新熊ほか(2000)による〔『銅の価格予測と近未来における発展途上国の増産計画の影響』(889p)から〕


Abstract

1.はじめに
 本研究は、次の3つのことを目的としている。第一に、銅について将来価格の予測方法を新たに提示する。第二に、その将来価格の予測方法を用いて、2000〜2002年の銅価格を予測する。第三に、得られた予想価格をもとに、チリをはじめとする発展途上国における2000〜2002年の大規模な増産計画を評価する。
 従来のメタル市場モデルには、Desai(1966)やFisher et al.(1972)に代表されるように、在庫や在庫の増減など需要と供給のギャップを反映する要素によって価格動向を説明したものが多い。実際、図1(略)に示すように、70年代、80年代までの銅価格については、前年の在庫水準によっておおまかな説明が可能である。ところが、90年代以降の価格動向は、それによってはうまく説明ができない。これは、80年代以前と90年代とでは在庫のもつ重要性の度合いが違うことによるものと考えられる。すなわち、80年代までは、ベトナム戦争、石油ショックなどの有事に備えて在庫が重要であった。ところが、その後、アメリカが銅の戦略的ストックを暫定的に減らしていったことに典型的に表われているように、有事に備えた在庫の重要性が薄れ、同時にそれがもつ価格影響力も弱くなったのではないかと考えられる。したがって、近未来の価格予測を行うには、需給ギャップ以外のモデルが必要であり、本研究では、新たな銅市場モデルが提示される。』

2.銅市場の供給関数および需要関数の推定
3.可能供給量の導出
4.将来価格の予測とチリをはじめとする発展途上国の増産計画の戦略的意図
5.おわりに

引用文献(関係分のみ)
3) Desai, M. J. : Econometrica, Vol. 34, p. 105-134, (1966)
5) Fisher, F., Cootner, P. H. and Baily, M. N. : The Bell Journal of Economics and Management Science, Vol. 3, p. 568-609, (1972)』



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