(財)地球・人間環境フォーラム(2004)による『日系企業の海外活動に当たっての環境対策(中国―北京・天津編)〜「平成15年度日系企業の海外活動に係る環境配慮動向調査」報告書〜』から【見る→】
中華人民共和国環境保護法 (1986 年12 月26 日施行)(Environmental Protection
Law of the People’s Republic of China)
中 華 人 民 共 和 国 環 境 保 護 法
1989 年12 月26 日第7 期全国人民代表大会常務委員会第11 回会議で可決、
同日中華人民共和国主席令第 22 号公布、施行
第 1 章 総則
- 第 1 条 生活環境と生態環境を保護および改善し、汚染とその他の公害を防止し、人体の健康を保障し、社会主義近代化建設の発展を促すために、本法を制定した。
- 第 2 条 本法にいう環境とは、人類の生存と発展に影響を及ぼす各種の自然および人為的に手を加えた自然要素の総体を指し、大気、水、海洋、土地、鉱物資源、森林、草原、野生生物、自然の遺跡、人文遺跡、自然保護区、景勝地、都市、農村等を含む。
- 第 3 条 本法は、中華人民共和国の領域および中華人民共和国が管轄するその他海域において適用される。
- 第 4 条 国が定める環境保護計画は国民経済・社会発展計画に組み込まねばならず、国は環境保護に有利な経済および技術政策と措置を取り、環境保護活動を経済建設および社会発展と協調させるものとする。
- 第 5 条 国は、環境保護科学教育事業の発展を奨励し、環境保護科学技術の研究と開発を強化し、環境保護科学技術の水準を上げ、環境保護に関する科学知識を普及させるものとする。
- 第 6 条 すべての団体および個人は環境を保護する義務を負い、かつ環境を汚染し破壊する団体と個人に対して、摘発および告発する権利を有する。
- 第 7 条 国務院の環境保護行政主管部門は、全国の環境保護活動に対し統一的に監督・管理を行う。県級以上の地方政府の環境保護行政主管部門は、所轄地区の環境保護活動に対し統一的に監督・管理を行う。国家海洋行政主管部門、港務監督、漁業漁港監督、軍隊の環境保護部門および各級の公安、交通、鉄道、民航の管理部門は、関連法に基づき環境汚染防止策に対する監督・管理を行う。県級以上の人民政府の土地、鉱産物、林業、農業、水利の行政主管部門は、関連法に基づき資源保護の管理監督を行う。
- 第 8 条 環境の保護および改善に著しい成果をあげた団体と個人は、政府が表彰する。
第 2 章 環境の監督・管理
- 第 9 条 国務院の環境保護行政主管部門は、国家環境質基準を制定する。省、自治区、直轄市の各政府は、国家環境質基準に定められていない項目について、地方環境質基準を定めることができ、この場合は国務院の環境保護行政主管部門に報告し、記録にとどめることとする。
- 第 10 条 国務院の環境保護行政主管部門は、国家環境質基準と国家経済、技術条件に基づき国家汚染物質排出基準を制定する。省、自治区、直轄市の各政府は、国家汚染物質排出基準に定められていない項目について、地方汚染物質排出基準を定めることができる。国家汚染物質排出基準に定められている項目については、国家汚染物質排出基準より厳しい地方汚染物質排出基準を定めることができる。地方汚染物質排出基準は、国務院の環境保護行政主管部門に報告され、記録されなければならない。すでに地方汚染物質排出基準のある地域においては、当該地方の汚染物質排出基準に従わなければならない。
- 第 11 条 国務院の環境保護行政主管部門は、監視測定システムを確立し、監視測定規範を定め、他の関連部署とともに監視測定ネットワークを組織し、環境監視測定に対する管理を強化するものとする。国務院および省、自治区、直轄市の各政府環境保護行政主管部門は、定期的に環境状況公報を発行しなければならない。
- 第 12 条 県級以上の政府環境保護行政主管部門は、他の関連部署とともに所轄内の環境調査と評価を実施し、環境保護計画を策定し、計画部門が全体のバランスをとった後に、同級政府の承認を受け実施するものとする。
- 第 13 条 環境を汚染するプロジェクトの実施は、環境保護管理の関連規定を守らなければならない。プロジェクトによる環境影響報告書には、プロジェクトがもたらす汚染と環境への影響について評価を行い、防止策を定め、プロジェクト主管部門の予審を経た上で、規定の手順に従い環境保護行政主管部門の認可を受けねばならない。環境影響報告書が認可された後、計画部門はプロジェクト設計任務書を認可することができる。
- 第 14 条 県級以上の政府環境保護行政主管部門、またはその他の法規定に基づいて環境監督・管理権を行使する部門は、管轄内の汚染物質を排出している団体に対し現地検査を行う権限を持つ。検査を受ける団体は実状を報告し、必要な資料を提供しなければならない。検査機関は、被検査団体の技術秘密および業務秘密を守らなければならない。
- 第 15 条 複数の行政区域に係る環境汚染および環境破壊の防止活動は、関係地方政府が協議のうえ解決する、または上級の政府が調整し決定することとする。
第 3 章 環境の保護と改善
- 第 16 条 地方の各級政府は、管轄区域の環境の質に責任を負い、措置を講じて環境の質を改善しなければならない。
- 第 17 条 各級の政府は、代表的な各種の自然生態系区域、希少で絶滅の恐れがある野生動植物の自然分布区域、重要な水源涵養区域、科学文化価値の高い地質構造、有名な鍾乳洞と化石の分布区、氷河、火山、温泉などの自然の遺跡および人文遺跡、古木名木について、保護策を講じ、その破壊を厳禁しなければならない。
- 第 18 条 国務院、国務院の関係主管部門および省、自治区、直轄市の政府が指定した景勝地と自然保護区、その他特別に保護を必要とする区域では、環境を汚染する工業生産施設を建設してはならない。その他の施設を建設する場合、汚染物質の排出量は規定の排出基準を超えてはならない。すでに建設された施設については、汚染物質の排出量が規定の排出基準を超えている場合、期限を定めて改善させるものとする。
- 第 19 条 天然資源の開発と利用に当たっては、生態環境の保護策を講じなければならない。
- 第 20 条 各級の政府は、農業環境の保護を強化し、土壌汚染と土地の砂漠化、塩分の増加、疲弊、沼沢化、地盤沈下、植生破壊、土砂の流失、水源の枯渇、種の絶滅、その他生態系の失調などの発生と進展の防止と、植物の病虫害に対する総合予防策を普及させ、化学肥料・農薬・植物生長ホルモンを合理的に使用するようにしなければならない。
- 第 21 条 国務院および沿海部の地方政府は、海洋環境の保護を強化しなければならない。海洋への汚染物質の排出と廃棄物の投棄、海岸地帯の工事および海洋石油の探査開発を行う際は、法律に基づき、海洋環境の汚染を防がなければならない。
- 第 22 条 都市計画を策定するときは、環境の保護と改善の目標および任務を確定しなければならない。
- 第 23 条 都市と農村の建設は現地の自然環境の特徴と結び付けながら、植生と水域および自然景観を保護し、都市の園林、緑地および景勝地の建設を強化しなければならない。
第 4 章 環境汚染とその他公害の防止
- 第 24 条 環境汚染およびその他の公害を発生させている団体は、環境保護活動を計画に取り入れ、環境保護責任制度をもうけなければならない。有効な措置を講じ、生産事業またはその他の事業活動中に生じる排ガス、排水、廃棄物、粉塵、悪臭ガス、放射性物質、騒音、振動、電磁波輻射などによる環境汚染と環境に対する悪影響を防止しなければならない。
- 第 25 条 新設の工業企業および既存の工業企業の技術改造は、資源の利用率が高く、汚染物質の排出量が少ない設備と生産技術、経費が合理的な廃棄物の総合利用技術と汚染処理技術を採用しなければならない。
- 第 26 条 汚染防止施設は、主体工事と同時に設計、施工し、操業とともに設備の使用を開始しなければならない。汚染防止施設が、環境影響報告書を審査・許可した環境保護行政主管部門による検査に合格した後、当該プロジェクトの生産、使用ができるものとする。汚染防止施設は、無断で解体したり、放置したりしてはならず、解体または放置が必要な場合は、当地の環境保護行政主管部門の同意を得なければならない。
- 第 27 条 汚染物質を排出している企業は、国務院の環境保護行政主管部門の規定に基づいて届けを出し、登録しなければならない。
- 第 28 条 汚染物質の排出量が国または地方が定める汚染物質排出基準を超えている企業は、国の規定に基づき基準超過汚染物質排出費を納付し、かつ汚染物質を処理する責任を負う。水汚染防止法に規定がある場合は、同法によって執行するものとする。徴収した基準超過汚染物質排出費は、汚染防止に使用しなければならず、ほかへの流用は認めない。具体的な使途は国務院が定めるものとする。
- 第29 条 環境に深刻な汚染をもたらした企業に対しては、期限を定めて汚染を処理させる。中央または省、自治区、直轄市の各政府の直轄企業の汚染処理期限は、省、自治区、直轄市の政府が決定する。市、県または市、県以下の政府管轄企業の汚染処理期限は、市、県の政府が決定する。期限付きで処理を要求された企業は、期限内に処理を終えねばならない。
- 第 30 条 我が国の環境保護規定に合致しない技術と設備の導入を禁じる。
- 第 31 条 事故またはその他突発的な事態の発生により汚染をもたらした、または汚染事故を引き起こす恐れのある団体は、ただちに対策を講じて汚染を処理し、速やかに汚染による危害が及ぶ可能性のある団体および住民に通報するとともに、当地の環境保護行政主管部門と関係部門に報告し、調査および処分を受けなければならない。重大な汚染事故を起こす恐れのある企業は、しかるべき措置を講じて防止を強化しなければならない。
- 第 32 条 県級以上の地方政府の環境保護行政主管部門は、環境汚染が極めて深刻で住民の生命と財産の安全が脅かされている場合、ただちに当地の政府に報告し、政府は有効な措置を講じ、汚染による危害を取り除く、または軽減しなければならない。
- 第 33 条 有毒化学製品と放射性物質を含む製品の生産、貯蔵、輸送、販売、使用は、国の関係規定を遵守し、環境汚染を防止しなければならない。
- 第 34 条 いかなる組織も、重大な汚染を発生させる生産設備を、汚染防止能力のない組織に移譲し、使用させてはならない。
第 5 章 法律責任
- 第 35 条 本法の規定に違反し、次の行為のいずれかに該当する場合、環境保護行政主管部門、またはその他の法規定に基づき環境監督・管理権を行使する部門は、それぞれの状況に応じて警告を与えるか、罰金を科すことができる。
(1) 環境保護行政主管部門、またはその他の法規定に基づき環境監督・管理権を行使する部門の立ち入り検査を拒む、または検査の際に虚偽を弄する。
(2) 国務院の環境保護行政主管部門が定める汚染物質排出に関する申告事項の申告を拒む、または虚偽の申告をする。
(3) 国の規定通りに基準超過汚染物質排出費を納付しない。
(4) わが国の環境保護規定に合致しない技術と設備を導入する。
(5) 重大な汚染を発生させる生産設備を、汚染防止能力のない組織に移譲し使用させる。
- 第 36 条 建設プロジェクトの汚染防止施設が完成していない、または国の要求基準を満たさない状態で生産を開始したり、使用したりした場合、当該プロジェクトの環境影響報告書を認可した環境保護行政主管部門は生産または使用の中止を命じるほか、罰金を科すこともできる。
- 第 37 条 環境保護行政主管部門の認可を得ないまま、汚染防止施設を解体、または放置し、その結果、汚染物質の排出量が基準を超える場合は、環境保護行政主管部門は再設置を命じるとともに、罰金を科すものとする。
- 第 38 条 本法の規定に違反して環境汚染の事故を引き起こした企業に対しては、環境保護行政主管部門、またはその他の法規定に基づいて環境監督・管理権を行使する部門が、危害の程度に応じて罰金を科す。汚染の程度が比較的深刻な場合は、関係責任者に対して、所属団体か政府主管機関が行政処分を下すものとする。
- 第 39 条 汚染処理期限が過ぎても処理を終えていない企業に対しては、国の規定に基づき基準超過汚染物質排出費を徴収する以外に、汚染の程度に応じて罰金を科す、または業務停止や閉鎖を命ずることができる。前項に定める罰金は、環境保護行政主管部門が決定する。業務停止、閉鎖の命令は、期限付き汚染処理を決定した政府が決めるものとする。中央政府の直轄企業への業務停止令、閉鎖令は、国務院の認可を得なければならない。
- 第 40 条 行政処罰の内容に不服がある場合、当事者は処罰通知を受けた日から15 日以内に処罰を決定した機関の一級上の機関に再議を申し立てることができる。再議決定に不服の場合は、再議決定を受けた日から15
日以内に人民法院に訴訟を起こすことができる。当事者は処罰通知を受けた日から15 日以内に、直接人民法院に訴訟を起こすこともできる。当事者が期間を過ぎた後に再議を申し立てず、人民法院に訴訟も提起しないにもかかわらず、処罰内容を履行しない場合には、処罰を決定した機関が人民法院に強制執行を申し立てるものとする。
- 第 41 条 環境汚染による危害をもたらしたものは、危害を排除し、かつ直接損害を受けた組織または個人に対し損害を賠償する責任を負う。賠償責任と賠償金額に関する紛争は、当事者の請求に基づき、環境保護行政主管部門またはその他の法規定に基づいて環境監督・管理権を行使する部門が処理することができる。当事者は処理決定に不服の場合、人民法院に訴訟を起こすことができる。当事者は直接人民法院に訴訟を起こすこともできる。完全に不可抗力の自然災害で、かつ遅滞なく適正な措置を講じても、なお環境汚染による損害を回避することができなかった場合は、責任を免除する。
- 第 42 条 環境汚染による損害賠償の訴訟提起の時効は3 年とし、当事者が汚染による損害を受けたことを知った、または知りえた時から計算するものとする。
- 第 43 条 本法の規定に違反し、深刻な環境汚染事故を引き起こし、公共と個人の財産に多大な損害を与えたり、死傷者を出したりした場合は、法に基づき直接の責任者に対し刑事責任を追及する。
- 第 44 条 本法の規定に違反し、土地、森林、草原、水、鉱産物、漁業、野生動植物などの資源を破壊した場合は、関連法の規定に従い法律責任を負うものとする。
- 第 45 条 環境保護監督・管理者が職権を乱用したり、職務を守らなかったり、私情にとらわれて悪事をはたらいたりした場合は、所属組織または上級主管機関により行政処分が下される。犯罪の場合は、法に基づいて刑事責任を追及するものとする。
第 6 章 附則
- 第 46 条 中華人民共和国が締結、または参加している環境保護関連の国際条約に中華人民共和国の法律と異なる規定がある場合は国際条約の規定を適用するが、中華人民共和国が保留を表明している条項は除く。
- 第 47 条 本法は公布の日から施行する。『中華人民共和国環境保護法(試行)』は同時に廃止する。
※日中友好環境保全センター ウェブサイト 「中国の環境関連法令・通達など」より転載(一部加筆、修正)
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