授業科目『地下資源論』
本授業科目について
本授業科目は「(地下)資源利用に関わる現状を学び理解する」ことを目標にしています。講義の前半45分間は、放送大学教材ビデオ『現代資源論』を見ます。後半45分間はプリント(毎回配布)を用いて補足説明を行ないます。このビデオの説明書が『現代資源論(改訂版)』なのですが、残念ながら絶版になっています。内容の概要は『目次』を参考にしてください。
『資源一般』のページの『リンク』に、資源関係のホームページを集めています。また、『文献(おもに図書)』は私の手持ちの市販本リストです。広島大学附属図書館に無いものは、お貸ししますのでご連絡ください。また、『鉱物資源』や『エネルギー資源』などのページも見てください。
地下資源関係の市販本で、もっとも広範囲の内容をまとめたものの一つは『エネルギー・資源ハンドブック』(1997)です。
配布プリント|補足説明
- レポートについての注意
メールにより提出してください。このさい、初めてメールを使う人は、確実にメールが相手に届くようにメーラー設定を行った後、レポートを送ってください。とくに、『文字化け』には注意してください。テキストファイルが無難です。
私がメールを受けとった時には、その旨の返事を送信しますので、確認してください。これが送られない場合は、文字化け等で私が確認できなかったことを意味します。したがって、レポートを提出しなかったことになりますので、注意してください。
プリントは原則的に図表のみ。『現代資源論(改訂版)』および参考図書から。
第1回(4/14) なし
第2回(4/21) 2枚〔『現代資源論(改定版)』(9,11,13,14p)、『化学の目で見る地球の環境−空・水・土−』(67p、14p)、『鉱床学概論』(2-7p)〕
第3回(4/28) 2枚〔『現代資源論(改定版)』(17-27p)、『世界国勢図会1999/2000年版』(27p、165p、164p、187p、26p)、『2000年の資源ビジョン−2000年の資源産業と資源政策−』(162p、163p)〕
第4回(5/12) 3枚〔『現代資源論(改定版)』(28-30,32-34,36-38,40-42,44p)、『鉱物資源を考える(2)』(18,19p)、『鉱物資源を考える(4)』(16,17,20,21,28,32,34p)、『地球内部の構造と運動』(158-160,162p)、『地球の資源/地表の開発』(101,102p)、『いま、地球の財産を診る』(171,183p)〕
第5回(5/19) 4枚〔『現代資源論(改定版)』(49-53,55,56p)、『日本の工業原料鉱物資源(その1)』(25-32p)、『日本の工業原料鉱物資源(その2)』(41-49p)、『花崗岩系列と非金属鉱物資源』(22p)、『アジアの工業原料鉱物資源』(8p)、『東アジアのパイロフィライト鉱床』(40,43p)〕
第6回(5/26) 2枚〔『現代資源論(改定版)』(59,60,63-65,69,70p)、『レアメタル事典*』(5-8,16p)、『レアメタル資源 2.レア・アース…(1)』(18,20p)、『レアメタル資源の現状と将来』(117p)〕
*(株)フジ・テクノシステム・(社)日本工業技術振興協会(編)(1991):レアメタル事典.(株)フジ・テクノシステム、1132p.〔ISBN4-938555-21-2〕 \48,350
第7回(6/2) 2枚〔『現代資源論(改定版)』(73,75,76,78,79,81,83p)、『天然原子炉』(2,13,24p)、『Mineral
Resources, Economics and the Environment』(148,149152,153,155p)〕
第8回(6/9) 2枚〔『現代資源論(改定版)』(87-92p)、『二酸化炭素問題を考える』(63,67,69p)、『エネルギー2000』(21,210-213p)、『総合エネルギー統計(平成11年度版)』(16-17p)〕
第9回(6/16) 3枚〔『現代資源論(改定版)』(96,98,100,101,104,105p)、『石油地質学概論−第二版』(2-4,6,8,9,101,102p)、『石油はどうしてできたか』(35,38,42,46,48,49,58,60,69,78-80,82,150,154,155,157p)、『世界国勢図会』〕
第10回(6/23) 2枚〔『現代資源論(改定版)』(108,109,111-115p)、『地球の資源/地表の開発』(65-67,69,70,73,79p)、『石炭技術総覧』(15,35,37,74p)、『コール・ノート』、『太陽の化石:石炭』(8p)〕
第11回(6/30) 2枚〔『現代資源論(改定版)』(119,121-123,125p)、『海洋鉱物資源』(76-77p)、『地球資源衛星』(13p)、『宇宙と人工衛星』(126,127p)、『比抵抗映像法』(2p)、『地球の観測』(37,39,41p)〕
第12回(7/7) 3枚〔『現代資源論(改定版)』(165,167,169,170,172,173p)、『鉱業便覧』、『海洋開発のおはなし』(18,54,59,63p)』)
第13回(7/14) 3枚〔『現代資源論(改定版)』(178,182-186,188p)、『最新ごみ事情Q&A』(13,78,214-220p)、『新・水とごみの環境問題』(215,218p)、『環境白書(各年版)』〕
第14回(7/21) 3枚〔『現代資源論(改定版)』(190-197p)、『エネルギー 2000、'98』)
第15回(7/28) 〔試験〕
第2回|第3回|第4回|第5回|第6回|第7回
第2回(4/21)
- ローマ・クラブとは(『成長の限界』から引用、197-198p)
『ローマ・クラブは1970年3月にスイス法人として設立された民間組織で、世界各国の科学者、経済学者、プランナー、教育者、経営者などから構成され、現在の会員は25か国、約70名で、現に政府の公職にある人たちはメンバーに含まれない。またローマ・クラブは、いかなるイデオロギーにも偏せず、特定の国家の見解を代表するものでもない。
本クラブは最近にいたって急速に深刻な問題となりつつある天然資源の枯渇化、公害による環境汚染の進行、発展途上国における爆発的な人口の増加、軍事技術の進歩による大規模な破壊力の脅威などによる人類の危機の接近に対し、人類として可能な回避の道を真剣に探索することを目的としている。1968年4月、ローマで最初の会合を開催したことにちなみ、ローマ・クラブと名づけられている。
このクラブの設立に大きな役割を演じたのは、ヨーロッパ財界の有力な国際派であるイタル・コンサルタント社の社長であり、オリベッティ社の副社長、フィアット社の重役を兼務しているアウレリオ・ペッチェイ(Aurelio
Peccei)博士である。』
- 人類の危機に関するプロジェクト(『成長の限界』から引用、198-200p)
『近年における科学技術の急速な進歩は、社会、経済に大きなインパクトを与え、とりわけGNPの伸展に大きく寄与し、豊かな社会、日常生活の向上に多大の貢献をしてきた。しかし、この豊かさの背後には副産物として各種の深刻な不調和を惹起せしめている。これらは−核戦力のエスカレーション、相次ぐ人口増大、広がる環境汚染、天然資源の枯渇、都市化の進行、増大する社会不安、青少年の疎外感、インフレの蔓延、伝統的な価値の崩壊−などであって、このままの状態で推移すると、この豊かさへの指向は、人類全体の幸福に必ずしも結びつくものではなく、むしろ、人類はその生存上、きわめて重大な危機に直面してきていると受けとらなければならない状態にまでさし迫ってきたと考えられる。
ローマ・クラブは、このような人類の生存上にきわめて重大な影響を及ぼす問題に対し、発足以来、再三にわたる会合をもち、その活動目標をつぎの二段階に分けた。
第一段階は、人類社会の来るべき危機の諸要因とその相互作用を全体として把握しうるようなモデルを作成し、将来の危機の様相の展望と危機を回避するための方途の検討に資することを目的とした。
第二段階は、第一段階における分析をもとに、新しい政策のあり方を検討し、世界的討論の場を通じ政策当局者の考慮を促すためのものである。
このような活動方針のもとに、ローマ・クラブは70年6月、「人類の危機に関するプロジェクト」という雄大な計画を作成し、スイスのベルンで開催された第一回総会に提出し、第一段階の研究作業を実行に移すことを決定した。
引き続き、同年7月、アメリカ、ボストンにおける会合で、この第一段階のプロジェクトは、MIT(マサチュセッツ工科大学)のシステム・ダイナミクス・グループに対し、フォルクス・ワーゲン財団の協力を得て研究を依頼することが決定された。このチームの研究作業は、デニス・メドウズ助教授(Dr.
Dennis L. Measows)を主査とする国際チームが担当した。分析手法としては、MITのフォレスター(Prof.
Jay W. Forrester)教授によって開発されたインダストリアル・ダイナミクスをさらに発展させたシステム・ダイナミクスにより、全地球的システムのモデル化の研究が開始された。
その後、71年4月、カナダのモンテベロー(ケベック州)で、ローマ・クラブの第二回総会が開催されたが、ここでは、このMITグループのワールド・モデルに関する研究の詳細な中間報告ならびに農薬の影響をはじめとする12のサブ・システムに関する討議が主要議題の一つとして行なわれた。それから、同年七月モスクワ、さらにリオデジャネイロなどの会合における幾多の討論が重ねられ、一年半にわたる研究の末、本報告書の刊行となったものである。』
- 『限界を超えて』の結論(引用、vii-viiip)
『地球に関するデータ、ワールド3、そしてわれわれ自身が20年間に学んだことから言えることは、『成長の限界』で導き出した三つの結論は、いまもって有効であるが、補強する必要があるということだろう。そこで以下のように書き換えたい。
(1)人間が必要不可欠な資源を消費し、汚染物質を産出する速度は、多くの場合すでに物理的に持続可能な速度を超えてしまった。物質およびエネルギーのフローを大幅に削減しない限り、一人当たりの食糧生産量、およびエネルギー消費量、工業生産量は、何十年か後にはもはや制御できないようなかたちで減少するだろう。
(2)しかしこうした減少も避けられないわけではない。ただし、そのためには二つの変化が要求される。まず、物質の消費や人口を増大させるような政策や慣行を広範にわたって改めること。次に、原料やエネルギーの利用効率を速やかに、かつ大幅に改善することである。
(3)持続可能な社会は、技術的にも経済的にもまだ実現可能である。持続可能な社会は、絶えず拡大することによって種々の問題を』解決しようとする社会よりも、はるかに望ましい社会かもしれない。持続可能な社会へ移行するためには、長期目標と短期目標のバランスを慎重にとる必要がある。また、産出量の多少よりも、十分さや公平さ、生活の質などを重視しなければならない。それには、生産性や技術以上のもの、つまり、成熟、憐れみの心、智慧といった要素が要求されるだろう。』
第3回(4/28)
従業員100人以上の鉱山 |
都道府県名 |
鉱山名 |
鉱種名 |
鉱業権者名 |
従業員数 |
直轄 |
請負 |
北海道 |
豊羽(とよは) |
鉛、亜鉛 |
豊羽鉱山(株) |
216 |
40 |
岐阜 |
神岡(かみおか) |
鉛、亜鉛 |
神岡鉱業(株) |
384 |
217 |
鹿児島 |
菱刈(ひしかり) |
金、銀 |
住友金属鉱山(株) |
142 |
69 |
金属鉱山 計3
(注)
1.従業員数は鉱山製錬所名簿による。
2.豊羽鉱山は、昭和48年6月日本鉱業(株)から分離。
3.神岡鉱山は、昭和61年7月三井金属鉱業(株)から分離。
4.菱刈鉱山は、昭和63年10月から商業生産を開始。
従業員100人未満の鉱山 |
都道府県名 |
鉱山名 |
鉱種名 |
鉱業権者名 |
従業員数 |
直轄 |
請負 |
北海道 |
光竜(こうりゅう) |
金、銀 |
野田玉川鉱発(株) |
3 |
11 |
岩手 |
遠平夏畑(とうひらなつはた) |
鉄 |
北上鉱業(株) |
7 |
|
長野 |
柏原(かしわばら) |
鉄 |
(株)吉田号 |
4 |
|
富山 |
北神岡(きたかみおか) |
鉛、亜鉛 |
三井金属鉱業(株) |
1 |
|
島根 |
鳥上羽内谷(とりがみはないだに) |
砂鉄 |
(株)安来製作所 |
9 |
|
熊本 |
第一阿蘇(だいいちあそ) |
鉄 |
日本リモナイト鉱業(有) |
7 |
|
大分 |
新木浦(しんきうら) |
鉄 |
木浦エメリー(株) |
5 |
2 |
鹿児島 |
岩戸金山(いわときんざん) |
金、銀 |
(代)宮内敬久 |
4 |
|
鹿児島 |
春日(かすが) |
金、銀 |
春日鉱山(株) |
16 |
|
鹿児島 |
赤石(あけし) |
金、銀 |
(代)三井串木野鉱山(株) |
14 |
|
金属鉱山 計10
(注)
1.探鉱中の鉱山は除外して表示した。
都道府県 |
鉱山名 |
鉱種 |
鉱業権者 |
従業員数 |
平成9年の生産量(千トン) |
直轄 |
請負 |
北海道 |
峩朗(がろう) |
石灰石、ドロマイト |
太平洋セメント(株) |
46 |
53 |
石 7,082
ド 6 |
青森 |
尻屋(しりや) |
石灰石 |
日鉄鉱業(株) |
137 |
50 |
5,690 |
〃 |
八戸石灰
(はちのへせっかい) |
〃 |
(代)住金鉱業(株) |
101 |
72 |
5,467 |
岩手 |
大船渡(おおふなと) |
〃 |
太平洋セメント(株) |
12 |
101 |
5,615 |
栃木 |
大叶(おおかのう) |
ドロマイト、石灰石 |
吉澤石灰工業(株) |
216 |
56 |
ド 1,740
石 1,371 |
〃 |
唐沢(からさわ) |
石灰石、ドロマイト |
住友大阪セメント(株) |
18 |
72 |
石 1,900
ド 1,612 |
〃 |
羽鶴(はねづる) |
〃 |
日鉄鉱業(株) |
62 |
31 |
石 3,011
ド 81 |
〃 |
村樫(むらかし) |
〃 |
村樫石灰工業(株) |
104 |
0 |
石 427
ド 71 |
群馬 |
叶山(かのうやま) |
石灰石 |
(代)太平洋セメント(株) |
50 |
11 |
3,067 |
埼玉 |
宇根(うね) |
〃 |
菱光石灰工業(株) |
97 |
70 |
3,388 |
〃 |
武甲(ぶこう) |
〃 |
武甲鉱業(株) |
63 |
11 |
4,062 |
〃 |
三輪(みのわ) |
〃 |
太平洋セメント(株) |
15 |
64 |
2,262 |
東京 |
古里(こり) |
けい石、石灰石 |
(株)昭和石材工業所 |
68 |
7 |
け 2,096
石 157 |
〃 |
氷川(ひかわ) |
石灰石 |
奥多摩工業(株) |
101 |
59 |
2,182 |
新潟 |
青海(おうみ) |
〃 |
電気化学工業(株) |
58 |
4 |
3,752 |
〃 |
田海(とうみ) |
石灰石、けい石 |
明星セメント(株) |
44 |
18 |
石 2,639
け 442 |
岐阜 |
金生山石灰石
(きんしょうざんせっかいせき) |
石灰石 |
(代)矢橋龍太郎 |
635 |
130 |
2,743 |
三重 |
藤原(ふじわら) |
〃 |
(代)(株)イシザキ |
73 |
− |
4,617 |
滋賀 |
伊吹(いぶき) |
〃 |
住友大阪セメント(株) |
43 |
− |
2,626 |
〃 |
近江(おうみ) |
〃 |
近江鉱業(株) |
121 |
8 |
3 |
岡山 |
足立(あしだち) |
〃 |
足立石灰工業(株) |
130 |
− |
678 |
〃 |
金平(かなひら) |
〃 |
(株)同和カルファイン |
105 |
− |
230 |
山口 |
宇部伊佐(うべいさ) |
〃 |
(代)宇部興産(株) |
62 |
147 |
8,642 |
〃 |
重安(しげやす) |
〃 |
太平洋セメント(株) |
5 |
47 |
2,244 |
〃 |
住友セメント秋芳
(すみともせめんとしゅうほう) |
〃 |
(代)秋芳鉱業(株) |
102 |
7 |
8,131 |
高知 |
鳥形山(とりがたやま) |
〃 |
日鉄鉱業(株) |
252 |
167 |
14,049 |
〃 |
白木谷(しらきだに) |
〃 |
(代)四国鉱発(株) |
38 |
5 |
2,022 |
福岡 |
宇部苅田(うべかんだ) |
〃 |
(代)(株)技建工務所 |
61 |
11 |
3,063 |
〃 |
香春(かわら) |
〃 |
太平洋セメント(株) |
49 |
29 |
3,204 |
〃 |
関の山(せきのやま) |
〃 |
三井鉱山(株) |
27 |
93 |
4,730 |
〃 |
東谷(ひがしたに) |
〃 |
三菱マテリアル(株) |
43 |
131 |
10,095 |
〃 |
船尾(ふなお) |
〃 |
船尾鉱山(株) |
54 |
0 |
2,192 |
大分 |
大分(おおいた) |
〃 |
(代)大分鉱業(株) |
75 |
48 |
2,862 |
〃 |
願寺(がんじ) |
〃 |
太平洋セメント(株) |
22 |
171 |
9,925 |
〃 |
津久見(つくみ) |
〃 |
(代)太平洋セメント(株) |
217 |
84 |
9,808 |
〃 |
戸高津久見
(とだかつくみ) |
〃、ドロマイト |
(株)戸高鉱業社 |
122 |
118 |
13,144 |
沖縄 |
安和(あわ) |
〃 |
琉球セメント(株) |
10 |
56 |
2,481 |
非金属鉱山計 37鉱山
(注)
1.平成10年4月1日現在稼働しているもので、従業員数80人以上または年間生産量200万トン以上の鉱山。
2.非金属稼働鉱山数は539鉱山(探鉱中の鉱山は除外)である。
3.生産量は9年(暦年)であり、単位は千トン。
4.従業員数は鉱山製錬所名簿により、生産量は鉱業課調べによる。
- これまでの資源政策について(『2000年の資源ビジョン−2000年の資源産業と資源政策−』から引用、45-54p)
『1 探鉱促進政策(国内、国外)
我が国の資源探鉱政策は国内探鉱、海外探鉱について、委託費、補助金、出融資、税制等により助成を行なっている。
具体的には、予算では三段階方式による国内探鉱助成、海外探鉱に対する助成金の交付等、財政投融資では内外探鉱融資及び海外探鉱出資、税制では減耗控除制度、海外投資等損失準備金制度といったメニューがある。また、ODA事業として資源開発協力基礎調査等を実施しており、予算面では年々充実してきている。これは間接的に我が国への資源の安定供給に寄与しているほか、発展途上国との人的ネットワーク形成に役立っている。
金属鉱業事業団は1963年の設立以来、これら内外探鉱施策の実施機関としての役割を果たしてきた。
諸外国の資源政策に目を転じると、主要先進国における探鉱・開発促進施策は大きく2つのグループに分けられる。一つは、日本を含め、西ドイツ、フランス、イギリスのような小資源大消費型であり、もう一つは、アメリカ、カナダ、オーストラリアのような大資源型の国である。前者のグループは、海外での事業展開により自国への資源の安定供給を図らざるを得ない国にであり、国内資源開発の支援、政府機関による海外資源情報の収集・提供、海外探鉱・開発の支援といった施策が採られている。一方、後者のグループでは補助金、出融資よりもむしろ情報活動が施策の中心となっており、我が国の資源エネルギー庁、地質調査所及び金属鉱業事業団に相当する部署が世界的規模で鉱物資源関連情報の収集・提供活動を行なっている(参考5−3)。
(1)国内探鉱関係
国内探鉱は、予算による3段階方式の探鉱助成制度が中心となっている。すなわち、広域地質構造調査(委託費)による広範囲の地質構造の概要把握、精密地質構造調査(補助金)による精密な地質構造の把握、中小鉱山振興指導事業費補助金及び国内探鉱融資制度による企業探鉱助成というスキームが採られている。
国内探鉱関係予算の推移を見ると、1970年度から1975年度にかけて年間10億円規模から30億円規模へと飛躍的に増加している。それ以降はおおむね一定の水準で推移しているが、鉱山数の減少、従業員数の減少等を勘案すれば3段階方式による探鉱助成の内容は着実に充実してきていると考えることができる。
これまでの成果としては、黒鉱鉱床の深沢・餌釣鉱山(秋田県)、温川鉱山(青森県)、更に世界的な高品位金鉱床である菱刈鉱山(鹿児島県)の発見等商業生産に結びつく成果が上がっている。
しかしながら、国内探鉱資金融資については、鉱山数の減少による探鉱の停滞に加え、企業の資金不足の解消、市中金利の低下等により政策金融としての魅力が小さくなっており、その融資実績は1975年以降減少を続けており、菱刈鉱山の発見を契機とした金を対象とする融資以外は極めて少ない金額となっている。
税制の面では、アメリカ、フランス等の制度を参考にして1965年に創設された減耗控除制度がある。この制度により着実に探鉱準備金が積み立てられ、市況変動にもかかわらず、比較的安定的な新鉱床探鉱が行なわれている。減税効果はピーク時には73億円(1970年度)、近年においても20億円程度に上っており、鉱山の探鉱リスク軽減に大きく貢献している。
(2)海外探鉱関係
海外探鉱関係の施策は、1968年にスタートしており、予算による海外地質構造調査及び海外共同地質構造調査、海外探鉱出融資(財投)、海外減耗控除制度(税制)による探鉱促進策が採られている。
特に、レアメタル及びウランについては成功払い融資制度(「特別貸付」)が採られており、探鉱リスク軽減の観点からは効果的な制度となっている。
いずれの制度も民間企業の自主的な探鉱意欲が前提となるため、1980年前後から対象プロジェクト数が減少を続けており、予算規模も減少してきている。また、これまで商業生産に至ったペルー北部のワンサラ鉱床及び企業化への移行の可能性のある数鉱床の発見等の成果を挙げているが、今後さらに大きな成果を挙げることが望まれる状況にある。ただし、最近になって海外鉱山開発意欲が多少復活しはじめており、プロジェクト数増加の兆しが見られる。
(3)資源開発協力基礎調査(ODA)
発展途上国においては、技術力、資金力の不足から基礎的な地質調査が行なわれていない国が多い。このため、1970年度から我が国に対する要請に対応した調査協力事業を実施している。対象とするプロジェクトも定型的な調査である「資源開発調査」のほか、「鉱物資源基本図調査」、「レアメタル総合開発調査」、「地域開発計画調査」などメニューは充実してきており、また、予算額も着実に増加してきている。
資源開発調査について見ると、これまで25か国55地域を実施し、うち3件が現地政府系機関によって開発され、商業生産を実施している。資源開発協力基礎調査によって発見された鉱床の経済性を鉱量及び品位によれば、世界的に有数の鉱山と比肩しうるものではないが、それなりのものが発見されている。しかしながらこれらが必ずしも新規の鉱山につながっていないのは、当該発展途上国のインフラ等を総合的に判断した場合には必ずしも経済性がないケースが多いためと見られ、インフラ面を含めた総合的な評価の実施及びインフラ整備に係るODAとのリンケージが重要になっていると言えよう。また、「要請主義」を前提としつつも、極力有望なプロジェクトを優先的に実施することが望ましく、事前調査を強化すべきである。
なお、探査関係以外の資源関係ODA事業としては、@専門家派遣、A研修生の受け入れ、B研究協力、Cプロジェクト方式技術協力などが行なわれている。このうち研修生の受け入れについて見ると、毎年100名程度を受け入れており、これまで20年間に40か国、約2000名を受け入れ、発展途上国との人的ネットワーク形成に寄与してきた。
(4)深海底鉱物資源開発
我が国は、レアメタルの安定供給を図るため、マンガン団塊を始めとする深海底鉱物資源の開発を推進している。
我が国においては、1975年以降、マンガン銀座において探査活動に着手するとともに、1982年には深海底鉱業暫定措置法を制定、同年、開発の推進母体となる深海資源開発株式会社(DORD)を設立し開発体制の整備を図ってきた。
国連海洋法条約は、深海底及びその資源を人類共同の資産であるとし、深海底における活動は国連機構(「国際海底機構」)の全面管理下に置き、その開発を規制しようとするものである。
我が国は、1983年国連海洋法条約に署名したが、批准していない。同条約は、60カ国の批准の一年後に発効することとなっているが、1990年現在発効していない(1990年3月末の批准国数42)。(注:1994年11月16日に発効された。)
マンガン銀座における鉱区登録に関し、我が国は、1984年に米系コンソーシア(ロッキード系、USスチール系、インコ系、ケネコット系)の構成国との行政協定を締結する一方で、1987年には、国連海洋法条約の枠の中でハワイ南東沖において深海資源開発株式会社が先行投資者として7.5万km2の鉱区を取得したところである。
その際、条約の附帯決議により、条約発効前は、先行投資者に対し、年間固定費、要員訓練、国連用鉱区の探査協力等の義務が課されることとなる。また、条約発効後は、開発主体に対して生産制限、生産賦課金、国際海底機構に対する技術移転等の義務が課されることとなる。我が国としては、現在、これらの義務が、経済情勢の変化等を踏まえた現実に即したものとなるよう国連海洋法条約準備委員会等における外交交渉に積極的に参加しているところである。
1985年からメキシコ沖の東太平洋海域で海底熱水鉱床、1987年から中部・西部太平い洋海域でコバルト・リッチ・クラスト鉱床の調査活動を行っている。他方、1985年より、資源開発協力基礎調査事業の一環としてSOPACに対し、クック諸島、キリバス共和国、ツバルにおいてマンガン団塊及びコバルト・リッチ・クラスト鉱床の探査協力を実施している。
工業技術院の大型プロジェクト制度によりマンガン団塊採鉱システムの開発を、公害資源研究所(注:平成3年に地球環境問題に対応するため資源環境技術総合研究所として組織改革された)及び金属鉱業事業団でマンガン団塊の製錬技術の開発をそれぞれ実施している。採鉱技術については、要素技術の開発は終了し、今後は海洋での実験に向けて所要の機器の製作を推進している。また、採鉱に伴う環境影響調査についても1989年より着手している。
2 経営安定化対策
国内で産出する主な非鉄金属(銅、亜鉛、タングステン、金)についてその価格に一定のバンドを設定し、その下限を下回った場合には国内鉱山の確認探鉱、保安対策、減員・減産対策といった費用に対して財団法人金属鉱業緊急融資基金が超低利融資(長プラマイナス4.2%)を、上回った場合には拠出を求める緊急時対策の制度である。市場金利との差額については民間企業の拠出金を充てるほか、一般会計から利子補給を行っている。
経営安定化融資は、1978年度の補正予算で成立して以来、678億円の融資を行ってきた。特に、最近の円高後の1985年度から1988年度にかけて344億円の融資を行い、いくつかの優良な国内鉱山の存続に寄与してきた。一方、最近の非鉄金属価格の上昇により1989年度は銅、亜鉛について拠出基準を上回った.
鉱山は一度閉山したら再開には多くの費用を必要とするため、一時的に価格が下がり経営が困難になった場合にも支援して存続を図ることが経済合理性にかなう場合があり、この制度は資源の有効利用の観点からは一定の効果があったと考えられる。
3 技術開発
1975年度以来、金属鉱業事業団に委託して探鉱関係の技術開発を実施している。1989年度から予算を大幅に増額し、鉱床の深部化、潜頭化に対応するための新たな技術開発(深部電気探査法、ガス地化学探査法、変質鉱物簡易同定技術)を開始したところである。
また、リモートセンシング技術の発展を踏まえて資源探査衛星の開発が行われており、1992年には我が国初の資源探査衛星(ERS−1)が打ち上げられる予定となっている。
深海底鉱物資源については、マンガン団塊採鉱システム研究所(研究組合)が工業技術院の大型プロジェクト制度によりマンガン団塊採鉱システムの開発を、公害資源研究所及び金属鉱業事業団でマンガン団塊の製錬技術の開発をそれぞれ実施している。
なお、レアメタルについては1985年度から1989年度にかけてレアメタル高度分離精製技術の開発を地域大プロにより実施した。また、レアアースについては1988年度より超電導用レアアースの回収技術等の開発を開始している。
4 備蓄
非鉄金属の備蓄制度は経済安全保障の観点から各国で実施されている。特に、アメリカではレアメタルだけでなく、銅、亜鉛といったベースメタルについても安全保障備蓄を行っている。我が国ではベースメタルを対象とした輸入安定化備蓄、レアメタル備蓄の2つが行われてきた。
(1)輸入安定化備蓄
ベースメタル(銅、亜鉛、アルミニウム)を対象に、1976年から1986年にかけて(買入は1982年度まで)非鉄金属輸入安定化備蓄を実施した。これは、需要の低迷により製錬業者の保有する地金在庫が増加したため、諸外国からの鉱石の安定的な引き取りに支障が生じたために実施されたものであった。制度的には現在も存続しているが、備蓄物資は1987年以降ゼロになっている。
(2)レアメタル備蓄
国民生活上の重要性が高く、かつ、リスクの高い国への依存度が高いニッケル、クロム等7鉱種のレアメタルについて、経済安全保障の観点に立ち1982年度からレアメタル備蓄を実施している。現在、1991年度末60日分(国家備蓄42日分、民間備蓄18日分)を目標に、積み増しを行っているところである。市中金融機関から借入を行って購入し、予算で利子補給を行うスキームとなっており、現在10数億円程度の利子補給を行っている。
レアメタル備蓄は、海外主要国においても実施されているが、価格安定化備蓄か安全保障備蓄なのかという性格付けにつき問題が提起されてきており、この性格付けいかんによって備蓄物資の放出スキームや今後の積み増しのあり方が変わってくる。
したがって、その性格付けに加えて、対象鉱種、備蓄目標、受益者負担のあり方などについても再検討が必要となっている。
5 関税
非鉄金属の地金には関税が賦課されているが、東京ラウンド等過去の関税交渉を通じて段階的に引き下げられてきており、現在の実行関税は、銅地金15円/kg、亜鉛地金8円/kgの従量税となっている。そのほか副産物として生産されるいくつかの金属について従価税がある。銅、鉛、亜鉛については価格が低くなると保護効果が強くなり、価格が上がると保護効果が小さくなるスライド関税制度が採られている。
国内鉱山数の大幅な減少により、関税の存在理由をかつてのように国内鉱山保護で説明するのは困難になってきている。他方、我が国鉱山・製錬業界が鉱害対策に多額の費用を要しているため、国内鉱山が減少した今でもハンディキャップの調整のために関税を維持すべきであるという主張もある。
他方、ユーザーサイドからは、電線、伸銅品等の関税と地金関税のイコールフッテイングの確保が主張されている。
いずれにせよ、現在、GATT ウルグアイ・ラウンドにおいて関税引き下げ交渉が行われており、非鉄金属についてもその対象となっている。
6 鉱害対策
我が国では多雨地域であること等から、鉱山は休廃止した後も放置すれば重金属等の有害物質を含んだ坑廃水を排出し続ける危険性がある。このため、1971年に休廃止鉱山鉱害防止工事費補助金制度が創設され、鉱害防止義務者不存在等の休廃止鉱山における鉱害対策事業が実施されることとなり、1981年には、同制度において鉱害防止義務者存在分の坑廃水処理についても、自然汚染分、他者汚染分について補助金が交付されることとなった。また、1973年には計画的な鉱害防止事業の推進のため、金属鉱業等鉱害対策特別措置法が制定され、稼働鉱山においても休廃止後の鉱害防止対策に要する費用を稼行中に積み立てておく制度が採られるとともに、金属鉱業事業団に鉱害部門が発足し、鉱害防止調査指導業務、鉱害防止資金貸付・債務保証業務、鉱害防止技術開発業務等の鉱害対策関連事業が実施される等鉱害対策に関する政策的対応が幅広く進められてきている。
しかし、鉱山・製錬各社においては過去に操業していた鉱山のための鉱害対策費用として年間100億円以上を負担しており、これは国際競争力等の面で大きなマイナス要因となりかねない。特に、鉱山保安法に基づく命令等により旧鉱業権者が無期限に実施している坑廃水処理について、その期間を限定すべきではないかという意見が提起されている。この問題についてはPPP原則との関係等もあり、慎重な対応が必要である。
7 一次産品の国際協定等
我が国固有の資源政策ではないが、国際的な枠組みの中で資源問題を処理しようとするスキームがいくつかあるので、これらについても簡単に触れておく。
(1)国際商品協定等
発展途上国経済の多くは非鉄金属を含む一次産品の輸出に依存していることから、これら諸国の工業化、経済発展のためには一次産品輸出の安定・拡大が重要である。例えば、最近の銅の価格上昇により、銅の輸出国であるチリ、ペルーの銅輸出額は増加し、工鉱業(ママ)生産が増加している。このため、一次産品についてはハバナ憲章以来、自由貿易の例外として市場規制によって価格を安定させ、生産国、消費国双方の利益均衡を図るべきとの考え方がある。GATTにおいても第20条で国際商品協定が自由貿易原則の例外とされている。すなわち、同条は、一般的例外の一つとして、「締約国団に提出されて否認されなかった基準に合致する政府間商品協定又は締約国団に提出されて否認されなかった政府間商品協定のいずれかに基く義務に従って採られる措置」を挙げている。
現在、小麦、砂糖、コーヒー等9品目の一次産品について国際商品協定が存在し、これらの中には一次産品価格安定のために緩衝在庫や輸入割当といった方法で市場介入を行う統制協定とその他の協定がとがあり、緩衝在庫機能を持つものは錫、ココア、天然ゴムである。
しかしながら、これらの商品協定は、対象品目が限られているほか、対象品目についても必ずしも当初の目的が達成されていない。
非鉄金属関係では「国際すず協定」があるが、すず理事会(ITC)による錫の緩衝在庫操作が1982年以来のすず価格下落のため、1985年の(ママ)財政破綻した。このため、現在、債権者(銀行、ブローカー)からITC及び加盟国に対する訴訟が起こされ、最近ようやく和解により決着することとなった。
なお国際商品協定とは異なるが、生産国、消費国による国際的な商品研究会として、「国際鉛・亜鉛研究会」、「UNCTADタングステン委員会」などがある。また、銅についてはUNCTAD等において「国際銅研究会」設立の動きがあるが、未解決の問題が多く残っている。また、ニッケルについても研究会設立の動きが進行中である。
(2)生産国機構
生産国による一種の国際カルテルである生産国機構としては石油輸出国機構(OPEC)が代表的であるが、非鉄金属関係では、1968年に設立された「銅輸出政府間協議会(CIPEC)」、「水銀生産国グループ(IGMPC)」、「タングステン生産者協会(PTA)」、「すず生産国同盟(ATPC)」などがある。
ただし、これらの生産国機構は、市場占有率が低い(1988年のシェアは、銅38.5%、すず45.4%など)、代替可能性があるなどの理由によりOPECほどの影響力は持たなかった。
(3)一次産品共通基金
1976年、UNCTAD総会で「一次産品総合計画(IPC)」が採択された。同計画の目的は、一次産品の価格安定、輸出所得改善等であり、その中心は価格安定策(一次産品の緩衝在庫に対する資金融資)、一次産品の多様化・加工度向上のための研究開発等を目的とする「一次産品共通基金(CF:Common-Fund)」の設立である。
一次産品共通基金は1980年に協定が採択され、1989年6月に協定が発効した。基金の本部はアムステルダムに置かれており、我が国は6,067万ドル(義務拠出3,367万ドル、任意拠出2,700万ドル)を拠出している。ただし、同基金の運営のための諸手続規定制定作業等が残っており、機能開始までには若干時間を要する。
(4)その他
ほかに地域的な制度として、ロメ協定の定める鉱産物輸出所得安定制度(SYSMIN)がある。
また、固体鉱物及び地熱の探査を行うための国際的な基金として、1973年に設けられた国連天然資源探査回転基金がある。これは発展途上国の鉱物資源開発を促進し、経済社会発展に寄与することを目的としており、成功プロジェクトからの還付金を基金に加えることにより回転させることを想定している。この制度によりこれまでに25か国、28地域で探査が行われ、エクアドル、ペルー等において有望な鉱床を発見している。中でもエクアドルの金プロジェクトは、基金案件として初めて開発に移行することが確実視されている。
なお、同基金と金属鉱業事業団は1987年以後年1回定期協議を持ち、プロジェクト情報の交換を行っている。』
(注)『有斐閣経済辞典(第3版)』から引用。
東京ラウンド(876p):Tokyo Round
1973年9月開催のGATT閣僚東京会議で採択された「東京宣言」に基づき、79年にかけて実施された多角的通商交渉(対国際ラウンド)。ケネディ・ラウンドに続き、関税引下げ、非関税障壁の縮小・撤廃をめざした。鉱工業製品の関税一括引下げは平均33%に達した。
GATT(1306p):General Agreement
on Tariff and Trade 関税及び貿易に関する一般協定。ガットと呼ばれる。関税その他の貿易障害を軽減し、通商の差別待遇を廃止することを目的として1948年に発効した多国間条約。WTO(世界貿易機関)設立の1年後(1995年末)に廃止されたが、「1994年のGATT」と呼ばれる新たな協定としてWTOに引き継がれている。
ウルグアイ・ラウンド(62p):Uruguay
Round 1986年9月ウルグアイで開催されたGATT閣僚会議において採択された「プンタ・デル・エステ宣言」に基づき開始され、94年4月に妥結した多角的貿易交渉。従来のラウンドが対象としていた関税引下げ、非関税障壁の削減・撤廃に加え、サービス貿易、知的所有権の貿易関連事項も交渉の対象とした。それぞれの分野において新たな協定が作成されるとともに、WTO(世界貿易機関)の設立が合意された。
PPP(1334p):Polluter Pays
Principle 汚染者負担の原則。OECDが1972年の「環境政策の国際経済面に関する指導原理」のなかで提唱した原則。74年の「汚染者負担の原則の実施に関する理事会勧告」で「希少な環境資源の合理的利用を促進し、かつ国際貿易及び投資における歪みを回避するための汚染防止と規制措置にともなう費用の配分について用いられる」べき原則と説明されている。もともとは国際貿易上の各国の競争条件の均等化のための貿易政策として提唱された。今日の環境政策の指導的原則になっている。
ハバナ憲章(385p):国際貿易憲章 Charter
for an International Trade Organization 正確には国際貿易機構憲章で、ハバナ憲章と通称される。関税政策、完全雇用政策、商品協定に関する政策などの基準となる原則を規定し、さらには国際貿易機構(ITO)設立のため、1947-48年にハバナで開催された国連貿易雇用会議において採択されたが、アメリカ上院の批准が得られず、未発効に終わった。
第4回(5/12)
- 耐用年数の予想(『立見(1986)』から)
Pt=Po×e^(at) (1)
ここで、t:ここに考える期間(年)、a:生産量のt年間での平均年生長率(%)の100分の1、Po:ここに考える期間の始まりの時期での年生産量(トン)、Pt:それからt年後の時期での年生産量(トン)。
Qt=〔toからtまでの積分記号〕Pt dt=(Po/a){e^(at)−1} (2)
ここで、Qt:このt年間での累積生産量(トン)。
R=〔toからteまでの積分記号〕Pt dt=(Po/a){e^(ate)−1} (3)
ここで、te:掘りつくされてしまうまでの年数(年)、R:ある時期toに知られていた埋蔵量(トン)。
te=〔ln{(aR/Po)+1}〕/a (4)
【例】金の場合
P1990=1,818(トン)、R1990=42,000(トン)、a1970-1990=0.012とすれば、
(4)式から、te=20(年)《指数関数的耐用年数》となる。
つまり、1990年以降金の埋蔵量の追加はなく、かつ年生長率はそのまま保たれるのであれば、金は2010年に掘りつくされる。
Rが3倍であれば、te=50(年)、同上2040年。
Rが5倍であれば、te=72(年)、同上2062年。
なお、《静態的耐用年数》は、(R/P)1990=23(年)である。
- 総鉱物資源量の見積り(『立見(1986)』から)(『資源埋蔵量の分類』のページを参照)
1)McKelveyの経験式(McKelvey、1960)
r=A×10^n (n=6〜11、元素の種類により異なる)
ここで、r:米国で当時知られていた各鉱種の埋蔵量(ショート・トン)、A:各元素の地殻存在度(%)。
R=17.3×A×10^(9〜10)
ここで、R:各鉱種の世界埋蔵量(ショート・トン)。
2)鉱化度(立見、1979)
〔mf〕i=ri/ti
ここで、〔mf〕i:鉱化度、ti:元素iがある地殻部分に存在している全量(トン)、ri:鉱床となって濃集している分(トン)。
もし、ある地殻部分の元素量が大陸地殻存在度で代表されるならば、
ti(トン)=m(トン)×Ai(ppm)×10^-6
ここで、m:ある地殻部分の質量、Ai:大陸地殻存在度。
したがって、
〔mf〕i=ri/(m×Ai×10^-6)
Ri(トン)=M(トン)×n×Ai(ppm)×10^-6×〔MF〕
ここで、
Ri:ある元素iが大陸地殻上部で鉱床を作って濃集している分の総量(その元素の大陸地殻上部での総鉱床量)、
M:大陸地殻全体の質量(22.5×10^18トン)、
n:大陸地殻上部の占める範囲(固態鉱物資源の採掘のおよび得ると期待される範囲)の大陸地殻全体に対する割合 0.2〜0.3 (大陸地殻の平均の厚さを仮に35kmとすれば、地表からの深さで7〜10km前後までの範囲)、
Ai:各元素iの大陸地殻存在度、
〔MF〕:大陸地殻上部を通じての各元素に共通した平均の鉱化度 10^-4〜10^-5。
A. Ri=6.8Ai×10^8 (トン)(〔MF〕=10^-4、n=0.3)
B. Ri=4.5Ai×10^8 (トン)(〔MF〕=10^-4、n=0.2)
C. Ri=6.8Ai×10^7 (トン)(〔MF〕=10^-5、n=0.3)
D. Ri=4.5Ai×10^7 (トン)(〔MF〕=10^-5、n=0.2)
【例】金の場合
AAu=0.004 (ppm)
A. RAu=2.7×10^6 (トン)
B. RAu=1.8×10^6 (トン)
C. RAu=2.7×10^5 (トン)
D. RAu=1.8×10^5 (トン)
第5回(5/19)
- 日本の非金属鉱物資源産業について(『1999/2000 資源エネルギー年鑑』から引用、781-788p)
『B 非金属鉱業
1 概要
石灰石、ドロマイト、けい石および耐火粘土などの非金属鉱物資源は、金属、石油および石炭とともに重要な工業原料であり、表1.15に示すように重化学工業、セメント、耐火物をはじめ、国民生活にも密着した日常品などの原材料として広く利用されている。しかし、その重要性については従来、等閑視され、ともすれば天然資源としてよりもむしろ各種工業の副原料として取り扱われてきたきらいがあった。
表1.15 非金属鉱物の用途一覧表 |
鉱種名 |
鉄鋼、
金属工業 |
化学、
肥料工業 |
窯業(セメント、
陶磁器、板ガラス、
耐火物) |
製紙業 |
土木、
建設材料 |
石灰石 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
ドロマイト |
○ |
○ |
○ |
|
○ |
石こう |
|
|
○ |
|
○ |
けい石 |
○ |
○ |
○ |
|
○ |
けい砂 |
○ |
○ |
○ |
|
○ |
耐火粘土 |
○ |
|
○ |
|
|
ろう石 |
○ |
|
○ |
○ |
|
長石 |
|
|
○ |
|
|
陶石 |
|
|
○ |
○ |
|
石綿 |
○ |
○ |
○ |
|
○ |
カオリン |
|
|
○ |
○ |
|
滑石 |
|
○ |
○ |
○ |
|
しかし、戦後我が国経済の発展にともなって非金属鉱物の需要は増大の一途をたどり、最近においては資源の開発と安定確保は金属、石油などとともに極めて重要な問題となってきている。
我が国における非金属鉱山数は平成8年4月1日時点で約544を数え、金属鉱山数の約30倍に及んでいる。そのうち石灰石の315鉱山(58%)をはじめ、珪石(炉材珪石、軟珪石を含む)81鉱山、耐火粘土(木節粘土、蛙目粘土を含む)52鉱山などと各種の非金属鉱物が全国的に広く分布している。これらの非金属鉱山のうち、9%にあたる50鉱山は大企業に属し、石灰石35鉱山、珪石11鉱山、耐火粘土1鉱山などがあるが、これら大企業に属する鉱山は大部分がセメント、耐火煉瓦など、主として自家用原料供給源として稼行されているもので、その他はすべて中小あるいは零細企業に属している。なお、平成10年現在の状況は表1.16のとおり。
表1.16 金属・非金属鉱山数 |
鉱山別\年別 |
45年 |
50年 |
55年 |
60年 |
2年 |
7年 |
10年 |
金属鉱山 |
246 |
107 |
71 |
59 |
28 |
19 |
14 |
非金属鉱山 |
989 |
828 |
714 |
679 |
595 |
557 |
539 |
計 |
1,235 |
935 |
785 |
738 |
623 |
576 |
553 |
(注) 各年ともに4月1日現在。 |
表1.17〔略〕はこれら非金属鉱山の最近約25年間における従業員の推移を示すものであるが、平成10年(4月1日現在)では昭和45年の100に対して43にあたる11,709名となっている。このうち石灰石鉱山が8,831名と75%を占め、ついでけい石1,191名(10%)、ろう石455名(4%)、耐火粘土372名(3%)などで、これら4鉱種で全従業員の約93%を占めている。表1.18〔略〕は、従業員の規模別鉱山数を示すものであるが、同表で明らかなように従業員10人未満の鉱山が全鉱山数の55%を占め、50人未満では91.4%となっており、1鉱山あたりの平均従業員数は22人に過ぎない。
表1.19は金属・非金属鉱物の生産金額を示すものであるが、非金属鉱物は、前述のように鉄鋼、セメント、耐火煉瓦、陶磁器などのきわめて多様な需要に支えられ、昭和45年に比べて平成2年は約3倍に増大し、金属鉱物の生産額を大幅に上回るようになった。その後、景気の低迷等により生産金額は横ばいであるが、金属鉱物との金額比率の差は広がり続けている。また、表1.21〔略〕のように非金属鉱物は、おもにアジアから輸入されており、輸入量も増加している。
表1.19 鉱物生産金額推移表(単位:千円) |
|
45年 |
50年 |
55年 |
60年 |
2年 |
7年 |
8年 |
金属鉱物 |
103,692,851
(56.9) |
93,778,003
(41.2) |
107,965,177
(34.0) |
72,965,538
(26.8) |
35,001,104
(13.8) |
15,349,515
(6.7) |
16,548,128
(7.3) |
非金属鉱物 |
78,567,476
(43.1) |
134,095,711
(58.8) |
209,295,468
(66.0) |
99,433,889
(73.2) |
217,938,964
(86.2) |
212,100,833
(93.3) |
211,312,641
(92.7) |
計 |
182,260,327 |
227,873,714 |
317,260,645 |
272,399,427 |
252,940,068 |
227,450,348 |
227,860,769 |
(注) ( )は金額比率% |
2 世界的にみた我が国の非金属鉱物資源
我が国における非金属鉱物資源は耐火物、陶磁器原料をはじめ極めて多岐にわたるが、マグネサイト、燐鉱石、カリ塩の国内産出は皆無に等しく、また高アルミナ質耐火物原料、石綿、ほたる石、雲母資源についても、その大部分を外国産資源に依存しているのが現状である。
なお、従来国内資源で供給力のあった非金属鉱物も表1.22に示すように、近年、次第に自給率減少の傾向が認められる鉱種もできている。
表1.22 主要非金属鉱物の国内自給率推移表(単位:%) |
鉱種名 |
45年度 |
55年度 |
2年度 |
7年度 |
8年度 |
石灰石 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
ドロマイト |
99.0 |
94.4 |
79.4 |
66.2 |
66.9 |
石こう |
95.2 |
99.3 |
59.2 |
59.1 |
55.0 |
けい砂 |
95.7 |
87.8 |
69.3 |
62.6 |
61.7 |
けい石 |
97.2 |
99.3 |
99.6 |
99.4 |
99.4 |
耐火粘土 |
88.2 |
86.4 |
97.4 |
94.3 |
98.0 |
ろう石 |
96.6 |
92.0 |
93.2 |
90.1 |
90.0 |
3 非金属鉱物資源の特徴
非金属鉱物は金属鉱物と同様に、採掘、鉱石の処理工程については大差ないが、一面、金属鉱物と根本的に差異があり、資源開発の重要な要件となる。
すなわち、金属鉱物においては、その大部分が選鉱製錬によって金属元素を抽出することを目的とし、鉱石の性質はその処理工程で多少は問題となるが、抽出された金属自身は、鉱石による差異はほとんどない。しかし非金属鉱物は同一の鉱種であっても、化学組成が多様で、例えば耐火物資源にあっては耐火度、陶磁器用資源については可塑性など、物理化学的性質が著しく異なり、同一鉱種においても利用の分野が著しく異なるのが普通である。
したがって、鉱物の化学的成分または物理的性質のみで鉱石の品位を決定することは困難である。そのため、非金属資源の開発にあたっては化学成分などとともに、さらに慎重な利用試験の結果などを十分考慮することが前提条件である。
また、非金属鉱物資源は、金属鉱石とは異なり、市場価格をもって流通することは比較的少なく、また一般に価格が低廉で、鉱石そのものの価値よりもむしろ鉱床の立地、採掘条件、とくに需要地までの輸送条件が問題である。
以上、我が国の非金属鉱物資源の現状を述べたが、とくに最近は資源開発の発展にともなう開発地域の奥地化、都市化にともなう合理的な資源開発の制約、環境保全、労働力の不足、他権益との調整など数多くの問題が残されている。
その上、中小、零細企業が圧倒的に多い非金属鉱物にとって今後も増大する需要に対して供給の確保を図るため、各鉱種ごとの具体的な施策を早急に講ずる必要がある。
C 採石業
1 採石業の概要
採石業は、主として道路およびコンクリート用等の骨材を採取する砕骨材採取業、壁材・柱・敷石・土台等の建築土木用材、墓石、灯籠、庭石等を採取する石材採取業および窯業原料、鋳物土木用資材(ベントナイト、頁岩等)を採取する工業用原料採取業の3つの業態に区分される。
平成9年末のこれらの採石業者数、岩石採取場数および従業員数は表1.23のとおりである。
表1.23 採石業者数、岩石採取場数および従業員数(平成9年末) |
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合計 |
砕骨材採取業 |
石材採取業 |
工業用原料採取業 |
採石業者数 |
3,775 |
1,602 |
2,003 |
170 |
岩石採取場数 |
4,374 |
1,827 |
2,330 |
217 |
従業員 |
43,169 |
25,098 |
15,994 |
2,007 |
平成9年末の岩石の生産量を製品別にみると表1.24のとおりで、生産数量は5億2,500万tに達し、内訳では対前年比砕骨材が5.3%減少、石材が4.8%減少、工業用原料が5.0%減少し、全体では5.2%減少した。
表1.24 製品別にみた岩石の生産量(平成9暦年)(単位:万t ( )内は前年生産量) |
合計 |
砕骨材 |
石材 |
工業用原料 |
計 |
道路用 |
コンクリート用 |
鉄道道床用 |
砂 |
その他 |
計 |
切石 |
間知石
割石 |
割ぐり石 |
その他 |
52,512
(55,396) |
39,391
(41,611) |
20,380
(21,935) |
11,139
(11,373) |
208
(218) |
3,049
(3,097) |
4,615
(4,989) |
12,028
(12,635) |
287
(191) |
440
(599) |
1,705
(1,744) |
9,596
(10,101) |
1,093
(1,150) |
次に生産規模、従業員規模別に岩石採取場の構成比をみると、表1.25、表1.26のとおりである。
表1.25 生産規模別岩石採取場数(平成9暦年) ( )内は項目に占める割合 |
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合計 |
砕骨材採取業 |
石材採取業 |
工業用原料採取業 |
1,000t未満 |
1,083 (24.7) |
128 ( 7.0) |
898 (38.5) |
57 (26.3) |
1,000t〜 1万t未満 |
725 (16.6) |
78 ( 4.3) |
579 (24.9) |
68 (31.3) |
1万t〜 10万t未満 |
1,158 (26.5) |
514 (28.1) |
583 (25.0) |
61 (28.1) |
10万t〜 50万t未満 |
1,169 (26.7) |
909 (49.8) |
231 ( 9.9) |
29 (13.4) |
50万t〜 100万t未満 |
183 ( 4.2) |
150 ( 8.2) |
31 ( 1.3) |
2 ( 0.9) |
100万t〜200万t未満 |
47 ( 1.1) |
40 ( 2.2) |
7 ( 0.3) |
0 ( - ) |
200万t以上 |
9 ( 0.2) |
8 ( 0.4) |
1 ( 0.1) |
0 ( - ) |
表1.26 従業員規模別岩石採取場数(平成9暦年) |
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合計 |
砕骨材採取業 |
石材採取業 |
工業用原料採取業 |
5人以下 |
1,998 |
360 |
1,516 |
122 |
6〜50人 |
2,323 |
1,442 |
794 |
87 |
51人以上 |
53 |
25 |
20 |
8 |
合計 |
4,374 |
1,827 |
2,330 |
217 |
以上のように採石業は中小、零細業者により構成されており、砕骨材採取業では生産規模が1万t〜100万t未満、従業員規模6〜50人未満の業者に集中しており、石材採取業では年生産規模が10万t未満、従業員規模5人以下の零細企業に集中している。
2 採石法施行状況
業者登録関係(表1.27、略)、岩石採取計画認可関係(表1.28、略)、採石災害防止命令関係<知事命令件数>(表1.29、略)、採石災害発生申告件数(表1.30、略)参照。
採石業務管理者試験
平成10年度採石業務管理者試験は、平成10年6月2日、各都道府県において一斉に実施され、2,312人の受験者のうち629人(合格率27.2%)が合格した。昭和48年以来、合格者総数は37,289人となった。
第6回(5/26)
- レアメタルの定義(『レアメタル事典』から引用、4-6p)
『レアメタルの古典的な定義として著名なのは、34の元素群を対象金属とした1954年刊行の“Rare Metals Handbook”で、編者C.A.Hampelは、この分野の研究の先駆者であるJ.W.MardenとC.G.Finkが電気化学協会のシンポジウムなどにおいて、この用語を長い間使用していたため、Rare
Metalをこのハンドブックに冠したと述べ、“Less Common Metals”、“Unusual Metals”、“Extraordinary
Metals”などの用語に比べて誤解されにくいとしている。また、その定義として以下のいずれかに該当するものとしている。
(1)自然界における供給量ないし地殻中における賦存量が少ない場合、
(2)対象となるある金属がかなり広く存在していても、採掘の対象となる鉱床の品位が低く、化合物の形であれ、元素の形であれ、所要の元素を少量抽出するために大量の無価値な物質を取り扱うなり、処理しなければならない場合、すなわち、経済的に望ましい品位の鉱石を含む鉱床が非常に少ない場合、
(3)対象となる元素の化学的・物理的な性質が、純粋な元素への転換の極めて困難なものである場合、
(4)その元素の入手が可能であるとしても、現行の他の素材に競合して新規需要を創出するに足る魅力的な特性ないし用途がない場合、などである。更に、Hampelは1961年の改訂版ではレアアース研究の進展に伴い、36の元素群を対象として取り上げている。
我が国では、「新金属」あるいは「特殊元素」と呼ばれている元素がほとんど同意語として使用されてきたし、現在でも使用されている。なお、この新金属(New
Metals)という用語は1951年ごろIron Age誌で用いられたものと言われる。また、「特殊元素」については昭和43年の科学技術庁資源調査会報告「特殊元素に関する調査報告」および日本鉄鋼協会から昭和52年に刊行された「特殊元素の開発および利用に関する基礎資料」においてレアメタルのほぼ同意語とみなしている。
レアメタルの対象としての元素群をいくつかの事例について具体的に挙げると、表−1(注:配布プリント参照)のようになる。
@ C.A.Hampel編:“Rare Metals Handbook”(1961)
Ca、Ba、Sr、Be、Bi、B、Cd、Cr、Co、Nb、Ga、Ge、Hf、In、Li、Mn、Mo、白金族金属、Pu、レアアース、Re、Rb、Cs、Se、Si、Ta、Te、Tl、Th、Ti、W、U、V、Zr
の34種類(ただし白金族6元素、レアアース16元素は一種類とした)
A 通商産業省通商政策局国際経済部編:“希少金属と先端産業”(1982)
@の元素群から核燃料、需要の本格化していない元素などを除く一方、先端技術に関連するNiを加えた、
Ba、Be、Bi、Co、Cr、Ga、Ge、Li、Mo、Nb、Ni、レアアース、Se、Si、Sr、Ta、Te、Ti、V、W、Zr、Hf
の22種類(ただしレアアース17元素は一種類とした)
B A.N.Zeilikmanら(1966)とM.A.Filyら(1970)の著書に基づいた分類
ZelikmanらとFilyらの著書にレアメタルとして記載されている元素群を、物理的・化学的性質、製錬法、賦存量などに基づいて分類したものを表−2(注:配布プリント参照)に示した。
C 科学技術庁資源調査所編:“主要な希少元素の資源の有効利用に関する調査報告”(1986)
* 資源面からみた注目すべき元素群: He、Li、B、C、Be、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Ga、Mg、K、As、Se、Sr、Zr、Nb、Mo、白金族金属、In、Te、Hg、レアアース、Ta、W、Au、Bi
の29種類(ただし白金6元素、レアアース16元素及びHf、Zrの2元素はそれぞれ一種類とした)
* 先端科学技術面を支える材料面からみた注目すべき元素群: He、B、C、Si、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、白金族金属、In、Sn、Te、Ba、レアアース、Ta、W、Pb
の26種類(ただし白金族6元素、レアアース16元素及びHf、Zrの2元素は一種類とした)
D 鉱業審議会レアメタル総合対策特別小委員会編:“レアメタルの総合対策について”(1987)
通商産業大臣の諮問機関である「鉱業審議会レアメタル総合対策特別小委員会」では、1987年8月に31鉱種のレアメタルについて、「新素材の現状と見通し」(1984年3月−産業構造研究会)、「基礎新素材研究会中間報告」(1984年7月−基礎新素材研究会)、「Mineral
Facts and Problem」(1985年版−U.S.Bureau of Mines)などを参考にし、2000年における市場規模を1985年と対比して予測したが、その対象レアメタルは、
* 備蓄対象となっている元素: Ni、Cr、W、Co、Mo、Mn、V
* 備蓄対象以外の元素: Nb、Ta、Sr、Sb、Pt、Pd、Ge、Ti、Li、Ga、B、Se、Te、Rb、Zr、Hf、In、Cs、Ba、Re、Tl、Bi、レアアース、Be
の備蓄対象元素を含めて31種類(ただしレアアース17元素は一種類とした)
E 科学技術庁:“レアメタルの高純度化による新機能創製のための基盤技術の開発”(1987)
昭和62年度から5ヵ年計画で進められている「レアメタルの高純度化による新機能創製のための基盤技術の開発」では、機能別の最重要元素として、
* 電子的機能元素: Ga、As、W、B、Nd、Mo、Zr
* 光学的機能元素: Nd、La、Nb
* 磁気的機能元素: Nd、Sm、Co、Tb、Dy、La
* その他の機能元素: Mo、Ti、B、Dy、Gd
の15種類を高純度化の対象レアメタルとして摘出。
以上、いくつかの文献から具体的な元素名を挙げてみたが、「レアメタル」を定義どおりMetalにかかわって狭義に解釈すればかなり限定されるが、それでも他の非金属元素との境界は必ずしも明確でない。また、Metalに限定すること自体も実態とは異なる。国の資源備蓄対策上の扱い、希少価値を有するが故に高価であるなど、レアメタルとみなされる元素の割合が多くなってきている。更に、近年ではその産出がまれなことではなく、高純度化により元素それ自体が特殊機能をもつか、または、少量の添加により特殊機能を与え得る、従来は必ずしもレアメタルとして取り扱われなかった半金属、半導体、非金属の一部もレアメタルの範囲に入れられるようになってきている。
なお、最近刊行された新素材用語辞典ではレアメタルの要件として、
(1)賦存量が少ない元素、
(2)広く分布しているが、採掘可能の鉱床の品位が低いため製錬コストが高くつく元素、
(3)元素の形に還元するのが困難な化学的・物理的性質をもち、製錬が技術的に難しい元素、
これらのいずれかに当てはまるものとしている。
本書(基礎編)では、辞典としての性格を考慮し、単体ないし、合金・化合物の形で、機能性材料などに用いられる希少元素および重要な副資材としての元素を幅広くカバーするという方針をとり表−1に示す元素群を対象に選定した。今後もレアメタルの定義は、資源の埋蔵量・生産量・可採年数などの変化、資源の偏在性、資源保有国の政情・経済情勢、国の経済・社会の発展、生産コスト、先端技術の動向などにより、時代とともにかなり幅広く定義されていくであろう。』
- 世界のレアメタル資源の将来の供給(『レアメタル資源の現状と将来』から引用、116-118p)
『4.1 供給の脆弱性を持ったレアメタル資源
世界のレアメタルの生産と埋蔵量はほとんどの鉱種について特定の少数の国に集中している。しかもそれらの国の中には発展途上国や南アフリカ共和国、旧ソ連などのように政治・経済上の不安要素を持っている国の多いことが特徴的である。加えて前述のニッケルにみられる如く特定の国への集中だけでなく、少数の会社に集中している場合も多い。
このことは、生産国あるいは保有国(会社)が政治・経済上の不安に陥ったり、ストライキなどが生じた場合、生産や開発が阻害され供給障害が引き起こされる可能性が高いことを意味する。過去、ザイールにおける紛争による「コバルトショック」(1978年)や、カナダ、インコ社(1969年)やプラサー社(1979年)のストライキによるニッケル、モリブデンの供給障害などのほかに影響の大小はあるがかなりの事例が知られている。また、レアメタル資源保有国の戦略的な意図による供給停止などの可能性も指摘されている。
佃(1992)は供給の脆弱性を、資源の生産と資源量にカントリーリスクを加え分析した。その結果、(A)心配はない品目としてカドミウム、モリブデン、ほう素、マグネシウムを、(B)まず心配はない品目としてベリリウム、チタン、モナズ石、ジルコン、バリウム、ストロンチウムを、(C)不安要素はあるがまあ大丈夫な品目として金、バナジウム、ビスマスを、不安がある品目としてクローム、マンガン、ニッケル、アンチモン、タングステンを、そして(D)大いに不安がある品目としてコバルトをあげている。
4.2 レアメタル資源の耐用年数
レアメタル資源が将来の需要に対して必要な量存在するかを判断する目安として、埋蔵量を年間生産量で徐した値で示されるレアメタル資源の耐用年数を第19図(注:配布プリント参照)に示す。
現在の生産量程度では少数の例外を除いて十分な耐用年数を有しているといえる。図中50年以下の耐用年数を示す鉱種でレアメタル31鉱種ではビスマス、インジウムの2鉱種しかない。またベリリウム、ほう素、クローム、コバルト、ガリウム、ゲルマニウム、リチウム、ニオブ、白金グループ、レアアース、レニウム、チタン、バナジウムなどは100年以上の耐用年数がある。これはベースメタルである銅の40年、亜鉛の21年、鉛の20年に比較すると対照的で、むしろベースメタルより豊富に存在する資源であるともいえる。
4.3 レアメタル資源の将来の供給と問題.
データから判断するかぎりレアメタル資源の埋蔵量は豊富にあり、生産規模が現在の水準付近で推移するかぎり現在把握しているだけの埋蔵量だけで十分で枯渇の心配はないと言える。ただビスマスやインジウムなどは他の資源の副産物でしか生産されないので、主生産物の耐用年数に支配されるので注意が必要である。
しかしレアメタル資源の生産、保有資源の開発という点については以下のようないくつかの問題点をあげることができ、これらが円滑な操業や鉱山開発を妨げる要因になりうる。
(1) レアメタルの需要の不安定性と市場規模
一般にレアメタルは様々な用途に利用されている。中でもハイテク部門での用途は将来にわたってレアメタル需要の増加をもたらす要因としてあげられる。しかしこの分野はフェロアロイなどと違って技術革新が激しく、ために個々の製品の寿命は短いものが多い。例えばレアアースを使用した永久磁石が誕生した結果、従来のアルニコ磁石は急激に代替された。永久磁石の市場をリードするまでになったが、レアアース磁石についても当初のサマリウム−コバルト系に続いてより良い磁気特性を示すネオジム−鉄−ほう素系のものが現れ代替が始まっている。
このように技術の進歩により常に新製品が開発され、それまでの製品を代替する結果、個々の製品の寿命は短く1つの鉱種について安定した需要をもたらさない。また個々の製品に使用される量もハイテク分野では小さい場合が多く、まとまった需要とはならないことが多い。
(2) レアメタルの価格と付加価値
一般にレアメタル製品は価格が高いものが多い。しかし高いのは鉱石を精錬・加工して製造された製品の価格である。鉱石の価格は必ずしも高いわけではない。すなわちレアメタルは加工度をあげることによって高価格を設定できる付加価値率の高い資源なのである。そこで鉱山ではできるだけ山元で付加価値をあげようとし、精錬・加工を行おうとするが、レアメタル製品はフェロアロイなどを除いて多品種少量生産の典型で、ユーザーの要求仕様も複雑多岐にわたる。このため生産地よりは消費地の近くで精製・加工を行ったほうが有利となる。ベースメタルが一般的に現地山元で精製されることが多いことと対照的である。
即ちレアメタル鉱山では山元で付加価値をあげにくいため収益を十分に得られない。カナダやオーストラリアではレアメタルの探鉱・開発プロジェクトが多数存在しながら中々開発が進まないのは、インフラストラクチャーの欠如と相まって収益性がないと判断された場合が多いからである。
また、資源保有国のなかには外貨獲得のため、あえて大量に輸出しようとする動きがみられることがあり、このことが価格低迷につながり世界のレアメタル鉱山の操業や新規開発を妨げる要因になっている。
(3) 鉱石処理技術の問題
レアメタルの持つ供給の脆弱性を克服し、レアメタル資源の供給の安定をはかるためには供給源を多様化させることが望ましいが、埋蔵量が偏在しているので難しい。現在、経済的に採掘でき、処理できる鉱石の種類は限られている。しかし例えばレアアース資源ではバストネサイト、モナズ石、イオン吸着鉱の他にアルカリ複合岩体に伴う鉱床や珪酸塩鉱物中にふくまれるものがあるが、経済的に見合う処理技術がないために開発ができないのが実情である。
4.4 将来の新しいレアメタルの供給源
レアメタル資源の安定供給をはかる上で供給源の多様化は一つの有力な解決手段である。現在の既知の鉱床のほかに、将来の有望な供給源としてあげられるものに深海底鉱物資源、リサイクル資源などがある。
深海底鉱物資源にはマンガンノジュール、コバルトリッチクラスト、海底熱水鉱床などがある。マンガンノジュール鉱床は水深4000〜6000mの海洋底に、コバルトリッチクラストは海山の斜面を皮殻状に覆って、海底熱水鉱床は海膨などに沿って分布しており、特に前2者はコバルト、ニッケル、マンガン、プラチナなどのレアメタルを、後者はガリウム、インジウム、バリウムなど多種類のレアメタルを含有しており、資源量も莫大である。ただ採鉱、製錬など、技術的に解決しなければならない課題が多い。
リサイクルについては、レアメタルは特殊な用途に使用されることが多いためリサイクルが容易である場合が多い。しかし現実には組織的に十分にリサイクルが行われているとは言いがたい。リサイクルが十分に行われれば結果的に供給源を多様化させたことになる。』
第7回(6/2)
- 核分裂の発見(『エネルギー・環境・生命』から引用、14-15p)
『原子を構成する粒子の発見 原子が物質を構成する最小の粒子であるという従来の考え方は、まず電子の発見により打ち破られた。1897年、イギリスの物理学者J.J.トムソン(ケンブリッジ大学・キャベンディッシュ研究所)は、真空放電の実験から電子の存在を発見した。続いて1911年、その弟子のE.ラザフォードは原子核の存在を明らかにした。このあとラザフォードは、原子核のプラスの電気の正体が陽子(水素の原子核)であることをつきとめ、また1932年になって、ラザフォードの弟子J.チャドウィックは、原子核の構成粒子として中性子を発見した。
原子の構造 原子は電子と原子核からなり、原子核は陽子と中性子がそれぞれ何個か集まって、核力によってかたく結合したものである(図1.7、略)。電子は最小単位のマイナスの電気量(電荷)をもった粒子であり、陽子のプラスの電荷の大きさは電子のマイナスの電荷と同じである。中性子は陽子とほぼ同じ質量(電子の質量を1としたとき、陽子および中性子の質量はそれぞれ1836、1839である)をもち、電荷はもたない。一つの原子では陽子数と電子数は同じで、原子は全体として中性である。原子番号とは、陽子の数(=電子の数)に相当する。原子の質量の大部分は原子核に集中しており、原子核に含まれる陽子の数と中性子の数の和を質量数という。原子の種類は、その原子核をつくっている陽子の数と中性子の数によって決まる。原子番号がZで質量数がAの元素(原子の種別名)Eの場合と書き表される。
核分裂の発見 チャドウィックが中性子を発見したことによって原子の全体構造がほぼ完全に明らかになったわけであるが、中性子の発見がもたらしたものはそれだけではない。実はこれがウランの核分裂を導き出す引き金となったのである。
イタリアのE.フェルミは、新しく発見された中性子を弾丸にして、ウランを照射する実験を行った。その結果、化学的性質のまったく異なった幾種類かの放射性生成物のできることを発見した。さらに、原子核にぶつける中性子の速度を、水やパラフィンなど水素を多く含む物質の中をくぐらせて減速すると、より強い放射性物質をつくり出すことができることをも発見した。「中性子照射による新放射能の発見」によって、フェルミがノーベル賞を受賞したのは1938年である。
フェルミの実験は、世界の物理学者たちを強く刺激した。ドイツのカイザー・ウィルヘルム研究所のO.ハーンらは、“おそい中性子”を使って実験を行い、ウランの原子核は二つに壊れるという結論を導き出した。1938年12月のことである。
コペンハーゲンのN.ボーアは、原子核の理論から核分裂の際に巨大なエネルギーが発生することを予測したが、これは実験協力者たちによって確かめられた。1939年1月のことである。
当時すでにアメリカに亡命していたフェルミは、コロンビア大学の地下室のサイクロトロンを使ってウランの核分裂を確認し、さらに核分裂の際に何個かの中性子が新たに放出されることをも確認した。
1939年9月に第二次世界大戦はぼっ発した。当時ヨーロッパからアメリカへ亡命していた物理学者らは、ナチスドイツの手による原子力の軍事利用を懸念してルーズベルト大統領に原子爆弾開発の働きかけを行い、1939年10月、大統領はこれに応じてゴーサインを出した。フェルミが原子炉第1号に成功したのは1942年12月である。そしてその成果は、ナチスの頭上ではなく、日本の上空でさく裂した。』