井上正澄(2006):石油の過去・現在・未来〜目から鱗の新資源論〜石油・天然ガスレビュー40(4)、81-91.


『近年、「石油生産のピークがいつ来るのか?」に関する「ピークオイル論争」が世界中で過熱している。日本でも、本誌を含めいろいろなところで、各専門家がそれぞれの立場から主張を述べている。しかし、これらの議論は、前提や定義が異なることもあり、必ずしもかみ合っておらず、一般には「ピークオイル」の真の姿がなかなか見えてこない。そこで本稿では、地質学を専門にする私なりに、石油の資源量・寿命・生産能力・原油価格などに関する総括を行い、巷で流布している「通説」の「落とし穴」について批判的に吟味を試みる。石油に関する議論を過去・現在・未来という形に要約し、通説(旧パラダイム)からの変換などを太字で示した。各議論の詳細は参考文献に列記した拙著論文・解説を参照していただきたい。かなり断定的に記しているが、もちろんこれは私なりの総括に過ぎず、建設的な反論は大歓迎である。
 石油(petroleum)は、天然ガス(以下単に「ガス」)も含めた炭化水素の総称を指すこともあり、成因・産状等の共通点も多いが、本稿では、原則として液体の油(oil)または原油(crude)を対象としている。また、特に断りのない限り、常温では流動性の極めて低いタールサンドなどの「非在来型石油(unconventional oil)」は除外した。
 なお、使用した諸統計には、NGL(コンデンセートなど天然ガス由来の液体の総称)の扱いなどの相違により1割程度の誤差があり、本議論も定量的には、同程度の精度のものである。』

1.石油の過去
 (1)石油の起源と年齢
 (2)油田のでき方
 (3)背斜説と地震探査=探鉱パラダイムの成立
2.石油の現在
 (1)新探鉱パラダイム=超ひも理論?
 (2)ピークオイルvs.チープオイル
 (3)ハバート曲線
 (4)ダブルタンクモデル
3.石油の将来
 (1)油田分布はフラクタル−炭鉱シミュレーションと資源量推定
 (2)ピークからプラトーへ
 (3)資源ピラミッドの罠と「オルバースのパラドクス
 (4)石油の寿命と原油価格予測
4.人類生き残りへの処方箋
 (1)成長神話からの脱却
 (2)再生可能な循環型へ
 (3)石油探鉱・技術開発への傾注
参考文献



図5 世界の石油生産能力と生産実績

井上(2006)による『石油の過去・現在・未来〜目から鱗の新資源論〜』から



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