(財)日本エネルギー経済研究所計量分析部(編)(2001)による〔『図解 エネルギー・経済データの読み方入門』(42-43p)から〕


(2)真発熱量と総発熱量
 発熱量には蒸発するときに奪われる熱量(蒸発潜熱)を含むか、含まないかの2種類の表記方法がある。蒸発潜熱を含まない熱量を真発熱量(net calorific term)、含む熱量を総発熱量(gross calorific term)といい、前者の例としては国際エネルギー機関のエネルギーバランス表が、後者の例としては我が国の「総合エネルギー統計」のエネルギーバランス表があげられる。このほか、米国のエネルギー統計でも熱量は総発熱量ベースである。また、真発熱量を低位発熱量(low-calorific term)、総発熱量を高位発熱量(high calorific term)という場合もある。
 真発熱量と総発熱量の違いはエネルギー源によって異なるが、石炭、石油で約5%、天然ガスで約10%といわれている。
 国や統計によって、真発熱量か総発熱量かという表記方法が異なり、通常は明記されていないため、熱量表示のデータを扱う場合には若干の注意が必要である。例えば後述するように、CO2排出量の算定には各エネルギーごとに定められた炭素排出係数を熱量表示のエネルギー消費量に乗じる方法が用いられている。そして、その排出係数とエネルギー消費量は同じ発熱量のベース(真か総か)のものを利用する必要がある。言い換えれば、真発熱量がベースの国際エネルギー機関(IEA)の炭素排出係数を、総発熱量がベースである総合エネルギー統計で公表されるエネルギーバランス表に用いると、CO2排出量を過大推計してしまうことになるのである。何故ならば、真発熱量ベースの炭素排出係数は総発熱量ベースの炭素排出量よりも大きいからである(同じエネルギー源から排出される二酸化炭素の量は同じはずであるため、真発熱量ベースと総発熱量ベースの炭素排出係数には発熱量と逆の大小関係がある)※4
※4 二酸化炭素排出量は熱量ベースの化石燃料(石炭、石油、天然ガス)消費量に表T-2-11に示した排出係数(総発熱量ベース)を乗じて求められる。
 CO
2排出量=エネルギー消費量(熱量表示)×CO2排出係数
        =エネルギー消費量(固有単位)×熱量換算係数×CO
2排出係数
表T-2-7 発熱量の比較
  総合エネルギー統計
(総発熱量)
(A)
OECD/IEA
(真発熱量)(B)
IEA/総合エネルギー統計
(B-A)/A
kcal/kg kcal/L
輸入原料炭 7,600 kcal/kg 7,220 −5.0 %
輸入一般炭 6,200 kcal/kg 5,890   −5.3 %
原油 9,250 kcal/L 10,180 8,653 −6.5 %
ガソリン 8,400 kcal/L 10,700 8,025 −4.5 %
ナフサ 8,000 kcal/L 10,750 7,485 −6.4 %
軽油 9,200 kcal/L 10,350 8,694 −5.5 %
重油 9,690 kcal/L 9,600 8,755 −9.6 %
(注) 「総合エネルギー統計」の発熱量は平成11年度版、IEA統計の発熱量は2000年版から引用した。なお、石油系燃料の比較はIEA統計の発熱量に「総合エネルギー統計」の油種別比重を利用してリットル当たりに直して行った。

 表T-2-8(略)は「総合エネルギー統計」で用いられている日本の熱量換算値(総発熱量ベース)である。石炭、原油、一次電力などの熱量換算値が使われていた年代によって変化している。』