『1・1 日本の土壌
1・1・1 日本の主要土壌群の特徴
土壌は無機質母材、気候、植生などすべての生態的要因の長期間にわたる相互作用により生成されたものであり、日本にも種々の特性の土壌が分布している。
これらの土壌は、生成要因や物理化学的特性などによって詳細に分類され、その分類方法も多数提案されているが、類似した特性の土壌をまとめて土壌群と呼んでいる。
表1・1には日本の土壌分類による主要土壌群の特徴を示す。
1・1・2 日本土壌図
図1・1(略)には日本の土壌図を示すが、土壌群の分布をそのまま図示すると複雑になって判別しにくいので、類似のものをまとめて簡略化して示してある。図中の沖積地は河川が運んできたれき、砂、シルト、粘土が堆積して生じた土地であり、日本では大部分が水田として利用されている。この沖積地の主要な土壌群は褐色低地土や灰色低地土、グライ土であるが、各沖積地の面積が小さく複雑になるので表示されていない。
土壌群名 | 特 徴 |
黒ボク土 | 火山灰からできた土壌で、表層には腐植が集積して黒色を呈する。容積重が軽く、リン酸を固定しやすい。火山の多い関東以北、九州地方に多い。 |
褐色森林土 | 温暖多雨の気候下で生成され酸性を示す。表面には未分解の枯葉や枯枝が堆積し、その下には暗褐色から黒色の腐植を含む表層がある。日本の山地のほとんどを覆っている。 |
赤色土 | 更新世の温暖期に生成された古い土壌。酸化鉄を多く含み赤色を呈する。粘土を多く含み緻密であるが、養分に乏しく酸性である。低山帯や段丘、盆地の周辺部、西南諸島に分布する。 |
黄色土 | 年代の新しい段丘等に多く分布する。黄色の酸化鉄と粘土を多く含み緻密であるが、養分に乏しく酸性である。赤色土とほぼ同じ地域に分布する。 |
褐色低地土 | 砂や微砂が堆積した排水良好な地帯に分布し、多少酸化した三価鉄のために褐色を呈する。水田、畑として利用されている。 |
灰色低地土 | 褐色低地土とグライ土の中間の湿った環境で生成される。低地土の中でもっとも広い面積を占め、主に水田として利用されている。 |
グライ土 | もっとも湿った環境で生成される土壌で、二価鉄を多く含み青灰色を呈する。 |
泥炭土 | 植物遺体が堆積して生成された有機質土であり、平野部の後背湿地、山麓や山間の低地など、排水の悪い低地に分布する。 |
<出典> 土の世界:「土の世界」編集グループ、朝倉書店(1990)。 |
1・2 世界の土壌
1・2・1 世界の各種土壌群の特徴と分布面積
1・2・2 世界の土壌図
世界の土壌は日本では見られない種類の土壌が大部分を占めている。
表1・2にはアメリカ農務省の分類による世界の主要土壌群の特性と分布面積および分布割合、図1・2(略)には世界の土壌図を示す。土壌の種類の名称は各国によって異なっているが、国連のFAO/UNESCO分類のように世界の土壌を統一的に評価する方法が提案されている。このFAO/UNESCO分類法による土壌群の名称を【 】内に併記した。
【FAO/UNESCO分類】 |
特 徴 |
分布 面積 〔億ha〕 |
分布 割合 〔%〕 |
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ツンドラ・亜極地褐色森林土地帯 | コケ・地衣類・小灌木のみ植生。寒さのために農耕不可。 | 5.12 | 3.9 | |
沙漠土(塩類土・アルカリ土を含む)【ゼロソル・イェルモソル】) | 養分が低くとくに窒素、リン酸、微量要素が不足。水不足で灌漑を必要とするが、二次的塩類化などに注意を要す。 | 21.04 | 16.2 | |
チェルノーゼム(栗色土、ブルニーゼム、赤色プレリーを含む) 【チェルノーゼム・カスタノーゼム】 |
物理的、化学的性質ともにバランスのとれた肥沃な土壌。広大な小麦地帯とアメリカのとうもろこし地帯に分布。 | 8.12 | 6.2 | |
非石灰質褐色土 | 粘土の多い下層土をもち、養分は高いが、物理的性質が悪いので耕土をよくほぐすことが大事である。 | 2.84 | 2.2 | |
ポドゾル(泥炭土、低腐植質グライ土、灰褐色ポドゾル土を含む) 【ポドゾル・ヒストソル】 |
養分が溶脱されて酸性を示す。中和のために石灰の施用を要す。寒冷な気候が耕作の制限因子である。 | 19.40 | 14.9 | |
赤黄色ポドゾル性土 【アクリソル】 |
養分の溶脱が激しく、酸性で、湿潤気候下で発達、粘土が表層から移動して下層に集積。 | 3.88 | 3.0 | |
ラトソル(地下水ラテライトなどを含む) 【フェラルソル】 |
風化と養分溶脱をもっとも激しく受け、リン酸に欠乏、湿潤熱帯における主要土壌。 | 24.72 | 19.0 | |
グルムソル土 地帯 |
グルムソル【バーティソル】 | 養分に富むが物理的性質が悪い。透水性低く、排水不良。 |
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テラロッサ【ルビソル】 | 石灰岩の上に生成された赤色で肥沃な土壌、物理的性質もよく、耕作も容易な土壌。 | |||
レンジナ・褐色森林土地帯 | レンジナ【レンジナ】 | 石灰岩や泥灰岩を材料にした土壌で肥沃度が高い。傾斜地に分布し、牧草地に利用されている。 |
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褐色森林土【カンビソル】 | 湿潤冷温帯の中部ヨーロッパに広く分布。粘土移動やポドゾル化がない褐色な土壌断面をもち、中性ないし酸性。 | |||
アンドソル(黒ボク土) 【アンドソル】 |
火山灰からできた土壌で、容積重が軽く、リン酸を土壌に吸収、固定化する力が大きい。 | 0.28 | 0.2 | |
岩屑土(リトソル) 【リトソル】 |
岩石の上に載っているれきの多い未熟な土壌で、広い面積をもつが、耕地面積割合は低い。放牧地に利用。 | 26.92 | 20.7 | |
砂丘未熟土(レゴソル) 【レゴソル】 |
風の力によって砂、微砂が堆積したもの。海岸砂丘堆積物や新しい火山灰などからなる。 | 7.60 | 5.8 | |
沖積土 【フルビソル・グライソル】 |
河川の氾濫などで堆積された比較的新しい堆積物。肥沃度が高く、世界人口の1/3はこの土壌に食糧を依存している。 | 5.88 | 4.5 | |
<出典> 大塚紘雄・井上隆弘:世界の土壌、科学、58、p.611、岩波書店(1988)。 |
図1・3 世界の土壌分布
』