運輸エネルギーの次世代化について  http://www.enecho.meti.go.jp/policy/fuel/index.htm


運輸エネルギーの次世代化について

○次世代自動車・燃料イニシアティブ

 経済成長戦略大綱及び新・国家エネルギー戦略【見る→】において、運輸部門の石油依存度を現状100%から2030年には80% 程度にすることや、エネルギー効率を現状から2030年までに更に少なくとも30%向上すること等が目標として掲げられております。
 この目標実現の一環として、次世代自動車・燃料の導入に向け、エネルギー安全保障、環境保全、競争力強化の同時達成のため、バッテリー、クリーンディーゼル、水素・燃料電池、バイオ燃料、世界一優しいクルマ社会構想の5つの方策を念頭におきつつ、ユーザーサイドである自動車メーカー、燃料の供給サイドである石油会社及び行政担当者において、我が国の現状に最も適し、最も強みを活かせるような組み合わせや展開について議論し、「次世代自動車・燃料イニシアティブ」をとりまとめました。
 また、同イニシアティブの一環として、バイオエタノールをはじめとする新燃料の利用を着実に拡大すべく「安心・安全・公正」という原則に則り、資源エネルギー庁長官の私的検討会との位置づけのもと、公的制度基盤等について検討してとりまとめを行ないました。


次世代自動車・燃料イニシアティブとりまとめ
平成19 年5月
次世代自動車・燃料に関する懇談会

目 次

は じ め に.................................................................................................. 4
第1章 次世代自動車の基盤となるバッテリー技術......................................... 8
第1節 エネルギー性能に優れたバッテリー搭載車...................................... 8
第2節 バッテリーと自動車の歴史............................................................... 9
 〜過去2回の失敗............................................................................. 9
第3節 急速に進化した電池技術................................................................ 10
第4節 登場する様々なバッテリー搭載車.................................................. 11
 〜3度目の正直となる可能性......................................................... 11
第5節 バッテリー搭載車の課題と今後の方向性....................................... 12
1.次世代バッテリーの技術開発プロジェクトの開始............................. 12
2.バッテリー搭載車普及のための基盤整備............................................ 13
3.次世代自動車のモーター技術開発の必要性........................................ 13
 〜希少資源対策を踏まえたモーターの高性能化................................. 13
4.バッテリー搭載車の本格普及に向けて............................................... 14

第2章 水素社会の実現に向けた取り組み..................................................... 16
第1節 環境・エネルギー対策の切り札となる燃料電池自動車と水素社会.........16
第2節 燃料電池自動車のこれまでの取り組みと現状................................ 17
 〜水素社会の実現に向けた大プロジェクト.................................... 17
第3節 燃料電池自動車と水素インフラの課題........................................... 18
 〜普及に向けた大きな壁................................................................ 18
第4節 燃料電池自動車・水素供給の今後の方向性.................................... 19
 〜早期普及に向けた取り組み......................................................... 19

第3章 重要性の高まるクリーンディーゼル技術........................................... 21
第1節 ディーゼル車を巡る現状................................................................ 21
1.ディーゼルの大幅クリーン化を可能にする技術の登場...................... 22
2.新世代のディーゼル技術が席巻した欧州市場.................................... 23
3.大幅に改善した我が国の大気汚染問題............................................... 23
第2節 期待される真の「クリーンディーゼル車」の出現......................... 24
第3節 将来に向けたクリーンディーゼル車の重要性................................ 25
1.二酸化炭素排出削減............................................................................ 25
2.新燃料導入の受け皿............................................................................ 26
3.産業競争力強化................................................................................... 27
第4節 クリーンディーゼル車の課題と今後の方向性................................ 28
 〜クリーンディーゼル普及推進協議会の設置................................ 28
1.イメージの改善................................................................................... 28
2.クリーン化によるコスト高への対応................................................... 29
3.クリーンディーゼル推進協議会の設置............................................... 29

第4章 我が国でのバイオ燃料普及に向けて.................................................. 30
第1節 運輸部門の燃料多様化.................................................................... 30
1.運輸部門の燃料多様化の意義............................................................. 30
2.運輸部門の燃料多様化の手段............................................................. 30
第2節 バイオエタノールの現状................................................................ 31
第3節 バイオエタノールの地球温暖化対策としての効果......................... 31
第4節 バイオエタノールのその他の地球環境問題への影響と対応........... 32
第5節 バイオエタノール導入に係るエネルギーセキュリティ.................. 34
第6節 品質確保・脱税問題........................................................................ 36
第7節 バイオエタノール導入にあたっての対応の方向性......................... 36
1.バイオ燃料技術革新計画の策定・協議会の設置................................. 36
2.バイオエタノールの段階的導入.......................................................... 40
3.品質確保・脱税対策............................................................................ 40
4.その他の論点...................................................................................... 41

第5章 IT を活用した世界一やさしいクルマ社会の実現に向けて................. 43
第1節 技術が可能とするクルマ社会の未来............................................... 43
第2節 三つの戦略の概要........................................................................... 45
1.ゼロエミッションを目指すEV 社会システム...................................... 45
2.物流効率倍増を目指す自動制御輸送システム.................................... 46
3.渋滞半減を目指すクルマネットワーク化社会システム...................... 47
第3節 実現を目指した包括的な取り組み.................................................. 48
第4節 エネルギー・環境制約を逆手にとった国際競争力の強化.............. 49

お わ り に................................................................................................ 50


は じ め に

 21 世紀に入り、エネルギー問題や地球温暖化問題に関する世界情勢は一変した。
 エネルギー情勢については、2005 年夏に米国南部を直撃したハリケーンによる被害を契機として石油価格は高騰し、一時は1バレル70 ドルを超えた。この石油価格高騰は、二度の石油危機以降、安価な石油に慣れ親しんできた世界の石油依存体質を改めて浮き彫りにするとともに、世界に対してエネルギー需給構造の変革を訴える役目を果たした。中でも、世界一のエネルギー消費国である米国には強烈なインパクトを与え、2006 年1月、ブッシュ大統領は一般教書演説において、2025 年までに中東石油依存度20%を5%に低減するというAdvanced Energy Initiative1を発表し、石油依存体質からの脱却に向けて大きく梶を切った。
 エネルギー問題に加えて、地球温暖化問題も予断を許さない状況となっている。米国での巨大ハリケーンの発生、豪州に多大なる作物被害をもたらした大異常気象が多発している。今や世界的な地球温暖化は、人間活動によるものであることが確実視されており、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)でも「人間活動によって排出される二酸化炭素などの温室効果ガスが地球温暖化をもたらしている可能性がかなり高い」と結論づけている。地球温暖化が国民生活や経済に深刻な影響を与えうるという危機感は世界中で高まっており、欧州では世界の平均気温上昇を2度以内に抑制するため、2020 年までに温室効果ガスを1990 年比で20%削減するという目標2を樹立している。また、米国でもゴア元副大統領が出演しているドキュメンタリー映画「不都合な真実」3が大ヒットし、地球温暖化問題についての国民の関心を惹きつけ、アカデミー賞を受賞するに至っている。
 このようなエネルギー問題、地球温暖化問題に関する大きな情勢変化は、従来の自動車や自動車燃料のあり方に大きな変化をもたらし、いわゆる自動車燃料及び自動車技術の多様化の動きが世界各地で起きた。
 自動車燃料に関しては、ガソリンや軽油という石油系燃料への依存を低減する動きが加速し、中でもバイオ燃料の導入が大きく進んだ。ブラジルではガソリンにバイオエタノールを約20%混合することが義務づけられるとともに、純粋バイオエタノールだけでも走行可能なフレックスフューエルビークル(FFV)が広く普及した。また、米国ではエネルギー安全保障(中東依存度低減)や農業政策等の観点から、2006 年のAdvanced Energy Initiative において2012 年までにバイオ燃料を75 億ガロン(約2,775 万Kl)導入する目標が掲げられ、翌2007 年の一般教書演説にて発表されたTwenty in Ten では2017 年までに350 億
ガロン(約1億2,950 万kl)(バイオエタノール30%に相当)と導入目標が引き上げられた。これに伴い、全米ではトウモロコシを原料としたバイオエタノ
ール混合燃料の使用が大幅に増加している。欧州においても、2020 年までにバイオ燃料10%導入を義務化している。バイオ燃料の導入は、ブラジルや欧米以外に中国、東南アジアなどでも進んでおり、全世界で燃料多様化に向けた動きが加速している。
 自動車技術については、ガソリン自動車から燃料電池自動車に移行するという単線のシナリオから、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、クリーンディーゼル自動車なども活用する複線のシナリオになり、技術の多様化が大きく進んだ。米国では、石油価格の高騰によってハイブリッド自動車が国民に広く受け入れられ、日系メーカーだけでなく、ビッグスリーにとっても欠かせない技術として大きく位置づけが変化した。更に、近年では家庭で充電して電気で走行することが可能なプラグインハイブリッド自動車に向けた取り組みが活発になっており、エネルギー省やカリフォルニア州などで研究が進んでいる。欧州では、高速を長距離運転するドライバーが多いことから、燃費が良くパフォーマンスの高いクリーンディーゼル自動車が広く普及し、乗用車全体の約半数を占めるほどになった。また、我が国では、米国同様ハイブリッド自動車が広く普及し、最近ではプラグインハイブリッド自動車の研究ス性能のクリーンディーゼル自動車の開発が進んでいる。
 このような環境・エネルギー情勢の大きな変化とそれに伴う自動車燃料や自動車技術の多様化に対応するためには、我が国が進むべき目標と手段を官民で共有し、その戦略に基づき官民が一体となって取り組んでいく必要がある。昨年5月に策定した新・国家エネルギー戦略はまさにその目標を示したものであり、自動車に関係するものとして、2030 年に向けて石油依存度を80%まで低減すると同時にエネルギー効率を現状から30%改善するという2つの努力目標を設定した。
 今回提案する次世代自動車・燃料イニシアティブは、この2つの目標を実現するための手段の明確化を目的としたものであり、その構想は昨年12 月の経済財政諮問会議において経済産業大臣より打ち出された。その手段としては、次世代バッテリー、水素・燃料電池、クリーンディーゼル、バイオ燃料、ITS の5つの技術が挙げられ、これらの技術をどのように組み合わせ、どのように進化していくべきかについて、関係業界である自動車業界と石油業界を交えて議論を重ねてきた。本報告書はその議論の結果を取りまとめたものである。
 第1章では、電気自動車だけでなく、燃料電池自動車、ハイブリッド自動車、そして今後注目されるプラグインハイブリッド自動車のいずれの自動車においても基盤となるバッテリー技術について紹介する。バッテリーを活用した自動車としては、過去に2回、電気自動車の開発がブームとなったが、いずれも価格、性能の両面からガソリン自動車に劣り、普及しなかった歴史がある。しかし、高性能のリチウムイオン電池の登場、世界的なハイブリッド自動車の人気、ガソリン自動車から電気自動車への架け橋となるプラグインハイブリッド自動車というコンセプトの浮上といった背景から、今度こそバッテリー搭載車が普及するという期待感が高まっている。その鍵を握るのはバッテリー技術であることから、政府としては、平成19 年度より次世代バッテリーの技術開発プロジェクトをスタートした。本章では、このプロジェクトを立ち上げるに至った背景を紹介するとともに、バッテリー搭載車の本格普及に向けて、政府が取り組むべき方向性を示す。
 第2章では、究極のクリーンエネルギー自動車である燃料電池自動車を実現する水素・燃料電池技術について述べる。燃料電池について、2001 年1月に策定された「燃料電池実用化戦略研究会報告書」がきっかけとなって官民協力による取り組みが開始した。この取り組みは、翌2002 年に小泉総理が施政方針演説で燃料電池の3年以内の実用化を宣言したことにより一気に取り組みが加速し、技術開発の拡充と関連規制の見直しが行われてきた。その結果、我が国の燃料電池技術は世界最高水準に達し、現在では国内大手自動車メーカー3社が独自開発の燃料電池自動車を実用化するに至っている。その一方、燃料電池自動車の開発が進むにつれて、コスト、耐久性、航続距離、水素貯蔵技術などの様々な課題があること明らかになってきた。本章では、これらの課題を解決するためには、サイエンスに立ち返った研究開発が必要であることを述べるとともに、課題解決に向けて経済産業省が行っている取り組みについて述べる。
 第3章では、欧州の乗用車市場の約半数を占めるクリーンディーゼル技術について、90 年代から大幅に進んだ排ガスクリーン化の技術を紹介すると同時に、クリーンディーゼル自動車の普及が、大気汚染問題の解決だけでなく、自動車及び製油所からの二酸化炭素排出削減につながることを示す。また、ここ最近の動きとして、本田技研、日産自動車、マツダなどの日本メーカー、ダイムラー・クライスラー、フォルクスワーゲンなどの欧州メーカーが、相次いで日本市場や米国市場にクリーンディーゼル自動車を投入する計画を発表している動きを紹介し、クリーンディーゼル技術が、欧州だけでなく、日本、米国、並びに中国、インドなどの市場においても欠かせないものであることを述べる。そして、我が国でのクリーンディーゼル自動車の普及に向けて、政府が取り組むべき方向性を示す。
 第4章では、この数年で大きな注目を集めるようになったバイオ燃料の導入は意義があるが、バイオエタノールの増産が二酸化炭素削減というメリットだけでなく、穀物価格の高騰や、生物多様性への影響等のデメリットをももたらす懸念があることを示す。また、一定品質のガソリンの安定供給や、連産品であるその他の石油製品の安定供給など、エネルギーセキュリティの観点からは、大量にエタノールを導入する際に課題があることを示す。その上で、バイオエタノールの導入に当たっては、国産バイオエタノール、なかんずく画期的な技術革新により実現されるセルロース系エタノールが重要であり、利用拡大はこうした国内技術開発の進展と合わせて段階的に行っていくことが必要であることを述べる。
 第5章では、IT を活用した世界一やさしいクルマ社会構想について述べる。現在のクルマ社会は100 年以上もの長い年月をかけて構築された。しかし、自動車技術の革新や燃料の多様化によって、クルマ社会は大きな変革を迎えつつある。そこで、IT を活用し、環境に優しい道路整備や街づくりをも同時に進めれば、「世界一やさしいクルマ社会」を実現することも夢ではなくなってきた。ここでは世界一やさしいクルマ社会を実現する戦略として、ゼロエミッションを目指すEV 社会システム、物流効率倍増を目指す自動制御輸送システム、渋滞半減を目指すクルマネットワーク化社会システムという3つを掲げ、その具体像と実現に至るロードマップを示す。


お わ り に

 人や物の移動を自由にする自動車は、高度に発展した現代文明にとって欠かせない道具であり経済発展の象徴的な存在となっている。一方、自動車は「自動」と名が表すように、人間の力ではない他のエネルギーを使って移動を可能にする乗り物であり、自動車の普及拡大はエネルギーの大量使用やそれに伴う温室効果ガスなどの大量発生を伴う宿命にある。次世代自動車・燃料イニシアティブは、この自動車の宿命を自動車、燃料そしてインフラの技術革新でブレークスルーすることを目指した戦略であり、第一章から第五章では、ブレークスルーに欠かせない5つの戦略、すなわち、バッテリー化、水素化、クリーンディーゼル化、新燃料化、ITをベースにしたクルマ社会構想について、現状、課題、講じるべき具体的方策を提示した。 今後、これらの5つの技術の実用化を推し進め、新・国家エネルギー戦略で掲げた2つの目標を達成していかなければならないが、その上で重要となる3つの視点について述べたい。
 1つ目は技術開発や普及を進めていく上でのベンチマークの共有である。技術の実用化を進めていくのは企業間や大学・研究機関間の競争であり、競争がない世界では早期の実用化は見込めない。ただし、効率的な競争を行うためには技術開発の達成度合いを確認することが出来るベンチマークが不可欠であり、逆にベンチマークがなければ技術開発にどの程度のリソースを投入すべきかの判断基準が不明確になる。そこで、これまでの検討結果を踏まえ、5つの技術について段階的に確認すべきベンチマークを定めることとした。(最終ページ参照)技術立国である我が国としては、自動車分野やエネルギー分野において常に世界最先端の開発競争が行われていることが理想である。このベンチマークをベースに企業や大学・研究機関が必要な連携を行いながら技術開発競争に従事していくことが期待される。
 2つ目は企業や業界、政府機関の壁を越えた連携強化である。次世代自動車・燃料イニシアティブは、中長期的な環境・エネルギー問題の解決に向けて政府、自動車業界、石油業界の三者が協力関係を構築した初めての試みであるが、これまで自動車業界のみに閉じていた自動車の環境・エネルギー対策を他業界に広げたという意味で極めて重要な意味を持つ。産業間連携の必要性はこれにとどまるものではない。本イニシアティブで示した5つの技術は、自動車業界と石油業界のみに閉じるものではなく、多数のステークホルダーの協力なくして実用化は見込まれない。例えば、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車を普及させるためには、高性能バッテリーの開発を担う大学や電池メーカー、充電インフラの整備を担う電力会社などの関係者の協力が欠かせない。また、ITを活用した世界一やさしいクルマ社会を実現するには、街づくりやインフラ整備を担う関係省庁、自治体、建設業界、住宅業界などとの連携が必要となる。このため、本イニシアティブを一つの契機として自動車に関係する企業、大学・研究機関、政府、自治体などが短期的利害を乗り越え、長期的な発展のため幅広い協力関係を構築していくことが期待される。
 3つ目は実用化した成果の海外市場への展開である。環境・エネルギー問題は我が国固有の問題ではなくグローバルに共通する問題であることから、環境・エネルギー技術で世界最先端を目指す我が国としては、実用化した技術を積極的に海外市場に展開し、海外の環境・エネルギー問題の解決に貢献する姿勢が重要である。本イニシアティブでは自動車側の技術を中心に取り上げたが、海外展開する上では、各国のエネルギー資源のポートフォリオを踏まえ、一次ギーをモビリティーに転換する自動車技術を組み合わせた最適パッケージを提供するという思想が重要である。例えば、石炭資源が豊富な国に対しては、二酸化炭素が排出されないクリーン発電技術と電気を利用して走行する電気自動車やプラグインハイブリッド自動車をパッケージで展開することが出来れば、その国にとって最小限の環境・エネルギー負荷で必要なモビリティーを確保することが可能になる。このことから、自動車やエネルギーに関係する企業に対しては、各国のエネルギー資源ポートフォリオに最適なソリューションを提供するという発想で、必要な技術を持ち合わせた企業同士が協力して日本企業連合軍を構成し、自動車技術やエネルギー転換技術を積極的に海外市場に展開し
ていくことが期待される。
 3つの視点を実現する上では、政府の役割も大きい。ベンチマークについては、競争環境の最適な整備を維持していくために必要に応じて見直す必要がある。幅広い協力関係を構築する上では、政府がコーディネーター機能を果たさなければならない。海外展開する上では、環境整備や支援策の拡充を進めてい技術の開発と実用化を後押しする環境整備を進めていく中で、政府には、常に欧米に勝る環境整備を進めていくことが期待される。 高まる環境・エネルギー制約は、これまで世界中のどの国も経験したことのない厳しいものとなる可能性もある。しかし、エネルギー資源に乏しい我が国は、厳しい環境・エネルギー制約を技術でブレークスルーしてきた輝かしい歴史を持つ。だからこそ、このような危機を逆に好機と捕らえ、我が国は、その強みである技術力を最大限に生かし、関係者の幅広い協力関係を構築することで、世界をリードすることが期待される。
 日本政府は、先般、「美しい星50」を公表した。そこでは、全世界2050年までにCO半減を目指しイノベーションで明るい未来を切り開くことを唱
っている。本イニシアティブは、この「美しい星50」の一翼を担う戦略であり、また、一里塚を形成する。イニシアティブをベースに新しいクルマ社会の形成に向けた大きな国民的な運動が起こり、世界一やさしいクルマ社会の実現に向けた動きが一層加速することを強く期待する。


2 0 3 0 年に向けてのロードマップ


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