水野(1994)による〔『地球をはかる』(114-116p)から〕


目次

5.地球磁場の原因
(1)地磁気原因論

 地球磁場がなぜ存在し、どのようにして維持されているのか、これは地球科学における最も本質的な問題のひとつであろう。
 前にのべたことから、地磁気原因論は少なくとも、地心双極子の維持の機構を明らかにしなければならない。さらに非双極子磁場の存在や、あとにのべる永年変化の諸特徴をも統一して説明できる理論が望まれる。
 地磁気原因論として最も単純な考えは、地球を構成する物質が磁化しているとするものである。しかし、これはただちに誤った仮説だということがわかる。物質の磁化はある温度(キュリー点)以上で消失する。地球の内部は深部ほど高温で、地下わずかに数十kmで、すでにキュリー点を超える。地球のもつ巨大な磁気モーメントを、うすい地殻の磁化に帰することは不可能である。

(2)ブラケットの仮説
 ところで、磁場は地球にだけみられるものではなく、いろいろな天体にさまざまな形でみられる。また惑星間空間や宇宙空間にも微弱ながら磁場がある。磁場は天体と宇宙の生成発展に普遍的に関与し、重要な役割をはたしているにちがいない。
 1908年、アメリカのへール(G. E. Hale)は太陽光線のスペクトル線が磁場によるゼーマン効果で分裂していることを発見し、はじめて、地球以外の天体にも磁場のあることが判明した。太陽面には平均して1mTほどの磁場があり、黒点では0.2Tにも達する。1946年にはバブコック(H. W. Babcock)がおとめ座78番星のスペクトルに同様のゼーマン効果を見いだした。
 著名な物理学者ブラケット(P. M. S. Blackett)ほこの段階でつぎのように考えた。地球も太陽もおとめ座78番星も、磁場をもつ天体はみな速い速度で回転している。そこで、物質は一般に自転すると磁性を帯びるのではないか、というのである。これはいわば、電磁気学の基礎理論の改訂を意味する問題提起であった。彼はきわめて精巧で鋭敏な磁力計を製作し、実際に試料を回転させて磁性があらわれるかどうかの測定をおこなった。結果は否定的であった。かくして地磁気原因論に対するブラケットの努力は空しく終わった。しかし彼がこの実験のためにつくりあげた磁力計は、岩石磁気学の研究を推進するという、別の方面での成果を生んだのであった。

(3)ダイナモ理論
 地磁気の原因については、この他にもいくつかの考え方が提唱されてきたが、現在までに最も詳細に研究されたのはダイナモ理論である。地球の核は流体で、かつかなりの電気伝導度をもつと考えられる。導電性の流体が磁場の中を運動すると電磁誘導により起電力を発生する。この起電力により流体内には電流が流れる。この電流が磁場をつくる。この磁場が最初にあった磁場と同じものになるならば、このサイクルによって磁場は維持されることになる。』

(3a)円板ダイナモ
(3b)ブラードとゲルマンのダイナモ
(3c)ダイナモ理論の進展
(3d)乱流ダイナモの理論
(3e)結合円板ダイナモによる磁場の逆転



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