、カセイソーダ溶液に反応はするが、最終的にはその中のアルミニウム分はアルミナとして分離・沈殿しない。ダイアスポアはこの反応にはほとんど関与しない。
 上のような事情から、前に実例として挙げたゴーブ鉱床の場合では、A地点では地表に近い鉱床上部のみが良質のアルミニウム鉱石を産するのに対して、B地点ではずっと深部まで良質の鉱石を産する事になる。この例は、アルミニウム鉱石の経済的価値の判断には、単に鉱石の化学分析結果に基づくアルミニウム分の大小のみではなくて、その鉱物組成の正確な測定も必要である事を示している。
 ところで、ボーキサイト鉱床から採集した鉱石標本を化学分析して得られる通常のAl2O3(岩石の化学分析結果は、種々の事情から元素単位ではなくて、それらの酸化物を単位として示される事が多い)は、その中に存在している含アルミニウム鉱物すべての中のアルミニウム分の総和を示している。しかし経済的に意味のある分は、上に述べたようにその中でギブス石とベーム石に由来するAl2O3であり、カオリナイトやハロイサイトのような粘土鉱物に由来する分は、むしろカセイソーダ溶液の無駄使いの基となる。従って、ボーキサイト鉱石の通常の化学分析値の示すAl2O3(これを、全Al2O3値と呼ぶ事としよう)の大小だけでは、その経済的価値を判断するわけにはゆかない。そのためには、通常の化学分析に加えて、その鉱物組成をより良く反映する他の化学分析値をも考える必要がある。オーストラリアではこの点を考えに入れて、通常の全Al2O3値のほかに、次の2種も測定してその品質の判定の助けとしている(Berkman,D.A. & Ryall,W.R., 1976)
 全有効Al2O3値:180゚Cより高い温度でカセイソーダ溶液と反応するAl2O3分。鉱物的にはギブス石・ベーム石および粘土鉱物の一部に由来する分。
 三水酸化物Al
2O3値:140゚Cまたはそれ以上の温度でカセイソーダ溶液と反応する分。鉱物的にはギブサイトとカオリナイトに由来する分。
また、ボーキサイト鉱石の化学分析によって得られるSiO2値には、粘土鉱物に由来する分と石英に由来する分との2種がある。この内前者は熱カセイソーダ溶液と反応するが、後者は反応しない。つまり、鉱石の化学分析によって得られるSiO2値のうち、実際の操業に関係するのは前者のみで、これを反応SiO2値と呼ぶ。反応SiO2値は小さいほど良い。
 ボーキサイト鉱石の化学的・鉱物学的諸性質の変化は、究極のところ個々のボーキサイト鉱床の出来方、特にその源岩の性質と含アルミニウム鉱物が再沈殿した時の物理化学的条件などによっている。言いかえると、ボーキサイト鉱床の探査・開発・利用の実際に当っては、その出来方に関する知識(自然科学的な基礎知識)がその大本として大きな役割りを持っている事を示している。
 (3) 組織・構造   前に述べたように、鉱石は多種の鉱石鉱物・脈石鉱物より成る鉱物集合体である。この場合、個々の構成鉱物の大きさ・形・硬さなどや、それらの集り具合い・締り具合いは千差万別で、場合々々により大きく違っている。主に粗粒の構成鉱物より成る鉱石もあれば、一方ごく細かな鉱物の集りで、肉眼的にはその一つ一つをまったく区別し難い緻密な鉱石もある。また、構成鉱物同志が固く結びついて砕き難いものもあれば、その結びつきが弱くて容易に砕けるものもある。場合によっては、ある鉱物が他種鉱物中に微粒として包み込まれているので、これら両者を分けるのには余程細かく砕かなければならない事もある。このように鉱石の組織・構造にそれぞれに大きな差があり、採鉱・選鉱・製錬の諸工程の操業に大きな影響を持っている。

写真V-2 秋田県 深沢鉱山の黒鉱/黄鉱鉱床。破線・割目から左上部が黒鉱、右下部が黄鉱。共に微細な硫化鉱物が集合し、高品位鉱を構成している点に注目。(別ウィンドウに拡大

 例を一つ挙げてみよう。黒鉱鉱床と呼ばれる銅・鉛・亜鉛の塊状硫化物鉱床(写真V-2)は、現在わが国で最も大切な銅・鉛・亜鉛その他の鉱物資源として広く開発・利用されている鉱床である。この種の鉱床の存在は随分古くから知られていたが、しかしこれが実際に十分に利用されるようになったのは、前世紀もごく末になってから以降の事だった。というのは、この黒鉱鉱床から産する鉱石は主に銅・鉛・亜鉛・鉄などの硫化鉱物より成るが、その一つ一つの粒の大きさは0.1ミリメートルないし数10ミクロン程度と極めて細かい事が多く、全体として微粒な構成鉱物のごく緻密な集合体であるために、以前にはこれを各構成鉱物ごとに分ける事も、またそのまま製錬して別々の金属を得る事も、技術的には非常にむずかしかったためであった。しかし、この複雑かつ緻密な組織構造を持つ鉱石を直接精錬して銅を得る新らしい製錬法の発明(1897年)や浮遊選鉱法の開発により黄銅鉱・方鉛鉱(PbS)・閃亜鉛鉱などの諸構成鉱物を別々に分けて得る事がこの種の鉱石にも応用されるようになって(1931年)、この処理がむずかしい鉱石も十分有効に利用出来るようになった。このような技術の進歩の基礎の一つとしては、黒鉱鉱床産鉱石の複雑な鉱物組成や組織構造についての詳しい具体的研究があった。

写真V-3 アメリカ合衆国 エルムウッド鉱床におけるミシシッピバレー型鉛亜鉱床。鉱石鉱物が粗粒なため結晶面が光ってみえる。上部、方解石下底部の暗色鉱物は方鉛鉱の巨晶である。(別ウィンドウに拡大

 同じ鉛・亜鉛鉱床でも上とは逆の例もある。アメリカ合州国ミシシッピ河中流域に広く知られているいわゆるミシシッピ型鉛・亜鉛鉱床(写真V-3)は、方鉛鉱と閃亜鉛鉱とを主な採掘対象とする鉱石を産する。この種の鉱床の場合には、これら構成鉱物の粒度(結晶の粒の大きさの割り合い)が黒鉱鉱床産鉱石の場合よりもずっと大きく、他の構成鉱物も方解石・ドロマイトなどの軟い炭酸塩鉱物が主なものなので、鉱石の破砕もまたそれからの目的鉱物の分離(選鉱)も共にずっと容易に行われ得る。従って、より低品位の鉱石からも有利に高品位精鉱を得安い。
 いずれにせよ、鉱石の品質はその品位のみではなくて、同じ鉱種・同じ型式の場合ですら、源となる個々の鉱床自体の地質学的・鉱物学的諸性質の差によって、それぞれ異なっている。

 4. 鉱床の規模
 現在毎日1万トン以上もの鉱石を掘り出している鉱山の数は、全世界でおよそ200余りもあり(石炭・石材・砂利などを除く)、最も大規模な露天掘り鉱山では、毎日鉱石・廃石合せて40万トン前後もの莫大な量を掘り起している例さえある。そうかと思うと、1日に100-200トン程度の少量の鉱石しか掘っていない鉱山もたくさんある。それでは一つ一つの鉱床自身の規模はいったいどのくらいのものなのだろうか。これをごく一般的に言えば、鉱床の規模は鉱種によりあるいはそれらの出来方(鉱床の型式)により、極めて広い範囲にわたって変っている。
 一つの具体例として鉱脈型の鉱床の場合を考えてみよう。この種の鉱床は、すでに存在していた地層や岩体中に出来ていた大小の割れ目や隙き間を伝って鉱化溶液(鉱床構成鉱物を晶出・沈殿させる源となる各種の成分を溶かし込んだ水溶液)が移動し、その間での温度・圧力の変化や鉱化溶液と周囲の岩石との間の化学反応など種々の環境条件の変化に応じてそれから各種の鉱物が新たに析出・沈殿して、その結果としてこれらの割れ目や隙き間が満されていわゆる脈状の形を持つ鉱床が作られたものである。従ってその規模は、もともとあった割れ目・隙き間の大きさと、そこに働いた鉱化作用の強さとの二つに據っている。
 1本の鉱脈(ごく簡単化して例えればその傾きはいろいろにしろ、薄い本を立てたものに似ていると考えたら良いだろう)の場合には、その水平(走向)方向での延長がおよそ2キロメートルを超えるものは、世界的に見ても大規模な鉱脈と言って良いだろう。通常は数10メートルから1キロメートル余りぐらいまでのものが多い。深所(傾斜方向)への延長は、一般には水平方向でのそれよりやや短い。鉱脈の幅(厚さ)は、数センチメートルから数10メートルまで幅広く変わる。稀には100メートル前後に達するものまである。これを1本の鉱脈の鉱床量で表わせば、小は数1,000トンから大は100万トンの桁のものまで、ごく大規模のものの場合には1,000万トン台に達するものまであろう。ただし、これを鉱床量ではなく実際に採掘される見込みのある可採粗鉱量で表わせば、条件の良い場合ですら前記の50-60%程度、多くはそれ以下となろう。鉱脈型鉱床の場合には、ある限られた地域内に何本も何10本もの大小の鉱脈が群を成して産する事が多い。このような特定地域内の鉱脈群を1単位として測れば、その鉱床量は数10万トンから数1,000万トンの桁になる。
 これとは別種の鉱床型式である斑岩銅鉱床や斑岩モリブデン鉱床は、酸性火成活動に関連して作られた鉱床の1種であるが、その単位鉱床の鉱床量は数1,000万トンから数億トンに達するものが数多く知られており、中には10億トンを超すものすらその存在が記録されている。例えば、チリのチュキカマタおよびエル・テニエンテの斑岩銅鉱床の埋蔵鉱量はそれぞれ10.4×10^9・8.4×10^9tと報告されている(Hollister,V.F., 1978)
 いろいろな型式(成因)の鉱床の中では、堆積作用によって生じた型式のものの中に、他にくらべて規模の大きなものがしばしば知られている。例えば先カンブリア時代に特徴的な縞状鉄鉱鉱床は、当時の浅海底で水溶液中に溶け込んでいた鉄分が化学的に沈殿・堆積して鉄鉱物に富む地層を作ったものだが、その中のある例では、1枚の鉄鉱層が延々数キロメートル以上にもわたって追跡できる場合がある。しかも、一つの地域内にたった1枚しか鉄鉱層が無いというのではなくて、それぞれの延長や厚さに変化はあっても、一連の堆積層群の中に何枚もの鉄鉱層が産するのが普通である。このような鉄鉱層を生じた時の大昔の堆積盆地を一つの単位として眺めれば、その拡がりの大きな例では、長径が300-400キロメートルにも達する場合すら知られている。これを鉱床量で表わせば1枚の鉄鉱層として小は数1,000トン程度から大は数100万トン、ごく大規模なものでは1,000万トンの桁に達するものまであろう。また一つの鉱床地域(この場合には大昔の一つの堆積盆地)を単位としてまとめて測れば、しばしば数1,000万トンから数億トン、特に大規模な例では数10億トンあるいはそれ以上にも達する場合もある。西オーストラリア・ブラジル南部・北アメリカ五大湖地方・インド・ソ連邦ウクライナ地方などにこれらの良い例が知られている。また、アフリカ大陸中央部のザイール・ザンビアなどの諸国に発見・開発されているいわゆるカッパー・ベルト型の堆積成銅鉱床も、規模の大きな鉱床の良い例となろう。
 表V-4に、アメリカ合州国地質調査所の研究者がまとめた各種鉱床の規模と品位とに関する資料を掲げる。これによると、上に述べた事が具体的な数値で良く示されている。日本の例も挙げておこう(表V-5)。日本の諸鉱山の記録によると、既採掘量+埋蔵鉱量(または残鉱量)の値で1,000万トンを超える例は数少ない。なおこの表の場合、スカルン型の鉱床の2例ではいずれも数多くの単位鉱体の集り全体の量であり、また鉱脈型の鉱床では鉱脈群としての規模で示してある。ここに掲げた諸鉱山のうちその大部分は、残念ながら種々の理由ですでに閉山となってしまった。
表V-4 各種鉱床の規模と品位 文献(1)−Singer,D.A. & Mosier,D.L.(ed.), 1983a、(2)−同1983b

鉱種

鉱床形式

調査鉱山数
埋蔵鉱量(×106t) 品位(%、Au・Ag・Pt族はg/t) 文献
平均値 大部分の鉱床の含まれる範囲 平均値(大部分の鉱床の含まれる範囲)
Cu 斑岩型、Moに富む(>0.0299%Mo)
同上、Auに富む(>0.034ppm)
同上
スカルン型
同上、斑岩型鉱床に伴う
24
63
210
64
18
320
150
140
0.60
76
3200-38
910-29
1100-19
9.6-0.03
350-22
Cu-0.67(1.4-0.32)、Mo-0.037(0.058-0.031)、Au-0.11、Ag-3.7
Cu-0.50(0.71-0.33)、Mo-(0.023-0.0036)、Au-0.31(0.64-0.10)、Ag-(4.1-1.3)
Cu-0.5(1.0-0.32)、Mo-(0.03- )、Au-(0.4- )、Ag-(2.5- )
Cu-1.7(4.0-0.7)、Au-(2.2- )、Ag-(34- )
Cu-1.0(1.9-0.50)、Mo-(0.032- )、Au-(0.77- )、Ag-(13- )
1
1
1
1
1
Cu
Pb
Zn
サイプラス型塊状硫化物鉱床
珪質ないし中性火山岩に伴う塊状硫化物鉱床
49
432
1.6
1.6
17-0.1
19-0.13
Cu-1.7(3.9-0.63)、Zn-(2.1- )、Pb-(0.1- )、Au-(1.9- )、Ag-(27- )
Cu-1.3(3.5-0.38)、Zn-2.0(9.0- )、Pb-(1.9- )、Au-(2.3-0.13)、Ag-(98-11)
1
1
Pb
Zn
堆積岩を母岩とする噴気型
砂岩を母岩とするもの
スカルン型
35
21
47
11
5.5
2.1
150-0.9
66-0.6
18-0.25
Zn-6.3(14-3.8)、Pb-4.4(8.9-1.5)、Ag-59(160- )
Zn-(3.4-0.36)、Pb-2.6(4.6-1.1)、Ag-(46- )
Zn-5.8(14.0-2.8)、Pb-3.6(11.0-0.54)、Cu-(1.2-0.079)、Ag-98(390- )
1
1
2
Mo クライマックス型斑岩鉱床
斑岩型(Fに乏しいもの)
9
33
230
93
910-66
630-19
Mo-0.19(0.29-0.13)
Mo-0.084(0.13-0.055)、Co-0.09
1
1
Ni ダナイトに伴うもの
コマチアイトに伴うもの
ラテライト型
ラテライト−酸化物型
22
31
71
35
29
1.6
44
50
260-2.8
17-0.2
250-7.8
230-13
Ni-1.0(2.0-0.5)、Cu-(0.14- )、Co-0.017、Pd-(220- )、Ir-(28- )、Au-0.026
Ni-1.5(3.4-0.71)、Cu-(0.28-0.094)、Co-(0.096- )、Pd-(580- )、Ir-(110- )、Pt-190
Ni-1.4(1.9-1.0)、Co-0.063 (Ni-1.0%以下のものを除く)
Ni-1.3(1.7-0.97)
2
2
2
1
Au 浅熱水成型(石英−アデュラリア)
同上    (石英−明ばん石)
硫化鉱物に乏しい含金石英脈
炭酸塩岩を母岩とするもの
117
36
118
12
0.69
0.46
0.041
7.2
14-0.066
4.8-0.044
1.3-0.0014
25-21
Au-4.3(19-0.1)、Ag-130(600-18)、Cu-0.56、Zn-5.1、Pb-(3.1- )
Au-5.8(12-1.5)、Ag-13(62-2.5)、Cu-(2.1-0.12)
Au-14(38-5.3)、Ag-5.1
Au-3.8(9.0-2.1)
1
1
2
1
Fe スーペリオール−アルゴマン型
スカルン型
66
169
150
7.2
1800-12
170-0.32
Fe-53(67-31)、P-(0.22-0.032)
Fe-50(63-36)
2
1

表V-5 日本の鉱床の規模と品位

鉱床

既採掘量

残鉱量

埋蔵鉱量
×106t

備考

期間
鉱石量
×106t
平均品位
含金属量
×106t
スカルン鉱床

神岡、栃洞(Pb・Zn)*1

    茂住(Pb・Zn)*1

-1979

-1979

41.6

9.5

Pb 0.58
Zn 4.6
Ag 36g/t

Pb 1.83
Zn 7.8
Ag 32g/t
0.241
1.91
0.0015

0.174
0.741
0.00030
 

1979 3 31.0
Pb 0.32, Zn 4.1, Ag 22

1979 3 6.0
Pb 0.81, Zn 6.8, Ag 21

総計 72.6×106t

総計 15.5×106t

釜石(Fe,Cu)*1

1891-1979

Fe 55.1
         
鉱脈鉱床
足尾(Cu)*2 1610-1876
1877-1973

31.2

Cu 2.25
Cu 0.15
Cu 0.70
 
Cu 0.02×106t
  総計Cu 0.78×106t
尾去沢(Cu)*2 1884-1978 28.4 Cu 1.16 Cu 0.33      
紀州(Cu)*4 1934-1978 9.4 Cu 1.15 Cu 0.11      
生野(Cu)*3 和銅江戸時代
明治官営
-1896
1896-1973*3
7.0
0.57
12.4
 

Cu 1.30
Sn 0.121


Cu 0.16
Sn 0.021


Cu 0.031×106t
Sn 0.003×106t
 

総計Cu 0.19×106t
明延(Cu,Zn,Sn)*1 1921-1980 15.4 Cu 1.00
Zn 1.41
Sn 0.42
Cu 0.154
Zn 0.217
Sn 0.0424
     
鴻の舞(Au・Ag)*2 1917-1973 11.5 Au 6.4g/t
Ag 108g/t
Au 73.2t
Ag 1243t
     
高王(Au・Ag)*2 1918-1976 2.8 Au 9.7g/t
Ag 96.6g/t
Au 27.3t
Ag 270.5t
     
塊状硫化物鉱床

小坂、元山(Cu)*2

    沈澱銅

1884-1945

1897-1967

7.5

0.06

1.9

66.3

0.14

0.044
    総計Cu 0.18×106t
別子、本山(Cu)*1 1691-1973 25.9

2.60

0.673
4.0-0.81-0.033   総計Cu 0.706×106t
佐々連、金砂(Cu)*1 1903-1979 4.0

1.71

0.068
0.51-1.04-0.006   総計Cu 0.074×106t
*1 日本鉱山地質学会(1981) 日本の鉱床探査 第1巻。*2 私信(社内印刷物を含む)。*3 黒田秀夫(1973) 三菱金属鉱山時報 No.112, 21-27。*4 日本鉱山地質学会(1984) 日本の鉱床探査 第2巻。

 アメリカ合州国のある鉱山会社の資料(COMRATE, 1975)によると、ソ連邦を除く世界の各種鉱床型式の銅鉱床315鉱床をそれらの既採掘量+埋蔵鉱量(=既発見量)の値の大きさで8級に区分した場合、各級に属する鉱床数や1鉱床当りの平均含銅量などは、表V-6のようになるという。これによると鉱石中の含銅量の点からすれば、第1級の6鉱床の占める割合いは全体の含銅量のおよそ4分の1、第2級の40鉱床のそれは3分の1弱、第3級の45鉱床のそれは4分の1弱、これら3級に属する91鉱床(鉱床数で全体のおよそ29%)だけで全体の含銅量のおよそ85%をも占めてしまう事になる。これを鉱床型式別でみると、多くの型式の銅鉱床の中で規模の大きなものは、斑岩銅鉱床・層準規制銅鉱床(カッパーベルト型など)・塊状硫化物銅鉱床(黒鉱鉱床など)の3種で、表V-6中の第1・2級に属する鉱床の大部分は、これら3種の鉱床型式に属するものである。図V-6は、これら3種の銅鉱床について、既採掘量+埋蔵鉱量の値とそれらの鉱石の平均銅品位との関係を示すものである。また、この原図には載せられていないが、鉱脈鉱床の場合でも特定地域の鉱脈群を単位にして考えれば、その規模は他の3種の鉱床型式のものの規模に十分匹敵する。なおこの図中には、日本の銅鉱床についてもいくつかつけ加えておいた。こうして比較してみると、日本での大鉱床は世界的にみても相当大きな規模のものに属する事が判る。
表V-6 世界銅鉱床(除ソ連邦)の既採掘量+埋蔵鉱量(1970)の大きさによる区分
規模別区分の境界、金属量
×103s.t.
級別 各級に属する鉱床数 各級鉱床中の含銅量
×103s.t.
1鉱床当たりの平均含銅量
×103s.t.
鉱床数の累積
含銅量の累積

31,623
10,000
3,162
1,000
316
100
32
10
3


1
2
3
4
5
6
7
8


6
40
45
81
68
52
22
1

103,849
173,474
86,313
48,157
13,623
3,021
519
9

17,308
4,448
1,876
595
200
58
24
9

1.9
14.3
28.9
54.6
76.2
92.7
99.9
100.0

24.2
64.7
84.8
96.0
99.2
99.8
99.9
100.0

合計

315

428,965
     
(COMPATE, 1975。原典はAMAXによる)


図V-6 銅鉱床の規模
●斑岩銅鉱床、〇層準規制銅鉱床、▲塊状硫化物銅鉱床

+日本の銅鉱床(1−小坂元山、2−別子本山、3−足尾、4−生野、5−尾去沢)
鉱床の大きさによる級別は表V-6を参照(COMRATE, 1975)。(別ウィンドウに拡大)』



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