資源エネルギー庁長官官房鉱業課(監修)(2000)による〔『鉱業便覧 平成12年版』(246-247、294-295p)から〕


(ヘ)各国の鉱物資源備蓄制度の一覧
  備蓄目的 制度創設 備蓄対象品目 備蓄目標 備蓄実績 備蓄実施機関 備考
日本 経済安全保障備蓄
供給障害時に備える
1983年 ニッケル、クロム、タングステン、モリブデン、コバルト、マンガン、バナジウム 国内消費量の60日分 平成9年度末で46.9日分の備蓄を実施。(うち国家備蓄32.8日分、民間備蓄14.1日分) 国家及び民間
・金属鉱業事業団
・民間企業(特殊金属備蓄協会がとりまとめ)
・1998年4月〜6月にバナジウムの高騰時売却を実施。
アメリカ 戦略備蓄
国家非常事態に備える。
1939年 ニッケル、クロム、タングステン、コバルト、マンガン等、24品目(1998.9.30現在) 国家緊急時における必要量を充足する量(国内消費量の推定3ヶ年分) ・1998年9月30日現在約41億ドルの備蓄を保有。 国家
・国防総省(1988年から)
・1992年10月に冷戦構造の終結に伴い新備蓄目標を決定。
・根拠法令
戦略重要物資備蓄法
フランス 経済安全保障備蓄
特定地域からの供給途絶に備える。
1975年 (未公表)
銅、コバルト等を中心に輸入依存度の高い約30品目といわれるが、その詳細は備蓄制度を廃止した現在においても明らかにされていない。
(未公表)
国内消費の平均2ヶ月分を目標といわれるが詳細は明らかではない。
1975年に2.5億フランの債券を発行。備蓄内容は公表せず
1980〜81年に16億フラン、1982〜83年に18億フランの債券を発行。
備蓄内容は公表せず。
国家
・鉱産物国家備蓄管理委員会(産業再編対外貿易省、大蔵省)
・備蓄政策は国家機密に属するとし、内容は公表されていない。
・1997年1月1日のCFMPの解散に伴い、国家備蓄制度を廃止。
・1996年末までに全量売却。
・現在100%民間備蓄(行政指導はなく、民間の自発的行為で実施)
スウェーデン 国家安全保障備蓄
戦時の供給途絶に備える。
1938年 金属、医薬品、化学品等約2,500品目
金属はニッケル、クロム、タングステン、モリブデン、コバルト、マンガン、バナジウム、チタン等
国内消費の1年分 ・未公開 国家
・国防省国家緊急準備庁
・1987年備蓄スキームの見直し案が提出される。
・1987年6月経済安全保障備蓄廃止決定(1991年全量売却)。
・1998年度に備蓄物資の見直しが予定されている。
経済安全保障備蓄
平和時の供給障害に備える。
1977年 ニッケル、クロム、タングステン、モリブデン、コバルト、マンガン、バナジウム、チタン。
他に原油、石油製品、石油化学製品等。
国内消費の2〜3ヶ月分 ・未公開
スイス 国家安全保障備蓄
国家非常事態に備える。
1938年 燃料、食料品、薬品、化学品等多品目(鉄、鉄鋼、非鉄金属を含む)
非鉄金属としては、アルミニウム、銅、鉛、亜鉛、ニッケル、モリブデン、バナジウム等
国内消費の6ヶ月分(鉱物、金属) 不明 経済省経済供給管理庁
・食料備蓄の一部は国家。
・他は政府と民間との契約。
・根拠法令
国家経済供給連邦法
旧西ドイツ 経済安全保障備蓄 未創設 クロム、マンガン、バナジウム、コバルト、ブルーアスベスト 国内消費の1年分(うち国家8ヶ月、民間のランニングストック4ヶ月) ・未実施 備蓄協会
(政府と企業により設立予定)
・上記備蓄計画は政権交代により1980年以降事実上棚上げとなっている。
ノルウェー 戦略備蓄 1950年 鋼、鉛、錫、天然ゴム、爆薬、電池原料等 不明 ・約30百万クローネの備蓄を実施しているといわれている。
・当初計画は約2億クローネ。
・一部国家、一部民間  
フィンランド 国家安全保障備蓄
国家非常事態に備える。
1958年 非鉄金属(鉛、マンガン、錫、タングステン)、フェロアロイ、圧延金属製品、液体燃料、綿花、毛糸等約60品目。 国内消費の1〜2ヶ月分 不明 国家主体
・国家危機供給庁
The National Emargency Supply Agency
・根拠法令
国家戦略備蓄法
経済安全保障備蓄 1983年 鉱物原料、化学製品、電気設備、電子材料等 設定せず 不明 民間主体
・政府との契約により輸入業者が実施する。
 
韓国 需給・価格の安定 1967年 非鉄金属、合金鉄、天然ゴム、パルプなど原資材、施設資材、生活必需品等27品目。 設定せず 96年3月現在約2,500億ウォン 国家
・経済企画院
・調達庁
・1985年にレアメタルの備蓄を開始。

13.レアメタル備蓄制度
1.概要
(1)レアメタルは、鉄鋼業、機械工業、電子工業等我が国の重要産業にとって必須の重要資源であるが、我が国はそのほとんどを輸入に依存しており、輸入先も政情不安定な国を含め少数の国に限られる等供給構造は脆弱なものとなっている。
(2)このような状況にかんがみ、レアメタルの安定供給確保を図るため、昭和58年度からレアメタルの備蓄を推進している。
2.備蓄制度について
(1)スキーム
 @国家備蓄……備蓄事業の実施主体は金属鉱業事業団。
   長期に及ぶ緊急時に備え、国家的な安全保障の確立を目指して、国家備蓄を推進。
            (図:略)
 A民間備蓄……備蓄事業の実施主体は民間企業。
            (特殊金属備蓄協会がとりまとめ)
   短期の安定供給上の各種障害に備え、個々の企業における使用の実態に即応した自主的な民間備蓄を推進。
(2)備蓄対象物質
 7鉱種(ニッケル、クロム、タングステン、コバルト、モリブデン、マンガン、バナジウム)
(3)備蓄目標
  国家備蓄42日分、民間備蓄18日分 合計60日分
(4)備蓄計画
  現在(平成11年度末)の備蓄量は46.9日分であり、備蓄目標60日分について平成12年度を目途に積増しを行うこととしている。
区分 11年度末累計 12年度末目標
積増日数 国家備蓄 32.8日 42.0日
民間備蓄 14.1日 18.0日
合 計
累 計 46.9日 60.0日

(5)平成11年度予算
  平成11年度予算 平成10年度予算

一般会計

1,524,530千円 1,527,806千円

運用部資金借入

−億円 −億円

政府保証短期借入

−億円 −億円
(6)国家備蓄に要した資金額の累計(9年度末まで)
  307億円』



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