環境関連法律法規通達  http://www.zhb.gov.cn/japan/CNE/CNE04.htm
 日中友好環境保全センターによる『中国の環境情報』の中のページ。


中華人民共和国 環境影響評価法の条文解釈

目次

環境問題に根源から取り組む(前書きに代えて)
中華人民共和国環境影響評価法の条文解釈
 緒論
 第一章 総則
 第二章 計画に対する環境アセスメント
 第三章 建設プロジェクト環境アセスメント 
 第四章 法的責任
 第五章 附則


中華人民共和国 環境影響評価法の条文解釈

環境問題に根源から取り組む(前書きに代えて)

曲 格平(2002年12月26日)

 20世紀90年代以来、我が国の環境と資源保護の立法は高速発展段階に入った。1993年〜2002年の10年間、制定・改正と正式に実施した、環境と資源に関する法律は22部、そのうち全国人民代表大会環境・資源保護委員会が起草を担当したものは7部あり、うち大気汚染防止法については2度の改正を行った。1998年の土地管理法と森林法の改正から、2000年の大気汚染防止法改正と、2002年のクリーナープロダクション促進法、環境影響評価法の採択に至るまで、これら環境と資源を保護する立法活動は、我が国の環境・資源保護立法の発展の方向性における重大な変化を明確に提示すると共に、環境と資源に対する持続可能な利用への方向転換を行い、持続的な発展を可能にする法律体系の構築という方向へと邁進するものである。

 4年あまりの努力を経て採択された環境影響評価法は、10年来の我が国の環境立法における最も重大な進展を表すものである。この法律は、努めて法案決定の根源から環境汚染と生態破壊を防止することを求めるものであり、事業評価から戦略的評価へと進入し、我が国の環境と資源立法が新たな段階に入ったことを示すものである。

一、歴史的教訓は汲み取る価値がある

 我が国は最も早くから環境アセスメント制度を実施した発展途上国の1つである。20世紀70年代中期、環境アセスメントの概念は中国に入り始めた。1979年、全国人民代表大会常務委員会で『中華人民共和国環境保護法(試行)』が採択され、建設プロジェクトに対する環境アセスメントが法律制度として確定された。20年あまりの実践を経て、建設プロジェクトに対する環境アセスメントに関連する法規が次第に補完され、法律、特別法規、部門規約で構成される建設プロジェクト環境アセスメントの法規体系が構築され、建設プロジェクトの汚染防止と産業推進の合理的な配置と立地の最適化、ならび汚染対策施設の建設等方面で積極的な役割を発揮し、環境汚染と生態破壊の規制上、最も高い成果を収める措置となった。

 しかし、国内外の環境と発展の歴史的経験が証明するように、建設プロジェクトと比べ、政府のある政策と計画が環境にもたらす影響は、更に広範囲に及び、継続時間はより長く、影響が発生した後の処置も更に困難である。20世紀以来、如何なる体制の国家であっても、政府の職能がとても大幅に拡張され、政府の影響が届かない所はなく、政府行為の環境に対する影響は人々が関心を寄せる問題となった。各種利益集団の働きかけの下、少なからずの国家の政府が、環境に深刻なダメージを与える政策と計画を策定してきた。例えばアメリカ政府は、かつて大量の金銭を投じて森林伐採に充て、更にこの政策は相当長い期間実施され、世論から厳重な批判を浴びるところとなった。西部開発初期、計画と指導に乏しかったことから、農民が大量に入り込み、生態環境はかつて災害とも言えるほどの深刻な破壊を受けた。旧ソ連政府も重工業発展政策に大量な投入を行い、経済の畸形的発展をもたらしただけでなく、深刻な環境災害をも引き起こした。1954年より、その勢い勇んだ中央アジア地域開発計画を実施するために、トルクメン−カラクーム砂漠に全長1,400kmのカラクーム運河を修築し、毎年アムダリア川から導水して砂漠西部350万haの荒漠牧草地帯と100万haの新開墾農業区に灌漑を行うという計画、また700万haの牧草地帯の水供給条件を改善し、運河沿線地区をトルクメニスタン(旧トルクメン共和国)の綿花を主とした一農業拠点にするという計画を立てた。ところがこのような大規模な開発計画が、科学的論証と環境への影響研究抜きで着工されたのだった。その結果、アムダリア川からの導水が過多だったことと地下水の採水が過量だったことから、アムダリア川下流の水位が急速に下降し、湖面に明らかな変化が起こり、カスピ海の海岸線が以前より10〜20kmも後退した。カスピ海の水面が縮小した後、周辺地域の地下水位もそれに伴って下降した。水源が減少した結果、カスピ海周辺地域は枯渇地帯となり、風力の作用で深刻な暴砂嵐が発生、砂漠化が一挙に進んだ。同時に、湖水の枯渇によりアルカリ土壌が剥き出しになり、「白風暴」(塩分を含んだ暴風)が続々と発生し、未曾有の生態災害を引き起こし、この雄壮偉大な計画はやむなく失敗に終わった。

 一部国際援助活動の計画も、かつて似た様な状態を引き起こしたことがある。例えば20世紀60年代のアフリカ−サハラ地区で干ばつが続き、食物が深刻に不足し、餓死者が至る所に溢れた。国連は人畜飲用水の解決のため、砂漠化対策の国際行動計画を実行に移した。20年近い時間、国際機関は計6億2,500万米ドルを援助し、大量の深井戸を掘った。これら井戸を中心に、固定的な生活居住区を建設し、遊牧を定住に転換させた。家畜の数量は増加したが、畜産品の生産量は減り、緑の植生は喪失された。その結果、5年間足らずの開発・利用の後、井戸を中心とした砂漠化圏の発生を招き、生態環境は急激に悪化した。このため、国連は1987年にこの計画を中止した。

 我が国もこういった方面での失敗が数多くあり、学ぶべき教訓は深刻である。

 50年代の大躍進政策、鋼鉄大製錬、森林・草原を毀しての農地開墾、「囲湖造田[1]」といった一連の誤った政策が、大面積に及ぶ災害的な生態と経済の結果を招いた。三江平原では、1956〜1958年に10万人の復員将兵による北方大荒野の開拓進軍、1969年〜1973年に都市部知識青年45万人参加の生産建設兵団による荒野開墾運動を経て、大規模な農業開発が行われた。しかし開発計画の科学的論証性の欠如、経済効果に対する盲目的な追求、無闇で気まぐれな開発により、三江平原の農業開発は生態環境に一連の悪影響を生み、自然資源の減少や生態系のアンバランス、河川表流水の減少、地下水位の低下、森林被覆率の低下、降水量の減少、土壌の塩類化、砂漠化、土壌流失の深刻化等一連の環境問題が発生し、人口・資源・環境間の矛盾が日増しに明るみに出た。

 政策上の失敗がもたらした生態環境問題は、建国早期に出現した現象だけでなく、80〜90年代にも依然発生している。80年代中期に提出された「大鉱山を大々的に開発し、小鉱山を拡大せよ。水が有ればそれを速く流し、国家・集団・個人は一同に鉱山に上れ。」という政策は、かつて全国各地のむやみやたらな鉱物資源乱掘の気風を大いに助長した。深刻な資源の浪費と環境破壊を引き起こし、国家は数年後やむなく強硬措置を採ってこれら小規模鉱山を封鎖するに至った。80年代は、国家政策の支持のもと、製紙、電気メッキ、皮革、染色、コークス化等の業種は軒並み急成長したが、これらの成長が同時に重度に深刻な環境汚染の結果をもたらしたため、国家はやむなく是正措置を採った。1996年8月、国務院は環境を重度に汚染する企業に対し、期限付きの取り締まりを行う決定を出した。1997年末までに、全国で取り締まりや業務停止命令を受けた、製紙等環境を重度に汚染した小企業は計6万5,000社あまりに上った。これらの措置により、良好な環境効果が得られ、全国の汚染物質排出総量を目覚しく減少させた。「九五[2]」期間中、同類企業8万5,000社あまりを閉鎖処分に科した。しかし、これら企業を取り締まることは、一方で国家・地方・個人投資者に巨額の損失をもたらす。中国農業銀行一行だけでも、この取り締まり行動のために回収不能となった貸付金は、利息込みで50数億元にも達した。

 水資源の不適切な開発・利用が生態にもたらした破壊の結果は更に突出している。新疆ウイグル自治区のタリム川流域は、水を堰き止めてダムを建築したために、下流域に流入する水の量が80%以上も減少し、生態環境が急激に悪化した。タリム川流域はかつて世界最大の天然原生コヨウ林の分布を誇っていたが、水不足のため、コヨウ林は一面また一面と枯れて死んでしまった。統計によると、中・下流域のコヨウ林面積は既に50年代当時の580万haから152万haに激減し、砂漠化面積が代わって66%から80%以上に跳ね上がった。干ばつ、大風、黄砂は年々増加し、無降霜期間は短縮し、自然災害の発生率は顕著に上昇した。内モンゴル自治区内を流れる黒河上流域の開発利用計画も、局部的利益だけを見て全体的利益を無視したため、下流域の広範囲にわたって生態環境が急激に悪化した。エチナ(額済納)旗の総面積300?に及ぶ東・西居延海一帯はかつて、中国西北辺境を遮る天然のグリーンバリアとも言える大草原であり、林や草が青々と生い茂り、「風吹けば/草がうな垂れ/牛羊が見える」の一句に詠われた豊饒の地であった。しかし、20世紀60年代初頭から上流域でのダム建設に伴う堰き止めが始まり、居延海へ流れ込む水量が大幅に減少し、西居延海が先に枯れ、続いて20世紀90年代から東居延海も徹底的に枯渇し、エチナのオアシス面積はかつての6,440?から3,200?へと激減し、一方ゴビ砂漠の面積は460?あまり拡大し、1,700数万ムー[3]あった梭梭(Haloxylon ammodendron)林は300万ムーのみを残す荒林となり果て、コヨウ林も毎年1万2,000ムーの速度で消滅している。荒漠と牧草地の植生面積が大幅に減少したため、以前は30年に一度発生していた黄砂が、2000年春にはなんと19回も発生し、我が国北方の黄砂発生源の1つとなった。荒漠化が進んだことで、多くの地域が生存条件を失い、数多くの生態難民(Ecological Refugee)を生んでしまった。

 幸い、タリム川流域と黒河流域で現在水門開放措置が採られているため、状況は徐々に好転し始めている。

 国内外の教訓が再三証明しているように、経済発展の過程における重大な生態環境の損失と破壊を防止するために、関連政策と計画に対し、環境アセスメントを行い、「先に評価、その後建設」を実行することは十分に重要なことである。このため、第9期全国人民代表大会常務委員会の立法計画に、環境影響評価法が含まれることとなった。

二、立法過程は認識を統一する過程である

 環境影響評価法は1998年に起草され始めてから2002年10月の採択までに、前後にわたって4年あまりの時間を費やした。この4年間で、討論・弁論・論証が反復されたが、そのうち一部の弁論は鋭いものであった。

 1つは「フライング説」。環境アセスメントは元々西側の先進国の法律であり、一方中国は発展途上国なのだから、現在この法律を敢えて制定することは「フライング」であるというものである。このような見解は、各方面から意見を収集する際にも、人民代表大会常務委員会の審議中でも提出された。法律は先見性を有すべきものである。しかし一般の見方では、法律とは現実社会の一種のニーズであり、現実社会がそれを必要としない限り、もっぱら「フライング」的立法を行うことは当然適切であるとは言い難い。ところで、これは本当に「フライング」なのだろうか?やはり先に、中国の現実がどこまでこの法律を必要としているか、見てみることにしよう。現代化の建設の過程で深刻な生態環境問題が発生し、現代化の建設プロジェクトのスムーズな進行を妨げ、広大な人民の生活と安全をも脅かしていることは誰もが知っている。ならば、その根源は何かと言えば、紛れもなく国民経済の重大な政策と計画を策定する際、環境にもたらし得る影響を考慮しなかったことに帰結する。持続可能な発展戦略を実施し、国民経済の健全な運行を保障し、このような法律の制定を切実に要求することは、決して時期尚早ではなく、正に時期に適ったことなのである。国務院は2001年に回答した国家環境保護(保全)「十五[4]」計画の中で、「重大な経済・技術政策と発展計画および重大な経済と流域開発計画に対する環境アセスメントの実施を模索し、総合的な政策決定を規範化・制度化する」ことを明確に要求した。これは環境影響評価法の制定を要求する上での最も新しい根拠である。

 2つ目は、「実践の基礎がないため、目下この法律を制定することは時期尚早である」という見解である。これに対し、我々の調査研究結果は、世界で既に数多くの国家がこの法律を制定した、或いは関連する法律の中でこの方面の規定を作ったことを示した。そのうち、アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリス、オランダ等国家は既に戦略的環境アセスメントの展開において比較的長い歴史を持っており、実施の結果も全て非常に良好である。一方中国は、戦略的環境アセスメントにおいてテストケースの経験を持っている。1993年、国家環境保護総局は『建設プロジェクトの環境保全に対する管理業務をより良く行うための若干意見』の文中で、地域環境アセスメントの基本原則と管理手順を提出している。1998年国務院発布の『建設プロジェクト環境保護(保全)管理条例』でも、「流域開発、開発区建設、都市新区建設・旧区改修等の地域的開発については、建設計画を策定する際、環境アセスメントを行わなければならない」と規定されている。国家の関連規定に基づき、バオトウ(包頭)鋼鉄会社、太原鋼鉄会社、馬鞍山鋼鉄会社、金山石油化学会社等の一部大型工業企業が、「八五[5]」、「九五」発展計画を結合し、環境アセスメント5ヵ年計画を実施した。これら企業が行った環境アセスメントは本法律の調整対象には属さないものの、性質と方法においては本法律の規定する計画に対する環境アセスメントと類似しており、参考価値のあるものである。資源と流域の開発方面でも、類似の戦略的環境アセスメントが展開された。西部大開発戦略の実施過程で、国家は「西気東輸」[6]、「西電東送」[7]、「青蔵鉄路」[8]等重大な計画に対し、環境アセスメントを実施している。これらの状況が表明しているように、計画に対する環境アセスメント上、我が国も一定の実践基礎を持っており、関連法律を制定することは実行可能である。また、実戦経験の多い少ないに至っては、法律を制定するか否かの主要な根拠とはなり得ない。社会のニーズこそが最も基本的な根拠である。不断の実践と総括、不断の改正と補充、これは法律が不完全なものから比較的完全なものへ、未熟なものから成熟したものへと成長していく上での必然的な過程であり、我が国のその他多くの法律も皆こうした発展段階を経て来たのである。

 3つ目は、「どういった計画が環境アセスメントの実行対象範囲に収められる必要があるのか?」という問いに絡んだ見解である。数多くの部門が、自らが策定した計画には既に環境に対する影響が考慮されており、文中には特設の環境保全の章や一節が盛り込まれているし、相応な措置も規定してあるのだから、改めて環境アセスメントを行う必要はない、と考えている。にもかかわらず、我々の経済建設の実践中、計画の不適当さによる生態環境問題が時折出現している。都市計画においては比較的早くから環境問題が注目され、計画の中に「環境保全の章節」が単独で列記されている。しかし、我々の見る環境保全の章節は、その多くが汚水処理やゴミ処理、緑化といった方面の内容を規定するものであり、都市の規模や発展の方向性、特に産業構造、配置、クリーナープロダクション、エネルギーのクリーンな使用、都市の発展と周囲の生態との結合といった規定は殆ど考慮されていない。国土整備計画においても、一部の生態問題は往々にして無視されている。例えば、湿地の保護政策措置が明確に規定されていない。このため、多くの湿地が耕地に開墾され、一部の地方ではその生態環境に悪影響を及ぼすに至っている。水利計画の方面でも問題は少なからず存在しているが、これについては先に一部列挙したので、ここでは敢えて多言しない。国民経済の各種計画に対し環境アセスメントを行い、根源から環境問題を掴む、この立法の考え方は全国人民代表大会常務委員会の認可を得た。これを受け、環境影響評価法は、国民経済に関連する計画に対し、必ず環境アセスメントを実行しなければならないという規定を作った。

 4つ目は、政策に対して環境アセスメントを行うには条件が未熟、法律・規定を作ることには反対だ、という見解である。アンケートの中で、数多くの地方が政策に対する評価を法律に盛り込むことに賛成しており、地方は、政策上の随意性こそが生態環境問題を引き起こす重要な原因であり、この根源から掴んでいかなければ、環境問題が規制を受けることは難しい、と認識している。しかし、国務院の関係部門は、政策の関与する範囲は広大であり、不確実性も高く、政策の制定にも明確なプロセスがなく、法律規定を作ったとしても、その貫徹と実行は難しい、と認識している。

 再三の討論を経て、我々は、「二段階に分けてはどうか」という提案を受けた。つまり、先に計画に対する環境アセスメントを法律に盛り込み、政策に対するアセスメントをしばらく先送りにし、一部地方を選んでテストケースを行い、経験を培い、条件が成熟したら改めて補充という形で盛り込めばいい。ましてや、国家の数多くの重大な発展政策は全て計画を通じて実施されるのだから、計画に対する環境アセスメントという部分さえ押さえてしまえば、政策の環境に対する悪影響をほぼ制御できたも同様である、というものである。

三、環境問題は根源から掴まねばならない

 産業革命以来、人々は環境汚染と生態破壊を防止する措置を探求してきた。数百年にわたる努力を経て、生まれた措置の方法は幾千幾万、しかし、いつも対策・整備をしながら汚染を出し、一難去ってまた一難。環境問題発生の根源から防止措置を採り、環境問題を起こさせない、或いは発生しても対策・整備措置を採ってその問題を最低限度まで減少させ得るような良い方法はないだろうか?しかしこのような理想論に近い措置が、本当に現れたのである。これこそが、「戦略的環境アセスメント」制度である。

 環境影響評価法は、土地利用に関する計画、地域・流域・海域の建設と開発・利用の計画、工業・農業・牧畜業・林業・エネルギー・水利・交通・都市建設・観光・自然資源の開発等一連の計画を環境アセスメントの対象範囲に取り込むと共に、必要なプロセスや法的責任も相応に規定した。つまり、国民経済の主要な計画は全て包括されたと言っても良い。もしこの法律が適切に実施されたなら、我々は生態環境問題の発生を根本から抑制することができ、環境問題を行動の前に封じ込め、持続可能な発展戦略に頼れる保障を持たせることができる。

 我々が「戦略的環境アセスメント」を重大な戦略措置と呼ぶのには訳があり、それは一事業の全局から、発展の根源から、環境に対する影響に注意を払い、防止の政策或いは技術措置を採るからである。これにより、生態環境方面の後顧の憂いを残さない或いは殆ど残さないようにすることが出来る。例えば、エネルギーの開発と利用は大気環境質を決定するカギとなる要素であるが、もし国家と各地方政府がエネルギーに関する都市計画を制定する際、環境への影響を充分に考慮し、環境保全の要求に照らして正確にエネルギー構造とその利用方法を確定するならば、我が国都市部の大気環境質の改善に基本的な保障がもたらされることになる。例えば、天然ガス等クリーンエネルギーの供給源を積極的に開発し、同時に「電気をガスに代える」ことと石炭のクリーンな使用を大いに推進する等々。もしこのような計画が立てられたなら、また段階を分けて実施されたなら、我が国の都市部大気環境質の改善は期待できる。

 環境汚染抑制と環境質の改善において、工業計画は重要な役割を持つ。我が国は既にクリーナープロダクション促進法を発布し、各種の工業活動は全てこの法の規定に従わなければならないことになった。クリーナープロダクションは工業発展が必ず由るべき道であり、工業新文明の基本的しるしである。クリーナープロダクションの実現には多方面にわたる努力が必要である。しかし、私は特に以下の点が重要であると考える。1つ目は、工業構造を正確に選択すること。沿海の多数地域にとっては、環境キャパシティが既にごく限られているため、工業の発展にはゼロ汚染或いは軽微汚染の生産品を選択しなければならない。水不足の地区にとっては、高度に水を消耗する工業生産品を避けなければならない。2つ目は、工業技術の選択において、原料とエネルギーの消耗が低く、汚染物質の排出が少量な工業技術を選択し、時代遅れの、旧式の、淘汰されつつある工業技術を再び選択してはならないこと。3つ目は、建設と同時に環境汚染対策につながる補完的施設も建設し、排出物が国家基準を充たすようにすると共に、工業廃棄物の総合利用を行うこと。4つ目は、エコ工業団地を設立し、団地内の各企業からの工業廃棄物と有害排出物を資源として企業間で循環利用させ、ゴミを宝に、害を利に変えること。5つ目は、工業を合理的に配置し、都市の市街区、特に居住区に危害を加えさせないようにすること。同時に、飲料水の水源に対する汚染と景勝区に対する悪影響を回避させること。総じて言えば、クリーナープロダクションは、工業製品が環境基準に符合することを要求するだけでなく、生産の過程に対しても職員の健康と周囲の環境を妨げないよう要求する。もし環境アセスメントが認可され、クリーナープロダクションの要求を各種工業計画と建設プロジェクトに適切に盛り込んだなら、我が国の工業生産はまた1つ新たな段階に入ることだろう。

 我が国の土地の砂漠化が進んでいることを、皆がとても心配している。これは確かに、注目に大きく値する生態環境問題である。土地の砂漠化にストップをかける上で、重要なポイントは草原の保護にある。故に、草原の発展計画に対する環境アセスメントは重要な意義を持つ。草原生態の深刻な退化を変革するには、草原法、防砂治砂[9]法、水土保持法および関連法律を確実に貫徹し、「法が有れば必ず依り、法を執るなら必ず厳正に、法に違ったなら必ず糾弾する」ことを成し遂げることが重要である。私は、以下の業務を重点的に掴むことが必要であると考える。1つ目は、草原の開墾を厳禁し、既に開墾されたものに対しては退耕還林・還草[10]を行うこと。2つ目は、草の量で飼育する家畜の量を決め、キャパシティを超えた放牧問題を切に変革させること。3つ目は、退化・砂漠化・アルカリ化・石漠化[11]が深刻な草原に対し、放牧の禁止または休牧の制度を実行すること。4つ目は、生物の多様性を保護し、絶滅の危機に瀕している貴重な動植物の保護区を設置すること。5つ目は、水源を合理的に開発・利用すること。もしこれらの要求が全て充たされたなら、草原の深刻な退化状況は徐々に抑制され、木々や草の生い茂る新たな局面が実現されることだろう。

 環境影響評価法が関与する計画は非常に広範囲にわたり、私が上に列挙したのはごく一部の計画に過ぎない。ただ、計画の根源から防止措置を採るだけで、数多くの生態環境問題が防止可能であること、たとえ問題が起こったとしても、問題を最小限に食い止めることが出来るということを説明したかったまでである。

四、総合的に政策を決定し、共同で厳しいチェックを行う

 世界環境マネジメントの最も理想的なメカニズムを一括して言えることは、「総合的な政策決定」という一句に尽きるということである。総合的な政策決定とは、私は以下の4方面での協力が含まれるべきだと考える。第一に、関係機関或いは個人が、建設計画或いは事業の提起の段階から、環境への影響に注目し、必要な防止措置を採ると共に、実施において全過程での追跡評価を行い、環境への影響に始終責任を取り、環境保全を自らの事業の一重要組成部分と捉えること。第二に、環境保全行政主管部門は、環境に悪影響を及ぼし得る一切の政策・計画・事業に対し監督を行い、審査・評価を通じ、関係機関或いは個人、ひいては政府の政策決定機関に対し意見を提出し、これら意見を最終的に政府政策決定上の基本的な根拠にさせること。第三に、政策決定の透明度を拡大して民主的なプロセスを構築し、公衆を総合的政策決定の中へと参加させ、論証会・公聴会を通じ、行動計画に対する公衆の意見を広範に求め、合理的な意見を全て吸収・採用すること。第四に、政府は一切の政策・計画・建設プロジェクトの政策決定の組織者・指導者として、民主的な政策決定のプロセスを構築し、関係方面からの意見を真摯に聴聞し、利害を全面的に均衡させた後に決定を下すこと。もし上記の政策決定プロセスに照らして事務を行ったなら、発展が引き起こした大多数の環境問題は全て防止を得ることができるか、もしくは発生したとしても、問題を最小限に食い止めることができる。

 西側の一部国家は、環境マネジメントの総合的政策決定において長期にわたる模索を行った。「戦略的環境アセスメント」制度を実施して初めて、真の総合的政策決定メカニズムが構築できると言っても良い。このようなメカニズムは、一事業の発展政策と計画の初期段階から、早々に環境への影響に注目し、防止措置を採るものである。これにより、全局的且つ広範囲にわたる環境問題の発生を回避し、実践が証明するように、これは非常に効果的な措置である。我が国の30年間にわたる環境マネジメントの実践において、非常に深く感じさせることは、総合的な政策決定に参加することの重要性である。しかし、いつもそのきっかけが見当たらない。現在、環境影響評価法が公布され、環境保全行政主管部門・関係機関・公衆による、総合的政策決定への参加の権利とプロセスが明確に規定され、政府の審査・認可、環境保全行政主管部門による統一管理、計画の環境影響に対する関係機関の責任、および公衆による広範な参加という新たなメカニズムが形成された。これは我が国の環境マネジメントにおける新たな発展であり、意義は重大である。

 法律は、関係部門は特別項目計画[12]の策定に対し、計画が初歩的プランを形成する当初から上部へ報告して審査・認可を待つまでの間、環境アセスメントを実施すると共に、計画を審査・認可する機関にその環境影響報告書を提出しなければならないことを規定している。環境影響報告書は、以下3項目の主要な内容を含むものでなければならない。1、その計画を実施する際、環境にもたらし得る影響に対する分析、予測と評価。2、環境に対する悪影響を予防或いは軽減する対策と措置。3、環境アセスメントの結論。法律は更に、区が設置されている市級以上の人民政府が特別項目計画の案に対する審査・認可を行い、政策決定をする前に、人民政府指定の環境保全行政主管部門或いはその他部門は、関連部門の代表と専門家を召集して審査を行うと共に、書面の審査意見を提出しなければならない、と規定している。この書面の審査意見は権威性を有し、政府が認可をするか否かの基本的根拠となるものである。環境に多大な影響をもたらす計画が実施された後、策定機関は更に環境影響に対する追跡評価を適時に行い、同時に評価結果を審査・認可機関に提出しなければならない。明らかに環境に悪影響をもたらすことが発見された場合、是正措置を直ちに提出しなければならない。

 指摘すべきことは、環境アセスメントに対する審査は、環境保全行政主管部門の重要な職責であるだけでなく、関連部門もこれに積極的に参加し、また計画実施後の影響に対しても責任を負わなければならないことである。虚偽の報告をして、事実に背いた場合、法的責任を追及されなければならない。これら規定は、関係部門に、計画策定段階から計画実施後に至るまでの、自己の全ての行為に責任を持たせ、環境保全を事業発展の組成部分と見なし、自己管理業務の職責とさせるものであり、環境監督管理部門を適当にあしらうための規定ではない。これら規定は積極的な意義を有するものである。

 法律は、公衆の環境アセスメントに対する参加についても明確に規定している。「特別項目計画の策定機関は、環境に悪影響をもたらし得る、また公衆の環境に対する権益に直接関与する計画について、その計画の案を上部に送り報告する前に、論証会・公聴会を開く或いはその他形式を採り、関係機関・専門家・公衆の、環境影響報告書の案に対する意見を求めなければならない」。「策定機関は、関係機関・専門家・公衆の、環境影響報告書の案に対する意見を真摯に考慮し、同時に上部に審査を仰ぐために提出する環境影響報告書の中に、意見の採用或いは不採用についての説明を添付しなければならない」。法律は、建設プロジェクトに対する環境アセスメントに関する記述の中でも、同様の規定をしている。これら規定は全て、公衆と専門家の、計画と建設プロジェクトに対する環境アセスメントにおける参加の範囲・プロセス・方法および公衆の意見の法的地位に対し明確な規定を行うものである。公衆の意見を、環境影響報告書にとって欠かすことの出来ない組成部分にしたのである。これらの規定は、以前の環境保全の法律にはなかったものである。これは、国家が公民の環境に対する権益を非常に重視し、公衆の環境保全に係る政策決定と監督に対する参加を重視していることを物語っている。

 現在打ち出されている環境影響評価法は、依然として不完全である。例えば、政策に対する環境アセスメントや、政策決定者の法的責任等の問題については、規定がなされていない。これについては実践を通じ、不断に改正と補充を行うことで、完全なものにして行くほかない。

 環境影響評価法の実施は、チャレンジ性を多大に有する任務である。これは、計画実施後にもたらされる、環境に対する広範囲と長期間に及ぶ多種の行為が交錯・累積する影響に対し、信憑性の高い評価を下し得る能力を持たせ、国民経済の各項事業が持続可能な発展の方向へと成長して行くことを押し動かすために、政府の計画決定上のパターン化された方法とプロセスに変革を要求するものであり、よりオープンで民主的な政策決定方法とプロセスを確立し、建設プロジェクトに対する環境アセスメントとは違ったワンセットの方法と新技術の形成・発展を要求するものである。

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[1] 人民公社時代以来の政策で、食糧増産のために湖岸を埋め立て耕地とすることを奨励する――訳注
[2] 第9次5ヵ年計画(1996〜2000年)。以下、訳文では「九五」と略称する――訳注
[3] 中国の面積測量単位。1ムー(畝)は1/15haに相当する――訳注
[4] 第10次 5ヵ年計画(2001〜2005年)。以下訳文では「十五」とする――訳注
[5] 第8次5ヵ年計画(1991〜1995年)。以下訳文では「八五」とする――訳注[6] 新疆ウイグル自治区のタリム盆地の天然ガスを河南、安徽、江蘇、浙江、上海に輸送するプロジェクト。タリム盆地の天然ガス資源の調査・開発、タリムから上海までのパイプライン建設、天然ガス利用施設の建設などが含まれる。以下訳文では「西電東送」とする――訳注
[7] 西南部、西北部の豊富な水力エネルギー資源と石炭資源の開発を通じて、大容量、長距離、超高圧の送電ルートを建設し、東部沿海地域へ輸送するプロジェクト。北部、中部、南部の3ルートに分けられる。北部ルートとは、「三西(山西、陝西、内モンゴル西部)」の坑口発電所と黄河上流部の水力発電所から河北、山東に送電するルート。中部ルートは、三峡ダムを中心に華中と華南に送電。南部ルートは、西南部の水力発電所、坑口発電所及び三峡ダムから広東に送電。以下訳文では「西電東送」とする――訳注
[8]青海省の西寧と西蔵(チベット)自治区の拉薩(ラサ)を結ぶ鉄道。全長1,963q。西寧〜格爾木(ゴルムド)間845kmは1979年に開通している。第10次5ヵ年計画期間には格爾木〜拉薩間1,118kmが新たに建設される。以下訳文では「青蔵鉄路」とする――訳注
[9] 中国語は「防沙治沙」。砂漠化防止と砂による被害抑制のための整備・対処を指す。以下、訳文では「防砂治砂」とする――訳注
[10] 森林(草原)を切り開いて作った耕地を元の森林(草原)に還元すること。以下訳文では「退耕還林・還草とする――訳
[11] 南方の山地荒漠化の特殊な形式で、荒漠化の一種――訳注
[12] 中国人民共和国環境影響評価法の条文解釈第八条参照。以下同――訳注


緒論

 中国共産党中央の認可を経て、環境影響評価法は第9期全国人民代表大会常務委員会の立法計画に取り込まれた。この立法計画を着実に実行するため、全国人民代表大会環境・資源保護委員会は、王涛副主任委員をグループ長とし、胡敏、江小珂、陳潜、兪沢猷委員を構成員とする『環境影響評価法』起草指導グループを成立させ、起草指導グループは下に全国人民代表大会環境・資源保護委員会の法案室主任孫佑海、王鳳春、蔡微、王?ら同志で結成される起草作業グループを設置した。起草指導グループは、まず国家環境保護総局に本法草案初稿の起草を委託した。起草作業グループはこの基礎に立ち、「法律の枠組み案」と、その後の「意見を仰ぐための法律案」を提出した。「意見を仰ぐための草案」が提出された後、起草指導グループは国務院関係部門から意見を再三にわたり聴聞し、専門家を集めて論証を行うと共に、複数回各地へ赴き調査研究を行い、地方の人民代表大会、政府と関係部門、企業と専門家の意見を聴聞した。起草期間中、全国人民代表大会環境・資源保護委員会は代表団を結成してアメリカ、メキシコに赴き、環境アセスメントの立法と実施の状況について考察を行った。2年あまりにわたる努力を経て、また全国人民代表大会環境・資源保護委員会の2度にわたる委員会全体会議の審議を経て、「草案」が形成された。全国人民代表大会常務委員会はこの法を2000年審議具申の年度立法計画に盛り込んだ。全国人民代表大会環境・資源保護委員会はこの計画を厳格に執行し、2000年11月29日、本法草案を正式に全国人民代表大会常務委員会に具申し、審議を仰いだ。第9期全国人民代表大会常務委員会第19回会議は2000年12月26日、環境影響評価法の草案に対し初審を行った。初審の過程において、全国人民代表大会常務委員会の多数委員は、本法草案が我が国の持続可能な発展に対する切迫したニーズを反映するものであると考え、この法律の制定に賛成し、更に一歩改正した後、本法が早急に公布・施行されることを望んだ。その後、意見を広範に求めることを開始し、国務院の関係部門は、草案の提出する、政府の政策と計画に対し環境アセスメントを行うことについて、異見を唱えた。再三にわたる調査研究、意思疎通と協調と経て、認識と思想を不断に統一し、最終的に関係方面で以下のような共通認識に達した。(1)環境影響評価法を制定することは必要である。(2)政策に対し環境アセスメントを展開するには、時機、条件共に未熟であり、経験を培い、条件が揃うのを待って、改めて規定を設けるべきである。(3)政府の一部経済発展計画に対し環境アセスメントを行うことは、必要でありまた実行可能である。(4)建設プロジェクトに対する環境アセスメントは、国務院現行の行政法規を基礎とし、そのうち重要な規定を法律・法規に格上げする。全国人民代表大会環境・資源保護委員会、全国人民代表大会法律委員会、全国人民代表大会常務委員会法制工作(=活動)委員会は、この基礎に立って草案を改正し、この草案の改稿版を全国人民代表大会第29回常務委員会に具申し、二審を仰いだ。第29回常務委員会の会議上、圧倒的多数の常務委員会構成委員が新改正案に賛成し、全国人民代表大会常務委員会で早急に採択することを願った。李鵬委員長は自らグループ会議に参加し、意見を聴取して討論に参加し、また改正の方法についても具体的な意見を提出した。会議の後、全国人民代表大会法律委員会は、全国人民代表大会環境・資源保護委員会等関係部門と共同で、本法草案に対し再び修正を行い、第30回常務委員会に具申し、三審を仰いだ。10月28日の全体会議上、会議に出席した127名の常務委員会構成委員は表決を行い、賛成125票、棄権2票という高得票で、『中華人民共和国環境影響評価法』を採択し、同日、中華人民共和国国家主席江沢民は、第77号主席令を以って公布し、2003年9月1日から施行するものとした。


第一章 総則

 法律の総則、これは主に立法の目的、適用範囲、基本原則、主管部門等原則的な問題を規定するものであり、法律の具体的な条文との関係は、総則と細則の関係であり、法律全体の重大原則は、一般に全て総則の中にある程度表現され、総則の中で規定された基本原則は、実施のために、具体的な条文によって具体化される必要がある。本法律の総則は一章計6条からなり、主に本法の立法目的(第一条)、本法が環境アセスメントと呼ぶところの概念の意味(第二条)、本法の適用範囲(第三条)、環境アセスメント業務を展開する上で従うべき基本原則(第四条)、国家による公衆の環境アセスメントへの参加の奨励(第五条)、国家による環境アセスメントの基礎的業務に対する支持と強化(第六条)を規定した。

【解釈】 本条は、本法の立法目的を規定した。
 立法目的とは、立法者が法律の制定と法律の実施を通じて到達すべき目標を指す。
 本法の立法目的は、以下の数方面にわたる。
 第一、持続可能な開発戦略を実施する。持続可能な開発の概念については、通説では「将来世代のニーズを損なうことなく現在の世代のニーズを満たすような開発」(環境と開発に関する世界委員会(WCED]が1987年、国連に提出した『地球の未来を守るために(Our Common Future)』の報告書から引用)[1] と定義されている。
 生存と開発は、人類社会にとって終始一貫した2つの大きな基本問題である。我が国の先人の言葉に、「魚をとるのに沢の水を涸らし、禽獣を捕らえるのにやぶを焼き払えば、一匹残らずとることができる。しかしその代わり、翌年からは何もとれなくなってしまう」(『呂氏春秋、孝行覧・義賞』)というのがある。これは現代における、自然資源の持続可能な利用の思想に近いものである。
 近代以来、工業化への過程の進展と科学技術の発展は、人類が自然界を前に所有する力量を充分に顕示しただけでなく、人類のために未曾有の富を創造し、一方で生態破壊、資源の枯渇、人口爆発等、未曾有の環境問題をもたらした。人類は、生存問題の解決という方面で既に巨大な成就を得たが、人類の全体的な行為は、自らの地球上における生存環境を根本から破壊する可能性を秘めている。正にこのような情勢の下、人類はやむなく、文明の延長と開発の問題を、改めて開発戦略の角度から高度に考慮せざるを得なくなっている。
 1962年、アメリカの生物学者レイチェル・カーソン女史(R.Carson.1907〜1964)の科学普及著作『沈黙の春』が出版された。この著は、有機農薬の無節制な使用は、人類の生存を脅かす大破壊をもたらし得る、と考えている。この著の観点は、西洋社会の強烈な反響を呼び、環境問題に一声の警笛を打ち鳴らした。
 1972年、スウェーデンの首都ストックホルムで、114の国家の代表が参加した第1回国連人間環境会議が開かれ、国連の場で初めて環境問題が議論された。
 1980年、国連環境計画(UNEP)の委託を受け、国際自然保護連合(IUCN)が起草した『世界保全戦略(World Conservation Strategy)』は、経済の発展は、人類のニーズを満たし、人間の生活の質を改善することを以って、同時に生物圏を合理的に利用し、現在世代に最も持久的な利益をもたらすと同時に、その潜在能力を保持し、将来世代のニーズと願望を満たさなければならない、という内容を提出した。ここでは既に経済発展と自然資源の保護が明確に繋ぎ合わせられ、生物資源保護における3つの目標が提出された。1、基本的な生態過程と生命維持装置を維持すること。2、遺伝の多様性を保護すること。3、生態系と生物の種の持続的利用を保証すること。これが、現代という意味において初めて初歩的に提出された、持続可能な開発の概念であった。
 持続可能な開発の概念の形成と開発に対し重要な後押しの役割を発揮したのは、1983年11月に成立したWCEDが、ノルウェー首相ブルントラント女史の指揮の下、1987年に国連に提供した報告書『地球の未来を守るために』の中でまとめた、「持続可能な開発とは、将来世代のニーズを損なうことなく現在の世代のニーズを満たすような開発」の観点である。これは比較的正確に且つ全面的に、持続可能な開発の科学的概念を表現したものである。
 1992年ブラジルのリオデジャネイロで開かれた国連環境開発会議は、人類社会の開発と環境保全の実現のための、歴史的意義のある大会であった。この会議は、WCEDの報告書『地球の未来を守るために』をベースとして、更に一歩深く「持続可能な開発」の概念を説明した。一国の如何なる地域の開発も、他国の如何なる地域の開発を妨げてはならない;先進国は、地球生態環境の保全とグローバルの持続的開発の促進に対し、不可避の責任と義務を負う、と。そのうち、最も重要なことは、この会議で『アジェンダ21』という未来の環境と開発の行動要綱が認可され、「持続可能な開発」の概念が、各国政府と国際機関による共通認識の基礎に立った開発戦略となり、人類社会が持続可能な開発の方向へと歩む新たな段階を切り開いたことである。
 1992年8月10日に中国共産党中央と国務院が認可した『我が国の環境と開発における10大対策』の第一条は、「持続的な開発戦略を実行する」と明確に提起している。
 1994年、中国政府は率先して世界に向け、国家級の協議日程である『中国アジェンダ21』(中国21世紀人口・環境・開発白書)を推し出した。このアクションは世界を震撼させた。1996年、江沢民同志を中核とする中国共産党中央は、時機を判断して情勢を推し量り、中国の国情に対し科学的な分析を行うという基礎に立ち、持続可能な開発戦略を確立した。また、「持続可能な開発」は、1996年3月に第8期全国人民代表大会第4回会議で認可された『中華人民共和国国民経済・社会発展の「九五」計画と2010年に向けての展望的目標要綱』において世紀を跨ぐ国家戦略として明確に提起され、各級政府の国民経済と社会発展計画においても、程度の違いはあるにせよ具体的に表現された。2002年3月、江沢民総書記は、「持続可能な開発」の実現における核心的な問題は、経済・社会と人口・資源・環境の調和ある発展である;発展は、経済成長の指標を見るべきに止まらず、ヒューマニズムの指標、資源の指標、環境の指標をも見なければならない、と指摘した。
 2002年8月26日、南アフリカのヨハネスバーグでの「持続可能な開発世界サミット(WSSD)」の開催は、グローバルの持続可能な開発事業が新たな進展を得たことを示した。コフィ・アナン国連事務総長は、これに対し素晴らしい総括を行った。「この度、世界各国の元首と首脳を招聘して会議を行い、地球を救い、環境を保護し、貧困を消滅させ、繁栄を促す、世界の持続可能な開発の計画を、討議の末制定した。各国はこれを国に持ち帰った後、貫徹実施に着手すること。世界の持続可能な開発については、これは単なるスタートに過ぎず、国連は近い将来監督機関を成立させ、各国の『執行計画』の実施状況に監督と報告を行い、世界の持続可能な開発を促進するものとする」。
 グローバルの持続可能な開発事業は、より大きな発展を必ず得なければならない。
 第二、計画の実施後に、環境に悪影響がもたらされることを予防する。「予防を主とする」、これは我が国の環境保全における1つの基本原則であり、国民経済と社会発展において、環境汚染と生態破壊が発生した後にその処理方法を考えるのではなく、各種予防的な手段と措置を採り、環境問題の発生を防止する或いはそれを最小限に抑制することを定めたものである。国内外の経験から得た教訓に拠れば、一部の生態系は不可逆性を有するため、数多くの環境問題は、一旦発生してしまうとその回復は非常に難しい。しかも、あるものについては対策・整備を施すことが可能ではあるが、経済的に巨額の代価を支払わなければならず、全く割の合わないものであると言わざるを得ない。
 政府計画の実施が、環境に悪影響をもたらすことを予防する。この規定は本法における1つ大きな突破である。本法は、計画の草案を上部に報告して審査と認可を仰ぐ前に、計画が実施後に環境にもたらし得る影響について分析と予測を行い、環境に悪影響をもたらさないようにする予防対策と措置を提出すべきであり、計画の実施後に環境に悪影響がもたらされることを予防する或いは軽減するという目的を達成しなければならない、と規定している。
 第三、建設プロジェクトの実施後に、環境に悪影響がもたらされることを予防する。「建設プロジェクトの実施後に、環境に悪影響がもたらされることを予防する」とは、建設プロジェクト者に対し、立地選択・設計と建設施工の過程で、また竣工し運行に投じられた後に、環境にもたらされ得る破壊に対し、建設プロジェクトに着工する前にそれらの予測とアセスメントを行い、相応な環境保全対策や措置を提出し、当該事業実施後の環境に対する悪影響を防止或いは軽減するよう要求することを指す。
 第四、経済・社会・環境の調和ある発展を促進する。経済・社会・環境の調和ある発展を促進することは、現段階における我が国の環境立法の目的であり、また当然、環境影響評価法の立法目的でもある。「調和ある発展」とは、環境保全・経済建設・社会発展が互いに調和し合い、環境保全・経済建設・社会発展を総合して政策決定を行い、同時計画・同時実施・同時の監督検査を行い、全国の経済・社会・環境の効果と利益の統一を図ることを指す。我が国現段階の国情は我々に対し、経済利益だけを追い求めて環境破壊という悪影響をもたらすことはできない、現実の経済・社会のキャパシティを超過して「ゼロ汚染」・「ゼロ排出」のために経済・社会の発展を放棄することは出来ない、と要請している。我々は、環境を保全するという前提の下に開発を追求しなければならないと同時に、開発の過程で環境問題を上手く解決し、経済と社会の持続可能な開発を追求しなければならない。全国人民代表大会常務委員会は、経済の発展に因る環境への悪影響の発生を回避或いは軽減させ、経済・社会の発展を健全なる軌道に乗せ、我が国の経済・社会・環境の調和ある発展を促進するという目的を果たすために、環境影響評価法を制定し、計画と建設プロジェクトに対する法に則った環境アセスメントを展開することを要求した。

【解釈】 本条は、環境アセスメントの概念に含まれる意味を規定した。
 環境アセスメントは、まず建設プロジェクトの分野から着手する。これは、プロジェクトの立地選択・設計と建設施工の過程で、および竣工して生産に投じられた後に、環境にもたらされ得る影響について、建設プロジェクトが着工される前に、分析、予測と評価を行うことを指す。これは一種の方法論であり、物理学、化学、生態学、文化と社会経済等方面を含む。1964年、カナダで開かれた国際環境質評価会議ture)』の報告書から引用)[2]で、学者たちは「環境影響評価」という概念を打ち出した。環境アセスメントがより高い次元で意味することは制度であり、つまり環境アセスメントを環境管理における1つの制度として規定すると共に、法律という形でこれを肯定するというやり方である。1969年、アメリカ国会は『国家環境政策法(NEPA))を採択し、初めて法律の形で環境アセスメントを1つの法的制度として規定した。この法案は、連邦政府は人類の環境の質に重大なる影響を及ぼすあらゆる建議、立法報告、計画、決定およびその他重大な連邦活動に対し、全て環境アセスメントを行わなければならない、と明確に規定している。また、方策やプランを提出した者が、環境アセスメントの報告書の提出義務を負うこと、とも規定している。環境アセスメント制度の実施が、環境汚染と生態破壊の防止に科学的予見性を持つことから、この制度はたちまち世界中広範に知れ渡るところとなり、また数多くの国家の政府と議会がこれを受け止めた。
 環境アセスメントの概念と制度は、20世紀70年代初期から我が国に対し影響を与え始めた。1978年、中国共産党中央は、国務院に自らの指示と意見を書き込んで転送した報告書『環境保全活動報告要点』の文中で初めて、環境アセスメント活動を展開するという構想を打ち出した。1979年、第5期全国人民代表大会常務委員会第11回会議は、『中華人民共和国環境保護法(試行)』を採択、建設プロジェクトに対し環境アセスメントを行うことを、初めて法的制度として確立した。その後、続々と制定された各項環境保全法律は、均しく建設プロジェクトに対し環境アセスメントを行うという原則的規定を持つ。
 本法の言う環境アセスメントの概念が内に含む意味を理解するには、上に述べた方法と制度以外、まだいくつかの把握すべき事柄がある。第一に、評価の対象は、形成されている政府関連の経済発展計画と、建設事業者が着工を予定している建設プロジェクトである。第二に、評価機関は、評価対象が建設実施後にもたらし得る環境影響を分析・予測・評価しなければならない。第三に、評価機関は分析・予測・評価を通じ、環境への悪影響を予防或いは軽減する、具体的で明確な対策と措置を提出しなければならない。第四に、環境保全部門は、計画と建設プロジェクトが実施された後の実際の環境影響について追跡調査、分析、評価を行わなければならない。以上の4点を、先の「方法」と「制度」に付け加え、計6方面から互いに補完させ合い、こうして環境アセスメントの概念の完全なる体系が構成されたのである。

【解釈】 本条は、本法の適用範囲を規定した。
 法の適用範囲とは、その法律が如何なる範囲内で効力を有するかを指すものである。一般には、制定する法が如何なる主体の如何なる活動(事項)、如何なる時間的範囲と如何なる空間的範囲に対して効力を有するかを指す。一般には、まず法の空間的範囲での効力、次いで法の主体に対する効力という順序で、総則において規定を行う。時間的範囲での効力については、我が国の法律では現在、附則の中で規定を行うという習慣がある。本条は主に、本法の空間的効力および主体・事項に対する効力に対し、規定を行った。
 本条の規定に基づき、本法の適用範囲は以下の3部分を含む。
 第一、本法第九条に規定する範囲内で計画を策定する場合、本法に照らして環境アセスメントを行わなければならない。全体的に、本法が指す計画とは、以下のような特徴を持つ。1、政府が策定する計画を指す。これで企業による計画と一線が画された。2、政府の経済発展方面での計画を指す。これにより、政府によるその他の計画と区別された。3、実施後環境に影響を及ぼす計画を指す。国際的な経験が証明するように、全ての計画に対し環境アセスメントを行う必要は必ずしもない。一般に、評価を行う前、関係部門はまず「識別プロセス」を踏み、識別を通じて環境に影響を与える計画を選別し、リストアップした上で、改めてこれら計画に対し正式に評価プロセスを始動させる必要がある。
 我が国の経済と環境に対する管理作業の段階性や、各方面の意見を調整する必要性を考慮し、本条は現時点で環境アセスメントを行い得る計画に対し、以下のような記述を加えた。「本法第九条に規定する範囲内で計画を策定し、……本法に照らし、環境アセスメントを行わなければならない」。そして本法第九条は、「本法第七条、第八条の規定に従い環境アセスメントを実施する計画の具体的な範囲については、国務院の環境保全行政主管部門が国務院関係部門と合同で規定して国務院に報告し、国務院によって認可されるものとする」と規定している。それでは、第七条と第八条は、環境アセスメントを実施する必要のある計画の具体的範囲について、どう規定しているのだろうか?第七条と第八条は、本法に従って環境アセスメントを行うべき計画とは、国務院関係部門、行政区を設置する市級以上の人民政府とその関係部門が策定した、土地利用に関する計画、地域・流域・海域の建設と開発利用計画、および工業・農業・牧畜業・林業・エネルギー・水利・交通・都市建設・観光・自然資源の開発に関する特別項目計画を指す、と規定している。これら計画の具体的範囲については、各種計画の複雑性により、本法においては明確にし難いため、国務院の環境保全行政主管部門が国務院関係部門と合同で規定して国務院の認可を受けた範囲に授権するほかない。
 第二、中華人民共和国の領域内と中華人民共和国管轄下のその他海域内で、環境に影響のあるプロジェクトを建設する場合、本法に照らし、環境アセスメントを行わなければならない。
 1、本法が言う「中華人民共和国の領域内」とは、我が国の主権が及ぶ全ての地域を指し、これには領土(領陸)、領海(領水)、領空が含まれる。しかし、我が国の香港・マカオ両特別行政区の基本法の規定に照らし、この2つの基本法の添付文書三に盛り込まれる全国的法律に限って、この両特別行政区での適用ができる。環境影響評価法はこの2つの基本法の添付文書三に盛り込まれていない。従って、香港特別行政区とマカオ特別行政区では、本法は適用されない。
 2、本法が言う「中華人民共和国管轄下のその他海域」とは、領海を除く、法律に照らした或いは国際慣例に照らした、我が国が依然としてその管轄権を持っているその他海域を指す。これには接続区、排他的経済区と大陸棚が含まれる。『中華人民共和国領海と接続区法』の規定に基づき、我が国の接続区とは、領海以外の領海に接続する幅12海里の海域一帯を指す。我が国はこの接続区内で管制権を行使する権利を有する。管制権とは即ち、我が国の陸地領土、内水域、又は領海内で安全・税関・財政・衛生・出入国管理に関する法律・法規に違反する行為を防止・処罰するために行使する管制権を指す。『中華人民共和国排他的経済区と大陸棚法』の規定に基づき、我が国の排他的経済区とは、我が国領海以外で領海に接続する地域で、領海の幅を測量する基線から200海里までを指す。我が国の大陸棚とは、我が国領海以外の、我が国の陸地領土を全方位に延長し、大陸外周の海底地域の海床と底土まで拡大し、領海の幅を測量する基線から大陸外周までの距離が200海里に満たない場合は、それを200海里まで拡大した際の海床と底土を指す。『海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)』と我が国の『排他的経済区と大陸棚法』の規定に基づき、我が国は排他的経済区と大陸棚において主権的権利を享受し、排他的経済区と大陸棚における海洋環境と資源に対する保護と保全の権利を有するものとする。
3、本条が言う「環境に影響のあるプロジェクトの建設」とは、更に2つの方面を含む。一に、「……環境に影響のあるプロジェクト」とは、建設施工の過程で、また竣工して生産に投じられる段階とその施設の寿命満了後、その影響を受け得る範囲内にある大気・水・土地・海洋・森林・草原・生物等環境的要素に対して変化をもたらす可能性のある、一切の建設プロジェクトを指す。二に、「……プロジェクトの建設」とは、固定資産の投資方法に拠って行われる一切の開発建設活動を指し、これには国有経済、都市部・農村部の集団経済、共同経営、株式制、外資、香港・マカオ・台湾からの投資、個人経済およびその他各種異なる経済類別の基本建設、技術改造、不動産開発等各種開発建設活動を指す。
第三、上述の計画を策定する、および上述のプロジェクトを建設する場合、本法に照らし、環境アセスメントを行わなければならない。「本法に照らし、環境アセスメントを行わなければならない」とは、2つの方面を含む。一に、上述の環境アセスメント活動は、本法の総則とその他各章の規定に照らして行われなければならないこと。二に、本法の総則とその他各章が直接規定していないが、本法からの授権を経て国務院或いは関係部門がほかに規定したものについては、関係方面は環境アセスメント活動を展開する際、これを遵守しなければならない。例えば、本法第二十二条第一項は、「建設事業者は国務院規定に従い、建設プロジェクトの環境アセスメント文書を、認可権限を有する環境保全行政主管部門に対し、その認可を求めて報告・提出すること」と規定しているが、ここで言う「国務院規定」も、関係機関が環境アセスメント活動を展開する際、やはり遵守しなければならない規範である。

【解釈】 本条は、環境アセスメント活動を展開する上で、遵守すべき若干の原則を規定した。
 本条の規定に基づき、環境アセスメント活動を行う際は、以下の原則を遵守しなければならない。
 第一、環境アセスメントは、客観性・公開性・公正性を必ず有すべきものでなければならない。「客観性」とは、主観的憶測とは区別されるものであり、「客観性の原則」は、環境アセスメントを行う際、関係機関と個人が実際に即した行動を取り、一切を実際から出発させ、評価の規則・規範を厳格に守り、各種環境的要素に対して客観的な評価を行うことを要求する。「公開性」とは、水面下の操作とは区別されるものであり、国家が規定する機密保持を必要とする状況がない限り、環境アセスメント活動に関する状況と環境アセスメント文書の概要は、法に則って社会に公開されるべきものであり、また関係機関、専門家および公衆の意見を仰ぐべきものである。つまり、「太陽の光」の下で、環境アセスメントに関する活動を行わなければならない、ということである。「公正性」とは、関係機関と個人は独立的で自由闊達な地位を以って、偏ることなく環境アセスメント活動を行わなければならないことを指す。評価活動を行う者は、如何なる主観的偏見を持ってはならず、環境アセスメント実施中、如何なる個人的利益や部門的利益、地方的利益或いはその他公正な評価に影響を及ぼし得る要素を挟んではならず、全ての評価対象に平等に接し、関連法律・法規・規約の規定するプロセスと方法に厳格に依拠して調査・分析・予測・評価を行い、関連する環境アセスメント文書を作成・認可しなければならない。

 第二、環境アセスメントの実施は、計画或いは建設プロジェクトの実施後の各種環境的要素およびそれが構成する生態系に与え得る影響を総合的に考慮しなければならない。人類の生存する地球は、1つの完全な生態系である。これは各種環境的要素が均衡を得た結果であり、故に客観性を持つ。もし人々が生態の法則を無視し、一定範囲内の環境的要素を強行的に変化させ、生態のバランスを破壊すれば、全生態系に大小異なる影響が必然的にもたらされ、ひいてはある程度人類そのものの運命に影響が起こる。このため、環境アセスメントは1つの総合的な評価でなければならず、関係機関と個人は評価活動において、計画と建設プロジェクトの各種環境的要素およびそれが構成する生態系に対する影響を総合的に考慮し、計画或いは建設プロジェクトの環境に対するプラスの或いはマイナスの影響を総合的に考慮し、利害得失を全面的に判断し、正確な結論を導き出さなければならない。
 第三、環境アセスメントが出した結論は、政策決定に科学的な根拠を提供するものでなければならない。環境アセスメント制度の確立は、策定中の計画と建設プロジェクトに対し環境アセスメントを行い、計画と建設プロジェクトが実施された後に環境にもたらされ得る悪影響を予防し、環境汚染と生態破壊を抜本的に解決することに対し、非常に重要な役割を持つ。しかし、環境アセスメントの上述の役割は、決しておのずから実現されるものではない。環境アセスメントの役割を真に発揮させるためには、環境アセスメント自身が「客観性・公開性・公正性」を持つ以外にも、環境アセスメントの結果を政策決定者に知らせ、運用させなければならない。つまり、環境アセスメントの結論およびその審査意見を、政策決定者の関連政策決定活動の中に組み込ませることが必要である。これこそが、「総合的な政策決定」の本意なのである。さもなければ、環境アセスメント活動を展開する意義など何もなくなってしまう。この目標を実現させるために、政策決定者は誠心誠意、環境アセスメントの結論と審査意見を重視し、環境アセスメントの結論と審査意見を計画或いは建設プロジェクトを認可する上での根拠としなければならない。一方、環境アセスメントに参加する機関と個人も、厳格に自律し、自己の社会における名誉と社会への影響を珍重し、環境アセスメントを通じて自らの下した結論と審査意見が、そして政策決定者の政策決定活動に提出する根拠が、非科学的根拠でもなければ「偽科学的根拠」でもない、科学的な根拠でなければならないことを認識しなければならない。このようにして初めて、環境アセスメントにおける評価担当者の、社会の良好な名誉とイメージを樹立することができ、また政府による政策決定の正確性を保証し、国家による環境影響評価法の制定と環境アセスメント制度の確立のもたらすプラスの作用が、やっと充分に発揮されるのである。

【解釈】 本条は、環境アセスメント活動において、公衆の参加のもたらす作用が発揮されるべきであることを規定している。
 本条が言う「公衆の参加」とは、関係部門、専門家および公衆が、一定のルートと方法を通じ、一定のプロセスを踏んで、その環境権益に係る環境アセスメント活動に参加し、計画の策定或いは建設プロジェクトの認可の政策決定活動を広大な公衆の利益に符合させることを指す。本条の言う「公衆」という語彙には、広義と狭義の別がある。広義で言う「公衆」とは、関係単位、専門家と公衆(ここで言う「公衆」は、専門家を含まない公民を指す)を含む。狭義の「公衆」とは、公民のみを指す。環境アセスメント活動における「公衆の参加」の原則は、民主的な原則が環境保全の分野で伸び、発展して行くものである。
 環境アセスメント活動中、何故「公衆の参加」という原則を堅持しなければならないか?これには主に以下の数点が考慮されている。1、まず、中国共産党と我が国の各級人民政府は以前から「公衆の中より来て、公衆の中へと往く」という優秀な伝統を持っている。また、以前から公衆路線を堅持しており、各建設プロジェクトへの従事の過程において、公衆の意見に耳を傾け、公衆の意見を取り込むことを一貫して重視している。環境保全活動における公衆の参加を奨励・支持することは、我が国の一連の環境保全の法律・法規中で、1つの重要な制度として既に規定されている。例えば1993年、国家発展計画委員会ture)』の報告書から引用)[3]、国家環境保護総局、財政部と中国人民銀行が合同で発布した『国際金融機関の融資による建設プロジェクトの環境アセスメント・マネジメント業務の強化に関する通知』は、本文中で「民間参加は環境アセスメントにおける重要な構成部分であり、『報告書』は専門に章節を設けて説明を加え、影響を受ける可能性の高い民間若しくは社会団体の利益が考慮および補償されるようにしなければならない」と明確に提起している。1996年改正公布の『中華人民共和国水質汚染防止法』、1996年制定の『中華人民共和国環境騒音汚染防止法』等の法律は全て、建設プロジェクト所在地周囲の機関や住民の意見を求めなければならないという規定を持つ。次に、国外の数多くの国家も、公衆の環境管理活動に対する参加を大変重視しており、とうの昔にこれを1つの重要な制度として規定している。例えば、公民の環境管理に対する参加を最も早くから規定した法律はアメリカが1969年に制定した『国家環境政策法(NEPA)』であるが、その本文中の大量の条項は、公衆が如何にして環境アセスメントに参加するかを規定したものである。この後、その他一部の西側諸国も、続々とアメリカを見習い、環境に影響を与え得る重大なアクションを起す前に、先に環境アセスメントを行うことを要求すると共に、公民が環境政策の決定に影響力を及ぼす権利の行使の保障を規定した。現在、環境アセスメント活動において公衆の参加を保障することは、既にグローバルな環境保全活動における1つの重要な組成部分となっている。第三に、我が国の無数の実践が証明するように、環境アセスメント活動中に公衆の参加を保障することは、環境アセスメントの質的保証に資する。またこれにより、政府の政策決定行為に対し、環境アセスメントに科学的根拠を提供させることが現実に可能となる。国内外の経験が全て我々に教えてくれているように、環境アセスメントは政府の政策決定行為に科学的根拠を提供する一過程であり、この過程において公衆の参加を奨励・支持することは、社会各方面の利益と主張が政策決定の過程で比較的充分な考慮を得ることを可能にする。これ自身、既に政策決定の民主化の、一種の具体化されたものである。同時に、ある地域で生活する公衆こそが、その地域の環境状況に対し最も直接的な感想と認識を有しているのである。環境アセスメントの過程で関係機関と個人の意見を充分に聴聞することは、関係部門に、評価対象が置かれている環境の状況をより全面的に認識させることを促し、数多くの潜在的な環境問題を発見・認識させ、環境アセスメントの正確性を更に一歩高めさせ、政府の政策決定の科学的水準を更に一歩引き上げることができるのである。
 『中華人民共和国環境影響評価法』は、環境アセスメント活動の専門法律として、国外の先進的な経験を参考し、我が国で実践中の実行可能な方法を真摯に総括し、「公衆の参加」を環境アセスメントの1つの重要な原則・プロセスとして規定した。これは我が国の環境関連法律における新たな発展である。尚、如何にして計画或いは建設プロジェクトの環境アセスメントに対する公衆の参加を規範化して行くかについては、本法第十一条(第二章)と第二十一条(第三章)で特に規定を設けた。

【解釈】 本条は、国家が如何にして環境アセスメントの基礎的業務を強化すべきかを規定した。
 本条が言う環境アセスメントの基礎的業務とは、環境アセスメントの基礎データベースと評価指標体系の構築を強化し、環境アセスメントの方法と技術的規範についての科学的研究を展開し、環境アセスメントの必要な情報共有制度を確立することを指す。
 環境アセスメント活動は、非常に高い科学性と技術性を有する業務である。環境アセスメントの結論が客観的で実際的な情況を真に反映しているか否か、評価対象が実施後に環境にもたらす影響について正確な分析・予測・評価を行っているか否かについては、評価活動に採用する方法と技術的規範は科学的であるか否か、評価が及ぶ各種環境的要素は全て出揃っているか否か、基礎データベースは完全で正確か否か、といった事柄と密接な関連を持っている。環境アセスメント活動は、完備された基礎データベースと一連の評価指標体系を客観的に要求し、完全且つ科学的な環境アセスメントの方法と技術的規範を必要とする。このため、国家が環境アセスメントの基礎データベースと評価指標体系の構築を強化し、環境アセスメントの方法と技術的規範について科学的な研究を行うことを奨励・支持し、環境アセスメントの科学性を高めることは、十分に重要な意義を持つ。しかし、我が国の現状は、目下、環境アセスメント活動を展開する上でその完備が急務とされる基礎データベースが依然十分に欠乏しており、評価に用いる指標体系も頗る不完全であり、評価の方法と技術的規範も科学性に欠けている。これは環境アセスメントの正確性と権威性に大いに影響するものである。このため、法律の規定に照らし、如何にして環境アセスメントの基礎データベースと環境アセスメントの指標体系の構築をスピードアップ・強化するか、如何にして環境アセスメントの方法と技術的規範を更に一歩完備させるか、これは国務院環境保全部門と国務院関係部門等が直面している差し迫った任務である。
 これと同時に、環境アセスメントは数多くの分野に及び、かつ多くの部門に関係することから、多種のデータ情報の運用が必要となる。しかし、現状は、如何なる部門も環境アセスメントに必要な完全且つ正確なデータ情報を単独で提供することが出来ず、同時に関係部門間でのデータ情報交流も非常に閉塞している。従って、環境アセスメントが出す結論の正確性を保証するために、関係専門部門が各自のテリトリー内の情報収集面で持つ強みをそれぞれ発揮し、環境アセスメントの必要な情報共有制度を確立し、関係部門間の提携を通じて協力体制を形成することが必要である。本法は、関係部門間で環境アセスメントの必要な情報共有制度構築を明確に要求している。これは、法律が賦与する環境アセスメント任務の完遂と、我が国の環境影響評価法が確定する立法目標の実現にとって、十分重要な意義を持つものである。

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[1] WCEDの日本での呼称、最終報告書の題名『地球の未来を守るのために』、および持続可能な発展開発の定義(訳文)については、EICネット[環境用語集:「持続可能な開発」]『国際関係用語辞典』(岩内亮一、薮野祐三編集代表、学文社、2003年4月25日第一版)の解説を参考した。――訳注
[2] 原文直訳。日本語名称は不明――訳注
[3] 現国家発展改革委員会。以下訳文では旧名称の国家発展計画委員会を用いる――訳注


第二章 計画に対する環境アセスメント

 本章は計9ヵ条から成り、主に環境アセスメントの実施が必要とされている計画に対し分類を行うと共に、計画に対する環境アセスメントのプロセスと要求を重点的に規定した。具体的な条文は、本法に照らして環境アセスメントを行うべき総合計画の範囲とこの類に属する計画に対する評価の要求(第七条);本法に照らして環境アセスメントを行うべき特別項目計画の範囲とこの類に属する計画に対する評価の要求(第八条);環境アセスメントを行う必要のある計画の具体的範囲を如何にして明確に線引きするか(第九条);特別項目計画の草案に対する環境影響報告書に含まれるべき主な内容(第十条);公衆が特別項目計画に対して行われる環境アセスメントに参加する際のプロセスと要求(第十一条);認可機関に審査を求める際、環境影響評価報告書を特別項目計画の草案に添付して提出すべきという規定(第十二条);特別項目計画草案の環境影響報告書に対する審査を実施する際の規則(第十三条);特別項目計画草案の環境影響報告書が下した結論とその審査意見が有する法的地位(第十四条);計画策定機関が、計画実施後の環境影響に対し追跡評価を行うという規定(第十五条)である。

【解釈】 本条は、本法に照らして環境アセスメントを行うべき総合計画の範囲とこの類に属する計画に対する評価の要求を規定した。
 第一、本条が指す計画の範囲について。
 計画とは、比較的全面的で長期的な発展計画を指すものである。計画という語彙は、人々が未来の事業の発展に対して行う予見・配置・手配を指し、大きな方策決定性を有するものである。また計画は一般に、明確な所期的目標を持ち、具体的な執行者及び採るべき措置を規定することで、所期目標の実現を保証するものである。我が国の一般的な状況は、およそ調整・制御期間が5年ないし5年以上に及ぶ配置と手配は、その名称が計画であろうと規劃であろうと、全て均しく計画に属するとしている。国外では、計画とはプランを指す。プランという英語の語彙はそもそも、ある物を平面上に置いた際の影が構成する青写真のことを指していたが、その後転じて抽象的な概念や理想、哲理をも含めて意味するようになり、その時間的概念も遥か前方に及ぶようになった。社会の生産力の発展に伴い、社会化の程度も高められ、経済生活と社会生活が日増しに複雑に多様化し、計画も規劃もだんだんと人類が社会生産活動を行う上での重要な管理方法となってきた。
 本条が言う総合計画とは、全ての総合計画を指すのではなく、総合計画の一部分を指す。つまり、土地利用関連計画、及び地域・流域・海域の建設と開発利用計画を指す。本来、総合計画において最も高い地位を有し、且つ効果も最大なのは「国民経済と社会発展計画」であり、これが環境にもたらす影響は十分に巨大である。例えば、『国民経済・社会発展「八五」計画』や『国民経済・社会発展「九五」計画と2010年に向けての展望的目標要綱』等計画性を有する文書。理論から言えば、この類に属する計画の草案に対しては、必ず環境アセスメントを行わなければならない。しかし、政府の一部重要部門が提出する異見を考慮し、「国民経済・社会発展計画」類の計画は本法の適用範囲に収められておらず、先に「土地利用関連計画及び地域・流域・海域の建設・開発利用計画」等に対して環境アセスメントを展開することとなった。
 「土地利用関連計画」については、本法ではその具体的な範囲を確定していないため、実践中如何に実施し且つ具体的に確定するかは国務院の環境保全行政主管部門が関係部門と共同でその方案を提出する必要があり、それは国務院の認可を得た後に実施される。しかし、習慣から見れば、その範囲は土地利用総合計画等土地利用に関する計画を含むべきものであり、ある意味では都市計画や農村・町の計画、河川・湖沼の総合整備と開発利用計画をも含む。しかし、後者に関してはまた関係部門により専門管理が実施されることから、本条の「土地利用関連計画」はこれを含んでいない。「土地利用総合計画」とは、一定の地域内の、国家社会経済の持続可能な開発の要求、当地の自然・経済・社会条件に基づいた、土地に対する開発・利用・整備・保護の、空間的・時間的な全体的手配と配置を指し、これは国家が土地の用途について規制を行う上での基礎となるものである。土地利用総合計画は総合性・長期性(その期限は一般に15年間)を有し、また戦略性や強制性といった特徴をも有するものである。土地利用総合計画は、また複数レベルに及ぶ計画体系でもある。我が国の土地に実行されているレベル別の管理体制に基づき、土地利用総合計画は行政区分に拠り全国・省(自治区、直轄市)・市(州)・県(市)・郷(鎮)の5レベルに分けられる。本法の調整範囲から見ると、郷(鎮)レベルの土地利用総合計画は含まれない。県(市)政府の策定した土地利用総合計画については、本法第三十六条の規定により、省・自治区・直轄市の人民政府が当地の実際的状況に基づいて、これに対し環境アセスメントを行う必要があるか否かを決定するものとする。
 「地域」、「流域」、「海域」の建設と開発利用計画については、その策定と認可のプロセスは、国務院『建設プロジェクト環境保全管理条例』、『中華人民共和国水法』、『中華人民共和国海域使用管理法』の中で均しく規定されている。目下の実際的状況から見れば、総合計画において、土地利用に関する計画及び地域・流域・海域の建設と開発利用計画は、その実施後に環境に悪影響が比較的もたらされ易く、またそれに対し環境アセスメントを実施することには一定の基礎があるため、この類に属する計画に対し環境アセスメントを行うことは、必要なだけでなくまた実行可能でもある。
 第二、本条の指す「土地利用関連計画及び地域・流域・海域の建設・開発利用計画」に対しては、以下の環境アセスメントのプロセスが適用される。
(一)本条の指す計画に対する環境アセスメントの責任機関と実施機関について
1、本条の指す計画に対する環境アセスメントの責任機関について。第七条第一項の規定に基づき、その計画を策定した者が、その計画草案に対する環境アセスメントの実施の責任を負う。
 同項に基づき、計画策定機関とは、国務院関係部門、及び行政区を設置する市級以上の地方人民政府及びその関係部門を指す。上述の国務院関係部門とは、国土資源部、国家発展計画委員会、水利部、国家海洋局等を含む。上述の行政区を設置する市級以上の地方人民政府及びその関係部門とは、省・自治区・直轄市の人民政府及びそれに所属する部門、行政区を設置する市(通常では省・自治区が所轄する市と州)の人民政府及びそれに所属する部門が含まれる。県級(県レベルの市を含む)人民政府が策定する計画に対し環境アセスメントを行うべきか否かについては、各地既存の異なる条件のため現段階では全てに環境アセスメントを行うべきことを統一規定する条件がまだ揃っていないことを考慮し、法律ではこれを一律に強要していない。省・自治区・直轄市人民政府所轄内の、条件を有する県級人民政府に対しては、これが策定した計画草案に対し、本法の関連規定に照らして環境アセスメントを実施することを要求してもよい。県級人民政府所属部門及び郷・鎮級人民政府が策定する計画については、主にそれが上級の人民政府関連計画を執行する上での具体的手配に属することから、本法ではそれが策定した計画に対する環境アセスメントの実施を要求しない。
 計画の策定機関がその計画草案に対し環境アセスメントの実施の責任を負う理由は、計画に対する環境アセスメントが持つ特徴で決定された。まず、人民政府は社会の管理者としての地位に立ち、その計画を策定することは決して自身の利益を図るためのものではなく、所轄地域の人民の利益を図るためのものである。次に、計画を策定する政府は当地の全面的状況を最もよく把握しているため、どの時機にどの機関が環境アセスメントを行うことが業務にとって最も有利となるかを掌握している。第三に、政府の仕事は特殊性を帯びており、例えば安全や財務等に係る問題については、如何なる状況下でも社会の全ての人にそれを公開すべき必要はない。最後に、法律は計画策定機関による、その計画草案への環境アセスメントの実施を規定しているが、これは本法制定の目的によって決定されたものである。つまり、本法の制定は、政府に故意に不都合をもたらすことを目的としているのではなく、人民政府が業務を展開し、我が国の国民経済と社会の持続可能な発展の実現を助けることを目的としているのである。このため、我々は充分な理由をもって、計画策定機関がその計画草案に対する環境アセスメントの責任機関として、良い実施と良い評価を行えるものだと信じている。
2、本条の指す計画に対する環境アセスメントの実施機関について。本項に基づき、計画に対する環境アセスメントの実施機関は、その計画を策定した政府或いは政府部門でもよいし、それが委託した機関或いは専門家グループでもよい。つまり、誰がその計画に対し環境アセスメントを行うかは、その計画を策定した人民政府或いはそれに所属する関係部門は実際的状況に基づいて決定しなければならない。
 起草の過程で、これに対し異なる意見があった。「自分で自分を評価する」ことは政府に対する制約を失わせるものであり、これでは環境アセスメントの質が保証できないため、中立機関がその評価を行うよう規定してはどうか、という提案をした。本法の起草グループはこれについて複数回研究を行ったが、最終的にこの意見を採用しなかった。起草グループは、政府による計画策定行為は建設事業者がプロジェクトを建設する行為とは性質・地位・役割といった方面上大きく異なるものであり、建設プロジェクト環境アセスメントの仕方を一律的に倣って中立機関に環境アセスメントを委託することは出来ない、と考えた。もし法律が強行的に社会の中立機関に計画に対する環境アセスメントをさせるよう一律に規定したとしたら、ある状況下では、国家機密の漏洩等原因で政府活動の正常なる展開が妨げられてしまう恐れも出てくる。その実、カナダ等の西側先進国では、計画に対する環境アセスメントの展開は、その相当部分が政府部門によって独自で行われている。論争の結果、起草グループは、計画策定機関が実際の状況に基づいて計画草案に対する環境アセスメントの実施機関を決定するよう建議した。例えば、機密性が低く且つ公衆の環境に対する権益との関連がとても密接な計画であれば、計画策定機関は社会のある中立機関にその計画に対する環境アセスメントを委託しても全く構わない。また例えば、機密性の非常に高い計画で、社会の中立機関が一旦その中に入ってしまえば、政府の活動はたちまち不利な影響を蒙ってしまうといった場合には、計画策定機関は政府内部の関係者を動員する或いは完全に本機関が自らその計画草案に対する環境アセスメントを行わなければならない。総じて言えば、誰が計画草案に環境アセスメントを行うか、その決定権はあくまで計画策定機関にある。「計画を策定した者が、その計画草案に対する環境アセスメントの実施の責任を負う」、これは政府計画に対する環境アセスメントの一原則である。
(二)計画に対する環境アセスメントの評価時機について
 計画に対する環境アセスメントの評価時機とは、計画に対する環境アセスメント業務がいつから始まっていつ終わるかを指す。本項の規定に基づき、計画に対する環境アセスメントは、計画の策定過程において行われなければならない。
 このように規定する理由は、主に計画に対する環境アセスメントを計画策定段階で実施して初めて実際的な効果がもたらされると考えたからである。この「計画策定段階で」というのは、初歩的な方案が形成されてより上申されるまでの期間を指す。もし初歩的な方案も形成されないうちから環境アセスメントを始めれば、それは「カラ対カラ」という現象を必ず引き起こし、実際的な意義がなくなってしまう。一方、上申した後で環境アセスメントを行えば、文書への正常な審査・認可と発布の時期を遅らせてしまい、また評価業務が意味なきものへと変質してしまう。全国人民代表大会環境・資源保護委員会の『環境影響評価法』草案第十条は、「制定部門は、政策と計画の初歩的方案が形成されてより上申して審査と認可を仰ぐ以前に、環境アセスメントの実施を行わなければならない」と規定している。現在正式に公布された法律では、文字上やや簡素化されたが、実質的な意味はなんら変化していない。
(三)本条の指す計画に対する環境アセスメントの成果の表現形式について
 本条第一項の規定に基づき、その計画草案に対する環境アセスメントの結果は、「計画実施後の環境影響の文章或いは説明」の形で表現されなければならない。
 本法草案の元の規定に基づき、その計画草案に対する環境アセスメントの成果の表現形式は、均しく環境影響報告書とする。常務委員会の審議期間中、ある部門と常務委員会の構成員から、各種異なる計画に応じ、環境アセスメントの実施方法にも変化がもたらされるべきであるとの提案が出された。つまり、マクロ的で長期的な総合的計画及び主に予測的且つ参考的な指標を提出する特別項目計画に対しては、それを指導的計画と類別してよく、策定機関に計画の策定過程で環境アセスメントを同時進行させることを要求するが、必ずしも計画草案とは別に独立した環境影響報告書を作成する必要はない;一方、一部指標や要求がやや具体的な特別項目計画に対しては、これを非指導的計画と類別してよく、策定機関に計画草案とは別に独立した環境影響報告書を作成するよう要求すべきである、という提案である。草案は、この意見に照らして修正を行った。本条の指す計画に対し、即ち土地利用関連計画、及び地域・流域・海域の建設と開発利用計画に対しては、環境アセスメントの成果の表現形式上、計画実施後に環境にもたらされ得る影響に関する文章或いは説明の作成を要求する。ここで更に2種類の情況に分けられる。1つは、「計画実施後に環境にもたらされ得る影響の文章」で、もう1つは「計画実施後に環境にもたらされ得る影響の説明」である。このように区分する理由は、主に一部の比較的重要で、実施後に環境にもたらされ得る影響が比較的大きい計画に対しては「文章」という形を用い、重要性の比較的低い、実施後に環境にもたらされ得る影響が比較的小さい計画に対しては、「説明」或いは「特別項目説明」という形を用いてよい、とすることを考慮したからである。しかし、どんなことがあっても、本法制定前に一部部門が策定した計画に含まれていたような「環境保全文章」は、「計画実施後にもたらされ得る環境影響の文章或いは説明」に取って代わる或いは代替されることができない。例えば、都市総合計画にある「環境保全文章」は、都市が発展する上で何ヵ所のゴミ処理場や汚水処理場、緑地や公園を建設しなければならない等々の規定を指すものであり、これら内容は確かに重要なものではあるが、これは決して計画実施後にもたらされ得る環境影響に対する評価的文書ではない。両者は観念的に異なるものであり、性質・地域・役割全てにおいて大きな違いがあり、決して一緒くたに混ぜて語ってはならないものである。
(四)「計画実施後の環境影響の文章或いは説明」の主な内容について
 本法第七条第二項の規定に基づき、環境影響に関する文章或いは説明の内容には、以下の方面が含まれる。
 1、その計画の実施が環境にもたらし得る影響に対する分析・予測・評価。これには、@環境影響の時間帯に対する分析・予測。A環境影響の範囲についての分析・予測。主に計画の級別と分野に基づき、計画実施後に影響を与える対象と地域に対し認定を行う。B計画実施後の環境影響の程度に対する分析・予測・評価。C分析・予測・評価の具体的内容、及び分析・予測・評価の方法。D予測結果及びその分析、論証、説明等。
 2、環境に対する悪影響を予防或いは軽減する対策と措置。これは、特別項目計画の実施後に環境に及ぼし得る影響に対する分析・予測・評価を指し、これら環境への悪影響を防止或いは軽減する的を得た措置を提出すると共に、提出した各種環境保全措置に対し経済合理性・社会の許容力等方面で論証を行い、各環境保全措置の投資予算を行うことを指す。
 計画草案に対する環境影響報告書の内容と比べ、上述の「計画実施後の環境影響の文章或いは説明」の内容はやや簡単であり、「環境アセスメントの結論」を出す必要はない。法律のこのような規定は、「状況を分け、プロセスを簡素化し、効率を上げる」という精神を具体化した。
(五)計画に対する環境アセスメント文書の上申機関と受理機関について
 計画に対する環境アセスメント文書、即ち「計画実施後の環境影響の文章或いは説明」は、誰によって上申されるべきなのか?どの機関によって受理されるべきなのか?以上2つの問題に関しては、条文には明確な規定がなされていないが、関連条項からハッキリと読み取ることが出来る。例えば本条第二項は、「計画の環境影響に関する文章或いは説明は、……計画草案の一組成部分として共に計画認可機関に提出しなければならない」と規定している。つまり、(1)「計画の環境影響に関する文章或いは説明」は、必ず上申して審査を仰ぐこと。(2)その計画の環境影響に関する文章或いは説明は、計画草案の一組成部分として、草案と共に報告・提出すること。(3)その計画の環境影響の文章或いは説明は、計画草案の認可機関に報告・提出されるものである。よって、計画の環境アセスメント文書の受理機関は、当然その計画草案の認可機関である。即ち、「計画草案の認可を担当する者が、その計画草案の環境アセスメント文書を受理する」ということである。認可機関は、環境アセスメント文書を受理した後、計画草案と共にこれを審査する。(4)以上の条文を合わせて見ると、「計画実施後の環境影響の文章或いは説明」を上申する機関は、その計画に対する環境アセスメントの責任機関(同時にその計画の策定機関)でなければならない。立法機関のこのような制度的手配は、計画の環境アセスメントを正常に実施させ、予期的目標の達成に資するものである。
(六)計画に対するの環境アセスメント文書の法的地位
 本条と関連条項の規定に基づき、計画に対する環境アセスメント文書は重要な法的地位を持つ。主には、(1)土地利用関連計画、地域・流域・海域の建設と開発利用計画の策定機関が計画草案を上申して認可を仰ぐ際、その計画の環境影響に関する文章或いは説明を、共に計画の認可機関に提出し、審査を仰がなければならないこと;(2)計画の認可機関は、環境影響に関する文章或いは説明を添付していない計画草案に対しては、これを一律に認可しないこと;(3)計画の認可機関が、法に則って環境影響に関する文章或いは説明を作成して一緒に添付すべきところがこれを作成・添付していない計画草案に対して認可を与えた場合、法に則って法的責任を負わなければならないこと。以上の規定は、計画に対する環境アセスメント活動の厳粛性と権威性を保障する上で、重要な役割を持つものである。

【解釈】 本条は、本法に照らして環境アセスメントを行うべき特別項目計画の範囲、及びこの類に属する計画に対し環境アセスメントを行う際の要求を規定した。
 第一、本条の指す計画の範囲について。特別項目計画とは、総合計画と相互に対応するものであり、一般に計画の範囲或いは分野が比較的狭く、内容もやや専門的な計画を指す。一定の基準に拠り、特別項目計画は指導的特別項目計画と非指導的特別項目計画に分けられる。指導的特別項目計画とは、特別項目計画において、主に予測的・参考的な指標を提出する計画を指し、非指導的特別項目計画とは、特別項目計画における指標と要求がやや具体的な計画を指す。本法は特別項目計画を指導的・非指導的の2種類に分けたが、その目的は、計画の異なる特徴に応じ、異なる環境アセスメントの方法を提起・適用することで、特別項目計画草案に対する環境アセスメント活動を的を絞ってしっかりと行うことにある。
 本法が言う特別項目計画は、以下の計画を含む。
(1)工業関連の計画。自動車工業の発展計画、食品工業の発展計画等。
(2)農業関連の計画。農業発展計画、農業の産業化発展計画等。
(3)牧畜業関連の計画。草原牧畜業の発展計画等。
(4)林業関連の計画。林業の長期的計画、全国造林緑化計画等。
(5)エネルギー関連の計画。電力発展計画、地方小規模水力発電所計画等。
(6)水利関連の計画。水土保持計画、洪水防止計画等。
(7)交通関連の計画。高速道路計画、水路交通発展計画等。
(8)都市建設関連の計画。都市総合計画、都市区画整理計画、都市詳細計画等。
(9)観光関連の計画。観光開発計画、観光区計画等。
(10)自然資源開発の関連特別項目計画。地熱資源の開発利用計画、鉱産資源の中・長期探査計画等。
 第二、本条の指す計画に対する環境アセスメントの責任機関と実施機関について。
 1、本条が指す計画に対する環境アセスメントの責任機関について。「計画を策定した者が、その計画草案に対する環境アセスメントの実施の責任を負う」。これは我が国の、計画に対する環境アセスメントを展開する上での活動原則である。本条の規定によると、関連計画の策定を担当する機関は、国務院関係部門、行政区を設置する市級以上の地方人民政府及びその関係部門、となっている。上述の国務院関係部門には、国家発展計画委員会、国家経済貿易委員会[1] 、農業部、国家林業局、水利部、交通部、建設部、国家観光局、国土資源部等が含まれる。上述の行政区を設置する市級以上の地方人民政府及びその関係部門には、省・自治区・直轄市人民政府及びその所属部門、及び行政区を設置する市(通常は省・自治区所轄の市と州)の人民政府及びその所属部門が含まれる。県級(県レベルの市を含む)人民政府が策定した計画に対して環境アセスメントを行う必要があるか否かについては、各地で異なる既存条件を考慮し、目下まだ環境アセスメントの実施要求を一律に統一規定する条件は揃っていないと考えた。省・自治区・直轄市人民政府所轄の、条件を有する県級人民政府に対しては、それが策定した計画に対し、本法の関連規定を参照して環境アセスメントを行うことを要求してもよい。県級人民政府所属部門及び郷・鎮人民政府が策定した計画草案については、上級人民政府関連計画を執行する上での具体的手配に属するため、本法ではそれが策定した計画草案について環境アセスメントを行うことを要求しない。
2、計画に対する環境アセスメントの実施機関について。本項に基づき、計画に対し環境アセスメントを行う具体的な機関は、その計画を策定した政府或いは政府部門でもよいし、それが委託した機関或いは専門家グループでもよい。つまり、その計画草案に対し誰が環境アセスメントを行うかは、その計画を策定した人民政府或いはそれに所属する関係部門が実際の状況に基づいて決定する、ということである。
第三、計画に対する環境アセスメントの評価時機について。計画に対する環境アセスメントの評価時機とは、計画に対する環境アセスメント業務がいつから始まっていつ終わるかを指す。本項の規定に基づき、計画に対する環境アセスメントは、計画策定過程で行われなければならない。
この「計画策定過程」とは、評価を行う計画の初歩的なプランが形成されてより上申されるまでの間を指す。
第四、本条の指す計画に対する環境アセスメントの成果の表現形式について。本条第一項と第二項の規定に照らし、その計画に対する環境アセスメントの成果の表現形式は、具体的計画の違いによって、2種類に分けられる。1つは、計画に対する環境影響報告書で、もう1つは「計画実施後の環境影響の文章或いは説明」である。具体的な業務分担としては、特別項目計画中の非指導的計画に対しては環境影響報告書を作成するものとし、特別項目計画中の指導的計画に対しては、「計画実施後の環境影響の文章或いは説明」を作成するものとする。
何故特別項目計画中の非指導的計画に対し環境影響報告書を作成するのか?何故特別項目計画中の指導的計画に対しては「計画実施後の環境影響の文章或いは説明」を作成するのか?本法草案はもともと、計画草案に対して環境アセスメントを行ったその成果の表現形式については、均しく環境影響報告書とする、と規定していた。しかし、常務委員会の審議期間中、ある部門と常務委員会の構成員から、各類で異なる計画に応じ、それに行う環境アセスメントの方法にも変化がもたらされるべきである、という提案が出された。主に予測的・参考的な指標を提出する特別項目計画に対しては、これを指導的計画と分類してよく、その計画の策定過程で環境アセスメントを同時に行うことを要求するが、別に計画草案の環境影響報告書を作成する必要はない。一方、指標、要求共にやや具体的な一部特別項目計画に関しては、これを非指導的計画と分類してよく、これについては策定機関にその計画に対する環境影響報告書を別に作成することを要求する。草案は、この意見に照らし、修正を行った。即ち、本条第二項で「前項に列ねられた特別項目計画のうち、指導的計画については、本法第七条の規定に従い、環境アセスメントを行う」という規定を設けた。つまり、指導的計画に分類された特別項目計画については、本法第七条における総合計画に対する環境アセスメントの業務プロセスを執行しなければならないとし、またその評価の成果の表現形式としては、「計画実施後の環境影響の文章或いは説明」の作成を反映させることとした。一方、およそ非指導的計画に分類された特別項目計画については、全て本法第八条第一項、第十条、第十一条、第十二条、第十三条、第十四条規定の環境アセスメント業務プロセスを執行しなければならないとし、また評価の成果形式としては、計画草案に対する環境影響報告書を作成するものとした。
第五、計画の環境アセスメント文書の上申機関と受理機関について。特別項目計画の環境アセスメント文書、即ち「計画実施後の環境影響の文章或いは説明」或いは環境影響報告書は、一体誰が上申するのだろうか?またどの機関がこれを受理するのだろうか?この2つの問題に対する解答は、本法第七条にある解釈と一致する。即ち、(1)環境影響報告書であっても「計画実施後の環境影響の文章或いは説明」であっても、全て上申して審査を仰がなければならないこと。(2)その環境影響報告書或いはその計画実施後の環境影響の文章または説明は、計画草案の一組成部分として、計画草案と一緒に上申されるものであること。(3)その環境影響報告書或いはその計画実施後の環境影響の文章または説明は、計画の認可機関に上申されるものであること。つまり、計画草案の環境アセスメント文書の受理機関は、当然ながらその計画の認可機関である。「計画草案を認可する者が、その計画草案に対する環境アセスメント文書を受理する」、ということである。認可機関は、環境アセスメント文書を受け取った後、計画草案と一緒に法に則ってこれを審査しなければならない。(4)以上の条文を合わせて見ると、環境影響報告書或いは「計画実施後の環境影響の文章或いは説明」を上申する機関は、その計画草案に対する環境アセスメントの責任機関(同時にその計画の策定機関)でなければならない。
第六、本条第二項「前項に列ねられた特別項目計画のうち、指導的計画については、本法第七条の規定に従い、環境アセスメントを行う」の規定について。本項ならび本法第九条の国務院認可によって「環境アセスメントを行う計画の具体的範囲」を確定するという規定に依拠し、およそ指導的特別項目計画に分類された計画に対しては、一律に本法第七条規定のプロセスと要求に依拠して環境アセスメントを行い、本法第八条第一項、第十条、第十一条、第十二条、第十三条、第十四条の規定する環境アセスメントのプロセスと要求を適用しないものとする。非指導的特別項目計画に分類された計画に関してのみ、それに対する環境アセスメントを行う際、本法第八条第一項、第十条、第十一条、第十二条、第十三条、第十四条規定の環境アセスメントのプロセスと要求を適用することとする。

【解釈】 本条は、環境アセスメントを行う計画の具体的範囲を如何に確定するかを規定した。
 本法第七条、第八条は本法の規定に照らし、環境アセスメントを行うべき総合計画と特別項目計画の範囲に対し、原則的な規定を設けた。しかし、この2ヵ条の規定が及ぶ計画は数多く、計画に及ぶ現行1,000数件の法律・法規・規約だけを見ても、既に100数種の計画が該当する。しかしこれら計画のうち、どの計画が環境アセスメントを行う必要を持ち、どの計画に対しては環境アセスメントを行う必要がないのだろうか?またどの計画が本法第七条規定のプロセスと方法に従って環境アセスメントを行うべき計画に類し、どの計画が本法第八条第一項、第十条、第十一条、第十二条、第十三条、第十四条規定のプロセスと方法に従って環境アセスメントを行うべき計画に類するのだろうか?特に第八条第一項規定の特別項目計画に関し、どの計画が指導的計画に属し、どの計画が非指導的計画に属するのだろうか?これらについては、本法においては具体的規定を設けることが非常に難しい。このため、本条は、本法第七条と第八条の規定に依拠し、環境アセスメントを行う必要のある計画の具体的範囲は、国務院の環境保全行政主管部門が国務院関係部門と共同で規定することとし、またそれを国務院に上申して認可を受けるものとした。この業務における主要な任務は、1つには本法第七条・第八条規定に依拠して環境アセスメントを行う計画に対し、識別を通じて具体的範囲を更に一歩細分化すること、即ち環境アセスメントを行う必要のある計画を具体的にリストアップすること、2つには第八条第一項の指す特別項目計画に対し、指導的特別項目計画と非指導的特別項目計画の具体的範囲を区分けすることである。さもなければ、本法は実施されることも、具体的な計画に対し環境アセスメントを行うこともできなくなってしまう。

【解釈】 本法は、特別項目計画草案の環境影響報告書が含むべき主な内容を規定した。
 本条が指す特別項目計画の性質について。本法第八条第一項の規定に鑑み、特別項目計画に対し環境アセスメントを行った後、認可機関に環境影響報告書を提出する。また、第八条第二項「前項に列ねられた特別項目計画のうち、指導的計画については、本法第七条の規定に従い、環境アセスメントを行う」の規定の見地からも、第七条では計画に対する環境アセスメントの成果の形式としては「計画の環境影響に関する文章或いは説明の作成」が要求される。従って、本条の特別項目計画の草案に対する環境アセスメントが行われた後要求される成果の形式は環境影響報告書の提出であり、つまり本条が指す特別項目計画とは、性質上特別項目計画のうちの非指導的計画であるほかない。
 本条の指す特別項目計画の環境影響報告書の主な内容は以下の通りである。
1、その計画の実施が環境にもたらし得る影響の分析・予測・評価。これには、@環境影響の時間帯に対する分析と予測。A環境影響の範囲に対する分析と予測。主に計画の級別と分野に基づき、計画実施後に影響をもたらされ得る対象と地域に対し認定を行う。B計画実施後の環境影響の程度に対する分析・予測・評価。C分析・予測・評価の具体的内容、及び分析・予測・評価の方法。D予測結果及びその分析・論証・説明等。
2、環境への悪影響を予防或いは軽減する対策と措置。これは特別項目計画が実施された後環境にもたらし得る影響に対する分析・予測・評価を指し、これら環境への悪影響を防止或いは軽減する的を得た措置を提出すると共に、提出した環境保護措置に対し経済合理性や社会の許容力等方面で論証を加え、各環境保護措置の投資予算を行う。
3、環境アセスメントの結論。これは環境影響報告書の中で最も重要で、最も肝心な内容である。計画草案の環境影響報告書として、その環境アセスメントの結論は必ず以下の主要な問題を明確に説明するものでなければならない。@計画の実施が環境に一体どのような影響をもたらすのか。A計画草案の主な内容は国家の環境保全法律・法規と環境保全政策に符合するものであるか否か。B計画草案における環境保全措置は環境汚染と生態破壊を防止或いは軽減する上で実行可能なものなのか否か、更に一歩評価を行う必要があるか否か等。
 「計画実施後の環境影響の文章或いは説明」の内容と比べ、上述の環境影響報告書の内容はやや複雑であり、「環境アセスメントの結論」を下さなければならない。法律のこのような規定は、非指導的特別項目計画が持つ「やや具体的な指標と要求」等の特徴により決定された。
 本条規定の特別項目計画草案に対する環境影響報告書の主な内容は、必ず明記することを法が定めた内容であり、上の3項目の内容は欠落されてはならない。本法が施行された後、国務院関係部門は本法の規定に依拠し、経験を真摯に総括するという基礎に立ち、特別項目計画草案の環境影響報告書の内容に対し、より明確な規定を設け、更に具体的な要求を出さなければならない。

【解釈】 本条は、特別項目計画草案に対する環境アセスメントへの公衆参加のプロセスと要求を規定した。
 公衆の参加による特別項目計画草案の環境アセスメント活動を確実に行うために、以下の基本的内容を重点的に押さえておかなければならない。
 第一、評価に参加する公衆の範囲。本条第一項の規定に基づくと、評価に参加する公衆の範囲は、関係機関、専門家と公衆である。関係する機関と公衆は、ある特別項目計画が実施された後にもたらされる環境影響と一定の利害関係を持つ機関と公民でなければならない。関係する専門家については、これはその担当業務が、評価する計画及びそれがもたらす環境問題に関係する専門家を指し、彼らは論証会が開かれた際に、一定の見解を発表することができる。
 第二、公衆に意見を求める者。公衆に意見を求める者とは、公衆の意見を求め、聴聞し、整理し、それを上申する者を指す。本条第一項の規定により、公衆に意見を求める者は、特別項目計画の策定機関でなければならない。例えば、ある省の農業庁が、ある農業発展の特別項目計画草案を策定する責任を負うとすると、公衆に意見を求める必要がある場合、その農業庁が公衆に意見を求める者となる。
 第三、どんな状況下で公衆の参加を許可するのか?国家は計画に対する環境アセスメントへの公衆参加を奨励している。しかし、全ての特別項目計画草案に対し公衆にその評価への参加を許可するわけではない。本条第一項と関連条項の規定に基づき、公衆の環境アセスメントへの参加を許可するしないを判断する尺度は、(1)環境に悪影響をもたらし得ると共に公衆の環境に対する権益に直接及んでくる計画については、公衆の意見を求めなければならない(2)指導的特別項目計画については公衆に意見を求める必要はない(3)国家規定により機密保持の必要な計画については、公衆に意見を求める必要はない――といったものでなければならない。しかし一体どの計画草案の環境影響報告書には公衆参加によるディスカッションが必要で、どの計画草案の環境影響報告書には公衆参加によるディスカッションが必要でないかについては、計画を策定した機関が実際の状況に応じて決定するものとされている。このため、計画策定機関は、「3つの代表」重要思想を以って公衆参加による環境アセスメントの実施を行わなければならない。高い確率で環境に悪影響をもたらし得ると共に公衆の環境に対する権益に直接及ぶ、それら公衆の意見を求めるべき計画について、公衆を恐れ、あれこれの理由を口実にして公衆の環境アセスメントへの参加を拒絶することなど、決してあってはならない。
 第四、公衆参加の時機。本条第一項の規定に基づき、公衆が環境アセスメントに参加する時機は、計画草案に対する環境影響報告書の草案が形成された後から計画草案を上申して認可を仰ぐ前までの期間でなければならない。環境影響報告書の草案が形成されないうちから早々に公衆の意見を求めても、「カラ対カラ」の現象が必ずや出現し、これでは何の実際的意味もない。一方、環境影響報告書の草案が計画草案と共に認可を仰いで上申された後になって公衆の意見を求めても、文書の正常な認可と発布・実施を必ずや遅延させてしまうだけでなく、環境影響報告書草案に対する公衆参加のディスカッションが持つ意義を低下させてしまう恐れも出てくる。
 第五、公衆が意見を提起する対象。本条第一項の規定に基づけば、関係機関、専門家と公衆が意見を提起する対象は、計画草案の環境影響報告書の草案であって、特別項目計画の草案そのものではない。なぜなら、特別項目計画の草案に対する評価に値するのは、当該計画草案の環境影響報告書である、ということになるからである。
 第六、公衆参加の形式。本条第一項は、非指導的特別項目計画草案への環境アセスメントにおいて、公衆参加を吸収する方法を規定した。これは、計画草案を上申して認可を仰ぐ前に、論証会や公聴会を開催する或いはその他の形式を通じて、関係部門、専門家と公衆の、計画の環境影響報告書草案に対する意見を求めるものである。ここで言う「論証会」とは、主に計画の環境影響報告書の草案が及ぶ専門的な関連問題、例えば環境影響報告書の草案の中で提出された、計画実施後に発生し得る環境への悪影響に対する分析・予測・評価の意見や、採ろうとしている環境への悪影響を予防或いは軽減する対策と措置、及び環境アセスメントの結論等について、関係する専門家と一定の専門知識を持つ公民及び関係機関の代表を招聘して論証を行い、その計画の環境影響報告書の草案における関連内容について論証的意見を提出するものである。ここで言う「公聴会」とは、規範的なプロセスに照らし、計画の環境影響と利害関係を持つ関係機関、専門家と公衆の代表から、計画の環境影響報告書の草案に対する意見を聴聞する、一種の会議的形式を持ったものである。「公聴」(証言の聴聞)という語彙は、西洋の法曹界が最初に使用したものであるが、これは審判機関が、事のいきさつ或いはその他特殊事件の真相を理解するために当事者から説明と証言を聴聞することを指す。この形式はその後、例えば立法作業における「立法公聴会」の誕生等、迅速な発展を見せた。本法では、公聴会で参加者から意見を聴聞する主体(証言の聴聞者)は計画策定機関であり、公聴会の参加者は、計画の環境影響と利害関係を持つ関係機関、専門家と公衆の代表である。公聴会の参加者は公開・公正・公平の原則と規範的プロセスに照らして選抜されるべきであり、プロセスに違反して指定してはならない。公聴会の参加者は、プロセスの規定に従い、計画の環境影響報告書草案の内容について充分に意見を詳しく述べ、証拠を挙げて論争を展開することができる。公聴会の司会進行役は、公聴会参加者の意見を真摯に且つ如実に記録・整理することで計画策定機関に研究材料を提供し、意見の採用する否かの決定を下さなければならない。公聴会はより正確に、全面的に、客観的に公衆の意見を聴聞することができる良い形式であるから、政府の政策決定における民主的、科学的な基礎に立った原則に照らして、今後、公衆の意見を求める際に、この種の形式をもっと多く採用すべきである。論証会や公聴会といった形式のほかにも、計画策定機関は更に、例えば座談会を開いたり、個別に状況を尋ねたり、書面での意見提出を求める等「その他形式を採用して」、関係機関や専門家及び公衆の、計画の環境影響報告書草案に対する真実の意見を全面的に把握することができる。
第七、計画草案の策定機関に対する要求。本条第二項規定に基づき、計画策定機関は、計画草案に対する環境影響報告書の草案について公衆の意見を求める前に、事前にその環境影響報告書草案の概要を、意見を提出する関係機関、専門家と公衆に配布し、また彼らが意見を発表した後も、それを真摯に考慮すると共に、計画の認可機関に環境影響報告書を上申する際これら公衆の意見が既に採用されたか否かの説明を添付しなければならない。ここで注意すべきことは、計画策定機関が計画の認可機関に環境影響報告書を上申して審査を仰ぐ際、公衆の提出した意見に対し、採用分についてはそれを報告し、不採用分についてもその旨を報告しなければならないことである。これをもって、認可機関が各方面の意見を充分に考慮し、民主的且つ科学的な基礎に立った正確な政策決定を行うための基礎材料とする。法律がこのような規定を設けたその目的は、「公衆参加」制度の真の役割発揮を保証することにあり、決して体裁を繕うとか形式に走るとかのためではない。

【解釈】 本条は、特別項目計画の策定機関に対し、環境影響報告書を特別項目計画草案に添付して一緒に認可機関に上申し、審査を仰ぐことを要求した。
 本条は主に、以下の3つの問題を解決した。
 第一、特別項目計画の策定機関は特別項目計画の草案を上申する際、その計画の環境影響報告書を一緒に認可機関に送付し、審査を受けなければならない。このために明確にしなければならない事は、(1)特別項目計画草案の環境影響報告書はその作成が完了した後に上申すること(2)環境影響報告書を上申する時機は、「特別項目計画の策定機関がその特別項目計画の草案を上申する際」にあり、これより早過ぎたり遅過ぎたりすることは許されない(3)環境影響報告書の上申は単独で送付されるものではなく、特別項目計画草案を上申する際、環境影響報告書をその計画草案の添付文書として一緒に審査に出すこと(4)環境影響報告書は特別項目計画草案の認可機関に送付して審査を仰ぐべきものであり、その他の機関に審査を委ねるのではないこと(5)環境影響報告書を送付する機関は、特別項目計画の策定機関であること――である。
 第二、特別項目計画の策定機関が特別項目計画の草案を上申する際、およそ環境影響報告書を添付していないものに対しては、認可機関はこの計画草案に認可を与えない。特別項目計画草案の環境影響報告書が添付されていない状況下でその計画を認可した場合は、認可機関のこの認可行為は紛れもない違法行為である。本条第二項のこの内容は、計画に対する環境アセスメント業務の厳粛性の保証にとって、十分重大な意義を有するものである。
 第三、本条が言う特別項目計画とは、全ての特別項目計画を指すのではなく、特別項目計画のうちの非指導的計画を指すものであり、即ち指標と要求が比較的具体的な特別項目計画を指す。
 本条の、特別項目計画草案の環境影響報告書は審査に出されなければならないという規定は、計画の認可機関にそれが認可する特別項目計画草案の環境アセスメントの結果を全面的に把握させ得ることを目的としている。これにより、計画草案が持続可能な開発戦略と環境保全法律・法規の要求に真に符合しているか否か、採るべき環境保全対策と措置は合理的且つ実行可能か否かに対し、認可機関は十分な把握に裏付けられた自信を持って、正確な政策決定を適時に行うことができる。

【解釈】 本条は、特別項目計画草案の環境影響報告書に対する審査の実施方法を規定した。
 本条が、関係部門の代表と専門家で構成される審査グループを設置し、これに特別項目計画草案の環境影響報告書に対する審査を実施させるという制度を決定した理由は、主に環境影響報告書が政府が政策決定を行う上で重要な根拠となることを考慮したからである。しかし、その専門技術性が比較的高いことから、これを評価された計画草案と同時に、政府の常務会議や全体会議或いは政府の担当責任者の事務会議の議場に出してディスカッションをさせることは、時間的に許されていない。また、政府の担当責任者もその全てが各種計画の及ぶ環境問題の専門家であるわけではなく、よって計画草案と一緒に提出された環境影響報告書に対し非常に綿密で専門的な審査を施すことは不可能である。このため、一種効果的な方法を採用し、認可機関による特別項目計画草案の環境影響報告書に対する審査に協力する必要がある。さもなければ、計画の認可機関による計画草案の環境影響報告書に対する審議は、形式に流れてしまう可能性が高い。従って、関係部門の代表と専門家で構成された作業班即ち審査グループが、政府の担当責任者に代わって先に要所を押さえ、専門技術の角度から環境影響報告書に対し審査意見を提出する、このことは政府による政策決定の民主化・科学化を実現する上で、1つの重要な保証となる。
 審査制度を実行するにあたり、いくつかの問題には注意が必要である。
 第一、審査グループの人員構成。本条第一項の規定に基づけば、審査グループはその特別項目計画に関係する部門の代表と、本条第二項規定の方法で選定された専門家とで構成される。例えば、ある農業機械化関連の発展計画を審査する場合、農業・林業・計画・経済貿易・機械・道路交通・公安・燃料・環境保全等部門の代表と、農業機械・農業・自動車・機械・交通・環境保全・法律・社会学等分野の専門家が一緒に審査グループを結成する。ここでは、部門の代表は主に本部門専門の角度から専門的な審査意見を提起する。これは政府の常務会議に列席する際の部門担当責任者の意思表明とはやや違いがある。このような代表性が比較的強い審査グループが存在すれば、政府の担当責任者が要点を押える上で支えとなり、政府による政策決定の正確性にも、重要な裏付けが持てるようになる。
 第二、審査グループにおける専門家の選定方法。審査活動のニーズに基づき、『中華人民共和国仲裁法』の仲裁員招聘に関する規定を参照し、また審査召集機関が、計画草案の環境影響報告書の審査に参加する専門家を公平・公正に選抜することを保証するために、本条第二項は審査活動に参加する専門家の選抜方法について規定を設けた。これは、審査召集機関は、規定に照らして設立された専門家データベースにある、関連分野の専門家の中から、審査参加の専門家をランダム方式で選定すべきことを定めたものである。例えば、コンピュータを活用してアットランダムに同一専門の専門家をリストアップする。専門家データベースの設立方法については、本条が授権する国務院の環境保全行政主管部門により規定される。ハイレベルな専門家による各種特別項目計画草案の環境影響報告書の審査への参加をできるだけ保証するために、専門家データベースに登録される専門家の範囲は広くあるべきであり、人員も優秀で、真に広範な代表性を有していなければならない。状況の変化に伴い、専門家データベースの専門家名簿は調整され、充実され得る。
 第三、審査グループの任務。本条第一項の規定に基づき、審査グループの主要任務は、特別項目計画草案の環境影響報告書に対し審査を行うと共に、審査グループの名義で、書面での審査意見を提出することである。審査は、会議外での準備と会議上での研究・審査の結合をその具体的方法とする。審査グループは、真摯に責任を負うこと、厳格且つ公正であること、といった基礎に立ち、書面で審査意見を提出し、また審査活動の召集機関が、書面の審査意見をその特別項目計画草案の認可機関に上申する責任を負う。
 第四、審査グループ及びその審査意見の性質。審査グループの性質に関しては、環境影響評価法起草グループが起草作業中、これについて再三の研究を重ね、最終的に、審査グループは政策決定機関でもなければ政府の一常設組織でも機関でもなく、政府の環境保全行政主管部門或いは関係部門が召集した、会議形式で出現するコンサルタント的性質を持った組織である、との一致見解をみた。法律用語では「審査」という語彙を使用し「審議」という語彙を使用しないが、それもこの方面に対する考慮から来ていると言える。
 審査意見の性質について。審査グループの性質に基づき、それが行う審査活動と提出した審査意見は、性質上当然コンサルティングに属し、これが提出した意見が政府指導者に提出される際も、あくまで参考であって最終的な政策決定ではない。この書面審査意見がコンサルタント的性質を持つ以上、計画の環境影響に対し最終的な責任を負うのは、計画草案の認可機関である。従って、計画草案認可機関は、政策決定上のミスを減少させるために、必ず審査グループの審査意見を高度に重視しなければならない。
 第五、審査グループが審査を実施する時機。本条第一項規定に基づき、審査グループによる計画草案の環境影響報告書に対する審査は、時間的にこのような段階に位置していなければならない。即ち、計画策定機関が、その計画草案とそれを評価する環境影響報告書を既にその計画の認可機関に提出していること。同時に、認可機関の業務段階がまだ「特別項目計画草案を認可中で、政策決定を下す前」の段階にあること。もし手配が早すぎれば、審査の「対象」が存在せず、活動を展開することができないし、もし手配が遅すぎれば、政府は既に審議を決定しているため、改めて審査グループを召集して環境影響報告書に対し審査を行うことは、その実際的意義を失わせるに等しい。
 第六、審査活動の召集機関について。全国人民代表大会環境・資源保護委員会副主任委員王涛は、第9期全国人民代表大会常務委員会第19回会議上で、『中華人民共和国環境影響評価法(草案)』に関する説明を行う際、「審査グループは活動を展開する上で、1つの召集機関を必要とする。人民政府指定の環境保全行政主管部門或いはその他部門がこれを担当することを提案する。」と提起した。このように規定する理由は、以下の点を考慮したからである。(1)複数の部門代表と専門家で審査グループを構成し、環境影響報告書に対し審査を実施する必要があるという状況下で、もしこの召集を担当する機関が存在しないとしたら、審査活動の正常な展開は非常に難しくなる。(2)どの部門が召集を担当するかの問題について。環境アセスメント活動に対し管理と指導を行うことは、そもそも環境保全行政主管部門の職責であり、これが審査活動の召集を担当することは、転嫁すべからざることである。しかし、一部の部門は、計画草案の環境影響報告書に対する審査を全て環境保全行政主管部門が召集することに異見を提出した。異見提出者は、「環境保全の切り札で建設が圧殺される」状況の出現を危惧した。◇各方面の意見を一致調和させ、環境影響評価法の公布に対する妨げを減少させること◇環境保全行政主管部門は政府管轄の一部門であり、政府の計画は最終的に政府が決定しまたその責任を負うこと◇とりわけ、人民政府は中国共産党中央の提出した持続可能な開発戦略と環境保全の基本的国策を実施するために、環境汚染と生態破壊の予防・環境アセスメントの実施という活動方面で、本政府において専門的に環境保全活動を担当する行政主管部門を召集機関に指定せずに、他の部門を召集機関に指定し、環境影響報告書に対する審査を行わせる理由はないこと――を考慮し、本条は「人民政府指定の環境保全主管部門或いはその他の部門が関係部門と専門家グループで構成された審査グループを召集する」と規定することで、環境保全行政主管部門が審査活動の召集機関としてその役割を発揮することに影響がもたらされないようにした。当然、もしある特別項目計画の草案が環境影響の面で極度に大きな争議を引き起こしたとして、環境保全行政主管部門がその争議における一方の当事者である場合、政府は慎重の見地から、政府弁公庁或いは発展計画委員会を召集機関に指定して環境影響報告書を審査させることもあって構わない。ただし、こういったケースは極まれである。環境保全行政主管部門の前に何故「指定の」という数文字を加えるかについては、全国人民代表大会法律委員会の担当責任者による法律委員会上での解説によると、これは主に計画の策定・認可と環境アセスメントの展開に対する「レベル別管轄」の問題を考慮したからである。例えば1つの特別項目計画は、市レベルによる策定を行うのか、或いは省レベル、或いは中央関係部門による策定を行うのかで、時々比較的多くの要素を考慮する必要があり、これには上級政府の調整が必要で、これに順応するためには、上級人民政府指定の、レベル別の相応な環境保全行政主管部門が、特別項目計画草案の環境影響報告書に対する審査を召集する必要がある。
 第七、召集機関は如何に審査グループの審査意見に接するか。審査グループは先に召集機関に対し、「文書受け取り機関」がその特別項目計画草案の認可機関であるところの書面審査意見を提出し、その後、召集機関から再びこれがその特別項目計画草案の認可機関に転送されなければならない。召集機関の事務処理セクションは、審査グループの提出した書面での審査意見を整理する際、実際に基づいて正しく行動しなければならない。召集機関はその特別項目計画草案の認可機関に対し審査グループの書面審査意見を上申する際、審査グループ構成員によってこれにサインと認可がなされなければならない。審査グループがその環境影響報告書の結論に重大な問題があるとほぼ認めた場合、その環境影響報告書は修正されなければならない。審査グループ内部で意見が分かれた場合、召集機関も事実に即して特別項目計画草案の認可機関に対し、その旨を報告しなければならない。
 第八、どの特別項目計画草案の環境影響報告書が審査グループの審査を必要とするのか?本条第一項の規定に基づき、およそ行政区を設置した市級以上の人民政府がその認可を担当する特別項目計画の草案は、全てそれに対する審査グループを組成し、その計画草案の環境影響報告書に対し審査を行う必要がある。行政区を設置する市級以上の人民政府とは、行政区を設置する市の人民政府、自治州の人民政府、省・自治区・直轄市の人民政府、及び国務院が含まれる。注意すべきことは、上述の行政区を設置する市級以上の人民政府が特別項目計画草案の認可機関である場合に限って、審査グループを設立してその計画草案の環境影響報告書に対する審査に協力させる必要がある、ということである。つまり、行政区を設置する市級以上の人民政府が計画草案の策定機関である場合には、このような審査グループの設立は必要とされない。更に、指導的特別項目計画の草案に対して行った環境アセスメントを行う文書についても、これを認可する際、専門の審査グループを設立し、それに対し審査を行う必要はない。本法は特別項目計画草案の環境影響報告書に対し審査を行う上での条件を非常に厳格に制限した。これは、重点の掌握と、原則性と弾力性を結合させるという原則に対する堅持を具体化したものである。
 第九、省級以上の人民政府関係部門が認可を担当する、特別項目計画草案の環境報告書に対する審査問題。本条は、行政区を設置する市級以上の人民政府が認可を担当する特別項目計画草案の環境影響報告書に対する審査方法については規定を行った。しかし、省・自治区・直轄市の人民政府関係部門と国務院関係部門が認可を担当する特別項目計画草案の環境影響報告書に対する審査方法については、未だ具体的な規定は設けられておらず、授権された国務院の環境保全行政主管部門が国務院関係部門と共同で制定すること、としている。これは主に、省・自治区・直轄市の人民政府関係部門と国務院関係部門が認可を担当する特別項目計画草案は、特に国務院関係部門がその認可を担当する特別項目計画草案は、その相当数が実施後に環境に比較的大きな影響をもたらす計画であることを考慮した結果である。このため、これら部門が認可を担当する特別項目計画草案に対し環境アセスメントを行うことは必要である。同時に、関係部門の身勝手な行為や随意に基準を下げる等、環境影響報告書の審査が形式に流されることを防止するために、また評価活動の質を保証するために、本条第三項は、国務院関係部門と省・自治区・直轄市の人民政府関係部門がその認可を担当する特別項目計画の環境影響報告書に対しては、国務院の環境保全行政主管部門が国務院関係部門と共同で審査方法を制定し、これを審査すること、と規定した。指摘すべきことは、この類に属する特別項目計画の草案に対しては、その前提は審査の必要であり、また審査が根拠とする規則も統一されていることである。では如何に審査を行うか、これについては異なる部門が認可する文書の特徴を考慮しなければならない。審査方法を制定する際は、政府が審査・認可を担当する特別項目計画草案の環境影響報告書に対する審査方法を参照してもよい。

【解釈】 本条は、特別項目計画草案の環境影響報告書の結論と審査意見の法的地位を確定した。
 特別項目計画の環境影響報告書の結論と審査意見の法的地位に関しては、本条は2つの方面からこれを具体化した。1つは審査・認可機関が計画草案を審査・認可する際、環境影響報告書の結論及び審査意見を高度に重視しなければならないこと。2つは審査・認可の際、上述の結論と意見が不採用になった場合も、説明を行うと共に将来の調査に備えてこれを保存しておかなければならないこと。
 第一、審査・認可機関は特別項目計画草案を審査・認可する際、環境影響報告書に出された結論及び審査意見を、政策決定上の重要な根拠としなければならない。
 「環境影響報告書の結論及び審査意見を、政策決定上の重要な根拠としなければならない」とは、審査・認可機関が計画草案を審査・認可する、しない決定を下す際、計画草案の環境影響報告書の結論及び審査グループによる審査意見を真摯に考慮すべきことを指す。環境影響報告書の結論及び審査意見が、その計画草案は環境保全の要求に符合していると考える場合、かつ当該計画の審査・認可機関が審査を経て、計画の実施は環境保全の目標と一致していると判断する場合は、直ちに上述の結論と審査意見をその計画草案を審査・認可する上での重要な根拠とならなければならない。一方、環境影響報告書に対する結論と審査意見が、その計画草案はもし実施されれば環境に悪影響をもたらしかねないと判断した場合、また計画草案の審査・認可機関が国民経済と社会発展ないし国家安全の全局的見地から総合的な審査を行った結果、上述の意見は合理的であると判断された場合は、直ちにこの計画草案を認可しない又は計画策定機関に更に一歩修正してこれを環境保全の要求に符合させた後、改めて上申を行わせる決定を下さなければならない。
「環境影響報告書の結論及び審査意見を政策決定の重要な根拠としなければならない」理由は、主に環境影響報告書及び審査グループの審査意見が各関係部門と専門家の意見と叡智を集中させたものであることを考慮したからである。このため、本法はこれを政府が政策決定する上での重要な根拠とすることを決定した。これは全国人民代表大会常務委員会の環境アセスメント活動及び審査グループの審査意見に対する高度な重視を表明するものであり、また環境影響報告書の結論及び審査意見の重要な法的地位を突出させた。
 第二、審査・認可機関が環境影響報告書の結論と審査意見を採用しない場合、説明を行うと共に将来の調査に備えて保存しなければならない。
 本条第一項の、計画草案の審査・認可機関は環境影響報告書の結論と審査意見を政策決定上の重要な根拠とすべき、という規定は、計画草案の審査・認可機関が環境影響報告書の結論及び審査グループからの審査意見を100%採用しなければならないと言っているのではない。計画草案の審査・認可機関がもし環境保全の要求と考慮すると同時に国民経済と社会発展、特に国家安全の全局的見地から総合的にバランスを取り、環境影響報告書の結論と審査意見は目下のところ実行不可能であると判断した場合、審査・認可機関もその結論と審査意見を不採用と決定してもよい。極言すれば、環境影響報告書の結論及び審査意見はコンサルティング的性質を持ってはいるが、最終的に政策決定を下す権利を有するのは、やはりその計画草案の審査・認可を担当する、人民政府或いはその主管部門である。ただし、計画草案の審査・認可機関による、環境影響報告書の結論及び審査意見に対する不採用の決定は、必ず極めて慎重に行わなければならない。審査・認可機関による環境影響報告書の結論及び審査意見に対する不採用の決定は、歴史的責任を負わなければならない。計画の審査・認可機関の歴史的責任感を強化するために、本条第二項は、計画草案の審査・認可機関は審査・認可の過程で、環境影響報告書の結論及び審査意見を採用しない場合、説明を行うと同時に調査に備えて保存しなければならない、と明確に規定した。ここで言う説明とは公開性を有するものであり、審査グループの構成員に不採用の理由を知らせるだけでなく、政府の関係部門もこれを知るべきであり、またこの計画草案の環境影響報告書の作成に参加した職員及び関係する公衆も皆当然これを知るべきである。また、プロセスに真摯に従って保存を行い、同時に関係方面による調査にも便宜を与えなければならない。

【解釈】 本条は、計画策定機関が計画実施後の環境影響について追跡評価を行わなければならないことを規定した。
 本法が言う追跡評価とは、環境に対し重大な影響を持つ計画が実施された後、その計画を策定した機関は直ちに力量を集結させ、その計画の環境影響について検査・分析・評価を行うと共に、相応な対策を採る制度を指す。
 以上の定義から、追跡評価の特徴を見ることができる。(1)追跡評価の実施の責任を負う主体は、計画策定機関であり、計画の審査・認可機関或いはその他の機関ではなく、環境アセスメント機関でもない。(2)追跡評価の対象は、本法適用範囲内の、環境に対し重大な影響を持つ全ての計画である。つまり、総合的計画も含むし、特別項目計画も含まれる。特別項目計画のうち、指導的計画も含まれば、非指導的計画も含まれる。環境に重大な影響を持つ計画であれば全て、本法の言う追跡評価の対象である。(3)追跡評価の時間は、環境に重大な影響を持つ計画が実施された後、計画策定機関が状況に応じて適時にその実施を行う。(4)追跡評価の内容は、その計画が実施された後の環境影響に対し検査・分析・評価を行う。(5)計画策定機関は、評価の結果報告をその計画の元の審査・認可機関に上申しなければならない。(6)計画策定機関は、計画が実施された後環境に明らかな悪影響が発生したことを発見した場合、直ちに改善措置を提出しなければならない。ここでは、改善措置の提出者は計画策定機関であり、提出される改善措置は適時でなければならず、時期を逸するようなことがあってはならない。計画策定機関は、計画の元の審査・認可機関に対し、改善策を提出しなければならない。(7)計画の元の審査・認可機関は、環境影響状況を把握すると同時に改善措置の提案を受け取った後、直ちに政策決定を行い、必要であれば更にその計画の策定機関と環境保全等行政主管部門を集めて、その計画に適切な調整を加えることを決定しなければならない。(8)追跡評価の具体的な実施者は、計画策定機関が決定する。
 本法は、環境に重大な影響を持つ計画が実施された後、追跡評価を行わなければならないことを規定している。これは我が国の環境保全と持続可能な開発の事業にとって、重大なる意義を持つものである。経験が証明するように、一部の計画は、それらが実施される以前には、これら計画が環境に危害をもたらすことはないと考えられていたが、実施された後、思いがけず深刻な環境問題をもたらした。従って、環境アセスメントは、調査の展開、評価の実施、環境アセスメント文書の審査から、環境保全措置を着実に行うまでの完全な過程でなければならない。本法は、環境影響の追跡評価制度の確立を明確に要求したが、これは計画実施後に発生する環境問題を適時に発見することに資するものであり、また関係部門が相応な措置を採り適時に解決することを促進するものでもある。同時に、経験の総括と蓄積に役立ち、また我が国の環境アセスメント制度が更に一歩発展し、完備されることに資するものでもある。計画の調整に及ぶ場合は、計画の審査・認可プロセスに照らして調整案をその計画の元の審査・認可機関に上申し、認可を得なければならない。追跡評価の過程で、実際の状況と、元の評価の結論が依拠した事実や関連データとの間に重大な偏差が見られた場合には、更にその原因を明らかにし、責任の所在を明確させなければならない。また、その重大な偏差が元のアセスメント活動における虚偽やごまかしに因るものであった場合には、本法第二十九条と刑法の関連規定に従ってその法的責任を追及しなければならない。

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[1] 現商務部。以下訳文では旧名称の国家経済貿易委員会を用いる――訳注


第三章 建設プロジェクト環境アセスメント

本章は計13ヵ条、建設プロジェクト環境アセスメントを分類管理する制度(第十六条)、建設プロジェクトの環境影響報告書が含むべき内容(第十七条)、建設プロジェクト環境アセスメントと計画に対する環境アセスメントとの関係(第十八条)、建設プロジェクトの環境アセスメント技術サービス機関の資格管理制度(第十九条、第二十条)、公衆が参加する環境アセスメントの範囲・プロセス・方法と公衆の意見の地位(第二十一条)、建設プロジェクトの環境アセスメント文書に対する審査と認可のプロセス(第二十二条、第二十三条、第二十四条)、建設プロジェクトの環境アセスメント文書の効力(第二十五条、第二十六条)、建設プロジェクトの環境影響事後評価と追跡調査の制度(第二十七条、第二十八条)をそれぞれ規定した。

【解釈】 本条は、建設プロジェクト環境アセスメントに対し、分類管理を実行することを規定した。
 第一、建設プロジェクト環境アセスメントに対し分類管理を行う、これは建設プロジェクトが環境に与える影響の程度の高低によって分類し、それぞれに対して異なる環境アセスメントの具体的要求(評価を行うことを要求しないものも含む)、異なる管理規定と管理プロセスを適用することを指す。
1、建設プロジェクトの環境に対する影響の程度に基づき、建設プロジェクト環境アセスメントに対して分類管理を実行する。これは世界各国および関連国際機関の通例である。分類管理には通常数種類の仕方があり、1つは選別プロセスを確立し、初期的評価といった段階を経て、環境アセスメントを行うか否か、また環境アセスメントの程度上の要求を選択することである。2つには類別の環境アセスメントリストを具体的に発布する方法がある。アメリカの環境影響報告作成プロセスには、一般に4つの主要な段階が含まれる。順番に言えば、(a)環境影響報告書を作成する必要があるかないかの決定;(b)報告書初稿の作成、公衆向けに意見を求める;(c)公衆による評議;(d)報告書の決定稿が完成し、環境アセスメントの具体的プロセスを通じ、環境影響報告書を作成するか否かを決定する。1995年に発布された『カナダ環境評価法(Canadian Environmental Assessment Act)』は主に連邦政府の決定或いは行動を必要とする、環境に不利な影響をもたらし得るプロジェクトに対し適用され、またプロジェクトの影響範囲と複雑さの程度により、環境アセスメントを4つの類型に分けている。1、選別タイプ(小規模なプロジェクトとレギュラープロジェクト);2、総合研究タイプ(大規模なプロジェクト或いは敏感な環境を持つ地域でのプロジェクト);3、調停タイプ(自由意志のプロセス);4、公開ディスカッションタイプ(選別と総合研究を経た後、依然として更なる公開ディスカッションが必要であると判断されたプロジェクト。特に異なる観点を持つ人々の間で展開される)。オーストラリアが1974年に発布した『環境保全(提案の影響)法』(EPIP)は、著しい環境影響を持つ連邦行動に適用される。これには連邦政府の認可、又は実施が必要な提案、プロジェクト、協議等が含まれると共に、もたらされる影響の程度に応じて4レベルに分けられている。(a)環境影響報告書或いは公衆による環境レポートの作成が必要でないもの;(b)公衆による環境レポートの作成が必要で、且つ公衆による審議を経る必要のあるもの;(c)環境影響報告書を作成し、且つ公衆の審議を経る必要のあるもの;(d)議案質疑委員会の審査にかける必要のあるもの。イギリスでは、1988年発布の『シティプラン(環境アセスメント)条例』(イングランドとウェールズ適用)、1988年発布の『環境アセスメント条例』(スコットランド適用)、1989年発布の『計画(環境アセスメント)条例』(北アイルランド適用)により、一部地域では如何なる状況下でも全て環境アセスメントを行わなければならないとし、一部地域では環境に著しい影響を及ぼし得る場合環境アセスメントを行う必要があるとした上で、環境アセスメントを行うべきプロジェクトのリストを公表し、「著しい影響」の判断基準や、報告書の作成および公衆参加等についても具体的な規定を設けた。EUは1985年『特定の公共および民間事業の環境影響アセスメントに関する欧州閣僚理事会指令』(85/337/EEC)を発布し、加盟国に対し、環境に著しい影響を与え得る公共および民間事業に対し環境影響アセスメントを行うことを要求した。この指令は、環境アセスメントを行う必要のあるプロジェクトをリストアップし、そのリストが規定する範囲に属するプロジェクトについては、開発者は許可或いは認可を獲得する前に環境アセスメントを完了してその報告書を関係部門と公衆に提出して審査を受けなければならないとした。世界銀行(WB)が1989年に発布した『環境アセスメントに関する運用指令』は、環境アセスメント実施は借入側の任務であることを明確にした。1991年にこの指令は修正され、プロジェクトを3つのタイプに分けた。Aタイプは全面的に環境評価を行う必要のあるもの;Bタイプは環境分析を行う必要のあるもの;Cタイプは評価も分析も必要ないもの。アジア開発銀行(ADB)は1990年に『環境配慮のためのプロジェクト選別マニュアル[1] 』を、1991年に『銀行プログラムにおける環境への配慮[2]』を、1993年に『工業と電力の開発プロジェクト環境マニュアル[3]』を発布し、それぞれアジア開発銀行環境部とアジア開発銀行プロジェクト担当職員に対し、プロジェクトが確立される段階で、ADBと発展途上国の基準に拠ってプロジェクトを選別し、潜在的な環境影響に応じてプロジェクトを3タイプに分けた。Aタイプは環境に深刻な悪影響を及ぼすもの;Bタイプは環境に深刻な悪影響がもたらされるが、それを緩和したり補ったりすることは可能であるもの;Cタイプは環境に深刻な悪影響を及ぼすには至らないもの。ADBは、環境アセスメントを行うべきプロジェクトの確定を経て、まずプロジェクトに対しもたらされ得る環境影響について初歩的なアセスメントを行い、その上で更に詳細な環境アセスメントを行う必要があるか否かを決定する、とした。
2、我が国が環境アセスメント制度を導入し且つ各種環境保全法律や法規の中で環境アセスメントを法的制度として確立させ始めた当初、これは単に環境に影響を与える建設プロジェクトについて環境影響報告書の審査・認可制度を執行すべきであると漠然と規定したに過ぎず、またどのプロジェクトが環境アセスメント実施の必要を有するかも明確に提示されておらず、環境アセスメントの範囲や深度についても不明瞭なままであった。このため、環境に悪影響をもたらし得る一部の建設プロジェクトに対し環境アセスメントを執行する上での関連規定を確保することができず、また環境影響が比較的軽微な或いは影響が極めて少ない建設プロジェクトに対する不必要なアセスメントと審査・認可を回避することができなかった。上記の問題を解決するため、各級の環境保全行政主管部門は実際の運用において、国外の経験を模索して手本としながら、徐々に分類管理の方法を実行してきた。1986年3月に国務院環境保護委員会、国家発展計画委員会、国家経済貿易委員会が連名発布した『建設プロジェクト環境保全管理弁法』は、我が国の環境保全の実情から出発し、建設プロジェクトを、環境影響報告書の作成を行うものと環境影響報告表への記入を行うものの2種類に分けた。20世紀80年代末、改革開放と国内外投資プロジェクトの急速成長に伴い、審査・認可を必要とする建設プロジェクトが急増し、如何に環境アセスメントの質を保証するか、如何に評価と審査・認可業務の効率をアップさせるか等の問題が突出した。このような情勢に対応するため、沿海の一部地域は、環境にほぼ影響ない建設プロジェクトに対する環境アセスメントと審査・認可の手続きを相応に簡素化した。国家環境保護総局も建設プロジェクトの実際的状況に基づき、1993年1月、『建設プロジェクトの環境保全に対する管理業務をより良く行うための若干意見』を下達し、「汚染の程度に応じて建設プロジェクトに対し分類管理を実行する」ことを規定し、「建設プロジェクトの業種・工程・規模・汚染状況に基づいて建設プロジェクトを汚染程度別に分類し、汚染の比較的深刻なもの(A)、汚染の比較的軽微なもの(B)、汚染がほぼ無いもの(C)の3類に分け、C類プロジェクトには一般に資料を登録するだけでよく、B類プロジェクトと汚染物質排出総量が増えない改良技術プロジェクトについては、組織体制の完全な一級下の環境保全部門に審査・認可を委託し、A類プロジェクトに対しては厳格なる審査・認可を行わなければならない」と要求した。同年6月、国家環境保護総局、国家発展計画委員会、財政部と中国人民銀行は連名で『国際金融機関の融資による建設プロジェクトの環境アセスメント・マネジメント業務の強化に関する通知』を発布、建設プロジェクトの環境アセスメントに対し分類管理を実行することを更に一歩明確に規定した。「我が国の建設プロジェクトの環境アセスメントに対する類別は、予定される建設プロジェクトが環境に与える影響の程度と範囲およびプロジェクト所在地の環境敏感程度に基づいて決定される。その類別は3つに分けられる。A類は環境に深刻な悪影響をもたらし得る建設プロジェクトで、この種のプロジェクトには全面的な環境アセスメントを実施する必要がある;B類は環境に悪影響を及ぼし得る範囲と程度が限られており、その影響も先進的な技術と成熟した防止措置の採用を規定することで対策を施せば、環境影響を大幅に緩和することが可能であるプロジェクト。この種のプロジェクトには一般に全面的な環境アセスメント実施を要求しないが、工事と環境要素の特徴に基づいた特定の環境アセスメント或いは環境影響分析を行う必要がある;C類は環境に悪影響を及ぼさないもの或いはその影響が極小な建設プロジェクト。この種のプロジェクトは一般に環境アセスメント或いは環境影響分析の展開を必要とせず、環境保全管理登録手続きを取るだけでよいとする。借款プロジェクトの環境アセスメントに対する分類は、プロジェクト要請書段階或いは国際金融機関のプロジェクト前期準備段階で、国際金融機関の意見を聴聞した後、そのプロジェクトの『報告書』の審査・認可を担当する環境保全部門が確定しなければならない」。これと同時に、国務院の環境保全行政主管部門の指導の下、一部の地区は政府規約或いは規範性を持つ文書を制定し、建設プロジェクトの環境アセスメントを分類管理するモデル実験を展開、これは次第に全国で普遍的に実施されるようになった。1998年11月に国務院が発布した『建設プロジェクト環境保全管理条例』の第七条は、国家が建設プロジェクトの環境に対する影響の程度に基づいて建設プロジェクトの環境保全に分類管理を実行することを明確に規定し、また国務院の環境保全行政主管部門が建設プロジェクトの環境保全分類管理リストを制定・公布することを規定した。1999年4月、国家環境保護総局は『建設プロジェクト環境保護(保全)分類管理リスト(試行)』を公布し、2001年2月にこの「試行リスト」を改正した後『建設プロジェクト環境保全分類管理リスト』を公布、これにより全国統一適用の、規範化された建設プロジェクトの環境アセスメント分類管理制度が完全に確立された。2002年10月、国家環境保護総局はこれを改正し、再び『建設プロジェクト環境保全分類管理リスト』を公布した。『環境影響評価法』は基本的に『建設プロジェクト環境保全分類管理条例』第7条の規定を踏襲した。
 第二、本条は建設プロジェクトの環境アセスメント分類管理制度に対し、以下の数方面にわたる基本的な規定を設けた。
1、本条第一項は「国家は、建設プロジェクトの環境に対する影響の程度に基づき、建設プロジェクトの環境アセスメントに対し、分類管理を実行する」と原則的に規定した。そのうち、『建設プロジェクト環境保全管理条例』中の「建設プロジェクトの環境保全に分類管理を実行する」という記述を、「建設プロジェクトの環境アセスメントに対し分類管理を実行する」と更に適切に修正したが、実質的な意味は変化していない。本項の規定により、環境アセスメントに分類管理を実行する上での基本的な根拠は、建設プロジェクトの環境に対する影響の程度である。建設プロジェクトの定義と範囲については、国家環境保護総局が1999年に発布した『建設プロジェクト環境アセスメント制度の執行に関する問題についての通知』に基づくものとする。これによると建設プロジェクトとは、「固定資産投資の方式で行われる一切の開発建設活動。これには国有経済、都市部・農村部の集団経済、共同経営、株式制、外資、香港・マカオ・台湾からの投資、個人経営、およびその他各種異なる経済類型の開発活動が含まれる。計画管理体制に拠り、建設プロジェクトは、基本建設、技術改造、不動産開発(開発区建設、新規開設区建設、旧市街地の改造を含む)およびその他の計4部分の事業と施設建設」を指す。しかし、これら全ての建設プロジェクトが本法の適用範囲に属する訳ではない。本法第三条の規定によれば、本法の適用範囲は環境に影響を与える建設プロジェクトに限られており、上述の建設プロジェクトのうち環境にほぼ影響の無い建設プロジェクトについては、本法の適用範囲には属さない。建設プロジェクトの環境に対する影響に関しては、これは主に環境に対する汚染と生態系に対する破壊、およびこれが引き起こした人体の健康と財産に対する損害を指し、また環境保護法第二条が規範を与える環境の定義における各種天然の、又は人工の改造を経た、大気・水・海洋・土地・鉱物・森林・草原・野生動物・自然遺跡・人文遺跡・自然保護区・景勝地・都市と農村等自然的要素の総体に及ぶところの影響を指す。建設プロジェクトの環境に対する影響の程度に関しては、主に影響の大小、影響の範囲および影響の複雑性を含み、これは建設プロジェクトの性質・規模・所在地・具体的に採用した工程技術との間に密接な関係を持つため、これについては補完的行政規則や技術的規範の中で、具体的な規定を設ける必要がある。
 2、本条第二項は、建設事業者は建設プロジェクトの環境に与える影響の程度に基づいて環境影響報告書や環境影響報告表の作成、或いは環境影響登録表の記入を行わなければならないと規定した。これにより、環境に深刻な影響をもたらし得る建設プロジェクトと環境に軽度の悪影響をもたらし得る建設プロジェクトが、深度と範囲のそれぞれ異なる環境アセスメントを行うことを必要とし、また環境影響報告書或いは環境影響報告表が作成されるべきことが確立された。また、環境に与える影響がとても少ない建設プロジェクトについては、環境アセスメントを行う必要はなく、ただ関連行政規則や技術的規範に依拠した環境影響登録表に記入して提出するだけでよいとする。環境影響報告書、環境影響報告表或いは環境影響登録表等環境アセスメント文書の内容と書式に関しては、本法第十七条で相応な規定がなされており、よって類型の異なる建設プロジェクトが充たすべき環境アセスメントの具体的要求或いは記入すべき内容と書式が相応に形成されたことになる。
(1)本条第二項(一)は、環境に深刻は悪影響をもたらし得る建設プロジェクトについては、環境影響報告書が作成されなければならず、また発生し得る環境影響に対し全面的なアセスメントをしなければならないことを規定した。環境に深刻な悪影響をもたらし得る建設プロジェクトに関しては、国家環境保護総局公布の『建設プロジェクト環境保全分類管理リスト』中の関連規定によると、以下に列記した条件のうち1つにでも該当すれば、それはこの類の建設プロジェクトに相当する。(a)原料、製品或いは生産過程が関連する汚染物質の種類が多く、数量が多い又は毒性が高く、また環境においてその分解が難しい建設プロジェクト。(b)生態系の構造に重大な変化を及ぼし得る、又は重要な生態機能を変化させてしまう、もしくは生物多様性を著しく低下させてしまう恐れのある建設プロジェクト。(c)脆弱な生態系にやや深刻な影響を発生させ得る、或いは自然災害を引き起こしたりそれを激化させたりする恐れのある建設プロジェクト。(d)行政区を跨いだ環境影響に纏わる紛糾を容易に引き起こす建設プロジェクト。(e)流域の開発、開発区の開発、都市の新興地の建設および旧市街地の改造等地域的な開発事業。全面的なアセスメントに関しては、実際上2方面の要求を含む。アセスメントの範囲は影響がもたらされ得る各環境的要素或いは分野でなければならず、アセスメントの内容は少なくとも本法第十七条第一項が規定する環境影響報告書の全内容を含むものでなければならない。
 (2)本条第二項(二)は、環境に軽度の影響をもたらし得る建設プロジェクトは環境影響報告表を作成し、発生し得る環境影響に対し分析或いは特別項目評価を行わなければならないと規定した。環境に軽度の影響をもたらし得る建設プロジェクトに関しては、国家環境保護総局公布の『建設プロジェクト環境保全分類管理リスト』中の関連規定によると、以下に列記した条件に符合するプロジェクトを指す。(a)汚染要素が単一で、汚染物質の種類も少なく、発生量も小さい或いは毒性が低い建設プロジェクト。(b)地形(地形・地貌)、水文、土壌、生物多様性等に一定の影響を及ぼすが、生態系の構造や機能には変化をもたらさない建設プロジェクト。(c)環境敏感区には基本的に影響を与えない小型建設プロジェクト。分析と特別項目評価に関しては、実質上2方面での要求を含む。評価範囲は影響をもたらされ得る主要な環境的要素或いは分野でなければならず、評価の内容は環境影響報告表が規定する内容を含むものでなければならない。
 (3)本条第二項(三)は、環境影響が非常に小さく、環境アセスメントを行う必要がない建設プロジェクトは、環境影響登録表に記入して提出しなければならないと規定した。環境影響がとても小さい建設プロジェクトに関しては、国家環境保護総局公布の『建設プロジェクト環境保全分類管理リスト』中の関連規定によると、以下に列記した条件に符合する建設プロジェクトを含む。(a)排水・排ガス・固形廃棄物・粉塵・悪臭・騒音・震動・放射性・電磁波等環境に不利な影響を基本的に出さない建設プロジェクト。(b)地形(地形・地貌)、水文、土壌、生物多様性等を基本的に変化させず、生態系の構造や機能も変えない建設プロジェクト。(c)環境敏感区に影響を全く与えない小型建設プロジェクト。これらのプロジェクトは国務院の環境保全行政主管部門が制定する環境影響登録表の内容と書式に基づいて記入し、提出するだけでよい。
 (4)本条第二項が環境影響の程度を確定する際に及んだ重要な定義に、「環境敏感区」というのがある。『建設プロジェクト環境保全分類管理リスト』中の定義によると、環境敏感区は下記に列記したような特徴を持つ地域を指す。(a)特殊な保護を必要とする地域:国家の法律・法規、行政規則および計画が確定した、或いは県級以上の人民政府が認可した、特殊な保護を必要とする地域。例えば飲料水水源保護区、自然保護区、景勝地、生態機能保護区、基本農田保護区、土壌流失重点防止区、森林公園、地質公園、世界遺産、国家重点文化財保全機関、歴史文化保護地等。(b)生態が敏感で脆弱な地区:黄砂発祥地、砂漠内のオアシス、水不足が深刻な地区、稀少動植物棲息地、或いは特殊な生態系、天然林、熱帯雨林、マングローブ、サンゴ礁、魚類・エビの産卵場、重点湿地と天然漁場等。(c)社会関心区:人口密集区、文化・教育区、党政機関が集中するオフィス街、療養地、病院等、および歴史・文化・科学・民族的意義を持つ保護地等。これら環境敏感区に位置する建設プロジェクトは、その環境影響の特徴(汚染因子と生態因子を含む)がその敏感区の環境保全目標に主な環境影響を与えない場合、その建設プロジェクトに対する環境アセスメントが敏感区基準で管理されるべきか否かについては、審査・認可権を有する環境保全行政主管部門が当地の環境保全部門に意見を求めた後確認されるものとする。
 3、本条第三項は、建設プロジェクトの環境アセスメントの分類管理リスト制度を確立すると共に、国務院の環境保全行政主管部門がこれを制定して公表する、と規定した。本項は『建設プロジェクト環境保全管理条例』中の「環境保全分類管理リスト」という規定を更に適切に「環境アセスメント分類管理リスト」と修正したが、それに含まれる意味は実質上変化していない。本項は選別プロセスを通じて環境アセスメントを行うべき建設プロジェクトを確定するという仕方を採用せず、数多くの国家が実行している環境アセスメントリスト制度を採用し、建設プロジェクト環境アセスメント分類管理リストでどの建設プロジェクトが環境アセスメントの適用対象に属するかを具体的に規定すると共に、国務院の環境保全行政主管部門に対し、環境アセスメント分類管理リストの制定・公布を授権した。現在、国家環境保護総局公布の『建設プロジェクト環境保全分類管理リスト』は実質上、本法規定の環境アセスメント分類管理リストである。建設プロジェクトの環境アセスメント分類管理リストに関しては、以下の数点を更に明確にしておかなければならない。(1)リストの対象範囲は本法第三条規定の環境に影響を与える建設プロジェクトに限られ、環境にほぼ影響を与えない建設プロジェクトについてはリストに加えられるべきではないこと。(2)本条第一項、第二項の規定に依拠し、各種建設プロジェクトは必要な環境影響調査と分析を行わなければならないという基礎に立ち、環境に深刻な悪影響をもたらす恐れがある・環境に軽度の影響をもたらし得る・環境への影響が極めて少ないという分類に応じて、分類管理リストを制定するべきであること。(3)比較的複雑な技術・経済・環境面の調査と分析が必要であるため、分類管理リストはおそらく期間を分けるか段階を分けるかして制定され、また定期的に或いは不定期に修正されるだろうということ。(4)リストアップされた建設プロジェクトだけが、本法規定の環境アセスメントの適用対象に属し、また環境アセスメント文書と審査・認可の手続きを踏む必要があること。国家のその他法律・法規と行政規則および政策・計画の中で禁止又は規制された建設プロジェクトについては、もしそれが同時に分類管理リストにリストアップされた建設プロジェクトに属している場合、国家のその他法律・法規と行政規則および政策・計画も、環境アセスメント文書の審査・認可手続きを踏む上での重要な根拠と見なされなければならない。

【解釈】 本条は、環境影響報告書に含まれるべき内容を規定すると同時に、国務院の環境保全行政主管部門に対し、その他環境アセスメント文書の内容と書式の制定を授権した。
 第一、法律・法規中で、環境影響報告書或いはその他環境アセスメント文書には少なくともどういった方面の内容或いは具体的な内容が含まれるべきか、またその書式はどうあるべきかを規定することは、世界各国の通例であり、法律・法規と技術的規範の要求を充たす環境アセスメント文書の形成に資すものであり、またこれによって環境アセスメントが規定の要求に達することを確保するものである。1969年アメリカの『国家環境政策法(NEPA)』は、環境アセスメント文書に含まれるべき内容に規定を設けた。それには、以下のような規定が盛り込まれている。「人類の環境クオリティに重大な影響を与える全ての建議或いは立法建議レポートおよびその他重大な連邦行動においては均しく、担当職員が以下に列記した内容を含む詳細な説明レポートを提出しなければならない。(i)立案中のアクションの各種選択案;(ii)建議を実施に移す際、不可避に発生し得る、環境に不利に働く全ての影響;(iii)立案中のアクションの各種選択方案[4];(iv)地方上人類環境に対する短期使用と維持および長期生産力の強化との間の関係;(v)立案中のアクションが実施に移された場合に起こり得る、変化と回復の仕様がない資源の損失」。世界その他の国家の環境アセスメント関連の法律・法規でも、これと似たような規定を設けている。1986年3月、国務院環境保護委員会、国家発展計画委員会、国家経済貿易委員会が発布した『建設プロジェクト環境保全管理弁法』は、その添付文書の中でそれぞれプロジェクトに対する環境影響報告書と環境影響報告表の内容について規定を設けた。1993年国家環境保護総局が発布した『環境アセスメントの技術的指導規則』はその中で、環境アセスメント文書が含むべき内容を更に詳細に規定した。1998年11月国務院発布の『建設プロジェクト環境保全管理条例』も、その第八条で環境アセスメント文書の内容と書式に対し相応の規定を設けたが、本法はこの条例の規定を完全に踏襲した。
 第二、本条は、建設プロジェクトの環境アセスメント文書の内容と書式に対し、以下の数方面にわたる基本的規定を設けた。
 1、本条第一項は、建設プロジェクトの環境影響報告書が含むべき内容を規定した。本法第十六条第二項の規定によると、建設プロジェクトが環境に重大な影響をもたらし得る場合、環境影響報告書を作成し、発生し得る環境影響について全面的な評価を行わなければならない。環境影響報告書が全面的な評価の基礎の上に作成されることを保証するため、一部環境アセスメントにおいて必ず実施されるべき調査・分析・研究・論証・評価の基本的方面は、環境影響報告書に最終的に反映されるべきものであり、また環境影響報告書が必須に有していなければならない内容でもある。本項の規定によると、合格と見なされる建設プロジェクトの環境影響報告書には全て本項が規定する7点の内容が含まれていなければならない。ただし、内容はこの7点に限らない。
 (1)本条第一項(一)が規定する内容は、建設プロジェクトの概況である。『環境アセスメントの技術的指導規則』等文書によると、建設プロジェクトの概況には◇建設プロジェクトの名称、地点および建設の性質◇建設規模(拡張事業の場合は元の規模も説明しなければならない)、敷地面積および工場エリアの平面配置(平面図を添付すること)◇土地利用状況と発展計画◇製品プランと主な工程方法、工程過程(工程プロセス図を添付すること)◇職員の数と職員居住区の配置◇主な原料、燃料およびその調達源と貯蔵・運輸、材料のバランス、水の使用量とバランス、水の再利用状況◇排水・排ガス・固形廃棄物・放射性廃棄物等の種類、排出量と排出方法、およびその内に含まれる汚染物質の種類、性質、排出濃度◇発生される騒音や震動の特性および数値等◇廃棄物の回収利用、総合利用と処理・処分の方案――などが含まれていなければならない。
 (2)本条第一項(二)が規定する内容は、建設プロジェクトの周辺環境の現状である。『環境アセスメントの技術的指導規則』等文書によると、建設プロジェクトの周辺環境の現状には、◇建設プロジェクト所在地の位置(平面図を添付すること)◇地質、地形(地形・地貌)と土壌の状況、河川・湖沼(ダム)・海湾の水文状況、気候と気象状況◇大気、地表水、地下水と土壌の環境クオリティ状況◇鉱物・森林・草原・水産、野生動物・野生植物・農作物等の状況◇自然保護区、景勝地、名所旧跡、温泉、療養区および重要な政治文化施設の状況◇人口密度、農業概況、土地利用状況、交通運輸状況およびその他社会経済活動状況◇人々の健康状況と地方病の状況◇その他環境汚染、環境破壊の現状資料――が含まれていなければならない。
 (3)本条第一項(三)が規定する内容は、建設プロジェクトが環境にもたらし得る影響に対する分析、予測と評価である。『環境アセスメントの技術的指導規則』等文書によると、建設プロジェクトの環境影響には、環境影響の特徴、環境影響の範囲、程度と性質が含まれていなければならない。また多くの工場用地から最適地を選出する場合は、各工場用地の環境影響を総合評価し、比較と分析を行わなければならない。同時に、建設プロジェクト実施過程の異なる段階によって、建設段階の環境影響・生産運転段階の環境影響・生産運転期間満了後の環境影響の3つに区分けすることができ、生産運転段階は更に、運転初期と運転中・後期に分けることができる。そのうち、全ての建設プロジェクトは均しく、生産運転段階における正常排出と異常排出の2種類の状況下での環境影響を予測しなければならない。大型建設プロジェクトに関しては、その建設段階における騒音・震動・地表水・大気・土壌等の影響程度が比較的高く、影響時間も比較的長くなる場合、建設段階の影響予測を行わなければならない。鉱山開発等の建設プロジェクトについては、運転期間満了後の環境影響を予測しなければならない。建設プロジェクトが環境にもたらす影響に対する分析と予測に関しては、環境影響の時間帯予測◇予測範囲、予測内容および予測方法◇予測結果およびその分析と説明――が含まれていなければならない。予測方法に対しては、通常では汎用・成熟・簡単であると同時に正確度での要求をも充たすことのできる方法が要求される。そのうち比較的多く使用される予測方法には、数学モデル法、物理モデル法、類推調査法と専門判断法がある。
(4)本条第一項(四)が規定する内容は、環境保全措置およびその技術、経済的論証である。各種関連行政規則と技術的規範によると、本項が言う環境保全措置とは、建設プロジェクトが環境にもたらし得る影響に対する分析と予測の基礎に立ち、予測された汚染と生態破壊を防止するため、的を絞って採用する各種工事措置・生物学的措置・管理措置を指す。建設プロジェクトのF/Sや施工設計と同じように、これら工事措置・生物学的措置・管理措置も技術的実行可能性と事業の経済的評価が必要であり、これによってその技術上の実行可能性と経済上の合理性を確保すると共に、この基礎に立って各種措置の投資見積りを提出する。
(5)本条第一項(五)が規定する内容は、環境影響に対する経済損益分析である。環境影響に対する経済損益分析は、環境アセスメントにおける1つの重要な方面であり、建設プロジェクトが環境にもたらし得る影響を分析・予測する基礎に立ち、更に一歩費用便益分析(Cost−Benefit Analysis、CBA)という建設プロジェクトの経済的合理性を評価する通常的な方法を応用し、建設プロジェクトの環境影響に対し金銭的価値を評価することは、建設プロジェクトの環境アセスメントをより良く建設プロジェクトのF/Sに盛り込み、建設プロジェクトの環境アセスメントと建設プロジェクトの財務分析を結合させ、経済・社会・環境の総合的角度からより全面的に建設プロジェクトの全体費用便益を把握する上で有利となる。環境影響に対する経済損益分析は通常、3つの手順を踏む。分析範囲を確定し、主要な環境影響を識別する;プラスの影響とマイナスの影響を含む、重要な環境影響の実際効果を分析・確定する;価値評価方法を通じ、上述の環境影響の実際効果に対し、金銭的価値を評価する。前述の環境アセスメントの過程において、先の2つの手順は既に終了している。従って、本項が実質上規定しているのは、建設プロジェクトの環境影響への金銭的価値評価を行うことに対する要求である。
(6)本条第一項(六)が規定する内容は、建設プロジェクトに対する環境モニタリングの実施に関する提案である。建設プロジェクトに対しモニタリングを実施することは、本項(四)の建設プロジェクトの環境保全措置における一重要内容であるべきものであり、環境モニタリングに関連する内容をここに単独列記する目的は、環境モニタリングに関連する技術的規範に依拠し、建設プロジェクトの環境モニタリング体系を確立することにある。環境モニタリングに関する提案は◇主に環境モニタリングスポット配置に関する原則の提案◇モニタリングする環境範囲に関する建議◇環境モニタリング機関の設置・スタッフ・機器に関する提案――を含む。
(7)本条第一項(七)が規定する内容は、環境アセスメントの結論である。環境アセスメントの結論は環境影響報告書の核心的内容であり、審査・認可機関が環境影響報告書を審査・認可する上での主要な根拠でもある。これには通常、以下の数方面の内容が含まれていなければならない。建設プロジェクトの環境に対する予期的影響;建設プロジェクトの規模・性質・立地が環境保全の要求を充たしているか否か;建設プロジェクトが採用する環境保全措置が技術上で実行可能であるか否か、経済面で合理的なものであるか否か;更に一歩評価を行う必要があるかどうか等。
(8)上述の7点は、環境影響報告書の基本的内容に過ぎない。関連法律或いは建設プロジェクトの実際的状況に応じて、建設プロジェクトの環境影響報告書は今後更に関連内容を増加する必要がある。例えば、水質汚染防止法と環境騒音汚染防止法の関連規定に依拠し、建設プロジェクトの環境影響報告書には周辺地域の機関や住民の意見を盛り込まなければならない;本法第二十一条の規定に依拠し、建設プロジェクトの環境影響報告書には関係機関、専門家や公衆の意見に対する採用・不採用の説明を添付しなければならない。
 2、本条第二項が規定する内容は、水土保持に係る建設プロジェクトの環境影響報告書には更に水行政主管部門による審査と同意を経た水土保持案を含んでいなければならないということである。本項は水土保持法と互いにリンクし合う規定である。水土保持法第十九条は、「山間区・丘陵区・砂漠区で鉄道・道路・水利事業を敷設・建設し、鉱山企業、電力会社とその他大・中型工業企業を開く場合は、建設プロジェクトの環境影響報告書の中に、必ず水行政主管部門の同意を得た水土保持案を盛り込まなければならない」と規定している。1993年8月国務院発布の水土保持法実施条例第十四条は更に、「山間区・丘陵区・砂漠区で鉄道・道路・水利事業を敷設・建設し、鉱山企業、電力会社とその他大・中型工業企業を開く場合は、その環境影響報告書内の水土保持案は、必ず先に水行政主管部門の審査と同意を経ていなければならない」と規定した。これは主に、我が国の土壌流失状況が特に深刻であるため、建設プロジェクトの環境アセスメントでも特に重視されなければならないことを考慮したことに因る。およそ水土保持に係る建設プロジェクト全てに対し、その環境影響報告書には必ず比較的独立した水土保持案が含まれていなければならないとし、また予備審査のプロセスを設置し、同水土保持案が水行政主管部門の審査と同意を経た後、更に同案を含む環境影響報告書を、審査・認可権所有者である環境保全行政主管部門に上申して認可を仰ぐことを要求した。
 3、本条第三項の規定する内容は、授権された国務院の環境保全行政主管部門が環境影響報告表と環境影響登録表の内容と書式を制定する、というものである。環境影響報告表の建設プロジェクト環境アセスメントが関知する内容と方面は比較的少なく、アセスメント過程も比較的簡素化されているため、また環境影響登録表の建設プロジェクトについても建設プロジェクトの基本的状況を表に簡単に記入するだけでよいため、環境アセスメント文書を統括審査・認可する環境保全行政主管部門が規範的な環境影響報告表と環境影響登録表の内容と書式を制定することは、建設事業者に便宜をもたらすと同時に審査・認可機関の行政効率アップに資するものでもある。関連行政規則の規定によると、建設プロジェクトの環境影響報告表が含む主な内容は、建設プロジェクトの概況、建設プロジェクト周辺環境の現状、建設プロジェクトが環境に及ぼし得る影響に対する分析と予測、建設プロジェクトの採用予定の環境保全措置、環境アセスメントの結論等である。

【解釈】 本条は、建設プロジェクトの環境アセスメントが計画に対する環境アセスメントと互いに重複してはならないことを原則的に規定した。
 第一、我が国現行の環境アセスメント制度は主に、建設プロジェクトに及んでいる。本法が計画に対する環境アセスメントに対し規定を設けるにつれ、計画に対する環境アセスメントと建設プロジェクトの環境アセスメント間の関係問題が浮かび上がってきた。政府の一部の計画は通常、具体的には一連の建設プロジェクトにかぶさってくる。例えば都市計画は、具体的には一連の都市インフラ施設の建設プロジェクトにかぶさり、流域計画は一連の水利事業プロジェクトにかぶさるものであり、一部地域レベルの計画においては、既に相応の建設プロジェクトの地理的位置や性質および環境保全の基本的要求等内容までもが大まかに規定されている。このため、計画に対する環境アセスメントを行う過程では、実質上建設プロジェクトの環境アセスメントに関連する情報が大量に収集され得るだけでなく、この計画が含む建設プロジェクトに対しても初歩的な評価が行われる可能性もある。従って、この後に行われる建設プロジェクトに対する環境アセスメントおよびこれに対する審査・認可については、その業務を適度に減少させるか手順を簡素化させるかしてよい。20世紀90年代初頭、全国での開発区建設ムーブの中にあって、一部開発区は続々と環境アセスメントを行うと共に、開発区の計画に符合する建設プロジェクトの環境アセスメントおよびその審査・認可管理を相応に簡素化した。1993年1月、国家環境保護総局は発布した『建設プロジェクトの環境保全に対する管理業務をより良く行うための若干意見』の中で、開発区に対し行われる地域環境アセスメントに対し規範化を行い、開発区内の新規建設プロジェクトに対する評価を簡素化する必要を指摘し、また地域環境アセスメント実施済の開発区において計画の配置に符合するプロジェクトを建設する場合は、原則上既存の地域環境アセスメント資料を利用して環境影響報告書(表)を作成、報告し、特に汚染防止対策の分析と環境保全への投資見積りを重点的に充足させなければならないが、現場モニタリングと現状の評価は行わなくてもよい、と規定した。同時に特殊なプロジェクトについては、地域環境アセスメント報告を審査・認可する環境保全部門がその環境アセスメントの深度を適切に確定し、環境アセスメントの内容を簡素化し、審査・認可にかかる時間を短縮させ、業務効率をアップさせるよう規定した。2001年2月、国家環境保護総局公布の『建設プロジェクト環境保全分類管理リスト』も、地域開発計画を策定する際環境アセスメントを行い、その環境影響報告書が環境保全行政主管部門の認可を既に得ており、且つ建設プロジェクトの性質・規模・地点或いは採用する生産工程が地域開発の全体的要求に符合するといった地域開発に組み込まれた建設プロジェクトに関しては、審査・認可権を有する環境保全行政主管部門の同意を経た後、その環境アセスメント業務を適度に簡素化してよい、と規定した。本法草案の審議の過程においてある部門から、計画に対する環境アセスメントと計画が関知する建設プロジェクトの環境アセスメントは重複されるべきでなく、また複数回に及ぶ審査・認可が効率を低下させることを回避すべきである、という意見が提起された。全国人民代表大会常務委員会はこの意見を採用し、これに応じて本条の規定を設けた。
 第二、本条は、建設プロジェクトの環境アセスメントと計画に対する環境アセスメントが互いに重複することを回避するために、以下の規定を設けた。
 1、本条第一項は、建設プロジェクトの環境アセスメントは計画に対する環境アセスメントとの重複を回避しなければならないことを原則的に規定した。本項の規定によれば、計画が関知する建設プロジェクトに環境アセスメントを行う際は、計画に対する環境アセスメントの情報資料と調査・評価の成果を充分に利用して環境アセスメントの重複という浪費を減少させるべきであって、計画に対する環境アセスメントが既に実施済みの業務を重複すべきではない。
 2、本条第二項は、全体的建設プロジェクトの計画として、建設プロジェクト基準で環境アセスメントを行ったものについては、この類に属する計画は環境アセスメントを行うべき計画の範囲外に区分けされる、と規定した。我が国現行の計画と投資管理体制の下、例えば「南水北調」、「西気東輸」や「西電東送」といった、エネルギー・交通・水利・地域開発等分野に通常的に関知すると同時に比較的明確な投資予算の配分を有する一部の政府計画は、通常重大建設プロジェクトとして立案・審査・認可されるものであり、また建設プロジェクトの性質に拠って環境アセスメントを行うものでもあり、既に比較的成熟した評価と審査・認可の体系を確立している。本項は現行の実施方法を認め、実質上法律の上で、およそ総体的に建設プロジェクトとして立案・認可された計画は、その性質が計画であろうとなかろうと、全て建設プロジェクトと見なされると共に、建設プロジェクト環境アセスメントに係る関連規定に基づいて環境アセスメントを行い、改めて計画に対する環境アセスメントを行うことはない、ということを明確にした。一部の企業が国家・地域の中・長期の発展計画と合わせて行う、企業の中・長期発展計画に対して実施する環境アセスメントについては、その主体が企業であって政府ではないことから、本法の調整対象には含まれず、その計画の中で手配された建設プロジェクトについては、建設プロジェクト環境アセスメントの関連規定に基づいて環境アセスメントを実施しなければならない。
 3、本条第三項は、既に環境アセスメントを実施済みの計画が含む具体的な建設プロジェクトについては、建設事業者はその環境アセスメントの内容を簡素化してよいことを原則的に規定した。本項規定には2つの前提条件があり、1つは計画が既に環境アセスメントを実施済みであること、もう1つはその建設プロジェクトは計画に含まれていることである。建設プロジェクトが計画に含まれているか否かを如何に判断するかに関しては、計画の中で明確に列記された建設プロジェクト以外、計画が明確に規定する地域範囲或いは業種範囲内にあり、また計画の調整対象に属する建設プロジェクトも、計画に盛り込まれた建設プロジェクトであると見なされるべきである。計画に対する環境アセスメントが通常、それが含む建設プロジェクトの具体的な環境影響までも詳細に説明することが不可能であることから、これら建設プロジェクトには依然環境アセスメントの実施が必要であり、その環境アセスメントを簡素化するか否か、どのように簡素化するか、といった事柄については、建設事業者は実際の状況に基づいて、関連法律、行政法規や規則、および技術的規範の規定に依拠して適度な簡素化をすることができる。

【解釈】 本条は、建設プロジェクト環境アセスメントへの技術サービスに対し、資格管理を実行すると規定した。
 第一、環境アセスメントの資格管理とは、建設プロジェクト環境アセスメントへの技術サービスを提供する機関が、その業務を取り扱う上での条件と活動に対し、審査と監督を行うことを指す。我が国独自のこの制度は、環境保全行政主管部門が建設プロジェクトの環境アセスメント文書を審査・認可するという我が国独自の制度と互いに関連があり、実質上法律の立場から、環境アセスメント技術サービス機関と環境アセスメント文書審査・認可機関とが、審査・認可する環境アセスメント文書に対し、それぞれが相応の責任を負担することを確立するものである。1986年3月、国務院環境保護委員会、国家発展計画委員会、国家経済貿易委員会が連名発布した『建設プロジェクト環境保全管理弁法』は、環境アセスメントに従事する機関に対し資格審査制度を実行することを明確に規定し、環境アセスメント業務を担当する機関は必ず「建設プロジェクト環境影響評価資格証書」を所持し、また証書の中で規定された範囲に準拠して環境アセスメント業務を展開するよう要求した。1989年9月、国家環境保護総局は『建設プロジェクト環境影響評価証書管理弁法』を発布、更に環境影響評価証書の等級、申請条件とプロセス、環境影響評価証書を所持する機関の職責およびそれに対する審査の方法等を詳細に規定した。1998年11月、国務院発布の『建設プロジェクト環境保全管理条例』第十三条は、更に環境アセスメント業務に従事する機関に対する資格審査制度を明確に規定した。1999年3月、国家環境保護総局は『条例』の規定に基づき、『建設プロジェクト環境影響評価証書管理弁法』改正の基礎に立ち、『建設プロジェクト環境影響評価資格証書管理弁法』を発布した。本法は、『建設プロジェクト環境保全管理条例』第十三条の規定を基本的に踏襲し、また我が国のサービス仲介機関の市場改革の方向性に基づき、条例が規定する「建設プロジェクトの環境アセスメント業務に従事する機関」を「建設プロジェクト環境アセスメントのために技術的サービスを提供する機関」と修正した。
第二、本条は、建設プロジェクト環境アセスメントにサービスを提供する上での資格管理について、以下の数方面にわたる基本的な規定を設けた。
 1、本条第一項は、建設プロジェクト環境アセスメントの資格管理の基本的内容を規定すると共に、国務院の環境保全行政主管部門に対し、具体的な資格条件と管理方法の制定を授権した。まず、本項は国務院の環境保全行政主管部門がその規定の資格条件に依拠し、環境アセスメントのために技術的サービスを提供する機関に対し考査と審査を行い、資格証書を交付することを明確に規定した。国務院の環境保全行政主管部門以外、如何なる他の行政部門も全て、関連する資格証書を交付する権利を持たない。また建設プロジェクト環境アセスメントに技術サービスを提供する如何なる機関も、国務院の環境保全行政主管部門規定の資格条件を充たし、且つ管理方法に基づいて申請し資格証書を取得して初めて、環境アセスメントへの技術サービスに従事することができる。次に、本項は資格証書を取得した技術サービス機関は必ず資格証書規定の等級と評価範囲に照らし、環境アセスメントサービスに従事しなければならないことを明確に規定した。現行の『建設プロジェクト環境影響評価資格証書管理弁法』によると、環境影響評価資格証書は甲級と乙級に分かれており、その有効期限は5年間である。甲級の証書を所持する機関は、環境影響評価資格証書規定の業務範囲に基づき、各級環境保全部門が審査・認可の責務を負う建設プロジェクトの環境アセスメント業務を担当し、また環境影響報告書或いは環境影響報告表を作成することができる。乙級の証書を所持する機関は、環境影響評価資格証書規定の業務範囲に基づき、地方各級の環境保全部門が審査・認可の責務を負う建設プロジェクトの環境アセスメント業務を担当し、環境影響報告書或いは環境影響報告表を作成することができる。更に、本項は環境アセスメントサービスを担当する機関は必ず評価の結論に対し責任を負い、同時にその機関が相応の法的責任を負うことも明確に規定した。
2、本条第二項は、国務院の環境保全行政主管部門は資格証書を既に取得した、建設プロジェクト環境アセスメントに技術的サービスを提供する機関のリストに対し、これを公表しなければならないことを規定した。このように規定した理由は主に、関連機関は環境アセスメント技術サービス資格証書を取得しているかどうか、また関連する資格の等級と評価範囲等を建設事業者が問い合わせるのに便宜を図るためと、建設事業者が適切な技術サービス機関を選択するのに便宜を図るためである。
3、本条第三項は、建設プロジェクト環境アセスメントに技術サービスを提供する機関は、建設プロジェクト環境アセスメント文書の審査・認可を担当する環境保全行政主管部門或いはその他の関係審査・認可部門との間に、如何なる利害関係も持ってはならないことを規定した。本項が関知する行政審査・認可部門に関しては、環境アセスメント文書の審査・認可を担当する環境保全行政主管部門以外にも、関連法律・法規の規定に依拠して環境アセスメント文書を審査・査定・予備審査する行政部門があり、これには海洋環境保護法規定の、海岸工事建設プロジェクトの審査と海洋事業建設プロジェクトの環境影響報告書の査定を担当する海洋行政主管部門や、水土保持法と本法規定の、建設プロジェクトの環境影響報告書中の水土保持案に対する審査を担当する水行政主管部門、本法規定に基づいて建設プロジェクトの環境影響報告書或いは環境影響報告表に対し予備審査を行う業界主管部門が含まれる。利害関係とは、主にある環境アセスメント技術サービスに従事する機関と、その環境アセスメント文書の審査・認可を直接担当する行政主管部門との間に、直接的或いは間接的に存在する経済利益関係を指す。このように規定する理由は主に、サービス仲介機関と行政主管部門との間に連帯利益関係が生まれ、ひいては社会的腐敗をもたらし、技術サービス仲介或いは行政審査・認可活動の独立と公正を損害することを回避するためである。

【解釈】 本条は、環境影響報告書或いは環境影響報告表を作成する資格に対する要求を規定した。
 第一、本条の規定は、建設プロジェクトの環境アセスメント分類管理や資格管理と互いに連帯する規定であり、その目的は、環境アセスメントの質を確保することにある。1986年3月、国務院環境保護委員会、国家発展計画委員会、国家経済貿易委員会が連名発布した『建設プロジェクト環境保全管理弁法』はその中で既に、環境アセスメント業務を担当する機関は必ず「建設プロジェクト環境影響評価資格証書」を所持してなければならないことを明確に規定している。しかし、環境影響報告書と環境影響報告表は全て評価資格を持つ機関が作成しなければならないかどうかについては更に明確にはされていない。各地方は、環境影響報告表の作成は環境アセスメントに属するのか否かについて、それぞれ異なる見解を持っている。ある地方は評価資格を持つ機関が環境影響報告表を作成すべきであると考え、またある地方はこれを要求していない。1998年11月発布の『建設プロジェクト環境保全管理条例』中の分類管理規定は、環境影響報告書と環境影響報告表の作成を行う建設プロジェクトは全て環境アセスメントを行う必要があり、環境に対する影響が極めて少なく、環境影響登録表に記入して提出するだけでよい建設プロジェクトに限り、環境アセスメントの実施を要求しないと明確化している。これにより実質上、環境影響報告書と環境影響報告表は均しく環境アセスメント資格を有する機関が作成することが明確化されたことになり、また本法もこれを法律の上で認めた。環境影響登録表の記入については、環境アセスメントを行う必要がない以上、建設事業者自らが記入して提出してよい、とした。その他、過去の環境アセスメント制度実施の過程において、一部地域と部門は地方と業種を独占し、建設事業者自らが環境アセスメント技術サービス機関を選択することを人為的に規制したり、建設事業者に代わって環境アセスメント技術サービス機関を指定したりした。例えばある地方は、建設プロジェクト環境アセスメントはまず当地の環境保全系列に属する環境アセスメント技術サービス機関が担当しなければならず、他地域の技術サービス機関は本地区に入り環境アセスメント業務を請け負ってはならないと規定した。またある業種部門は、本業種の建設プロジェクト環境アセスメント業務は全て、本業種に隷属する環境アセスメント技術サービス機関のみが担当できると規定した。このようなやり方は、環境アセスメント技術サービスの地域的・業種的独占をもたらし、環境アセスメント技術サービス分野での公平な競争を妨げた。このため、1998年11月、国務院発布の『建設プロジェクト環境保全管理条例』第十四条は、「建設事業者は公開入札の方法を採用し、環境アセスメント業務に従事する機関を選択し、建設プロジェクトに対し環境アセスメントを実施することができる」;「如何なる行政機関も、建設事業者に代わって環境アセスメント業務に従事する機関を指定し、環境アセスメントを実施してはならない」と規定した。本法の審議の過程において、関係部門が提出した、建設事業者は自ら環境アセスメント技術サービス機関を選択する権利を有すべきという建議に基づき、常務委員会は基本的に条例第十四条第二項の規定を採用した。環境アセスメント技術サービスの公開入札は今なお発展途上にあることを考慮し、またこれが入札やサービス仲介の関連法律・法規に関与してくることに鑑み、故に本法で規定を設けるにはまだ至っていない。
第二、本条は、環境影響報告書或いは環境影響報告表の作成資格および建設事業者の評価機関の選択権利について、以下の数方面にわたる基本的な規定を設けた。
1、本条第一項は、環境アセスメント文書に含まれる環境影響報告書或いは環境影響報告表は、相応な環境アセスメント資格を有する機関が作成しなければならないと規定した。本項の規定は、環境アセスメント文書3種のうち、環境影響報告書と環境影響報告表だけが、環境アセスメント資格所有の機関による作成を必要とし、環境影響登録表は建設事業者が自ら記入するだけでよい;環境アセスメント資格のない機関は環境アセスメントの任務を単独で請け負ってはならず、この種の機関が作成を担当した環境影響報告書と環境影響報告表は法律上、無効の環境アセスメント文書に属しなければならない、と確定した。このように規定する目的は、環境アセスメントが資格を有する機関によって請け負われることを確保することにある。
 2、本条第二項は、如何なる機関も如何なる個人も全て、建設事業者に代わってその建設プロジェクトに環境アセスメント技術サービスを提供する機関を指定してはならないと規定した。本項はまず、建設事業者はそれに奉仕する環境アセスメント技術サービス機関を自ら選択する権利を有することを明確化した。どの技術サービス機関を選択するかについては、建設事業者はその建設プロジェクトが所属する環境アセスメント分類管理リストの具体的類別に応じて、適切な環境アセスメント資格と評価業務範囲を有する技術サービス機関を選択する、とした。また、建設事業者がその建設プロジェクトの類別に応じて適切な環境アセスメント資格と評価業務範囲を有する技術サービス機関を選択する限り、如何なる機関も如何なる個人も全て、この選択に規制や直接的な干渉を加えてはならない、と明確化した。

【解釈】 本条は、関係機関、専門家と公衆による、環境アセスメントへの参加の範囲、プロセス、方式およびその意見の法的地位を規定した。
 第一、ステークホルダーが環境アセスメントに参加することは、国際上の通例的なやり方である。アメリカが1969年に発布した『国家環境政策法(NEPA)』は、既にステークホルダーによる環境アセスメントへの参加に関する内容を規定し、環境アセスメントの過程において、影響を受ける人々からの意見聴聞を重視すべきであると提起した。国連環境計画(UNEP)は1978年に提出した環境アセスメント基本プロセスの中で、公衆の参加を通じ、地域社会グループやその代表に、開発建設活動がもたらす不利な影響を知らせるべきであると明確に規定した。現在、ほとんどの国家が環境アセスメント関連立法の段階にあり、通常ほぼ全てステークホルダーによる参加の規定を比較的明確に盛り込んでいる。一部の国際金融機関もステークホルダーによる環境アセスメントへの参加をその貸付政策に取り込んでいる。世界銀行は1981年にその『業務指令』の中で影響を受ける大衆やNGOを「公衆」とし、同行の融資プロジェクトの環境アセスメントに参加することを規定した。アジア開発銀行は1993年、当行融資プロジェクトに対する環境アセスメントにおけるステークホルダーの参加について規定を設けた。20世紀90年代初頭、我が国は世界銀行とアジア開発銀行からの融資プロジェクトで、ステークホルダー、特に公衆による参加の制度を実施し始めた。1993年6月、国家発展計画委員会、国家環境保護総局、財政部、中国人民銀行が連名発布した『国際金融機関の融資による建設プロジェクトの環境アセスメント・マネジメント業務の強化に関する通知』は、「民間参加は環境アセスメントにおける重要な構成部分であり、『報告書』は専門に章節を設けて説明を加え、影響を受ける可能性の高い民間若しくは社会団体の利益が考慮および補償されるようにしなければならない」ことを初めて明確に規定した。この『通知』で規定されている公衆の参加には、プロジェクト所在地(区、県)の人民代表、政治協商会議委員、地域社会、学術団体或いは住民委員会、村民委員会代表の意見と建議を聴聞することや、影響を受ける地域の公衆からの意見募集が含まれている。その後、1996年5月の水質汚染防止法、1999年10月採択の環境騒音汚染防止法と1998年11月採択の『建設プロジェクト環境保全管理条例』はいずれも、環境影響報告書の中には建設プロジェクト所在地の機関や住民の意見が盛り込まれていなければならないと規定した。現在、具体的な法律規定が欠けているため、建設プロジェクトは着工前には一般に公衆には公表されておらず、環境アセスメント文書も非公開であり、公聴会等の形式も存在せず、ただ環境アセスメントの過程においてアンケート用紙を回したり、個別的に訪問して公衆の意見を収集したりするだけであり、更には専門家の意見や地方政府の意見までもが、公衆の意見と見なされたりハイレベルな公衆の参加と見なされたりしている。このため、関係機関、専門家と公衆による環境アセスメントへの参加という本法の規定は、各方面の広範な参加に便宜を図り、環境アセスメントに比較的充分に各方面、特に公衆の意見と建議を反映させることを促進し、各方面の利益をより良く保護し、各方面、特に公衆の環境保全参加を動員し、その環境意識と環境保全への参加意欲を高めることに資するものである。同時に、各方面からの参加を通じ、政府の政策決定での民主化を更に一歩促進することを助け、政府の政策決定の科学化水準を引き上げることにも資するものである。
 第二、本条は、関係機関、専門家と公衆が建設プロジェクトの環境アセスメントに参加することについて、以下の数方面にわたる基本的規定を設けた。
 1、本条第一項は、国家規定の秘密保持が必要なケースを除き、およそ環境影響報告書を作成すべき建設プロジェクトは全て、環境影響報告書を上申する前に、論証会や公聴会を開く或いはその他の形式で、関係機関、専門家と公衆からの意見募集を行わなければならないと規定した。本項の規定によると、関係機関、専門家と公衆が参加する建設プロジェクトは国家規定の秘密保持範囲に属さない、環境影響報告書を作成すべき建設プロジェクトに限られており、その他環境影響報告表を作成する或いは環境影響登録表に記入する建設プロジェクトに対しては、法律上関係機関、専門家と公衆の意見を必要としていない。ただし、これは行政法規や地方性法規が、例えば油煙や騒音が住民を煩わす飲食サービス業の開発事業等、関係機関或いは公衆の利益に一定の影響をもたらし得るその他の建設プロジェクトに対し、建設事業者はステークホルダーの意見を求めなければならないと規定してよいことを排除するものではない。参加する関係機関、専門家と公衆の範囲に関しては、実際の状況に応じ、少なくとも建設プロジェクト周辺地域の、或いは建設プロジェクトからの影響を受ける関係機関と公衆、および関連分野の技術専門家と環境専門家が含まれなければならない。関係機関、専門家と公衆による参加のプロセスに関しては、建設事業者は環境影響報告書を上申する前に公衆の意見を求めると要求するにとどまり、建設事業者が環境影響報告書を作成するにあたり、どの段階で公衆から意見を求めるかについては、規定はまだ設けられていない。公衆参加の方式に関しては、建設事業者は論証会や公聴会を開く或いはその他の形式で公衆から意見を求めることと規定し、建設事業者に比較的多くの選択肢を与えた。しかし、実際の状況に基づき、環境に対する影響が特に重大である、或いは公衆による大規模な争議が必至の大型事業については、比較的厳格な論証会や公聴会の形式を採用しなければならない。
 2、本条第二項は、関係機関、専門家と公衆の意見の、環境アセスメントおよびその審査・認可の過程における地位を規定した。即ち、建設事業者が上申した環境影響報告書には、関係機関、専門家と公衆の意見に対する採用・不採用の説明を添付しなければならない、という規定である。これにより、法律の立場から、関連意見の採用或いは不採用の説明は環境影響報告書において不可欠の一添付文書であることが確認された。つまり、この添付文書がなければ、環境影響報告書は完全な文書であると見なされるべきではない、ということである。本項の規定は実質上、関係機関、専門家と公衆の意見を、環境影響報告書の審査・認可部門が意思決定をする際の重要な参考意見と成したのである。

【解釈】 本条は、建設プロジェクトの環境アセスメント文書に対する予備審査・審査・認可のプロセス、期限および関連諸経費についての事項を規定した。
 第一、環境アセスメント制度を実施している世界大多数の国家は通常、公共事業或いは特別許可を必要とするプロジェクトに対してのみ環境アセスメントを実行しており、また事業を主管する、或いは許可申請を審査・認可する部門が関連環境アセスメント文書の策定を担当或いは関連文書を審査している。またある国家も関係する環境機関が環境アセスメントに技術的サポートを提供する、或いは審査に参加することを規定している。我が国が実行している、環境保全行政主管部門が統括的に建設プロジェクトの環境アセスメント文書を審査するという手法は、世界では比較的独特なものであり、実質上これは、建設プロジェクト計画に対する審査・認可制度から踏襲してきたものである。1989年12月に採択された環境保護(保全)法第十三条は、「建設プロジェクト環境影響報告書は、建設プロジェクトがもたらした汚染と環境への影響に対し評価を必ず行い、防止措置を規定し、事業の主管部門の予備審査を経た後、規定のプロセスに基づき環境保全行政主管部門に上申して認可を受けなければならない。環境影響報告書が認可を経て初めて、計画部門は建設プロジェクトの設計任務書類を認可することができる」と規定している。その他の環境保全法律も似たような規定を設けると共に、関連行政規則の中でも更に詳細な規定を設けた。これら建設プロジェクト環境アセスメント文書の審査・認可に関する規定は通常、建設プロジェクト主管部門の予備審査と環境保全行政主管部門の審査の2つの段階を含む。我が国の経済体制と行政管理体制改革の深化につれ、建設プロジェクトへの投資ルートと立案管理のプロセスには大きな変化が起こり、投資ルートは徐々に多元化し、政府の直接投資による一部建設プロジェクトを除くその他出資源による建設プロジェクトは、その殆どが既に商業的方式で運営されており、より多くの建設プロジェクトには既にいわゆる事業主管部門が存在しなくなってきている。これに鑑み、1998年11月、国務院発布の『建設プロジェクト環境保全管理条例』第十条は、建設プロジェクト環境アセスメント文書の審査・認可についての規定に調整を加え、「建設プロジェクトの主管部門」を「業界主管部門」と修正し、業界主管部門による予備審査についても一種の特別規定へと修正した。本法は完全にこの『条例』第十条の規定を踏襲した。
 第二、本条は、建設プロジェクト環境アセスメント文書の認可、予備審査、審査について以下の数方面に及ぶ基本的規定を設けた。
 1、本条第一項はまず建設プロジェクトの環境アセスメント文書は、建設事業者が国務院の規定に照らし、審査・認可権限を有する環境保全行政主管部門に上申して認可を受けることを原則的に規定した。この規定は一方で建設プロジェクト環境影響報告書、環境影響報告表および環境影響登録表は均しく審査・認可権限を有する環境保全行政主管部門に上申して認可を受けなければならないことを明確にし、また一方で「国務院の規定」という記述を通じて、国務院が環境アセスメント文書の審査・認可期限と技術的評価、審査・認可のプロセス等での具体的規定を別に設ける権利を授権した。この一般的プロセスの規定は、益々多くの建設プロジェクトが環境保全行政主管部門に直接認可申請を行うだけでよいという現実的状況に対応したものである。本項はその後、業界主管部門の建設プロジェクト環境影響報告書或いは環境影響報告表の予備審査を1つの特別プロセスとして規定を設けた。この規定によると、業界主管部門の予備審査のプロセスは環境アセスメントを行い、環境影響報告書と環境影響報告表を作成する必要がある、業界主管部門を持つ建設プロジェクトに対してのみ適用される。環境アセスメントを行う必要がなく、ただ環境影響登録表に記入するだけでよい建設プロジェクトについては、それが業界主管部門を持とうと持つまいと、その環境影響登録表は一律に建設事業者から直接、審査・認可権限を持つ環境保全行政主管部門に上申され、業界主管部門はこれに対する予備審査を行う必要はない。業界主管部門を持つ建設プロジェクトの環境影響報告書と環境影響報告表に対する、業界主管部門による予備審査は一種の法的プロセスであり、予備審査を通過せずには審査・認可権限を持つ環境保全行政主管部門に上申して認可を仰ぐことはできない。ただし、ここで言う予備審査とは事前審査を行い審査意見を提出するだけのものであり、一種の避けて通ることのできないプロセスであるため、最終的認可としての効力は持たない。建設プロジェクト環境影響報告書と環境影響報告表は、業界主管部門の予備審査を通過したらすぐに審査・認可権限を持つ環境保全行政主管部門に上申されるべきものであり、また最終的に認可をするか否かの決定を下されるべきものである。業界主管部門を持たない建設プロジェクトの環境影響報告書或いは環境影響報告表は、技術的評価を経た後、審査・認可権限を持つ環境保全行政主管部門により審査・認可される。
 2、本条第二項は、海洋事業建設プロジェクトの海洋環境影響報告書に対する審査・認可についての特別規定であり、海洋環境保護法の規定に従って手続きすることを明確に規定した。海洋環境保護法第四十三条の規定によると、「海岸工事建設プロジェクトを実施する機関は、必ず建設プロジェクトのF/S段階で、海洋環境について科学的調査を行い、自然条件と社会条件に基づいた合理的な立地選択を行って環境影響報告書の作成を行わなければならない。環境影響報告書は海洋行政主管部門による審査意見の提出を経て、環境保全行政主管部門に上申され、審査・認可を受ける」;「環境保全行政主管部門は、環境影響報告書を認可する前に、必ず海事・漁業行政主管部門と軍隊環境保全部門に意見を求めなければならない」とある。第四十七条は、「海洋事業建設プロジェクトは必ず海洋機能区画と海洋環境保全計画と国家環境保全関連基準に符合していなければならず、F/S段階で海洋環境影響報告書を作成し、海洋行政主管部門の認可を受け、同時に環境保全行政主管部門に登録し、環境保全行政主管部門の監督を受けなければならない」;「海洋行政主管部門は海洋環境影響報告書を認可する前、必ず海事・漁業行政主管部門と軍隊環境保全部門に意見を求めなければならない」と規定している。海洋環境保護法の規定によれば、海岸工事建設プロジェクトの環境影響報告書は必ず海洋行政主管部門の審査を経ること;海洋事業建設プロジェクトの海洋環境影響報告書は最終的に海洋行政主管部門の認可を受けること、となっている。その他、本条では規定を設けていないが、本法第十七条水土保持法の規定によると、水土保持に係る建設プロジェクトの環境影響報告書については、そのうちの水土保持案は必ず水行政主管部門の審査と同意を経なければならない、とされている。
 3、本条第三項は、環境アセスメント文書の審査・認可部門の審査・認可期限についての要求を規定した。本項の規定によれば、審査・認可権限を持つ環境保全行政主管部門は、環境影響報告書を受理した日から60日以内に、環境影響報告表を受理した日から30日以内に、環境影響登録表を受理した日から15日以内に、それぞれ審査・認可決定を行い書面で建設事業者に通知しなければならない、とされている。このように規定した目的は、審査・認可部門の業務効率をアップし、建設事業者の合法的権益を保護することにある。審査・認可部門がもし規定の期限内に審査・認可決定と建設事業者への書面通知を行わなかった場合、建設事業者は法に則って行政再審議の申し立てを行うか行政訴訟を起すことができる。
 4、本条第四項は、建設プロジェクトの環境アセスメント文書に対する予備審査、審査、認可において、如何なる費用も徴収してはならないことを規定した。本項の規定により、業界主管部門による建設プロジェクトの環境影響報告書と環境影響報告表の予備審査、海洋行政主管部門による海岸工事建設プロジェクト環境影響報告書の審査、環境保全行政主管部門による建設プロジェクト環境アセスメント文書の審査・認可は、均しく政府行政管理の正常な職能であり、それが正常な職能を履行する上での費用は政府の正常な行政管理支出に属するため、如何なる費用も改めて徴収してはならない。海洋行政主管部門による海洋事業建設プロジェクト環境影響報告書の審査・認可に関しては、これも実質上本項規定の認可と審査の事項に属することから、原則上この規定を参照して事務取扱を行わなければならない。

【解釈】 本条は、環境アセスメント文書に対する関係政府行政主管部門のレベル別審査・認可の制度と権限を規定した。
 第一、本条の規定は、我が国の各環境保全法律が規定する環境保全のレベル別管理体制と建設プロジェクトに対するレベル別審査・認可とを結合させた産物であり、その目的は関係政府行政主管部門が建設プロジェクト環境アセスメント文書を審査・認可する上での具体的な職権・職責範囲を明確に確定し、職権・職責の重複と交差を回避することにある。環境保護法第七条の規定によると、「国務院の環境保全行政主管部門は、全国の環境保全活動に対し統一監督管理を実施する」;「県級以上の地方人民政府環境保全行政主管部門は、自らが管轄する地域の環境保全活動に対し統一監督管理を実施する」とされている。この規定は原則上、各級政府の環境保全行政主管部門が建設プロジェクトの環境アセスメントを含む各種環境保全活動をレベル別管理することを確立した。その他、我が国は建設プロジェクトの性質と投資規模に応じて各級政府がレベル別の審査・認可を行うという体制を長期にわたって実行しており、建設プロジェクト審査・認可の一環としての建設プロジェクト環境アセスメント文書審査・認可にも相応に各級政府によるレベル別審査・認可体制を実行すべきであるとし、各級政府の環境保全行政主管部門にレベル別審査・認可を実行させることとした。各級政府の権限割り当てに関しては、1986年3月、国務院環境保護委員会、国家発展計画委員会、国家経済貿易委員会が連名発布した『建設プロジェクト環境保全管理弁法』第十三条で、以下の3ケースに該当する場合は国務院の環境保全行政主管部門の審査・認可を経なければならないと規定した。1、省・自治区・直轄市の境界を跨ぐ建設プロジェクト;2、特別建設プロジェクト(核施設、絶対機密事業等);3、超大型建設プロジェクト(国務院審査・認可)。そのうち、超大型建設プロジェクトとは、建設投資と計画任務書が国家発展計画委員会上申・国務院審査・認可によるものを指す。1998年11月国務院発布の『建設プロジェクト環境保全管理条例』第十一条は、基本的に上述の規定を採用し、建設プロジェクト環境アセスメント文書のレベル別審査・認可制度と審査・認可権限について規定を設けた。2002年11月、国家環境保護総局は『条例』の関連規定に基づき、『建設プロジェクト環境アセスメント文書レベル別審査・認可規定』を公布、財政投資事業と非財政投資事業の2種に対するレベル別審査・認可について具体的な規定を設けると共に、国家環境保護総局の審査・認可リストを添付・公表した。本法は『建設プロジェクト環境保全管理条例』第十一条の規定を完全に踏襲した。
 第二、本条は、建設プロジェクト環境アセスメント文書レベル別審査・認可制度と審査・認可権限について、以下の数方面に及ぶ基本的規定を設けた。
 1、本条第一項はまず、国務院の環境保全行政主管部門の審査・認可権限を具体的に列挙した。即ち、3種の建設プロジェクトの審査・認可を担当すること。1、核施設、絶対機密事業等、特殊な性質を持つ建設プロジェクト;2、省・自治区・直轄市の行政区域を跨ぐ建設プロジェクト;3、国務院の審査・認可を受けた或いは国務院から授権された関係部門が審査・認可する建設プロジェクト。これらの建設プロジェクトは全て国務院或いは国務院関係部門が審査・認可を担当するものであり、中央レベルの政府管轄事項に属し、それに関連する環境アセスメント文書も相応に、国務院の環境保全行政主管部門がその審査・認可を担当しなければならない。具体的にどの建設プロジェクトが国務院の環境保全行政主管部門によって審査・認可されるかについては、国家環境保護総局公布の『建設プロジェクト環境アセスメント文書レベル別審査・認可規定』の審査・認可リストの中で詳細に規定されている。
 2、本条第二項は、授権された省・自治区・直轄市人民政府による前項規定以外の建設プロジェクトの環境アセスメント文書に対する審査・認可権限について規定を設けた。このように規定した理由は主に、各地方で経済発展水準が異なるため、投資規模・出資源と投資方式も複雑多様であることから、投資事業管理と審査・認可および関連する環境アセスメント管理と審査・認可の具体的な状況にもそれぞれ違いがあり、国家が統一規定をすることは好ましくないということを考慮したからである。各省・自治区・直轄市の人民政府は当地の具体的状況に基づき、当地の各級人民政府の関連行政主管部門による環境アセスメント文書の審査・認可権限について具体的な規定を設けてよいこととした。
 3、本条第三項は、行政法では通例となっている、共同の一級上の政府が行政区間の争議を調停・処理するプロセスを採用し、行政区を跨いで環境に影響を与え得る建設プロジェクトについて、その環境アセスメントの結論に関与する環境保全行政主管部門間で争議が発生した場合には、その環境アセスメント文書については共同の一級上の環境保全行政主管部門が審査・認可を行う、と規定した。これは環境アセスメント文書の審査・認可に係る1つの特別規定であり、建設プロジェクトが以下の2つの条件を充たす場合は、本項の規定に基づいて環境アセスメント文書の審査・認可プロセスを履行しなければならない。(1)建設プロジェクトは一行政区域内に位置するが、その環境影響はその行政区域の範囲を超え、行政区を跨ぐ環境影響がもたらされた場合;(2)建設プロジェクト所在地の、環境アセスメント文書の審査・認可を担当する環境保全行政主管部門と、影響を蒙るその他の行政区域の環境保全行政主管部門との間で、その建設プロジェクトの環境アセスメントの結論についての意見が分岐し、且つ互いの合意一致に達しない場合。

【解釈】 本条は、建設プロジェクトの内容或いは建設時間に重大な変化が起こった場合、環境アセスメント文書を新たに上申させて認可するか、改めて審査しなければならないことを規定した。
 第一、行政審査・認可を経た事項に重大な変化(内容と時間を含む)が起こった場合、この事項は元の行政審査・認可において認可した必須の条件を既に充たしていない恐れがある。故に、行政審査・認可の手落ちの発生を回避して行政審査・認可の効力を保証するために、関連行政審査・認可の規定では通常、審査と認可の後に重大な変化が起こった事項に対し改めて上申・認可の手順を踏ませる又は再審査を行い、元の行政審査・認可で認可された必須の条件が充たされているか否かの確認を要求している。建設プロジェクトの環境アセスメント面でも、状況は同様である。建設プロジェクトの内容から見ると、環境アセスメント文書が認可された後、その性質・規模・地点・採用する生産工程或いは環境保全措置に重大な変化が起こった場合、その環境影響にも相応の変化が見られることが予想される。建設時間から見ると、環境アセスメント文書が認可された後、建設プロジェクトの建設時間に重大な変更が加えられた場合、建設プロジェクト所在地の周辺地域の環境或いは元の審査・認可で依拠した法律・法規・基準等が改正されていることも起こり得る。従って、このような状況に対応して、再申請・再審査に関する規定を設けることが必要である。1986年3月、国務院環境保護委員会、国家発展計画委員会、国家経済貿易委員会が連名発布した『建設プロジェクト環境保全管理弁法』は既に、「建設プロジェクトの性質・規模・建設地点等性質に比較的大幅な変更がなされた場合、建設プロジェクトを上申した機関は直ちに環境影響報告書或いは環境影響報告表を修正し、規定の手順を踏んで再申請をしなければならない」と規定している。1998年11月、国務院発布の『建設プロジェクト環境保全管理条例』第十二条も、建設プロジェクトの内容或いは建設時間に重大な変更がなされた場合、再申請或いは環境アセスメント文書の再審査を行わなければならないことを具体的に規定した。本法は条例第十二条の規定を基本的に踏襲した。
 第二、本条は建設プロジェクトの内容と建設時間に重大な変化が起こった場合の2つのケースに基づいて、再申請又は再審査についてそれぞれ規定を設けた。
 1、本条第一項は、建設プロジェクトの内容に重大な変化が起こった場合の、建設プロジェクトの性質、規模、地点、採用する生産工程或いは汚染防止措置、生態破壊防止措置を含む数種類の変更について規定した。その中の1つにでも該当する重大な変化が起こった場合、建設事業者は建設プロジェクトの環境アセスメント文書を再申請しなければならない。このように規定する理由は、そのうちの如何なる1つにでも該当する重大な変化が起これば、建設プロジェクトの環境影響にも相応な変化がもたらされ得るからである。従って、適切な環境アセスメントを行った後、規定の審査・認可プロセスに従って、改編した或いは補充・修正を加えた環境アセスメント文書を上申しなければならない。そのうち再申請をする環境アセスメント文書は、建設プロジェクトに発生した重大な変化に対し、環境アセスメントの全体を改めて行うか一部を改めて行うかした後に補充・修正された環境アセスメント文書であると解釈されなければならない。さもなければ、元の環境アセスメント文書を再び上申するのでは、実質上環境保全的意義も法的意義もない。
 2、本条第二項は建設プロジェクトの建設時間に重大な変更が生じた場合の時間制限を規定した。具体的には、環境アセスメント文書が認可を受けた日から5年以上が経過した場合、と規定した。これは法律が設定した、建設時間の重大な変更発生に関する時間制限であり、およそこの時間が過ぎてからプロジェクトの着工が決定された建設は全て、その環境アセスメント文書は元の審査・認可部門に再審査を求めて改めて上申されなければならない。前項との顕著な違いは、ここでは元の環境アセスメント文書に対する再審査のみを行う点にある。再審査は2方面に及ぶ。1、建設プロジェクト所在地の環境状況が変化したか否か、またその変化の程度;2、審査・認可の際適用した法律・法規・基準等に改正が行われたか否か、またその改正の程度。この2方面のうちのどちらかの変化により、元の環境アセスメント文書が必須の要件をもはや充たし得なくなった場合、元の審査・認可部門はこれに許可を与えてはならない。そのうち建設禁止に属するプロジェクトに対しては、建設禁止命令を明確に下さなければならない;建設禁止に属さないプロジェクトに対しては、建設事業者は関連規定に基づき、建設プロジェクトの環境アセスメント文書を再申請しなければならない。2方面のうちどちらの変化も元の環境アセスメント文書が必須の要件を充たすことに影響を与えない場合は、元の審査・認可部門はこれに許可を与えなければならない。どちらの一方に属する場合でも、元の審査・認可部門は建設プロジェクトの環境アセスメント文書を受理した日から10日以内に、その審査意見を建設事業者に書面で通知しなければならない。

【解釈】 本条は、環境アセスメント文書の審査・認可の法的効力を規定した。
第一、本条規定は我が国の環境アセスメント制度が確立させた「先に評価、後に建設」の原則に実施上の法的保障を与え、建設プロジェクト審査・認可の環境保全一票否決を根底から確保した。1989年12月に採択された環境保護法は、既に環境影響報告書が認可されて初めて、計画部門はその建設プロジェクト設計任務書を認可できる、と規定している。その他の環境保全法律・法規と行政規則においても、似たような規定が設けられている。この規定を通じ、建設プロジェクト環境アセスメント文書の審査・認可は、建設プロジェクト審査・認可およびその建設着工における前提条件に設定した。環境アセスメント文書が審査を経ていない或いは審査を経たが認可を受けていない建設プロジェクトは、その建設を認可されてはならないし、建設事業者もその建設を着工させてはならない。1998年11月、国務院発布の『建設プロジェクト環境保全管理条例』は、「環境アセスメント」の章でこれに対する単独の規定を持たないが、「法的責任」の章でこれに対する明確な規定を設けた。本法は我が国建設プロジェクト管理の現状に基づき、基本的に各環境保全法律・法規中の関連規定を踏襲し、またこれについて専門の原則規定を設けた。
第二、本条規定は、プロセスの角度から環境アセスメント文書がまだ審査を経ていないか、審査を経たが認可を受けていない場合の2種のケースに対し、また建設プロジェクトの審査・認可部門と建設事業者という2種の対象に対し、同時に規制を設けた。建設プロジェクトの環境アセスメント文書がまだ審査を経ていない、或いは審査を経たがまだ認可を受けていない場合は、その審査・認可部門はその建設を認可してはならず、建設事業者も建設を着工させてはいけない。建設プロジェクトの環境アセスメント文書がまだ審査を経ていない或いは審査を経たがまだ認可されていない建設プロジェクトについてその審査・認可部門がその建設を認可したとしても、建設事業者はやはりその建設を着工させてはならない。この規定は、法的プロセスの立場から、「先に評価、後に建設」の原則が貫徹執行されることを確保した。

【解釈】 本条は、建設プロジェクトの建設過程は環境アセスメント文書と審査意見の中で提起された環境保全対策措置を同時に実施しなければならないことを規定した。
 第一、環境影響報告書、環境影響報告表および審査意見の中で提出された環境保全対策措置が着実に実施に移されるか否かは、環境アセスメントが実質的な効力を生み出すことができるかどうかに直接係ってくる。『環境保護法』と『建設プロジェクト環境保全管理条例』等環境保全法律・法規の規定によれば、環境影響報告書、環境影響報告表と審査意見の中で提起された環境保全対策措置は、建設プロジェクトの初歩的設計段階で作成された環境保全文章を着実に実行に移すと共に、環境保全施設と建設プロジェクト主体工事の同時設計、同時加工、同時使用投入の「三同時」制度を通じ、これが貫徹実施されるよう保証しなければならない。本条は、基本的に各環境保全法律・法規の関連規定を採用し、関連環境アセスメント文書と審査意見の中で提起された環境保全措置が建設プロジェクトの過程で着実に実施に移されることを確保した。
 第二、本条は、建設過程における建設プロジェクトは、環境影響報告書、環境影響報告表および審査意見において提起された環境保全対策措置を同時に実施しなければならないが、これら対策措置の実行状況に対する、関連環境保全施設の竣工時の検収を含む検査・監督については規定を設けていない。相応の規定を設けていない理由は、主に環境保護法等各環境保全法律・法規がこれについて既に明確な規定を設けていることを考慮したからであり、本法ではこれを再び重複させる必要はない。本条規定の実施は、各環境保全法律・法規が規定する「三同時」制度と結合させ、建設プロジェクトが補完的建設を必要とする環境保全施設に対し、必ず建設プロジェクト主体工事と同時設計・同時竣工・同時の使用投入を行い、環境保全措置が環境保全行政主管部門の検収に合格しないうちは、その事業は生産或いは使用に投入されてはならない、と規定した。上述の規定は全て現行・有効であり、必ず同時にその執行を遵守しなければならない。

【解釈】 本条は、建設プロジェクトの環境影響に対する事後評価の制度を規定した。
 第一、建設プロジェクトの環境影響に対する事後評価の概念と役割。建設プロジェクト環境アセスメントは建設プロジェクトが実施された後環境にもたらされ得る影響について分析・予測・評価を行うものであり、環境への悪影響を予防或いは軽減する対策と措置を提起する方法と制度である。しかし、例えば大型水利事業が建造された後の水生生物の変化や土壌のグライ[5]の発達程度等、一部の建設プロジェクトはその環境影響の複雑さのために、事前の予測と判断が難しい。また例えば水利事業で出た移民による社会や環境の変化と環境キャパシティの間の関係等、実施された後に連帯影響をもたらす恐れのある建設プロジェクトも、正確でハッキリとした定量化予測が非常に難しい。このため、一部の重大な影響をもたらす建設プロジェクトに対し、環境影響の事後評価を行うことは十分に必要なことである。
 「建設プロジェクトの環境影響事後評価」とは、簡単に言えば、建設プロジェクトが実施された後の環境影響および防止措置の有効性について追跡モニタリングと検証的評価を行うと共に、救済方案或いは措置を提起し、事業の建設と環境の両立を実現させる方法と制度である。建設プロジェクトの環境影響事後評価制度の実施は、一方では発見された問題に分析を行って環境アセスメント時の分析判断、評価の技術路線、方法および自然・社会・環境の背景に対する調査が正しかったかどうかを確定し、一歩進んで環境アセスメントの技術と方法を改善し、環境アセスメントの有効性を高めることができる。もう一方では、環境アセスメント機関の評価水準と評価の結論を検証し、評価機関を査定し、評価機関の業務を改善させることも可能である。現在、我が国は事後評価のモデル事業を既に展開しており、一定の経験を培っている。
 第二、建設プロジェクトの環境影響事後評価を展開する上での条件。建設プロジェクトの環境影響事後評価を展開するに当たってまず解決しなければならない問題は、如何なる状況下で、建設プロジェクトが如何なる条件を有している場合に環境影響事後評価を展開しなければならないか、という問題である。理論上、建設プロジェクトの環境影響事後評価は環境アセスメント業務の継続と深化であり、これが採用するデータはより正確で科学的且つ信憑性に高く、結論もより説得力を有するものであって、技術的要求、難度共に高い業務である。ある意味では、事後評価は環境影響報告書の作成より深度の高いものであると言える。このため、我が国の現在の状況下では、建設プロジェクトの環境影響事後評価制度を全面的に実施することはすべきでないしまたする必要もなく、環境影響の実際の状況に応じて条件付きで、環境影響事後評価をする事業を選択すべきである。事実上、建設プロジェクトの環境アセスメント文書には事業が環境にもたらし得る影響の分析・予測・評価が含まれており、また事業の実施状況に対し相応の環境保全措置も提起している。しかし、科学技術の限界性のため、環境影響の分析や予測はいつも一定の推測の上に成り立っており、そこには必然的に不正確さや不完全さが生じる。更に我が国の経済の急速成長もあいまって、事業周辺地域の環境も経常的に変化の最中にある。特に大型事業は足掛け数年に跨ることが多く、その期間中、事業自身もその周辺の環境も共に変化が生まれる恐れがある。このため、本条はもしその建設プロジェクトが建設と運転の過程にあって、審査・認可を経た環境アセスメント文書と符合しない状況が発生した場合、環境影響の事後評価を行い、発生した問題の解決にあたることが必要である、規定した。
 「審査・認可を経た環境アセスメント文書と符合しない状況が発生する」については、その中に含まれる意味は広範にわたり、各種ケースを含んでいる。例えば、建設プロジェクトの周辺環境状況に比較的大きな変化が発生した場合、建設プロジェクトの環境保全対策にも変化が起こり、建設プロジェクトの環境に対する影響にも比較的大きな変化が見られる等、およそ環境アセスメント文書の記載事項と一致しない状況が起こり、また建設プロジェクトの環境に対する影響分析および環境アセスメントの結論にも直接関係してくる場合は、全て本条規定のケースに当てはまる。
 実際の業務において、条件の確定は環境影響の事後評価を行う事業の選択に係る。一般的な状況下では、以下の類型の事業を選択することを考慮に入れてよい。(1)環境影響が大きく、建設地点も敏感で、地域を跨ぎ、争議が起こり、公衆からの反響が強烈な大・中型建設プロジェクト。(2)環境影響の範囲が広く、影響要素も多い大型建設プロジェクト。例えば電力、化学工業、石油、冶金、水利、水力発電事業、運航事業、道路或いは鉄道事業等。(3)潜在的環境影響、例えば地下水源、漁業資源、生物多様性等に比較的大きな潜在的影響があり、アルカリ化や砂質化等危害が発生し得るが、報告書ではこれに対し明確な結論を出していない建設プロジェクト。(4)環境影響報告書にリスク評価の内容があり、重大事故や危険事故が発生した状況下では、環境影響事後評価業務を展開してよい。
 第三、建設プロジェクトの環境影響事後評価を展開する時間。本条は、建設プロジェクトが環境影響事後評価を実施する時間の範囲を「建設プロジェクトの建設と運転の過程で」と規定している。つまり、建設プロジェクトが認可を経て着工から竣工、正常運転までの全段階において、いつでも環境影響事後評価を行うことができるのであって、事業が完成された後だけに限られていない。事業が建設過程にあっても、問題が発生した折には、直ちに環境影響事後評価を展開しなければならない。
 実際の業務において、事後評価の時間範囲の確定は比較的複雑な問題であり、一般には以下の原則を考慮してよい。(1)一般建設プロジェクトの環境影響事後評価はプロジェクトの主体工事と環境保全施設が正常な生産運転に投入され、生産負荷が一定の基準に達し、建設プロジェクトの環境影響が既に発生しているか、事業の環境影響が既に社会の紛争を引き起こしている時期を選ぶ。異なる事業によってこの時間の落差は比較的大きく、通常事業が正常生産を始めてから第3〜5年目を選ぶのが比較的適切である。(2)一部比較的長時間が経過して環境影響が出てくるもの(例えば地下水、地形・地貌等)および環境影響が潜在的な建設プロジェクトに対しては、事後評価の時間は環境要素の変化の特徴と時間の表現によって具体的に確定する。(3)環境保全施設が長期にわたって遊休している或いは運転が不正常であり、環境に対し既に影響と破壊をもたらしている事業に対しては、実際の状況に応じ適切な時機に関係者を動員してプロジェクトの環境影響事後評価を行う。(4)建設期、運営期、退役期等異なる段階で環境アセスメントを行う一部の建設プロジェクトに対しては、事業の異なる段階の環境影響の程度と範囲に基づいて適切な時期にある段階に対し事後評価を行ってよい、(5)ある重大事業が既に環境に悪影響を与えている場合、事業が拡張される前に、前期工事に対し環境影響事後評価を行わなければならない。(6)外資による事業に対しては、その汚染要素を尚全面的に認識し得ない場合、事業の竣工検収の後、直ちに事後評価を開始しなければならない。
 総じて言えば、環境影響の事後評価の時間的選択は、早過ぎても遅過ぎてもいけない。早過ぎる段階で行うと事業の実質上の環境影響を全面的且つ正確に反映させることができないし、実施が遅過ぎても事業建設の実際の影響を正確に評価できないばかりか環境保全施設の相応の改良と整備に必要な情報を提供することができない。
 第四、建設プロジェクトの環境影響事後評価を展開する主体。本条規定によると、建設プロジェクトの環境影響事後評価の実施の責任を負う主体は建設事業者である。つまり、建設事業者は法定の義務を負い、プロジェクトの建設、運転過程に、法律で規定したケースが発生した際は、事後評価業務を実施しなければならない。当然、建設事業者は相応の資格を持つ環境アセスメント機関に委託して事後評価を完成させてもよい。
 第五、建設プロジェクトの環境影響事後評価の主な内容。建設プロジェクトの環境影響事後評価は、元の環境アセスメントに対する検証と補充であり、事業の環境マネジメントに対し必要な情報をフィードバックするものでもある。従って、実際の業務において、建設プロジェクトの環境影響事後評価は主に2方面を含む。1つは元の環境アセスメントの主要な内容、即ち環境アセスメント文書で関知した主要な特定テーマ、例えば事業分析・大気汚染・水質環境・騒音環境・生態環境等について事後評価を行い、同時に元の環境アセスメントにおいて存在した主な問題、例えば重大なミスやチェック漏れ等に対して建議を提起し、建設プロジェクトの環境面での実行可能性に対し実際に即した評価を行うこと。2つには建設プロジェクトの汚染防止措置の有効性を評価し、救済方案や措置を提出すること。
 具体的には、建設プロジェクトの環境影響事後評価には主に以下のような内容が含まれる。(1)環境アセスメントレポートと環境保全施設の竣工検収に対する反省。(2)事業分析に対する事後評価。これには事業の立地選択・生産規模・生産工程・製品プラン・原材料の供給元と消耗・運転時間数等の基本的状況、環境影響の発生源や影響の方式、影響の強度等が含まれる。(3)環境の現状、地域汚染源および評価対象地域環境クオリティに対する事後評価。(4)環境影響報告書が選択した環境要素に対する事後評価。(5)環境影響予測に対する事後評価。一般の状況下では、重要で計算方法も成熟した評価要素(例えば水質環境、大気環境、騒音環境等)を選択して事後評価を行う。(6)汚染防止対策の有効性に対する事後評価。これには環境影響報告書が規定した環境保全措置が合理的で適用性があり且つ有効かどうか、排出基準や汚染物質排出総量規制等の要求を充たすことが出来るかどうか、事業の対策採用上の実質的状況等が含まれる。事業の環境保全施設に対する設計・建設・運行管理や維持管理制度、環境保全施設が実現している浄化効果、運転率および運転負荷等の状況、環境アセスメントレポートに記述された環境保全投資の費用便益分析と実際の投入水準との比較等を把握且つ検証する。(7)公衆向けアンケート調査。これは事後評価における公衆参加制度の重要な具体化表現である。(8)環境マネジメントとモニタリングに対する事後評価。これには環境影響報告書の中で規定されたモニタリングの時間帯・サンプル採取の頻度・方法が国家の関連技術基準に基づいて執行されたものであるかどうか、分析方法には環境基準における相応な分析方法が採用されたかどうか、得られたデータは代表的で正確、また精密で完全なものであるかどうか、管理措置は実行可能なものであるかどうか等が含まれる。(9)事後評価の結論。事後評価が行われた後、環境アセスメント文書の作成を要求すると共に、文書中のパラメータとデータは詳細で、環境保全措置は実行可能性を有し、結論も明確であることを要求する。
 第六、建設プロジェクトの環境影響事後評価のプロセス。本条規定によると、建設プロジェクトの環境影響事後評価には以下のプロセスが適用される。
 1、建設事業者が法に則って環境影響の事後評価を行う。その過程と内容は前記の通りである。
 2、環境アセスメント機関は事後評価を終えた後、環境影響事後評価文書を作成する。この文書は法的効力を有する。建設事業者はこの文書に基づいて相応の改善措置を採り、建設プロジェクトの環境に対する汚染と破壊の発生を防止しなければならない。ここで言う「改善措置」とは、元の環境アセスメント文書の中で規定された汚染防止措置に対しての改善措置である。まさに元の環境アセスメント文書の中で規定された環境保全措置が達すべき効果を上げていないために、この基礎に立って改善を図るのである。
 3、建設事業者は改善措置を採った後、その措置の内容や実施効果等を元の環境アセスメント文書審査・認可部門と建設プロジェクト審査・認可部門に上申して登録しなければならない。環境影響の事後評価が元の環境アセスメント業務に対する改善を図るものであることから、ある意味ではこれは環境アセスメント制度における1つの有機的組成部分であり、元の環境アセスメント業務から離れて独立して存在することはできない。このため、事後評価業務に対しては、改めて審査・認可を行う必要はない。ただし、元の環境アセスメント文書審査・認可部門とプロジェクト審査・認可部門はその建設プロジェクトに対し監督管理の職責を負うことに鑑み、元の環境アセスメント文書の内容に調整を加える際は、その旨を上述の部門に報告して登録し、関係部門が状況を把握して問題を適時に発見・処理できるよう取り計らわなければならない。
 上述のプロセス以外に、本条はまた特別プロセスをも規定している。これは元の環境アセスメント文書を審査・認可した部門が建設事業者に対し、環境影響事後評価の実施と改善措置の採用に責任を持たせることを規定したものである。この特別プロセスを適用するには、以下の数点に注意しなければならない。
 1、この特別プロセスを適用するには一定の条件を充たしていなければならない。建設プロジェクトに対し法に則って環境影響事後評価を行わなければならないのに、建設事業者が種々の原因で自発的にこれを実施することを渋っている、或いは問題の存在に気付いていないために事後評価業務に着手していない;その一方で元の環境アセスメント文書を審査・認可した環境保全行政主管部門或いはその他の関係部門が、各種のルートを通じてその建設プロジェクトに存在している問題を発見した場合、その審査・認可部門は建設事業者に対し環境影響事後評価の実施に責任を持たせることができる。
 2、建設事業者に環境影響事後評価の責任を持たせることを決定することができるのは、元の環境アセスメント文書を審査・認可した環境保全行政主管部門或いはその他の関係部門のみであり、建設プロジェクトの審査・認可部門はこれに含まれない。
 3、この「責任を持たせる」という措置は強制力を持つものであり、建設事業者はこれを受けたら必ず執行しなければならず、如何なる理由を以ってこれを拒絶したり責任転嫁したりすることはできない。
 4、建設事業者は環境影響事後評価を実施した後、一般的プロセスの規定に従って、改善措置を採ると共に、元の環境アセスメント文書の審査・認可部門と建設プロジェクトの認可部門両者に対し、その内容を報告・登録しなければならない。

【解釈】 本条は、建設プロジェクトの環境影響事後評価に対し追跡調査を行うという制度を規定した。
 第一、追跡調査制度実行の必要性。環境アセスメントを経た建設プロジェクトは、生産或いは使用を開始した後、必然的に一定の環境影響を引き起こす。ある環境影響は環境アセスメント業務展開中に既に予測されており、またこのような影響に対し相応の環境保全措置を講じてあるため、環境汚染や環境破壊を引き起こすことはない。しかしある環境影響は種々の原因により、環境アセスメント実施時に意識されておらず、或いは見落とされていたため、これに対する環境保全措置が講じられていなかった。こういった場合には本法第二十七条の規定に基づいて環境影響事後評価を行い、改善措置を採らなければならない。またある環境影響は上述の2パターンには属さず、建設事業者、環境アセスメント機関と環境アセスメント文書審査・認可機関の人為的原因で、環境アセスメントに事実性を失わせ、結果的に深刻な環境汚染と生態破壊を引き起こすに至った、というものである。このような状況に対しては、建設プロジェクトに対する追跡調査制度を適用し、問題の早期発見と解決を図らなければならない。
 環境アセスメントは環境法の基本的制度の1つとして、多くの主体と段階に係るものである。建設事業者、環境アセスメント機関、環境アセスメント文書の審査・認可機関、建設プロジェクトの審査・認可機関等は全て、環境アセスメント制度実施の過程において不可欠の存在である。どの段階で問題が生じても、環境汚染と生態破壊という結果をもたらすことになる。従って、準備中の建設プロジェクトに対しての環境アセスメント実施は、環境アセスメント制度の一部分でしかない。完全な建設プロジェクト環境アセスメントとは、事後評価、「三同時」、追跡調査等一連の制度と措置を含むものである。さもなければ、環境アセスメント制度は本来あるべき役割を発揮することができない。本法第二条は環境アセスメントに対する定義の中でも追跡モニタリングの内容を含んだ。このように、建設プロジェクトが生産や使用を開始した後でも、環境アセスメント業務が既に完了したというわけではなく、追跡調査も1つの不可欠な組成部分なのである。追跡調査の実施、その目的はまさに、建設プロジェクトの運転過程に存在する問題の発見と、相応の解決方案・改善措置の提起にある。
 第二、追跡調査の主体。本条は、追跡調査は環境保全行政主管部門が行うものと規定した。ここで言う環境保全行政主管部門とは、決してその建設プロジェクト環境アセスメント文書を審査・認可する環境保全行政主管部門だけを指すのではなく、その建設プロジェクトに対し監督管理の職責を負う全ての環境保全行政主管部門をも指す。我が国の『環境保護法』と環境保全関連法律は全て、環境保全行政主管部門の環境保全業務に対する統括的な監督管理の実施を定めている。これは法律が環境保全行政主管部門に賦与する職責である。従って、建設プロジェクトの環境影響に対し追跡調査を行うことは、各級環境保全行政主管部門が必須に履行しなければならない職責の1つである。
 第三、追跡調査の時間。本条規定によると、追跡調査は建設プロジェクトが生産或いは使用を開始した後に行われる。従って事業の建設過程におけるモニタリングと検査は、本条規定の追跡調査制度の内容には属さない。
 第四、追跡調査結果の処理。環境保全行政主管部門は追跡調査を行った後、その建設プロジェクトの生産或いは使用が深刻な環境汚染又は生態破壊を引き起こしたことが発見された場合、直ちに相応の措置を講じなければならない。まず、環境保全行政主管部門は建設事業者に対し、直ちに救済措置を採り、環境汚染と生態破壊の程度と範囲を減少させることに責任を持たせなければならない。環境汚染事故が発生した場合は、関連法律の規定に照らし、早急にこれに処置を施さなければならない。次に、環境保全行政主管部門は、追跡調査の結果および発生した環境汚染と生態破壊の実際状況に基づき、このような現象を引き起こした原因を突き止め、関係機関と職員の責任の所在を明らかにしなければならない。最後に、責任の所在を明らかにするという基礎に立ち、2種類の異なる状況に分け、法に則ってこれに法的責任を追及しなければならない。第一の状況は、調査を経た後、その環境汚染或いは生態破壊が、建設プロジェクト環境アセスメントに技術的サービスを提供した機関が事実と異なる環境アセスメント文書を作成したことに因ると判明した場合で、この状況下では本法第三十三条の規定に基づき、これに法的責任を追及するものとする。本法第三十三条は、建設プロジェクト環境アセスメントに技術的サービスを提供することを委託された機関が、環境アセスメント業務中に無責任であったり虚偽の作成を施したりして環境アセスメント文書の事実性を損なわせた場合、この機関に環境アセスメント資格を授与した環境保全行政主管部門は、その資格を降格させる或いは資格証書を取り上げると同時に、これに対し委託料金の2倍以上3倍以下の罰金を科する;犯罪が成立した者に対しては、更にこれに刑事責任を追及する、と規定している。第二の状況は、その環境汚染或いは生態破壊が、調査の結果、環境アセスメント文書を審査・認可した機関の職員の過失や不正行為により本来認可すべきでない環境アセスメント文書を認可したことに因ると判明した場合で、これについては本法第三十五条の規定に基づきその者の法的責任を追及する。本法第三十五条は、環境保全行政主管部門或いはその他部門の職員が、私情で法を曲げたり職権乱用・職責怠惰をしたりして不当に環境アセスメント文書を認可した場合、これに行政処分を科し、更に犯罪の成立した者に対しては法に則って刑事責任を追及する、と規定している。

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[1] 原文直訳。日本語名称は不明――訳注
[2] 原文直訳。日本語名称は不明――訳注
[3] 原文直訳。日本語名称は不明――訳注
[4] 原文直訳。(i)と内容が全く同じ――訳注
[5]  グライ(gley)層:湿田などの土壌断面に見られる青灰ないし緑灰色の土層。常に地下水に満たされて酸素不足になり、無機化合物、特に鉄が還元されるために生ずる。G 層。還元層。三省堂提供「大辞林第二版」より引用――訳注


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