小林志保・藤原建紀・多田光男・塚本秀史・豊田利彦(2006):成層期の瀬戸内海における各態窒素・リンおよびケイ素と栄養塩元素比の分布.海の研究、15(3)、283-297.
『要旨
瀬戸内海における栄養塩濃度の変動機構を解明する上で重要な、成層期の栄養塩、クロロフィルおよび粒状態炭素・窒素の鉛直分布を、全域にわたる現地観測によって調査研究した。また、各元素間の比の場所的な違いを調べ、瀬戸内海における化学量論的(stoichiometric)研究の基礎資料とした。栄養塩の分布には成層強度の違いが反映され、海峡部では鉛直一様、灘部では上層で低濃度、下層で高濃度となっていた。さらに、成層強度が互いに同程度の灘部の中でも、光環境の違いによって、下層に栄養塩が蓄積される場合と、下層の栄養塩が植物プランクトンによって消費されて減少し、粒状態が多く蓄積する場合とに分別された。このように、夏季に灘部において高栄養塩水・貧栄養塩水が生じることは、秋季以降の瀬戸内海全域における栄養塩濃度の変動機構においても重要な役割を果たすと考えられた。一方、元素比の分布から瀬戸内海中央部(備讃瀬戸周辺:133.2゜E〜134.4゜E)に、窒素・リンに対するケイ素の比が大きい領域があることが示された。特に燧灘では、窒素制限もしくはリン制限のために、ケイ素が使われずに残って蓄積することが示された。また、播磨灘東部底層から明石海峡、および大阪湾西部底層では、硝化もしくは脱窒の中間産物である亜硝酸態窒素濃度が高く、硝酸態窒素濃度を上回る領域があった。元素比の比較により、紀伊水道および豊後水道の下層水は、外海水に近い性質を持っていることが示された。
キーワード:栄養塩元素比;C/N比;ケイ素;クロロフィル極大層;底層高濁度層;瀬戸内海』
1.はじめに
2.方法
3.結果
4.考察
4.1. 窒素・リンの分布と循環
4.2. 瀬戸内海におけるケイ素の分布
4.3. 外海における元素比との比較
5.結論
謝辞
References
Abstract
- 外海〔環境省の日本近海汚染実態調査(1990年7月)〕における水温と各種栄養塩(硝酸態窒素、リン酸態リン、溶存態ケイ素)の関係
[NO3] = -2.4 T + 45.2 (4<T<19) (r2
= 0.96)
[PO4] = -0.18 T + 3.6 (4<T<19) (r2
= 0.99)
[DSi] = -7.8 T + 135.4 (4<T<19) (r2 = 0.95)
- 播磨灘
[NO3] = -2.9 T + 74.6 (T<26) (r2
= 0.96)
[PO4] = -0.29T + 8.0 (T<27) (r2
= 0.85)
[DSi] = -7.6 T + 212.3 (T<27) (r2 = 0.86)
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