バイオ燃料技術革新計画
平成20年3月
バイオ燃料技術革新協議会
はじめに--------------------------------------------------------------
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第1章 バイオ燃料
1.1 バイオマス・ニッポンケース(100円/Lケース)
1.1.1 具体的なモデルケース---------------------------------- 4
(1)モデルケースの考え方
(2)バイオマスの生産地
(3)バイオマス原料の考え方
(4)ベンチマークの考え方
(5)製造プロセスの例示
1.1.2 バイオマス原料に関する技術マップ、ロードマップ-------- 8
1.1.3 エタノール製造技術に関する技術マップ、ロードマップ-- 10
1.1.4 LCA上の留意事項について-------------------------- 10
(1)稲わらを原料とするケース
(2)林地残材等未利用材を原料とするケース
(3)未利用古紙を原料とするケース
1.2 技術革新ケース(40円/Lケース)
1.2.1 具体的なモデルケース-------------------------------- 14
(1)モデルケースの考え方
(2)バイオマスの生産地
(3)バイオマス原料の考え方
(4)ベンチマークの考え方
(5)製造プロセスの例示
1.2.2 バイオマス原料に関する技術マップ、ロードマップ------ 25
(1)草本系目的生産バイオマス
(2)木質系目的生産バイオマス
(3)検討の進め方
(4)共通基盤技術
1.2.3 エタノール製造技術に関する技術マップ、ロードマップ-- 30
(1)重点項目の開発方針
(2)各要素技術の開発方針
1.2.4 LCA上の留意事項について-------------------------- 43
(1)草本系目的生産バイオマスを原料とするケース
(2)木質系目的生産バイオマスを原料とするケース
(3)その他作物の可能性
1.3 LCA評価の考え方とバイオ燃料に関わる環境問題の整理など
1.3.1 技術革新ケースとバイオマス・ニッポンケースの共通部分に関する考察----------------- 47
(1)経済性の視点から
(2)LCAの視点から
(3)ゼロエミッションの視点から
(4)その他の検討課題
1.3.2 温室効果ガスのLCAについて------------------------ 51
(1)ライフサイクル温室効果ガス排出評価
(2)エネルギー収支
1.3.3 バイオ燃料に関わる環境・社会評価-------------------- 54
提言:バイオ燃料の開発において配慮すべき点について
1.3.4 今後の課題について(まとめ) ------------------------ 58
1.4 各技術開発段階における実施体制について---------------------- 59
1.5 2015年以降の技術について-------------------------------- 62
1.6 その他のバイオ燃料生産用の原料について---------------------- 64
第2章 バイオリファイナリー連携分野
2.1 バイオリファイナリー連携分野検討の意義---------------------- 66
2.2 バイオリファイナリー連携分野の技術マップ、ロードマップ---------------------- 66
2.2.1 バイオリファイナリー技術の整理---------------------- 66
2.2.2 プロピレンに関するロードマップ---------------------- 71
2.2.3 ブタノールのバイオ燃料としての可能性---------------- 75
2.3 バイオリファイナリーの全体像のイメージ---------------------- 78
おわりに------------------------------------------------------------
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委員名簿------------------------------------------------------------
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審議経緯------------------------------------------------------------
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はじめに
2006年5月に公表された「新・国家エネルギー戦略」においては、化石資源への依存度の高い運輸部門において、二酸化炭素の排出削減及び過度の化石資源への依存脱却の観点から、現在ほぼ全量が化石資源となっている運輸部門における石油依存度を、2030年に約8割程度にすることを目指すこととしている。
2007年5月には、経済産業大臣、自動車工業会会長及び石油連盟会長により、「次世代自動車・燃料イニシアティブ」がとりまとめられた。この「イニシアティブ」は、エネルギー安全保障、環境保全、産業競争力強化の「一石三鳥」を狙って、我が国のエネルギー源の多様化及びエネルギー効率の向上に向けた諸手段の総動員を呼びかけるものである。石油資源の確保・有効利用に加え、中長期的に運輸部門の石油依存度を低減するとともに、エネルギー効率の向上を図っていくという目標の実現に向け、自動車産業、石油産業、政府の三者が緊密に意思疎通しながら整合的に協力し、バイオ燃料を含め、自動車の電力化に向けた次世代バッテリーの開発、燃料電池・水素の活用といった様々な技術・政策を、我が国の「強み」である技術を活かす形で組み合わせ、複合的に展開していくことを目指すものである。
具体的には、2030年に向けて電気自動車、水素・燃料電池自動車、クリーンディーゼル、バイオ燃料、ITS等の社会インフラの5つの分野について、各々の分野に可能性があり、どれか一つのみを選ぶことができない現状において、各分野に技術開発等のベンチマークを置いて、その実現を目指しつつ、そのベンチマークの到達度合を見て、施策の重点化を図ることとしている。しかし、現時点では電気自動車等の次世代自動車は2030年に向け研究開発途上にあり、次世代自動車に比べ、液体燃料であるバイオ燃料は即効性があるという点において、他の手段と比べて利点がある。
バイオ燃料は、京都議定書上、カーボンニュートラル(生育過程において二酸化炭素を吸収している植物等を原料としているため、燃料過程において排出される二酸化炭素量は、生育過程において吸収した二酸化炭素量と相殺されるという考え方)と扱われているため、地球温暖化対策の一手段として重要である。我が国においても、2005年に閣議決定された京都議定書目標達成計画において、2010年度までにバイオエタノールを含む輸送用バイオマス燃料を原油換算で50万kL導入することを目指している。一方で、バイオ燃料は、二酸化炭素対策の手段の一つではあるが、そのようになるか否かは、@LCA上の二酸化炭素削減効果・エネルギー収支等の政策効果、Aバイオ燃料の供給安定性の確保、さらには食料との競合や森林破壊等の生態系を含めた問題、Bバイオ燃料の価格・価格安定性といった経済性といった課題を今後克服していけるかが重要な要素となる。
それぞれ課題の克服の糸口としては、食料と競合しないセルロース系原料を活用し、安定供給、経済性等を実現できるよう技術革新を実現していくことが必要である。
こうしたことから、バイオマス・ニッポン総合戦略推進会議が昨年2月に取りまとめた「国産バイオ燃料の生産拡大工程表(総理報告)」との整合性を図りつつ、経済的かつ多量、安定的にセルロース系原料からバイオ燃料等を効率的に生産する画期的な技術革新の実現を目指すため、2007年11月に経済産業省と農林水産省が連携して、石油業界や自動車業界など国内大手16社及び大学等・独立行政法人の研究機関からなる「バイオ燃料技術革新協議会」を設置し、具体的な目標、技術開発、ロードマップ等を内容とする「バイオ燃料技術革新計画」の策定を行なうこととした。
【2つの政策シナリオ】
「次世代・自動車イニシアティブ」では、2030年に向けた石油依存度の低減等の目標実現のため、バイオ燃料をはじめとした各技術項目毎にベンチマーク(指標)を定めている。エタノール生産コストについて2015年に「バイオマス・ニッポンケース1)」として、バイオ由来燃料に係るガソリン税を免税したガソリンの価格競争力を勘案し、製造コストを100円/L、さらに、「技術革新ケース」として、ガソリンとの価格競争力や米国等の開発計画を勘案し、経済的かつ多量、安定的に生産が可能なバイオマスを利用し抜本的な技術革新を目指し、製造コストを40円/Lと設定されている。
バイオ燃料技術革新協議会では、この2つのケースを検討するにあたり、バイオマス・ニッポンケースについては、国内の未利用バイオマスを原料とし、具体的な事業化を念頭に置きエタノールの生産規模は1.5万kL/年とした。技術革新ケースについては、目的生産バイオマスを原料とし、国内外を問わずエネルギー産業として取り組む規模として10万〜20万kL/年とした。
【検討の体制について】
バイオ燃料技術革新計画の策定にあたり、バイオ燃料技術革新協議会の下にバイオマス原料WG、エタノール製造技術WG、システム・LCAWG、バイオリファイナリー連携WGからなる4つのWGと、WGのリーダーからなる幹事会を設置した。
バイオマス原料WG では、国内の未利用バイオマスや目的生産バイオマスの確保に係るポテンシャルや育種等の技術について検討を行なった。エタノール製造WG
では、前処理・糖化・発酵・蒸留等のエタノール製造に係る一連の技術について検討を行なった。システム・LCAWGでは、経済性やLCAの視点から留意すべき事項の整理や社会科学的な課題について整理を行なった。バイオリファイナリー連携WGでは、バイオエタノール以外の、バイオマスからの燃料製造や化学品等としての利用について検討を行なった。
【計画の構成について】
本計画では、第1章において、バイオ燃料についてバイオマス・ニッポンケースと技術革新ケースについて、具体的な生産モデルの例示や具体的な技術開発の方向性を技術ロードマップとしてまとめた。また、LCA上の留意すべき点や食料との競合や生態系への影響等、環境・経済・社会的な課題についても整理を行なっている。加えて、技術課題や開発段階に応じた具体的な研究開発体制について検討を行ない、具体的な進め方について整理を行なった。
第2章は、バイオリファイナリーについて、バイオエタノール以外のバイオマスの燃料製造や化成品等として活用するための可能性についてとりまとめた。
バイオ燃料は、地球温暖化問題、エネルギー源の多様化、農業振興など多様な観点から、現在、多くの注目を集めている。一方で、その利用に当たっては、二酸化炭素の削減効果、安定供給性、食料との競合、生態系、水や土壌への影響、経済性、労働環境や大規模プランテーション化による地域社会へ影響など様々な課題があり、このような課題の解決無くして、持続的にバイオ燃料を活用していくことは困難と考えられる。
バイオ燃料について持続可能な導入を進めていくためには、経済的かつ多量・安定的にセルロース系のバイオマスからバイオ燃料を効率的に製造する技術革新を実現することが不可欠である。
本計画では、原料技術・変換技術の各技術について、具体的な例示や個々の技術のベンチマークを設定し、セルロース由来のバイオ燃料の技術革新を進める筋道を示した。また、それを実現するため、業界横断・省庁横断により効果的に開発を進める体制についても検討を行なった。
「バイオ燃料技術革新協議会」は、バイオ燃料に関する有意義な業界横断・省庁横断の場であり、引き続き技術開発の動向を検証していく。今後、企業、大学、独立行政法人等が実施主体となって技術革新が実現し、バイオ燃料の課題が克服されることにより、バイオ燃料の持続可能な導入拡大が実現されることを期待したい。