中華人民共和国 環境影響評価法の条文解釈(http://www.edcmep.org.cn/japan/bf/CNE/CNE04_71.htm)
中国の環境アセスメント制度の実施概況(http://www.edcmep.org.cn/japan/bf/CNE/CNE04_72.htm)
1.環境アセスメント制度の実施概況
1.1. 法体系の構築
1.2. 技術サポート体系の形成
1.3. 環境アセスメントの基本原則の形成
1.4. 環境アセスメント実施率の向上
2.環境アセスメント制度の実施効果
2.1. 合理的な産業配置と企業による場所選定の最適化の促進
2.2. 新たな汚染源の抑制、既存汚染源に対する整備の促進
2.3. 産業技術改造とクリーナープロダクションの促進
2.4. 生活環境と生態環境の保護
3. 環境アセスメント制度に存在する問題
3.1. 環境アセスメント制度の適用範囲が狭い
3.2. 環境アセスメントの審査、認可メカニズムが健全さに欠ける
3.3. 環境への影響に対する管理・監督の立ち遅れ
3.4. 環境アセスメント技術の不完全さ、生態系アセスメント能力の不足
環境アセスメントと民間の参加(http://www.edcmep.org.cn/japan/bf/CNE/CNE04_73.htm)
中華人民共和国 環境影響評価法の条文解釈【見る→】
目次
環境問題に根源から取り組む(前書きに代えて)
中華人民共和国環境影響評価法の条文解釈
緒論
第一章 総則
第二章 計画に対する環境アセスメント
第三章 建設プロジェクト環境アセスメント
第四章 法的責任
第五章 附則
中国の環境アセスメント制度の実施概況
一、環境アセスメント制度の実施概況
1973年の第1回全国環境保護会議以降、環境アセスメントという概念がわが国に導入され始め、関係部門は環境質に関する調査と評価に関する活動を開始した。1979年9月、全国人民代表大会で採択された『中華人民共和国環境保護法(試行)』によって、環境アセスメントと建設プロジェクトの「三同時[1]
」が法律制度として確立された。1989年に採択された『中華人民共和国環境保護法』では、建設プロジェクトに対する環境アセスメント制度が再度是認された。長年にわたる実践を通じて、建設プロジェクトの環境アセスメントは徐々にわが国における環境保全の基本制度となり、建設プロジェクトによる環境汚染や生態破壊の予防・防止に、重要な役割を果たしている。
1.法体系の構築
1981年、関連法律の規定に基づき、国務院の四つの部・委員会[2]が『基本建設プロジェクト環境保護(保全)管理弁法[3]』を共同で公布し、環境アセスメントを国家の基本建設プロジェクトの一環とみなし、環境アセスメントの具体な実施プロセスを比較的詳細に規定した。1986年、国務院の三つの部・委員会が『建設プロジェクト環境保護(保全)管理弁法』を共同で公布し、建設プロジェクトの環境マネジメントの範囲を基本建設プロジェクトから技術改造プロジェクトおよび地域開発建設プロジェクトまで拡大した。これ以降、国務院の関係部門は建設プロジェクトの立案ルートの増加、外資系企業の増加、郷鎮企業の著しい発展、第3次産業の勃興など、新たな発展情勢に焦点を合わせ、相応の「通知」、「弁法」を次々と公布、建設プロジェクトの環境アセスメントもこれらの分野まで広がった。1998年、国務院は『建設プロジェクト環境保護(保全)管理条例』を発布するとともに、流域開発、開発区の建設、都市における新興地の構築および旧市街地の改造など地域開発計画に対する環境アセスメントに関する条件を示した。
2.技術サポート体系の形成
建設プロジェクトをめぐる環境保全に関する法体系の確立に伴い、環境アセスメントの技術サポート体系も絶えず発展してきた。国務院の関係部門は『環境アセスメントの技術的指導規則』、『業界建設プロジェクト環境アセスメント規範』などを公布するとともに、環境アセスメントを通じて、先進的な環境保全思想、効果的な環境保全措置および技術を生産の実践の中に導入し、徹底を図った。これと同時に、環境アセスメント技術に関する研修を受講し、資格を取得した人員は9,000人余りに上り、全国各地の環境保全関連の研究所、企業、高等教育機関で業務に就いており、比較的厚みのある技術力が形成されるに至っている。
3.環境アセスメントの基本原則の形成
実践による探求を経て、以下のような環境アセスメントの基本原則が徐々に形成された。
(1)建設プロジェクトが国家と業界の産業政策に合致していること。
(2)建設プロジェクトの場所選定が地域全体の長期計画と環境区画の要求に合致していること。
(3)建設プロジェクトについて、エネルギーおよび物資の消耗が少なく、廃棄物がゼロ又は少ない工程を採用し、「クリーナープロダクション」を実行すること。
(4)建設プロジェクトによる汚染物の排出について、国家または地方が定める排出基準を達成すること。
(5)建設プロジェクトが汚染物の排出総量規制に関する指標に合致していること。排出総量を増やさないこと。
(6)改造・拡張プロジェクトは「新を以って旧を導く」などの措置を講じ、生産量を増やしても、汚染は増やしてはならない。
4.環境アセスメント実施率の向上
80年代初頭以降、建設プロジェクトの環境アセスメント実施率は徐々に上昇していった。「第8次5ヵ年計画」期間において、全国の環境アセスメント実施率は1992年の61%から1995年には81%まで上昇、「第9次5ヵ年計画」期間中は90%前後に落ち着いた。
二、環境アセスメント制度の実施効果
1.合理的な産業配置と企業による場所選定の最適化の促進
合理的な産業配置と企業による場所選定の最適化は、地域的な環境汚染と長年の蓄積によって形成される環境汚染の防止に決定的な意義を持つ。環境アセスメントはこの方面において重要な役割を果たした。「第6次5ヵ年計画」期間中、全国で完了した中・大型建設プロジェクト445件の環境アセスメントのうち、4件の場所選定案が却下された。「第7次5ヵ年計画」期間中、全国で完了した中・大型建設プロジェクト2,592件の環境アセスメントのうち84件について、環境アセスメントを通じて、プロジェクトの場所選定の最適化が図られた。現在、建設プロジェクトの場所選定、ライン選定を行う際、それによる環境への負の影響を避けなければならないという点が既に人々の共通認識となっている。また、多くのプロジェクトにおいて、論証の際に様々な方案の比較が行われ、環境マネジメントスタッフや専門家に場所選定の論証への参加を依頼するなどの措置が採られている。
2.新たな汚染源の抑制、既存汚染源に対する整備の促進
改革開放以降の20年間、わが国の経済発展は4倍増を達成し、多くの重大な事業が行われた。一方で、それに伴う環境悪化は見られず、汚染が同時に増加するといった現象は生じなかった。これは、建設プロジェクトの環境アセスメントと「三同時」制度の実施によるところが大きい。90年代に入ってから、わが国では伝統的な業種において、生産工程・技術および製品のリニューアル、モデルチェンジ、改造・拡張プロジェクトが数多く実施され、環境アセスメントについては、「新を以って旧を導く」という戦略が適時実行され、既存汚染源に対する整備が促進された。例えば、1999年の統計によると、全国で生産が始まったプロジェクトの件数は2万2,522件、総投資は4,290億元に上り、うち環境保全に関する投資額は192億に達し、全体の4.2%を占めた。プロジェクトによって新たに発生する化学的酸素要求量(COD)46万2,800tのうち、環境保全施設によって38万5,800tが削減されたほか、「新を以って旧を導く」措置を通じて、既存汚染源の排出量8万3,600tが削減され、「生産の増加、汚染の減少」という目標を実現した。
3.産業技術改造とクリーナープロダクションの促進
建設プロジェクトの環境アセスメントは、企業が採用する技術レベルの起点を高め、エネルギーと物資の消耗および汚染物排出量が少ないクリーナープロダクションの工程と技術を推進する上で、重要な役割を果たした。例えば、中国石油化工集団傘下の大型企業は「第8次5ヵ年計画」期間中、生産額が33%増加した。一方、主に先進的、かつクリーンな生産工程の採用によって、生産額1万元当たりのCOD排出量は57%減り、CODの排出総量は8%減少した。
4.生活環境と生態環境の保護
郷鎮企業と商業サービス企業の数は多く、その波及範囲も広く、往々にして人口密集地に分布しており、都市部・農村部住民の生活環境と生態環境に大きな影響を及ぼす。過去10年間、環境保全部門はこのような企業を環境アセスメントの適用範囲に適時組み入れてきた。これと同時に、農業、林業、水産業、道路、鉄道および鉱山開発などのプロジェクトについて、生態環境への影響に関する評価を強化し、生活環境と生態環境の保護を促進してきた。
三、環境アセスメント制度に存在する問題
1.環境アセスメント制度の適用範囲が狭い
目下、わが国の環境アセスメントは建設プロジェクトに限定されており、環境に重大な影響を及ぼす政策、長期計画、短期計画は環境アセスメントの範囲に組み入れられていない。建設プロジェクトにおける環境アセスメントの審査の中で、「(長期)計画に合致していること」という原則が規定されたが、計画自体に対しては、環境への影響に関する論証は行われてこなかった。現在、主な工業基地の5ヵ年計画に対して、一部環境アセスメントが行われており、冶金、石油・天然ガス、石炭業の関連部門が発展計画を制定する際には、環境アセスメントを実施するよう定められている。但し、その範囲には限りがある。実際の状況を見ると、環境に対して、重大な、時には全面的な影響を及ぼすものは往々にして、政府が制定・実施する関連産業の発展、地域開発、資源開発など各方面の政策と計画である。
2.環境アセスメントの審査、認可メカニズムが健全さに欠ける
目下のところ、いくつかの国際援助プロジェクトを除き、わが国の環境アセスメント情報は公開されておらず、基本的に公衆の参加はなく、独立した専門家による審査制度も欠如している。一般的に言うと、開発・建設活動は往々にして周辺の大衆の利益に直接関わる、或いは影響を及ぼすものであり、周辺の大衆の意見を募り、事前に利益の調整を図り、矛盾の解決を図る必要がある。同時に、環境影響報告は技術性の強い報告であり、専門家の独立した審査が必要であり、独立した大衆の意見と専門家による審査が形成されて然るべきものであり、かつ、これら意見と審査は関連政策を決定する際の重要な根拠となるべきである。
3.環境への影響に対する管理・監督の立ち遅れ
環境アセスメントは、調査研究の展開、環境影響報告の作成、環境影響報告の審査・認可から、関連環境保全措置の実施、追跡評価、事後評価、関連フォローアップ・監督・管理からなる一つの完全なプロセスであり、このプロジェクトによる管理を実現して初めて、環境アセスメントの役割を真の意味で発揮することができる。しかし、現行の環境アセスメントの関連法規は、環境影響報告の作成と審査に偏っており、その後部分については明確な規定がなく、環境影響報告で提起された環境保全措置が確実に実施されているか否かについて、効果的な監督・管理手段に欠ける。
4.環境アセスメント技術の不完全さ、生態系アセスメント能力の不足
健康影響評価、環境・経済・技術の分析、累積的な影響に対する評価などの分野において、建設プロジェクトの環境アセスメント業務の基盤が弱い。また、建設プロジェクトの環境アセスメントにおいても、一貫して汚染抑制が中心に置かれており、生態系に対するアセスメントの技術力は弱く、生態系アセスメントに関する技術も比較的低レベルである。
(全国人民代表大会環境・資源保護委員会法案室)
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[1] 投資プロジェクトの実施と同時に、環境汚染防止施設を計画、建設、操業することを指す。つまり生産施設の計画、建設、操業の三段階において、環境保全施設が同時に計画、建設、操業されること――訳注
[2] 日本の省庁に当たる――訳注
[3] 規則、方法の意。訳文では以下、弁法とする――訳注
環境アセスメントにおける民間の参加は、米国の『国家環境政策法(NEPA)』(1969)で最も早く示された。同法律は環境アセスメントの過程で影響を受ける者の意見を注意深く聴取すべきであると提起している。国連環境計画(UNEP)は1978年に打ち出した環境アセスメントの基本プロセスの中で、民間の参加を通じて、地域社会或いは彼らの代表に開発・建設活動がもたらす負の影響を知らしめることを明確に規定している。世界銀行は1981年、民間の参加を世界銀行の方策の一つとして実施するとし、あわせてその『業務指令(OD)』の中で、影響を受ける群体と非政府組織(NGO)を「民間」とし、世界銀行融資プロジェクトの環境アセスメントに参加することと規定している。アジア開発銀行も1993年、同行の融資プロジェクトの環境アセスメントにおける民間参加問題を規定した。
90年代初め、わが国は環境アセスメントにおける民間参加の推進を開始、最初は世界銀行とアジア開発銀行の融資プロジェクトにおいて実施された。1993年、国家発展計画委員会、国家環境保護総局、財政部、中国人民銀行が共同で公布した『国際金融機関の融資による建設プロジェクトの環境アセスメント・マネジメント業務の強化に関する通知』の中で、初めて民間参加に関する明確な要求が提起された:「民間参加は環境アセスメントにおける重要な構成部分であり、『報告書』は専門に章節を設けて説明を加え、影響を受ける可能性の高い民間若しくは社会団体の利益が考慮および補償されるようにしなければならない」。この『通知』の中で挙げられている「民間参加」にはプロジェクト所在地(区、県)の人民代表、政治協商会議委員、民間団体、学術団体、(都市の)住民委員会、村民委員会の代表の意見と提案の聴取が含まれ、プロジェクト所在地(区、県)の人民代表大会、政治協商会議或いは民間団体など、影響を受ける地域の民間の意見を諮問するとされている。
民間参加はわが国の環境関連法における基本的な規定である。1996年に改正された水汚染防止法第十三条は、環境影響報告書には建設プロジェクト所在地の各種組織・団体と住民の意見がなければならないと規定している。これに続いて『環境騒音汚染防止法』でも同様の規定がなされた。1998年、国務院で採択された『建設プロジェクト環境保全管理条例』でも、建設プロジェクトについては、所在地の各種組織・団体と住民の意見を聴取するように定められている。
目下のところ、具体的な法律規定の欠如により、わが国の環境アセスメントにおける民間参加の普遍性と深度は未だ先進国の基準に達していない。建設プロジェクトは通常、建設前に大衆に向けて公布されることはなく、公聴会形式も備わっておらず、報告書は非公開である。環境アセスメントの過程において、アンケートの配付、個別訪問による大衆の意見の収集が行われるのみであり、また、専門家の意見、地方の意見も民間の意見と見なされる、若しくはハイレベルの民間参加と見なされる。総じて言うならば、民間参加は更なる発展が待たれる。
『環境影響評価法(草案)』では民間参加の奨励が提起されており、主に以下の方面での配慮がなされている。
1.環境保全は全国民が共同で参加する一つの偉大な事業である。国民の関心と参加は環境保全活動を確実に展開する上での根本的な原動力であり、保証である。1996年7月16日、江沢民総書記(当時)は第4回全国環境保護会議の演説で次のように指摘した: 「多くの幹部と大衆はいずれも環境意識を高めるべきであり、環境保全に積極的に参加しなければならない。また、広報・教育と社会世論の監督機能を十分に発揮させなければならない」。民間の参加を通じて、環境アセスメントの中で、民間の意見と提案を十分に反映させることが可能であり、これによって、民間利益をより良い形で保護し、環境保全への民間の参加を促し、民間の環境意識および環境保全に対する積極性の向上を図ることができる。
2.わが国は社会主義国家である。国家のすべての行動は根本的に言うならば、すべて国民の利益のためである。中国共産党は歴史唯物主義から出発し、マルクス主義の大衆の観点と路線を堅持し、すべて国民のために、誠心誠意国民に奉仕するものである。これは我々の事業が成功を勝ち取るための根本的な保証である。環境アセスメントにおける民間参加の実施は、党と国家の一貫した路線と原則に合致するものであり、それはまた、環境アセスメントという分野における我々共産党と国家の大衆路線の徹底でもある。
3.政策、計画および開発・建設プロジェクトの環境アセスメントの過程における民間参加の実施は、政府の政策決定面での民主化を大いに推進し、社会の各方面の利益と見解が政策決定過程の中で十分に考慮されるようになり、環境に対する負の影響によってもたらされる可能性のある社会矛盾を解決することができる。他国の経験からも分かるように、環境アセスメントにおける民間参加は政府による政策決定の民主化を促進し、各方面の利益のバランスを取る上でも有効な手段である。
4.環境アセスメント自体もまた一つの科学的な政策決定過程である。国民は往々にして、周囲の環境について、専門家が把握し難い情報や知識を持つ。民間参加により、関係部門および団体・組織は環境アセスメントの過程で、より全面的に環境を理解、認識することができる。そして、多くの潜在的な環境問題の提示、環境アセスメントの科学性と照準性の向上が図られ、これによってセンシティブな保護対象が効果的に保護され、政府の政策決定における科学性がより一層高まる。
(全国人民代表大会環境・資源保護委員会法案室)