『(2)真発熱量と総発熱量
発熱量には蒸発するときに奪われる熱量(蒸発潜熱)を含むか、含まないかの2種類の表記方法がある。蒸発潜熱を含まない熱量を真発熱量(net
calorific term)、含む熱量を総発熱量(gross calorific term)といい、前者の例としては国際エネルギー機関のエネルギーバランス表が、後者の例としては我が国の「総合エネルギー統計」のエネルギーバランス表があげられる。このほか、米国のエネルギー統計でも熱量は総発熱量ベースである。また、真発熱量を低位発熱量(low-calorific
term)、総発熱量を高位発熱量(high calorific term)という場合もある。
真発熱量と総発熱量の違いはエネルギー源によって異なるが、石炭、石油で約5%、天然ガスで約10%といわれている。
国や統計によって、真発熱量か総発熱量かという表記方法が異なり、通常は明記されていないため、熱量表示のデータを扱う場合には若干の注意が必要である。例えば後述するように、CO2排出量の算定には各エネルギーごとに定められた炭素排出係数を熱量表示のエネルギー消費量に乗じる方法が用いられている。そして、その排出係数とエネルギー消費量は同じ発熱量のベース(真か総か)のものを利用する必要がある。言い換えれば、真発熱量がベースの国際エネルギー機関(IEA)の炭素排出係数を、総発熱量がベースである総合エネルギー統計で公表されるエネルギーバランス表に用いると、CO2排出量を過大推計してしまうことになるのである。何故ならば、真発熱量ベースの炭素排出係数は総発熱量ベースの炭素排出量よりも大きいからである(同じエネルギー源から排出される二酸化炭素の量は同じはずであるため、真発熱量ベースと総発熱量ベースの炭素排出係数には発熱量と逆の大小関係がある)※4。
※4 二酸化炭素排出量は熱量ベースの化石燃料(石炭、石油、天然ガス)消費量に表T-2-11に示した排出係数(総発熱量ベース)を乗じて求められる。
CO2排出量=エネルギー消費量(熱量表示)×CO2排出係数
=エネルギー消費量(固有単位)×熱量換算係数×CO2排出係数
総合エネルギー統計 (総発熱量) (A) |
OECD/IEA (真発熱量)(B) |
IEA/総合エネルギー統計 (B-A)/A |
||
kcal/kg | kcal/L | |||
輸入原料炭 | 7,600 kcal/kg | 7,220 | − | −5.0 % |
輸入一般炭 | 6,200 kcal/kg | 5,890 | −5.3 % | |
原油 | 9,250 kcal/L | 10,180 | 8,653 | −6.5 % |
ガソリン | 8,400 kcal/L | 10,700 | 8,025 | −4.5 % |
ナフサ | 8,000 kcal/L | 10,750 | 7,485 | −6.4 % |
軽油 | 9,200 kcal/L | 10,350 | 8,694 | −5.5 % |
重油 | 9,690 kcal/L | 9,600 | 8,755 | −9.6 % |
(注) 「総合エネルギー統計」の発熱量は平成11年度版、IEA統計の発熱量は2000年版から引用した。なお、石油系燃料の比較はIEA統計の発熱量に「総合エネルギー統計」の油種別比重を利用してリットル当たりに直して行った。 |