数
字
・
アルファベット |
A型肝炎 |
Hepatitis
A |
A型肝炎(Aがたかんえん、Hepatitis
A, HA)とは、A型肝炎ウイルス(HAV)が原因のウイルス性肝炎の一種である。多くは一過性の急性肝炎症状で終わり、治癒後は強い免疫を獲得する。
A型肝炎ウイルス(HAV)は全世界に分布する。感染力は比較的強く、患者の発生数と居住環境の衛生状態には関連性がある。上下水道が整備されている先進国での発生は少ないが、衛生環境の劣悪な地域では蔓延している。衛生環境が劣悪な地域の感染は、乳幼児期に感染する事が多いが流行はない。衛生環境が改善する過程では規模の大きな流行が見られ、1988年に中華人民共和国の上海市で30万人規模の流行があった。
衛生環境の整った先進国などでの感染は、抗体保有率が低いことから集団発生が見られる。また患者の発生報告には季節性があり、日本では例年春先になると感染者数が増加するが、その理由は明らかではない。戦後生まれの世代(大凡60歳以下)ではA型肝炎に対する抗体(HA抗体)を持っていない者が多く、これらの人々がA型肝炎の流行地へ旅行することで感染するパターンが多い。近年では汚染された輸入食材経由の感染が懸念されている。
潜伏期間が約1ヶ月と長いことから、未発症の感染者を感染源として食品を汚染し集団発生することがあるが、原因食材の特定には至らない場合も多い。 |
B型肝炎 |
Hepatitis
B |
B型肝炎(Bがたかんえん、英: Hepatitis
B)とは、B型肝炎ウイルス (HBV) に感染することで発症するウイルス性肝炎の一つ。
日本においてB型肝炎ウイルス保有者(キャリア)は、150万人程度といわれている。そのうち10%が肝炎発症となり、慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌に進行する。しかし、95%は自然治癒する。したがって、キャリアのうち5%が慢性肝疾患になる。
近年、日本ではあまり見られなかったジェノタイプA(北米、欧州、アフリカ中部に多く分布する)のB型肝炎ウイルス感染が広がりつつある。ジェノタイプAのB型肝炎ウイルスに感染した場合、その10%前後が持続感染状態(キャリア化)に陥る。本来、日本に多いジェノタイプCのB型肝炎ウイルスは、成人してからの感染では、キャリア化することはまれであったことから、ジェノタイプAのB型肝炎ウイルス感染の拡大には、警戒が必要である。 |
C型肝炎 |
Hepatitis
C |
C型肝炎(Cがたかんえん、英: Hepatitis
C)とは、C型肝炎ウイルス (HCV) に感染することで発症するウイルス性肝炎の一つ。
現在の日本のHCV感染者数は約200万、世界では1億7千万(世界人口の3%近く)がキャリアであると見られている。
日本ではインターフェロン治療が効きにくい1b型が70〜85%を占め、以降2a型が10〜15%、2b型が約5%で、他はまれである。ただし、血友病患者では1a型が多い。これは血友病患者がC型肝炎に罹患する原因となった血液製剤の輸入元であるアメリカでは1a型が最も多いことに由来する。
以前より、非A非B型肝炎と称されていた。
U.S. Preventive Services Task Forceは、1945〜1965年生れのすべてのアメリカ人に対してC型肝炎スクリーニングを推奨することとした。 |
DIC
(播種性血管内凝固症候群) |
Disseminated
intravascular
coagulation |
播種性血管内凝固症候群(はしゅせい
けっかんない ぎょうこ しょうこうぐん、英: disseminated intravascular coagulation,
DIC)は、本来出血箇所のみで生じるべき血液凝固反応が、全身の血管内で無秩序に起こる症候群。早期診断と早期治療が求められる重篤な状態である。汎発性血管内凝固症候群(はんぱつせい- )ともいう。
またこうした全身で無秩序に起こる血液凝固が血小板を消耗することにより出血箇所での血液凝固が阻害されることを、消費性凝固障害(しょうひせい ぎょうこ しょうがい、英: consumption coagulopathy)という。 |
DSM
(精神障害の診断と統計の手引き) |
Diagnostic
and
Statistical
Manual
of
Mental
Disorders |
精神障害の診断と統計の手引き(せいしんしょうがいのしんだんととうけいのてびき、Diagnostic
and Statistical Manual of Mental Disorders、DSM)とは、精神障害の分類(英語版)のための共通言語と標準的な基準を提示するものであり、アメリカ精神医学会によって出版されている。DSMは当初、統計調査のために作成された。DSMの第3版より、明確な診断基準を設けることで、医師間で診断が異なるという診断の信頼性の問題に対応した。
DSMは、世界保健機関による疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD)とともに、国際的に広く用いられている。いずれも記述精神医学であり、「特定の状態が特定の期間に存在する」という具体的な診断基準を設けた操作的診断基準に属する。疾病の解明に加え、各々の医師等の間における結果の比較を可能とし、また、疫学的調査に有用である。すなわち、本来は、一人ひとりの患者の診断を正確に行う目的のものではない。
明示的な診断基準がないため、以前の診断基準では、アメリカと欧州、また日本での東西によって診断の不一致が見られた。このような診断の信頼性の問題により、明示的な診断基準を含む操作的診断基準が1980年のDSM-IIIから採用され、操作主義の精神医学への導入であり画期的ではあった。一方で、恣意的に適用されてはならないといった弱点はいまだ存在する。依然として、どの基準が最も妥当性があるかという問題の解決法を持たず、他の診断基準体系との間で診断の不一致が存在するため、原理的に信頼性の問題から逃れられないという指摘が存在する。
DSMは、その邦訳書において「精神障害/疾患の診断・統計マニュアル」と訳されている。「精神障害/疾患の分類と診断の手引き」の訳は、DSMの早見表のものである。最新のDSMは第5版で、2013年5月18日に出版されており、2014年4月において邦訳書は出版されていない。 |
ICD
(疾病及び関連保健問題の国際統計分類) |
International
Statistical
Classification
of
Diseases
and
Related
Health
Problems |
疾病及び関連保健問題の国際統計分類(しっぺいおよびかんれんほけんもんだいのこくさいとうけいぶんるい、International
Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems、略称:ICD)とは、死因や疾病の国際的な統計基準として世界保健機関
(WHO) によって公表された分類。死因や疾病の統計などに関する情報の国際的な比較や、医療機関における診療記録の管理などに活用されている。
ICDは当初、第1回国際死因分類として1900年に国際統計協会により制定され、以降、9版まではほぼ10年ごとに改訂がされている。10版までは採択まで15年かかっている。第7版からは死因だけでなく疾病の分類が加えられ、医療機関における医療記録の管理に使用されるようになった。「基本分類表」は3年ごとの「大改正」と、毎年行われる「小改正」に分けて改正され、基本分類表に影響を与えない「索引」は毎年改正される。これまで第6回、第8回、第10回に大きな内容の変更を伴う改訂が行われている。
現在の最新版は、1990年の第43回世界保健総会で採択された第10版で、ICD-10 として知られる。ICD-10では、分類はアルファベットと数字により符号されており、最初のアルファベットが全21章から成る大分類(Uを除く)、続く数字が中分類を表している。また、ICD-10は後に2007年版として改定が行なわれている。
精神医学の領域においてICD-10は、アメリカ合衆国精神医学会の定めた『精神障害の診断と統計の手引き』第四版 (DSM-IV) と並び、代表的な診断基準のひとつとして使用される。厚生労働省は統計法に基づく統計調査にICD-10を用いている。
なお、新生物 (C00 - D48) については、組織型の分類である「国際疾病分類
腫瘍学 ICD-O」が併用される。 |
PTSD
(心的外傷後ストレス障害) |
Posttraumatic
stress
disorder |
心的外傷後ストレス障害(しんてきがいしょうごストレスしょうがい、Posttraumatic
stress disorder:PTSD)は、危うく死ぬまたは重症を負うような出来事の後に起こる、心に加えられた衝撃的な傷が元となる、様々なストレス障害を引き起こす疾患のことである。
心の傷は、心的外傷またはトラウマ(本来は単に「外傷」の意で、日本でも救命や外傷外科ではその意味で使われ、特に致命的外傷の意味で使われることが多いが、一般には心的外傷として使用される場合がほとんどである)と呼ばれる。トラウマには事故・災害時の急性トラウマと、児童虐待など繰り返し加害される慢性の心理的外傷がある。
心的外傷後ストレス障害は、地震、洪水、火事のような災害、または事故、戦争といった人災。いじめ、テロ、監禁、虐待、強姦、体罰などの犯罪、つまり、生命が脅かされたり、人としての尊厳が損なわれるような多様な原因によって生じうる。など。多種多様な日常の問題に原因があったりもする。 |
SARS⇒重症急性呼吸器症候群 |
|
SSRI
(選択的セロトニン再取り込み阻害薬) |
Selective
serotonin
reuptake
inhibitor |
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(せんたくてきセロトニンさいとりこみそがいやく、Selective
Serotonin Reuptake Inhibitors、SSRI)は、抗うつ薬の一種。シナプスにおけるセロトニンの再吸収に作用することでうつ症状、病気としての不安の改善を目指す薬。2009年5月現在、日本国内で100万人以上が使用していると推定されている。
旧来の三環系などと呼ばれる抗うつ薬は副作用があり、医者または患者によっては敬遠されていたことから、副作用を少なく・より選択的に作用することを目的として開発された。肝毒性、心・血管副作用や、鎮静作用、口の渇き・便秘など抗コリン作用が原因と思われる副作用は減少したが、セロトニン症候群、賦活症候群、SSRI離脱症候群(中断症候群)など旧来の抗うつ剤ではあまり報告のなかった副作用が発生している。
「選択的」とは他の神経伝達物質に比べ、セロトニンの再取り込み阻害作用のみでアセチルコリン等は阻害しないこと、ノルアドレナリン対セロトニン及びドーパミン対セロトニン比が大きいことを意味する。 |
あ |
悪性腫瘍
(癌、悪性新生物) |
Cancer |
悪性腫瘍(あくせいしゅよう、英: malignant
tumor)は、遺伝子変異によって自律的で制御されない増殖を行うようになった細胞集団(腫瘍、良性腫瘍と悪性腫瘍)のなかで周囲の組織に浸潤し、また転移を起こす腫瘍である。悪性腫瘍のほとんどは無治療のままだと全身に転移して患者を死に至らしめる。
一般に癌(ガン、がん、英: cancer、独:
Krebs)、悪性新生物(あくせいしんせいぶつ、英:
malignant neoplasm)とも呼ばれる。
「悪性腫瘍(malignant tumor)」は、一般に「がん(英: cancer、独: Krebs)」として知られているが、病理学的には漢字で「癌」というと悪性腫瘍のなかでも特に上皮由来の「癌腫(上皮腫、carcinoma)」のことを指す。
日本語では平仮名の「がん」と漢字の「癌」は同意ではない。平仮名の「がん」は、「癌」や「肉腫」(sarcoma)、白血病などの血液悪性腫瘍も含めた広義的な意味で悪性腫瘍を表す言葉としてつかわれているからである。したがって癌ばかりでなく肉腫や血液悪性腫瘍も対象にする「国立がん研究センター」や各県の「がんセンター」は平仮名で表記する。
「癌」を表す「cancer」は、かに座 (cancer) と同じ単語であり、乳癌の腫瘍が蟹の脚のような広がりを見せたところから、医学の父と呼ばれるヒポクラテスが「蟹」の意味として古代ギリシャ語で「(carcinos)」と名づけ、これをアウルス・コルネリウス・ケルススが「cancer」とラテン語訳したものである。
漢字の「癌」は病垂と「岩」の異体字である「嵒」との会意形声文字で、本来は「乳がん」の意味である。触診すると岩のようにこりこりしているからで、江戸期には「岩」と書かれた文書もある。有吉佐和子の小説「華岡青洲の妻」には、乳がんを表す「岩(がん)」ということばが頻出する。
「悪性腫瘍」は「悪性新生物」とも呼ばれることがあるが、malignant neoplasmの訳語として作られた言葉で、malignant「悪性の」、neo「新しく」、plasm「形成されたもの」を意味する。
なお、「癌」という言葉は、上記の用法をもとに比喩的に用いられることがあり、社会の機構や組織について「○○は△△のがんだ」ということがある。
「悪性腫瘍」とは、腫瘍の中でも、特に浸潤性を有し、増殖・転移するなど悪性を示すもののことである。
ヒトの身体は数十兆個の細胞からなっている。これらの細胞は、正常な状態では細胞数をほぼ一定に保つため、分裂・増殖しすぎないような制御機構が働いている。
それに対して腫瘍は、生体の細胞の遺伝子に異常がおきて、正常なコントロールを受け付けなくなり自律的に増殖するようになったものである。この腫瘍が正常組織との間に明確なしきりを作らず浸潤的に増殖していく場合、あるいは転移を起こす場合(多くは浸潤と転移の双方をおこす)悪性腫瘍と呼ばれている。
・無制限に栄養を使って増殖するため、生体は急速に消耗する
・臓器の正常組織を置き換え、もしくは圧迫して機能不全に陥れる
・異常な内分泌により正常な生体機能を妨げる(→播種性血管内凝固症候群
(DIC)、傍腫瘍症候群、高カルシウム血症)
・全身に転移することにより、多数の臓器を機能不全に陥れる |
悪性リンパ腫 |
Lymphoma |
悪性リンパ腫(あくせいリンパしゅ、ML:Malignant
Lymphoma)は、血液のがん(医学上、血液の癌は平仮名で「がん」と表記する)で、リンパ系組織から発生する悪性腫瘍である。
リンパ系組織は全身を巡っているため、肉腫及び癌腫の癌とは異なり、外科手術による切除は行わず(但し、腫大による圧迫などを緩和するため姑息手術を行うことはある)、主に放射線療法および化学療法を適応する。リンパ腫には「良性」はない為、必ず「悪性」ということになるが、日本語の病名としては明示的に「悪性リンパ腫」と呼び習わしている。診療科目は血液内科や耳鼻咽喉科などである。
悪性リンパ腫は、単一ではなく、多様な病型のリンパ系組織のがんの総称である。(その疾患分類については今でも分類作業が進行中である。)病型を大別すると、ホジキンリンパ腫(Hodgkin's lymphoma,HL、あるいは Hodgkin's disease, HD)と非ホジキンリンパ腫 (non Hodgkin's lymphoma, NHL) がある。欧米ではホジキンリンパ腫が多数を占めるが、日本人のホジキンリンパ腫は約10%であり、日本では殆どが非ホジキンリンパ腫で占めている。病型によって治療方針及び予後が大きく異なるので、リンパ腫では自己の病型を知ることが重要である。日本人の2000年における年間推定患者数は約1万3000人、発生率は10万人に約10人程(欧米人は10万人に約20人)で近年増加傾向にある。
リンパ腫は全身に発生するというその性質上、治療を行ってもがん細胞が完全に消えたことを証明することはできない。そのため「完治」という表現はせず、腫瘍を検出できなくなった時点で「緩解(寛解)」したと表現する。これは、同じ血液のがんである白血病と同様の扱いである。緩解に至ってもがん細胞が残存していることがあって、再発するケースもある。
原因はわかっていないが、ウイルス説・カビ説・遺伝説などがある。小児白血病、絨毛癌などと並んで、悪性腫瘍の中では、比較的抗がん剤が効きやすいとされる。抗がん剤は活発な細胞を攻撃する為、一般に、がんの進行が早い悪性度の高いものほど抗がん剤に対する感受性が強く、進行の遅い低悪性度は感受性が低いとされている。 |
足白癬
(水虫)⇒白癬 |
Athlete's
foot |
足白癬(あしはくせん)は、白癬菌(はくせんきん)が足の皮膚の角質やその下の皮下組織を侵食する事によって炎症などが起きる感染症で、足の指や足裏などに水疱や皮膚の剥離(薄く皮が剥ける)などを伴い、多くの場合、発赤や痛痒感などの苦痛を伴う。一般には水虫(みずむし)という通称で知られている。また、足白癬には角化型白癬(かくかがたはくせん)と汗疱状白癬(かんぽうじょうはくせん)の2種類が存在する。 |
アスペルガー症候群 |
Asperger
syndrome |
アスペルガー症候群(アスペルガーしょうこうぐん、Asperger
Syndrome, AS)は、興味・コミュニケーションについて特異性が認められる広汎性発達障害である。
興味の面では、特定の分野については驚異的なまでの集中力と知識を持ち、会話の面では、聞かれたことに対して素直に答える(「空気を読む」などの行為を苦手とする)、といった特徴を持つ。 日本語ではしばしばアスペルガー, アスペとも略して呼ばれる。
各種の診断基準には明記されていないが、総合的なIQが知的障害域でないことが多く「知的障害がない自閉症」として扱われることも多いが、この障害を実際の自閉症と関連付けるのは学会の仮説であり、実証性に乏しい。決定づける論文なども存在しない。
なお、世界保健機関・アメリカ合衆国・日本国などにおける公的な文書では、自閉症とは区別して取り扱われる。 精神医学において頻用されるアメリカ精神医学会の診断基準 (DSM-IV-TR) ではアスペルガー障害と呼ぶが、アスペルガーを「障害」や「症候群」として取り扱うことへの反論は根強く、DSM-5ではアスペルガー症候群の名称を無くして自閉症スペクトラム(autism spectrum disorder)に統一される予定。
他者の気持ちの推測力など、心の理論の特異性が原因の1つであるという説もある。
特定の分野への強いこだわりを示し、運動機能の軽度な障害が見られたりすることもある。しかし、カナータイプ(伝統的な自閉症とされているもの)に見られるような知的障害および言語障害はない。 |
あせも⇒汗疹 |
|
アトピー性皮膚炎 |
Atopic
dermatitis |
アトピー性皮膚炎(アトピーせいひふえん、英語:atopic
dermatitis)とは、アレルギー反応と関連があるもののうち皮膚の炎症(湿疹など)を伴うもので過敏症の一種。アトピーという名前は
「場所が不特定」 という意味のギリシャ語
「アトポス」 (atopos - a=不特定、 topos=場所) から由来し、1923年 コカ(coca) という学者が 「遺伝的素因を持った人に現れる即時型アレルギーに基づく病気」 に対して名づけた。
「アトピー性皮膚炎」 という言葉が医学用語として登場するのは、1933年である。アメリカ人のザルツバーガー皮膚科医が、皮膚炎と結びつけて
「アトピー性皮膚炎(Atopic Dermatitis)」 という病名をはじめて使用した。医学用語としては気管支喘息、鼻炎などのほかのアレルギー疾患にも冠されるが、日本においては慣用的に「アトピー」のみで皮膚炎のことを指すことが多い。 |
アナフィラキシー |
Anaphylaxis |
アナフィラキシー(英: anaphylaxis)とはヒトや他の哺乳類で認められる急性の全身性かつ重度なI型過敏症のアレルギー反応の一つ。この用語はギリシャ語であるana(反抗して)とphylaxis(防御)を語源とする。ほんの僅かなアレルゲンが生死に関わるアナフィラキシー反応を引き起こすことがある(アナフィラキシーショック)。アナフィラキシーは、アレルゲンの摂取、皮膚への接触、注射や時に吸入により惹起され得る。 |
アポロ病⇒急性出血性結膜炎 |
|
アルツハイマー型認知症 |
Alzheimer's
disease |
アルツハイマー型認知症(アルツハイマーがたにんちしょう、Alzheimer's
disease、AD)は、認知機能低下、人格の変化を主な症状とする認知症の一種である。日本では、認知症のうちでも脳血管性認知症、レビー小体病と並んで最も多いタイプである。
アルツハイマー病(AD)には、以下の2つのタイプがある。
家族性アルツハイマー病(Familial AD、FAD)
完全な常染色体優性遺伝を示し、遺伝性アルツハイマー病ともよばれる。
アルツハイマー型認知症(dementia of Alzheimer type、DAT)
アルツハイマー病の中でほとんどを占める。老年期(60歳以上)に発症するもの。
「アルツハイマー病」の名は、最初の症例報告を行ったドイツの精神科医アロイス・アルツハイマーに由来している。アルツハイマーは、「レビー小体型認知症」にその名を残すフレデリック・レビーとともにミュンヘン大学で、ドイツ精神医学の大家エミール・クレペリンの指導のもと研究活動に従事していた。アルツハイマーは、1901年に嫉妬妄想などを主訴としてはじめてアルツハイマーの元を訪れた、世界で最初に確認された患者アウグステ・データー(女性) (Auguste Deter) に関する症例を、1906年にテュービンゲンのドイツ南西医学会で発表した。発症時アウグステ・データーは46歳であった。アウグステ・データーは56歳で死亡した。また、翌年『精神医学およ法精神医学に関する総合雑誌』に論文を発表した。その後、この症例はクレペリンの著述になる精神医学の教科書で大きく取り上げられ、「アルツハイマー病」として広く知られるようになった。文部科学省科学技術政策研究所によれば、2030年までにアルツハイマー病の進行を阻止する技術が開発されるとしている。
『アルツハイマー型認知症の生化学』も参照。 |
アルビノ
⇔白変種(ホワイトライオンやホワイトタイガーなど) |
Albinism |
アルビノ(albino 羅"albus;白い
+ ino" 英: albinism)は、動物学においては、メラニンの生合成に係わる遺伝情報の欠損により
先天的にメラニンが欠乏する遺伝子疾患、ならびにその症状を伴う個体のことを指す。対義語はメラニズム(英語版)。
この遺伝子疾患に起因する症状は先天性白皮症(せんてんせいはくひしょう)、先天性色素欠乏症、白子症などの呼称がある。また、この症状を伴う個体のことを白化個体、白子(しらこ・しろこ)などとも呼ぶ。さらに、アルビノの個体を生じることは白化(はくか・はっか)、あるいは白化現象という。
一方、植物学の分野においては、光合成色素を合成できない突然変異個体のことを指す用語として用いられる。このような個体は独立栄養が営めないため、種子中の栄養を使い切ってしまった時点で枯死することになる。
先天的なメラニンの欠乏により体毛や皮膚は白く、瞳孔は毛細血管の透過により赤色を呈する。劣性遺伝や突然変異によって発現する。広く動物全般に見られ、シロウサギやシロヘビが有名である。ほとんどの場合、視覚的な障害を伴い、日光(特に紫外線)による皮膚の損傷や皮膚がんのリスクが非常に高い。また外部から発見されやすく自然界での生存は極めてまれである。そのため、しばしば神聖なものやあるいは逆に凶兆とされ、信仰の対象として畏れられる。また、観賞用としても人気がある。なおアルビノは、正常な遺伝情報により白化した白変種とは異なる。
ヒトのアルビノは医学的に先天性白皮症と呼ばれる。チェディアック・東症候群 (CHS) 、ヘルマンスキー・プドラック症候群
(HPS) 、グリシェリ症候群 (GS) の合併症として起こる色素欠乏を白皮症に含める場合もある。
アフリカ南東部では、「アルビノ」の体には特別な力が宿るという伝統的な考えから、臓器や体の一部など売却する目的で、アルビノの人々をターゲットにした殺人が後を絶たない。 |
アレルギー |
Allergy |
アレルギー(独 Allergie)とは、免疫反応が、特定の抗原に対して過剰に起こることをいう。免疫反応は、外来の異物(抗原)を排除するために働く、生体にとって不可欠な生理機能である。
アレルギーが起こる原因は解明されていないが、生活環境のほか、抗原に対する過剰な曝露、遺伝などが原因ではないかと考えられている。なお、アレルギーを引き起こす環境由来抗原を特にアレルゲンと呼ぶ。最近では先進国で患者が急増しており、日本における診療科目・標榜科のひとつとしてアレルギーを専門とするアレルギー科がある。
喘息をはじめとするアレルギーの治療に関して、欧米の医師と日本の医師との認識の違いの大きさを指摘し、改善可能な点が多々残されていると主張する医師もいる。
アレルギー疾患と自己免疫疾患
自己免疫疾患はアレルギーと異なり、自己の持つ抗原に対して免疫反応が起こる疾患である。内因性のアレルゲンによるアレルギー反応が病態となっている点が異なるが、その機序は同一である。
アレルギー疾患
外部からの抗原に対し、免疫反応が起こる疾患。ただしその抗原は通常生活で曝露される量では無害であることが多く(たとえば春先の花粉そのものが毒性を持っているわけではない)、不必要に不快な結果をもたらす免疫応答が起こっているといえる。アレルギー性疾患とも言う。
代表的な疾患としては アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(花粉症)、アレルギー性結膜炎、 アレルギー性胃腸炎、気管支喘息、小児喘息、食物アレルギー、薬物アレルギー、蕁麻疹があげられる。また、最近になって柑橘類の匂いや、ガムなどの香料の匂い程度で喘息、顔面紅潮などの1型アレルギー症状を示す病態が注目されている。
自己免疫疾患
自己の体を構成する物質を抗原として、免疫反応が起こる疾患。特定の臓器や部位の障害、炎症をもたらしたり、全身性の症状を呈する場合がある。
代表的な疾患としては関節リウマチといった膠原病や円形脱毛症があげられる。 |
アレルギー性鼻炎 |
Allergic
rhinitis |
アレルギー性鼻炎(アレルギーせいびえん、allergic
rhinitis、略:AR )とは、発作性反復性のくしゃみ、水性鼻汁、鼻閉を主徴とする鼻粘膜のI型アレルギーである。
鼻アレルギー(nasal allergy)とも呼ばれるが、この場合は鼻粘膜における炎症である鼻炎以外、すなわち副鼻腔などを含む鼻におけるアレルギー疾患全般を指す。しかしながら、アレルギー性鼻炎と鼻アレルギーとはしばしば同義に用いられる。
鼻過敏症(hyperesthetic rhinitis)と呼ぶこともあるが、これはさらに広義であり、アレルギーの機序によらない鼻疾患、たとえば血管運動性鼻炎なども含む概念である。
アレルギー性鼻炎には通年性と季節性があり、後者の代表的なものに花粉症がある。空気が乾燥する季節に限って、鼻炎を起こすケースもある。
やや狭義および一般市民の間で用いられる意味でアレルギー性鼻炎と言った場合、通年性のアレルギー性鼻炎を指すことが多い。通年性アレルギー性鼻炎の代表的なものは、ダニによる鼻炎である。しかし、カビによる鼻炎も少なくないことがわかってきている。 |
胃癌 |
Stomach
cancer |
胃癌(いがん、英: Stomach
cancer、独: Magenkrebs, MK)は胃に生じる癌の総称。
広義の「胃癌」には以下の種類がある。
・胃粘膜上皮から発生した癌腫:狭義の胃癌
・上皮以外の組織から発生した悪性腫瘍:GIST・胃悪性リンパ腫など
胃癌は中国、日本、韓国などアジアや南米に患者が多く、アメリカ合衆国をはじめ他の諸国ではそれほど顕著ではない。
2003年の日本における死者数は49,535人(男32,142人、女17,393人)で、男性では肺癌に次いで第2位、女性では大腸癌に次いで第2位であった(厚生労働省
人口動態統計より)。かつて日本では男女とも胃癌が第1位であったが、死者数は年々減少している。 |
一過性脳虚血発作 |
Transient
ischemic
attack |
一過性脳虚血発作(いっかせいのうきょけつほっさ、transient
ischemic attacks:TIA)とは、脳の循環障害により起こる一過性の神経症状を指す。
24時間以内に一旦完全に消失する特徴を持ち、また繰り返し起こることで脳梗塞を併発する恐れがあるので、脳梗塞の危険信号と考えられている。脳卒中治療ガイドライン2009によれば、TIA発症後90日以内に脳梗塞を起こす可能性は15ないし20パーセント、そのうち48時間以内の発症は約半数である (48時間以内の脳梗塞への移行は5%程度、数ヶ月以内の移行は20〜30%程度という意見もある)。一方TIAを疑った時点で速やかに治療を開始した場合、90日以内の大きな脳卒中発症率が2.1パーセントまで低下するという。
なお血管系の疾患の合併症として現れることが多いので、この症状が見られる場合は高血圧症・高脂血症・糖尿病等の検査も同時に行う。 |
咽頭結膜熱 |
Adenovirus
infection |
咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)とはアデノウイルスによる感染症。プールの水を媒介として感染しやすいことから「プール熱」や咽頭結膜炎ともいわれる。
感染後4〜5日間の潜伏期間を経て、突然、38〜40℃の高熱が4日〜1週間続く。また喉の腫れと結膜炎を伴う。喉の腫れがひどい場合は扁桃腺炎になることもある。結膜炎を伴う場合は、目が真っ赤に充血する。発熱、結膜炎、喉の腫れの3つの症状は、必ずしも同時に現れない。 |
インフルエンザ |
Influenza |
インフルエンザ(ラテン語: influenza)とはインフルエンザウイルスによって引き起こされる急性感染症のことで、多くは上気道炎症状・呼吸器疾患を伴うことで流行性感冒(りゅうこうせいかんぼう)、詰めて流感(りゅうかん)と言われる。
日本などの温帯では、季節性インフルエンザは冬季に毎年のように流行する。通常、11月下旬から12月上旬頃に最初の発生、12月下旬に小ピーク。学校が冬休みの間は小康状態で、翌年の1-3月頃にその数が増加しピークを迎えて4-5月には流行は収まるパターンである。 |
う蝕
(虫歯) |
Dental
caries |
う蝕(齲蝕・うしょく)とは、口腔内の細菌が糖質から作った酸によって、歯質が脱灰されて起こる、歯の実質欠損のことである。歯周病と並び、歯科の二大疾患の一つである。う蝕された歯は、う歯(一般的には虫歯)と呼ぶ。う蝕が進行して歯に穴ができていることが目に見えてわかる状態になった場合、その穴をう窩と呼ぶ。
虫歯は風邪と並び、どの世代でも抱える一般的な病気である。特に歯の萌出後の数年は石灰化度が低いため虫歯になりやすく、歯冠う蝕は未成年に多く見られる。一方、高齢化と残存歯の増加に伴い、高齢者の根面う蝕が増加してきた。 |
うつ病 |
Major
depressive
disorder |
うつ病(うつびょう、鬱病、欝病)とは、精神障害の一種であり、抑うつ気分、意欲・興味・精神活動の低下、焦燥(しょうそう)、食欲低下、不眠などを特徴とする精神疾患である。
双極性障害(躁うつ病)と区別するために「単極性うつ病」と呼ばれることもある。
うつ病は他の精神疾患と同様、原因は特定されていないため、原因によってうつ病を分類したり定義したりすることは現時点では困難である。
「うつ病」に相当する英語は"Depression"であるが、"Depression"は疾病全体を指すこともあれば抑うつ気分などの症状、さらには一時的な落ち込みなどを指すこともあり、日本語の「うつ病」と完全に同一ではない。
以前は内因が関与している内因性うつ病と心因が強く関与している心因性うつ病(神経症性うつ病)とに分けて論じられることが一般的であった。しかし上述のように原因による分類・定義が困難なため、1980年にアメリカ精神医学会が「精神障害の分類と統計の手引第3版(DSM-III)」を発表してからは、これら操作的診断基準によって分類することが一般的となった。
「うつ病」という用語は、狭い意味では「精神障害の診断と統計の手引き第4版(DSM-IV)」における、大うつ病性障害(英語:major depressive disorder)に相当するものを指しているが、広い意味でのうつ病は、一般的には抑うつ症状が前景にたっている精神医学的障害を含める。そのなかには気分変調性障害をはじめとする様々なカテゴリーが含まれている。
操作的診断による「大うつ病性障害」などの概念と、従来診断による「内因性うつ病」などは同じ「うつ病」であっても異なる概念であるが、このことが専門家の間でさえもあまり意識されずに使用されている場合があり、時にはそれを混交して使用しているものも多い。そのため一般社会でも、精神医学会においても、うつ病に対する大きな混乱が生まれており、注意が必要である。
この記事では、主には(DSM-IVおよびそのテキスト改訂版であるDSM-IV-TRに基づく)「大うつ病性障害」について記述しているが、記事内でも様々な定義による「うつ病」の概念が使用されている。
「うつ状態」と「うつ病」
うつ状態、抑うつ症状を呈するからといって、うつ病であるとは限らない。抑うつ状態は、精神医療において最も頻繁に見られる状態像であり、診療においては「熱が38度ある」程度の情報でしかない。状態像と診断名は1対1対応するものではなく、抑うつ状態は、うつ病以外にも様々な原因によって引き起こされる。
また、うつ状態のうち、大うつ病エピソードとして扱われるのは、DSM-IVの診断基準に従って、「薬物依存以外、身体疾患以外、死別反応以外のもので、2週間以上にわたり毎日続き、生活の機能障害を呈している。」というある程度の重症度を呈するものである。DSM-5では「死別反応」もうつ病に該当する様になった。 |
エイズ⇒後天性免疫不全症候群 |
|
腋臭症 |
Body
odor |
腋臭症(えきしゅうしょう)は、皮膚のアポクリン腺から分泌される汗が原因で強い臭いを発する人体形質で、それを有する個人の属する集団によっては疾患としての扱いを受ける。わきがとも呼ばれる。
腋窩部(わきの下)からの腋臭臭、つまり運動時などにかくエクリン腺からの汗の臭い(酸っぱい臭い、汗臭いと表現されることが多い)とは異なる特有の臭いがする。その臭い自体は人やその時の環境などによって違いがあるため一概には表現できないが、ゴボウの臭い、ネギの臭い、鉛筆の臭い、酢の臭い、香辛料のクミンの臭い、納豆の臭い、古びた洗濯ばさみの臭いに喩えられることが多い。この臭いはその形質を有する個人の属する集団によっては、しばしば他人に不快感を及ぼすものとして扱われる。さらに、その腋臭臭の原因となるアポクリン腺分泌物は衣服に黄色いしみを作り、汗が大量に出る多汗傾向を伴う。腋臭症の女性の一部には、性器や乳輪からも腋臭臭を認められる場合がある。その症状はすそわきがと呼ばれる。本形質による臭いを嫌うものの多い集団の中において、腋臭症患者の多くがそれを過度に気にする精神状態に追い込まれ、結果として鬱病などを併発する恐れがある。そのため、人間集団の傾向によっては腋臭症は軽視することはできない重要な健康問題となる。 |
エボラ出血熱 |
Ebola
virus
disease |
エボラ出血熱(エボラしゅっけつねつ、Ebola
hemorrhagic fever)は、フィロウイルス科エボラウイルス属のウイルスを病原体とする急性ウイルス性感染症。出血熱の一つ。「エボラ」の名は発病者の出た地域に流れる川の名から命名された。
エボラウイルスは大きさが80 - 800nmの細長いRNAウイルスであり、ひも状、U字型、ぜんまい型など形は決まっておらず多種多様ある。
初めてこのウイルスが発見されたのは1976年6月。スーダンのヌザラ
(Nzara) という町で、倉庫番を仕事にしている男性が急に39度の高熱と頭や腹部に痛みを感じて入院、その後消化器や鼻から激しく出血して死亡した。その後、その男性の近くにいた2人も同様に発症して、それを発端に血液や医療器具を通して感染が広がった。最終的にヌザラでの被害は、感染者数284人、死亡者数151人と言うものだった。
そして、この最初の男性の出身地付近である、当時のザイールのエボラ川からこのウイルスの名前はエボラウイルスと名づけられ、病気もエボラ出血熱と名づけられた。その後エボラ出血熱はアフリカ大陸で10回、突発的に発生・流行し、感染したときの致死率は50
- 89%と非常に高い。
体細胞の構成要素であるタンパク質を分解することでほぼ最悪と言える毒性を発揮し、体内に数個のエボラウィルスが侵入しただけでも容易に発症する。そのため、バイオセーフティーレベルは最高度の4に指定されている。
「エボラ出血熱」の恐怖が知られるようになってから30年以上が経つが、これまでの死者数は1,389人(2012年5月現在)で、これは今日でも年間数十万人を超える死者を出しているマラリアやコレラと比較しても格段に少ない。その症状は激しく、致死率も高いが、「他人に感染する前に感染者が死に至るため、蔓延しにくい」とされており、その恐怖は映画や小説で描かれたイメージや、「致死率90%」という数字により誇張されている面もある。 |
おたふく風邪⇒流行性耳下腺炎 |
|
大人の発達障害 |
|
大人の発達障害(おとなのはったつしょうがい)とは、発達障害者のうち、主に大学生以上の成人期の人及びそれに関連する問題に関して用いられる用語である。
1990年代以降、発達障害の関心は高まり続けているが、当初は発達障害者のうち小学生や中学生などの子供の問題に重点がおかれていたこともある。
しかし、現実には青年期や成人期以降に発達障害と診断される事例も多く、また、大学及び大学院までは、何らかしらの方法で自身の発達障害に対する自衛手段を取っていたり、学業においては健常者よりもむしろ優秀な成績を収めるケースも少なくなく、問題にされないまま放置されることも多い。しかし、社会に出た途端に急激に馴染めなくなり、職場を追われるなど行き場を失ってしまうケースも多くなっている。
発達障害の大多数は先天的であるが、本人が自身の障害に気づかないまま社会に出た場合、こうしたトラブルに戸惑ったり、自身がそのような障害を持っているということを頑なに否定したりする。また、発達障害の診断基準に幼少期の状況が聞かれる場合も多く、当時の資料や記憶が乏しかったりした場合など、子供の発達障害に比べ診断が困難である場合が多く、昭和大学附属烏山病院など少数ながら大人の発達障害を扱っている病院もあるが、発達障害の研究及び診断、支援の中では特に遅れている分野である。
また、発達障害の特性は成人期になると薄れていくと言われることがよくあるが、実際には特性がほとんど薄れていないケースも多く、また、こうした認識が無理解に拍車をかけている側面もある。 |
オリーブ橋小脳萎縮症 |
Olivopontocerebellar
atrophy |
オリーブ橋小脳萎縮症(オリーブきょうしょうのういしゅくしょう、Olivopontocerebellar
atrophy (OPCA))は、脊髄小脳変性症の一種。多系統萎縮症の一病型である。 |
か |
解離性障害 |
Dissociative
disorder |
解離性障害(かいりせいしょうがい、英:
Dissociative Disorder; DD)とは、アメリカ精神医学会・精神障害の診断と統計の手引き
(DSM-IV-TR)における精神疾患の分類のひとつである。
自分が自分であるという感覚が失われている状態、まるでカプセルの中にいるような感覚で現実感がなかったり、ある時期の記憶が全く無かったり、いつの間にか自分の知らない場所にいるなどが日常的に起こり、生活面での様々な支障をきたしている状態をさす。
その中でもっとも重いものが解離性同一性障害である。
DSMと並ぶ国際的診断基準、世界保健機関
(WHO) のICD-10において、解離性障害に該当するものは解離性(転換性)障害であるが、名称にも現れているように、その範囲は異なる。 |
風邪 |
Common
cold |
風邪(かぜ、common cold,
nasopharyngitis, rhinopharyngitis, acute coryza,
a cold)とは、呼吸器系の炎症性の症状の事。またその状態を表す総称である。正式名称は、「感冒」や「急性上気道炎」医学的には「風邪症候群」と呼ばれる。
風邪の定義は、医学書によって様々であるが、風邪とは、主にウイルスの感染による上気道(鼻腔や咽頭等)の炎症性の疾病に掛かった状態の事であり、咳嗽、咽頭痛、鼻汁、鼻づまりなど局部症状(カタル症状)、および発熱、倦怠感、頭痛など全身症状が出現した状態のことである。西洋医学的には「風邪症候群」と呼んでいることが多い。
通常鼻汁は風邪の初期はさらさらとした水様で、徐々に粘々とした膿性に変化する。だが全身症状がことに強く、時に重症化する。俗称として、消化管のウイルス感染によって嘔吐、下痢、腹痛などの腹部症状と上記全身症状を来した状態を、「感冒性胃腸炎」「お腹の風邪」(もしくは胃腸かぜ、一部地方では腸感冒)と呼ぶこともある。
「風邪」の語源は定かではない。中国医学における風の邪気、すなわち「風邪」(ふうじゃ)によって引き起こされる、発熱や寒気等の症状を来す病名としての概念が日本に伝わっているが、中国医学の定義は前述の定義と異なっている。
俳句では冬の季語として扱われる。 |
花粉症 |
Hay
fever
in
Japan |
花粉症(かふんしょう、hay
fever / pollen allergy / pollen disease, 医 pollinosis
または pollenosis )とはI型アレルギー(いちがたアレルギー)に分類される疾患の一つ。植物の花粉が、鼻や目などの粘膜に接触することによって引き起こされ、発作性反復性のくしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目のかゆみなどの一連の症状が特徴的な症候群のことである。枯草熱(こそうねつ)とも言われる。日本においては北海道の大半を除いてスギ花粉が抗原となる場合が多い(スギ花粉による花粉症についてはスギ花粉症参照)。
枯草熱も医薬品等の効能に表記される医学(医療)用語であるが、この記事では花粉症で統一する。ただし、hay
fever = 枯草熱、pollinosis = 花粉症というように、古語・現代語、一般名・疾病名、の観点で呼び分けることもある。なお、pollen
allergy は花粉アレルギー、pollen disease は花粉病(花粉による疾患)の意である。 |
がん⇒悪性腫瘍 |
|
肝炎 |
Hepatitis |
肝炎(かんえん、英Hepatitis)とは、何らかの原因で肝臓に炎症が起こり発熱、黄疸、全身倦怠感などの症状を来たす疾患の総称である。
日本ではウイルス性による肝炎が80%を占める。
日本では特にA、B、C型が多い。 |
肝癌 |
Liver
cancer |
肝癌(かんがん、英: Liver cancer)は、肝臓に発生する悪性腫瘍の総称である。
大きくは肝臓が発生元である原発性肝癌と、他臓器で発生したがんが肝臓に転移した転移性肝癌の二つに分けられる。原発性肝癌はさらに組織型によって分類される。
原発性肝癌の大部分は肝細胞癌 (hepatocellular carcinoma; HCC) であることから「肝癌」という言葉は狭義に「肝細胞癌」を指す場合がある。
以下、2000年のWHO
histological classification of tumours of the liver and intrahepatic
bile ducts の資料を元に分類し解説する。
・上皮性腫瘍
・良性:肝内胆管腺腫など。
・悪性
・肝細胞癌:肝臓の実質である肝細胞から発生する癌。日本では原発性肝癌の約90%。その原因の多くがC型肝炎(約72%)によるもので、以下B型肝炎(約17%)、NASH、アルコール性肝炎、原因不詳と続く。
・胆管細胞癌:肝臓内の胆管から発生する癌。日本では原発性肝癌の5%程度。
・そのほか稀なものとして上記の混合型や肝芽腫などがある。
・非上皮性腫瘍
・良性:血管腫など。
・悪性:血管肉腫など。
・その他の腫瘍:孤在性線維性腫瘍など。
・造血細胞性およびリンパ性腫瘍
・二次性腫瘍(転移性肝癌):他の臓器のがんが肝臓に転移したもの。
・腫瘍に類似した上皮の異常:過形成、異形成など。
・その他の腫瘍類似病変
また欧米では胆管細胞癌は胆管癌の一部であるとする認識が一般的であり、肝癌≒肝細胞癌であるが、前述のとおりWHO分類などでは「肝臓および肝内胆管の腫瘍」とすることにより、実質的に一まとめにして扱っている。 |
肝硬変 |
Cirrhosis |
肝硬変(かんこうへん、英: Liver
cirrhosis)は肝臓病の一つである。慢性の肝障害の進行によって、肝細胞が死滅・減少し線維組織によって置換された結果、肝臓が硬く変化し、肝機能が著しく減衰した状態を指す。肝炎は可逆的であるが、肝硬変は非可逆的である。
ウイルス性肝炎(B型肝炎、C型肝炎など)、アルコール性肝疾患、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、ヘモクロマトーシス、自己免疫性肝炎、Wilson病などの慢性肝疾患が原因となり、あるいはこれらの疾患が進行した終末像である。日本には40万人の肝硬変患者がおり、60%がC型肝硬変、15%がB型肝硬変、12%がアルコール性肝硬変である(新臨床内科学 第8版)。かつては日本でも日本住血吸虫の有病地において、虫卵と栄養不良を原因とする肝硬変もみられた。最近ではメタボリックシンドロームに関連した非アルコール性脂肪性肝炎
(NASH) が原因として注目されている。 |
汗疹 |
Miliaria |
汗疹(かんしん、英: Sweat
rash、羅 miliaria)とは、発汗時に小水疱や小丘疹が出現する皮膚疾患。あせもと一般的に言われるものである。湿疹に似るが、湿疹の一種ではなく、これ自体は皮膚の炎症ではない。
大量の発汗時に小水疱・小丘疹が出現する。痒みはあまりないことが多い。しかし、汗の皮膚内への貯留により湿疹を併発することがあり、その場合は痒くなる。掻くと細菌が飛び火してしまうので、皮膚科での治療を要する。
体温調節がうまくいかない乳幼児や皮膚の弱い人に多いとされてきたが、近年の猛暑や酷暑が原因で一般の成人男女でも症状が現れ易くなってきている。 |
関節リウマチ |
Rheumatoid
arthritis |
関節リウマチ(かんせつリウマチ、Rheumatoid
Arthritis:RA)は、自己の免疫が主に手足の関節を侵し、これにより関節痛、関節の変形が生じる代表的な膠原病の一つで、炎症性自己免疫疾患。
しばしば血管、心臓、肺、皮膚、筋肉といった全身臓器にも障害が及ぶ。
以前は、「慢性関節リウマチ」と呼ばれ、第6回日本リウマチ学会総会(1962年)において「Rheumatoid Arthritis」の日本語訳が「慢性関節リウマチ」に決定されたが、「Rheumatoid
Arthritis」という学名には「慢性」という語は一切含まれておらず、実際急性発症する例もあるため、これは完全な誤訳であるとする意見が多くあり、第46回日本リウマチ学会総会(2002年)において「関節リウマチ」を正式名称とされた。これに伴い2006年には、厚生労働省による特定疾患の名称も「関節リウマチ」に変更された。 |
感染 |
Infection |
感染(かんせん、英: infection)とは、生物の体内もしくは表面に、より体積の小さい微生物等の病原体が寄生し、増殖するようになる事。また、侵入等のその過程。
それによっておこる疾患を感染症という。
単細胞生物もウイルスに感染する。また、寄生虫の体長は宿主を超える事もある。
感染と類似の用語に、伝染と流行がある。これらは時に混同されることが多いが、厳密には
・感染:一人(一個体)の宿主が対象
・伝染:二人(二個体)の宿主の片方からもう片方への感染
・流行(英語:epidemic):複数の宿主の間(社会)における伝染
という区分がなされる。また流行のうち、多国間にまたがって広範囲で起きるものを汎発性流行あるいはパンデミック(英語:pandemic)、それよりも狭い地域で起きるものを地方性流行(英語:endemic)と呼ぶ。
なお、微生物が進入する前(たとえば皮膚表面に付着しただけ)などの場合は汚染といい、区別される。 |
感染症 |
Infection |
感染症(かんせんしょう、英語:infectious
disease)とは、寄生虫、細菌、真菌、ウイルス、異常プリオン等の病原体の感染により、より高等な動植物である「宿主」に生じる望まれざる反応(病気)の総称。
感染症の歴史は生物の発生と共にあり、有史以前から近代までヒトの病気の大部分を占めてきた。医学の歴史は感染症の歴史に始まったと言っても過言ではない。1929年に初の抗生物質であるペニシリンが発明されるまで根本的な治療法はなく、伝染病は大きな災害と捉えられてきた。
その後の微生物学・免疫学・薬理学・内科学・外科学・公衆衛生学の進歩を背景として感染症の診断・治療・予防を扱う感染症学が発展しつつある今日でも、世界全体に目を向けると感染症は未だに死因の約1/4を占める。特にマラリア・結核・AIDS・腸管感染症は発展途上国で大きな問題であり、感染症学のみならず保健学・開発学など集学的な対策が緊急の課題である。
先進国においては新興感染症・再興感染症に加えて、多剤耐性菌の蔓延やバイオテロの脅威が公衆衛生上の大きな課題として注目を集める一方、高度医療の発達に伴って手術後の患者や免疫抑制状態の患者における日和見感染が増加するなど、日常的にもまだまだ解決に向かっているとは言えない。
『感染症の歴史』も参照。
『感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律』も参照。
『伝染病』も参照。 |
気管支喘息 |
Asthma |
喘息(ぜんそく、Asthma)は、慢性の気道炎症(好酸球性炎症が典型的であるが、好酸球以外の炎症性細胞が主体のフェノタイプも存在する)、気流制限(典型例では、通常、可逆性あり)、気道過敏性の亢進を病態の基盤に有し、発作性に、呼吸困難、喘鳴、咳などの呼吸器症状をきたす症候群である。喘息の病態に関連する因子は、アレルギー反応や細菌・ウイルス感染など多岐に亘って存在し、関与の仕方も多様である。重症の急性増悪[喘息大発作]においては、呼吸器症状が特に激しく発現し、死(喘息死)に至ることもある。近年では、気管支喘息、Bronchial
Asthmaの呼称よりも、喘息、Asthmaの呼称が頻用される傾向にある。東洋医学では哮喘(哮は発作性の喘鳴を伴う呼吸疾患で、喘は保迫するが喘鳴は伴わない呼吸疾患である。双方は同時に見られることが多い為、はっきりと区別する事は難しい。虚証・実証に区別はされるが、気機(昇降出入)の失調で起こる)。
なお、うっ血性心不全により喘鳴、呼吸困難といった喘息類似の症状がみられることがあるが、喘息とは異なる病態である。
喘息をはじめとするアレルギーが関与する疾患の治療に関して、欧米の医師と日本の医師との認識の違いの大きさを指摘し、改善可能な点が多々残されていると主張する医師もいる。
喘息を指す英単語 asthma はギリシャ語の「aazein」という"鋭い咳"を意味する言葉に由来する。
この言葉は紀元前8世紀のイリアスに登場するのが最初とされている。そして紀元前4世紀にヒポクラテスはこの病気が仕立て屋、漁師、金細工師に多いこと、気候と関係していること、遺伝的要因がある可能性があることを記載した。2世紀にはガレノスは喘息が気管支の狭窄・閉塞によるものであることを記し、基本病態についての考察が始まった。
その後喘息についてさまざまな考察、文献が発表されたが、このころまで喘息という言葉は今日でいう喘息のみならず呼吸困難をきたすさまざまな病気が含まれていた。今日でいう喘息についての病態にせまるには17世紀まで待たねばならない。17世紀イタリアの「産業医学の父」ベルナルディーノ・ラマツィーニは喘息と有機塵との関連を指摘し、またイギリスの医師ジョン・フロイヤーは1698年、A
Treatise of the Asthmaにおいて気道閉塞の可逆性について記載した。1860年にはイギリスのソルターは著書On
asthma: its pathology and treatmentの中で気道閉塞の可逆性と気道過敏性について述べ、またその後19世紀末から20世紀初頭にはエピネフリンやエフェドリンが開発され、気管支拡張薬が喘息の治療として使用されるようになった。この頃まで喘息の基本病態は可逆性のある気管支収縮であると考えられていた。
1960年代に入り喘息の基本病態が気道の慢性炎症であることが指摘され始め、1990年にイギリス胸部疾患学会(BTS)の発表した喘息ガイドライン、および1991年にアメリカ国立衛生研究所(NIH)の発表した喘息ガイドラインにおいて「喘息は慢性の気道炎症である」ことにコンセンサスが得られた。これによりステロイド吸入により気道の炎症を抑え、発作を予防するという現在の喘息の治療戦略が完成し、治療成績は劇的に改善した。しかし、吸入ステロイドの普及率は、国・地域によって差があり、殊に、日本は欧米先進諸国に比し、吸入ステロイドの普及率は低い。 |
急性アルコール中毒 |
|
急性アルコール中毒(きゅうせいアルコールちゅうどく)は、短時間に多量のアルコール(エタノール)を摂取することによって生じる中毒である。急性アルコール中毒の症状は血液中のアルコール濃度に比例する。
アルコールは脳を麻痺させる性質を持っている。アルコールを摂取すると麻痺は大脳辺縁部から呼吸や心臓の働きを制御する脳幹部にまで進み、最終的には生命維持にかかわる脳の中枢部分までもを麻痺させてしまい、呼吸機能や心拍機能を停止させて死に至る。
血中アルコール濃度が0.4%を超えた場合、1〜2時間で約半数が死亡する。急性アルコール中毒患者の45%は20代の若者で、2/3が男性、1/3が女性である。
上述のように急性アルコール中毒は、エタノールによる脳の麻痺が原因であり、その症状は摂取したエタノールの量と血中のエタノール濃度に比例する。
一般的に、エタノールの体内での代謝過程で生成されるアセトアルデヒドのフラッシング反応(アセトアルデヒド脱水素酵素による代謝能力の差からくる)の有無を指し「お酒に強い体質」と「お酒に弱い体質」と定義する場合がある。しかし急性アルコール中毒の発生は、この「お酒に強い体質」と「お酒に弱い体質」とは関係がない。あくまでも血中のアルコール濃度、つまり飲んだアルコールの量に比例し、誰でもが陥る急性中毒である。
通常、飲酒すると「ほろ酔い期」「酩酊期」「泥酔期」「昏睡期」という順で、徐々に血中アルコール濃度が上がるので、本人も酔ってきたという自覚がある。また、飲みすぎると足元がふらつく、吐き気がするなどの症状も出るので、自分自身である程度は飲酒量をコントロールできる。しかし、飲酒開始から血中アルコール濃度の上昇までには時間差があるため、短時間で大量の酒を飲むと、酔っているという自覚なしに危険な量のアルコールを摂取してしまうことがある。この場合、「ほろ酔い期」「酩酊期」を飛び越えて一気に「泥酔期」や「昏睡期」に到達してしまう。
飲み始めてから1時間以内に泥酔状態になった場合、および酒量として、1時間に日本酒で1升、ビールで10本、ウイスキーでボトル1本程度飲んだ場合は急性アルコール中毒が疑われる。生命にかかわる危険もあるため、こういった飲み方は強く戒められるべきである。 |
急性灰白髄炎 |
Poliomyelitis |
急性灰白髄炎(きゅうせいかいはくずいえん、poliomyelitis)は、ポリオ (Polio) とも呼ばれ、ピコルナウイルス科、エンテロウイルス属のポリオウイルスによって発症するウイルス感染症のこと。ポリオは、Poliomyelitis(ポリオマイアライティス)の省略形。ポリオウイルスが原因で、脊髄の灰白質が炎症をおこす。はじめの数日間は胃腸炎のような症状があらわれるが、その後1パーセント以下の確率で、ウイルスに関連した左右非対称性の弛緩性麻痺(下肢に多い)を呈する病気である。
一般には脊髄性小児麻痺(略して小児麻痺)と呼ばれることが多いが、これは5歳以下の小児の罹患率が高い(90%以上)ことからで、成人も感染しうる。
季節的には夏から秋にかけて多く発生する。1961年から予防接種が実施されている。日本では、1980年に野生株によるポリオ感染が根絶され、その後は定期接種で行われる経口生ポリオワクチンからしか発症していないが、海外では流行している地域がある。世界保健機関(WHO)は根絶を目指している。 |
急性骨髄性白血病⇒白血病 |
Acute
myeloid
leukemia |
急性骨髄性白血病(きゅうせいこつずいせいはっけつびょう、英:
acute myelogenous leukemia; AML)は白血病の一種で、骨髄系の造血細胞が腫瘍化し、分化・成熟能を失う疾患である。
正常な造血細胞は造血幹細胞から分化を始めた極初期にリンパ系と骨髄系の2系統に分かれ、それぞれ成熟していく。この造血細胞が腫瘍化したものが白血病であり、その中でも細胞が成熟能を失うものを急性白血病と呼ぶ。さらに急性白血病の中で白血病細胞に骨髄系への分化の傾向が見られるものを急性骨髄性白血病という。骨髄系への分化は早い段階で止まり、正常に成熟することはない。
急性骨髄性白血病では白血病細胞は分化・成熟能に異常を来たし、白血病細胞は造血細胞の幼若な形態をとることから、芽球とも呼ばれる。急性骨髄性白血病はこの芽球が増殖する疾患である。
白血病細胞は正常な造血細胞と比べて増殖(細胞分裂)が速いわけではなく、むしろ増殖の速度は遅い。正常な血球は寿命を持ち、造血が適切なコントロールを受けているために一定の数を保っている。しかし白血病細胞はコントロールを受けることなく増殖を続けるために無制限に数を増し、骨髄中で正常な造血細胞を圧倒して正常な造血を阻害し、骨髄中から末梢血へとあふれ出てくるのである。
白血病細胞が増殖して骨髄を占拠してしまうために正常な造血が行えなくなり、赤血球、白血球、血小板が減少するために出血、易感染症、貧血などの諸症状を起こす。また、末梢血にあふれ出た白血病細胞が各臓器に浸潤し、各臓器の組織を破壊することで様々な症状を引き起こす。
なお、慢性白血病は急性白血病が慢性化した疾患ではない。この両群の発生機序は基本的に異なり、急性白血病が慢性化することはないが、逆に慢性白血病が急性化することは少なからずある(急性転化)。 |
急性散在性脳脊髄炎 |
Acute
disseminated
encephalomyelitis |
急性散在性脳脊髄炎(きゅうせいさんざいせいのうせきずいえん、acute
disseminated encephalo myelitis; ADEM)とは、ウイルス感染後やワクチン接種後に生じるアレルギー性の脱髄疾患である。
ADEMを最初に記載したのはWestphalで軽症痘瘡後の脳脊髄炎についての研究であった。2009年現在のADEMの定義は「急性発症で単相性の経過をとる中枢神経系の炎症機転を伴った散在性の脱髄病変によって神経症候を呈する疾患」である。ADEMは特発性、感染後または傍感染性、予防接種後、急性出血性白質脳症(Hurst脳炎)の4つに分類されている。先行感染になりうるものには麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、インフルエンザウイルス、HAV、HBV、単純ヘルペスウイルス、帯状疱疹ウイルス、ヒトヘルペスウイルスE型、風疹ウイルス、EBウイルス、サイトメガロウイルス、HIVといったウイルス感染症のほか、マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラ、カンピロバクター、レンサ球菌などの感染症でもおこるとされている。ADEMの鑑別としては中枢神経系感染症が必ず挙げられるが、髄膜炎や脳炎に引き続いてADEMが発症することがある。この場合は当初認められた髄膜炎症状が先行感染の症状かADEMの症状かはっきりしないことがある。中枢神経系感染症は成人発症のADEMの先行感染になりうると考えられている。 |
急性出血性結膜炎 |
Acute
hemorrhagic
conjunctivitis |
急性出血性結膜炎(きゅうせいしゅっけつせいけつまくえん、英:acute
haemorrhagic conjunctivitis )は、アフリカのガーナが発祥の目の病気。エンテロウイルス70またはコクサッキーA24変異株によって引き起こされる結膜炎。別名はアポロ病
(Apollo disease )。
1969年夏の大流行時には、結膜が出血し、赤く腫れ上がり眼痛、頭痛、発熱を発症。また、小児マヒのように筋力低下を引き起こし、運動マヒによる後遺症が残される場合も報告された。その後、ウイルスの変異によって結膜下出血のような症状が出ることは稀となり、アデノウイルスによる流行性結膜炎同様の経過をたどり、1週間程度で治癒することが一般的となった。 |
狂犬病 |
Rabies |
狂犬病(きょうけんびょう、英語: rabies)は、ラブドウイルス科リッサウイルス属の狂犬病ウイルス
(Rabies virus) を病原体とするウイルス性の人獣共通感染症である。
毎年世界中で約5万人の死者を出している。水などを恐れるようになる特徴的な症状があるため、恐水病または恐水症 (hydrophobia) と呼ばれることもある(実際は水だけに限らず、音や風も水と同様に感覚器に刺激を与えて痙攣等を起こす)。
日本では、感染症法に基づく四類感染症に指定されており(感染症法6条5項5号参照)、イヌなどの狂犬病については狂犬病予防法の適用を受け(狂犬病予防法2条参照)、また、ウシやウマなどの狂犬病については家畜伝染病として家畜伝染病予防法の適用を受ける(家畜伝染病予防法2条及び家畜伝染病予防法施行令1条参照)。
日本では咬傷事故を起こした動物は狂犬病感染の有無を確認するため、捕獲後2週間の係留観察が義務付けられている。係留観察中の動物が発症した場合は直ちに殺処分し、感染動物の脳組織から蛍光抗体法でウイルス抗原の検出を行う。 |
狭心症⇒虚血性心疾患 |
Angina
pectoris |
狭心症(きょうしんしょう、angina
pectoris)とは、心臓の筋肉(心筋)に酸素を供給している冠動脈の異常(動脈硬化、攣縮など)による一過性の心筋の虚血のための胸痛・胸部圧迫感などの主症状である。虚血性心疾患の1つである。なお、完全に冠動脈が閉塞、または著しい狭窄が起こり、心筋が壊死してしまった場合には心筋梗塞という。 |
恐怖症 |
Phobia |
恐怖症(きょうふしょう)とは、特定のある一つのものに対して、心理学的および生理学的に異常な拒絶反応を起こす症状で、精神疾患の一種である。恐怖神経症とも言われる。英語ではフォビア (phobia) と呼ばれ、古代ギリシア語で恐怖を意味するポボス(ラテン文字:phobos)がその語源である。接尾辞としての
-phobia の前にはギリシャ語が用いられる(例:belonephobia、ophiophobia)。
近年では更に拡大して、フォビアを「嫌悪」や「忌避」という意味で使うこともある(例:ホモフォビア、ゼノフォビア、ガイノフォビア)。
恐怖症は国際疾患分類によると、不安障碍に分類され以下の種類に細分される。
1.F40.0 広場恐怖(症)
2.F40.1 社会恐怖(症)
3.F40.2 特定の個別的恐怖(症)
4.F40.8 その他の恐怖症性不安障害
5.F40.9 恐怖症性不安障碍,詳細不明
このうち特定の個別的恐怖(症)は、雷などの自然災害や、蛇や蜂など特定の一種類のものに対しての恐怖を感じるものである。
恐怖症患者は、日常生活において恐怖の対象を避ける工夫をしてすごしている。恐怖の対象に遭遇したとき、恐怖心や不安感の程度によって、不快感やめまい、吐き気といった症状を催すが、極端な場合にはパニック発作をきたすこともありうる。
これらの恐怖症は、子供の頃の無知から感じる恐怖や、偶然に経験した恐怖体験がきっかけとなって出現する。生活において、大きな障碍とならない限りは個人の個性として尊重すべき弱点であり、放置しておくうちに次第に軽減したり、克服経験によって解消されることが多い。
生活の支障となり、本人が治療を所望する場合は行動療法が用いられる。
単一恐怖のうち、恐怖の対象を容易に作り出せるもの(高所、暗所などの場所由来のものや特定の動植物など)については、患者をその状況の中に長時間おいて恐怖に慣れさせることによってある程度改善可能とされる。
恐怖症は、不安障碍のもっとも代表的な形式である。米国の国立精神保健研究所 (National Institute of Mental Health) が行ったある調査では、アメリカ人の 5.1% から 21.5% が何らかの恐怖症を抱えていることが明らかになった。
年代および性別で分類すると、恐怖症はすべての年代の女性において最も見られる精神疾患であり、25 歳以上の男性においては、2
番目に多く見られる精神疾患である。
また、日本においてはほとんどみられないが、米国やイスラエルなどにおいては、特に「同時多発テロ」以降においてイスラム教やイスラム教徒であるというだけで恐怖や嫌悪などの情動が発生してしまうイスラム恐怖症が発生し蔓延している。確かに、イスラム教やイスラム教徒を外集団として認知せざるを得ない米国人やユダヤ系イスラエル人においては、イスラム教やイスラム教徒というだけでテロや戦争やそれによって発生する被害を連想するのかもしれない。しかしながら、イスラム教を信仰しているイスラム教徒にとっては、すべてのイスラム教徒がテロを行ったりテロを支持しているわけではなく、また本来のイスラム教の教義において殺人や自殺を禁じているという事実が理解されていないことによって生じる、イスラム教やイスラム教徒に対するネガティヴなステレオタイプが発生し、イスラム教という特定の宗教に対する差別が発生していることが問題である。 |
虚血性心疾患 |
Coronary
artery
disease |
虚血性心疾患 (きょけつせいしんしっかん,
IHD: Ischemic Heart Disease)とは、冠動脈の閉塞や狭窄などにより心筋への血流が阻害され、心臓に障害が起こる疾患の総称である。
狭心症や心筋梗塞がこの分類に含まれる。これらは冠動脈疾患と同義であるが、冠動脈自体に病変が無い疾患、例えば脳血管疾患による急激なストレスから来るタコツボ型心筋症や中枢性肺水腫などは特に本症に含まれる。
アメリカ合衆国では1950年代から心臓病患者の増加が問題となっていたが、朝鮮戦争で死亡したアメリカ人兵士を解剖した医師が冠動脈に動脈硬化症を発見したことから、虚血性心疾患と動脈硬化症との関連が明らかとなった。
症状に応じて、薬物治療・冠動脈バイパス術(CABG)・経皮的冠動脈形成術(PCI、PTCA)が行われる。 |
ギラン・バレー症候群
(急性炎症性脱髄性多発神経根炎) |
Guillain-
Barre(eの頭に')
syndrome |
ギラン・バレー症候群(ギラン・バレーしょうこうぐん、英:
Guillain-Barre(eの頭に') syndrome)は、急性・多発性の根神経炎の一つで、主に筋肉を動かす運動神経が障害され、四肢に力が入らなくなる病気である。重症の場合、中枢神経障害性の呼吸不全を来し、この場合には一時的に気管切開や人工呼吸器を要するが、予後はそれほど悪くない。日本では特定疾患に認定された指定難病である。
1859年にフランス人医師ジャン・ランドリー(仏: Jean Baptiste Octave Landry)によって、上行性麻痺の一例という報告がなされた。その後この症例はランドリー上行性麻痺の一例と呼ばれている。1916年にフランス人医師ジョルジュ・ギラン(仏: Georges
Guillain)とジャン・アレクサンドル・バレー(仏: Jean
Alexandre Barre(eの頭に'))が急性で単相性の運動麻痺を呈した2症例を、髄液の蛋白細胞解離と脱髄を示唆する電気生理所見とともに報告したことによりギラン・バレー症候群
(GBS) という名称が定着した。その後、欧米では
acute inflammatory demyelinating polyneuropathy(AIDP
急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー)と同義語として用いられてきた。現在ランドリー上行性麻痺の原因は急性炎症性脱髄性多発ニューロパチーであったと推定されている。1970年代より中国で初夏に流行する急性麻痺性疾患が認められた。当初
Chinese paralytic syndrome と命名されたこの疾患は末梢神経に脱髄やリンパ球浸潤を伴わず、軸索変性が認められ1993年に
acute motor axonal neuropathy(AMAN 急性運動軸索型ニューロパチー)として認識された。AIDP、AMAN共に先行感染を伴い、単相性の経過をとり、発症後1〜3週間でピークを迎え、その後自然軽快していく、また血漿交換など免疫学的な治療が有効なことからGBSという概念で包括し、軸索型GBSをAMAN、脱髄型GBSをAIDPととらえるようになった。 |
起立性低血圧 |
Orthostatic
hypotension |
起立性低血圧(きりつせいていけつあつ、英:
orthostatic hypotension)は、低血圧の一種で、安静臥床後起立した際に血圧の急激な低下(一般的には起立後3分以内に収縮期血圧で20mmHg以上、拡張期血圧で10mmHg以上の低下)が見られるもの をいう。
起立性低血圧の発症率は加齢とともに増加する。
急に立ち上がった時に起こる症状として、ふらつき、立ちくらみ、頭痛、複視または視野狭窄・眼前暗黒感、四肢あるいは全身のしびれ(異常感覚)、気が遠くなるなどで、まれに血管迷走神経反射性失神を起こすこともある。すべて血圧維持が不充分なために脳血液灌流量が不足する結果起こる症状である。
起立性低血圧は、一次的には重力によって血液が下肢に溜まってしまうことが原因で起きる。それによって静脈還流が損なわれ、その結果(スターリングの法則により)心拍出量が減少して動脈圧が低下するのである。例えば臥位から立位になると、胸郭から約700mlの血液が失われる(全循環血液量は安静時で5000ml/分であるといわれている)。その時収縮期血圧は低下するが、拡張期血圧は上昇することになる。しかし結果として、心臓よりも高い位置にある末梢への血液灌流量は不充分なものになるのである。
しかし血圧の低下はすぐに圧受容体のトリガーとなって血管収縮を起こし(圧受容器反射)血液がくみ上げられるので、正常生体内では血圧はそれほどは低下しない。だから起立後に血圧が正常より低下するにはさらに二次的な原因が求められる。その原因とは血液量の減少、何らかの疾患、薬物使用、あるいは稀ではあるが安全ベルトなどである。 |
筋萎縮性側索硬化症 |
Amyotrophic
lateral
sclerosis |
筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう、amyotrophic
lateral sclerosis、略称:ALS)は、重篤な筋肉の萎縮と筋力低下をきたす神経変性疾患で、運動ニューロン病の一種。極めて進行が速く、半数ほどが発症後3年から5年で呼吸筋麻痺により死亡する(人工呼吸器の装着による延命は可能)。治癒のための有効な治療法は確立されていない。
有名な患者ルー・ゲーリッグ(MLB選手)から、ルー・ゲーリッグ病 (Lou Gehrig's
disease) とも呼ばれる。ICD-10ではG12.21。日本国内では1974年に特定疾患に認定された指定難病である。
1年間に人口10万人当たり1〜2人程度が発症する。好発年齢は40代から60代で、男性が女性の2倍ほどを占める。 |
近視 |
Myopia |
近視(きんし)は、屈折異常のひとつで、眼球内に入ってきた平行光線が、調節力を働かせていない状態で、網膜上の正しい位置ではなく、もっと手前に焦点を結んでしまう状態。近眼(きんがん、ちかめ)ともいう。
遠方視の場合に、屈折機能が無限遠まで対応できないためはっきり見ることができない。 逆に近方視の場合は支障は少ない。近視は屈折の問題であり網膜や視神経の疾患ではないので一般的に矯正視力が低下するものではない。 |
筋ジストロフィー |
Muscular
dystrophy |
筋ジストロフィー(きんジストロフィー)とは、筋線維の破壊・変性(筋壊死)と再生を繰り返しながら、次第に筋萎縮と筋力低下が進行していく遺伝性筋疾患の総称である。発症年齢や遺伝形式、臨床的経過等から様々な病型に分類される。その内、最も頻度の高いのはデュシェンヌ型である。
主訴が筋力低下、筋萎縮であり、以下の2項目を満たすものをいう。
・遺伝性疾患である。
・骨格筋がジストロフィー変化を示す。
ジストロフィー変化とは、筋線維の大小不同、円形化、中心核の増加、結合組織の増生、脂肪化を特徴として筋線維束の構造が失われる変化のことをいう。これは筋ジストロフィーの中で最初に報告されたデュシェンヌ型の病理所見から定義されたものである。 |
クモ膜下出血 |
Subarachnoid
hemorrhage |
クモ膜下出血(クモまくかしゅっけつ、蜘蛛膜下出血、Subarachnoid
hemorrhage; SAH)は、脳を覆う3層の髄膜のうち2層目のクモ膜と3層目の軟膜の間の空間「クモ膜下腔」に出血が生じ、脳脊髄液中に血液が混入した状態をいう。全脳卒中の8%を占め突然死の6.6%がこれに該当すると言われる。50歳から60歳で好発し、男性より女性が2倍多いとされる。また一度起こると再発しやすいという特徴がある。「蜘」と「蛛」が常用漢字に含まれていない為、まぜ書きで「くも膜下出血」と表記されている。 |
クリミア・コンゴ出血熱 |
Crimean-
Congo
hemorrhagic
fever |
クリミア・コンゴ出血熱(クリミア・コンゴしゅっけつねつ、Crimean-Congo
hemorrhagic fever (CCHF))はブニヤウイルス科ナイロウイルス属に属するクリミア・コンゴ出血熱ウイルスによる感染症である。
クリミア・コンゴ出血熱ウイルスは、ダニ間およびダニとヒツジやヤギなどの動物との間で生活環を形成している。このウイルスに感染したダニに咬まれたり、感染動物の組織や血液に接触したりすることで感染する。また、動物からヒトへの感染だけでなく、患者の血液や体液に触れることにより、ヒト-ヒト間での感染も起こる。日本では、一類感染症に指定されている。
患者発生地域は宿主となる宿主となるダニの分布に一致し、アフリカ大陸、東ヨーロッパ、中近東、中央アジア諸国、南部アジアである。存在が知られるようになったきっかけは、クリミア地方の旧ソビエト連邦軍兵士の間で、1944年-1945年にかけて出血を伴う急性熱性疾患が発生したことによる。その後、1956年にコンゴ地方(中部アフリカ)で分離されたウイルスと同一であることが確認され、病名に両地域の名前がつけられることとなった。 |
クロイツフェルト・ヤコブ病 |
Creutzfeldt-
Jakob
disease |
クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob
disease, CJD)は、全身の不随意運動と急速に進行する認知症を主徴とする中枢神経の変性疾患。WHO国際疾病分類第10版(ICD-10)ではA810、病名交換用コードはHGP2。根治療法は現在のところ見つかっておらず、発症後の平均余命は約1.2年。なお、日本神経学会では「ヤコブ」ではなく、「クロイツフェルト・ヤコプ病」を神経学用語としている。
米国に端を発し、ビー・ブラウン社(ドイツ)製造のヒト乾燥硬膜(ライオデュラ)を移植された多数の患者がこの病気に感染するという事故は日本を含め、世界的な問題となった。
日本においては、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群や致死性家族性不眠症と共にプリオン病に分類される。また、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)における「五類感染症」に分類されている。
一般的には耳にすることの少ないこの病気だが、症状がアルツハイマー病に似ていることから、アルツハイマーと診断され死亡した患者を病理解剖したらヤコブ病であると判明するいう事もある。病理解剖でないと判別が難しいので、アルツハイマーと診断されているヤコブ病患者の実数は不明である。 |
結核 |
Tuberculosis |
結核(けっかく)とは、マイコバクテリウム属の細菌、主に結核菌
Mycobacterium tuberculosis により引き起こされる感染症。結核菌は1882年に細菌学者コッホによって発見された。日本では、明治初期まで肺結核は労咳(ろうがい)と呼ばれていた。
空気感染が多く肺などの呼吸器官においての発症が目立つが、中枢神経(髄膜炎)、リンパ組織、血流(粟粒結核)、泌尿生殖器、骨、関節などにも感染し、発症する器官も全身に及ぶ。結核菌は様々な器官において細胞内寄生を行い、免疫システムはウイルスを宿主細胞ごと排除しようとするため、広範に組織が破壊され、放置すれば重篤な症状を起こして高い頻度で死に至る。肺結核における激しい肺出血とそれによる喀血、またそれによって起こる窒息死がこうした病態を象徴している。
感染者の大半は症状を発症する場合は少なく、無症候性、潜伏感染が一般的である。但し、潜伏感染の約10分の1が最終的に症状を発症し、治療を行わない場合、発病者の約半分が死亡する。
2004年には、死亡率および罹患率は慢性活動性の患者が1460万人、890万人の患者が発症し、160万人が死亡した。その大部分は発展途上国であるが、先進国においても、免疫抑制剤を使用している患者やエイズの患者、薬物乱用などにより増大傾向にある。
結核患者の分布は一定ではなく、多くのアジアやアフリカの国では約80%の人が結核の感染(=発病ではない)検査で陽性を示すが、一方アメリカ合衆国では5〜10%が陽性であるのみである。
アメリカで毎年二万五千人が新たに発生し、その40%が結核の流行地域からの移民であると推定されている。日本では、年間3万人(毎日80人)の患者が発生している。
世界保健機関(WHO)は2010年3月18日、従来の薬による治療が極めて困難な「超多剤耐性」(XDR)結核の感染が2010年3月時点で、世界58カ国で確認されたと発表した。XDR結核の感染者は推定で、年間2万5000人に上るとした。また、XDRを含めた、薬による治療が難しい「多剤耐性」(MDR)結核の感染者は08年で年間44万人、死者は15万人に上ったと推計した。
かつて日本では結核は国民病・亡国病とまで言われるほど猛威をふるった。第二次世界大戦後、結核予防法(昭和26年3月31日法律第96号)が制定され、抗生物質を用いた化学療法の普及などによって激減をみた。しかし他の先進工業国に比べて感染率と死亡率は依然高い状態である。2001年5月に20名の集団感染が発生した大学で診断を実施した教授が「関心の低下も一因」と指摘するなど、結核の危険性に対する日本国民の関心低下が指摘されており、今日では逆に「結核は過去の病気ではない」というスローガンで注意の喚起が叫ばれている。
日本での2010年の新規登録患者数は23,261人、罹患率は人口10万人対18.2であった。患者のうち高齢者の占める割合が高く、70歳以上は51.2%、80歳以上は29.7%であった。
予防(BCG接種)
予防策としてBCG接種があるが、その実施状況は国により異なる。日本では実施されている。アメリカでは行われていない。ヨーロッパ諸国では行われている国もあるが、フランスなど中止した国もある。BCGを行うことのメリットは、小児の結核性髄膜炎と粟粒結核の頻度を有意に減少させることにある(有効性 80%)。しかし、成人の結核症を減少させるという根拠はない(有効性
50%)。いっぽうデメリットとしては、ツベルクリン反応を陽性化させてしまうため結核の診断が遅れることにある。結核菌の頻度が低い地域ではBCGを行うメリットは低く、むしろデメリットが大きいと考えられる。BCGを中止したスウェーデン、旧東ドイツ、チェコスロバキアなどは、中止後小児結核が増加した経緯がある。結核菌の頻度が高い(特に家族間感染が多い)日本などの地域では今後もBCGは行われていくと思われる。
かつて日本ではまずツベルクリン反応検査を行い、陰性反応が出た者のみにBCG接種を行う形をとっていたが、2005年4月1日に結核予防法が改定され、ツベルクリン反応検査を行わずに全員にBCG接種を行う形になった。
なお、日本では2007年3月31日をもって結核予防法が廃止され、結核については感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)で二類感染症に指定されて同法の適用を受けることとなるとともに(感染症法6条3項)、BCG接種については予防接種法(昭和23年6月30日法律第68号)で定められることとなった。 |
結膜炎 |
Conjunctivitis |
結膜炎(けつまくえん)とは、結膜にできる炎症のことをいう。なお、慢性化した結膜炎を「慢性結膜炎」ということもある。 |
血友病 |
Haemophilia |
血友病(けつゆうびょう、Hemophilia)は、血液凝固因子のうちVIII因子、IX因子の欠損ないし活性低下に拠る遺伝性血液凝固異常症である。
血友病Aは第VIII因子の欠損あるいは活性低下に拠り、血友病Bは第IX因子の欠損あるいは活性低下に拠る。
男児出生数の5000〜1万人に1人が血友病患者である。血友病Aは血友病Bの約5倍である。 |
高血圧 |
Hypertension |
高血圧(こうけつあつ、Hypertension)とは、血圧が正常範囲を超えて高く維持されている状態である。高血圧自体の自覚症状は何もないことが多いが、虚血性心疾患、脳卒中、腎不全などの発症リスクとなる点で臨床的な意義は大きい。生活習慣病のひとつであり、肥満、高脂血症、糖尿病との合併は「死の四重奏」「syndrome
X」「インスリン抵抗性症候群」などと称されていた。これらは現在メタボリックシンドロームと呼ばれる。 |
膠原病 |
Collagen
disease |
膠原病 (こうげんびょう、英: connective
tissue disease [disorder]) とは、全身の複数の臓器に炎症が起こり、臓器の機能障害をもたらす一連の疾患群の総称。
この名称は1942年にクレンペラーが提唱した名称である。クレンペラーは全身性エリテマトーデス、全身性硬化症の研究から、病態の主座は結合組織と血管にあると考え、collagen-vascular
disease と命名した。これが膠原病と翻訳された。類似疾患概念に、自己免疫疾患、リウマチ性疾患、結合組織疾患があるが、膠原病はこの3つが重なった位置にあるとされる。
原因としては、血液中にある抗体が細胞核などと反応をして免疫複合体を形成しつつ、『(A)組織に沈着したり、(B)組織を攻撃する』ことで発病すると考えられ、死亡に至る場合もある。
典型的な症状として発熱・皮疹・倦怠感・関節痛・関節炎・筋肉痛・内臓病変・レイノー現象などがあげられ、'女性に多いのも特徴である。遺伝的要因と環境要因が発症に関与するとされる。慢性に経過し、寛解と再燃を繰り返しながら進行することがある。多くの場合に自己免疫疾患としての機序が関与していると考えられており、完全な病態の解明は、未だ成されていない。
現代での治療の主体は副腎皮質ステロイドを中心とする免疫抑制剤である。
近年ではTNFα阻害薬を中心とする生物学的製剤の導入によって治療概念が大きく変化し、寛解導入率が飛躍的に向上している。 |
高脂血症⇒脂質異常症 |
|
高次脳機能障害 |
|
高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)とは、主に脳の損傷によって起こされる様々な神経心理学的症状。
その症状は多岐にわたり、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害等で脳の損傷部位によって特徴が出る。
損傷が軽・中度の場合には核磁気共鳴画像法(MRI)でも確認できない場合がある。
SPECT(放射断層撮影)、PET(陽電子放射断層撮影)など、先端の画像診断で判別されることがあるが、現在では、診断の一材料である。
むしろ、画像診断に神経心理テストなど多角的な診断により「高次脳機能障害」と診断されるケースが多いのも事実である。
その障害は外からでも分かりにくく自覚症状も薄いため隠れた障害と言われている。
よく、一言で「高次脳」と略されるため、脳内にそのような部位があるのか、と勘違いされることがあるが、そうではなく、分かりやすく記すれば「高次の脳機能の障害」ということである。
伝統的、学術的、医学的な定義による高次脳機能障害は、脳損傷に起因する認知障害全般を示すものである。例えば症状に失語症また認知症がある。
これに対し、日本の厚生労働省が2001年度から本格的に研究に取り組んでいる「高次脳機能障害」は、行政的に定義されたものといえる。これについては少し説明が必要である。
脳血管障害(いわゆる脳卒中)や、交通事故による脳外傷後に身体障害となる場合がある。身体障害が後遺障害として残る場合と、時間の経過とともに軽快していく場合がある。しかし、身体障害が軽度もしくはほとんど見られない場合でも、脳の機能に障害が生じている場合がある。それが前述の認知障害、つまり行動に現れる障害であるため、職場に戻ってから、問題が明らかになるというケースがある。つまり、日常生活、社会生活への適応に困難を有する人々がいるにもかかわらず、これらについては診断、リハビリテーション、生活支援等の手法が確立していないため早急な検討が必要なことが明らかとなった。
交通事故による高次脳機能障害については、他の公的制度に先駆けて、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)が2001年から交通事故被害として認定するシステムを構築している。自賠責保険により、交通事故によって生じた高次脳機能障害として認定されれば、損害賠償の対象として保険金が支払われることとなる。 |
高所恐怖症⇒恐怖症 |
Acrophobia |
高所恐怖症(こうしょきょうふしょう)は、恐怖症のひとつ。最も有名な恐怖症の一つである。高い所(人によって程度の差がある)に登ると、それが安全な場所であっても、下に落ちてしまうのではないかという不安がつきまとう病的な心理。
高所恐怖症は精神科医の手助けが必要な不安障害である。厳密に言えば「単に高い場所が苦手なこと」とは異なる(こちらは正確には「高所恐怖癖」という。高い場所で本能的に危険を感じ、怖がるのは正常な反応である)。真性患者は全高1メートル弱の脚立の上でも身体が竦み、動けなくなってしまう。
極端な例を挙げるならば、30階建てのビルの屋上から宙吊りにされれば、誰でも怖いわけで、このような「危険が目に見えている状況」で怖がるのは本能として当然のことである。むしろ、こういう状況においても恐怖を感じない方が病的なのではないか、と言う専門家もいる。このことから赤ちゃんは本当は「高い高い」が怖いのではないかという説もある(実際、TBS系のクイズ番組『どうぶつ奇想天外!』で同様の実験を行ったことがある)。 |
後天性免疫不全症候群 |
HIV/AIDS |
後天性免疫不全症候群(こうてんせいめんえきふぜんしょうこうぐん、Acquired
Immune Deficiency Syndrome; AIDS)は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が免疫細胞に感染し、免疫細胞を破壊して後天的に免疫不全を起こす免疫不全症のことである。一般にエイズ(AIDS)の略称で知られている。性行為感染症の一つ。
HIVに感染した時点ではAIDSの発症とは言えないが、ここではHIV感染症全般の事柄についても記述する。ウイルスとしてのHIVについてはHIVを参照。
HIVの起源はカメルーンのチンパンジーという説が有力であり
、そこから人に感染して世界中に広まっていったと考えられている。1981年にアメリカのロサンゼルスに住む同性愛男性(ゲイ)に初めて発見され症例報告された。ただし、これはエイズと正式に認定できる初めての例で、疑わしき症例は1950年代から報告されており、「やせ病」(slimming disease)という疾患群が中部アフリカ各地で報告されていた。1981年の症例報告後、わずか10年程度で感染者は世界中に100万人にまで広がっていった。
当初、アメリカでエイズが広がり始めたころ、原因不明の死の病に対する恐怖感に加えて、感染者にゲイや麻薬の常習者が多かったことから感染者に対して社会的な偏見が持たれたことがあった。現在は病原体としてHIVが同定され、異性間性行為による感染や出産時の母子感染も起こり得ることが知られるようになり、広く一般的な問題として受け止められている。
現在全世界でのヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者は5千万人に達すると言われている。その拡大のほとんどがアジア、アフリカ地域の開発途上国において見られる。サハラ以南のアフリカには全世界の60%近くのエイズ患者がいるといわれ、増加傾向にある。また一部の開発途上国では上昇していた平均寿命が低下しているという現状がある。近年では中国、インド、インドネシアにおいて急速に感染の拡大が生じて社会問題化している。
日本では、1985年、初めてAIDS患者が確認され、1989年2月17日、「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律」が施行。当初は大半が凝固因子製剤による感染症例(薬害エイズ事件)だった。
新規HIV感染者数は世界でも特に少ない水準にあるが、年々増加する傾向にある。日本人患者・感染者の現状は、同性間性的接触(男性同性愛)による感染が多く、ついで異性間性行為による感染が続いている。静注薬物濫用や母子感染によるものは少ない。 |
高尿酸血症 |
Hyperuricemia |
高尿酸血症(こうにょうさんけっしょう)とは、ヒトの血中に存在する物質尿酸の血中濃度が異常に高い状態を言う。
具体的数値としては、血中尿酸濃度が7mg/dLを超えると高尿酸血症とする。DNAの合成に不可欠な物質であるプリン体の産生過剰あるいは排泄低下がその原因である。
生活習慣病として誰にでも起こりうる。体が合成する尿酸は食物由来の尿酸より数倍多いとされ、肥満が決定的な危険因子となる。プリン体の多い煮干しやレバー、白子などは長期にわたって大量に摂取すれば危険因子である。
グルコースがリン酸化されてグルコース-6-リン酸となって細胞内に一時的に留まりゆっくりと解糖されるのに対して、アルコールや果糖の代謝にあたっては急速に解糖が進み乳酸の生成が急速に進みアシドーシスが進む場合があり、尿酸の排泄や析出に影響を与え、痛風を起こすきっかけとなることがある。果糖は果物を常識的な量で摂っている分には問題ないが、工業的に作られた果糖を清涼飲料水から大量に飲むと問題が発生する懸念が否定できない。 |
更年期障害 |
Menopause |
更年期障害(こうねんきしょうがい、英:
menopause, postmenopausal syndrome, PMS)とは、卵巣機能の低下によるエストロゲン欠乏、特にエストラジオールの欠乏に基づくホルモンバランスの崩れにより起こる症候群。
閉経(50歳前後)の女性が、エストロゲン欠乏による心身の不調(ほてり・のぼせなどの血管運動神経症状)を有していると言われている。医師により「更年期障害」と診断される人は、更年期女性の2−3割とされている。 |
広汎性発達障害 |
Pervasive
developmental
disorder |
広汎性発達障害(こうはんせいはったつしょうがい、PDD,
pervasive developmental disorders)とは、社会性の獲得やコミュニケーション能力の獲得といった、人間の基本的な機能の発達遅滞を特徴とする「発達障害における一領域」のことである。
伝統的には発達障害の概念を「広汎性発達障害」と「特異的発達障害」の領域に二分してきたが、特に2000年代以降の臨床医学においては発達障害の概念が整理し直されている。なお、発達障害は、各種の診断基準や疾病分類において精神疾患に含まれる。
広汎性発達障害には、知能指数が低い場合と高い場合の双方が見られる(後者は、知的障害がない、という意味で「高機能PDD」と称する)。知能指数が低い場合の方が、発見が比較的容易だったとされることから旧来より認知されてきており、知能指数の高い場合については、1980年以降からしばしば認知されるようになった。
広汎性発達障害の「広汎性」というのは、「特異的」な発達障害に対する呼び方である。広汎性発達障害、特異的発達障害は、双方ともに発達障害であるものの、発達障害の概念については整理のやり直しが行われており、「○○発達障害」という診断名でなくても、日本の公的機関における取り扱いにおいては発達障害に含められるものもある。現在の臨床医学において「広汎性発達障害」は、世界保健機関が定めたICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類
第10版)、アメリカ精神医学会が刊行したDSM-IV-TR(精神疾患の分類と診断の手引
第4版新訂版)などにおける分類上の概念として取り扱われている。
アメリカ精神医学会が刊行したDSM-IV-TR(精神疾患の分類と診断の手引 第4版新訂版)においては、広汎性発達障害に、自閉症、アスペルガー症候群、レット障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害(非定型自閉症を含む)が掲げられており、世界保健機関が定めたICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類
第10版)においては、DSM-IV-TRと診断分類および診断基準ともに、やや異なる。
知能指数が知的障害の領域にない広汎性発達障害は、高機能広汎性発達障害(一般的には、略称の「高機能PDD」を用いるが、通常は高機能自閉症とアスペルガー症候群の2つの総称を指す)と呼ばれることもあり、発達障害に分類される。自閉症には、知的障害をともなう場合と、知的障害をともなわない場合である高機能自閉症があり、これらは、別個の障害ではなく一連の要素を含む先天性認知障害である。
世界保健機関
(WHO) のICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)においては、症状がいつ認められるかについて統一性がない。自閉症は遅くとも生後30ヶ月以内に症状が認められる症候群であるとされているが、小児期崩壊性障害はそうではない。 |
咬耗症 |
Attrition |
咬耗症(こうもうしょう、Attrition)は、歯と歯あるいは歯と食物の過剰な接触により、歯のエナメル質や象牙質に発生する慢性損傷。歯の物理的損傷の一つである。 |
五十肩 |
Adhesive
capsulitis
of
shoulder |
五十肩(ごじゅうかた、英: frozen
shoulder)は、肩の痛みと運動制限をきたす疾患。四十肩とも。従来は腱板損傷や石灰沈着性腱板炎なども含めて五十肩と呼んでいたが、近年では原因のあきらかな疾患は五十肩に含めない。すなわち、肩に疼痛(痛み)と運動障害がある、患者の年齢が40歳以降である、明らかな原因がないという3条件を満たすものを五十肩と呼ぶ。
最初、肩関節付近に鈍痛がおこり、腕の可動範囲の制限が起こる。次第に痛みは鋭いものになり、急に腕を動かす場合などに激痛が走るようになる。痛みのために、腕を直角以上に上げられなくなったり、後ろへはほとんど動かせないなどの運動障害が起こる。生活にも支障をきたすようになり、重症化すると、洗髪、髪をとかす、歯磨き、炊事、洗濯物を干す、電車のつり革につかまる、洋服を着る、寝返りを打つ、排便後の尻の始末などが不自由となり、日常生活に大きな困難をもたらす場合がある。軽症で済むか重症化するかの仕組みもはっきりしていない。
痛みは片方の肩だけの場合と、一方の肩が発症してしばらく経つともう片方の肩にも発症してしまう場合とがあるが、片方の肩が発症してしまうともう一方も発症する確率が高いようで、これを防止することは難しい。また、痛みのピーク時には肩の痛みに加えて、腕全体にだるさや痺れがあることも。常に腕をさすっていないと我慢できない、と訴える患者もいる。
初期の症状が始まってからピークを迎えるまで数ヶ月を要し、ピークは数週間続き次第に和らいでくる。痛みのレベルにもよるが、鋭い痛みが感じられなくなるまでに半年前後、さらにボールなど物を投げられるようになるまでには1年前後かかる。腕の可動範囲を発症前の状態までに戻せるかどうかは、痛みが緩和した後のリハビリ次第だが、多くの場合発症前の状態には戻りにくい。 |
骨腫瘍 |
Bone
tumor |
骨腫瘍(こつしゅよう、英: bone
tumor)とは骨組織に発生する腫瘍であり、原発性腫瘍と転移性腫瘍に分けられる。殆どの場合、長管骨の骨幹端に発生する。原発性の場合、組織生検によって悪性か否かを判定する。骨腫瘍は若年者の発症が非常に多いので30歳未満の病的骨折をみたら一応は疑った方がよいと言われている。 |
骨粗鬆症 |
Osteoporosis |
骨粗鬆症(こつそしょうしょう、もしくは「骨粗しょう症」osteoporosis)とは、骨形成速度よりも骨吸収速度が高いことにより、骨に小さな穴が多発する症状をいう。背中が曲がることに現れる骨の変形、骨性の痛み、さらに骨折の原因となる。骨折は一般に強い外力が加わった場合に起こるが、骨粗鬆症においては、日常生活程度の負荷によって骨折を引き起こす。骨折による痛みや障害はもちろん、大腿骨や股関節の骨折はいわゆる高齢者の寝たきりにつながり、生活の質 (QOL) を著しく低くする。
日本では厚生労働省などによると、日本国内の患者は高齢女性を中心に年々増加しており、自覚症状のない未受診者を含めると、推計で1100万人超に上る。患者の8割は女性である。ホルモンの分泌バランスが変化する更年期以降の女性に多く、60代女性の3人に1人、70代女性の2人に1人が、患者になっている可能性があるとされる。初期段階に自覚症状はなく、骨折して初めて気付くケースも少なくない。アメリカ合衆国では3000万人に症状が現れていると考えられている。
骨は建築物に用いられる鉄骨などとは異なり、正常時は常に骨芽細胞と破骨細胞によって形成・吸収がバランスよく行われ、古い骨を壊し、新しい骨を作り、一定の量を保っている。高齢の女性においては、性ホルモンの一種エストロゲンの産出量が、閉経後に急速に低下する。エストロゲンには骨芽細胞の活動を高める作用があるため、閉経によって骨粗鬆症へと進みやすい。さらに女性は男性に比べてもともと骨量が少ないため、形成・吸収のバランスが崩れたときに、症状が表面化しやすい。 |
コレラ |
Cholera |
コレラ (Cholera、虎列剌)
は、コレラ菌 (Vibrio cholerae) を病原体とする経口感染症の一つ。日本では「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」 (感染症新法) の指定感染症である(2006年(平成18年)12月8日公布の「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律」により二類感染症から三類感染症に変更)。日本ではコレラ菌のうちO1、O139血清型を原因とするものを行政的にコレラとして扱う。
コレラの感染力は非常に強く、これまでに7回の世界的流行 (コレラ・パンデミック)
が発生し、2006年現在も第7期流行が継続している。2009年1月29日現在、ジンバブエで流行中のコレラの死者が3000人に達し、なお増え続けている。
アジア型は古い時代から存在していたにもかかわらず、不思議なことに、世界的な流行
(パンデミック) を示したのは19世紀に入ってからである。コレラの原発地はインドのガンジス川下流のベンガルからバングラデシュにかけての地方と考えられる。最も古いコレラの記録は紀元前300年頃のものである。その後は、7世紀の中国、17世紀のジャワにコレラと思われる悪疫の記録があるが、世界的大流行は1817年に始まる。この年カルカッタに起こった流行はアジア全域からアフリカに達し、1823年まで続いた。その一部は日本にも及んでいる。1826年から1837年までの大流行は、アジア・アフリカのみならずヨーロッパと南北アメリカにも広がり、全世界的規模となった。以降、1840年から1860年、1863年から1879年、1881年から1896年、1899年から1923年と、計6回にわたるアジア型の大流行があった。しかし1884年にはドイツの細菌学者ロベルト・コッホによってコレラ菌が発見され、医学の発展、防疫体制の強化などと共に、アジア型コレラの世界的流行は起こらなくなった。
だがアジア南部ではコレラが常在し、なお流行が繰り返され、中国では1909年、1919年、1932年と大流行があり、またインドでは1950年代まで持ち越し、いずれも万人単位の死者を出すほどであった。
一方、エルトール型コレラは1906年にシナイ半島のエルトールで発見された。この流行は1961年から始まり、インドネシアを発端に、発展途上国を中心に世界的な広がりを見せており、1991年にはペルーで大流行が発生したほか、先進諸国でも散発的な発生が見られる。1992年に発見されたO139菌はインドとバングラデシュで流行しているが、世界規模の拡大は阻止されている。 |
さ |
細菌性肺炎⇒肺炎 |
Bacterial
pneumonia |
細菌性肺炎(さいきんせいはいえん)は細菌を原因とした肺の急性炎症であり、そのほとんどは肺胞性肺炎である。
一般的な市中肺炎と院内肺炎では起炎菌の種類が異なる。肺炎が気管支炎にとどまるか大葉性肺炎へと広がるかは、菌の毒力と宿主の抵抗力のバランスで決まる。市中肺炎では、肺炎球菌とインフルエンザ菌が重要であり、院内肺炎の起炎菌としては緑膿菌やクレブシエラなどが重要である。
また、MRSAの院内感染が問題となっている。MRSAは、院内肺炎の原因菌となりうるが、バンコマイシンなどの一部の抗菌薬以外、ほとんどの抗菌薬に耐性である。
肺炎の死亡率はとくに高齢者で高く、75歳を過ぎると急激に増加する。加齢に伴う唾液分泌量の低下は口腔内の病原性細菌の増殖をまねき、病原細菌を含んだ口腔‐咽頭分泌物のくり返される誤嚥は肺の細菌処理能力をこえ、肺炎を引き起こす。よって、口腔ケアにより口腔内を清潔に保つことが重要である。また、人工呼吸器や経管栄養チューブをつけている高齢の入院患者などでは胃液の誤嚥による肺炎も問題となる。
細菌性肺炎において、起炎菌・感受性を同定するには培養が必要となるが、治療開始を遅らせる事はできないので、喀痰のグラム染色により、おおよその検討をつけて治療を開始することが多い。近年では迅速診断キットにより尿中肺炎球菌、尿中レジオネラ菌抗原検出ができるため、これらも参考とする。 |
サルコペニア |
Sarcopenia |
サルコペニア(sarcopenia)は、進行性および全身性の骨格筋量および骨格筋力の低下を特徴とする症候群。筋肉量の低下を必須項目とし、筋力または身体能力の低下のいずれかが当てはまればサルコペニアと診断される。
サルコペニアは、1989年にRosenbergによって「加齢による筋肉量減少」を意味する用語として提唱された。サルコペニアは造語で、ギリシア語でサルコ(sarco)は「肉・筋肉」、ペニア(penia)は「減少・消失」の意。当初は骨格筋肉量の減少を定義としていたが、徐々に筋力低下、機能低下も含まれるようになった。上述の定義はEuropean
Working Group on Sarcopenia in Older Peopleのものであり、身体機能障害、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)低下、死のリスクを伴う包括的な内容も含まれる。同年のヨーロッパ静脈経腸栄養学会のコンセンサス論文では筋肉量減少と筋力低下を認める状態を、the
Society of Sarcopenia,Cachexia and Wasting Disordersでは筋肉量減少と身体機能低下を認める状態をサルコペニアと定義している。以上のように、サルコペニアの定義は現状では確定されたものはない。現段階での各学会の定義をまとめると、狭義では筋肉量減少のみが、広義では筋力低下や身体機能低下が含まれたものが「サルコペニア」と呼ばれている。 |
サルモネラ |
Salmonella |
サルモネラ (Salmonella)
とは、グラム陰性通性嫌気性桿菌の腸内細菌科の一属(サルモネラ属)に属する細菌のこと。主にヒトや動物の消化管に生息する腸内細菌の一種であり、その一部はヒトや動物に感染して病原性を示す。ヒトに対して病原性を持つサルモネラ属の細菌は、三類感染症に指定されている腸チフスやパラチフスを起こすもの(チフス菌 S. Typhiとパラチフス菌 S. Paratyphi A)と、感染型食中毒を起こすもの(食中毒性サルモネラ:ネズミチフス菌S. Typhimuriumや腸炎菌S. Enteritidisなど)とに大別される。食品衛生の分野では、後者にあたる食中毒の原因となるサルモネラを特にサルモネラ属菌と呼ぶが、一般には、これらを指して狭義にサルモネラあるいはサルモネラ菌と呼ぶこともある。細胞内寄生性細菌であり、チフス菌やパラチフス菌は主にマクロファージに感染して菌血症を、それ以外の食中毒性サルモネラは腸管上皮細胞に感染して胃腸炎を起こす性質を持ち、この細胞内感染がサルモネラの病原性に関与している。
Salmonellaという属名は、1885年にアメリカでサルモネラ属の基準株であるブタコレラ菌
(S. Choleraesuis) を発見した細菌学者、ダニエル・サルモン(英語版)にちなんで名付けられた。ただし、サルモネラ属に属する細菌の分離はそれ以前から行われており、ヒトに対する病原性サルモネラとして最初に分離されたのはチフス菌 (S. Typhi) である。チフス菌は1880年にカール・エーベルトにより命名され、1884年にゲオルク・ガフキーがその純培養に成功した。 |
痔 |
Hemorrhoid |
痔(じ・ぢ)は、肛門部周辺の静脈が圧迫され、血液の流れが滞ること等によって発生する、疾患の総称である。痔疾(じしつ)ともいう。
英語ではhemorrhoidsまたはpilesであるがこれらは基本的にいぼ痔を指す。痔になった人のことを、痔持ちまたは痔主と言う。
病気としての痔
ヒト固有の病気
直立二足歩行するヒトの場合、直腸や肛門付近の血管は、頭の方向に血液を送っているため、普段から非常に大きい圧力がかかっている。そこに、長時間の立仕事や座り仕事などによる肛門付近での体液の鬱滞、便秘または下痢を繰り返すことなどで肛門部に強い力が幾度もかかること、などの要因が加わって痔を発症する。痔は、排便の障害となることがある。
生活習慣病
「寒さ」の要因を別にすれば、おおむね「生活習慣病」であると言える。よって、適度な「運動・栄養・休息」をとり、健康的な生活習慣になるよう改善することで、ある程度の予防・治癒することが可能である。
排便時などの出血
なお、排便時などの出血を痔によるものだと誤解し、直腸癌など致死的となる病気を放置している事例がある。
また、一口に痔と言っても種類によって対処法が違うので、痔になってしまった場合は、どの種の痔なのかも知る必要がある。したがって痔になった場合には、病院で検査を受けることが望ましい。 |
子宮癌 |
Uterine
cancer |
子宮癌(しきゅうがん、英: Uterine
cancer)は、子宮に発生する悪性腫瘍
のうち以下の二つを総称したもの。
・子宮体癌(Endometrial cancer、子宮内膜癌とも言う)
・子宮頸癌(Cervical cancer)
なお日本産科婦人科学会では、「子宮がん」は定義があいまいであり、上記2疾患は明確に区別すべきとして、この用語を廃止するよう厚生労働省に要望するとしている。
また、子宮に発生する悪性腫瘍には他に以下もある。
・子宮肉腫(Uterine sarcoma)
・絨毛癌(Choriocarcinoma)
・胞状奇胎(Hydatidiform mole) |
子宮筋腫 |
Uterine
ibroid |
子宮筋腫(しきゅうきんしゅ、uterine
fibroids)とは、子宮の筋層に存在する平滑筋細胞由来の良性腫瘍である。
生殖年齢の女性のうち20%の割合で発生するが、悪性化するのは0.5%以下である。30〜40代に好発する。
子宮壁を構成する3つの層における存在部位によって、粘膜下筋腫(子宮の内側(子宮腔)寄り)、筋層内筋腫(子宮壁の肉の中)、漿膜下筋腫(子宮の外側寄り)に分類される。また、子宮頸部の位置にできるものは頸部筋腫と呼ばれる。半数以上の子宮筋腫が多発性(複数の塊が発生する)である。
子宮筋腫はエストロゲン依存性良性疾患であるため、閉経後は縮小するので、外科的な処置をしないことが多い。エストロゲン依存性の疾患として、ほかに乳腺症、乳癌、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮内膜増殖症、子宮体癌などが知られている。特に子宮内膜症と子宮腺筋症の合併例は多く、月経困難症の合併をみることがある。子宮内膜症の合併は約20%である。 |
脂質異常症 |
Hypercholesterolemia |
脂質異常症(ししついじょうしょう)は、血液中に含まれる脂質が過剰、もしくは不足している状態を指す。
2007年7月に高脂血症から脂質異常症に改名された。
脂質異常症(高脂血症)は診断基準による分類と病態による分類とがあり、診断基準による分類は、高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセリド血症といった種類があり、世界保健機関 (WHO)
の基準に基づき日本動脈硬化学会が診断基準を定めている。一方病態による分類はリポタンパク質の増加状態より分類
するもので、世界保健機関
(WHO) の1970年報告に基づき日本動脈硬化学会が2013年版脂質異常症治療ガイドに脂質異常症表現型の分類法として記載した。 |
歯周病
(歯槽膿漏) |
Periodontitis |
歯周病(ししゅうびょう)とは、歯肉、セメント質、歯根膜および歯槽骨より構成される歯周組織に発生する疾患の総称である。歯周疾患(ししゅうしっかん)、ペリオ (perio) ともいい、ペリオは治療のことを指すこともある。ただし、歯髄疾患に起因する根尖性歯周炎、口内炎などの粘膜疾患、歯周組織に波及する悪性腫瘍は含まない。
歯垢(プラーク)を主要な原因とする炎症疾患が多いが、単に歯垢のみでなく、多くの複合的要因によって発生する。また、歯垢が一切関係ない(非プラーク性)歯周疾患も多数存在する。さらに、原因因子には個人差があり、歯周病の罹りやすさや進行度合いは人によって違う。
歯周病のうち、歯肉に限局した炎症が起こる病気を歯肉炎(しにくえん)、他の歯周組織にまで炎症が起こっている物を歯周炎(ししゅうえん)といい、これらが二大疾患となっている。歯肉炎で最も多いのはプラーク性歯肉炎(単純性歯肉炎)であり、歯周炎のうちで最も多いのは慢性歯周炎(成人性歯周炎)であるため、歯肉炎、歯周炎といった場合、それぞれ、プラーク性歯肉炎、慢性歯周炎を指すのが一般的である。
歯科疾患実態調査によると、日本においては歯周疾患の目安となる歯周ポケットが4mm以上存在している割合が、50代の人で約半数に達しており、また、高齢者の歯周疾患患者が増加していることが示されている。ただし、前回までと比較して調査方法の厳密化がなされていることから、単純比較は出来ないのではないかとされている。また、8020運動の推進などにより、残存歯数が増加していることも歯周疾患の増加に関わっていると考えられている。
歯周病は人類史上最も感染者数の多い感染症とされ、ギネス・ワールド・レコーズに載っているほどである。 |
シックハウス症候群 |
Sick
building
syndrome |
シックハウス症候群(シックハウスしょうこうぐん、Sick
House Syndrome)は、米英での(Sick
building syndrome/シックビルディング症候群)についての邦訳。建築用語・または症候のひとつ。
新築の住居などで起こる、倦怠感・めまい・頭痛・湿疹・のどの痛み・呼吸器疾患などの症状があらわれる体調不良の呼び名。また、新品の自動車でも同様の症状(New
car smell)が報告されており、シックカー症候群としてマスメディア等で取り上げられている。職場だけでなく住居で多くの問題があることから歯科医師の上原裕之が命名した。
なお、真菌や担子菌のトリコスポロンが要因とされる夏型過敏性肺炎(summer-type
hypersensitivity pneumonitis)は、シックハウス症候群とは同一ではない。 |
失神 |
Syncope |
失神(しっしん、syncope; シンコピー)とは、大脳皮質全体あるいは脳幹の血流が瞬間的に遮断されることによっておこる一過性の瞬間的な意識消失発作である。通常は数分で回復し、意識障害などの後遺症を起こすことはない。通常、失神が起こる前に、目の前が真っ暗になる感じや、めまい感、悪心などがあり、その後顔面蒼白となり、ついに意識が消失する。また、失神の発作は、立っている時に起こることが多い。
脳の後遺症が出ることは少ないが、突然、姿勢維持筋緊張が消失するため、倒れこんだ時に、頭部や四肢などをまともに床や壁に激突させてしまい、外傷を負うことが多いので決して軽視できる症状ではない。ヒステリーによるものの場合は外傷が見られない場合が多い。 |
失調 |
Ataxia |
失調(しっちょう)とは、医学用語で、ある機能が調節を失うこと。様々な機能について用いられ、複数の英語またはラテン語の訳語になる。運動失調、自律神経失調症、統合失調症など語尾に用いられることが多い。これに対して単に失調という場合は、英語の
ataxia の訳語運動失調と同義に用いられることが最も多いが、incontinence(または incontinentia)の訳語として、失禁と同義に用いられることもある。
運動が円滑に行われるためには多くの筋肉の協働、協調が必要だが、その協調を欠いた状態が失調と呼ばれる。個々の筋肉の力は正常であるが運動は拙劣にしか行えなくなる。大脳性失調、小脳性失調の他、平衡感覚が損なわれた前庭性失調、深部感覚が損なわれた脊髄性失調がある。 |
ジフテリア |
Diphtheria |
ジフテリア (diphtheria)
は、ジフテリア菌 ( Corynebacterium
diphtheriae ) を病原体とするジフテリア毒素によって起こる上気道の粘膜感染症。
感染部位によって咽頭・扁桃ジフテリア、喉頭ジフテリア、鼻ジフテリア、 皮膚ジフテリア、 眼結膜ジフテリア、生殖器ジフテリアなどに分類できる。腎臓、脳、眼の結膜・中耳などがおかされることもあり、保菌者の咳などによって飛沫感染する。発症するのは10%程度で、他の90%には症状の出ない不顕性感染であるが、ワクチンにより予防可能で予防接種を受けていれば不顕性感染を起こさない。すべてのジフテリア菌が毒素を産生するわけではなく、ジフテリア毒素遺伝子を保有するバクテリオファージが感染した菌のみが、ジフテリア毒素を産生する。 |
自閉症 |
Autism |
自閉症(じへいしょう、Autism)は、社会性や他者とのコミュニケーション能力に困難が生じる障害の一種。先天性の脳機能障害とされるが、脳機能上の異常から認知障害の発症へといたる具体的なメカニズムについては未解明の部分が多い。時に、早期幼児自閉症、小児自閉症、あるいはカナー自閉症と呼ばれる。一般的には、発達障害の一種である自閉症スペクトラムのうち、いわゆる従来型自閉症と呼ばれるもの(あるいはスペクトラムピラミッドの頂点に近いところに位置している状態)を、単に「自閉症」と称することが多い。
日常語でうつ病やひきこもり、内気な性格を指して自閉症と呼ぶこともあるが、これは医学的には完全に誤った用語である。
知的障害を伴わない自閉症を高機能自閉症 (HA; High Functioning Autism) として、区別している。
発達心理学者のサイモン・バロン=コーエンは、著書『共感する女脳、システム化する男脳』にて、自閉症は極端な「男性型の脳」であるとの見解を述べている。この考えを最初に提唱したのは、アスペルガー症候群の生みの親ハンス・アスペルガーであることも紹介している。実際に自閉症の患者の80%は男性であるとされる。ただし、サイモンは「性別による自閉症出現率の違いをそれほど重大な要件とはみなしていない」と明記している。
DSM-IV発表前の米国の自閉症発生率は2000人〜5000人に1人だったが、DSM-IVで自閉症にアスペルガー障害が加えられて以降、20〜40倍に増加している。DSM-IVのアレン・フランセス編纂委員長は「米国で88人に1人、韓国では38人に1人が自閉症と診断されるようになった」と述べている。米国では、自閉症と診断されると教育面で優遇されるなどの社会的背景があり、診断数の増加につながっているとの見方もある。フランセスは、「精神科の診断を、法医学的判断、障害判断、学校の判断、養子縁組の判断などから切り離すべきだと思います。精神科の診断は意思決定の一部であるべきであって、唯一の決定要因ではありません」と強調している。 |
自閉症スペクトラム |
Autism
spectrum |
自閉症スペクトラム(じへいしょうスペクトラム、英語:Autistic
Spectrum Disorder、略称:ASD)とは、自閉症、特定不能の広汎性発達障害などの各疾患を広汎性発達障害の連続体の1要素として捉えたもののことである。自閉症連続体(じへいしょうれんぞくたい)、自閉症スペクトル(じへいしょうスペクトル)などともいう。
「自閉症スペクトラム」の概念は、1990年代に、主に自閉症やアスペルガー症候群の研究者らによって提案された。
高機能自閉症とアスペルガー症候群に違いがあるのかどうか、知能指数の高低をどのように捉えるべきかなどの諸課題について、臨床医学・医統計学における体系化・均質化を目指したものともいわれている。(いわゆる従来型)自閉性障害、高機能自閉症、アスペルガー障害、レット症候群、小児崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害のことをいう。
DSM-5では、知的障害の有無を問わず、知的障害のないとされる高機能PDDを包括して、「自閉症スペクトラム」としてまとめられる方向で検討されている(このため、従来の高機能PDDは、「知的障害のない自閉症スペクトラム」のくくりとして捉えられる形となる)。 |
しもやけ |
Chilblains |
しもやけ(霜焼け、英: Chilblain)とは、身体の一部が冷えたために、膨れて硬くなったり、その部分が痒くなったり熱くなるような感覚を覚える現象である。しもばれ(霜腫れ)、しもくち(霜朽ち)、凍瘡とも言う。
しもやけは、寒さのために血行が悪くなり生じる炎症のことであり、手足など血管が細い四肢末端に発症しやすい。また、肌が外気に露出している頬や鼻先や耳たぶもしもやけになりやすい部位である。よく「ジンジン」と形容される感覚を起こしやすく、むず痒い、痛い、熱いなどと表現されることもある。指に発症した場合は、患部が硬く膨れ上がる場合もある。患部を暖めると疼痛や痒みが強く感じられる事が多い。童謡『たきび』にも歌われている、冬の季節病である。
しもやけの状態で肌が乾燥すると、皮膚の角質層の厚い部分に亀裂(皹裂)が生じ、内部が赤く見えたり出血したりする。これをひび、また程度の甚だしいものをあかぎれと呼ぶ。用字はともに皹、皸、胼。 |
重症急性呼吸器症候群 |
Severe
acute
respiratory
syndrome |
重症急性呼吸器症候群(じゅうしょうきゅうせいこきゅうきしょうこうぐん、Severe
Acute Respiratory Syndrome; SARS(サーズ))は、SARSコロナウイルスにより引き起こされる新種の感染症。新型肺炎(非典型肺炎、中国肺炎、Atypical Pneumonia)とも呼ばれる。
2002年11月(広州市呼吸病研究所は7月と発表)に中華人民共和国広東省で発生し、2003年7月に新型肺炎制圧宣言が出されるまでの間に8,069人が感染し、775人が死亡した。 |
重症筋無力症 |
Myasthenia
gravis |
重症筋無力症(じゅうしょうきんむりょくしょう、Myasthenia
Gravis; MG)とは、狭義にはニコチン性アセチルコリン受容体(神経伝達物質であるアセチルコリンの筋肉側における受け皿)に抗アセチルコリン受容体抗体が結合し、アセチルコリンによる神経・筋伝達を阻害するために筋肉の易疲労性や脱力が起こる自己免疫疾患である。日本では厚生労働省により特定疾患に指定されている難病である。
なお、広義にはMusk抗体由来症例や原因不明の類似症例等も重症筋無力症に含める場合もある。 |
消化性潰瘍 |
Peptic
ulcer |
消化性潰瘍(しょうかせいかいよう、英:Peptic
ulcer)とは主に胃酸が要因となって生じる潰瘍のことである。
胃癌等の悪性腫瘍も潰瘍病変を呈するが本稿では良性の潰瘍について記述。
潰瘍の生じる部位別に旧来通り以下の通りに称される。
・胃潰瘍(Gastric ulcer or Stomach ulcer)
・十二指腸潰瘍(Duodenal ulcer)
・食道潰瘍(esophageal ulcer 胃食道逆流症を参照)
・デュラフォイ潰瘍(仏:Ulcere(最初のeの頭に`) de Dieulafoy)
比較的小さな潰瘍であるが大出血を生じる潰瘍として1898年にフランスの外科医Paul Georges Dieulafoyが報告したもの。粘膜浅層の血管の走行上部にちょうど潰瘍が生じることで、小さく浅い潰瘍でも血管破綻を生じ大出血する潰瘍。
・急性胃粘膜病変(AGML:acute gastric mucosal lesion)
・急性十二指腸粘膜病変(ADML:acute duodenal mucosal
lesion)
成因
・胃潰瘍
通常は強酸である胃酸の分泌に対し、胃内の粘膜は粘膜保護が作用し攻撃因子・防御因子のバランスが保たれている。胃潰瘍は主に、粘膜保護作用の低下によって防御因子が低下することで生じる。
・十二指腸潰瘍
ヘリコバクター・ピロリ(H.Pylori)保菌者が多く、比較的若年者に多い。H.Pyloriが胃前庭部に潜伏し始め、持続的にガストリン分泌刺激が促され胃酸分泌過多を生じることによって生じるとされている。十二指腸潰瘍は食前・空腹時に痛みが増悪することが知られているが、摂食刺激によってセクレチンが分泌されガストリン分泌が抑制され胃酸分泌が少なくなるためと考えられている。 |
小児マヒ⇒急性灰白髄炎 |
|
食中毒 |
Foodborne
illness |
食中毒(しょくちゅうどく)とは、有害・有毒な微生物や化学物質等毒素を含む飲食物を人が口から摂取した結果として起こる下痢や嘔吐や発熱などの疾病(中毒)の総称である。
食中毒は、その原因になった因子・物質によって、(1) 細菌性食中毒、(2)
ウイルス性食中毒、(3)
化学性食中毒、(4) 自然毒食中毒、その他に大別される。
食中毒の直接の原因は、飲食物などに含まれていた有害・有毒な原因物質を摂取することによるが、その原因物質が直接に毒物として作用する場合と、原因物質が微生物であり、その増殖によって消化管の感染症を発症する場合に分けられる。広義には、前者を
(a) 毒素型食中毒、後者を (b) 感染型食中毒と呼ぶ。(3) 化学性食中毒や (4) 自然毒食中毒はすべて
(a) 毒素型食中毒である。(1) 細菌性食中毒や (2) ウイルス性食中毒では、その原因微生物によってタイプが異なり、(b)
感染型食中毒を起こすものと、(a) 毒素型食中毒を起こすものがある。(1) 細菌性の毒素型食中毒の場合、原因となる細菌が食品中で増殖するとともに毒素を産生し、その食品を汚染することが食中毒の原因となる。この場合、増殖後に細菌を殺して除いても、毒素が残っていれば食中毒が発生する。また
(1) 細菌性食中毒では、病原菌が消化管内で増殖する際に初めて毒素を生成するものがあり、生体内毒素型食中毒と呼ばれるが、これは感染型と毒素型の中間に位置するものとして、中間型食中毒とも呼ばれる。
梅雨で高温多湿となる夏期に、最も食中毒の発生件数が多くなる。そのほとんどは細菌性食中毒である。しかしこれ以外の季節でも、冬期には牡蛎が原因とみられるノロウイルスが原因の食中毒が多く発生する。また、キノコやフグなどによる自然毒食中毒は、それぞれその食材の旬にあたる秋から冬にかけて多く発生する。
かつては、人から人へ感染が及ばないものといわれていたが、O157
などの腸管出血性大腸菌やノロウイルスは患者から患者へ感染するため、近年、国際的には食感染症として伝染病とあわせた対策がとられている。
食物アレルギーは食中毒に含まれない。 |
食道癌 |
Esophageal
cancer |
食道癌(しょくどうがん、英Esophageal
cancer)は、広義では食道に発生する悪性腫瘍の総称。
日本では、60歳代の男性に好発し、男女比は、3:1程度である。また、食道癌全体の93%以上を食道扁平上皮癌がしめ、発生部位も胸部中部食道に多いのに対し、アメリカではここ30年ほどで扁平上皮癌の割合が低下し、現在では約半数を食道胃接合部近傍の腺癌が占める。その違いの原因は明らかではないが、ひとつは禁煙による癌発症予防効果が扁平上皮癌の方が高いことが挙げられている。これは、アメリカでは日本より禁煙が進んでいるためである。白人に比べて喫煙率が高い黒人では扁平上皮癌の罹患率がより高いことが示されている。また、バレット食道の罹患率がアメリカのほうが多いという点も理由に挙げられる。 |
ショック |
Shock
(circulatory) |
ショックまたは循環性ショック(じゅんかんせいショック)とは主に、血圧が下がって、死にそうになること。生命の危険がある状態のひとつ。医学用語としての「ショック」は、単にびっくりした状態、急に衝撃を受けた状態、という意味ではない。より正確には、身体の組織循環が細胞の代謝要求を満たさない程度にまで低下することを特徴とする、重度かつ生命の危機を伴う病態のこと。原因は血圧とは限らない。血液は酸素や栄養素を全身に輸送しているが、血流低下によりそれが妨げられ、全身組織の機能不全を呈することになる。
日本語では末梢循環不全あるいは末梢循環障害といい、重要臓器の血流(特に微小循環)が障害されて起こる、急性の疾患群の事を指す。細胞障害を生じるため、末梢血管の虚脱、静脈還流量の減少、心拍出量の低下、組織循環能力の低下等の循環機能障害を見る。 |
自律神経失調症 |
Dysautonomia |
自律神経失調症(じりつしんけいしっちょうしょう、英称:dysautonomia)とは、交感神経と副交感神経の2つから成り立つ自律神経のバランスが崩れた場合に起こる症状の総称のことである。
日本心身医学会では「種々の自律神経系の不定愁訴を有し、しかも臨床検査では器質的病変が認められず、かつ顕著な精神障害のないもの」と暫定的に定義されている。ただし、この病気は日本では広く認知されているもののDSMでは定義されていない。ICD-10
においては、G90 Disorders of autonomic nervous system に分類され、特定の病名に帰着しないものを
G90.9 としている。
この病気は1961年ごろに東邦大学の阿部達夫が定義したものであるが、現在も医学界では独立した病気として認めていない医師も多い。疾患名ではなく「神経症やうつ病に付随する各種症状を総称したもの」というのが一般的な国際的理解である。
この病気は実際にはうつ病、パニック障害、過敏性腸症候群、頚性神経筋症候群や身体表現性障害などが原疾患として認められる場合が多く、原疾患が特定できない場合でもストレスが要因になっている可能性が高いため、適応障害と診断されることもある。また、癌などであっても似たような症状が表れることがある。
また、原疾患を特定できない内科医が不定愁訴などの患者に対し納得させる目的でつける、と言う否定的な見解もあり、内科で自律神経失調症と診断された場合は心療内科・精神科などでカウンセリング・投薬治療を受けることを勧められている。 |
心筋梗塞⇒虚血性心疾患 |
Myocardial
infarction |
心筋梗塞(しんきんこうそく、英: Myocardial
Infarction)は、虚血性心疾患のうちの一つ。心臓が栄養としている冠動脈が閉塞や狭窄などを起こして血液の流量が下がり、心筋が虚血状態になり壊死してしまった状態。通常は急性に起こる「急性心筋梗塞
(AMI) 」のことを指す。心臓麻痺・心臓発作(ハートアタック、英:
Heart attack)とも呼ばれる。
心筋が虚血状態に陥っても壊死にまで至らない前段階を狭心症といい、狭心症から急性心筋梗塞までの一連の病態を総称して急性冠症候群 (acute coronary syndrome; ACS)
という概念が提唱されている。 |
神経症 |
Neurosis |
神経症(しんけいしょう)とは、精神医学用語で、主に統合失調症や躁うつ病などよりも軽症であり、病因が器質的なものによらない精神疾患のことをさす。軽度のパニック障害や強迫性障害などがこれにあたる。これらはかつて、不安神経症、強迫神経症と呼ばれていたため、総称して神経症と呼ばれていた。現在では精神医学概念としては放棄されている。
19世紀以前において、脳や体に何も異常がないのに精神(神経)が病に冒されたようになる病気をそう呼んでいた。当時はアカデミックの精神医学にしろ町の開業医にしろ、体に異常がないのに体や意識がおかしくなる精神疾患は原因不明と考えられており、このような精神疾患に神経症という名前が当てはめられた。神経症はフロイトが精神分析という方法で神経症の患者を研究していたことが有名である。
しかし最近はDSM-IV-TRやICD10などの記述的な診断基準(病気の原因によってではなく症状によって診断するもの)が主流となっているため、臨床的診断として神経症が使用されることは少なくなった。特に精神医学界では表立って使われてはいない。
神経症の病名が使用されることが少なくなった理由として、記述的な診断基準の台頭に加えて、薬物療法の進歩もあげられる。例えば、かつて強迫神経症と言われていたものは超自我や肛門期固着などで解釈され、心理療法が治療の主体であったが、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの薬物が有効である可能性があり、強迫性障害と名を変えた。
また神経症という名称は器質性ではない軽い精神疾患全般に使われる言葉であったため、その拡大された使用法や曖昧な意味が問題となり、DSM-W-TRから徐々に使用されなくなったと言われている。 |
神経痛 |
Neuralgia |
神経痛(しんけいつう Neuralgia)とは、人の体においてさまざまな原因により、末梢神経が刺激されることに起因する痛みのことである。
一般に発作性の痛みが反復して現れることが多く、不規則に起こるが長時間続くことは少ない。原因不明の特発性のものから、原因のはっきりしたものまで含め、特定の末梢神経領域に起こる痛みを総称し神経痛と呼ぶ。手足や関節などに起こりやすいが、全身いたるところに起こりうる。強い針で刺したような、あるいは焼け付くような痛みが特徴。末梢神経への圧迫や炎症などが直接的な原因と考えられる。特に秋から冬にかけて増える傾向がある。痛みはリウマチにも似ているが、神経痛では関節の変形は起こらない。 |
心身症 |
Somatic
symptom
disorder |
心身症(しんしんしょう,英: psychosomatic
disease)は、その身体疾患の症状発現や症状の消長にこころの問題の関与が大きい身体疾患の総称。
何らかの身体的な疾患が、精神の持続的な緊張やストレスによって発生したり症状の程度が増減する。身体的な検査で実際に異常を認めることも多い身体疾患であるが、症状の発生や、症状の増悪に心因が影響している疾患をさす。
身体的な治療と並行して、心理面の治療やケアも必要な場合が多い。
心身症は「精神疾患」ではなく「身体疾患」であるため、主として扱う診療科は精神科ではなく心療内科である。
心身症とは身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的な因子が密接に関与。器質的ないし機能的障害がみとめられる病態をいう。神経症やうつ病など他の精神障害にともなう身体症状は除外する。(日本心身医学会 1991年)
しばしば身体表現性障害と混同されることがあるが、上記定義に照らし合わせれば心身症は身体疾患の診断が確定していることが必要条件であり、異なる概念である。
なお、疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD)や精神障害の診断と統計の手引き(DSM)では心身症の病名は無い。心身症に相当する記載としては、ICD-10ではF5 (生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群)の中に、摂食障害(F50)、性機能不全(F52)、他に分類される障害あるいは疾患に関連した心理的および行動的要因(F54)などがあり、またDSM-IV-TRでは「身体疾患に影響を与えている心理的要因」の項目として位置づけられている。(但し摂食障害などは精神疾患の範疇に属するものであり、身体疾患である心身症の定義とは厳密には合致しない) |
心臓麻痺⇒心筋梗塞 |
|
腎臓がん |
Kidney
cancer |
腎臓がん(じんぞうがん、英語:kidney
cancer)は腎臓に発生する悪性新生物のこと。特に腎細胞癌を指すことも多いが、以下のような組織型のものがある。
・腎細胞癌(腎癌、グラヴィッツ腫瘍、Grawitz腫瘍)
・腎細胞癌(じんさいぼうがん)は、腎臓の尿細管上皮細胞の腺癌。
・症状
繰り返す肉眼的血尿が認められる。繰り返す肉眼的血尿を間欠的肉眼的血尿という。腎血管を圧迫して腎血管性高血圧を示すこともある。
・統計
男女比は3:1。
・症状
間欠的血尿は約50%の症例で認められる。
・歴史
ドイツの病理学者グラヴィッツによって詳述された。
・尿路上皮癌(腎盂癌)
・腎盂・腎杯の上皮より生ずる癌腫。成人では腎細胞癌と共に頻度が高い。
・腎芽腫(ウィルムス腫瘍、Wilms腫瘍)
・小児に特有の腫瘍。
・他にも、頻度は稀であるが平滑筋肉腫ほか様々な組織型のがんが生じることがある。
腎臓がんは男性に多く発症し、50〜60代が好発年齢とされる。また腎不全のために人工透析を長期に渡って受けている患者は腎臓がんになるリスクが上がることが知られている。比較的リンパ節に転移しやすい。喫煙者はもちろん塗装工作業員・金属加工業作業員・化学物質を多く取り扱う人にも多い。これは、腎臓が体内の老廃物や有毒物質を尿と共に排出する働きがある為に最終的にそれら影響を体内でもっとも受けやすい為とされる。治療としては抗がん剤・外科手術などがあるが腎臓は二つあるため摘出手術も行われる。 |
心不全 |
Heart
failure |
心不全(しんふぜん、heart failure)は、心臓の血液拍出が不十分であり、全身が必要とするだけの循環量を保てない病態を指す。そのような病態となるに至った原因は問わず、端的に述べると「心臓の収縮力が低下」した状態である。
心不全の症状は、主に鬱血によるものである(鬱血性心不全)。左心と右心のどちらに異常があるかによって、体循環系と肺循環系のどちらにうっ血が出現するかが変わり、これによって症状も変化する。このことから、右心不全と左心不全の区別は重要であるが、進行すると両心不全となることも多い。
また、治療内容の決定に当たっては、急性と慢性の区別も重要である。急性心不全に当てはまるのは例えば心筋梗塞に伴う心不全であり、慢性心不全に当てはまるのは例えば心筋症や弁膜症に伴う心不全である。
念のため付け加えると、急性心不全が終末期状態としての心不全を指しているわけではない(急性心不全は治療により完全に回復する可能性がある)。 最近では、心臓の収縮機能は正常であるが拡張期機能が低下した心不全(HF−PEF:ヘフペフ)が、高齢女性に多いことがわかって来ており病態や治療方法の確立が急がれている。 |
腎不全 |
Renal
failure |
腎不全(じんふぜん、英: renal
failure)は、腎臓機能が正常時の30%を下回った状態。または症候。
腎臓は、左右それぞれ約100万個のネフロンによって構成され、この組織が尿の生成、細胞外液中の水や電解質等の濃度を調節する働きを持つ(体液量・浸透圧・pHを一定に保つ)が、この糸球体組織の機能が60%以下まで低下した状態を腎不全と呼び、10%未満まで進行すると透析治療が必要な「末期腎不全」の状態となる。 |
蕁麻疹 |
Urticaria |
蕁麻疹(じんましん)は、急性皮膚病の一つ。元来は全てアレルギーが関与していると考えられていたが、必ずしもそうではないものも含まれる。蕁麻疹の一種に血管浮腫(クインケ浮腫ともいう)と呼ばれる病態がある。また、アナフィラキシーショックの一症状として蕁麻疹が出現することがある。
人がイラクサ(蕁麻)の葉に触れると痒みを伴う発疹が出現するためこの名前がついた。なお、尋常性乾癬の「尋」と蕁麻疹の「蕁」は混同されやすいため、間違って使われることがある。 |
膵癌 |
Pancreatic
cancer |
膵癌(すいがん、英: Pancreatic
cancer)は、膵臓から発生した悪性腫瘍。膵臓癌(すいぞうがん)とも呼ぶ。早期発見が非常に困難な上に進行が早く、きわめて予後が悪い。このことから「癌の王様」と言われている。
厚生労働省の統計でも日本において膵臓癌死亡者数は毎年約22,000人以上であり、癌死亡順位で男性で5位,女性で6位で年々増加傾向にある。
発症の危険因子としては以下がある。
・喫煙・肥満
・糖尿病・慢性膵炎・遺伝性膵炎・IPMN
・家族歴:膵癌・遺伝性膵癌症候群
遺伝性膵炎、家族性大腸線種ポリポーシス、家族性メラノーマ多発性症候群 (FAMMM)、ポイツ・ジェガース症候群
Peutz-Jegher's Syndromeなどの遺伝性疾患では膵癌発生率が高く、遺伝性膵癌症候群とも呼ばれる。 |
水痘 |
Chickenpox |
水痘(すいとう、varicella)とは、ウイルス感染症の一種。一般に水疱瘡(みずぼうそう)としても知られている。英語ではChicken
poxと呼ばれる。水痘は感染症法の第5類感染症に指定されており、学校保健安全法による第2類学校感染症に分類されている。季節的には毎年12
- 7月に多く8 - 11月には減少し、罹患年齢の多くは9歳以下。水痘ウイルスの自然宿主はヒトのみであるが、世界中に分布している。一般に1度かかると2度とかからないと言われているが、感染しても発症にまでには至らないというだけである。抗体が消えれば再発症する可能性は高く、再発症の例もたびたび報告されている。治癒後も神経節などに水痘・帯状疱疹ウイルスは潜伏しており、免疫低下時や疲労・ストレス時に再活性化し帯状疱疹を発症することがある。 |
髄膜炎 |
Meningitis |
髄膜炎とは、髄膜(脳および脊髄を覆う保護膜)に炎症が生じた状態である。脳膜炎、脳脊髄膜炎ともいう。炎症はウイルスや細菌をはじめとする微生物感染に起因し、薬品が原因となることもある。髄膜炎は炎症部位と脳や脊髄との近接度合いによっては生命の危険があるため、救急疾患に分類される。
最もよくみられる髄膜炎の症状は頭痛、項部硬直であり、発熱や錯乱、変性意識状態、嘔吐、光を嫌がる(羞明)、騒音に耐えられなくなる(音恐怖)などといった症状を伴う。小児例では不機嫌や傾眠などの非特異的症状に限られる。
皮疹がみられる場合、髄膜炎の特定の病因を示唆している場合がある。例えば髄膜炎菌性髄膜炎には特徴的な皮疹がみられる。
脊柱管に針を刺入し、脳および脊髄を包む脳脊髄液(CSF)のサンプルを採取する腰椎穿刺によって髄膜炎が陽性か陰性かを診断する。CSF検査は医療研究機関で実施されている。
急性髄膜炎の一次治療は抗生物質を速やかに投与することであり、抗ウイルス薬を用いることもある。炎症の悪化から合併症を併発するのを予防するため、副腎皮質ホルモンを投与してもよい。髄膜炎は、とりわけ治療が遅れた場合に難聴、てんかん、水頭症、認知障害等の長期的な後遺症を遺すことがある。髄膜炎のタイプによっては(髄膜炎菌、インフルエンザ菌b型、肺炎レンサ球菌、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)ウイルス感染に起因するものなど)予防接種によって予防できるものがある。 |
睡眠障害 |
Sleep
disorder |
睡眠障害(すいみんしょうがい, 英:
Sleep disorder)とは、人や動物における睡眠の規則における医学的な障害である。一部の睡眠障害は、正常な身体、精神、社会や感情の機能を妨げるほど深刻となる。一部の睡眠障害においては、睡眠ポリグラフ検査が指示される。
入眠や、明らかな原因なく睡眠持続が難しい場合には、不眠症とみなされる。睡眠異常症(英語版)は、日中に眠気が高まり入眠する問題や睡眠持続における症状を伴い、睡眠障害に分類される。不眠症には、睡眠の維持の問題や、疲労感、注意力の減少、不快感といった症状が長期間にわたるという特徴がある。不眠症の診断のためには、これらの症状が4週間以上続いている必要がある。
『精神障害の診断と統計の手引き4版』(DSM-IV)は原発性不眠、身体や精神の障害に伴う不眠症、物質(薬物)の消費や乱用に伴う不眠症に分類している。不眠症を有する人は、しばしば不安や抑うつの進行につながるため健康へのよくない影響についての懸念がある。
さらに睡眠障害は、過度に眠る過眠症として知られる状態を起こすことがある。精神、身体、あるいは薬物の乱用による二次性の睡眠障害の管理は、その基礎疾患に焦点を当てる必要がある。 |
頭痛 |
Headache |
頭痛(ずつう)とは、頭部に感じる痛みのうち、表面痛でないもの。様々なタイプの痛みを含んだ幅の広い症状概念である。ありふれた症状である一方、これを主症状とする致命的疾患もあり、他方で原因が特定できないことも多いという、症候学上非常に重要な症状。原因はさまざまといわれるが、基本的には、すべての頭痛の原因は一つとされる。血液中のある物質による炎症反応ともいわれる。
頭痛はありふれた症状で、外来初診患者の約10%が頭痛を主訴とする。
日本人の3 - 4人に1人(約3000万人)が「頭痛持ち」である。そのうち2200万人が緊張性頭痛、840万人が片頭痛、1万人が群発頭痛といわれる。クモ膜下出血・脳腫瘍による頭痛は、毎年約1万人
- 3万人に発生する。
日常生活に支障ある頭痛を、世界中で最低40%の人が経験する。
男性よりも女性のほうが頭痛の症状を訴えることが多く、筋緊張性頭痛の6割、片頭痛の8割が女性である。
女性が訴えることが多い頭痛の1つに生理時に伴うものがあるが、これは生理中にエストロゲンが血中から減少し、それがセロトニンに何等かの影響を与えて片頭痛を引き起こしやすくなるからではないかとも考えられている。 |
生活習慣病 |
Lifestyle
disease |
生活習慣病(せいかつしゅうかんびょう、英:
lifestyle related disease、仏: maladie de comportement、独: Zivilisationskrankheit)とは、
・生活習慣が発症原因に深く関与していると考えられている疾患の総称
・食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群
生活習慣病とは、生活習慣(life style)が要因となって発生する諸疾病を指すための呼称・概念である。ここで生活習慣と言っているのは、食事のとりかた、水分のとりかた、喫煙/非喫煙の習慣、運動をする/しないの習慣 等々のことである。各国で同様の概念は用いられており、例えば英語・フランス語・ドイツ語ではそれぞれ、英:
lifestyle related disease、仏: maladie de comportement、独: Zivilisationskrankheitと言う。
世界の人々の生活習慣というのは、地域ごとに、きわめて似通っている場合もあれば、大きく異なっている場合もあるので、それなりの共通点や相違点が見られる。異なる国の人々でも、先進国同士で同じ文化圏であったりする等で生活習慣全般が類似している場合は、生じる生活習慣病の一覧やその割合・頻度が類似する傾向がある。
スウェーデンにおける32年の追跡調査によれば、生活習慣(病)による全死亡リスクは次のようにされた:
1.喫煙 : 1.92倍
2.糖尿病 : 1.64倍
3.高血圧 : 1.55倍
4.メタボリック症候群 : 1.36倍
5.高コレステロール血症 : 1.10倍
このように、喫煙が最大のリスクとなるというデータがあるため、生活習慣病対策は禁煙を最優先とするべきだとの医療界からの意見がある。
食生活は
がん発生原因の30%に関わっているとする報告もある。
日本では、例えば、糖尿病(1型糖尿病を除く)・脂質異常症(家族性脂質異常症を除く)・高血圧・高尿酸血症などが挙げられる。
日本では、食生活が欧米化してしまったこと(肉類の摂取量が増えたことなど)も生活習慣病増加の一因となっている、と指摘されている。同じく食習慣に関連して言えば、2003年には、アメリカとカナダの栄養士会は合同で、牛乳や卵も摂取しない完全な菜食においても栄養が摂取でき、また菜食者はがん、2型糖尿病、肥満、高血圧、心臓病といった主要な死因に関わるような生活習慣病のリスクが減る、認知症のリスクも減ると報告した。 |
精神疾患 |
Mental
disorder |
精神疾患(せいしんしっかん、mental
disorder、精神障害)とは、外因性あるいは内因性のストレス等による脳(脳細胞あるいは「心」)の機能的・器質的な障害をいう。統合失調症や躁うつ病といった重度のものから、神経症(この用語は正式な障害名としては用いられなくなりつつある)、パニック障害、適応障害といった中、軽度のものまでの様々な障害を含む。また、精神の変調が髄膜炎、内分泌疾患などの身体疾患によって引き起こされる場合もある。
精神疾患の治療を担当するのは主に精神科・神経科であるが、患者の症状や状況によっては内科(心療内科が多い)など、他の科で診察、治療が行われている場合もある。
精神疾患は、世界保健機構 (WHO) による国際疾患分類
(ICD-10)
や、アメリカ精神医学会による統計的診断マニュアル (DSM-IV)
において、網羅的に分類されている。このうち、本項では医療の領域で治療の対象となる主な障害について記述している。知的障害やパーソナリティ障害は、いわゆる広義の精神疾患(DSM-IVのII軸)に含まれるが、知的障害は、療育・教育・福祉などの領域で対象とされる場合が多く、パーソナリティ障害は犯罪を行った際に犯罪精神医学や司法精神医学の領域で問題となる場合が多い。
妄想に執着して生活に支障をきたし、他者を巻き込むことも多く、心的・内向的には自閉症やパニック障害など、物的・外向的には自傷他害行為あるいは自殺にまで及ぶこともある。第二次世界大戦以前は先進国を含む多くの国家で迫害の対象であったが、現在そのような政策を取っている国は稀である。
日本では、精神疾患のために1か月以上休業している国民が約47万人おり、それによる逸失利益だけでも9500億円にのぼるという報告もある。 |
成人病⇒生活習慣病 |
|
赤痢 |
Dysentery |
赤痢(せきり)は、下痢・発熱・血便・腹痛などをともなう大腸感染症である。
俳句では夏の季語として扱われる。古称は血屎(ちくそ)。
従来、赤痢と呼ばれていたものは、現代では細菌性赤痢とアメーバ性赤痢に分けられ、一般的に赤痢と呼ばれているものは赤痢菌による細菌性赤痢の事を指す。 |
石灰沈着性腱板炎 |
Calcific
tendinitis |
石灰沈着性腱板炎(せっかい・ちんちゃくせい・けんばんえん)とは、突然発症の肩の痛みを呈する疾患。
誘因なく突然発症で、肩の痛みのため可動域制限がみられる。強い痛みのため、患側の肩や腕を動かせない。夕刻から夜間にかけて、痛みが増強することがある。上腕骨大結節に圧痛をみとめる。 |
喘息⇒気管支喘息 |
|
前頭側頭葉変性症⇒ピック病 |
Frontotemporal
lobar
degeneration |
前頭側頭葉変性症(ぜんとうそくとうようへんせいしょう、英:
Frontotemporal lobar degeneration、FTLD)とは、認知症を生じる変性疾患の一つ。認知症を生じる神経変性疾患では、アルツハイマー型認知症(DAT)・レビー小体型認知症(DLB)に次いで多いとされている。所謂若年性認知症に分類される中高年期に好発する。
大きな特徴として、人格が急変することが挙げられる。例えば万引きや人前での破廉恥行為など、本来なら実行に罪悪感や羞恥心を示す行動を何ら気に掛けず平気に行うようになったり、物事に無頼で無頓着になり、人から注意を受けても耳を傾けることもなくなるなど、いわゆる「自分勝手・我儘」と表現される状態になる。何を訪ねても深く考えず、悩む様子も見られない。
決まった食事しか獲ろうとしない、同じ道しか通ろうとしないなど、常に同じ行動を繰り返す「常同行動」も特徴として挙げられる。
進行すると言葉の意味が分からなくなったり、日常食べる料理(例えば味噌汁やカレーライス)等の名詞さえも理解できなくなる。そして無言・無動、遂には寝たきりの状態となる。ここまで進行するのには、一般に発症してから10年以上の経過をたどる。
一方でアルツハイマー型認知症等とは異なり、初期状態では記憶低下など生活上の障害は軽く、認知症と判断されない事も多い。また症状が進んでも動作についての記憶は保たれ、見当識障害もほとんど見られないため、電車やバスなどに乗っても迷子になる事は少ない。 |
潜伏期間 |
Incubation
period |
潜伏期間(せんぷくきかん)とは、病原体に感染してから、体に症状が出るまでの期間のこと。病原体の種類によって異なる。なお、他人に伝染する時期は潜伏期間内と重なることもある。
感染から発病に至るにはそれなりの段階があり、この間が潜伏期間である。詳細は感染の項を参照。
記載はおよそであり、個人差(特に生体の免疫力)により大きく左右される。
・インフルエンザ
- 1〜3日
・水痘(みずぼうそう)- 2〜3週間
・流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)- 2〜3週間
・風疹
- 2週間
・麻疹(はしか)- 2週間
・結核
- 4〜8週間
・日本脳炎
- 1〜3週間
・エイズ
- 数年〜数十年 |
前立腺癌 |
Prostate
cancer |
前立腺癌(ぜんりつせんがん)とは、前立腺(外腺)に発生する病気、癌の一つ。様々な組織型の悪性腫瘍が生じうるが、その殆どは腺癌で、通常は前立腺癌≒前立腺腺癌の意味で用いられる。2012年4月日本で初めてロボット手術であるda
Vinciの保険適応となった疾患である。
1950年頃、前立腺癌で死ぬ人は男性の癌死全体の0.1%であった。わかりやすく患者数にすると、1975年には年間2000人であった。そしてその後は増え続け、2000年には約2万3000人となった。2000年度の悪性新生物による死亡統計によると、前立腺癌による日本の総死亡者数は7514人であり、人口10万人に対する年齢調整死亡率は8.6で、肺癌・胃癌・肝臓癌・結腸癌・膵臓癌・食道癌・直腸癌に次いで第8位となっている。すなわち日本で前立腺癌は癌死亡者の約3.5%から4%を占め、近年急増傾向にあり、2020年には男性では肺癌に次ぐ2位に躍り出ると予測されており、罹患者数は7万8000人から8万人以上、癌死亡者の割合は10%になると予想されている。
前立腺癌は癌の中では進行性が遅く、生存率・治癒率は高い。また予後も他の癌に較べると大変よい。45歳以下での罹患は家族性以外はまれで、50歳以降に発症する場合が多い。その割合は年を追うごとに増加する。欧米人に発生率の高い癌で、米国では男性の約20%が生涯に前立腺がんと診断される。同一人種間の日本と海外での患者割合の差は、食生活の違いにあるとされる。食生活の欧米化によって罹患率は急増しており、近い将来男性癌死亡者の上位となることが予想されている。
PSA検査は近年普及傾向にあり、そのため前立腺癌が発見される確率も高くなっているが、一方でPSA検査は会社や地方自治体における検診で必須項目になっておらずオプション扱いであり、受診するには自費負担となっている。このためPSA検査まで受けず定期検診を受けて安心しきってしまい、自覚症状が出てから前立腺癌に気づいて既に進行している状態だった例も多い。このため今後、定期検診の中にPSA検査を組み込む自治体や健康保険組合が増加される事が期待されている。 |
躁うつ病⇒双極性障害 |
|
双極性障害 |
Bipolar
disorder |
双極性障害(そうきょくせいしょうがい、英:
bipolar disorder)は、躁(そう)状態(躁病エピソード)およびうつ状態(大うつ病エピソード)という病相(エピソード)を繰り返す精神疾患である。ICD-10では、うつ病とともに「気分障害」のカテゴリに含まれている。古い呼び名では躁うつ病、あるいは他の名称として双極性感情障害とも言う。
疫学調査による生涯有病率は、日本では約0.2%とかなり低いが、海外では1.0 - 1.5%の値が報告されている。この大差は、人種差や環境因などによる可能性の他、研究方法の問題点(回収率など)の関与も考えられ、未だ結論は得られていない。一卵性双生児における一致率は50
- 80%と、二卵性双生児 (5 - 30%) よりも高いことから、遺伝要因の関与が高いことが指摘されている。双極性障害の躁状態、うつ状態はほとんどの場合回復するが、再発することが多く、薬物投与による予防が必要となることが一般的である。 |
た |
大腸癌 |
Colorectal
cancer |
大腸癌(だいちょうがん、colorectal
cancer)とは、大腸(盲腸、結腸、直腸)に発生する癌腫であり、肛門管に発生するものを含めることもある。
正式には部位別に盲腸癌(もうちょうがん、cecum cancer)、結腸癌(けっちょうがん、colon cancer)、直腸癌(ちょくちょうがん、rectum cancer)と称される。
日本では女性のがんの死亡率の1位を占め、2020年には男性でも2位に上昇すると予想されている。アメリカ合衆国においては、3番目に多い癌で、癌死の原因として2番目に多く、生涯に大腸癌に罹患する確率は約7%である。日本でも胃癌を追い越し肺癌についで2番目に多くなっている。 |
脱髄疾患 |
Demyelinating
disease |
脱髄疾患(だつずいしっかん、demyelinating
disease)とは神経疾患の一種で、有髄神経の髄鞘が障害されることで起こる疾患である。いったん形成された後に障害される疾患のことを言い、髄鞘形成が不完全なために起こる髄鞘形成不全疾患とは分けて考えられる。
有髄神経の周りには髄鞘と呼ばれるものが取り巻いている。これを形成する細胞は、中枢神経では乏突起膠細胞、末梢神経ではシュワン細胞である。この髄鞘があるために有髄神経では跳躍伝導を行うことができるため、これが障害されることで神経伝導速度が遅くなり、多彩な神経症状が引き起こされる。 |
多発性硬化症 |
Multiple
sclerosis |
多発性硬化症(たはつせいこうかしょう、英:
multiple sclerosis; MS)とは中枢性脱髄疾患の一つで、脳、脊髄、視神経などに病変が起こり、多様な神経症状が再発と寛解を繰り返す疾患である。日本では特定疾患に認定されている指定難病である。 |
胆嚢癌 |
|
胆嚢癌(たんのうがん)は、胆嚢から発生する悪性腫瘍である。早期に発見されることが少なく、有効な治療法に乏しいため、全体的には予後の悪い癌である。発症率はハンガリー共和国やチリ共和国、日本で高く民族間での差が認められる。
男女比は1:2で女性にやや多く、70歳以上の高齢者に多いとされている。胆石症の合併も多いとされている。
危険因子としては、膵胆管合流異常症、陶器様胆嚢、分節型胆嚢腺筋症等が知られている。胆石症や胆嚢炎は直接の発症リスクでは無いとされている。 |
注意欠陥・多動性障害 |
Attention
deficit
hyperactivity
disorder |
注意欠陥・多動性障害(ちゅういけっかん・たどうせいしょうがい、英:
Attention Deficit Hyperactivity Disorder ; ADHD)は、多動性、不注意、衝動性を症状の特徴とする発達障害もしくは行動障害である。ICD-10における多動性障害(英: hyperkinetic disorder)はほぼ同一の概念である。
注意欠陥・多動性障害は多動性、不注意、衝動性などの症状を特徴とする発達障害の一つと言われているが、DSM-IV-TRでは行動障害に分類されている。じっとしている等の社会的ルールが増加する、小学校入学前後に発見される場合が多い。一般に遺伝的原因があるとされるが、他に適当な診断名がなく同様の症状を示す場合を含む。なお「注意欠陥・多動性障害」はDSM-IV-TRによる正式名である (AD/HD: Attention Deficit / Hyperactivity Disorder)。 その他の訳語について「注意欠如・多動性障害」は、日本精神神経学会が2008年に示した名称である。「注意欠如・多動症」は小児精神神経学会や日本児童青年精神医学会の示したDSM-5の翻訳用語案である。
注意力を維持しにくい、時間感覚がずれている、様々な情報をまとめることが苦手などの特徴がある。日常生活に大きな支障をもたらすが適切な治療と環境を整えることによって症状を緩和することも可能である。脳障害の側面が強いとされ、しつけや本人の努力だけで症状などに対処するのは困難であることが多い。診断は、多くの精神疾患と同様に問診等で行われ、ADHDに特化した生物学的マーカーや心理アセスメントは開発中であり、一般的でない。ADHDの医学的なあり方に疑問を持つ専門家も多く、アメリカではADHDに関する論争(英語版)が盛んである。DSM-IV-TRでは症状に従い、以下の3種に下位分類がされる。
・多動性・衝動性優勢型
・混合型
・不注意優勢型 (ADD: Attention-Deficit
Disorder)
一般にADHDとして扱われるADDは、多動性が少ない不注意優勢型である場合が多い。子供ではICD-10による多動性障害(たどうせいしょうがい、Hyperkinetic Disorders F90)の診断名が頻繁に適用される。学童期までの発症率は1 - 6%で男子の方が女子よりも高い。 しかし、女子の場合は多動が目立たない不注意優勢型に分類されることが多く、発見が遅れがちである。よって、認知される人数が少ないことが推測され、実際の発症率の男女差はもっと小さいとする説もある。ICD-10での多動性障害の発症率は学齢期で3〜7%であり、その内30%は青年期には多動と不注意は目立たたなくなり、40%は青年期以降も支障となる行動が持続し、残りの30%は感情障害やアルコール依存症などのより重篤な精神障害が合併する。
注意欠陥多動性障害はその原因に関連して、関連障害として特異的発達障害(学習障害)や、軽症アスペルガー障害を示すことがある。またその特性上周囲からのネガティブな打撃を受けやすく、二次的に情緒障害を引き起こす傾向があり、行為障害、反抗挑戦性障害、不登校やひきこもりを招きやすい。
なお、DSM-IVのアレン・フランセス編纂委員長は、DSM-IV発表以降、米国で注意欠陥障害が3倍に増加したことについて、「注意欠陥障害は過小評価されていると小児科医、小児精神科医、保護者、教師たちに思い込ませた製薬会社の力と、それまでは正常と考えられていた多くの子どもが注意欠陥障害と診断されたことによるものです」と指摘している。注意欠陥障害の最も正確な予測因子の一つは入学月である。日本では3月生まれの子どもがクラスで最年少になるが、最年少ゆえの落ち着かない行動などが異常と判断される。フランセスは、「米国では、一般的な個性であって病気と見なすべきではない子どもたちが、やたらに過剰診断され、過剰な薬物治療を受けているのです」と述べている。これは日本も同様である。
『ADHDに関する論争』も参照。 |
虫垂炎 |
Appendicitis |
虫垂炎(ちゅうすいえん、英: appendicitis)は、虫垂に炎症が起きている状態である。虫垂とは右下腹部にある盲腸から出ている細長い器官である。
虫垂炎は旧来盲腸炎(もうちょうえん)と呼ばれていた時期があり、これは昔、診断の遅れから、開腹手術をした時には既に虫垂が化膿や壊死を起こして盲腸に張り付き、あたかも盲腸の疾患のように見えることがあったためである。
何らかの原因で虫垂内部で細菌が増殖して感染を起こした状態である。炎症が進行すると虫垂は壊死を起こして穿孔し、膿汁や腸液が腹腔内へ流れ出して腹膜炎を起こし、重症化すると死に至ることもある。昔は「スイカやブドウの種を飲み込むと盲腸になる」などと言われていたが、それは全くの迷信であり、果実の種子の誤飲と虫垂炎の発症との間に因果関係は無い。 |
中皮腫 |
Mesothelioma |
中皮腫(ちゅうひしゅ、英: Mesothelioma)とは、中皮細胞由来の腫瘍の総称である。悪性のもの、良性のものの双方がある。
主な発生部位は以下の通り。
・胸膜(Pleura):胸膜中皮腫(70%)
・腹膜(Peritoneum):腹膜中皮腫(20%)
・心膜(Pericardium):心膜中皮腫(0.5%)
肺癌の一種と説明する人がいるが、肺ではなく胸膜にできるものである。
多くの場合、石綿(アスベスト)曝露が原因とされている。青石綿(クロシドライト)や茶石綿(アモサイト)が白石綿(クリソタイル)より発癌性が高いと考えられている。
曝露から発病までの期間は、一般的に30〜40年くらいといわれる。詳しい原因追求はいまだ待たれているが、吸い込んだアスベストによってなどに惹起されたインターロイキン6(IL-6)を中心とした炎症が中皮の腫瘍化を促進すると考えられている。
アスベスト被曝は職業上のものが圧倒的である(職業曝露)。しかし、アスベストを取り扱う事業所の近隣住民や、アスベストを取り扱う労働者の家族(労働者の衣服に付着したアスベスト被曝と推測される)にも患者が出ており、これらについてもアスベストとの関連が強く疑われる(環境曝露)。 近年は低濃度環境曝露の方が高濃度職業曝露よりも発癌性が高いと考えられている。
しかしながら、ごく少数ではあるが、アスベスト被曝の可能性が考えにくい群にも悪性中皮腫が認められることがあり、アスベストだけが単一の原因でないことが推測される。実際、凝灰岩などに含まれる沸石の一種エリオン沸石(Erionite)も同様に中皮腫を引き起こすことがカッパドキアやアメリカ合衆国で確認されており、エリオン沸石はアスベスト同様に発癌性物質に位置付けられている。
アスベスト曝露と喫煙のリスクを併せ持つ人の肺ガンの罹患率が数倍〜50倍になることが指摘されているが、中皮種と喫煙の関連はほとんどない。
また疫学的観点から、2020年前後にこの疾患はピークを迎えると考えられている。 |
聴覚障害者 |
|
聴覚障害者(ちょうかくしょうがいしゃ)とは、聴覚に障害をもつ(耳が不自由な)人のことである。
この聴覚障害者にはろう者(聾者)、軽度難聴から高度難聴などの難聴者、成長してから聴覚を失った中途失聴者、加齢により聴力が衰える老人性難聴者が含まれる。
程度による区分
聴覚障害の程度は、医学的にはデシベル(dB)で区分する。デシベルとは音圧レベルの単位であり、音の大きさが大きいほど高い値を示す。これにより健康な場合に対しどれだけ聞こえが悪くなったか(大きな音でないと聞こえないか)が示される。
両耳で70dB以上になると、身体障害者手帳を交付される。40dB前後を超えると「話すのにやや不便を感じる」レベルになる。身体障害者手帳が交付されない40〜70dBの人達も含めると、聴覚障害者は全体で約600万人いると言われる。そのうち、約75%は加齢に伴う老人性難聴である。
なお、欧米の聴覚障害判定基準は40dB以上である。
<【参考】騒音(公害)の環境基準。夜間の住宅地は45dB以下。新幹線沿線住宅地は70dB以下。ただし、騒音の環境基準は、正確にはA特性の騒音レベルにより定められており、聴覚を表す音圧レベルはdBHLという単位である。> |
聴覚障害のdB区分
dB |
聴覚障害 |
聞こえの程度 |
0 |
聴者 |
|
10 |
ささやき声 |
20 |
30 |
軽度難聴 |
|
40 |
普通の会話 |
50 |
中度難聴 |
60 |
|
70 |
高度難聴 |
大声 |
80 |
90 |
怒鳴り声 |
100 |
ろう |
ガード下での鉄道走行音 |
110 |
地下鉄走行音 |
120 |
|
130 |
飛行機のエンジン音 |
|
|
腸管出血性大腸菌 |
Verotoxin-
producing
Escherichia
coli |
腸管出血性大腸菌(ちょうかんしゅっけつせいだいちょうきん、enterohemorrhagic
Escherichia coli:EHEC)とは、ベロ毒素 (Verotoxin=VT) 、または志賀毒素 (Shigatoxin=Stx) と呼ばれている毒素を産生する大腸菌である。
このため、VTEC (Verotoxin producing E.coli) やSTEC (Shiga toxin-producing E.coli)
とも呼ばれる。この菌の代表的な血清型別には、O157が存在する。
この菌による感染症は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律により3類感染症として指定され、確認した医師は直ちに所轄する保健所などに届け出る必要がある。 |
腸チフス |
Typhoid
fever |
腸チフス(ちょうチフス)は、サルモネラの一種であるチフス菌
(Salmonella enterica var enterica serovar
Typhi) によって引き起こされる感染症の一種である。一般のサルモネラ感染症とは区別され、チフス性疾患と総称される。
感染源は汚染された飲み水や食物などである。潜伏期間は7〜14日間ほど。衛生環境の悪い地域や発展途上国で発生して流行を起こす伝染病であり、発展途上国を中心にアフリカ、東アジア、東南アジア、中南米、東欧、西欧などで世界各地で発生が見られる。
日本では感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の施行時に二類感染症に指定されていたが、2006年(平成18年)12月8日公布の「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律」により三類感染症に変更となった。 |
痛風 |
Gout |
痛風(つうふう、gout)は、高尿酸血症を原因とした関節炎を来す疾患。名称は、痛み(発作の箇所)が風が吹く様に足・膝・腰・肩・肘・手や胸骨など全身の関節・骨端を移動し、尚且つ風が強くなったり穏やかになったりする様に痛みが酷くなったり和らいだりを繰り返す(痛みの悪風に中(あた)る意、または吹いた風が当たっただけでも痛む、の説もある)ことから命名された。 |
爪白癬
(爪水虫) |
Onychomycosis |
爪白癬 (つめはくせん)とは、手足の白癬が進行し、爪の間に白癬菌が侵食して、爪自体が白癬菌に感染した状態となっている症状である。
足の爪などを不摂生に伸ばしていると、そこに汗や垢などの汚れが溜まり、それが白癬菌の温床となる。長時間ブーツなどを履いたり、雨でぬれたりすることで発症する。最初は爪ではなく、爪と隣接する指先が水虫となるケースが多く、そこから爪の間へと感染することで、ゆっくりと進行していく。
爪水虫になると、初期では爪の先の色が、白っぽくなるだけであり、自覚症状はない。しかし、次第に指側に侵食していき、最終的には爪全体の色が、白色・黄色・黒色に変色する。爪水虫となった爪は、盛り上がったように生え、ボロボロと崩れる。それにより、新たに白癬菌をばら撒き、新たな水虫の原因となる。 |
手足口病 |
Hand,
foot
and
mouth
disease |
手足口病(てあしくちびょう、英: Hand,
foot and mouth disease; HFMD)は、コクサッキーウイルスの一種が原因となって起こるウイルス性疾患である。病名は手の平、足の裏、口内に水疱が発生することに由来する。乳児や幼児によく見られる疾患であるが、成人にも見られる。乳児ではまれに死亡することがある。夏季を中心に流行し、汗疹と間違えられやすい。
原因となるウイルスには、ピコルナウイルス科内のエンテロウイルス属に属するコクサッキーウイルスA16が主で、他にA4,
5, 9, 10、B2, 5、またエンテロウイルス71型も原因となる。 |
適応障害 |
Adjustment
disorder |
適応障害(てきおうしょうがい、英:
Adjustment disorder)は、精神疾患の一種である。ストレス障害に分類される。
ストレス因子により、日常生活や社会生活、職業・学業的機能において著しい障害がおき、一般的な社会生活ができなくなるストレス障害である。
急性ストレス障害・PTSDと同様に外的ストレスが原因となって起こるストレス障害の一つ。急性ストレス障害やPTSDに見られるような、生死に関わる様な強大なストレスに限らず、家族関係や仕事のトラブル、パワーハラスメントなどもストレス因子の一つになりうる。ストレス量が本人の処理能力を圧倒したことによる心理的な機能不全なので、本人の治療と並行して、原因となる状況の改善が必要である。
不安、抑うつ、焦燥、過敏、混乱などの情緒的な症状のほか、不眠、食欲不振、全身倦怠感、易疲労感、ストレス性胃炎、頭痛、吐き気、発熱、体のふるえ、精神運動抑制などの身体的症状が自覚症状としてあらわれるが、身体的症状のみを訴える場合、検査では確認できないため精神科・心療内科以外の病院では見過ごされることが多い。逆に、吐き気や頭痛などの症状があるにもかかわらず病院で異常なしと言われた場合、適応障害であることがある。
軽度のうつ病と区別がつきにくい。また、放置しているとうつ病になり、悪化する場合があるので注意が必要とされる。性格が真面目で責任感があり、忍耐強い人ほどかかりやすいと言われる。また、適応障害がもとで発生する身体的な異常は、自律神経失調症や心身症ともよばれる。 |
てんかん |
Epilepsy |
てんかん(癲癇、Epilepsy)とは、脳細胞のネットワークに起きる異常な神経活動(以下、てんかん放電)のためてんかん発作を来す疾患あるいは症状である。WHO国際疾病分類第10版(ICD-10)ではG40である。
てんかんは古くから存在が知られる疾患のひとつで、古くはソクラテスやユリウス・カエサルが発病した記録が残っており、各国の疫学データでは発症率が人口の1%前後となっている。昔は「子供の病気」とされていたが、近年の調査研究で、老若男女関係なく発症する可能性があるとの見解も示され、80歳を過ぎてから発病した報告例もある。
てんかんは特に全般発作時の激しい全身の痙攣から、医学的な知識がない時代には狐憑きなどに代表される憑き物が憑依したと誤認され、時に周囲に混乱を起すことがあり差別の対象となることがあった。
WHOによる定義によるとてんかん(epilepsy)とは『種種の病因によってもたらされる慢性の脳疾患であり、大脳ニューロンの過剰な放電から由来する反復性の発作(てんかん発作、seizure)を主徴とし、それに変異に富んだ臨床ならびに検査所見の表出が伴う』とされている。この定義は「大脳皮質の過剰な発射ではない」、「反復性でない」、「脳疾患ではない」、「臨床症状が合わない」、「検査所見が合わない」ものは「てんかん」から鑑別するべきだという意味が込められている。日本神経学会のてんかん治療ガイドライン2010では『てんかんとは慢性の脳の病気で、大脳の神経細胞が過剰に興奮するために、脳の症状(発作)が反復性(2回以上)に起こるものである。発作は突然起こり、普通とは異なる身体症状や意識、運動および感覚の変化が生じる。明らかな痙攣があればてんかんの可能性は高い』と記載されている。
上記の定義があるため、以下のことが言える病因が大脳ニューロン由来の過剰な活動であるため、大脳ニューロンを由来としない不随意運動はてんかんではない。例えば脊髄性ミオクローヌスや下位ニューロン障害の線維束攣縮などはてんかんではない。また経過が慢性反復性でなければならないことから、薬物中毒の離脱期におこる痙攣はてんかんではない。 |
伝染性膿痂疹 |
Staphylococcal
scalded
skin
syndrome |
伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)とは、小児に生じる細菌感染症の一種。接触により、火事の飛び火のように広がることから、俗に飛び火(とびひ)ともいう。
湿疹などを掻くことによりできた傷に、黄色ブドウ球菌・連鎖球菌が感染し、小児の体幹・四肢に膿疱を伴う痂皮(かひ;かさぶたのこと)ができる。接触感染にて感染が広がることがある。 |
伝染病 |
Epidemic |
伝染病(でんせんびょう)は、病気を起こした個体(ヒトや動物など)から原病体が別の個体へと到達し、連鎖的に感染者数が拡大する感染症の一種である。感染経路の究明が進んでいない近代までは、ヒトや家畜など特定の動物種の集団内で同じ症状を示す者が短時間に多発した状態(集団発生・疫病)を指していたため、現在でも「集団感染」との混同が見られる。
日本において「伝染病」の語は医学分野よりも「家畜伝染病予防法」など法令において限定的に用いられており、同法では「法定伝染病」や「届出伝染病」などの語で使用されている。過去には「伝染病予防法」という法律名にも使用されていたが、1999年の感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)の施行により廃止され、法文中の「伝染病」の文言は「感染症」に改められている(経過規定の条文などを除く)。同様に、旧・学校保健法の施行規則に見られた「学校伝染病」の語も2009年4月施行の学校保健安全法の施行規則で「感染症」に改められ、一般に「学校感染症」と呼ばれている。
東洋医学では賊風の証が近い概念である。 |
伝達性海綿状脳症 |
Transmissible
spongiform
encephalopathy |
伝達性海綿状脳症(でんたつせいかいめんじょうのうしょう、Transmissible
spongiform encephalopathy、略称TSE)または伝播性海綿状脳症(でんぱせい―)はプリオン病の別名。プリオン病(プリオンびょう)は異常プリオン蛋白の増加による中枢神経疾患の総称である。代表的な疾患にヒトのヤコブ病、羊のスクレイピー、ウシの牛海綿状脳症などがある。
この疾患の脳組織には海綿状態が共通の特徴として見られる。光学顕微鏡で多数の泡の集まりのように見えるので海綿状の名がある。
1980年頃から定着した疾患概念。1950-1970年代は、遅発ウイルス感染症と呼ばれていた。しかしながら、病理組織に感染徴候、炎症所見がないのが特徴と認められていた。また、ウイルス感染の封入体のように、電子顕微鏡でウイルスは検出されない。(ウイルス発見の報告もあるが、再現性が無いとするのが一般的である。)
海綿状態は、先天性代謝異常症のグルタール酸血症(1型)でも高度である。また、栄養失調、その他の疾患でも起こりうる状態なので、伝達性海綿状脳症に限るものではない。しかし、この特徴がその後の、一連の伝達実験の成功、原因解明を導くきっかけとなった。 |
天然痘 |
Smallpox |
天然痘(てんねんとう)とは天然痘ウイルスを病原体とする感染症の一つである。非常に強い感染力を持ち、全身に膿疱を生ずる。仮に治癒しても瘢痕(一般的にあばたと呼ぶ)を残すことから、世界中で不治、悪魔の病気と恐れられてきた代表的な感染症。世界で初めて撲滅に成功した感染症でもある。
その大きな感染力、致死率(諸説あるが40%前後とみられる)のため、時に国や民族が滅ぶ遠因となった事すらある。疱瘡(ほうそう)、痘瘡(とうそう)ともいう。医学界では一般に痘瘡の語が用いられた。 |
糖原病 |
Glycogen
storage
disease |
糖原病(とうげんびょう、英: Glycogenosis,
Glycogen storage disease)は、グリコーゲン異化(分解)に必要な酵素の先天的異常により肝臓、筋肉などの組織にグリコーゲンが異常に蓄積する病気。糖原蓄積症とも呼ばれる。発育障害、肝腫大、空腹時低血糖、高コレステロール血症などが認められる。ヒトでは欠損酵素に基づいて7つ(9つ)の型、犬では4つの型に分類される。多くの型は常染色体劣性遺伝(→遺伝学)である |
統合失調症 |
Schizophrenia |
統合失調症(とうごうしっちょうしょう、ドイツ語:
Schizophrenie、英語: schizophrenia)とは、「連想分裂」を中核とする類似の症状の集合から構成される精神病理学あるいは臨床単位上の診断・統計カテゴリーの一つである。疾患あるいは障害単位の存在自体がいまだ不明であり、疾患としては単一のものであるとは考えられておらず、多数の発症原因を持つ多数の疾患であると予測されている。かつては「精神機能の著しい分裂」を基礎障害とするという意味で意訳され「精神分裂病(せいしんぶんれつびょう)と呼ばれていた。この症状の担当診療科は精神科であり、精神科医が診察に当たる。
19世紀の脳病学者エミール・クレペリンが複数の脳疾患を統一的な脳疾患カテゴリーとして取りまとめた「早発性痴呆症」をスイスの精神科医オイゲン・ブロイラーが、その症状群の形容から1911年の著書『"Dementia
Praecox oder Gruppe der Schizophrenien"
(E. BLEULER 1911):早発性痴呆症あるいは精神分裂病群の集団』の中で定義・呼称した。
ブロイラーは当該症候群の特徴は「精神機能の特徴的な分裂」を基本的症状として有するとして Schizo(分裂)、Phrenia(精神病)と呼んだ。ここで「精神機能」とは、当時流行した連合主義心理学の概念で、「精神機能の分裂」とは主に「連合機能の緩み」及び「自閉症状」を意味する。
主要な症状は、基礎症状として「連合障害(認知障害)」「自閉(自生思考等)」であり、副次的に「精神病状態(幻覚妄想)」など多様な症状を示し、罹患者個々人によって症状のスペクトラムも多様である。クレペリン、ブロイラー、シュナイダーが共通して挙げている特徴的で頻発の症状は「思考途絶(連合障害)」と「思考化声(自生思考)」である。
日本国政府には独自の診断・統計基準は無く、行政処分においてWHO国際疾病分類第10版 (ICD-10) を用いて診断・分類しており、当該マニュアルではF20になる。発病率は全人口の約1%程度と推計されている。 |
糖尿病 |
Diabetes
mellitus |
糖尿病(とうにょうびょう、拉,独,英,スペイン語,ポルトガル語:
diabetes mellitus)は、血糖値(血液中のグルコース(ブドウ糖)濃度)が病的に高い状態をさす病名である。ひとことに血糖値が高いと言っても、無症状の状態から、著しいのどの渇き・大量の尿を排泄する状態、さらには意識障害、昏睡に至るまで様々であるが、これらをすべてまとめて、血糖値やヘモグロビンA1c値が一定の基準を超えている場合を糖尿病という。糖尿病は高血糖そのものによる症状を起こすこともあるほか、長期にわたると血中の高濃度のグルコースがそのアルデヒド基の反応性の高さのため血管内皮のタンパク質と結合する糖化反応を起こし、体中の微小血管が徐々に破壊されていき、目、腎臓を含む体中の様々な臓器に重大な障害(糖尿病性神経障害・糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症の微小血管障害)を及ぼす可能性があり、糖尿病治療の主な目的はそれら合併症を防ぐことにある。
なお、腎臓での再吸収障害のため尿糖の出る腎性糖尿は別の疾患である。
1674年、イギリスの臨床医学者トーマス・ウィリスはヨーロッパで当時奇病とされていた多尿症の研究をしていた。ウィリスは尿に含まれる成分を何としても知りたいと考え、患者の尿を舐めてみたところ、甘かったことが本病確認のきっかけとされている。 |
動脈硬化症 |
Arteriosclerosis |
動脈硬化症(どうみゃくこうかしょう、Atherosclerosis)。
動脈が肥厚し硬化した状態を動脈硬化といい、これによって引き起こされる様々な病態を動脈硬化症という。動脈硬化の種類にはアテローム性粥状動脈硬化、細動脈硬化、中膜硬化などのタイプがあるが、注記のない場合はアテローム性動脈硬化を指すことが多い。アテローム動脈硬化症は、脂質異常症(従来の高脂血症)や糖尿病、高血圧、喫煙などの危険因子により生じると考えられ、最終的には動脈の血流が遮断されて、酸素や栄養が重要組織に到達できなくなる結果、脳梗塞や心筋梗塞などの原因となる。
最近では、動脈硬化症の原因と考えられている脂質異常症や、危険因子がなんらかの基盤で集積した状態であるメタボリックシンドロームについての研究が盛んである。 |
特定疾患 |
Rare
disease |
特定疾患(とくていしっかん)とは、日本において厚生労働省が実施する難治性疾患克服研究事業の臨床調査研究分野の対象に指定された疾患をさす。2012年現在、対象は130疾患。
難病(なんびょう)とも称される。都道府県が実施する特定疾患治療研究事業の対象疾患は、国の指定する疾患については特定疾患から選ばれており、当事業の対象疾患をさして特定疾患ということもある。
日本では、いわゆる難病の中でも積極的に研究を推進する必要のある疾患について、調査研究、重点的研究、横断的研究からなる難治性疾患克服研究事業を行っている。対象となる疾患は、厚生労働省健康局長の私的諮問機関である特定疾患対策懇談会において検討の上で決定される。
このうち、特に治療が極めて困難であり、かつ、医療費も高額である疾患について、医療の確立、普及を図るとともに、患者の医療費負担軽減を図る目的で、都道府県を実施主体として特定疾患治療研究事業が行われている。対象は2009年10月1日現在、56疾患。
特定疾患治療研究事業の対象疾患については、医療費の患者自己負担分の一部または全部について国と都道府県による公的な助成(公費負担医療)を受けることができる。 |
特定疾病 |
|
特定疾病(とくていしっぺい)とは、日本の各保険において他の疾病と異なる扱いをする対象として定められた疾病。何を特定疾病とするかは、保険領域によって異なる。 |
飛び火⇒伝染性膿痂疹 |
|
ドライアイ |
Keratoconjunctivitis
sicca |
ドライアイは、目の疾患の一つ。「様々な要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり、眼不快感や視機能異常を伴う」と定義されている。涙の量が少なくなったり、成分が変化する事により、眼球の表面が乾燥し、傷や障害が生じる病気。 |
トラコーマ |
Trachoma |
トラコーマ(Trachoma)は、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)を病原体とする感染症。
伝染性の急性および慢性角結膜炎。
別名はトラホーム(トラコーマのドイツ語読み)、顆粒性結膜炎、エジプト眼炎。 |
鳥インフルエンザ |
Avian
influenza |
鳥インフルエンザ(とりインフルエンザ、英語:
Avian influenza, Avian flu, bird flu)とは、A型インフルエンザウイルスが鳥類に感染して起きる鳥類の感染症である。トリインフルエンザとも表記される。
鳥インフルエンザウイルスは、野生の水禽類(アヒルなどのカモ類)を自然宿主として存在しており、若鳥に20%の感染が見出されることもある。水禽類の腸管で増殖し、鳥間では(水中の)糞を媒介に感染する。水禽類では感染しても宿主は発症しない。
ウイルスの中には、家禽類のニワトリ・ウズラ・七面鳥等に感染すると非常に高い病原性をもたらすものがある。このようなタイプを高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)と呼び、世界中の養鶏産業にとって脅威となっている。また、このうちH5N1亜型ウイルスなどでは家禽と接触した人間への感染、発病が報告されており(ただし、感染者はヒト型とトリ型のインフルエンザウイルスに対するレセプターを有していた)、今のところ一般の人に感染する危険性は極めて低いが、ヒトインフルエンザウイルスと混じり合い、人の間で感染(ヒトヒト感染)する能力を持つウイルスが生まれる(変異する)ことが懸念されている。将来、それが爆発的感染(パンデミック)になりうる可能性がある。
(注:上述のように鳥インフルエンザとは文字通り「鳥のインフルエンザ」であり、一般の人が感染するインフルエンザとは別物である。しかしながら、一部の人に感染する場合があり人から人へ直接感染できるようにウイルスが変異すると、一般の人の間でパンデミックを引き起こす懸念があることから感染の動向が注視されている。) |
な |
ナルコレプシー⇒睡眠障害 |
Narcolepsy |
ナルコレプシー (narcolepsy)
とは、日中において場所や状況を選ばず起こる強い眠気の発作を主な症状とする脳疾患(睡眠障害)である。
笑い、喜び、怒りなどの感情が誘因となる情動脱力発作(カタプレキシー)を伴う患者も多いが、その症状が無い患者もいる。通常であればノンレム期を経た後で発生するレム睡眠が入眠直後に発生する、入眠時レム睡眠期 (SOREMP) が出現するため、入眠時に金縛り・幻覚・幻聴の症状が発生する。更に夜間はレム睡眠とノンレム睡眠の切り替わりで中途覚醒を起こすため、目は覚めても体を動かそうとする脳の一部が眠っているために金縛りを体験することになる。入眠後から起床時までは、そのような状況のため概して睡眠が浅くなりやすくなり、夢を見る回数が増える。ほとんどが悪夢で、現実とリアルな夢の境目が分からずにうなされる場合が多い。
ナルコレプシーは、睡眠障害の研究・治療が行われていく課程で、イギリス人医師トーマス・ウィリス
(Thomas
Willis(英語版)) によって最初の報告がされ、1880年にフランスの医師ジャン=バティスト=エドゥアール・ジェリノー (Jean-Baptiste-Edouard(Eの頭に´)
Gelineau(最初のeの頭に´)(英語版)) によって名付けられた。直訳としては「Narco=眠り」「Lepsie=発作」を意味するため、「眠り発作」となる。日本では周囲から見た患者の様子から「居眠り病」「過眠症」とも呼ばれる事があるが、他の傾眠傾向の睡眠障害(睡眠時無呼吸症候群など)を一括りに扱うそのような病名は適切ではない。このように一般への知名度が極めて低いうえ、専門医が少ないため、罹患者に対する正しい診断・治療が受けにくいことや、まわりの人間からの理解が得られないなど、罹患者には精神的にも大きな負担がかかっているのが現状である。
発症期は主に15歳前後が多く、40歳以上の発症はまれである。本病気の症状特性上、病気であること自体に患者本人が気付く場合が少ないため、発症から確定診断までの平均期間が約15年と極めて長期になっている。そのため、日本ナルコレプシー協会は、社会的認知度向上に向けて2009年より全国の各中学校・各高等学校にむけて『ナルコレプシーとは』とのパンフレットを配布しはじめた。現在確定診断を受けた患者数は日本国内においておよそ2000人前後(2009年12月現在)であるが、決して珍しい病気ではなく、日本では600人に1人程度(0.16%)は罹患していると想定されている。なお、世界の有病率の平均は2000人に1人程度(0.05%)であり、その4倍近い日本人の有病率は世界最高であるという。
また、治療を行っていない状態で機械や自動車の運転中などに発作が起こると重大な事故の原因となりうるため、日本睡眠学会では、運転中の居眠りや事故経験によっては、治療によって改善されるまでは車両運転を控えるべきであることを医師が伝える必要があるとしている。 |
難聴⇒聴覚障害者 |
|
難聴(なんちょう、英語: hearing
impairment)とは、聴覚が低下した状態のこと。耳科学的には、聴覚の諸機能の感度や精度が若年健聴者、即ち、耳科学的に正常な18歳から30歳までの多数の評定者の聴覚閾(域)値の最頻値 (0dB
HL) よりも劣っている事とされる。そのレベルは30dB HLとされている。
この測定は、外からの騒音を遮断できる室、聴力検査の場合30ホン以下の騒音レベルである防音室で測定する。この際に用いられる指標は、音響学とは違っている。医学的には聴力レベル(Hearing-Level)であり、自由音場で測定される音響学での音圧レベル(Sound-Pressure-Level)最小可聴値とは異なる。また難聴は、ときに耳疾患(例えば急性中耳炎)に起因する症状の一つである場合がある。 |
南米出血熱 |
American
hemorrhagic
fever |
南米ウイルス出血熱(なんべい―しゅっけつねつ)とは、アルゼンチン出血熱(フニンウイルス)、ボリビア出血熱(マチュポウイルス)、ベネズエラ出血熱(グアナリトウイルス)、ブラジル出血熱(サビアウイルス)の総称。それぞれアレナウイルスに属するウイルスによる出血性熱性疾患。中南米の特定地域で報告がみられる。 |
日射病⇒熱中症 |
|
日本脳炎 |
Japanese
encephalitis |
日本脳炎(にほんのうえん、Japanese
encephalitis)は、ウイルスによる脳炎。感染者の発症率は0.1%
- 1%と推定されており、そのほとんどが不顕性感染である。フラビウイルス科フラビウイルス属の日本脳炎ウイルスに感染した主にコガタアカイエカ (Culex
tritaeniorhynchus) に刺されることで感染するが、熱帯地域では他の蚊も媒介する。日本においては家畜伝染病予防法における監視伝染病であるとともに感染症法における第四類感染症である。 |
乳癌 |
Breast
cancer |
乳癌(にゅうがん、英: Breast
cancer)は、乳房組織に発生する癌腫である。世界中でよく見られる癌で、西側諸国では女性のおよそ10%が一生涯の間に乳癌罹患する機会を有する。それゆえ、早期発見と効果的な治療法を達成すべく膨大な労力が費やされている。また乳癌女性患者のおよそ20%がこの疾患で死亡する。
乳がんに罹患するリスクは年齢と共に増加する。日本人女性の場合、生涯で乳がんに罹患する確率は16人に1人(欧米は8〜10人に1人)である。極めて稀に男性も乳癌に罹患することがある。乳癌に罹患する確率は色々異なった要因で変わってくる。家系によっては、乳癌は遺伝的家系的なリスクが強い家系が存在する。人種によっては乳癌リスクの高いグループが存在し、アジア系に比べてヨーロッパ系とアフリカ系は乳癌リスクが高い。 |
認知症 |
Dementia |
認知症(にんちしょう、英: Dementia、独:
Demenz)は、後天的な脳の器質的障害により、いったん正常に発達した知能が低下した状態をいう。これに比し、先天的に脳の器質的障害があり、運動の障害や知能発達面での障害などが現れる状態は知的障害、先天的に認知の障害がある場合は認知障害という。犬や猫などヒト以外でも発症する。
日本ではかつては痴呆(ちほう)と呼ばれていた概念であるが、2004年に厚生労働省の用語検討会によって「認知症」への言い換えを求める報告がまとめられ、まず行政分野および高齢者介護分野において「痴呆」の語が廃止され「認知症」に置き換えられた。各医学会においても2007年頃までにほぼ言い換えがなされている。
「認知症」の狭義の意味としては「知能が後天的に低下した状態」の事を指すが、医学的には「知能」の他に「記憶」「見当識」を含む認知の障害や「人格変化」などを伴った症候群として定義される。
従来、非可逆的な疾患にのみ使用されていたが、近年、正常圧水頭症など治療により改善する疾患に対しても認知症の用語を用いることがある。
単に老化に伴って物覚えが悪くなるといった誰にでも起きる現象は含まず、病的に能力が低下するもののみをさす。また統合失調症などによる判断力の低下は、認知症には含まれない。また、頭部の外傷により知能が低下した場合などは高次脳機能障害と呼ばれる。 |
熱中症 |
Hyperthermia |
熱中症(ねっちゅうしょう、heat
disorder, disorder due to heat, heat illness)は、暑熱環境下においての身体適応の障害によっておこる状態の総称。屋内・屋外を問わず高温や多湿等が原因となって起こる。日射病とは違い、室内でも発症するケースが多く、年々増加傾向にある。高温障害で、日常生活の中で起きる「非労作性熱中症」と、スポーツや仕事などの活動中に起きる「労作性熱中症」に大別することが出来る。熱中症の分類は臨床医療の現場で混乱を招くため、熱中症I度・II度・III度と記すように日本神経救急学会の熱中症検討委員会により改定された。
熱中症については厚生労働省、文部科学省、環境省でそれぞれ指導・対策が公表されている。 |
ネフローゼ症候群 |
Nephrotic
syndrome |
ネフローゼ症候群(ネフローゼしょうこうぐん、英:
Nephrotic syndrome)は、高度の蛋白尿により低蛋白血症を来す腎臓疾患群の総称。
低蛋白血症、高度な蛋白尿、浮腫(眼瞼や下肢)を主な症状とし、病理学的には糸球体基底膜の透過の亢進を一次的異常として認める。時に高脂血症(高コレステロール血症)も合併する。ネフローゼ症候群は元来病理学的な概念であり、腎炎=nephritisと異なり、炎症性の変化(炎症細胞浸潤など)がみられないものの総称として提唱された。若年層(特に幼少期では男子)に多く発症するが、30代の男女も発症例も多数報告されている。
・原発性糸球体疾患に起因する一次性ネフローゼ症候群と続発性糸球体疾患による二次性ネフローゼ症候群に分類される。
・一次性ネフローゼ症候群の成人の占める割合は、70〜80%と多数を占めるが中高年では半数以上が慢性腎症であり、加齢に伴って割合は増加する。最初の発症から5年以内に2回以上の再発率は80%〜90%と高い。
・二次性ネフローゼ症候群の発症は年齢によって異なるが、小児では紫斑病性腎炎が多く、糖尿病性腎症やループス腎炎は成人の発症が多い。 |
脳溢血⇒脳出血 |
|
脳血管障害(脳血管疾患) |
Cerebrovascular
disease |
脳血管障害(のうけっかんしょうがい,
Cerebral Vascular Disorder: CVD)、脳血管疾患
(Cerebral vascular disease: CVD) は、脳梗塞と脳出血、クモ膜下出血に代表される脳の病気の総称である。他に、もやもや病、慢性硬膜下血腫等も脳血管障害に分類される。
また、脳血管障害のうち急激に発症したものは、脳血管発作 (Cerebrovascular
attack: CVA) または脳卒中 (Stroke,
Apoplexy)
と呼ばれる。俗に言う、「当たった」という状態である。俗にヨイヨイ、中風(ちゅうふう、ちゅうぶ)とも呼ぶ。 |
脳血管性認知症 |
Vascular
dementia |
脳血管性認知症(のうけっかんせいにんちしょう、英:
Vascular dementia)は、脳梗塞、脳出血など脳の血管に異常が起きた結果、認知症になるものである。脳に何らかの障害が残った状態、後遺症として進行し、障害された部位によって症状は異なるので、麻痺や感覚障害など神経症状を含め、障害された機能と障害されていない機能が混在する。 |
脳梗塞 |
Stroke |
脳梗塞(のうこうそく、英: cerebral
infarction/英: stroke、別名:脳軟化症(のうなんかしょう))とは、脳を栄養する動脈の閉塞、または狭窄のため、脳虚血を来たし、脳組織が酸素、または栄養の不足のため壊死、または壊死に近い状態になる事をいう。また、それによる諸症状も脳梗塞と呼ばれる事がある。なかでも、症状が激烈で(片麻痺、意識障害、失語など)突然に発症したものは、他の原因によるものも含め、一般に脳卒中と呼ばれる。それに対して、緩徐に進行して認知症(脳血管性認知症)などの形をとるものもある。
日本においては患者数約150万人であり毎年約50万人発症とされている。寝たきりの約3割、全医療費の1割を用いている。日本人の死亡原因の中でも多くを占めている高頻度な疾患である上、後遺症を残して介護が必要となることが多く福祉の面でも大きな課題を伴う疾患である。ちなみに「脳軟化症」の名の由来は、脳細胞は壊死すると溶けてしまうこと(「融解壊死」)から。 |
脳出血 |
Intracranial
hemorrhage |
脳出血(のうしゅっけつ)とは、頭蓋内の出血病態の総称であり、一般には脳溢血(のういっけつ)として広く知られている。脳出血は脳内への出血と脳周囲への出血に分類される。医学的には狭義での脳内出血のみを指すことが多い。
・脳内出血(いわゆる脳出血のことで、高血圧性脳出血を含む)
・クモ膜下出血
・慢性硬膜下血腫
・出血性脳梗塞 |
脳卒中⇒脳梗塞 |
|
脳内出血 |
Cerebral
hemorrhage |
脳内出血(のうないしゅっけつ)とは、脳内に出血する疾患である。
大きくは高血圧性脳内出血と、非高血圧性脳内出血に分類される。
脳内出血は、寒冷暴露などの自然環境のほか、労働条件やストレスなどの社会的、精神的要因がある。また、喫煙、塩分摂取、アルコールなどの嗜好、肥満、高血圧、運動不足など多岐にわたる。低コレステロール、低中性脂肪もリスク要因である。
高血圧性脳内出血は、高血圧症および動脈硬化が起こる50〜70歳代に多いとされるが、近年高血圧症の早期治療の普及により減少傾向にある。他の危険因子として喫煙、糖尿病、動脈硬化症、種々の出血性疾患がある。
死亡率は75%に達するとも言われる。平成16年度厚生労働省人口動態統計では、人口10万人対で本症による死亡が28.6人であった。
出血部位により、被殻出血、視床出血、皮質下出血、脳幹出血、小脳出血に更に細分化され、発症部位により症状は異なる。
非高血圧性脳内出血は、脳動脈瘤、もやもや病、脳動静脈奇形、脳アミロイド血管障害(脳アミロイドアンギオパチー)、脳腫瘍内出血、抗凝固療法に合併するもの、アンフェタミン乱用に伴うもの、血小板機能障害に伴うものなどがある。老人においては脳アミロイド血管障害による脳出血は非常に多く、高血圧性につぐ第二位である。脳アミロイド血管障害では皮質下出血が多く、また再発を繰り返すことが多い。 |
脳貧血⇒起立性低血圧 |
|
は |
肺炎 |
Pneumonia |
肺炎 (はいえん、pneumonia)
とは、肺の炎症性疾患の総称である。一般的には肺の急性感染症として理解されている。
肺炎の分類としては、いくつかの異なった分類が存在する。
大きく分けて
・原因による分類
・罹患場所による分類
・発生機序による分類
・病変の形態による分類
などがあげられる。 |
肺癌 |
Lung
cancer |
肺癌(はいがん、Lung cancer)とは肺に発生する、上皮細胞由来の悪性腫瘍。90%以上が気管支原性癌 (bronchogenic carcinoma) 、つまり気管支、細気管支あるいは末梢肺由来の癌である。国際肺癌学会によれば、肺癌は世界的に最も致死的な癌であるが、その理由の1つは、多くの場合発見が遅すぎて効果的な治療を行うことができないことであり、早期に発見された場合は手術か放射線治療でその多くを治癒することができる。
WHOの試算では、肺癌による死亡者数は全がん死の17%を占め最も多く、世界中で年間130万人ほどがこの疾患で死亡している。日本では2005年の統計で、全がん死の19%を占め、男性では全がん死の中で最も多く、女性では大腸癌(結腸がんおよび直腸がん)・胃癌に次いで3番目を占めている。
西側諸国では、肺癌は癌患者数の第二位に位置し、男性でも女性でもがん死のトップである。西側諸国では男性の肺癌死亡率は低下傾向であるが、女性の喫煙者グループの増大とともに肺癌死も増加している。 |
敗血症 |
Sepsis |
敗血症(はいけつしょう、英: sepsis)は、病原体によって引き起こされた全身性炎症反応症候群(SIRS)である。細菌感染症の全身に波及したもので非常に重篤な状態であり、無治療ではショック、DIC、多臓器不全などから早晩死に至る。もともとの体力低下を背景としていることが多く、治療成績も決して良好ではない。
傷口などから細菌が血液中に侵入しただけの状態は菌血症と呼ばれ区別される。逆に敗血症であっても定義上、血液中からの菌の検出は必須では無く、あくまで全身性炎症反応症候群(SIRS:systemic inflammatory response syndrome)つまり高サイトカイン血症の状態を指す。 |
梅毒 |
Syphilis |
梅毒(ばいどく、Syphilis。黴毒、瘡毒(そうどく)とも)は、スピロヘータの一種である梅毒トレポネーマ
(Treponema pallidum) によって発生する感染症、性病。
in vitroでの培養は不可能のため、病原性の機構はほとんど解明されていない。1998年には全ゲノムのDNA
配列が決定、公開されている。また、理由は不明だが、ウサギの睾丸内では培養することができる。 |
パーキンソン病 |
Parkinson's
disease |
パーキンソン病(パーキンソンびょう、英:
Parkinson's disease)は、脳内のドーパミン不足とアセチルコリンの相対的増加とを病態とし、錐体外路系徴候(錐体外路症状)を示す進行性の疾患である。神経変性疾患の一つであり、その中でもアルツハイマー病についで頻度の高い疾患と考えられている。日本では難病(特定疾患)に指定されている。本疾患と似た症状を来たすものを、原因を問わず総称してパーキンソン症候群と呼ぶ。本症はパーキンソン症候群の一つであるということもできる。
中年以降の発症が多く、高齢になるほどその割合も増える。主な症状は安静時の振戦
(手足のふるえ)、筋強剛 (手足の曲げ伸ばしが固くなる)、無動・動作緩慢などの運動症状だが、様々な全身症状・精神症状も合併する。進行性の病気だが症状の進み具合は通常遅いため、いつ始まったのか本人も気づかないことが多く、また経過も長い。
根本的な治療法は2012年現在まだ確立していないが、対症的療法 (症状を緩和するための治療法) は数十年にわたって研究・発展しており、予後の延長やQOLの向上につながっている。また20世紀末ごろから遺伝子研究・分子生物学の発展に伴いパーキンソン病の原因に迫る研究も進んでおり、根本治療の確立に向けての努力が行われている。 |
パーキンソン症候群 |
Parkinsonism |
パーキンソン症候群 (Parkinson's
syndrome) とはパーキンソン病およびパーキンソン病症状を呈する疾患の総称である。パーキンソニズム (parkinsonism) ともよばれるが、パーキンソニズムは疾患群を意味するほかに下記の症状そのものをも意味する。
パーキンソン症候群とは安静時振戦、無動(瞬目減少、仮面様顔貌、運動量の減少、運動の緩慢さ)、筋強剛、姿勢保持反射の主要四徴候のうち2つ以上が認められる場合をいう。文献によっては四肢体幹の屈曲位、すくみ現象を含めた六徴のうち安静時振戦、無動のほかもうひとつがあった場合を指す場合もある。筋強剛を中核症状と考えることが多い。 |
白癬 |
Dermatophytosis |
白癬(はくせん)とは、皮膚糸状菌によって生じる皮膚感染症の一つである。原因菌は主にトリコフィトン属(英語版)(白癬菌属)に属する種いわゆる白癬菌と呼ばれる一群の真菌によって生じる。
病型
体部白癬(たむし)
被髪頭部・手・足・股以外に生じる白癬菌感染症。Trichophyton rubrumが最も原因菌として多い。次にTrichophyton
mentagrophytesが多い。
股部白癬(いんきん)
股に生じる白癬菌感染症。Trichophyton rubrumが最も原因菌として多い。次にTrichophyton mentagrophytesが多い。頑固な白癬菌という意味で「頑癬」とも呼ばれる。
足白癬(水虫)
足底・足の指の間に生じる白癬菌感染症。Trichophyton ruburumが最も原因菌として多い。次にTrichophyton
mentagrophytesが多い。Trichophyton rubrumの場合は、角化型の白癬で痒みが少なく、高齢者に多い特徴がある。一方、Trichophyton
mentagrophytesの場合は、小水疱を主とする病変で小水疱型白癬とも呼ばれる。この場合、痒みが強く比較的若年者に多いという違いがある。また水疱型白癬とよく似た症状で痒みの伴わない掌蹠膿疱症がある、こちらは無菌性で白癬とは関係がない。
爪白癬(爪水虫)
手の爪・足の爪を侵す白癬菌感染症。一般的に「爪水虫」と呼ばれる。ほとんどがTrichophyton
rubrumが原因であり、Trichophyton mentagrophytesによるものは少ない。
頭部白癬(しらくも)・ケルズス禿瘡
頭部に生じる白癬菌感染症。毛嚢を破壊し難治性の脱毛症を生じるものはケルズス禿瘡と呼ばれる。Microsporum
canis・Trichophyton verrucosumが原因の比率が高いため、猫飼育者・酪農家は注意が必要。その他、Trichophyton
rubrum・Trichophyton mentagrophytes・Trichophyton
tonsuransがある。 |
白内障 |
Cataract |
白内障(はくないしょう、英: cataract)は、目の疾患の一つ。
水晶体が灰白色や茶褐色ににごり、物がかすんだりぼやけて見えたりするようになる。以前は「白底翳」(しろそこひ)と呼ばれていた。 |
はしか⇒麻疹 |
|
バセドウ病 |
Graves'
disease |
バセドウ病またはバセドー病(バセドウびょう、バセドーびょう、
独: Basedow-Krankheit)とは、甲状腺自己抗体によって甲状腺が瀰漫(びまん)性に腫大する自己免疫疾患(II型アレルギー)。英語圏ではグレーブス病(グレーブスびょう、 英:
Graves' disease)と呼ばれる。ロバート・ジェームス・グレーブス(英語版)(1835年)とカール・アドルフ・フォン・バセドウ(1840年)によって発見、報告された。
甲状腺の表面には、下垂体によって産生される甲状腺刺激ホルモン(TSH)の受容体(甲状腺刺激ホルモン受容体、TSHレセプター)が存在する。バセドウ病では、この受容体に対する自己抗体(抗TSHレセプター抗体、TRAb)が生じ、それがTSHの代わりにTSHレセプターを過剰に刺激するために、甲状腺ホルモンが必要以上に産生されている。甲状腺ホルモンは全身の新陳代謝を高めるホルモンであるため、このホルモンの異常高値によって代謝が異常に活発になることで、心身に様々な影響を及ぼす。
この自己抗体産生が引き起こされる原因は、2007年現在不詳である。過度なストレス・過労が発症・再発に関与しているという説もある。また遺伝の影響もある程度あると考えられている。
なお、ヨウ素の摂取量が少ない地域(西ヨーロッパなど)では、ヨウ素を大量摂取することで、潜在的なバセドウ病が発症することがある。これをヨードバセドウ病と呼ぶ。 |
パーソナリティ障害 |
Personality
disorder |
パーソナリティ障害 (パーソナリティしょうがい、英:
Personality disorder ; PD)とは、一般的な成人に比べて極端な考えや行為を行ったりして、結果として社会への適応を著しく困難にしていたり、症状によって本人が苦しんでいるような状態に陥っている人を言う。
従来の境界例や精神病質の後身にあたる概念で、以前はPersonality
disorderに人格障害(じんかくしょうがい)の訳語が当てられていたが、日本語の「人格障害」という言葉は、人間の根幹を示しているような部分があること、それにより否定的なニュアンスが強いことから「パーソナリティ障害」と訳語が変更されている。なお、「パーソナリティ障害」が定着する以前は同様の意図から「性格障害」と言われることもあった。
パーソナリティ障害とは「病的な個性」、あるいは「自我の形成不全」 ともいえる状態を指す。精神疾患の一種であるが、その他の精神疾患と比べて持続的であり、全体としての症状が長期にわたり変化しないことに特徴付けられる。ただし、他の精神疾患なども治癒するまでに数十年の歳月を要するケースもあり、判別は難しい。
パーソナリティ障害は広義において神経症に入る概念である。今日の精神科における神経症圏の病名は、そのほとんどが患者自身の苦しみ・つらさの中心となっている問題に「障害」をつける形での命名となっている。パニック発作を起こす「パニック障害」、強迫的観念・行動を特徴とする「強迫性障害」なども同様である。しかし苦しみやつらさが一つに限局できず、より深い問題を抱える例がある。このような患者は慢性的、かつ複数の症状をかかえており、抑うつや不安感、厭世観や希死念慮などの、人生を幸せに生きることができないという広範囲に及ぶ問題を持ち、「自分が自分であることそのもの」「生きることそのもの」、つまりパーソナリティが苦しみやつらさの中心であるとしか表現できないような状態を「パーソナリティ障害」と位置付けている。
そもそも人間にはその考え方や行動の方法には明らかな個体差があり、これは個性として尊重されるべきものである。しかしながら極度の自尊や自信喪失、また反社会性や強迫観念などは社会への適応性を失わせるだけでなく、基本的な日常生活や人間関係にも深刻な悪影響を及ぼしうるものである。
パーソナリティ障害がその人の性格に起因する生き方のスタイルの問題であるとすれば、100人いれば100通りの問題があるとも言え、正常と異常を明確に区別できるものではなく、どこまでを「障害」と表現するのかという問題がある。よって「その人がその人であること」による苦痛が、本人にとってあまりにも大きく、生きづらさを感じており、人生を不幸な方向に導いてしまっている状態のことを「パーソナリティ障害」と診断する。「パーソナリティ障害」という病名を付けることは、障害の対象を明確にすることにより、治療とそのためのコミュニケーションに利用するという、ポジティブな意味でなされている。
古典的な精神医学における神経症などの症状を含む病理としてパーソナリティ障害が見られることもある。さまざまな乳幼児研究や精神分析的臨床研究からも、病気というよりは持続的な固定された性格様式として、精神的病気とは区別される。実際に現在のパーソナリティ障害診断においては、他の精神疾患とパーソナリティ障害の併記が行われている。 |
白血病 |
Leukemia |
白血病(はっけつびょう、Leukemia)は、「血液のがん」ともいわれ、遺伝子変異を起こした造血細胞(白血病細胞)が骨髄で自律的に増殖して正常な造血を阻害し、多くは骨髄のみにとどまらず血液中にも白血病細胞があふれ出てくる血液疾患。白血病細胞が造血の場である骨髄を占拠するために造血が阻害されて正常な血液細胞が減るため感染症や貧血、出血症状などの症状が出やすくなり、あるいは骨髄から血液中にあふれ出た白血病細胞がさまざまな臓器に浸潤(侵入)して障害することもある。治療は抗がん剤を中心とした化学療法と輸血や感染症対策などの支持療法に加え、難治例では骨髄移植や臍帯血移植などの造血幹細胞移植治療も行われる。大きくは急性骨髄性白血病 (AML)、急性リンパ性白血病 (ALL)、慢性骨髄性白血病
(CML)、慢性リンパ性白血病 (CLL) の4つに分けられる。 |
発達障害 |
Developmental
disorder |
発達障害(はったつしょうがい、Developmental
disorder)とは、先天的な様々な要因によって主に乳児期から幼児期にかけてその特性が現れ始める発達遅延であり、自閉症スペクトラム
(ASD) や学習障害 (LD)、注意欠陥・多動性障害
(ADHD) などの総称。
発達障害は、しばしば精神障害や知的障害、身体障害を伴う。
1980年代以降、知的障害のない発達障害が社会に認知されるようになった。発達障害より知的障害のほうが広く知られているため、単に発達障害という場合は特に知的障害のないものを指すことがある。このうち、学習障害
(LD)、注意欠陥・多動性障害 (ADHD)、高機能広汎性発達障害(高機能PDD)の3つについては、歴史的には「軽度発達障害」と称されてきた。しかし障害度合自体が「軽度」であるとは限らないにもかかわらず、この名称では誤解を招くことから現在では「発達障害」のカテゴリに含んだ上で、便宜的に「(軽度)発達障害」として、かつてのカテゴリを分類している。なお、高機能広汎性発達障害(高機能PDD)については、主に高機能自閉症とアスペルガー症候群の2つからなる(ここでの、「高機能」とは、「IQ70以上であり、知的障害がない」という意味であって、障害そのものの度合いを指すものではない点に注意が必要である)。
本障害に含まれるのは全て「生物学的要因による障害」である。
発達障害は先天的もしくは、幼児期に疾患や外傷の後遺症により、発達に影響を及ぼしているものを指す。対して機能不全家族で育った児童が発達障害児と同様の行動パターンを見せる事がよくあるが、保護者から不良な養育を受けたことが理由の心理的な環境要因や教育が原因となったものは含めない。また、ある程度成長し、正常に発達したあとに、疾患・外傷により生じた後天的な脳の障害は発達障害とは呼ばれず、高次機能障害などと区別される。
明確な判断は、精神科を標榜する精神科医の間でも大学でこの分野を学んでいないなどの理由で困難とされている。各都道府県や政令指定都市が設置する、発達相談支援施設で、生育歴などがわかる客観的な資料や、認知機能試験(IQ検査、心理検査等を含む)などを行って、複数人の相談員や心理判定員などが見立てとなる判断材料を出す形で、数少ない専門医師が判断し、どのような治療が必要か、SSTが必要かなどの材料を精神科医に提供する、というケースが多い。
成長してからの発達障害については大人の発達障害を参照のこと。 |
パニック障害 |
Panic
disorder |
パニック障害(パニックしょうがい、英:
panic disorder、PD)は、近年の研究により、「心の病」ではなく「脳機能障害」として扱われるようになっている。従来、強い不安感を主な症状とする精神疾患のひとつとして、不安神経症と呼ばれていた疾患の一部である(不安神経症の方が広い疾患概念であり、不安神経症と呼ばれていたものの全てがパニック障害には当たらない)。かつては全般性不安障害とともに不安神経症と呼ばれていたが、1980年に米国精神医学会が提出したDSM-IIIで診断分類の1つに認められ、1992年には世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-10)によって独立した病名として登録された。 |
はやり目⇒流行性角結膜炎 |
|
パラチフス⇒サルモネラ |
|
ハンセン病 |
Leprosy |
ハンセン病(ハンセンびょう、Hansen's
disease)は、抗酸菌の一種であるらい菌(Mycobacterium leprae)の皮膚のマクロファージ内寄生および末梢神経細胞内寄生によって引き起こされる感染症である。
病名は1873年にらい菌を発見したノルウェー人医師アルマウェル・ハンセンの姓に由来する。かつては「癩(らい)」、「癩病」とも呼ばれていたが、この名称は差別的と感じる人が多いために、歴史的文脈以外では、一般的に避けられている。
感染はらい菌の経鼻・経気道的による感染経路が主流であるが、伝染力は非常に低い。治療法が確立しており、重篤な後遺症を残すことも自らが感染源になることもない。2007年の統計では世界のハンセン病新規患者数は年間約25万人であるが、日本人新規患者数は年間0から1人と稀になった。適切な治療を受けない場合は皮膚に重度の病変が生じることがあるため、患者は古くから差別の対象となってきた。
日本では「癩(らい)病」「ハンセン病」の両方の呼称がある。前者は、前述の理由から、公的な場での使用は忌避される傾向がある。近代以前の「癩(病)」は一つの独立した疾患「ハンセン病」以外の病気も含む概念であり、断り書き付きで使用されることがある。
英語圏では leprosy、Hansen's disease の両方が使用される。患者はleper(らい者)とも呼ばれるが、1953年に開催された第6回国際らい会議では、患者はleprosy
patient と呼ぶことが推奨された。
らい療養所は従来レプロサリウム Leprosarium と呼ばれたが、一般的な サナトリウムsanatorium が使用されている。 |
ハンチントン病 |
Huntington's
disease |
ハンチントン病(はんちんとんびょう、英:
Huntington's disease)は、大脳中心部にある線条体尾状核の神経細胞が変性・脱落することにより進行性の不随意運動(舞踏様運動、chorea(ギリシャ語で踊りの意))、認識力低下、情動障害等の症状が現れる常染色体優性遺伝病。日本では特定疾患に認定された指定難病である。
一般にハンチントン舞踏病(Huntington's chorea)として知られている。
かつて「ハンチントン舞踏病」(Huntington's Chorea)と呼ばれていたこともあるが、全身の不随意運動のみが着目されてしまうため、1980年代から欧米では「ハンチントン病」(Huntington's Disease)と呼ばれるようになった。日本でも2001年から「ハンチントン病」の名称を用いている。
原因となる変異をもつ場合には、高い確率で40歳前後に発症し、10〜20年かけて進行する。世代を経るごとにその発症年齢が早くなること、父親から原因遺伝子を受け継いだときにそれが顕著になる現象も知られている。2006年現在では治療する方法は知られていない。1872年に米国ロングアイランドの医師ジョージ・ハンチントン(George
Huntington)によって報告され、人種により異なるが白人での発生率は5-10/100,000、アジア人、アフリカ人ではその数十分の1となる。 |
パンデミック |
Pandemic |
パンデミック(pandemic または
pandemia、汎発流行、世界流行、パンデミア)とは、ある感染症(特に伝染病)が、顕著な感染や死亡被害が著しい事態を想定した世界的な感染の流行を表す用語である。ただし英語の pandemic
の意味は、「流行」という現象と「流行病」という病気との双方である。前者は不可算名詞で、後者は可算名詞である。
語源はギリシア語の
(pandemia) で、(pan, 全て)+ (demos, 人々)を意味する。
ヒト(あるいは他の生物)の感染症は、その原因となる病原体を含むもの(感染源)と接触し、感染することによって発生する。多くのヒトが集団で生活する社会では、同じ地域、同じ時期に、多くの人が同時にその感染源(水源、飲食物など)と接触することで、同じ感染症が集団発生することがある。それまでその地域で発生が見られなかった、あるいは低い頻度で発生していた感染症が、あるとき急に集団で発生した場合、これを特にアウトブレイクと呼ぶ。
ヒトからヒトにうつる伝染病の場合、最初に感染した患者が感染源となって別のヒトに伝染するため、しばしば規模が大きく、長期に亘る集団発生が起きる場合がある。このようなものを特に流行と呼ぶ。流行は、その規模に応じて、(1)エンデミック、(2)エピデミック、(3)パンデミックに分類される。このうち最も規模が大きいものがパンデミックである。 |
ヒステリー |
Hysteria |
ヒステリー(ドイツ語: Hysterie,
英語: hysteria)は、主に以下の意味で使われている。
1.かつての精神医学において、転換症状と解離症状を主とする精神疾患群を指していた語。
2.転じて、一般の人がヒステリーと言う場合、単に短気であることや、興奮・激情により感情が易変しコントロールができなくなる様子のことをさすことが多い。本来の意味とは無関係に使用される場合が多く、しばしば蔑視のニュアンスを含む。略してヒスともいい(例:ヒスを起こす)、人物に対して「ヒステリー持ち」などという表現がされる場合は、この様な状態にしばしば陥る人物を指すことが多い。
3.また、人々が、社会集団に対し、社会的緊張状態のもと、通常の状態では論理的・倫理的に説明のつかないような行動をとる、集団パニック状態がみられることがあり、しばしば集団ヒステリー
(mass
hysteria) とよばれる。モラル・パニックも参照。
以下は精神医学用語として使われてきたヒステリーという語についての記述である。現代の精神医学ではヒステリーの語は使われなくなっている。
ヒステリーは神経症の一型で、器質的なものではなく、機能的な疾病である。本症は心因性反応型で、外的の事情や刺激に対する不快感動の反応として精神的あるいは身体的反応が起こるのであるが、いわゆる神経衰弱様反応型のように抑制的でも内向的でもなく、感情が強調されていて理知的色彩が乏しく、神経衰弱型よりも症状が一般に粗大で激しいものが多い。
ヒステリーの語は、女性に特有の疾患との誤解から子宮に原因があると誤って信じられていたため、古典ギリシア語で「子宮」を意味するhystera(eの頭に´)から名づけられ、ヒステリーの原因は19世紀初頭まで「女性の骨盤内鬱血によるもの」と医師たちの間で長らく定説であった。19世紀後半にシャルコーの催眠術による治療を経て、フロイトにより精神分析的研究が行われ無意識への抑圧などの考察がなされた。その後しばらくヒステリーの治療は精神分析を主体としたものが主流であった。しかし1990年代より、精神疾患を原因で分類するのではなく症状で分類する方法が主体になり、1994年に発表された精神障害の診断と統計の手引き第四版(DSM-IV)では、この言葉は消失し、解離性障害と身体表現性障害に分類された。ICD10では、解離性[転換性]障害に分類される。この経緯については神経症と類似である。 |
ピック病⇒前頭側頭葉変性症 |
Pick's
disease |
ピック病(ピックびょう、Pick's
disease)とは、認知症を生じる神経疾患の一つ。
1892年にチェコのプラハ・カレル大学のArnold Pickによって、前頭葉と側頭葉の著明な萎縮を呈する精神疾患が報告された。その後、1911年にドイツのミュンヘン大学のアロイス・アルツハイマーによって「嗜銀性神経細胞内封入体(Pick小体)」の発見が報告されている。
1926年に旧満洲医科大学の大成潔とドイツのミュンヘン大学のHugo Spatzにより「Pick病」と命名された。
1996年にスウェーデンのルンド大学とイギリスのマンチェスター大学のグループ(Lund and Manchester Groups)によって前頭側頭葉変性症(FTLD)という概念の提唱があり、ピック病はその下位概念に位置づけられた。
大きな特徴として、人格が急変することが挙げられる。例えば万引きや人前での破廉恥行為など、本来なら実行に罪悪感や羞恥心を示す行動を何ら気に掛けず平気に行うようになったり、物事に無頼で無頓着になり、人から注意を受けても耳を傾けることもなくなるなど、いわゆる「自分勝手・我儘」と表現される状態になる。何を訊ねても深く考えず、悩む様子も見られない。
決まった食事しか摂ろうとしない、同じ道しか通ろうとしないなど、常に同じ行動を繰り返す「常同行動」も特徴として挙げられる。
進行すると言葉の意味が分からなくなったり、日常食べる料理(例えば味噌汁やカレーライス)等の一般的な名詞さえも理解できなくなる。そして無言・無動、遂には寝たきりの状態となる。ここまで進行するのには、一般に発症してから10年以上の経過をたどる。
一方でアルツハイマー型認知症等とは異なり、初期状態では記憶低下など生活上の障害は軽く、認知症と判断されない事も多い。また症状が進んでも動作についての記憶は保たれ、見当識障害もほとんど見られないため、電車やバスなどに乗っても迷子になる事は少ない。
脳全体が委縮するアルツハイマー型認知症と異なり、前頭葉と側頭葉に限定して委縮が見られる。 |
百日咳 |
Pertussis |
百日咳(ひゃくにちぜき、英: whooping
cough, Pertussis)は、主にグラム陰性桿菌の百日咳菌(Bordetella
pertussis)による呼吸器感染症の一種。特有の痙攣性の咳発作を特徴とする急性気道感染症である。世界的に存在している感染症で予防接種を受けていない人々の間で、地域的な流行が3
- 5年毎に起きる。一年を通じて発生が見られるが、春が多い。WHOの発表では、世界の患者数は年間2,000
- 4,000 万人で、死亡率は1 - 2%、死亡数は約20 - 40万人とされている。約90%は発展途上国の小児。ワクチン接種による免疫の持続期間は約4
- 12年間。
世界的に成人の感染者数が増加しているが、これはワクチン接種により百日咳の患者数が減少したことで、自然罹患による追加免疫を得られない世代が増えた為である。つまり、ワクチンによる免疫獲得者の成人層での百日咳に対する免疫が持続期間を経過し減衰し、現在の流行を招いていると考えられる。小児期のワクチン接種による獲得免疫の減衰した成人感染者の増加は、水痘・帯状疱疹ウイルスや麻疹ウイルスなどの感染症でも報告されている。 |
病気 |
Disease |
病気(びょうき、illness)、病(やまい、illness)とは、人間や動物の心や体に不調または不都合が生じた状態のこと。
病気(やまいけ、sickness)は、病気が起こるような気配をいう。
症候群(しょうこうぐん、syndrome)、疾病(しっぺい、disease)、疾患(しっかん、disease)は病気の類似概念。
病気は曖昧な概念であり、何を病気とし、何を病気にしないかについては、様々な見解があり、政治的・倫理的な問題も絡めた議論が存在している。英語のillness(病気)は「不健康な状態」を意味し、disease(疾患、疾病)は「病気の原因」を意味するが、両者はしばしば混同される。
周辺の語の概念
しばしば病気は、「症候群」「疾患」「疾病(しっぺい)」「障害」「怪我」「変異」等の語との概念上のオーバーラップがある。
病気の存在を前提として、その患者に共通する特徴のことを病態(びょうたい)あるいは病像(びょうぞう)という。病状(びょうじょう)は、ある特定の患者についてその臨床経過を指すことが多い。これらの単語はしばしば混合されて使われる。
病気と「疾患」・「疾病」
医学では、「病気」という単語はあまり使用されず、代わりにより厳密な疾患(しっかん)、疾病(しっぺい)を使うことが多い。「病気」という語では内因性の疾患しか含まないような印象を受けることがあるためである(事故による骨折は、一般的には病気とは言わないことが多い)。なお、精神医学用語の「疾患」は「障害(disorder)」という概念であり、医学用語の「疾患(disease)」とは異なる概念である。
英語のdisease(疾患、疾病)はsickness(軽い病気)、illness(病気)の原因を示す語で、病名と症状が明らかな具体的な病気に用いられる。sickness、illnessは"病気になっている状態"を指し、diseaseは感染などによる体内機能の異常を意味する。一般には、熱や風邪など生活上の病気には用いられず、伝染病や癌など深刻な病気に用いられ、命に関わるようなニュアンスがある。
疾患・疾病・病気と「症候群」
症候群(しょうこうぐん)とは、原因不明ながら共通の病態(自他覚症状・検査所見・画像所見など)を示す患者が多い場合に、そのような症状の集まりにとりあえず名をつけ、扱いやすくしたものである。人名を冠した症候群の名前も数多く、原因が判明した場合にはその名前が変更されたり、時には他の病名と統合されたりすることがある。
一方で原因判明後も長い間そのまま慣用的に使われている「症候群」は多く、逆に「〜病」の名を冠する原因不明の疾患も多くあり、実際には明確な区別がなされていないことが多い。
・原因が判明したにもかかわらず「症候群」と呼ばれている疾患の例
・重症急性呼吸器症候群 (SARS)、後天性免疫不全症候群 (AIDS):いずれもウイルス感染が原因の単一疾患であることが判明している。
・ダウン症候群:第21染色体のトリソミー(1対2本あるべき染色体が3本ある)による。近年では21トリソミーと呼ばれることも増えた。なお、18トリソミーは別名「エドワード症候群」であったが、こちらはあまり使われない。
・原因不明、単一疾患であるかも不明ながら、「〜病」と呼ばれる疾患の例
・川崎病:小児の急性熱性疾患。原因不明。散発的に流行することから感染の関与が疑わしい一方で、症状の程度や検査所見の傾向にばらつきが大きく、単一疾患であるかも疑わしい。
・ベーチェット病:膠原病類縁疾患。特定のHLAに関連することが多いことはわかっているが、原因は不明。
精神科領域においては、扱う疾患のほぼ全てが症候群と呼ぶべき疾患であるため、利便性の問題から症候群とは呼ばず○◯病・○○症と言った語を用いる。
疾患・疾病・病気と「症状」
症状(しょうじょう、symptom)は、病気によって患者の心身に現れる様々な個別の状態変化、あるいは正常からの変異のことである。病気にかかることを罹患(りかん)、症状が現れることを発症(はっしょう)または発病(はつびょう)という。患者本人によって主観的に感じられるものを自覚症状(じかくしょうじょう)、周囲によって客観的に感じ取られるものを他覚症状(たかくしょうじょう)と呼んで区別する。単に「症状」といった場合、自覚症状のことのみを指す場合があり、この際は他覚症状のことを所見(しょけん)、徴候(ちょうこう)と呼んで区別する。
通常、「疾患」と「症状」は本来大きく違う概念だと考えられている。つまり、疾患が先にあって、それを受けて「症状」が生じる、というものである。しかし日常診療の場では、症状が確認されても、その症状を来たす原因がよく分からない場合が多く、この場合「症候群」での例と同様に、症状名と病名との境目が曖昧になることがある。
例えば、脱水という病名はないが、脱水が見られたら原疾患はさておき脱水の診断の元に治療を行うことがある。近視は症状の名前としても病名としても使われる。本態性高血圧という病名は、別の基礎疾患があって二次的に高血圧となっているものを除いて、原因不明で高血圧という「症状」を起こしているものをまとめて含めるための「病名」である。
ある臨床像が、原疾患に見られる症状のひとつであるのか、あるいは合併症として出現した別の独立した疾患なのかについては、医学の教科書を執筆する際の問題となるだけではなく、保険診療報酬や統計にも関わるため、軽視できない問題となる。
症状を研究する医学の一分野に、症候学がある。 |
不安障害 |
Anxiety
disorder |
不安障害(ふあんしょうがい、英:Anxiety
disorder)とは、過剰な反すう(英語版)や心配、恐怖の特徴を有するいくつかの異なる種類の一般的な精神疾患を含んだ総称である。不安は、身体と精神の健康に影響を及ぼす可能性がある不確かで現実に基づかないか、あるいは想像上の将来についてである。たびたび全般性不安障害として誤診される甲状腺機能亢進症のような、不安障害に類似した症状を有する多くの精神病理や内科の症状が存在する。
不安障害は、さまざまな心理社会的(英語版)要因を有する;遺伝的素因(英語版)を含む可能性もある。不安障害の診断は2つの分類に分けられる。;それは持続しているか、一時的な(episodic)症状かどうかに基づく。
不安の用語は、4つの体験の特徴を含む:心理的な不安、肉体的緊張、身体症状と解離性不安である。不安障害は、全般性不安障害、恐怖症、およびパニック障害に分けられる;
各々の特徴と症状を持ち、異なる治療を要する。不安障害が発現させる感情は、単なる緊張から恐怖による発作までにわたる。
テイラー不安検査(英語版)やツング不安自己評価尺度(英語版)のような標準化された検査用の臨床アンケートを、不安症状の検出に用いることが可能で、不安障害の正式な診断評価のために必要であることが示唆される。
不安とは、明確な対象を持たない恐怖の事を指し、その恐怖に対して自己が対処できない時に発生する感情の一種である。不安が強く、行動や心理的障害をもたらす症状を総称して不安障害と呼ぶ。不安障害はかつての神経症に該当する。精神症状として強い不安、イライラ感、恐怖感、緊張感が現れるほか、発汗、動悸、頻脈、胸痛、頭痛、下痢などといった身体症状として現れる事がある。
治療は、心理療法や薬物療法が行われる。
米国での調査によれば、不安障害が何らかの気分障害を併発する頻度は約7割にもおよぶ。 |
風疹 |
Rubella |
風疹(ふうしん、英: Rubella)とは、ウイルス感染症の一種で、風疹ウイルスによる急性熱性発疹性疾患。一般に日本では三日はしかとしても知られ、英語では「German
measles(ドイツはしか)」とも呼ばれている。日本では「風しん」として感染症法に基づく五類感染症に指定して届出の対象としている。
伝染力は水痘(水疱瘡)、麻疹(はしか)より弱い。妊娠初期に妊婦が感染した場合の先天性風疹症候群が大きな問題となる。効果的な治療法は無く、ワクチンによる予防が最も重要である。
風疹にかかった人は免疫ができて二度とかからないといわれるが、経年により免疫が低下していた場合や、がん治療などで免疫力が落ちた場合など、ごくまれに再発することがある。日本ではかつて5〜9年ごと(1976、1982、1987、1992年)に大流行があったが男女幼児が定期接種の対象となって以降は大きな流行は発生していなかった。 |
プリオン病⇒伝達性海綿状脳症 |
|
プール熱⇒咽頭結膜熱 |
|
ペスト |
Plague |
ペスト(ドイツ語: Pest, 英語:
plague)とは、人間の体にペスト菌(Yersinia pestis 腸内細菌科
通性嫌気性/グラム陰性/無芽胞桿菌)が入ることにより発症する伝染病。
日本では感染症法により一類感染症に指定されている。ペストは元々齧歯類(特にクマネズミ)に流行する病気で、人間に先立ってネズミなどの間に流行が見られることが多い。
ノミ(特にケオプスネズミノミ)がそうしたネズミの血を吸い、次いで人が血を吸われた結果、その刺し口から菌が侵入したり、感染者の血痰などに含まれる菌を吸い込んだりする事で感染する。人間、齧歯類以外に、猿、兎、猫などにも感染する。
かつては高い致死性を持っていたことや罹患すると皮膚が黒くなることから黒死病と呼ばれ、恐れられた。14世紀のヨーロッパではペストの大流行により、全人口の三割が命を落とした。
ただし、現代英語で「pest」と言えば、ハエ、ダニ、あるいはイエネズミなどのような人間に害を与える小動物一般を指すので注意が必要。 |
ヘルニア |
Hernia |
ヘルニア(hernia)とは、体内の臓器などが、本来あるべき部位から脱出した状態を指す。体腔内の裂隙に迷入したものを内ヘルニア、体腔外に逸脱したものを外ヘルニアと呼ぶ。腹部の内臓に多くみられ、例えば腹壁ヘルニアは、腹壁に生じた裂け目から腹部の内臓が腹膜に包まれたまま腹腔外に脱出するものである。
一般的に多いヘルニアは、鼠径ヘルニア(脱腸)、臍ヘルニア(でべそ)、椎間板ヘルニアなどである。
また、嵌頓ヘルニア(かんとんへるにあ、英:incarcerated
hernia/incarceration of hernia)は、脱出した臓器などが脱出穴で締め付けられた状態を指す。締め付けられた状態が長期に及ぶと、血液循環障害により脱出した部分が壊死ないし壊疽に至る場合がある。多くは激痛を伴う。 |
便秘 |
Constipation |
便秘(べんぴ、英: constipation)とは、ヒト(または他の動物)において便の排泄が困難になっている消化器の状態のことである。
一般に、
・一般に排便の無い期間の長さ(排便が3日以上無い、週に3回以下しかないなど)
・排便の困難さ
・残便感
・口腔からの便臭
などで認識・診断される。「毎日便が出なければならない」と考える者も存在するが、各個体の排便間隔は体質、環境などによりまちまちで、一意に決めることはできない。
日本内科学会の定義では「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」 となっている。
便秘の対義として下痢ないし軟便を用いることがあるが、下痢・軟便の状態でも便秘になることはある。
便秘はその原因から「続発性便秘」と「特発性便秘」の2種類に大別される。
1.続発性便秘は、抗コリン薬など薬剤の副作用や大腸癌などの疾患が原因。「器質性便秘」とも呼ばれる。
2.特発性便秘は、大腸蠕動運動や直腸機能の異常などが原因。「機能性便秘」とも呼ばれ、食事性便秘、直腸性便秘、痙攣性便秘、弛緩性便秘などと細分類されることもある。
具体的な状態としては、
・腸の一部が締め付けられ、細くなったり遮断されたりして便が動けなくなる。
・麻痺により腸の蠕動ができなくなった場所で便が動けなくなる。
・過度の脱水により便が硬く大きくなり、排泄されなくなる。
・便の量が少なくなり、固い塊(兎糞状)になる。
などがある。
また、自覚症状として、腹痛、吐き気、直腸残便感、腹部膨満感、下腹部痛、食欲不振、めまいなどのほか、肩や背中に放散痛を伴う場合がある。
便秘の外部的要因には次のようなものが一例として挙げられる。
・食物や食物繊維の摂取が不十分なため、適切な咀嚼が行われなかった。
・薬の副作用。カルシウム剤、コデインなどの鎮痛剤、鎮静剤、制酸剤、鉄剤、利尿剤(水薬)、抗うつ剤、抗コリン薬などには、副作用として便秘をともなうものがある。
・ホルモンバランスによるもの。
・紅茶や緑茶を通したタンニンの大量もしくは過度の常習的摂取によるもの。
・心配事や環境などによる精神的なストレスを受けている場合に、便秘や下痢などといった消化・排泄への影響が発生する事もある。
これらは、互いに原因となる多様性があり、女性はホルモンの関係にも伴い陥り易いほか、加齢によっても便秘になりやすくなる傾向や、性別に拠らず職業を含む生活環境によっても便秘となりやすい傾向も見られる。
S状結腸の過長等により、腸内に便の通りが著しく悪い個所が存在する場合、直腸内は空になっていても便秘になりやすい。この場合、薬局で市販されている浣腸では便まで薬が到達せず、排泄を促進することができない。
多くの場合、短時間しか続かないが、重症の場合は排泄できず中毒死する場合もある。 |
膀胱癌 |
Bladder
cancer |
膀胱癌(ぼうこうがん、英: Bladder
cancer)は、膀胱から発生する上皮性悪性腫瘍。
死亡数は、男性が悪性腫瘍の第11位、女性は第14位。
発生率は男性が女性の3倍多い。
70歳代での発症が多く、50歳以下の若年発症はまれ。
第9染色体長腕ヘテロ接合性の消失、第17染色体短腕ヘテロ接合性消失が関与するタイプも指摘されている。
発癌の危険因子としては、不衛生な環境、化学物質、ビルハルツ住血吸虫による感染症、喫煙、などが指摘されている。 |
ポリオ⇒急性灰白髄炎 |
|
ま |
麻疹 |
Measles |
麻疹(ましん、英: measles,
rubeola、痲疹とも)とは、ウイルス感染症の一種で、麻疹ウイルスによる急性熱性発疹性疾患。日本では「麻しん」として感染症法に基づく五類感染症に指定して届出の対象としている(「疹」の字が常用漢字でないため「麻しん」として定められている)。和語でははしか(漢字表記は同じく「麻疹」の字を当てる)と呼び、一般にはこちらの方が知られている。
伝染力が非常に強く、世界保健機関WHOの推計によれば、2004年の全世界の患者数は約50万人で、東南アジア、中近東、アフリカで多く発生している。
流行株の変異によって、ワクチンで獲得した抗体での抑制効果が低くなることが懸念されている。また、ワクチンによる獲得免疫の有効期間は約10年とされるが、ブースター効果による追加免疫が得られず、抗体価の低下(減衰)により再感染することもある。 |
麻痺 |
Paralysis |
麻痺(まひ、元の用字は痲痺)とは、一般的には、四肢などが完全に機能を喪失していることや、感覚が鈍って、もしくは完全に失われた状態を指す。比喩的に使われることも多く、「金銭感覚が麻痺する」「交通麻痺(=極度の交通渋滞や災害等により、道路機能が失われること)」などの用例がある。
医学用語としての麻痺は、中枢神経あるいは末梢神経の障害により、身体機能の一部が損なわれる状態をさす。例えば運動しようとしても、四肢などに十分な力の入らない・四肢の感覚が鈍く感じる状態(不全麻痺)、またはまったく動かすことができない・感覚がまったく感じられない状態(完全麻痺)を指し、一般用語の不随に近い意味を持つ。麻痺には、運動神経が障害される運動麻痺と、感覚神経が障害される感覚麻痺(知覚麻痺)がある。また中枢が障害される中枢性麻痺と末梢神経が障害される末梢性麻痺に分類される。 |
マラリア |
Malaria |
マラリア(麻剌利亜、「悪い空気」という意味の古いイタリア語:
mal aria 、ドイツ語: Malaria、英語: malaria)は、熱帯から亜熱帯に広く分布する原虫感染症。高熱や頭痛、吐き気などの症状を呈する。悪性の場合は脳マラリアによる意識障害や腎不全などを起こし死亡する。瘧(おこり)とは、大抵このマラリアを指していた。 |
マールブルグ熱 |
Marburg
virus |
マールブルグ熱(マールブルグねつ)とはフィロウイルス科のマールブルグウイルスを原因とする人獣共通感染症。同義語としてマールブルグ出血熱(Marburg hemorrhagic fever)、マールブルグ病(Marburg disease)、ミドリザル出血熱(Vervet monkey hemorrhagic fever)。患者と接触した医療関係者や家族は、接触の程度により一定期間の監視が行われる。
1967年、西ドイツのマールブルクとフランクフルト、ユーゴスラビアのベオグラードにポリオワクチン製造・実験用としてウガンダから輸入されたアフリカミドリザルにかかわった研究職員や清掃員など25名が突如発熱、うち7名が死亡するという事件が発生した。原因はマールブルグウイルスというこれまでに知られていないウイルスによる出血性感染症であった。その後も中央アフリカで散発的な発生が見られているが、エボラ出血熱ほど急激に感染を拡大するウイルスではないようだ。しかし、2005年4月にアンゴラで大量に感染者が続出し300名前後が死亡したため「散発的な感染しかない」という点について疑問が出てきている。
自然界での宿主は不明。アフリカ中東南部に散発的に発生する。ただし、最近のアフリカでは大量発生しているのが現状である。感染方法は、感染者や患者の血液、体液、分泌物、排泄物などとの接触による物と考えられる。感染の防護対策は手袋等で良いとされ、空気感染はないとされる。感染者に対する発症者の割合は不明。症状は軽快しても、症状軽快後、精液、前眼房水等からウイルスが分離。 |
水疱瘡⇒水痘 |
|
水虫⇒足白癬 |
|
三日はしか⇒風疹 |
|
虫歯⇒う蝕 |
|
メタボリックシンドローム |
Metabolic
syndrome |
メタボリックシンドローム(英: metabolic
syndrome、代謝症候群、単にメタボとも)は、内臓脂肪型肥満(内臓肥満・腹部肥満)に高血糖・高血圧・脂質異常症のうち2つ以上を合併した状態をいう。
以前よりシンドロームX、死の四重奏、インスリン抵抗性症候群、マルチプルリスクファクター症候群、内臓脂肪症候群などと呼称されてきた病態を統合整理した概念である。WHO、アメリカ合衆国、日本では診断基準が異なる。
高血糖や高血圧はそれぞれ単独でもリスクを高める要因であるが、これらが多数重積すると相乗的に動脈硬化性疾患の発生頻度が高まるため、リスク重積状態を「より早期に把握」しようという試みが考えられてきた。
このようなリスクの集積は、偶然に起きるのではなく、何らかの共通基盤に基づくと考えられている。日本では特に内臓脂肪の蓄積による肥満が共通の基盤として着目され、腹部肥満=男性型肥満ともいわれている上半身型肥満=リンゴ型肥満に対して注意が呼びかけられている。
特に日本人は民族的特徴から、米国人よりこのメタボリックシンドロームに悪影響を受けやすいとされる。
2008年4月から始まる特定健診制度(糖尿病等の生活習慣病に関する健康診査)では、メタボリックシンドロームの概念を応用して糖尿病対策を行う事を目指し、40歳から74歳までの中高年保険加入者を対象に健康保険者に特定健診の実施を義務化すると共に、メタボリックシンドローム該当者、または予備軍と判定されたものに対して特定保健指導を行うことを義務づける。5年後に成果を判定し、結果が不良な健康保険者には財政的なペナルティを課す事によって実行を促す。厚生労働省は、中年男性では二分の一の発生率を見込むなど、約2000万人がメタボリックシンドロームと予備軍に該当すると考えており、これを平成24年度末までに10%減、平成27年度末までに25%減とする数値目標を立てている。これにより医療費2兆円を削減する。「医療制度改革大綱」(平成17年12月1日 政府・与党医療改革協議会)の数値目標をなぞったもの。 |
メニエール病 |
Meniere's
(最初のeの頭に´
中央のeの頭に`)
disease |
メニエール病(英名 Meniere’s
disease)とは激しい回転性のめまいと難聴・耳鳴り・耳閉感の4症状が同時に重なる症状を繰り返す内耳の疾患である。
フランスの医師プロスペル・メニエール(Prosper Me'nie`re(最初のeの頭に´中央のeの頭に`))が1861年に初めてめまいの原因の一つに内耳性のものがあることを報告したことからこの名前がついている。「メニエル病」「メヌエル病」「メニエール氏病」とも言われる。
厚生労働省の特定疾患に指定されている難病である(ただし医療費の助成のある特定疾患治療研究事業対象の疾患ではない)。
低音の聞こえだけが悪くなり、強い回転性めまいが無いものは蝸牛型メニエール病を参照のこと。 |
盲腸炎⇒虫垂炎 |
|
や |
夜尿症 |
Nocturnal
enuresis |
夜尿症(やにょうしょう)とは、概ね5、6歳を過ぎても継続的に夜尿(睡眠中に無意識に排尿してしまう行為)が認められる状況を指す。遺尿症とも呼ばれる。5、6歳に達していない場合や、継続的でない場合は、寝小便(ねしょうべん)、あるいはおねしょと呼ぶことが多い。
【参考】
・寝小便(Nocturnal
enuresis)
・失禁(Incontinence) |
ら |
ラッサ熱 |
Lassa
fever |
ラッサ熱(らっさねつ、Lassa fever)は病名。出血熱のひとつ。アレナウイルス科ラッサウイルスによる。マストミス(Mastomys natalensis,en:Natal
Multimammate Mouse)とよばれる齧歯類が自然宿主である。感染者のおよそ80%が軽症であるが、約20%が重症となり致死率は感染者の1〜2%程度。毎年10万人以上が感染し、5000人程度が死亡している。妊婦は重症化し易く、胎内死亡、流早産を起こしやすい。
1969年、ナイジェリアのラッサ村にて最初の患者が発生。1970年代にウイルスが分離され、村名にちなんでラッサウイルスと命名された。
マストミスという齧歯類の動物が自然宿主。感染しているマストミスは症状を示さず、「排泄物」、「唾液中」に終生ウイルスを排出する。基本的に空気感染せず接触感染であるが、ヒトは咳などの飛沫感染により伝播し二次感染も起こるが、手肌の接触程度では感染しない。
マストミスは西アフリカに生息するためラッサ熱も西アフリカで発生する。潜伏期間は5〜21日で致死率は感染者の1-2%と判明している。日本では1987年の輸入例を除き発生はない。また、非感染地域での2次感染は報告されていない。 |
リウマチ |
Rheumatism |
リウマチ、リューマチ、リュウマチ(英: Rheumatism から)、ロイマチ(英: Rheuma から)
・関節・骨・筋肉の痛みやこわばりを来す疾病の総称。
・上記疾病が近代西洋医学において類型化され定義された、下記に代表される疾患ならびに疾患群。
・関節リウマチ
・リウマチ熱
・ほかのリウマチ性疾患についてはリウマチ学#代表疾患を参照のこと。 |
リウマチ学 |
Rheumatology |
リウマチ学(リウマチがく、英語: rheumatology)は、関節痛などを主な症状とする膠原病・リウマチ関連疾患を主に研究診療する、内科学から発展していった医学の一分野である。整形外科学と連携して治療にあたる。
1940年に「リウマチ専門医r」(heumatologist) という言葉がBernard Comroeによって考案され、「リウマチ学」(rheumatology)
という言葉は1949年にJoseph L. Hollanderの教科書で初めて用いられた。
リウマチ学は全身性エリテマトーデス
(SLE)、関節リウマチ (RA)などのいわゆる膠原病を中心に扱う学問分野である。「リウマチ学」と同義の言葉として「膠原病学」というものが存在し、両者ともに現在でも用いられる語である。日本では後者の方が好んで使われる傾向にあり、逆に欧米には「膠原病学」に相当する言葉はない。そのため、日本ではいわゆる膠原病を扱う病院の診療科として「リウマチ科」「膠原病内科」などの名称が混在しているが、扱う分野に大差はない。
リウマチ学は多彩な全身症状をあるひとつの観点から系統立てて説明する学問分野である。そのため膠原病の理解には内科学に関する広範な知識が要求される。20世紀初頭の内科医ウイリアム・オスラーは「SLEは内科学の真髄である」と語っている。
「リウマチ」とは古代ギリシャにおいて「ロイマ」(rheuma、流れの意)という言葉から発生したもので、このころの人々は脳から体液が下のほうに流れ、鬱滞すると腫脹や発赤をきたすと考えられていた。体の中の悪い液体が疾患を引き起こしているという考えに基づいたものであり、当時の人々が非常に高度で複雑な概念を直感的に理解していたものといえる。「ロイマ」という言葉は遅くとも西暦100年ころには使用されていたという。また同じ頃インドでは、すでに関節リウマチの臨床所見を正確に記載した文献が出ている。
リウマチの原因は長らく不明だったが、1998年、米国と日本で「破骨細胞分化因子」(RANKL)
がそれぞれ別個に発見された。これを通じて、免疫系の異常が余分な破骨細胞を生んでいることがわかった。この破骨細胞が悪さをして、リウマチの症状をもたらす。
骨の代謝と免疫系は、これまでは無関係だと思われてきたが、これ以降では骨の代謝と免疫学の関係が重視されることになった。両者は、多くの因子を共有して、両者はともに細胞群が骨髄でつくられる。この分野の研究は「骨免疫学」(osteoimmunology) と呼ばれるようになった。
研究が進むにつれて、インターフェロンや造血幹細胞も関係していることが判明した。この分野の近年の研究の発達はめざましい。研究は日本と米国が最先端を切っているが、日本では高柳広の業績が著名である。詳しい情報は高柳のサイトで公開されている。
代表疾患
・古典的五大膠原病
・関節リウマチ
Rheumatoid Arthritis
・全身性エリテマトーデス
Systemic Lupus erythematosus, SLE
・皮膚筋炎/多発筋炎
Dermatomyositis/Polymyositis
・全身性強皮症
Systemic scleroderma
・シェーグレン症候群
Sjo"gren's syndrome
・血清反応陰性関節炎(HLA-B27関連関節炎)
・ベーチェット病
・血管炎症候群
・抗リン脂質抗体症候群
・再発性多発軟骨炎
・サルコイドーシス
・アミロイドーシス
関節リウマチ関連疾患
・若年性特発性関節炎(JIAまたはJRA)
・成人スティル病
・リウマチ性多発筋痛症
・線維筋痛症
・RS3PE |
リウマチ性多発筋痛症 |
Polymyalgia
rheumatica |
リウマチ性多発筋痛症(リウマチせい・たはつきんつうしょう、英
polymyalgia rheumatica; PMR)とは、リウマチ関連疾患の1つである。
65歳以上の高齢者で体幹から近位筋に凝ったような痛み、運動時痛が認められ、寝返りが痛くてできないといった症状が特徴的である。客観的な筋力低下は明らかではなく、体重減少ややる気がおきないなどの症状を認めることも多い。 |
流行性角結膜炎 |
|
流行性角結膜炎(りゅうこうせいかくけつまくえん)(EKC:epidemic
keratoconjunctivitis)はウイルスで起こる急性の結膜炎のことで、別名「はやり目」ともいわれ、感染力が強い。学校保健安全法上の学校感染症の一つで、感染の恐れがなくなるまで登校禁止となる。また、児童に限らず成人が感染した場合でも原則的に出勤停止となり、特に医療従事者の感染は時に患者への二次感染を引き起こす。 |
流行性耳下腺炎 |
Mumps |
流行性耳下腺炎(りゅうこうせいじかせんえん)は、ムンプスウイルス(英語版)の感染によって発生するウイルス性の病気。一般にはおたふく風邪として知られる。1967年にワクチンが開発される以前は、小児の疾患として全世界で一般的であり、今日でも発展途上国では脅威となっている。
原因はパラミクソウイルス科のムンプスウイルスで、飛沫感染、ならびに接触感染により感染する。2歳から12歳の子供への感染が一般的であるが、他の年齢でも感染することもある。通常耳下腺が関わるが、上記年齢層よりも年上の人間が感染した場合、睾丸、卵巣、中枢神経系、膵臓、前立腺、胸等、他の器官も関わることがある。場合によっては、治った後も生殖機能に後遺症が残る。
潜伏期間は通常12日〜14日である。 |
緑内障 |
Glaucoma |
緑内障(りょくないしょう、英: glaucoma)は、目の病気の一種。青底翳(あおそこひ)とも呼ばれる。
緑内障は網膜神経節細胞が死滅する進行性の病気であり、特徴的な視神経の変形と視野異常(視野欠損)を呈する。基本的には現時点では一度喪失した視野は回復させることが困難なため、失明の原因になりうる。日本では、最近になって糖尿病網膜症を抜いて1番目の失明の原因となっている。視野狭窄は自覚されないうちに末期症状に至ることも多く、発見には定期的な健康診断が必須である。
かつては眼の中の圧力である眼圧が高いことが原因と考えられていたが、眼圧が正常範囲であっても緑内障に罹患している患者が多いことが確認され、視神経乳頭の脆弱性が緑内障の原因として考えられている。しかし眼圧は緑内障進行の最大の危険因子であり、緑内障治療の基本は眼圧を下げることで視野障害の進行を停めるという方法をとる。眼圧を30
%低下させることにより正常眼圧緑内障において80 %の患者において視野障害の進行が停止したという報告もある。 |
レビー小体型認知症 |
Dementia
with
Lewy
bodies |
レビー小体型認知症(レビーしょうたいがたにんちしょう、英:
Dementia with Lewy Bodies; DLB)は、変性性認知症のひとつである。以前は、瀰漫性レビー小体病と呼ばれていた。日本ではアルツハイマー型認知症や脳血管性認知症と並び三大認知症と呼ばれている。認知障害だけでなく、パーキンソン病のような運動障害も併発するのが特徴である。
レビー小体型認知症の症状として、進行性の認知機能低下をみとめる。これは認知症を来す疾患全般に認められる。
本症に特徴的な症状として、注意や覚醒レベルの顕著な変動、具体的で詳細な内容の(リアルな)幻視(幻覚)、パーキンソニズム(手足の安静時の震え、歩行障害、筋固縮など)をみとめるが、これらがすべて出現するわけではない。
本症に出現する幻視は、非常にリアルであるとされ、患者本人は具体的に「そこに〜(人物名)がいる」などと訴える。また、視覚的に物事を捉えることが難しくなり、アルツハイマー型認知症と違い、図形描写が早期に障害されることが多い。これらの症状は、後頭葉の障害によって出現するものと考えられる。この障害は、脳血流シンチグラフィにて血流の低下として捉えられる。
本症は、パーキンソン病の類縁疾患であり、パーキンソン病同様にドパミン神経細胞の変性を認め、パーキンソニズムと呼ばれるパーキンソン病様の運動障害を認めることが多い。そのため、本症では転倒による外傷が多く、また、病状の進行によりアルツハイマー型認知症に比べ10倍も寝たきりになるのが早いともいわれている。ドパミン神経細胞の変成を反映して、123I-MIBG
心筋シンチグラフィにて集積の低下を認める。
病状の進行に伴い、認知機能とパーキンソニズムの進行を認め、最終的には寝たきりになる。
本症は、初期の段階でアルツハイマー型認知症との鑑別が難しく、間違って診断されることがある。
薬物に過敏に反応し(薬物過敏性)、特に、抗精神病薬の投与によって悪性症候群をきたしやすい。しかし、妄想、暴言、介護拒否、徘徊などの認知症に伴う周辺症状が出現しやすく、これに対して抗精神病薬が処方されることがある。
ドネペジルに代表される、アルツハイマー型認知症の治療薬であるアセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、本症に対しても有効で、アルツハイマー型認知症よりも本症でより効果を認めることもある。
レビー小体型認知症は1976年に日本の精神科医の小阪憲司が症例を報告し、世界的に知られるようになった。レビー小体とはドイツの神経学者フレデリック・レビー(英語版)によってパーキンソン病変の脳幹で発見され名付けられた封入体であり、大脳皮質にこれが多く認められることから、小阪によって瀰漫性レビー小体病(びまんせいレビーしょうたいびょう、英: diffuse Lewy body disease; DLBD)と名付けられた。その後1995年イギリスにて行われた国際ワークショップにて現在の名称になった。
頻度は報告によって様々であるが、有病率は0〜5%、認知症に占める割合は 0〜30.5%と報告されている 。 |
老化 |
Ageing |
老化(ろうか、英: ageing、aging)とは、生物学的には時間の経過とともに生物の個体に起こる変化。その中でも特に生物が死に至るまでの間に起こる機能低下やその過程を指す。
老化は、死を想起させたり、成熟との区別が恣意的であることから、加齢(かれい)、エイジングと言い換えられる場合もある。
例えばヒト(哺乳類)の老化では加齢とともに胸腺の萎縮の他、様々な変化、機能低下が見られる。老年疾患・老人病には、骨粗鬆症、認知症、動脈硬化性疾患などがある。多くの動物ではいくら環境条件などを整えてもこのような生理機能の低下が起き(老化し)誕生以来一定期間以内に死に至る寿命が存在する。
ヒトでは肥満も痩せすぎも寿命短縮のリスク要因となる。喫煙、糖尿病、高血圧などは老化を促進する。スポーツ習慣や適量の飲酒は老化を遅らせる。 |
老視
(老眼) |
Presbyopia |
老視(ろうし)は、目の障害の一つ。老眼(ろうがん)とも呼ばれるが、老視が正式名称。
加齢により水晶体の弾性が失われて調節力が弱まり、近くのものに焦点を合わせることができなくなってくる。
40代から60代初めに自覚されることが多いが、実際には20歳前後から調節力の減少は始まっており、日常生活で字を読む時の距離である30cm前後が見えにくくなるのが、この辺の年齢であるといえる。しかしこのような症状を自覚する年齢は個人差があり一概には言えないが、一般には40歳前後、早い人では30歳代半ばあたり、遅い人でも50歳代から60歳あたりまでに自覚症状を訴えることがほとんどである。
老視は遠方が明視できる状態において、中・近距離の細かい文字や小物などの細部がにじんだり、チラついたりして明視しづらくなるばかりでない。(老眼鏡や遠近両用眼鏡などを使用した場合も含め)パソコンや携帯電話の画面・読書などの比較的近距離を長時間見ていた後、遠方を見ようとしても即座に調整が出来ずしばらく見づらいといった症状、また比較的明るい場所ではそれなりに近い距離も見えるが、暗い場所では遠距離もやや見づらいといった症状、特に近距離の場合には特有の見づらい傾向がさらに強くなったり、比較的暗い色の小物なども感知しづらくなるといった症状を併発する場合も多い。 |
老人性難聴 |
Presbycusis |
老人性難聴(ろうじんせいなんちょう)とは、加齢が原因の聴覚障害のことである。感音性難聴が多い。一般的には「耳が遠い」という言い方をする。
聴覚に関わる細胞の減少・老化により、聴力が低下する。通常は50歳を超えると聴力が急激に低下し、60歳以上になると会話の面で不便になり始める。しかし、進行状況は個人差が大きいので、40代で補聴器が必要になる人もいれば、80代を超えてもほとんど聴力が低下しない人もいる。
老人性難聴は、低音域ではあまり聴力の低下はないようである(とはいえ、進行すれば中・低音域もやや聞こえづらくなる場合も多い)が、高音域においての聴力低下が非常に顕著であり、そのため子音を含む人間の言葉(特に「あ」行や「さ」行が正しく聞き取れない事が多い)が聞き取りにくくなり、特に女性の声ではそれが顕著である。そのためドアの開く音とか車のエンジンの音、足音などといった物音に非常に鋭敏になるという特性もある。また雑踏の中などのように、複数の音が錯乱している中での会話などが聞きづらくなったり、レコードを掛けていたり、映画などを鑑賞中、音楽で高音域が聞こえづらくなり、ぼやけて聞こえるなどの現象も自覚するようになる。
補聴器をつける事で、会話の不便さはある程度改善される。また、老人性難聴がきっかけで手話を身に付ける老人はほとんどいない(0%に近い)。老化以外の原因で聴力が低下した『中途失聴』とは区別する。 |
老人性認知症 |
|
老人性認知症(ろうじんせいにんちしょう)は、認知症のうち、経年変化の寄与が多いと思われる状態。老年痴呆とも。
一般に脳及び精神に関する疾患は、患者本人の具体的意思を尊重し専門医が問診・診察及び診断をするが、このような疾患をもつ者は、その発言及び行動の一部、時として全てが、おおよそ一般の健康な状態の人たち(健康な状態かの解り易い判断は、向精神病薬を常用している期間や副作用などの不快感で決まる)からの視点を中心にみている現実がある為、患者本人の真意が治療の根幹に触れているとは限らない。
また、患者本人は、家族、親戚、社会などあらゆる環境と調和することにかなりの労力と精神力、生命力の全てを費やして生きようとしている。しかし、患者本人は、先に挙げた数多くの不快感などの為、現在自分が、不快感を持っていることをも認識できないことはよくある。不快感を不快であると感じることの出来る脳の仕組みも機能しない時がある。不快感が、最もわかりづらい病状として躁鬱病・適応障害などが挙げられる。一見、一聴すると元気に見える、落ち込んでいるように見えるだけと周りから見過ごされ、判断されてしまう。しかし、本人は、絶望的に孤立する日常の連続である。
また高齢者の場合、躁鬱病や適応障害が、老人性痴呆症などと誤診されてしまっている例がある。患者本人は、完全に近い状況で社会と自分の存在との間に大きな隔たりと絶望を日々感じて生きていかなければならないので、偶発的・自然的・突発的な自殺などのあり得る危険性に十分考慮し、優しく見つめ続け、患者本人の話していることや感じているものを正面から聴き受け入れることが治療の根本であり不可欠で基本的な姿勢である。また、このような疾患の人々の生活(衣食住・就学・就業・就労・婚姻などのあらゆる社会的な場面)で、信頼できる心の通じ合った人々が一人でも多くいると患者本人は救われやすいようである。
ビタミンB3(ナイアシン)を中心とした療法もカナダのホッファー博士を中心に広まりつつあるが、日本では自由診療の範囲の為、金銭的に諦めている患者も今なお数多く居る。 |
わ |
わきが⇒腋臭症 |
|
ワクチン |
Vaccine |
ワクチン(独: Vakzin、英:
vaccine)はヒトなどの動物に接種して感染症の予防に用いる医薬品。毒性を無くしたか、あるいは弱めた病原体から作られ、弱い病原体を注入することで体内に抗体を作り、以後感染症にかかりにくくする。弱いとはいえ病原体を接種するため、まれに体調が崩れることがある。
接種方法としては皮下注射、筋肉内注射が多いが、経口生ポリオワクチン(OPV)のように直接飲む(経口ワクチン)ものやBCGのようなスタンプ式のもの、変則的接種方法として、皮内注射などもある。
ワクチンを発見したのはイギリスの医学者、エドワード・ジェンナー。牛痘にかかった人間は天然痘にかからなくなる(またはかかっても症状が軽い)事を発見し、これにより天然痘ワクチンを作った。名前の由来はラテン語の「Vacca」(雌牛の意)から。その後、ルイ・パスツールが病原体の培養を通じてこれを弱毒化すれば、その接種によって免疫が作られると理論的裏付けを与え、応用の道を開いたことによって、さまざまな感染症に対するワクチンが作られるようになった。
ワクチンは大きく生ワクチンと不活化ワクチンに分かれる。
イギリス英語でヴァクスィン、アメリカ英語でヴァクスィーンと発音する。
『予防接種』も参照。 |
湾岸戦争症候群 |
Gulf
War
syndrome |
湾岸戦争症候群(わんがんせんそうしょうこうぐん:Gulf
War Syndrome)とは、1991年の湾岸戦争に従軍したアメリカ軍・イギリス軍等の多国籍軍兵士に、集団的に発生したとされる脱毛症・疲労感・痛み・記憶障害・倦怠感や関節痛などの一連の病状を総称したものである。また、帰還兵のみならず、出産異常や子供達の先天性障害の多発が報告されているとの説もあるが、原因の特定は現在に至るも出来ておらず、この症候群の存在そのものを疑う向きもある。
湾岸戦争終結後、帰還した米兵約70万人のうちの5000人から8万人が、症状に差はあるものの、疲労感・痛み・記憶障害・倦怠感や関節痛などの症状を発症した。また癌や白血病、子供の先天性障害が多発したとの説もあるが、根拠となる明確なデータが明らかにはなっていない。原因としてイラクの生物・化学兵器や伝染病、殺虫剤、油田火災の黒煙などが挙げられていたものの、国防総省はイラクによる生物・化学兵器の使用を否定していた。しかし、その後の国連による調査で、イラク南部の兵器庫にサリンが貯蔵されていたことが判明した為、1996年に米兵が被曝した可能性を認めた。
神経ガスの防御用に強制投与された試薬や生物兵器用の予防接種、油田の火災や大量の石油流出による大規模環境汚染、米軍が戦車の砲弾や装甲材に大量使用した劣化ウランによる放射線被爆など、他にも様々な原因が挙げられた。
しかしこれらの暴露はどれも原因や病気に結び付けるには無理があり(たとえば神経ガス対策に投与された薬は臭化ピリドスチグミンという重症筋無力症の治療薬であり、この薬を投与された人で同様の症状が起こっているという報告はない。他の説も同じである)、疫学調査は暴露集団において原因となる物質への明確な暴露も、これらの人々の間における死亡率の増加も見出していない。
また症状が上記のように、注意力低下や記憶障害、不眠、鬱、頭痛等の客観的に判断しにくいものが大半を占め研究を難しくしている。 |