(財)地球・人間環境フォーラム(2004):日系企業の海外活動に当たっての環境対策(中国―北京・天津編)〜「平成15年度日系企業の海外活動に係る環境配慮動向調査」報告書〜.157p.


目次

はじめに
・目次
本書の構成と使い方

第 1 章 中国の環境保全施策の概要.................................................................1
 第1 節 中国の環境政策と環境関連法規................................................3
  1.環境政策の展開とその特徴
   「環境保護」は中国の国策の一つ
   三つの環境政策と九つの環境管理制度に基本をおく環境対策
   着実に進められる環境法体系と環境行政組織の整備
   「環境保護法」を基本とする中国の環境法体系
   地方基準が優先される排出基準
   環境政策に重要な役割果たす環境関連の長期計画
   環境政策の理解に不可欠な中国独特のキーワード
    (1)環境管理制度関連
     ・「三同時」制度
     ・排汚費(汚染物質排出費)徴収制度
     ・環境保護目標責任制度
     ・都市環境総合整備に関する定量審査制度
     ・汚染物質集中処理制度
     ・汚染物質排出登記・許可証制度
     ・期限付き汚染防除制度
    (2)その他の用語等
     ・三廃
     ・「33211」
     ・両控区
     ・零点(午前0 時)行動
  2.中国の産業環境対策に関連する法規制
   産業環境対策に関わりの深い四つの汚染防止法
   環境と経済の協調をめざす「環境保護法」
   環境対策の中心となる「三廃」関連の規制
    (1)大気汚染防止法
    (2)水汚染防止法
    (3)固体廃棄物環境汚染防止法
    (4)産業環境対策に関するその他の法令
    (5)新たな視点に立った環境法令づくりも
   ISO14001 の認証取得を促す政策も推進
  3.中国の環境行政組織
   中国の環境行政組織の中心は国家環境保護総局
   日常の環境手続等は地方環境保護局が担当
  4.環境政策の展開に当たっての課題
   地域格差のない環境政策の実施が課題に
 第2 節 大気汚染対策.......................................................................17
  1.中国の大気汚染対策
   二酸化硫黄対策に重点をおく大気汚染規制
  2.工場に適用される具体的な排ガス規制
   (1) 大気汚染物質の総合排出基準
   (2)ボイラーに対する種類別排出基準
   (3)排ガスのモニタリング
 第3 節 水質汚濁対策.......................................................................29
  1.中国の水質汚濁対策
   最も重要度が高い水質汚濁対策
  2.工場に適用される具体的な排水規制
   (1)中国政府の定めた国家レベルの排水基準値
   (2)排水のモニタリング
 第4 節 産業廃棄物対策....................................................................39
  1.新しい局面を迎える産業廃棄物対策
  2.処理施設の整備が課題となる有害産業廃棄物対策
 第5 節 土壌汚染対策.......................................................................43
  1.中国の土壌汚染対策
   忘れてはならない工場敷地の土壌汚染防止対策
 第6 節 地方環境行政における取り組み―天津市の事例― .....................47
   各地方行政レベルに設置される地方環境保護局
   およそ600 名の専従職員が環境行政に携わる天津市
   ボイラー排ガスに独自の上乗せ排出基準を設定
   
第 2 章 中国における日系企業の環境対策への取り組み事例............................51
 第1 節 中国の日系企業と環境対策.....................................................53
  1.中国の日系企業と環境対策
   独資形態が増える中国の日系企業
   規制クリアにとどまらない先進的な環境対策に取り組む日系企業
   自主的に二酸化硫黄の段階的排出削減を実施する日系企業も
   多額の設備投資と工夫によるすぐれた排水対策
   処理施設の整備を待って有害廃棄物を6 年間自社工場で保管
   ISO14001 に基づく環境マネジメントシステムの構築
   日系企業が連携する環境情報を共有する仕組みづくりを
 第2 節 汚染物質の排出削減へ向けた先進的な取り組み事例..................61
  事例1 厳しい排水基準値へ日本でも稀な高度処理で対応している事例.....62
   1)取り組み企業の概要
   2)取り組みの背景
   3)取り組みの内容
    a. 排水処理
    b. その他
  事例2 二酸化硫黄の排出総量を自発的に削減している事例.....................65
   1)取り組み企業の概要
   2)取り組みの背景
   3)取り組みの内容
    a. ISO14001 の削減計画
    b. 排ガス規制
    c. 排ガス処理
  事例3 処理水COD 値の環境保護局への自動送信監視に対応している事例...68
   1)取り組み企業の概要
   2)取り組みの背景
   3)取り組みの内容
    a. 排水処理
    b. 廃棄物
    c. 排ガス
    d. 工場計画時の環境対策
    e. その他
  事例4 有害廃棄物を6 年間にわたり工場内に保管していた事例.............. 71
   1)取り組み企業の概要
   2)取り組みの背景
   3)取り組みの内容
    a. 廃棄物の管理
    b. 排ガス
    c. 排水
    c. ISO14001
    d. その他
  事例5 多くの見学者を受け入れながら高濃度排水を処理している事例..... 74
   1)取り組み企業の概要
   2)取り組みの背景
   3)取り組みの内容
    a. 排水処理
    b. 廃棄物処理
    c.その他
  事例6 日本では規制されていないVOC の処理に取り組んでいる事例...... 76
   1)取り組み企業の概要
   2)取り組みの背景
   3)取り組みの内容
    a. 排ガス処理
    b. 廃棄物
 第3 節 環境マネジメントシステムを経営改善に結びつけている事例......79
  事例7 ISO14001 に基づく3 ヵ年連続の活動計画に取り組んでいる事例...80
   1)取り組み企業の概要
   2)取り組みの背景
   3)取り組みの内容
    a. ISO14001 認証取得
    b. 排水処理
    c. 有害廃棄物
  事例8 省資源、省エネルギーにISO14001 の認証取得を活用している事例... 86
   1)取り組み企業の概要
   2)取り組みの背景
   3)取り組みの内容
    a. ISO14001 認証取得
    b. 廃棄物
    c.その他
  事例9 業界トップでISO14001 の認証を取得した事例.......................... 90
   1)取り組み企業の概要
   2)取り組みの背景
   3)取り組みの内容
    a. ISO14001 認証取得
    b. 排水処理
    c.その他
 第4 節 環境保全をめざしたその他の工夫事例.....................................95
  事例10 店頭に回収箱を置いてリサイクル意識の啓蒙を行っている事例..... 96
   1)取り組み企業の概要
   2)取り組みの背景
   3)取り組みの内容
    a. 廃棄物
    b. 植樹活動
    c. 雇用促進
    d. 人材育成
    e. その他
  事例11 含油排水を日本では稀な電解処理している事例........................... 98
   1)取り組み企業の概要
   2)取り組みの背景
   3)取り組みの内容
    a. 排水処理
    b. ISO1400 認証取得
    c. その他
  事例12 排水の再利用を目的として高度処理を続けている事例................ 102
   1)取り組み企業の概要
   2)取り組みの背景
   3)取り組みの内容
    a. 排水処理
    b. 建設許可時の環境手続き
    c. 廃棄物
    d. その他
  事例13 本格的事業認可の前から環境への配慮に取り組んでいる事例...... 105
   1)取り組み企業の概要
   2)取り組みの背景
   3)取り組みの内容
    a. 日本本社からのガイドライン遵守
    b. その他
  事例14 騒音対策にインバーター制御を採用した事例............................ 107
   1)取り組み企業の概要
   2)取り組みの背景
   3)取り組みの内容
    a. インバーター制御
    b. ボイラー排ガス

資料編
参考資料1 中華人民共和国環境保護法 (1989 年12 月26 日施行)(Environmental Protection Law of the People。ッs Republic of China)...109
参考資料2 中華人民共和国大気汚染防止法(Law of the People's Republic of China on the Prevention and Control of Atmospheric Pollution)...115
参考資料3 中華人民共和国水汚染防止法(1996 年改正)(Law of the People's Republic of China on Prevention and Control of Water Pollution)...123
参考資料4 中華人民共和国水汚染防止法実施細則(中華人民共和国国務院令第284 号)(Implementation of the Law of the People。ッs Republic of China on the Water Pollution Prevention and Control)...131
参考資料5 ボイラーの大気汚染物質排出基準(天津市地方基準DB12/151-2003)(Emission standard of air pollutants for coal-burning oil-burning gas-fired boiler)...137
参考資料6 中国および日本における環境情報関連窓口...143

・参考文献
・調査協力先


はじめに

わが国企業は、アジア地域の国々に広く事業を展開しており、日本国内だけでなく、海外の事業拠点においても環境問題に真摯に取り組むことが求められている。また、現地において先進的な環境対策を展開する日系企業の環境配慮行動には高い関心が集まっている。こうした状況を背景に環境省は当財団に委託して、平成8(1996)年度からアジア地域に進出する日系企業の環境対策の推進に役立つ情報・事例集を国別に作成する「日系企業の海外活動に係る環境配慮動向調査」を行っている。本調査ではすでに、平成8 年度フィリピン、平成9 年度インドネシア、平成10 年度タイ、平成11 年度マレーシア、平成13年度ベトナム、平成14 年度シンガポールを対象に調査を実施し、各国別に環境対策ガイドブックを作成し、それらの国々に進出済みの日系企業等を中心に幅広く関係者に配布して関連する環境情報を提供してきた。

本報告書はその第7 弾となる「中華人民共和国(以下中国)」を対象とした平成15 年度環境省委託調査事業の成果報告書である。日本の約26倍という広大な国土を有する中国は、内陸部と沿岸地域の経済格差をはじめ、地域ごとの社会状況(経済、環境、行政など)が大きく異なる。このため、中国全国を網羅した調査を実施して1 冊の報告書にまとめることは難しく、今年度は調査地域を北京市、天津市に限定した。北京・天津地域を調査対象とした理由は、首都北京と4大直轄市の一つであり首都に隣接する天津には日系企業の進出も多く、優れた取り組み事例を収集することができることがまず挙げられる。さらに、中央政府のある北京では国家としての環境政策に関する情報を収集することができること、天津市は行政レベルも高く比較的厳しい法規制が執行されているため、地方環境行政の代表事例としてその情報を提供することが、日系企業の今後の環境対策の参考になると判断したからである。

中国には現在およそ2 万社ともいわれる多数の日系企業が進出し、今後も中国各地域においては多くの日系企業が活発な企業活動を展開し、同国経済の牽引役として大きな役割を果たすことが予想されるが、本報告書に収録した中国(北京・天津地域)の最新環境情報が、すでに同国へ進出済みの日系企業のよりすぐれた環境対策への取り組み、さらには今後中国へ進出しようとする多数の日系企業の環境対策の参考となり、ひいては中国の産業公害対策のさらなる進展に役立てば幸いである。

終わりに、今回の調査実施に当たっては、日本商工会議所および在中国日本商工会議所に、訪問調査先日系企業の紹介などで全面的なご支援をいただいた。また、多くの在北京・天津日系企業、国家環境保護総局、天津環境保護局、日中友好環境保全センターなどの関係者のみなさまには、ご多用中にもかかわらず現地訪問調査や情報収集等で多大なご協力をいただいた。この場をお借りして、お世話になった多くのみなさまに、心からお礼を申し上げる次第である。

財団法人 地球・人間環境フォーラム


本書の構成と使い方

本書は、中国の環境法規制の内容などを解説した「第1 章」、中国(北京・天津地域)に進出している日系企業の具体的な環境対策への取り組み事例を紹介した「第2 章」、そして第1 章、第2 章の内容をより深く理解するために役立つ「資料編」で構成されている。本書でいう日系企業とは、在中国日本商工会議所の会員企業等を指し、日本側の出資比率等の特定の条件がないことをあらかじめお断りしておく。また、今回の調査で現地訪問調査を受け入れてくれた日系企業には製造業の割合が多かったため、本書全体の内容も製造業の環境対策に主眼をおいたものになっていることを、あわせてお断りしておく。

さらに本書は、各章および各章の中の各節がそれぞれ独立しており、各企業の環境対策への取り組みの実状にあわせて、それぞれ必要な環境情報を抜き出すかたちで読むことができるように工夫している。なお、本文中に記載されている法令や組織名等については、全て本財団による仮訳であることにご留意いただきたい。

具体的な本書の構成は以下のとおりである。

「第 1 章」は、中国における環境法規制等の動向についての最新情報を、第1 節「中国の環境政策と環境関連法規」、第2 節「中国の大気汚染対策」、第3 節「中国の水質汚濁対策」、第4 節「中国の産業廃棄物対策」、第5 節「土壌汚染対策」、第6 節「地方環境行政における取り組み―天津市の事例―」の、6 つの節に分けて解説している。

第1節では、中国における環境政策の発展の経緯や、その特徴などを解説した後、日系企業の環境対策に不可欠である産業公害に関連する環境法令や各種環境規制の体系、環境行政の仕組みなどに関して記載した。そして、第2節以下では、これら環境法令や規制を分野ごとに分けて詳しく解説している。

第 2 節〜第5 節では産業公害対策に不可欠な大気汚染、水質汚濁、産業廃棄物、土壌汚染の4 分野についてそれぞれ、詳しく法規制の仕組みや規制基準の内容を解説している。

そして、最終節の第6 節では天津市を例に取り上げ、地方行政組織における環境対策や地方独自の規制などの紹介にページを割いた。

なお、第1 章に収録した情報については、国家環境保護総局(SEPA)および天津市環境保護局(天津EPB)に対するヒアリング結果を中心にまとめた。

「第 2 章」は、まず第1 節に中国に進出している日系企業の環境対策への取り組みの特徴などをまとめている。そして、現地訪問調査で収集した日系企業の先駆的な環境対策への取り組み14 事例を、第2 節「汚染物質の排出削減へ向けた先進的な取り組み事例」(6事例)、第3 節「環境マネジメントシステムを経営改善に結びつけている事例」(3 事例)、第4 節「環境保全をめざしたその他の工夫事例」(5 事例)に分けて紹介している。

中国には様々な業態の日系企業が進出して産業活動を行っているため、今回収集した環境対策の取り組み事例の内容も幅広いものとなっている。製造業の取り組みに関しては、排水、排ガス、廃棄物対策のほか、それにとどまらない積極的な取り組みも含めて重点的に第2 節にまとめている。そのほか、第3 節ではISO14001 などの環境マネジメントシステムを経営改善に活用している取り組み、第4 節では製造業以外の企業や中小企業の様々な取り組みを取り上げ、環境対策を企業活動の一環として積極的に取り組んでいる事例としてまとめている。

巻末に「資料編」として以下の情報を収録した。

参考資料1 中華人民共和国環境保護法 1989 年12 月26 日施行(全文)
参考資料2 中華人民共和国大気汚染防止法(全文)
参考資料3 中華人民共和国水汚染防止法 1996 年改正(全文)
参考資料4 中華人民共和国水汚染防止法実施細則(中華人民共和国国務院令第284 号)(全文)
参考資料5 ボイラーの大気汚染物質排出基準(天津市地方基準DB12/151-2003)(全文)
参考資料6 中国および日本における環境情報関連窓口

参考資料1 には、第1 章の第1 節で解説した環境保護法への理解を深めるために、同法の全文の日本語訳を掲載した。また参考資料2 には、大気汚染の防止を目的とした「大気汚染防止法」、参考資料3 には水質汚濁防止を目的とした「水汚染防止法」、さらに参考資料4 には、その具体的な管理規則となる「水汚染防止法実施細則」の全文日本語訳を掲載した。参考資料5 に天津市の地方基準として制定された「ボイラーの大気汚染物質排出基準」の全文日本語訳を掲載した。

なお、参考までに本書に用いた通貨の換算レートは、1 人民元(1RMB)=約15 円である<2004 年1 月現在>。


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