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最終更新日:2017年3月1日
中華人民共和国主席令 第77号
「中華人民共和国環境影響評価法」は2002年10月28日に中華人民共和国第九回全国人民代表大会常務委員会第30次会議に通過した。ここに公布する。2003年9月1日より施行する。
中華人民共和国主席 江沢民
2002年10月28日
中華人民共和国環境影響評価法
(2002年10月28日中華人民共和国第九回全国人民代表大会常務委員会第30次会議通過)
目次
第一章 総則
第二章 計画の環境影響評価
第三章 建設事業の環境影響評価
第四章 法律責任
第五章 附則
第一章 総則
- 第一条 持続可能な発展戦略を実施し、計画と建設事業の実施後に環境に悪影響が発生するのを防止し、また経済、社会及び環境の協調のとれた発展を促進するため、本法を制定する。
- 第二条 本法で言う環境影響評価とは、計画と建設事業の実施後に発生する可能性のある環境影響について分析、予測及び評価を行い、環境への悪影響の防止と軽減の対策と措置を提起し、フォローアップ・モニタリングを行う方法と制度のことを指す。
- 第三条 本法第九条に規定する範囲内の計画を立てる場合、中華人民共和国領域及び中華人民共和国管轄のその他海域内で環境に影響のある事業を建設する場合、本法に従い環境影響評価を行うべきである。
- 第四条 環境影響評価は、客観、公開、公正で、計画或は建設事業の実施後の各種環境面要素及びそれが構成する生態系に与え得る影響を総合的に考慮し、製作決定に科学的な根拠を提供しなければならない。
- 第五条 国家は関係機関、専門家及び公衆が適切な方式にて環境影響評価に参加することを奨励する。
- 第六条 国家は環境影響評価の基礎データベースと評価指標システムの建設を強化し、環境影響評価方法、技術規範について科学的研究を行うことを奨励及び支持し、必要な環境影響評価情報の共有制度を策定し、環境影響評価の科学性を高める。
国務院の環境保護行政主管部門は、国務院関係部門と共に、環境影響評価の基礎データベースと評価指標システムを組織、建設及び完備させるべきである。
第二章 計画の環境影響評価
- 第七条 国務院関係部門、行政区を設置する市級以上の地方人民政府及びその関係部門は、作成する土地利用の関連計画、区域・流域・海域の建設と開発利用計画に対し、計画作成の過程で環境影響評価を行い、計画に関する環境影響の文章或は説明を作成する。
計画に関する環境影響の文章或は説明は、計画実施後に発生する可能性のある環境影響を分析、予測及び評価し、環境への悪影響の防止と軽減の対策と措置を提起し、計画のドラフトを構成する一部として計画承認機関に提出すべきである。
環境影響に関する文章或は説明がない計画のドラフトについて、承認機関は承認を行わない。
- 第八条 国務院関係部門、行政区を設置する市級以上の地方人民政府及びその関係部門は、作成する工業、農業、牧畜業、林業、エネルギー、水利、交通、都市建設、観光、自然資源開発の関連セクター計画(以下「セクター計画」とする。)に対し、セクター計画のドラフトを上申・承認する前に、環境影響評価を行い、当該セクター計画を承認する機関に対して環境影響評価報告書を提出する。
前項に列するセクター計画中の指導性計画については、本法第七条の規定に従い環境影響評価を行う。
- 第九条 本法第七条、第八条の規定に従い環境影響評価を実施する計画の具体的な範囲については、国務院の環境保護行政主管部門が国務院関係部門と共に規定し、国務院に報告する。
- 第十条 セクター計画の環境影響報告書は以下に列する内容を含むべきである。
1. 当該計画実施により発生する可能性のある環境影響の分析、予測及び評価
2. 環境への悪影響の防止と軽減の対策と措置
3. 環境影響評価の結論
- 第十一条 セクター計画の作成機関は、環境への悪影響が発生する可能性があり、また公衆の環境権益に直接関わる計画に対し、計画ドラフトの提出、承認の前に、論証会、公聴会を挙行する或はその他の形式により関係機関、専門家及び公衆の環境影響報告書ドラフトに対する意見を徴求すべきである。但し、国家が秘密保持を必要と規定する場合は除く。
セクター計画の作成機関は、関係機関、専門家及び公衆の環境影響報告書ドラフトに対する意見を真摯に考慮し、審査のため提出する環境影響報告書中にて意見採択或は負債宅の説明を付すべきである。
- 第十二条 セクター計画の作成機関は、計画のドラフト申請を批准のため報告する際、環境影響報告書を付して承認機関に送付して審査を受けるべきである。環境影響報告書が付されていない場合、承認部門は承認を行わない。
- 第十三条 行政区を設置する市級以上の人民政府は、セクター計画のドラフトを承認し政策決定を行う前に、人民政府が指定した環境保護行政主管部門或はその他の部門より、関係部門の代表者及び専門家が公正する審査小グループを組成し、環境影響報告書に対して審査を行う。審査小グループは書面にて審査意見を提出するべきである。
前項に規定する審査小グループに参加する専門家は、国務院の環境保護行政主管部門が規定、設立した専門家データベース中の関係専門家からランダム方式で確定すべきである。
省級以上人民政府の関係部門がセクター計画の承認に責任を負い、その環境影響報告書の審査方法は国務院の環境保護行政主管部門が国務院の関係部門と共に規定する。
- 第十四条 行政区を設置する市級以上の人民政府或は省級以上の人民政府関係部門がセクター計画を承認する際、環境影響報告書の結論及び審査意見を政策過程の重要な根拠にすべきである。
審査時にフ採択となった環境影響報告書の結論及び審査意見については、説明を行い、調査に備えるために保存すべきである。
- 第十五条 環境に重大な影響のある計画を実施後、(計画)作成部門は速やかに環境影響をフォローアップ評価を行い、評価結果を承認機関に報告すべきである。顕著な環境への悪影響が生じたことが発見された場合、速やかに改善措置を提起すべきである。
第三章 建設事業の環境影響評価
- 第十六条 国家は、建設事業の環境に対する影響の程度に基づき、建設事業に対する環境影響評価の実行につき分類、管理を行う。
建設機関は以下の規定に従い、環境影響報告書、環境影響報告表或は環境影響登記表を作成すべきである(以下「環境影響評価文書」とする。)。
1.重大な環境影響が発生する可能性がある場合、環境影響報告書を作成し、発生する環境影響について全面的な評価を行うべき。
2.軽度な環境影響が発生する可能性がある場合、環境影響報告表を作成し、発生する環境影響について分析或は特定の項目に関する評価を行うべき。
3.環境影響が非常に小さい場合、環境影響評価を行う必要はなく、環境影響登録表を作成すべき。
建設事業の環境影響評価の分類管理リストは、国務院の環境保護行政主管部門による制定、公布される。
- 第十七条 建設事業の環境影響報告書は以下の内容を含むべきである。
1.建設事業の概況
2.建設事業の周辺環境の現状
3.建設事業が環境に対し与え得る可能性のある影響の分析、予測及び評価
4.建設事業の環境保護措置及びその技術、経済の論証
5.建設事業の環境に対する影響の経済損益分析
6.建設事業の実施に対する環境モニタリングの提案
7.環境影響評価の結論
水土保持に関わる建設事業は、更に水資源行政主管部門による水土保持方案の審査、同意が必須となる。
環境影響報告表と環境影響登録表の内容とフォームは、国務院の環境保護行政主管部門により制定される。
- 第十八条 建設事業の環境影響評価は、計画の環境影響評価との重複を回避すべきである。
一つの総合的な建設事業の計画については、建設事業として環境影響評価を行い、計画としての環境影響評価は行わない。
環境影響評価を実施済の計画に含まれる具体的な建設事業については、建設機関はその環境影響評価の内容を簡素化してよい。
- 第十九条 建設事業の環境影響評価の委託を受けて技術サービスを提供する機構は、国務院の環境保護行政部門の考査、審査に合格後、資質証明書の交付を受け、資質証明書が規定する等級及び評価範囲に従い環境影響評価サービスに従事し、評価結果に責任を負うべきである。建設事業の環境影響評価に技術サービスを提供する機構の資質条件及び管理方法は、国務院の環境保護行政主管部門により制定される。
国務院の環境保護行政主管部門は、既に資質証明書を取得した建設事業に環境影響評価において技術サービスを提供する機構の名簿を公布すべきである。
建設事業の環境影響評価に技術サービスを提供する機構は、建設事業の環境影響評価文書を承認に責任を負う環境保護行政主管部門或はその他の関係承認部門との間に如何なる利益関係を有してはならない。
- 第二十条 環境影響評価文書に含まれる環境影響報告書或は環境影響報告表は、相応の環境影響評価の資質を有する機構により作成されるべきである。如何なる機関及び個人も、建設機関に対して、その建設事業の環境影響評価を実施する機構を指定してはならない。
- 第二十一条 国家が秘密保持を必要と規定する場合を除き、環境に重大の影響を与える可能性があり、環境影響報告書の作成が必要な建設事業について、建設機関は建設事業の環境影響報告書の申請前に、論証会、公聴会を挙行する或はその他の形式により関係機関、専門家及び公衆の意見を徴求すべきである。
建設機関は、申請する環境影響報告書に関係機関、専門家及び公衆の意見の採択或は不採択の説明を付すべきである。
- 第二十二条 建設事業の環境影響評価文書は、建設機関が国務院規定に従い承認権限を有する環境保護行政主管部門の承認のため報告する。関連セクター主管部門のある建設事業は、その環境影響報告書或は環境影響報告表についてセクター主管部門による予備審査を経て、承認権限を有する環境保護行政主管部門の承認のため報告されるべきである。
海洋工程建設事業の海洋環境影響報告書の承認は、「中華人民共和国海洋環境保護法」の規定に従い関連手続を行う。
承認部門は環境影響報告書受領日から60日、環境影響報告表受領日から30日、環境影響登録表受領日から15日の内に、それぞれ承認の決定を行い、書面にて建設機関に通知すべきである。
建設事業の環境影響評価文書の予備審査、審査、承認について如何なる費用も徴収してはならない。
- 第二十三条 国務院の環境保護行政主管部門は、以下の建設事業の環境影響評価文書について承認責任を負う。
1.核施設、秘密事業等特殊な性質の建設事業
2.省、自治区、直轄市に跨る建設事業
3.国務院による承認或は国務院が関連部門に承認を授権する建設事業
前項に規定する以外の建設事業の環境影響評価文書についての承認権限は、省、自治区、直轄市の人民政府が規定する。
建設事業が行政区域を跨いで環境に悪影響を及ぼす可能性があり、関連環境保護行政主管部門が当該事業の環境影響評価の結論に異議を有する場合、その環境影響評価文書は共同、直接の上級環境保護行政主管部門により承認される。
- 第二十四条 建設事業の環境影響評価文書の承認後、建設事業の性質、規模、場所、採用される生産プロセス或は汚染防止、生態破壊防止の措置に重大な変更が発生した場合、建設事業は改めて環境影響評価書類を承認のため申請すべきである。
建設事業の環境影響評価文書の承認日から5年超過した場合、当該事業の着工を決定する場合は均しくその環境影響評価文書を元の承認機関の審査のため改めて報告すべきである。元の承認部門は建設事業の環境影響評価書類の受領日から10日以内に書面で審査意見を建設機関に通知する。
- 第二十五条 建設事業の環境影響評価文書が法律に規定する承認部門の審査或は審査後の承認を経ていない場合、当該事業の承認部門はその建設を同意してはならず、建設機関は着工してはならない。
- 第二十六条 建設事業の建設過程において、建設機関は環境影響報告書、環境影響報告表及び環境影響評価文書承認機関の承認意見中に提起される環境保護対策措置を同時に実施すべきである。
- 第二十七条 事業建設、運転の過程で承認を経た環境影響評価文書に符合しない状況が生じた場合、建設機関は環境影響の事後評価を組織し、改善措置を採り、元の環境影響評価文書の承認機関及び建設事業承認部門に報告する。元の環境影響文書の承認機関も建設部門に環境影響の事後評価を行うよう求め、改善措置を採らせるようにすることができる。
- 第二十八条 環境保護行政主管部門は、建設事業の運転・生産或は使用後に発生した環境影響に対しフォローアップ検査を行い、発生した深刻な環境汚染或は生態破壊に対し、原因、責任を調査すべきである。建設事業の環境影響評価に技術サービスを提供した機構が事実と異なる環境影響評価書類を作成したことによる場合は、本法の第三十三条の規定に基づき法律責任を追究する。承認部門の職員の過失、不正行為のため法に従い承認されるべきでない環境影響評価文書が承認されたことによる場合は、本法の第三十五条の規定に基づき法律責任を追究する。
第四章 法律責任
- 第二十九条 計画の作成機関が本法規定に違反し、環境影響評価を行う際、詐欺或は過失行為により環境影響評価に重大な欠陥が発生した場合、直接責任を負う主管職員及びその他の直接責任を負う職員に対し、上級機関或は監察機関が法律に従い行政処分を行う。
- 第三十条 計画の承認機関が、法に基づき関連する環境影響の文章或は説明を作成すべきでありながら未作成となっている計画のドラフト、法に基づき環境影響報告書を付すべきでありながら未添付となっている計画のドラフトに対し違法に承認を行った場合、直接責任を負う主管職員及びその他の直接責任を負う職員に対し、上級機関或は監察機関が法律に従い行政処分を行う。
- 第三十一条 建設機関が法に基づき建設事業の環境影響評価文書を承認申請していない、或は本法第二十四条の規定に基づき改めて環境影響評価書類の審査或は承認を申請していない場合に着工した場合、環境影響評価書類の承認権限を有する環境保護行政主管部門は建設停止、期限内の手続補足を命令する責を負う。期限内に手続を補足できなかった場合、5万元以上20万元以下の罰金を課すことができ、建設機関で直接責任を負う主管職員及びその他の直接責任を負う職員に対し、法律に従い行政処分を行う。
建設事業の環境影響評価文書が承認されていない或は元の承認機関によって改めて審査同意を経ていないまま建設機関が着工した場合、環境影響評価文書の承認権限を有する環境保護行政主管部門は建設停止を命令する責を負い、5万元以上20万元以下の罰金を課すことができ、建設機関で直接責任を負う主管職員及びその他の直接責任を負う職員に対し、法律に従い行政処分を行う。
海洋建設事業の建設機関で前2項に列する違法行為があった場合、「中華人民共和国海洋環境保護法」の規定に従い処罰する。
- 第三十二条 建設事業が法に基づき環境影響評価を実施すべきでありながら未評価或は環境影響評価文書が法に基づき承認を経ていないまま審査部門が事業建設を承認した場合、直接責任を負う主管職員及びその他の直接責任を負う職員に対し、上級部門及び監察機関は法律に従い行政処分を行う。犯罪行為となる場合、法律に従い刑事責任を追究する。
- 第三十三条 建設事業の環境影響評価の委託を受け技術サービスを提供する機構が、環境影響評価業務において責任を果たさない或は詐欺行為を行い、環境影響評価文書に実際との乖離を生じせしめた場合、環境影響評価資質を授与する環境保護行政主管部門はその資質等級を引き下げる或は資質証明書を剥奪し、委託料金の1倍以上3倍以下の罰金を課す。犯罪行為となる場合、法律に従い刑事責任を追究する。
- 第三十四条 建設事業の環境影響評価文書の事前審査、審査、承認する部門が審査において費用を徴収した場合、上級部門或は監督機関は返却を命令する責を負う。情況が過度な場合、直接責任を負う主管職員及びその他の直接責任を負う職員に対し、法律に従い行政処分を行う。
- 第三十五条 環境保護行政主管部門或は他の部門の職員が私益追求・詐欺、職権濫用、職務怠慢により違法に環境影響評価文書を承認した場合、法律に従い行政処分を行う。犯罪行為となる場合、法律に従い、刑事責任を追究する。
第五章 附則
- 第三十六条 省、自治区、直轄市人民政府は、各地の実情を踏まえ、管轄区内の県級人民政府が作成する計画に対し、環境影響評価を行うよう求めてもよい。具体的な方法は、省、自治区、直轄市が本法の第二章の規定に基づき制定する。
- 第三十七条 軍事施設の建設事業の環境影響評価方法は、中央軍事委員会が本法の原則に従い制定する。
- 第三十八条 本法は2003年9月1日より施行する。
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