朴ほか(2002)による〔『コバルト・リッチ・クラストのポテンシャル比較手法の開発』(641-642p)から〕


Abstract

1.緒言
 マンガン団塊、コバルト・リッチ・クラスト、海底熱水鉱床などの深海底鉱物資源は21世紀の人類に残された最後の鉱物資源ともいわれ、技術上未解決の困難な課題を抱えながらも広い関心が寄せられ続けている。このうち、マンガン団塊とコバルト・リッチ・クラストは、回収対象と想定されているコバルト、ニッケル、銅がオーバーラップし、競合関係にある(Mero, 1965; Hirt et al., 1988; Cronan et al., 1991)。このため、どちらかの開発が先行し、もう一方はかなり遅れてしか利用されないことが十分予想される。
 初めて開発の可能性のある深海底鉱物資源として注目を集めたマンガン団塊(Welling, 1981; Kaufman et al., 1985; Bath, 1989)は、通常の鉱物資源とは異なり、選鉱処理を施さず、直接製錬を行うことが考えられている(Agarwal et al., 1979; Hubred, 1980; Black, 1982)。このため、選鉱プロセスにおける有用成分の損失はないものの、採鉱した全量を海上輸送して製錬処理するため、大規模な輸送設備と製錬設備が必要であり、輸送費と製錬費増加による経済性への影響が予想される。一方、コバルト・リッチ・クラストは、マンガン団塊より浅い海底に存在しているため、採鉱コストにおいて有利である。また、価格が高いコバルトの含有率がマンガン団塊の平均値より、約3倍高いもの(0.8%以上)が見つかっており(Clark et al., 1984; Pichocki and Hoffert, 1987)、その経済性が注目されている(Halbach et al., 1982; Manheim, 1986)。しかし、基盤岩にクラスト下部が密着しているため、クラスト部だけを選択的に採掘することは技術上困難で、採掘された鉱石に基盤岩が混入することは避けられないと考えられている(Hein et al., 1985; Yamazaki et al., 1992)。このため、基盤岩混入をできるだけ少なくして採掘すること、また、混入した基盤岩を除去する選鉱プロセスを導入することがコバルト・リッチ・クラストの開発システムには求められることになる。しかし、これらに必要なコストによっては、前述のコバルト・リッチ・クラストの有利さが失われてしまう可能性も否定できず、コバルト・リッチ・クラストの開発を検討する際には、この点に関する技術的・経済的検討を十分行う必要がある。
 コバルト・リッチ・クラストが鉱物資源として注目され、調査が開始されたのはマンガン団塊よりかなり後であったため、技術的・経済的検討を行うために必要な情報の蓄積はまだ十分とはいえない状況である。このため、本研究では、コバルト・リッチ・クラストとマンガン団塊の開発の可能性を相対的に比較し、コバルト・リッチ・クラストの経済性に影響を与える要因の抽出と分析を行うことにした。具体的には、経済的検討に用いるモデルをコバルト・リッチ・クラストとマンガン団塊それぞれについて構築するが、モデル中で用いる開発システムには、基本的に同じ方法を採用し、位置、水深、品位などのパラメータと、採掘難易、選鉱処理などに技術的な相違点を入力する。その結果として、それぞれの特徴を反映した出力が得られ、比較・分析が可能となる。経済的検討に用いるモデルとしては、過去に実施されたマンガン団塊(Andrews et al., 1983; Hillman and Gosling, 1985; Herrouin et al., 1989; Soreide(oはoに/) et al., 2001)やコバルト・リッチ・クラスト(Hawaii DPED, 1987)のフィージビリティスタディで用いられたものと同様のものを構築し、金利・税制なども考慮に入れて経済性の評価を実施する。』

2.従来の研究
3.ポテンシャル評価手法の検討
 3・1 マンガン団塊との相対比較
 3・2 評価基準生産量
 3・3 地形・地質条件
 3・4 評価モデルのシステム構成
  3・4・1 採鉱システム
  3・4・2 選鉱システム
  3・4・3 海上輸送
  3・4・4 製錬システム
 3・5 技術パラメータの仮定
 3・6 経済パラメータの仮定
  3・6・1 開発スケジュール
  3・6・2 スケールファクター
  3・6・3 原価要素の設定
   (1) 変動費
   (2) 減価償却費
   (3) 修繕費
   (4) 人件費
   (5) 損害保険料
   (6) 固定資産税
   (7) 金利
   (8) 一般管理費
   (9) 工場管理費
   (10) 運転用消耗品費等の雑費
   (11) 消費税
   (12) 法人税、地方税
  3・6・4 金属価格
4.比較結果
 4・1 基本的収益判断
   (1) 資本回収期間(Payback Periods)
   (2) 純現在価値(Net Present Value)
   (3) 内部収益率(Internal Rate of Return)
 4・2 選鉱方法の違いと基盤岩混入率による影響
 4・3 選鉱場所についての検討
5.手法利用および改良についての考察
6.結語
引用文献


戻る