『3.海の水
(1)海水の性質
太陽系の惑星の中で地球だけに液体の水が存在するが、地球上の水の大部分は海にある。海の水は淡水ではなく、海の形成過程において種々の化学成分が溶けこみ、無機電解質の水溶液となっている。ここでは、海水の基本的な性質である塩分と主要な化学組成について、また密度および大気、海洋を含む地球環境と関係の深い海水の熱力学的性質についてとりあげる。
塩分と化学組成
海水には塩化ナトリウムなどのいろいろな塩類(無機電解質)が溶けている。海水中の塩類の濃度を塩分とよび、千分率(‰・パーミル)で表される。外洋水の平均の塩分は約35‰であり、海水1kg中に約35gの塩類が溶けていることになる。海水の塩分は、海面からの水の蒸発や、海氷の形成などによる濃縮作用と、降水や淡水の流入、融氷などによる希釈作用のかねあいによって決まる。したがって、海水の塩分は場所によって異なる。河川から大量の淡水が流入している沿岸海域では塩分が低く、降水量よりも海面からの水の蒸発量の方が上まわっている海域では、塩分が高くなる。
海水の塩分、つまり溶解している塩類の濃度は場所によって変わるが、その主要成分の存在比はほぼ一定であることがわかっている。表2-1に塩分35‰の海水に含まれる主要成分の組成を示す。これによれば、表に示した11種のイオンで全溶存成分の99.99%を占め、そのうちナトリウムと塩素で約86%、さらにマグネシウム、カルシウム、カリウムと硫酸イオンを加えた6成分で99%を超える。
成分 | 濃度(g/kg) | 重量百分率(%) |
Cl- |
19.35 10.76 2.71 1.29 0.41 0.39 0.14 0.067 0.008 0.004 0.001 |
55.07 30.62 7.72 3.68 1.17 1.10 0.40 0.19 0.02 0.01 0.01 |
合計 | 99.99 |