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配付プリント等 |
補足説明 |
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@地球の4圏
地球(Earth)は表1に示すように4圏から構成されている。中心に存在する地圏が最も重要である。ただし、地表に存在する(地表にしか存在できない)人類にとっては、地表における残りの3圏との関わりの方がより深いため、実質的にはそれらからの影響をより強く受けている。
地圏の内部構造は、とくに地震波の伝達状況・隕石の化学組成・高温高圧実験などにより、詳しく研究されている。
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(Biosphere) |
表 付 近 |
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以下の3圏の境界付近に存在する生物を中心とする部分 | 植物や動物などの生物が中心となる生態系を形成する部分である。 |
1圏 |
(Atmosphere) |
(対流圏のみ) |
地表側から対流圏−成層圏(オゾン層を含む)−中間圏−熱圏(電離層とほぼ重複する)に分けられるが、主要部は対流圏 | いわゆる大気であり、空気(窒素ガス約78%・酸素ガス約21%・アルゴン約1%など)を中心とする部分である。 |
3圏 |
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(Hydrosphere) |
(深海底深度) |
海水と陸水(氷河・地下水・湖沼水・河川水)からなる | 水(H2O)を中心とする部分である。 | ||
(Geosphere) |
(半径) |
地表側から地殻(Crust)(大陸地殻と海洋地殻)−マントル(Mantle)−核(Core)(外核−内核)に分けられる |
外核以外は固体であり、固体地球とも言う。 内核と外核は主に金属鉄(Fe)からなり、マントルと地殻は主に珪酸塩鉱物からなる。 |
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これ以外に、人間圏(Anthroposphere)や磁気圏(Magnetosphere)などもある。 |
A地殻の性質【地圏】
地球全体の性質として重要なものは、重力(Gravity)(=引力+遠心力)・地磁気・地熱などである。地圏の最上部である地殻の地形は、その高さをジオイド(Geoid)という概念で表現できる。とくに地殻については、プレートテトニクスにより、その成因(できかた)と内容が詳細に判明してきている。地殻は成因の違いにより、大陸地殻と海洋地殻に分けられ、それぞれ固有の性質を持つ(表2)。これらが示す地形は、アイソスタシー(Isostasy)の影響を強く受けている。
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大陸地殻 | 平均30 | 30数億〜0 |
花崗岩 (火成岩の深成岩:酸性岩) |
沈み込み帯で生成する。マグマは、海洋地殻・堆積物(海洋および陸源)・大陸地殻の融点の低い物質を主とする。 |
海洋地殻 | 平均5 | 1.5億〜0 |
玄武岩 (火成岩の火山岩:塩基性岩) |
海嶺で生成し(地下に生じたマグマから)、沈み込み帯(海溝)でマントルへ沈み込む。マグマはマントル物質の融点の低い物質を主とする。 |
プレートテクトニクスにおいて、海洋地殻が大陸地殻よりも先に形成された。 海洋地殻は大陸地殻よりも重いため(密度が大きいため)、両者が衝突した場合は、海洋地殻が沈み込む。 |
B地圏の最小単位−鉱物【地圏】
地圏は岩石(Rock)から構成されている。岩石は鉱物(Mineral)の集合体である。鉱物は原子(Atom)/元素(Element)から構成されるが、独立した物質としての最小単位は鉱物である。鉱物は表3に示す3つの条件を満たすものとして定義される。このうち、化学組成あるいは結晶構造のどちらかが異なれば別鉱物であり、世界では約4,000種類程度が知られている。
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天然産であること | 地球以外でもよい | 例外なし(人工物は含めない) |
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化学式で表現できるような化学組成(元素の種類と濃度)を持つこと | 固溶体をもつものが多い | 例外なし |
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結晶構造(原子の3次元的な配列のありよう)は結晶質(規則的)であること | 固体であること | 例外あり(いくつかの液体および非晶質を含む) |
・4つめに『一定の安定条件をもつこと』を定義に含めることがある。 ・鉱業的に『石油や石炭』などの生物由来の有機物を『鉱物』と呼ぶ場合があるが、上の定義からは鉱物に含めない。 ・地球以外にのみ生成するものは、一般的な『鉱物の分類』に含めないことが普通である(例えば、隕石の鉱物など)。 |
C鉱物の分類【地圏】
鉱物の定義における化学組成の違いに応じて表4のように分類される。このうち、珪酸塩鉱物が岩石を構成する主要な造岩鉱物である。一方、資源となる鉱物は、硫化鉱物や酸化鉱物のように、普通の岩石中には濃集しない。
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陰イオンと陽イオンの区別ができない場合 |
元素鉱物 (Element Mineral) |
特定の陰イオンを含まない場合(金属など) | 自然金(Au)、自然銀(Ag)、自然銅(Cu)、石墨(C)、自然硫黄(S)、など | 量は少ないが、大部分は資源鉱物(鉱石鉱物)となる |
陰イオンが単一元素からなる場合 |
硫化鉱物 (Sulfide Mineral) |
陰イオンが硫黄(S)の場合 | 黄銅鉱(CuFeS2)、方鉛鉱(PbS)、閃亜鉛鉱(ZnS)、など | 資源鉱物の大部分が含まれる |
酸化鉱物 (Oxide Mineral) |
陰イオンが酸素(O)の場合 | コランダム(Al2O3)、赤鉄鉱(Fe2O3)、など | 資源消費量の多い鉄とアルミニウムの資源鉱物が含まれる | |
その他 | ハロゲン化鉱物、など | 資源鉱物となるものが多く含まれる | ||
陰イオンが2種類(1つは酸素)の元素からなる場合 |
炭酸塩鉱物 (Carbonate Mineral) |
陰イオンが炭素(C)と酸素(O)からなる塩の場合 | 方解石(CaCO3)、など | 方解石は岩石の石灰岩を構成する |
珪酸塩鉱物 (Silicate Mineral) |
陰イオンが珪素(Si)と酸素(O)からなる塩の場合 | 結晶構造(SiO4四面体の結合様式)の違いにより6種類のサブグループに分けられている | 普通の岩石を構成する造岩鉱物の主体をなし、産出量が最も多い | |
その他 | 硝酸塩鉱物、硫酸塩鉱物、など | 資源鉱物となるものが含まれる |
D岩石の分類【地圏】
岩石は成因により火成岩と変成岩と堆積岩の3つに分けられる(表5)。
火成岩(Igneous Rock)は、マグマ(Magma)(岩石の熔融体)から固結してできる岩石であるが、化学組成〔とくにSiO2(珪酸;シリカ)成分量〕および組織(形成深度が粒径などに最も影響する)の違いにより分類される。花崗岩はSiO2量が多く、深部でゆっくり冷却されて形成される。一方、玄武岩はSiO2量が少なく、地表付近で急速に冷却されて形成される。これらの中間の性質を持つ岩石には、別の名称が付けられているが、これらは連続的に変化している。なお、マグマの化学組成の違いは主に源岩の違いによる。
変成岩(Metamorphic Rock)は、地表付近にあった岩石が地下へ埋没し、地下の高温・高圧条件によって、構成鉱物の一部または全部が変化した岩石である。一般的な変成岩は、圧力と温度の両方の影響を受けて形成される。とくに両方の影響が大きい変成岩は、構成鉱物が粗粒であり等粒状になって、一見花崗岩に似る場合もあるが、このようなものは片麻岩と呼ばれる。比較的圧力の影響が大きい場合には層状を示すことがあり、その代表的なものが片岩である。これらは広域的に形成される場合が普通であるので広域変成岩と呼ばれる。また、特別に温度の影響が強い場合は熱変成(接触変成)岩と呼ぶことがあり、逆に圧力の影響が強い場合は動力変成岩と呼ぶことがある。ただし、近年は変成相によって分類するのが一般的である。
堆積岩(Sedimentary Rock)は、地表における風化(Weathering)・浸食・運搬・堆積作用によって形成される岩石であり、砕屑岩(Clastic Rock)が主体である。地表環境条件下で不安定な鉱物は、破砕と分解の過程で消失するため、一次鉱物(源岩を構成していた鉱物)の種類は限られる〔主に石英(Quartz)および長石(Feldspar)の一部が残りやすい。他には岩片状のものも残る。さらに地表条件で安定な粘土鉱物(Clay Mineral)のような二次鉱物も形成される〕。一方、破砕によって半分また半分と粒径が小さくなると仮定すれば(1/2)nとして構成鉱物の大きさを表せる。人為的に2mmや(1/2)4mm(=1/16mm)などが砕屑物の大きさの境界として使われ、2mm以上の粒子から構成されるものは礫、2mm〜1/16mmは砂、1/16mm以下は泥とされている。これらの堆積物は地下での続成作用(Diagenesis)によって粒子間が固定されると、堆積岩(それぞれ、礫岩、砂岩、泥岩)となる。これらは層状の組織・構造を持つので一般に地層(Stratum)と呼ばれる。
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火成岩 | マグマから固結したもの | 玄武岩(げんぶがん)(Basalt) |
生成深度小・シリカ量小 海洋地殻の代表 |
花崗岩(かこうがん)(Granite) |
生成深度大・シリカ量大 大陸地殻の代表 |
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変成岩 | 地下条件(高温・高圧)で生成したもの | 片麻岩(へんまがん) | 高温(高圧)で生成 |
片岩(へんがん) | 高圧(低温)で生成 | ||
堆積岩 | 地表条件(低温・低圧)で生成したもの | 砂岩(さがん) | 粒径が2mm〜1/16mm程度 |
泥岩(でいがん) | 粒径が1/16mm以下 |
E大気の大循環【気圏】
気圏(大気圏)は、高度に対する気温の変化のしかたによって4圏に分けられている。地表(平均気温15℃)から高度10キロメートル付近までは、高度とともに気温も下がり、最上部では−50℃以下である。この圏には気圏全体の3分の2の大気が存在し、大気の対流が活発であるために対流圏(Troposphere)と名付けられている。その上には、逆に高度とともに気温が上昇する圏があり、大気の3分の1が存在するが、その温度構造のために対流はおこりにくい。従って、成層圏(Stratosphere)と名付けられている。成層圏は高度50キロメートル付近までであるが、20〜30キロメートルにはオゾン(O3)濃度の高いオゾン層(Ozone Layer)と呼ばれる層が含まれる。成層圏の上は、対流圏と同じ温度構造であるものの大気がほとんど存在しないために顕著な現象が観察されない中間圏(Mesosphere)がある。これは高度80キロメートル付近までである。その上には、成層圏と同じような温度構造の熱圏(Thermosphere)がある。熱圏の上部は不明瞭であるが高度500キロメートル程度である。熱圏では、太陽紫外線による大気成分の電離作用によって熱が発生している。つまり、熱圏の大部分は電離層(Ionosphere)と重なる(表6)。
一般に宇宙空間(Space)とされるのは、高度100キロメートル以上である。
気圏の上部にある特徴的な圏は磁気圏(Magnetosphere)である。これは地磁気(地球磁場)によって生じている。磁気圏の上部は太陽側では6万キロメートル程度とされている。磁気圏の太陽と反対側は、太陽風の影響により、彗星の尾のように遠くまで伸びている。なお、磁気圏内には、太陽風のプラズマ(Plasma)(陽子と電子)が閉じこめられたバンアレン帯(Van
Allen Radiation Belt)も存在する。
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磁気圏(Magnetosphere) |
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地磁気による |
バンアレン帯を含む 高度は太陽側、反対側はさらに大 |
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気圏 | 熱圏(Thermosphere) |
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上空ほど高温(>1500℃) | 大部分は電離層(Ionosphere)と重なる |
中間圏(Mesosphere) |
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上空ほど低温(約−100℃) | ||
成層圏(Stratosphere) |
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上空ほど高温 全大気成分の1/3を占める |
オゾン層(Ozone Layer、20〜30km)を含む | |
対流圏(Troposphere) |
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上空ほど低温(<−50℃) 全大気成分の2/3を占める |
気象現象(大気の大循環)が起こる | |
・高度100km以上は宇宙空間と呼ばれる。 ・気圏(大気圏)は一般に上記の4圏に分けられ、これが「狭義」の範囲である。これらのさらに上空は外気圏などとも呼ばれるが、磁気圏も含めて「広義」の気圏とされることもある。 |
地表に対する影響が最も大きいのは対流圏である。気象現象の大部分はここで生じている。気圏における大気の大循環は基本的には対流圏で生じている。北半球では、東西方向の循環の帯が3つ存在し、赤道面を対称にして南半球にも3つ存在する。最も大きくて強いのは赤道に近いものであり、ハドレー循環(Hadley Cell)と呼ばれている。残りは、順に、フェレル循環(Ferrel Cell)と極循環(Polar Cell)である。これらの循環のため、南北緯30度付近は地球規模の乾燥帯となっており、代表的な砂漠が分布している。このような大気の循環が発生する原因は、極地域と赤道地域で典型的に比較できるような緯度の違いに応じた太陽光の強さの違いから生じる温度差である。この温度差を無くす方向に大気は運動する訳である。さらに、地球が自転している影響(コリオリの力)(Coriolis Force)も受けている。
大気の大循環などの運動エネルギーを与えているのは太陽光である。地表で起こっている物質の移動のエネルギー源はすべて太陽光である〔他に、地熱(地表で太陽の1/5000程度)と重力(地表で地熱の1/10程度)のエネルギーがある〕。特に地表付近の温度に与える影響は重要である。このように、地球が太陽から受け取っているエネルギーを太陽放射と呼ぶ。受け取るだけでは地表温度は限りなく上昇するので、地球から宇宙へエネルギーを放出している。それを地球放射と呼ぶ。太陽放射と地球放射のバランスの結果として、現在の地表温度(気温)が平均15℃となっている。太陽放射の実体は電磁波であり、可視光領域の波長をもつ強度が最も大きく、赤外線や紫外線なども含まれる。一方、地球放射の方は赤外線(主に熱を伝える)であり、目には見えない。電磁波(スペクトル)の波長と強度は、それを発生している物質の温度と物理的関係を持つ(シュテファン=ボルツマンの法則)。つまり、太陽放射スペクトルは、太陽表面温度の6000℃に対応し、地球放射スペクトルは地表温度15℃に対応している。ちなみに、地球放射の赤外線と反応する大気成分(例えば、CO2など)は温室効果ガスとも呼ばれる。
F海洋の循環【水圏】
地球上の水の量の約97%は海に海水として存在する。残りは陸にあるため陸水と呼ばれるが、氷河が圧倒的に多く、全体の約2%である(残りの約1%は地下水など)。
海水には様々な成分が溶解しており、塩分(Salinity)と呼ばれる〔最も多いのはCl-(塩素イオン)とNa+(ナトリウムイオン)であり、これらで86%程度を占める〕。その濃度は全体で約3.5%〔=約35‰:慣例的に‰(パーミル、千分率)が使われることが多い〕である。これは、非常に長い時間をかけて水が周囲の岩石(鉱物)と反応し、そこから溶出したものである。
全般的に、海水の移動(対流)は密度差によって起こる。その密度は温度と塩分と圧力によって決まる。つまり、一般に温度が低ければ密度は大きくなるし〔純水の場合は4℃付近で最大の密度となるが、海水の場合はもっと低い温度(約−3.5℃)で最大となり、海水の結氷点温度(約−1.8℃)より低いため、結氷点温度以上では温度が低ければ密度は大きくなる。従って、海水は凍り難い〕、塩分が多ければ密度は大きくなる。海洋の海水は太陽光によって温度が高くなって密度が小さくなると、下降しにくい。つまり、太陽光の熱によって対流は起こりにくい。また、河川水(密度が小さい)の流入の場合も同じである。ただし、氷河融水の流入の場合は、海水の密度を小さくすることも大きくすることもある。全体的には、表層水の温度に関係なく、深海付近の水温は2℃前後になっている。
海洋の場合も、大気の大循環のように、海水が循環しているが(海洋大循環)、循環速度は非常に遅い。その循環速度の違いによって、表層水と中深層水に分けられる。表層水の循環は、一般に海流(場所により変わるが一般に深度1キロメートル程度以内)と呼ばれる。これは、太陽光による地表における温度差がその原因であるが、大気の大循環(風)の影響を強く受けている。従って、全地球的には大気の大循環と同じ方向の流れを持つが、大気の場合と異なって陸によって制限された範囲内のみである。この場合、風の影響が大きいために風成循環と呼ばれることがある。一方、中深層水の循環は、その詳細は依然として不明な部分が多いが、大西洋の南北両端(北側の方が主力)から始まって(つまり、下降流が生じて)東向きに移動し、地球を1周回って(南極大陸周辺)戻ってくる。また、一部はインド洋および太平洋でそれぞれ北上した後、上昇して比較的浅い部分を西向きに戻ってくる。この場合海底地形の影響が大きく、深層流は海嶺〔深度4000〜5000メートルの深海底から聳え立つ2000〜3000メートル級の海底大山脈である〕の裾野を流れることになる。このような循環を、3000年程度の時間〔平均滞留時間(Average Residence Time)〕をかけて行っていると考えられている。ストンメル(Stommel)およびブロッカー(Broecker)のモデルが有名である。この場合、温度と塩分の違いによる密度差の影響が大きいために熱塩循環(Thermohaline Circulation)と呼ばれることがある。
Gプレート・テクトニクス
ウェゲナー(Wegener)は、1910年代に大陸移動説(Continental Drift)を提唱した。彼は、@地殻表面の頻度曲線が2つのピークを示すため、陸と海は異なる物質からなり、高度も元々違っていたこと;Aアイソスタシーの原理から、地殻は水平方向にも動くことができること;B大西洋を挟む大陸間で、地質構造などが連続すること;C海を渡れない生物が、現在は海で隔てられた諸大陸に化石として分布すること;D南半球の大陸およびインドなどにペルム紀〜石炭紀(約3億年前)の氷河堆積物が存在すること、などから大陸はかって1つの超大陸(パンゲア)を形成していたことを示した。1920年代には、賛否両論の大論争となった。氷河の分布や造山運動の成因などを明確に説明することができたが、大陸移動の原動力については説明できなかった。やがて1930年代になって論争は大陸移動説の敗北で終止符を打つ。その敗因は、主に@ウェゲナー自身の死;A原動力に対する説明に欠けること;B地球は固いという当時の地球観に反したこと、などである。ホームズによるマントル対流説も提唱されていたが、大陸移動説とは結び付けられなかった。
第二次大戦中に、軍事目的として潜水艦の航行上の必要性から、世界の海洋の海底地形測量が行われていたが、戦後は、海洋学全般の研究が大きく進展した。海底地形測量の他に海底堆積物や基盤岩についての研究も行われたが、特にそこに記録された地磁気の結果は特筆すべきものであった。つまり、海底地磁気には縞模様が見られ、これは過去の地球磁場が繰り返して反転してきたことを示すことが判った。岩石残留磁気と生成年代から、過去の地球磁場を復元できる。この方法は陸上についても適用され、過去の地球の極移動の復元などが行われた。これらの復元において、過去に大陸が移動したことや海底が拡大したことを仮定しなければ説明できないことが判明した。海底地形の研究の進歩から、その凸地形である海嶺や、凹地形である海溝などは知られていたが、これらの成因も関連付けて説明されることになった。
やがて、1960年代には、大陸移動説は海洋底拡大説(Seafloor
Spreading)として生まれ代わることになる。これによって、海洋底が若いことや、海嶺と海溝の成因や、大陸の成長などが説明できるようになった。さらに、球体である地球の表層に存在するプレートは球殻状であるが、その動きを幾何学的に説明するモデルも提出され、現実のプレートの運動を説明できることが明らかになった。そして、1968年頃に、プレート・テクトニクス(Plate Tectonics)という名称が世界的に使用されるようになった。これは、硬いプレート(大きいもので10数枚:厚さは100〜150キロメートル程度)が水平運動を行い、その弱部であるプレート境界において地下からの熱や物質が引き起こす地質現象を主に説明するモデルであり、大陸移動説−海洋底拡大説の後継モデルとして完成されたものである。特に地震と火山活動の成因を説明できることが重要である。
プレート・テクトニクスにおいて重要なのは、プレート境界である(表6)。
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離れあう (発散、Divergent) |
海嶺(Ridge) | 海洋地殻−海洋地殻 | 大洋の中央部の海底大活火山脈。 |
リフト(Rift) | 大陸地殻−大陸地殻 | 東アフリカの大地溝帯など。 | |
ぶつかりあう (収束、Convergent ) |
沈み込み帯(Subduction Zone) | 海洋地殻−大陸地殻 | 日本列島など。 |
造山帯(Orogenic Belt) | 大陸地殻−大陸地殻 | ヒマラヤ山脈など。 | |
すれ違う | トランスフォーム断層(Transform Fault) | (主に、海洋地殻−海洋地殻) | 主に、逆断層。 |
・プレート境界は、力学的弱部にあたるため、地下のエネルギー(熱)と物質(マグマなど)が地表に放出されやすい。従って、地震や火山活動が活発であり、地質学的に顕著な現象が起こっている。とくに、発散境界と収束境界で大規模な活動が発生している。 ・プレート境界以外で火山活動などが活発な場所は、ホットスポットと呼ばれることがあるが、プレートを貫いてマントルからのプルームが地表に達している場所である。ハワイ諸島が代表的な例である。 ・アイスランド島は、大西洋中央海嶺が地表に現れている場所であり、カーテン状噴火が特徴的である。 |
Hプルーム・テクトニクス
プレートテクトニクスはプレートの動きを中心とした理論であるため、プレートの厚さの100〜150km程度の深さまでを対象にしているが、現在は地球全体を対象としたモデルが求められている。その新しいモデルの代表的な例の1つがプルームテクトニクス(Plume Tectonics)である。プルームは、プレートテクトニクスにおいても用いられている概念であり、そこでは、プレートの下部にあるマントルからプレートを貫いて上昇し、地表に活火山を形成するものとされている。プレート内部で起こっている火山活動を説明するために考えられたもので、プレート運動に対して不動な火山源が存在することになり、時間の経過に伴って火山列が形成されることを説明できる。
プルームテクトニクスでは、マントルにおける超巨大なプルームの存在が最も重要であると考える。沈み込んだプレートは深さ700km付近(上部マントルと下部マントルの境界付近でもある)に溜まり、やがて一気にマントル下底へ落下する。これは比較的温度が低いためコールドプルームと名付けられている。これとバランスをとるために、他方で温度の高いホットプルームが上昇する。それから分岐した小規模のプルームの1つが、プレートテクトニクスでのプルームと考えることができる。このような全マントル規模の対流のようすは、地震波トモグラフィー(Seismic Tomography)などによる観測結果からも支持されている。