安井ほか(2002)による〔『レアメタル資源の供給と需要の動向に関する一考察』(723p)から〕


Abstract

1.はじめに
 レアメタル資源は、今日の社会生活に必要不可欠なものであり、諸産業や最先端技術分野に対する貢献は多大である。しかし、その重要性にもかかわらず資源確保に関する将来展望は必ずしも明瞭ではない。一般にレアメタルの地殻存在度は低く(最大のチタンで0.44%)、それぞれ特定種の岩石中に各種鉱床として胚胎している。またその岩石から構成される地質体も世界規模で見た場合に偏在する傾向があることから、レアメタル自体も偏在性が高いことが懸念される。したがって、その主要供給国での不測の事態(自然・社会災害や政情不安など)による供給途絶や遅延が起こった場合、日本国内の関連産業にも大きな経済的影響を及ぼすことが予想される。また、レアメタルは、ベースメタルの副産物であるうえ原鉱石からの分離・抽出・精製が困難な元素が多い。さらに産業廃棄物中にも比較的高濃度で残存している場合がある。したがって、その需要動向の将来性次第では、国内外での資源探査の促進や回収率の向上が図られたり、新たなリサイクル技術開発を要するレアメタルが特定されるものと考えられる。
 そのためには、レアメタルに関する一連の流れ(マテリアルフロー)のうち最も上流側、すなわち過去から現在までのレアメタルの需給動向を把握して、その経年変化を検討したうえで今後の将来動向を予想する必要がある。例えば供給動向からは今後の資源的に逼迫する可能性を明らかにする必要がある。そして需要動向に関しては需要量だけでなく各用途の将来性を盛り込むことが望ましいと考えられる。我々は現在、主として文献資料にもとづいてたレアメタルの需給や選鉱・製錬に関するデータベースの構築を進めており、これまでいくつかの予察的報告を行っている(藤田・柴山、2000;竹村ら、2002;安井ら、2002)。本稿では、このデータベースに基づき四十種余りのレアメタル(白金族と希土類元素はそれぞれ一括して扱う)の需給に関する種々の検討を行った。すなわち、各レアメタルの世界生産量や埋蔵量からその偏在性や可採年数を明らかにし、国内での需要動向に関して用途例も含めた若干の考察を試みた。
 本稿で扱うデータは、主としてU. S. Department of the Interior-Bureau Mines(1979-1999)、通商産業省資源エネルギー庁長官官房鉱業課(1988-1999)および吉田(1992)に基づく。これらに掲載されている生産量および埋蔵量は、しばしば地金量ではなく鉱石量として表されるため、実際のレアメタル生産・埋蔵量そのものとして一義的に扱うことは困難である。さらに、これらの消費(生産)規模はレアメタルごとに大きく異なる。そこで本稿では、上記の問題を回避するために、必要に応じて指数を用いて検討を進める。』

2.レアメタルの供給動向
 2・1 偏在度
 2・2 可採年数
 2・3 生産量
 2・4 埋蔵量
3.レアメタルの需要動向:国内での例
 3・1 アンチモンでの例
 3・2 ビスマスでの例
 3・3 その他の例および考察
4.結語
謝辞
引用文献


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