平成20年3月28日
閣議了解
1.趣旨
経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006(平成18年7月7日閣議決定)及びエネルギー基本計画(平成19年3月9日閣議決定)に基づき、我が国への資源エネルギーの安定供給確保に当たり、特に重要と考えられる権益取得案件及び資源調達案件(以下、「重要な資源獲得案件」という。)を支援していくための関係機関を含む政府全体の指針として、資源確保指針を定める。これにより、政府は、重要な資源獲得案件の支援に当たり、外交を積極的に展開していくとともに、政府開発援助、政策金融、貿易保険などの経済協力との戦略的な連携を推進する。
2.重要な資源獲得案件
重要な資源獲得案件は、本邦企業が関連するものであって、石油、石炭及び天然ガス並びにウラン、レアメタルその他の鉱物資源に関し、それらの本邦への安定供給に資する案件として以下に掲げるものとする。
@探鉱又は開発に係る権益を取得するもの
A本邦需要家への供給に資する長期供給契約に係るもの
3.資源産出国による自国資源の国家管理の強化
近年、資源価格の高騰や資源ナショナリズムの高まりを背景に、資源産出国による自国資源の国家管理の強化が顕著となっている。
資源産出国において、その探鉱及び開発に係る権益が国又は国営企業により独占され、あるいは外国資本に対する参入規制が強化される事例が増加している。このような場合においては、本邦企業が探鉱又は開発に係る鉱区を取得するに際し、国営企業とパートナーシップを構築することを含め、当該資源産出国の政府又は国営企業と交渉することがより一層必要となる。このような政府又は国営企業との交渉には、より多くの場合において、当該事業を遂行する民間企業等に加え、政府が直接参加することが求められる。
また、開発・操業段階において、開発・操業の事業遂行が民間企業に委ねられていても、ロイヤリティや税の引き上げ、輸出・開発規制、付帯条件の義務付けなど、資源産出国の政府の関与が強化される事例が増加している。このような場合においては、契約の着実な履行を確保するため、当該政府に対し、多国間又は二国間の国際ルールに整合的な対応を要請することが政府に求められる。
4.重要な資源獲得案件に対する支援に係る基本方針
(1)二国間及び多国間外交による資源獲得支援
資源獲得案件に対する国の支援は、包括的かつ互恵的な二国間関係の構築及び多国間外交の推進と一体かつ不可分のものである。外交的配慮に加え、多国間及び二国間におけるルールの構築・遵守を通じ、信頼関係を醸成しつつ、資源産出国との間で首脳・閣僚レベルを始めとして種々のチャネルを活用し、対話を促進することは、資源確保の観点からも極めて重要である。
(2)資源産出国の情勢に応じた柔軟な対応
資源産出国と我が国との間の真に互恵的な関係を構築していくためには、資源産出国の情勢は国によって様々であることを踏まえ、次のように相手国の実情に応じた対応をすることが必要不可欠である。
@ 潜在的資源産出国に対する対応
まず、国内に存する資源が必ずしも十分に開発されていない潜在的な資源産出国との関係においては、(i)探鉱や開発調査、(ii)資源産出国との間の資源開発に係る協力事業、(iii)資源開発プロジェクト等への出融資・債務保証・貿易保険等を積極的に活用しながら、こうした国々において資源開発事業を行おうとする民間企業を後押しする必要がある。
A 具体的資源開発プロジェクトが進行している資源産出国に対する対応
次に、ある程度資源開発が進んでおり、本邦企業により開発プロジェクトが始められている資源産出国との関係においては、過去に締結した契約の着実な履行の確保等を通じて、既に着手されているプロジェクトの円滑な進行を実現する必要がある。そのためには、当該プロジェクトを融資・貿易保険等により支援している関係機関とも連携しつつ、相手となる資源産出国との良好な関係を維持・発展させていく必要がある。
B 自立的・安定的な経済発展を目指す資源産出国に対する対応
さらに、国内に存する様々な資源の開発を一つの契機として、自立的・安定的な経済発展を目指そうとしている国との関係においては、資源エネルギー・環境分野を始め、幅広い分野での技術協力や資金協力を含めた経済協力に加え、教育協力や文化交流等まで含めた多層的な協力関係の構築を目指す必要がある。具体的には、資源産出国ごとの事情を踏まえつつ、省エネルギー・新エネルギーの推進を含めたエネルギー協力、貿易・投資促進(経済連携協定等の締結を含む。)、産業等に係る政策立案支援、地域研究を踏まえた産業協力、人材育成支援、研究開発協力、中小企業振興、水資源開発、港湾・道路等のインフラ整備、教育・医療等に係る協力事業の実施、地域住民に対する支援、ミッションの派遣等人的交流の拡大を通じて、資源産出国との間で、総合的かつ戦略的な関係の構築・強化を図ることが必要である。
(3)関係機関による支援策や政府開発援助の活用
政府は、上記(2)に掲げる事業に応じて、国際協力銀行、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構、独立行政法人日本貿易振興機構、独立行政法人日本貿易保険等の関係機関の施策に加え、当該国への援助の基本方針を踏まえつつ、政府開発援助を活用して、資源産出国との総合的かつ戦略的な関係の構築・強化を図っていく必要がある。
5.基本方針実施に係る政府及び関係機関の戦略的な連携の確保
政府は、資源外交を展開するに当たり、政府一体となった取組を確保するため、政府内の連携の一層の強化に努めることとする。また、政府と関係機関は、重要な資源獲得案件を支援するに当たり密接に連携を図るよう努めるものとする。政府は、関係機関に対して資源外交に係る積極的な情報提供に努めるものとする。また、関係機関は、4.に掲げる基本方針及び資源外交の具体的展開を踏まえ、本邦企業による重要な資源獲得案件の実施を支援するものとする。
戻る