鹿園(1997)による〔『地球システムの化学』(222-224p)から〕


目次

6-4 リン(P)サイクル
 図115(略)、表33に主なリザーバー、リザーバー間のPのフラックス、リザーバー中の量、および滞留時間が示されている(Lerman, 1971; Lerman et al., 1975)。Pは、堆積物中に含まれている量が圧倒的に多く、続いて陸、深層海水、表層海水、生物中に多く含まれている。このLerman et al.(1975)のモデルでは、陸から海洋表面への流入量と深海から堆積物への流入量が等しいとしてある。また、ここでは下部海洋地殻、大陸地殻を通過する流れは考えていない。このほかに、海底からの熱水の影響も考えられていない。しかし、近年、熱水から沈降する鉄水酸化物粒子によって海水からPが取られ、これは河川からの流入と同じ桁であると考えられている(Rudnicki and Elderfield, 1993)。また、粒子による希土類元素の除去量も大きいといわれている(Rudnicki and Elderfield, 1993)。
表33 リンサイクル、リザーバー中のリン量、フラックス、滞留時間
(Lerman et al., 1975)
  リザーバー
(iまたはj)
質量Mi
(トンP)
フラックスFij
(106トンP/y)
滞留時間
(τi=Mi/Fij(y))
1 堆積物 4×1015 F12=20 τ12=2×108
2 2×1011 F21=18.3
F23=63.5
F25=1.7
τ21=1.09×104
τ23=3.15×103
τ25=1.18×105
3 陸の生物 3×109 F32=63.5 τ32=47
4 海の生物 1.38×108 F45=998
F46=42
τ45=0.14
τ46=3.3
5 表層海水 2.71×109 F54=1040
F56=18
τ54=2.6
τ56=150
6 深層海水 8.71×1010 F61=1.7 τ61=5.12×104
7 採掘可能なリン鉱石 1×1010 F72=12
 または
F72=12×e0.07t
τ72=830
 または
τ72=60

 過去にできた海底熱水性鉱床の上部には、鉄酸化物の層がある。ここでは、アパタイト(Ca5(PO4)3OH)の層がみられる。また縞状鉄鉱層にもPが濃集する。この鉄やマンガン酸化物層の希土類元素含有量は高い。これらのPや希土類元素は、鉄マンガン微粒子により、海水から除去されたものであろう。』



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