数
字 |
0 |
0 |
文字 0 によって表されるものは、何もないことに対応する基数(自然数)であり、1 の直前なる序数(順序数)であって、最小の非負整数である。零(れい、ぜろ)、ゼロ(zero)、ヌル(null)、ノート(naught)、ニヒル(羅:
nihil)などと読まれる。また、文字の形状から、稀にまるあるいはオーなどのように呼ばれることもある。なお、日本の通話表においては、0は「数字のまる」と送られる。
数としての 0 は、整数全体、実数全体(あるいはもっと一般の数からなる代数系で)加法単位元としての役割を演じる。文字としての
0 の使用は位取りによる記数法におけるプレースホルダとして有用である。 |
あ |
アルキメデス |
Archimedes |
アルキメデス(紀元前287年 - 紀元前212年)は、古代ギリシアの数学者、物理学者、技術者、発明家、天文学者。彼の生涯は全容を掴めていないが、古典古代における第一級の科学者という揺ぎ無い評価を得ている。彼が物理学にもたらした革新は流体静力学の基礎となり、静力学の考察はてこの本質を説明した。彼は革新的な機械設計にも秀で、シージ・エンジンや彼の名を冠したアルキメディアン・スクリューなどでも知られる。また、数々の武器を考案したことでも知られる。
一般には、アルキメデスは史上まれな偉大なる古代の数学者という評価を受けている。級数を用いて放物線の面積を求める取り尽くし法、円周率の近似値計算、彼の名で「アルキメデスの螺旋」とも呼ばれる代数螺旋の定義、回転面(en)の体積の求め方や、大数の記数法も考案している。 |
エルミート行列 |
Hermitian
matrix |
数学においてエルミート行列とは、エルミート内積に関して自己共役(じこきょうやく)となる複素行列のことである。名称はシャルル・エルミートに由来する。 |
エルミート作用素 |
Self-adjoint
operator |
エルミート作用素(Hermitian
operator, Hermitian)または自己共役作用素(self adjoint operator)は、複素ヒルベルト空間上の線形作用素で、その共役作用素が自分自身に一致するようなもののことである。物理学ではエルミート演算子とも呼ばれる。エルミートという名称は、フランス人数学者シャルル・エルミートに因む。 |
円周率 |
Pi |
円の周長の直径に対する比率として定義される数学定数である。通常、ギリシア文字
π(パイ)で表される。数学をはじめ、物理学、工学といった様々な科学分野に出現し、最も重要な数学定数とも言われる。
円周率は無理数、つまりその小数展開は循環しない。小数点以下35桁までの値は次の通りである。
π = 3.14159 26535 89793 23846 26433 83279 50288 …
円周率は、無理数であるのみならず、超越数でもある。 |
オイラー、レオンハルト(1707〜1783) |
Leonhard
Euler |
レオンハルト・オイラー(1707年4月15日
- 1783年9月18日)は数学者・物理学者であり、天文学者(天体物理学者)である。微積分成立以後の18世紀の数学の中心となって、続く19世紀の厳密化・抽象化時代の礎を築いたとされる。スイスのバーゼルに生まれ、現在のロシアのサンクトペテルブルクにて死去した。 |
オイラーの公式 |
Euler's
formula |
数学、特に複素解析におけるオイラーの公式(Euler's formula、オイラーの恒等式とも)とは、指数関数と三角関数の間に成り立つ等式
eiθ = cosθ + i sinθ
をいう。ここに、θ は幾何学的には弧度法に従う角と見なされる実変数である。三角関数を複素変数に関する解析的関数と考えることで、この等式は
θ を複素変数と見ても成立している。レオンハルト・オイラーに帰せられるためこの名がある。この公式は初め、ロジャー・コーツ
によって1714年に提出されたが、その証明は曖昧なものだった。その後オイラーによって1748年に再発見され、有名になった。
この公式は複素解析をはじめとする純粋数学の様々な分野や、電気工学・物理学などで現れる微分方程式の解析において重要な役割を演じる。物理学者のリチャード・ファインマンはこの公式を評して「我々の至宝」かつ「すべての数学のなかでもっとも素晴らしい公式」だと述べている。
また、θ = π のとき、オイラーの等式と呼ばれる
eiπ + 1 = 0
が導かれる。 |
か |
外積
(⇔内積) |
|
物理数学における外積(がいせき) (exterior
product) とは、2つのベクトルの間に定義される二項演算およびそれによって得られる2階テンソル α∧βのことである。
発案者グラスマンにちなみグラスマン積
とも、記号からウェッジ積ともいう。交代律より、交代積、交テンソル積ともいう。
ベクトル空間 V に対し、その元の外積の集合
∧2V を(2階の)外積空間という。
3次元での外積は、クロス積とみなすことができる。 |
解析学(⇔幾何学、代数学) |
Mathematical
analysis |
解析学(analysis,mathematical
analysis)とは、極限や収束といった概念を扱う数学の分野である。代数学、幾何学と合わせ数学の三大分野をなす。
数学用語としての解析学は一般に使われる「複雑なものを細かく分けて調べる」という意味とは異なっており、初等的には微積分や級数などを用いて関数の変化量などの性質を調べる分野と言われることが多い。これは解析学がもともとテイラー級数やフーリエ級数などを用いて関数の性質を研究していたことに由来する。
例えばある関数の変数を少しだけずらした場合、その関数の値がどのようにどのぐらい変化するかを調べる問題は解析学として扱われる。
解析学の最も基本的な部分は、微分積分学、または微積分学と呼ばれる。また微分積分学を学ぶために必要な数学はprecalculus(calculusは微積分の意、接頭辞preにより直訳すれば微積分の前といった意味になる)と呼ばれ、現代日本の高校1、2年程度の内容に相当する。また解析学は応用分野において微分方程式を用いた理論やモデルを解くためにも発達し、物理学や工学といった数学を用いる学問ではよく用いられる数学の分野の一つである。
解析学は微積分をもとに、微分方程式や関数論など多岐に渡って発達しており、現代では確率論をも含む。
現代日本においては解析学の基本的分野は概ね高校2年から大学2年程度で習い、進度の差はあれ世界中の高校や大学等で教えられている。 |
ガウス、カール・フリードリヒ(1777〜1855) |
Carl
Friedrich
Gauss |
ヨハン・カール・フリードリヒ・ガウス(1777年4月30日 - 1855年2月23日)はドイツの数学者、天文学者、物理学者である。彼の研究は広範囲に及んでおり、特に近代数学のほとんどの分野に影響を与えたと考えられている。数学の各分野、さらには電磁気など物理学にも、彼の名が付いた法則、手法等が数多く存在する。19世紀最大の数学者の一人である。 |
幾何学(⇔解析学、代数学) |
Geometry |
図形や空間の性質について研究する数学の分野である。
もともと測量の必要上からエジプトで生まれたものだが、人間に認識できる図形に関する様々な性質を研究する数学の分野としてとくに古代ギリシャにて独自に発達し、これらのおもな成果はB.C.300年ごろユークリッドによってユークリッド原論にまとめられた。その後中世以降のヨーロッパにてユークリッド幾何学を発端とする様々な幾何学が登場することとなる。
幾何学というとユークリッド幾何学のような具体的な平面や空間の図形を扱う幾何学が一般には馴染みが深いであろうが、対象や方法、公理系などが異なる多くの種類の幾何学が存在し、現代においては微分幾何学や代数幾何学、位相幾何学などの高度に抽象的な理論に発達・分化している。
現代の日本の教育では、体系的な初等幾何学はほぼ根絶された。 |
逆行列⇒正則行列 |
|
|
行列 |
Matrix |
数学の線型代数学周辺分野における行列は、数や記号や式などを「行」と「列」に沿って矩形状に配列したものである。並べられた個々のものはその行列の「要素」または「成分」と呼ぶ。同じサイズ(あるいは型)の行列は加法と減法が成分ごとの計算によって与えられる。行列の乗法の計算はもっと複雑で、二つの行列がかけ合わせられるためには、積の左因子の列の数と右因子の行の数が一致していなければならない。
行列の応用として顕著なものは一次変換の表現である。一次変換はf
(x ) = 4x のような一次函数の一般化で、例えば三次元空間におけるベクトルの回転などは一次変換であり、R
が回転行列で
v が空間の点の位置を表す列ベクトル(一列しかない行列)のとき、積 R v
は回転後の点の位置を表す列ベクトルになる。また二つの行列の積は、二つの一次変換の合成を表現するものとなる。行列の別な応用としては、連立一次方程式の解法におけるものである。行列が正方行列であるならば、そのいくつかの性質は、行列式を計算することによって演繹することができる。例えば、正方行列が正則であるための必要十分条件は、その行列式の値が非零となることである。固有値や固有ベクトルは一次変換の幾何学に対する洞察を与える。
行列の応用は科学的な分野の大半に及び、特に物理学において行列は、電気回路、光学、量子力学などの研究に利用される。コンピュータ・グラフィックスでは三次元画像の二次元スクリーンへの投影や
realistic-seeming motion を作るのに行列が用いられる。行列微分学(英語版)は、古典的な解析学における微分や指数函数の概念を高次元へ一般化するものである。
主要な数値解析の分野は、行列計算の効果的なアルゴリズムの開発を扱っており、主題は何百年にもわたって今日では研究領域も広がっている。行列の分解は、理論的にも実用的にも計算を単純化するもので、アルゴリズムは正方行列や対角行列などといった行列の特定の構造に合わせて仕立てられており、有限要素法やそのほかの計が効率的に処理される。惑星運動論や原子論では無限次行列が現れる。函数のテイラー級数に対して作用する微分の表現行列は、無限次行列の簡単な例である。
さまざまな行列
行列サイズによる分類 |
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行列成分が特別な形の行列 |
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作用素による作用を受けた行列 |
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対称性がある行列 |
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群を構成する行列 |
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行列式 |
Determinant |
数学における行列式とは、正方行列に対して定義される量で、歴史的には行列が表す一次方程式の可解性を判定する指標として導入された。幾何的には線型空間上の自己準同型に対して定義され、線型変換によって空間の体積要素が何倍に変わるかという概念を抽象化したものと見なすことができる。行列の可逆性を判定する指標として線型代数学における最も重要な指標の一つと見なされている。 |
極座標系 |
Polar
coordinate
system |
n 次元ユークリッド空間
Rn 上で定義され、1 個の動径 r と n
− 1 個の偏角 θ1,
…, θn−1 からなる座標系のことである。点
S(0, 0, x3,
…,xn)
を除く直交座標は、局所的に一意的な極座標に座標変換できるが、S
においてはヤコビアン
が 0 となってしまうから、一意的な極座標表現は不可能である。それは、S に於ける偏角が定義できないことからも明らかである。 |
虚数
⇔実数 |
Imaginary
number |
実数ではない複素数のことである。ただし、しばしば「虚数」と訳される
imaginary number は、「2乗した値がゼロを超えない実数になる複素数」として定義される場合がある。i
または j で表される虚数単位は代表的な虚数の例である。
1572年にラファエル・ボンベリ
は虚数を定義した。しかし当時は、ゼロや負の数ですら架空のもの、役に立たないものと考えられており、負の数の平方根である虚数は尚更であった。ルネ・デカルトも否定的にとらえ、著書『La
Geometrie(最初と二番目のeの頭に´)(幾何学)』で「想像上の数 (フランス語: nombre imaginaire)」と名付け、これが英語のimaginary numberの語源になった。その後徐々に多くの数学者に認知されていった。虚数という訳語は19世紀までには中国で使われており、その後日本に輸入された言葉である。 |
虚数単位 |
Imaginary
unit |
−1 の平方根(2乗して
−1 になる数)である2つの数のうちの1つのことである(どちらかを特定することはできない)。そのような数を記号で i
または で表す。
任意の実数の2乗は0以上なので、虚数単位は実数でない。
虚数単位の記号 i は imaginary の頭文字から採られている。ただし、i
を別の意味(電流など)の記号として使う場合は、虚数単位を j などで表すことがある(どの文字を用いるかは自由である。その場合にはどの文字を用いるかを初めに必ず宣言する)。
積の交換法則が成り立たないことを許容すると、異なる3個以上の虚数単位からなる数の体系(非可換体)を考えることができる。3個の虚数単位の場合は
i,j,k、7つ以上の虚数単位の組には i1 ,i2 ,... といったように一つずつ添字を付けて表すことが多い。 |
空間ベクトル |
Euclidean
vector |
ベクトル(Vektor, vector。ラテン語:
vector 「運搬者、運ぶもの」より)は、大きさと向きを持った量である。ベクタ、ベクターともいう。漢字では有向量と表記される。ベクトルで表される量をベクトル量と呼ぶ。
例えば、速度や加速度、力はベクトルである。平面上や空間内の矢印(有向線分)として幾何学的にイメージされる。ベクトルという用語はハミルトンによってスカラーなどの用語とともに導入された。スカラーはベクトルとは対比の意味を持つ。 |
クラメルの公式 |
Cramer's
rule |
線型代数学におけるクラメルの法則あるいはクラメルの公式(クラメルの規則)は、未知数の数と方程式の本数が一致し、かつ一意的に解ける線型方程式系の解を明示的に書き表す行列式公式である。これは、方程式の解を正方係数行列とその各列ベクトルを一つずつ方程式の右辺のベクトルで置き換えて得られる行列の行列式で表すものになっている。名称はガブリエル・クラーメル (1704--1752) に因むもので、クラーメルは任意個の未知数に関する法則を1750年に記している。なお特別の場合に限れば、コリン・マクローリンが1748年に公表している(また、恐らくはそれを1729年ごろにはすでに知っていたと思われる)。 |
クロス積(→外積) |
Cross
product |
クロス積(外積)、ベクトル積(vector product)とは、ベクトル解析において、2
つの3次元ベクトル
a と b に対して定義される演算 a × b である。これは、外積の3次元での特殊ケースである。 |
群論 |
Group
theory |
群論とは、群を研究する学問。
群の概念は抽象代数学における中心的な概念。
環・体・ベクトル空間などは、演算や公理が付与された群と看做すことができる。
群論の方法は代数学の大部分に強い影響を与えている。
線形代数群とリー群の理論は群論の一分野。
特に発展を遂げており、独自の適用範囲を持っている。
結晶や、水素原子などの構造の多くは、対称性の群(symmetry
group)で表現できる。このように、群論は、物理学や化学の中に多くの実例・応用例がある。
1960年代〜80年代に発表された総計1万ページを超える論文によって、完全な有限単純群の分類(classification
of finite simple groups)が達成された。これは多くの数学者の共同作業の賜物であり、20世紀の数学の最も重要な業績の一つ。 |
公理 |
Axiom |
その他の命題を導きだすための前提として導入される最も基本的な仮定のことである。一つの形式体系における議論の前提として置かれる一連の公理の集まりを公理系(Axiomatic system)という。公理を前提として演繹手続きによって導きだされる命題は定理とよばれる。多くの文脈で「公理」と同じ概念をさすものとして仮定や前提という言葉も並列して用いられている。
公理とは他の結果を導きだすための議論の前提となるべき論理的に定式化された(形式的な)言明であるにすぎず、真実であることが明らかな自明の理が採用されるとは限らない。知の体系の公理化は、いくつかの基本的でよく知られた事柄からその体系の主張が導きだせることを示すためになされることが多い。
なお、ユークリッド原論などの古典的な数学観では、最も自明(絶対的)な前提を公理、それに準じて要請される前提を公準(Postulate)として区別していたが、19世紀以降、数学の形式化が進むにつれ、両者はあまり厳密には区別されなくなっている。 |
さ |
自然数 |
Natural
number |
個数、もしくは順番(これは正確には有限順序数)を表す一群の数のことである。 |
実数
⇔虚数 |
Real
number |
数学における実数は、様々な量の連続的な変化を表す数の体系である。実数全体の空間は、途切れのなさにあたる完備性とよばれる位相的性質を持ち、代数的には加減乗除ができるという体の構造を持っている。幾何学や解析学ではこれらのよい性質を利用して様々な対象が定義され、研究されている。一方でその構成方法に自明でない手続きが含まれるため、実数の空間は数学基礎論の観点からも興味深い性質を持っている。また、自然科学における連続的なものの計測値を表すのに十分な数の体系だとも考えられている。
実数の概念は、その形式的な定義が19世紀に達成される前から数の体系として使われていた。「実数」という名前は複素数の概念が導入された後に「普通の数」を表す言葉として導入されたものである。 |
写像 |
Map |
写像(mapping, map)とは、二つの集合が与えられたときに、一方の集合の各元に対し、他方の集合のただひとつの元からなる集合を指定して結びつける対応のことである。函数、変換、作用素、射などが写像の同義語として用いられることもある。
ブルバキに見られるように、写像は集合とともに現代数学の基礎となる道具の一つである。圏と関手を縦横に駆使する最先端の数学を除けば、現代数学のほとんどが、集合と写像の言葉で書かれているといっても良いほどである。なお、分野によっては慣例として、「射(map)」という用語が、ある特定の写像を意味することもある(例:位相幾何学においては連続関数、線形代数においては線形写像など)。
現代的な立場では、「写像」と「函数」は論理的におなじ概念を表すものと理解されているが、歴史的には「函数」の語は解析学に出自を持つものであり、一部には必ずしも写像でないものも函数の名の下におなじ範疇に扱われる(多価函数参照)。日本語においてはその語感もあって(解析学の興味の対象となる)「数を値域に持つ写像」をして特に函数と呼ぶという傾向は現代においても根強い。函数、二項関係、対応の各項も参照のこと。 |
集合 |
Set |
数学における集合とは、大雑把に言えばいくつかの「もの」からなる「集まり」である。集合を構成する個々の「もの」のことを元(げん、element; 要素)という。
集合は、集合論のみならず現代数学全体における最も基本的な概念の一つであり、現代数学のほとんどが集合と写像の言葉で書かれていると言ってよい。
慣例的に、ある種の集合が系(けい、system)や族(ぞく、family)などと呼ばれることもある。実際には、これらの呼び名に本質的な違いはないが細かなニュアンスの違いを含むと考えられている。たとえば、方程式系(「相互に連立する」方程式の集合)、集合族(「一定の規則に基づく」集合の集合)、加法族(「加法的な性質を持つ」集合族)など。 |
小数 |
Decimal
representation |
小数(decimal)とは、位取り記数法と小数点を用いて実数を表現するための表記法である。 |
情報量(エントロピーは本サイトの『化学』参照) |
Entropy
(information
theory) |
情報量(エントロピーとも)は、情報理論の概念で、あるできごと(事象)が起きた際、それがどれほど起こりにくいかを表す尺度である。ありふれたできごと(たとえば「風の音」)が起こったことを知ってもそれはたいした「情報」にはならないが、逆に珍しいできごと(たとえば「曲の演奏」)が起これば、それはより多くの「情報」を含んでいると考えられる。情報量はそのできごとが本質的にどの程度の情報を持つかの尺度であるとみなすこともできる。
なおここでいう「情報」とは、あくまでそのできごとの起こりにくさ(確率)だけによって決まる数学的な量でしかなく、個人・社会における有用性とは無関係である。たとえば「自分が宝くじに当たった」と「見知らぬAさんが宝くじに当たった」は、前者の方が有用な情報に見えるが、両者の情報量は全く同じである(宝くじが当たる確率は所与条件一定のもとでは誰でも同じであるため)。 |
数学者(⇒数学者の一覧) |
Mathematician |
数学に属する分野の事柄を第一に調査研究する者を指していう呼称である。数学者が扱うものは、論理、数、空間と変換といったものに関する問題や概念、あるいはさらにそのようなものを扱うためのさらに一般かつ抽象的な概念や操作およびそれらに関する問題などである。
また、理論物理学者エドワード・ウィッテンのように、数学との学際領域での研究を行う一部の科学者が、その数学的成果を以って数学者(多くは応用数学者)としても扱われる場合がある(古くは、現在では天文学者と理解されるような仕事を成した者たちの多くは、数学者との区別が付かないほど両者の対象とする領域は近いところにあるものであった) |
スカラー |
Scalar |
大きさのみを持つ量のことをいう。大きさと向きを持つベクトルに対比する概念である。ハミルトンは、「1つのスケール上に含まれるマイナス無限大からプラス無限大までの、すべての数値」と表現した。
例えば物体が空間内を運動するときの速度が大きさと方向を含むベクトルであるのに対し、その絶対値(大きさ)である速さは方向を持たないスカラーである。他にも時間、質量、長さ、エネルギー、電荷、温度などはスカラー量である。いっぽうベクトル量の代表的なものは力、電界、運動量などである。無次元量はスカラー量として扱う。 |
スピノール |
Spinor |
数学および物理学におけるスピノール(spinor、スピノル、スピナー)とは、特に直交群の理論に於いて空間ベクトルの概念を拡張する目的で導入された複素ベクトル空間の元 (数学)
のことである。これらが必要とされるのは、与えられた次元における回転群の全体構造を見るためには余分の次元を必要とするからである。
もっと形式的に、スピノルは与えられた二次形式付きベクトル空間から、代数的なあるいは量子化の手続きを用いることで構成される幾何学的な対象として定義することもできる。与えられた二次形式は、スピノルのいくつかことなる型を記述するかも知れない。与えられた型のスピノル全体の成す集合は、それ自身回転群の作用を持つ線型空間であるが、作用の符号について曖昧さがある。それゆえに、スピノル全体の空間は回転群の射影表現を導く。符号の曖昧さは、スピノル全体の空間を、スピン群
Spin(n) のある線型表現と見なすことによって除くこともできる。この形式的な観点では、スピノールについての多くの本質的で代数的な性質が(空間幾何での話に比べて)よりはっきり見て取れるが、もとの空間幾何との繋がりはわかりにくい。他にも、複素数スカラーの使用が最小限に押さえられる。
一般のスピノルは、1913年にエリ・カルタンによって発見された。後に、スピノールは、電子や他のフェルミ粒子の内在する角運動量、即ちスピン角運動量の性質を研究するために、量子力学に適用された。今日、スピノールは物理学の様々な分野で用いられている。古典的に、三次元のスピノール(spinors
in three dimensions)が非相対論的な電子のスピンを記述するのに用いられた。ディラック方程式では、相対論的な電子の量子状態を数学的に記述する際に、ディラック・スピノールが必須となる。場の量子論では、相対論的な多粒子系の状態は、スピノールで記述される。
数学、殊に微分幾何学および大域解析において、スピノルが発見されて以来、代数的位相幾何学・微分位相幾何学、斜交幾何学、ゲージ理論、複素代数幾何、指数定理、および特殊ホロノミー
などに対して幅広い応用がなされている。 |
整数 |
Integer |
数学における整数(integer,
whole number)は、0 とそれに 1 ずつ加えていって得られる自然数
(1, 2, 3, …) および 1 ずつ引いていって得られる数 (−1, −2, −3, …) の総称である。 |
正則行列 |
Invertible
matrix |
正則行列(せいそくぎょうれつ、regular
matrix (こう呼ばれることは稀である))、非特異行列(non-singular matrix)あるいは可逆行列(invertible matrix)とは行列の通常の積に関する逆元である逆行列(inverse
matrix)を持つ正方行列のことである。
ある体上の同じサイズの正則行列の全体は一般線型群 GL と呼ばれる群を成し、その成分の代数的な関係式によって定められる部分群は線形代数群あるいは行列群と呼ばれる代数群の一種で、その表現論が代数的整数論などに広い応用を持つ幾何学的対象である。 |
正方行列(→行列) |
Square
matrices |
正方行列(せいほうぎょうれつ、square
matrix)とは、行要素の数と列要素の数が一致する行列である。サイズが
n × n つまり、n 行 n 列であるとき、n 次正方行列という。 |
関孝和(1642〜1708) |
Seki
Takakazu |
関 孝和(せき たかかず/こうわ、寛永19年(1642年)3月?
- 宝永5年10月24日(1708年12月5日))は、日本の江戸時代の和算家(数学者)である。本姓は藤原氏。旧姓は内山氏、通称新助。字は子豹、自由亭と号した。 |
積分法 |
Integral |
その逆の操作である微分法と共に、微分積分学で対になる主要な2つの演算である。 |
絶対値 |
Absolute
value |
数学において、絶対値は数の「大きさ」の概念を与える規準の一つである。その数が
0 からどれだけ離れているかを知ることができる。 |
線型代数学 |
Linear
algebra |
行列や行列式に関する理論を体系化した代数学の一分野である。線形などの用字・表記の揺れについては線型性を参照。 |
た |
対角行列(→正方行列→行列) |
Diagonal
matrix |
数学、特に線型代数学において、対角行列(diagonal matrix)とは、正方行列であって、その対角成分((i,
i )-要素)以外が零であるような行列のことである。
この対角行列は、クロネッカーのデルタを用いて
(ci δij ) と表現できる。また、しばしば
diag (c1 , c2 , ... , cn )
のようにも書かれる。
単位行列やスカラー行列は対角行列の特殊例である。 |
代数学(⇔解析学、幾何学) |
Algebra |
数学の一分野で、「代数」
の名の通り数の代わりに文字を用いて方程式の解法を研究する学問として始まった。その意味では代数学という命名は正鵠を射ている。しかし19世紀以降の現代数学においては、ヒルベルトの公理主義やブルバキスタイルに見られるように、代数学はその範囲を大きく広げているため、「数の代わりに文字を用いる数学」や「方程式の解法の学問」という理解の仕方は必ずしも適当ではない。現代数学においては、方程式の研究は方程式論(代数方程式論)という代数学の古典的一分野として捉えられている。現在は代数学と言えば以下の抽象代数学をさすのが普通である。
現代代数学は、一般的に代数系を研究する学問分野であると捉えられている。以下に示す代数学の諸分野の名に現れる半群・群・環・多元環(代数)・体・束は代数系がもつ代表的な代数的構造である。
群・環・多元環・体の理論はガロアによる代数方程式の解法の研究などに起源があり、束論はブールによる論理学の数学的研究などに起源がある。
半群は、群・環・多元環・体・束に共通する最も原始的な構造である。
現代日本の大学では、1, 2 年次に微分積分学と並んで、行列論を含む線型代数学を教えるが、線型代数学は線型空間という代数系を対象とすると共に、半群・群・環・多元環・体と密接に関連し、集合論を介して、また公理論であるために論理学を介して、束とも繋がっている。
現代ではまた、代数学的な考え方が解析学・幾何学等にも浸透し、数学の代数化が各方面で進んでいる。ゆえに、代数学は数学の諸分野に共通言語を提供する役割もあるといえる。 |
テイラー展開 |
Taylor
series |
テイラー展開(Taylor expansion)とは、無限回微分可能な関数
f (x ) から、テイラー級数(Taylor
series)と呼ばれる、負冪の項を持たない冪級数を得ることを言う。名称は数学者ブルック・テイラーに由来する。冪級数展開とも呼ばれる。 |
定理 |
Theorem |
数理論理学および数学において、証明された真なる命題をいう。
文脈によっては公理も定理に含む。また、数学においては論説における役割等から、補題(lemma, 補助定理とも)、系(corollary)、命題(proposition)などとも呼ばれることがある。ここでの命題と冒頭文に言う命題とは意味が異なることに注意いただきたい。
一般的に定理は、まずいくつかの条件を列挙し、次にその下で成り立つ結論を述べるという形をしている。 例えば、次は代数学の基本定理の述べ方の1つである。
(仮定、前提条件)f (X ) が複素数係数の多項式である
ならば (結論) f (X ) は複素数の中に根を持つ。
ある一定の条件(公理系)下で定理を述べそれを証明すること、というのが数学という分野の中心的な研究の形態である。
数学の多くの分野には、各々「基本定理」という名で呼ばれる中心的な定理が存在している。なお定理という名称と証明という手続きは、数学のみならず、物理や工学においても使用される。 |
デカルト、ルネ(1596〜1650) |
Rene
(後ろのeの頭に´)
Descartes |
ルネ・デカルト(1596年3月31日 - 1650年2月11日)は、フランス生まれの哲学者、数学者。合理主義哲学の祖であり、近世哲学の祖として知られる。 |
テンソル |
Tensor |
線形的な量または線形的な幾何概念を一般化したもので、基底を選べば、多次元の配列として表現できるようなものである。しかし、テンソル自身は、特定の表示系によらないで定まる対象である。個々のテンソルについて、対応する量を記述するのに必要な配列の添字の組の数は、そのテンソルの階数とよばれる。
例えば、質量や温度などのスカラー量は階数0のテンソルだと理解される。同様にして力や運動量などのベクトル的な量は階数1のテンソルであり、力や加速度ベクトルの間の異方的な関係などをあらわす線型変換は階数2のテンソルで表される。
物理学や工学においてしばしば「テンソル」と呼ばれているものは、実際には位置や時刻を引数としテンソル量を返す関数である「テンソル場」であることに注意しなければならない。いずれにせよテンソル場の理解のためにはテンソルそのものの概念の理解が不可欠である。 |
特殊関数 |
Special
functions |
何らかの名前や記法が定着している関数であり、解析学、関数解析学、物理学、その他の応用分野でよく使われる関数であることが多い。
何が特殊関数であるかのはっきりした定義は存在しないが、しばしば特殊関数として扱われるものには、ガンマ関数、ベッセル関数、ゼータ関数、楕円関数などがある。一般には初等関数の対義語ではなく、ある関数が初等関数であって同時に特殊関数とされる場合もある。 |
ドット積(→内積) |
Dot
product |
数学あるいは物理学においてドット積(点乗積)とは、ベクトル演算の一種で、(デカルト座標の入った)ユークリッド空間
R3(あるいは Rn)において標準的に定義される内積のことである。 |
な |
内積
(⇔外積) |
Inner
product
space |
数学において、内積(ないせき、inner product)とは、ベクトル空間上で定義される非退化(かつ正定値の)対称双線型形式あるいはエルミート双線型形式のことである。二つのベクトルに対してある数(スカラー)を定める演算であるためスカラー積(scalar product)ともいう。
デカルト平面または3次元空間における幾何ベクトルの内積(点乗積)についてはドット積を参照。 |
ナブラ |
Del |
ベクトル解析における演算子
∇(ナブラ、nabla, del)は、ベクトル微分演算を表し、特に一次元の領域で定義された函数に施すとき、微分積分学で定義される通常の微分
D = d /dx と同じになる。多次元の領域上で定義された場に施すときには、スカラー場の勾配
grad や、ベクトル場に対しては作用のさせ方により回転
curl や発散
div を与えたりする。
厳密に言えば、∇ は特定の作用素を意味するのではなくて、いま挙げたような演算に対する簡便記法と考えるべきであって、これにより様々な等式が覚え易く書き易いものとなる。∇
を偏微分作用素を成分とするベクトルと解釈すれば、三種の演算
grad, div, curl(またはrot)
は、場と ∇ とのそれぞれスカラー倍、点乗積、交叉積を形式的に取ったものと見做すことができる。これらの形式的な積が、必ずしも他の作用素や積と可換であることは要求されない。 |
二項定理 |
Binomial
theorem |
二項式
x + y の冪乗
(x + y )n の展開(二項展開)を表す公式のことである。これは、この展開の一般項 xkyn-kの係数を
n と k のみで表す定理であるということもできる。二項定理はペルシアの科学者ウマル・ハイヤームによって発見された。 |
ニュートン、アイザック(1642〜1727) |
Isaac
Newton |
サー・アイザック・ニュートン(Sir
Isaac Newton, ユリウス暦:1642年12月25日
- 1727年3月20日、グレゴリオ暦:1643年1月4日
- 1727年3月31日)は、イングランドの哲学者、自然哲学者、数学者。神学者。
ニュートン力学を確立し、古典力学や近代物理学の祖となった。古典力学は自然科学・工学・技術の分野の基礎となるものであり、近代科学文明の成立に影響を与えた。 |
は |
パスカル、ブレーズ(1623〜1662) |
Blaise Pascal |
ブレーズ・パスカル(1623年6月19日
- 1662年8月19日)は、フランスの哲学者、自然哲学者(近代的物理学の先駆)、思想家、数学者、キリスト教神学者である。
早熟の天才で、その才能は多分野に及んだ。ただし、短命であり、三十代で逝去している。死後『パンセ』として出版されることになる遺稿を自身の目標としていた書物にまとめることもかなわなかった。
「人間は考える葦である」などの多数の名文句やパスカルの賭けなどの多数の有名な思弁がある遺稿集『パンセ』は有名である。その他、パスカルの三角形、パスカルの原理、パスカルの定理などの発見で知られる。ポール・ロワヤル学派に属し、ジャンセニスムを代表する著作家の一人でもある。
かつてフランスで発行されていた500フラン紙幣に肖像が使用されていた。 |
ピタゴラス |
Pythagoras |
ピタゴラス(紀元前582年 - 紀元前496年)は、ピタゴラスの定理などで知られる、古代ギリシアの数学者、哲学者。彼の数学や輪廻転生についての思想はプラトンにも大きな影響を与えた。「サモスの賢人」、「クロトンの哲学者」とも呼ばれた。古代ギリシア語の発音により忠実に表記するならばピュタゴラス、ピュータゴラースとなる。 |
微分幾何学 |
Differential
geometry |
数学における微分幾何学とは微分を用いた幾何学の研究である。また、可微分多様体上の微分可能な関数を取り扱う数学の分野は微分位相幾何学(differential topology)とよばれることがある。微分方程式の研究から自然に発生したこれらの分野は互いに密接に関連しており、特に一般相対性理論をはじめとして物理学に多くの応用がある。これらは可微分多様体についての幾何学を構成しているが、力学系の視点からも直接に研究される。 |
微分積分学 |
Calculus |
解析学の基本的な部分を形成する数学の一分野である。微分積分学は、局所的な変化を捉える微分と局所的な量の大域的な集積を扱う積分の二本の柱からなり、分野としての範囲を確定するのは難しいが、大体多変数実数値関数の微分と積分に関わる事柄(逆関数定理やベクトル解析も)を含んでいる。
微分は、ある関数のある点での接線、或いは接平面を考える演算である。数学的に別の言い方をすると、基本的には複雑な関数を線型近似して捉えようとする考え方である。従って、微分は線型写像になる。(但し多変数関数の微分を線型写像として捉える考え方は 20世紀に入ってからのものである)。微分方程式はこの考え方の自然な延長にある。
対して積分は、幾何学的には、曲線、あるいは曲面と座標軸とに挟まれた領域の面積(体積)を求めることに相当している。ベルンハルト・リーマンは(一変数の)定積分の値を、長方形近似の極限として直接的に定義し、連続関数は積分を有することなどを証明した。彼の定義による積分をリーマン積分と呼んでいる。
微分と積分はまったく別の概念でありながら密接な関連性を持ち、一変数の場合、互いに他の逆演算としての意味を持っている。(微分積分学の基本定理) |
微分積分学の基本定理 |
Fundamental
theorem
of calculus |
「微分と積分が互いに逆の操作・演算である」
ということを主張する解析学の定理である。微分積分法の基本定理ともいう。ここで「積分」は、リーマン積分のことを指す。
この事実こそ、発見者のニュートンやライプニッツらを微分積分学の創始者たらしめている重要な定理である。
この定理は主に一変数の連続関数など素性の良い関数に対するものである。これを多変数(高次元)の場合に拡張する方法は一つではないが、ベクトル解析におけるストークスの定理はその一例として挙げられるだろう。また、どの程度病的な関数について定理が成り立つのかというのも意味のある疑問であるといえる。
現在では微分積分学の初期に学ぶ基本的な定理であるが、この定理が実際に発見されたのは比較的最近である。この定理が発見されるまでは、微分法と積分法はなんの関連性も無い全く別の計算だと考えられていた。 |
微分法 |
Derivative |
数学、とくに解析学における微分法(differentiation, derivation)は、空間やその上に定義される関数・写像を各点の近傍で考え、その局所的な振舞いを調べることによって、それらの特徴を記述する方法である。積分法と並んで、解析学における中心的な概念のうちの一つとなっている。微分においては、特定の無限小を基準にして挙動を測っており、考えている無限小よりも高位の無限小についての情報は測り取れずに落ちてしまうため、ある量の微分は基準となる無限小に対して線型性を示し、やや大域的には考えている点の近傍の線型近似として捉えられる。微分から大域的な情報を得るには、貼り合せ条件や積分といった別の手段をきちんと考える必要がある。 |
微分方程式 |
Differential
equation |
未知関数とその導関数の関係式として書かれている関数方程式である。主に、一変数関数の導関数の関係式で書かれる常微分方程式 (O.D.E.) と多変数関数の偏導関数を含む関係式で書かれる偏微分方程式
(P.D.E.) に分かれる。
微分方程式は、物理法則としての基礎方程式として生まれた。微分方程式論は解析学の中心的な分野で、フーリエ変換、ラプラス変換等はもともと微分方程式を解くために開発された手法である。また物理学における微分方程式の主要な問題は初期値問題、境界値問題、固有値問題である。
未知関数とその導関数の関係式が、未知関数や導関数を変数と見たときに解析関数を係数とする多項式である場合、代数的微分方程式と呼ばれる。
微分方程式に含まれる導関数の次数の内、最も高いものが n 次である場合、n 階微分方程式といい、nを階数という。
いずれの場合も未知関数は一つとは限らず、また、連立する複数の微分方程式を同時に満たす関数を解とするような連立方程式の形を取る場合もある。n
階連立常(偏)微分方程式などと呼ばれる。
微分方程式が、既知の関数(定数関数でもよい)を係数とする未知関数、導関数、定数項
1 の線型結合で書かれている時、これを線型微分方程式と呼び、そうでない場合は非線型微分方程式と呼ぶ。微分方程式を線型か非線形かで分類することもある。
また、線形微分方程式の内、定数項 1 の係数が 0 である場合は斉次方程式、そうでない場合は非斉次方程式と呼ぶ(斉次・非斉次ではなく、同次・非同次で呼ばれる場合もある)。
線型微分方程式の研究は歴史が長くヘルマンダー等がそのひとつの頂点であろう。それに比して、非線型微分方程式の研究は歴史が浅く比較的簡単な方程式しか解析できていない。例えばナビエ-ストークスの式は、流体の支配方程式として重要であるが、その解の存在性は未解決問題でありミレニアム懸賞問題にも選ばれている。 |
ヒルベルト空間 |
Hilbert
space |
数学におけるヒルベルト空間は、ダフィット・ヒルベルトにその名を因む、ユークリッド空間の概念を一般化したものである。これにより、二次元のユークリッド平面や三次元のユークリッド空間における線型代数学や微分積分学の方法論を、任意の有限または無限次元の空間へ拡張して持ち込むことができる。ヒルベルト空間は、内積の構造を備えた抽象ベクトル空間(内積空間)になっており、そこでは角度や長さを測るということが可能である。ヒルベルト空間は、さらに完備距離空間の構造を備えている(極限が十分に存在することが保証されている)ので、その中で微分積分学がきちんと展開できる。 |
フェルマー、ピエール・ド(1608〜1665) |
Pierre
de Fermat |
ピエール・ド・フェルマー(1607年末または1608年初頭-
1665年1月12日)はフランスの数学者。「数論の父」とも呼ばれる。ただし、職業は弁護士であり、数学は余暇に行ったものである。 |
複素解析 |
Complex
analysis |
数学の分科である複素解析(complex analysis)とは、複素数の関数に関わる微分学、積分学、変分学、微分方程式論、積分方程式論、関数論などの総称である。初等教育で扱う実関数の解析に対比して複素解析というが、現代数学の基礎が複素数であることから、単に解析といっても複素解析を意味することが多い。複素解析の手法は応用数学を含む数学、理論物理学、工学などの多くの分野でもちいられている。 |
複素数 |
Complex
number |
実数
a, b と虚数単位
i を用いて a + bi と表せる数のことである。四元数、八元数、十六元数などに対して二元数と呼ばれることもある。 |
複素平面 |
Complex
plane |
複素平面(complex plane)は、数学における複素数の幾何学的表現である。複素平面とは、直交座標
(x, y ) の位置に複素数 x + iy を対応させた平面のことである。これは、数直線の拡張になっている。x
軸を実軸 (real axis)、y
軸を虚軸 (imaginary axis) と呼ぶ。
複素平面を利用すると、複素数の極座標による表示である極形式を幾何学的にとらえることができる。とくに、「積の偏角は偏角の和に等しい」という性質を視覚化してとらえることができる。
また、平面幾何学における反転についても、複素平面上で考えると
という比較的簡単な変換式でとらえることができるという利点がある。
無限遠点
∞ を追加して1点コンパクト化するとリーマン球面が得られる。複素平面よりもリーマン球面の方がとらえやすくなる場合もある(代数学の基本定理の証明など)。 |
フーリエ級数 |
Fourier
series |
複雑な周期関数や周期信号を、単純な形の周期性をもつ関数の(無限の)和によって表す方法である。フーリエ級数は、フランスの数学者ジョゼフ・フーリエによって金属板の中での熱伝導に関する研究の中で導入された。
熱伝導方程式は、偏微分方程式として表される。フーリエの研究の前までには、一般的な形での熱伝導方程式の解法は知られておらず、熱源が単純な形である場合、例えば正弦波などの場合の特別な解しかえられていなかった。この特別な解は現在では固有解と呼ばれる。フーリエの発想は、複雑な形をした熱源をサイン波、コサイン波の和として考え、解を固有解の和として表すものであった。
この重ね合わせがフーリエ級数と呼ばれる。
最初の動機は熱伝導方程式を解くことであったが、数学や物理の他の問題にも同様のテクニックが使えることが分かり様々な分野に応用されている。
フーリエ級数は、電気工学、振動の解析、音響学、光学、信号処理、量子力学および経済学などの分野で用いられている。 |
フーリエ変換 |
Fourier
transform |
数学においてフーリエ変換は実変数の複素または実数値函数を別の同種の函数に写す変換である。変換後の函数はもとの函数に含まれる周波数を記述し、しばしばもとの函数の周波数領域表現
(frequency domain representation) と呼ばれる。これは、演奏中の音楽を聴いてそれをコードに書き出すというようなことと同様な思想である。実質的に、フーリエ変換は函数を振動函数に分解する。フーリエ変換
(FT) は他の多くの数学的な演算と同様にフーリエ解析の主題を成す。特別の場合として、もとの函数とその周波領域表現が連続かつ非有界である場合を考えることができる。「フーリエ変換」という術語は函数の周波数領域表現のことを指すこともあるし、函数を周波数領域表現へ写す変換の過程・公式を言うこともある。 |
冪乗 |
Exponentiation |
冪乗(べきじょう)、または累乗(るいじょう)は、ある一つの数同士を繰り返し掛け合わせるという操作のこと、あるいはそれによって得られる数のことである。単に冪ともいう。
「冪」の文字はもともと「覆う、覆うもの」という意味の漢字である。江戸時代の和算家は略字として「巾」を用いた。常用漢字・当用漢字に含まれなかったことから1950年代以降、出版物などでは仮名書きまたは「累乗」への書き換えが進められた。結果として初等数学の教科書ではもっぱら「累乗」が用いられ、「冪」や「冪乗」という用語は排除されたが、一方で「降べき順」「昇べき順」というような用語の一部としては残ったままになっており問題視されている。今日では表現はほぼ「累乗」に統一されている。 |
ベクトル |
Vector |
|
ベクトル解析
→空間ベクトル |
Vector
calculus |
主に空間のベクトルを用いた解析学。ベクトル値関数の微分積分学を展開する数学の分野の一部である。 |
偏微分 |
Partial
derivative |
偏微分(Partial differentiation)とは、多変数の関数に対して、その変数を一旦固定して定数と見なし、一つの成分のみを変数として動かして、その成分方向への瞬間の増分を与える微分法である。偏微分法。偏微分によって得られた微分係数や導関数のことを、偏微分係数、偏導関数あるいは単に偏微分 (Partial derivative) という。
物理学においては、例えば位置と時間を変数として波の形状をある瞬間に観察するときは、時間をある瞬間に固定して考えることにより位置に対する波の波高値を観察するというような形で偏微分が用いられる。 |
ま |
無理数 |
Irrational
number |
有理数ではない実数、つまり分子・分母ともに整数である分数(比
= ratio)として表すことのできない実数を指す。実数は非可算個で有理数は可算個であるから、ほとんど全ての実数は無理数である。
無理数という語は、「何かが無理である数」という意味に誤解されやすいため、語義的に「無比数」と訳すべきだったという意見もある。 |
や |
エウクレイデス(ユークリッド) |
Euclid |
アレクサンドリアのエウクレイデス(Euclid(ユークリッド)、紀元前3世紀?
- )は、古代ギリシアの数学者、天文学者とされる。数学史上最も重要な著作の1つ『原論』(ユークリッド原論)の著者であり、「幾何学の父」と称される。プトレマイオス1世治世下(紀元前323年-283年)のアレクサンドリアで活動した。『原論』は19世紀末から20世紀初頭まで数学(特に幾何学)の教科書として使われ続けた。線の定義について、「線は幅のない長さである」、「線の端は点である」など述べられている。基本的にその中で今日ユークリッド幾何学と呼ばれている体系が少数の公理系から構築されている。エウクレイデスは他に光学、透視図法、円錐曲線論、球面天文学、誤謬推理論、図形分割論、天秤などについても著述を残したとされている。
なお、エウクレイデスという名はギリシア語で「よき栄光」を意味する。その実在を疑う説もあり、その説によると『原論』は複数人の共著であり、エウクレイデスは共同筆名とされる。
確実なのは彼が古代の卓越した数学者で、アレクサンドリアで数学を教えていたこと、またそこで数学の一派をなしたことである。ユークリッド幾何学の祖で、原論では平面・立体幾何学、整数論、無理数論などの当時の数学が公理的方法によって組み立てられているが、これは古代ギリシア数学の一つの成果として受け止められている。 |
ユークリッド空間 |
Euclidean
space |
数学におけるユークリッド空間は、エウクレイデス(ユークリッド)が研究したような幾何学(ユークリッド幾何学)の場となる平面や空間、およびその高次元への一般化である。エウクレイデスが研究した平面や空間はそれぞれ、2次元ユークリッド空間、3次元ユークリッド空間に当たり、これらは通常、ユークリッド平面、ユークリッド空間などとも呼ばれる。「ユークリッド的」という修飾辞は、これらの空間が非ユークリッド幾何やアインシュタインの相対性理論に出てくるような曲がった空間ではないことを示唆している。 |
有理数 |
Rational
number |
二つの整数
a, b (ただし b は 0 でない)をもちいて a/b
という分数で表せる数のことをいう。b
= 1 とすることにより、任意の整数は有理数として扱うことができる。 |
ユニタリ行列 |
Unitary
matrix |
ユニタリ行列(Unitary matrices)は、次を満たす複素正方行列
U として定義される。
U* U = UU* = I
ここで、I は単位行列、U*
は行列 U の随伴行列(UT(Uの頭に-))。
なお、実数で構成されるユニタリ行列は直交行列に等しく直交行列を複素数体へ拡張したものがユニタリ行列とも言える。
U* U = UT(Uの頭に-) U
= I |
ユニタリ変換 |
Unitary
transformation |
数学において、ユニタリ変換とは、2つのベクトルの内積の値が変換の前後で変わらないような変換である。 |
ら |
ライプニッツ、ゴットフリート(1646〜1716) |
Gottfried
Wilhelm
Leibniz |
ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646年7月1日(グレゴリオ暦)/6月21日(ユリウス暦)
- 1716年11月14日)は、ドイツの哲学者、数学者。ライプツィヒ出身。ルネ・デカルトやバールーフ・デ・スピノザなどとともに近世の大陸合理主義を代表する哲学者である。主著は、『モナドロジー』、『形而上学叙説』、『人間知性新論』など。 |
ラグランジュ、ジョゼフ=ルイ(1736〜1813) |
Joseph-Louis
Lagrange |
ジョゼフ=ルイ・ラグランジュ(1736年1月25日
- 1813年4月10日)は、数学者、天文学者である。オイラーと並んで18世紀最大の数学者といわれている。イタリアのトリノで生まれ、後にプロイセン、フランスで活動した。彼の初期の業績は、微分積分学の物理学、特に力学への応用である。その後さらに力学を一般化して、最小作用の原理に基づく、解析力学(ラグランジュ力学)をつくり出した。ラグランジュの『解析力学』はラプラスの『天体力学』と共に18世紀末の古典的著作となった。 |
ラプラス変換 |
Laplace
transform |
関数解析学において、ラプラス変換(Laplace transform)とは、積分で定義される関数空間の間の写像(線型作用素)の一種。関数変換。
ラプラス変換の名はピエール=シモン・ラプラスにちなむ。
ラプラス変換によりある種の微分・積分は積などの代数的な演算に置き換わるため、制御工学などにおいて時間領域の(とくに超越的な)関数を別の領域の(おもに代数的な)関数に変換することにより、計算方法の見通しを良くするための数学的な道具として用いられる。
フーリエ変換を発展させて、より実用本位で作られた計算手法である。1899年にヘヴィサイドという電気技師が回路方程式を解くための実用的な演算子を経験則として考案して発表し、後に数学者がその演算子に対し厳密に理論的な裏付けを行った経緯がある。理論的な根拠が曖昧なままで発表されたため、この計算手法に対する懐疑的な声も多かった。この「ヘヴィサイドの演算子」の発表の後に、多くの数学者達により数学的な基盤は1780年の数学者ピエール=シモン・ラプラスの著作にある事が指摘された。(この著作においてラプラス変換の公式が頻繁に現れていた)
従って、数学の中ではかなり応用寄りの分野である。ラプラス変換の理論は微分積分、線形代数、ベクトル解析、フーリエ解析、複素解析を基盤としているため、理解するためにはそれらの分野を習得するべきである。
これと類似の解法として、より数学的な側面から作られた演算子法がある。こちらは演算子の記号を多項式に見立て、代数的に変形し、公式に基づいて特解を求める方法である。 |
リーマン積分 |
Riemann
integral |
数学の実解析として知られる分野におけるリーマン積分は、ベルンハルト・リーマンによって作り出された、区間上の函数の積分の最初の厳密な定義である。リーマン積分は多くの理論的な目的には不向きであり、実際の応用上はかなり多くの函数のリーマン積分が微分積分学の基本定理や(近似的な)数値積分によって容易に求められる。
リーマン積分におけるいくつか技術的な欠点はリーマン=スティルチェス積分によって改善することができるし、ルベーグ積分を考えれば殆どの欠点が解消される。 |
累乗⇒冪乗 |
|
|
ルジャンドル、アドリアン=マリ(1752〜1833) |
Adrien-Marie
Legendre |
アドリアン=マリ・ルジャンドル(1752年9月18日
- 1833年1月10日)は、フランスパリ出身の数学者。統計学、数論、代数学、解析学で様々な功績を残した。中でも整数論や楕円積分に大きく貢献したとして名高い。 |
ルベーグ積分 |
Lebesgue
integration |
数学において関数の積分はその関数と
x 軸の間の図形の面積とみなすことができる。ルベーグ積分(Lebesgue
integral)とは、より広い種類の関数が積分できるように拡張したものである。ルベーグ積分においては、被積分関数は連続である必要はなく、至るところ不連続でもよいし、関数値として無限大をとることがあってもよい。さらに、関数の定義域も拡張され、測度空間と呼ばれる空間で定義された関数を被積分関数とすることもできる。
このような積分の拡張が必要となった背景には、フーリエ級数などの関数列の極限として表される関数に対して、積分と極限操作が可換となるかどうかをリーマン積分で考えるために非常に繊細な議論が必要だったということがある。この点について、ルベーグ積分では、関数列の極限が被積分関数として適当かどうかを考える必要がなく、積分と極限操作の交換も簡単な十分条件が分かっている。
ルベーグ積分の名前は、数学者のアンリ・ルベーグ(Henri
Lebesgue、1875年 - 1941年)に由来している。 |
わ |
和算 |
Japanese
mathematics |
日本独自に発達した数学である。狭義には大いに発展した江戸時代の関孝和以降のそれを指すが、西洋数学導入以前の数学全体を指すこともある。 |
和集合 |
Union |
数学において、集合族の和集合、あるいは演算的に集合の和(sum)、合併(union)もしくは結び(join)とは、ふたつ以上の集合の集まり(集合族)に対して、それらのいずれか少なくとも一つに含まれているような要素を全て集めることにより得られる集合のことである。 |