石油天然ガス資源の埋蔵量定義:分類および評価手法―SPE基準とSEC 基準との比較における基礎知識―  http://oilgas-info.jogmec.go.jp/report_pdf.pl?pdf=200707_043a.pdf&id=1758
 坂口隆昭氏による。石油・天然ガスレビュー、2007.7、41(4)、43-55p。


はじめに

『現在、埋蔵量の定義や分類に関する基準は、国や会社ごとに独自のものを使用しており、統一した視点で比較することができない状況となっている。このようななか、2004年にはRD/Shell社が独自の埋蔵量基準に従い、投資家に対して埋蔵量の過大申告を行っている問題が発生したことは、読者の記憶にも新しいことと思われる。
 Shell社の埋蔵量の過大申告は、修正の結果、2002年末と比較し、2003年末は全体の約3分の1が埋蔵量から外された結果となり、同社の油・ガス田の資産価値に少なからず影響を及ぼしただけでなく、同社に対する投資家の信頼が損なわれる事態につながった。
 石油業界では、このShell社の問題を機として埋蔵量の定義や評価手法のズレが意識されるようになり、今日ではSPE(Society of Petroleum Engineers、石油技術者協会)、WPC(World Petroleum Congress*、世界石油会議)、AAPG(American Association of Petroleum Geologists、米国石油地質家協会)、SPEE(Society of Petroleum Evaluation Engineers、石油評価技術協会)の4組織によって、世界統一基準を念頭に置いた新基準が策定されつつある。
 しかし、“埋蔵量”については、会計上の概念でとらえる基準や、技術的観点も含めた概念でとらえる基準が依然として存在している。そのため、何をもって埋蔵量とするのか、その定義を考えるためには、これまでの基準や概念についての理解を深めることが重要になる。
 そこで本稿では、現在、石油業界で広汎に使用されているSPE/WPC基準とSEC(U.S. Securities and Exchange Commission、米国証券取引委員会)基準について、その定義、分類および評価手法を比較し、その違いについて言及する。』
* 世界石油会議の英名はWorld Petroleum Councilであり、この組織による世界大会(3年に1回)をWorld Petroleum Congressと呼ぶ。

1.Reservesとは
2.SPEやSECにおける埋蔵量の分類と定義について
 (1)SPEとSECについて
 (2)SPE/WPC基準におけるReservesとResourcesとの分類および定義
 (3)SEC基準におけるReservesの分類および定義
 (4)Reservesの対象となる資源
3.Proved reservesの定義における実運用の違い
  〔Reasonable Certainty〕
  〔Commerciality〕
  〔Current Economic and Operating Conditions〕
4.Proved reservesに関する評価基準の違い
 (1)Net Reservoir評価に対する考え方
 (2)油ガス垂直方向における賦存範囲の決定基準
  ・LKH、圧力データの使用
  ・HKH
  ・マルチレザバーの場合
  ・坑井間で確認流体が異なる場合
 (3)Proved areaにおける決定基準
  ・Offsetルール
 (4)SEC基準のProved areaにおける震探データの利用
  ・Resolving the top of the reservoir
  ・Migration of the Seismic data
  ・Converting Time to Depth
  ・Discontinuous Data
  ・Seismically Derived Isocore
 (5)産出能力の確認
  ・米国メキシコ湾における産出試験未実施でのproved reservesの容認例
 (6)Proved reservesの算定例
 (7)決定論的手法と確率論的手法の取り扱い
  ・問題点
 (8)油ガス層シミュレーションの利用
 (9)EOR運用による可採埋蔵量:事例からの類推
5.Proved reservesに係る条件
 (1)市場の確保・売買契約の存在
 (2)確認・未確認埋蔵量での開発投資分担あるいは開発計画の代替案
6.おわりに
参考文献


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