縄田(2001)による〔『1990年代のベースメタルの生産量と価格の分析について』(245p)から〕


Abstract

1.はじめに
 1990年代におけるアルミニウム、銅、鉛、ニッケル、スズ、亜鉛の6種の主要なベースメタルの世界の生産量(world refined production)についてみると、90年代前半の地金生産量は、世界経済の発展にもかかわらず低迷しており、アルミニウム、銅、ニッケル、亜鉛の生産量はほぼ横ばいであり、鉛、スズについては生産量が減少している。しかしながら、90年代後半は、アジアに端を発する通貨危機等による国際経済の混乱にもかかわらず、これらの地金生産量は増加し、1999年の地金生産量は、アルミニウム、銅、ニッケル、亜鉛は1989年に比較し2〜3割増加、鉛、スズに関しても1989年を上る水準になっている。このように、1990年代を通じて、ベースメタルの生産量は増加傾向にあるものの、数年といったオーダーでは、必ずしも世界経済の動向とは一致していない。
 一方、米ドルベースでのこれらの地金価格は、1990年前半は下落し、1995年前後に一時回復したものの、それ以後、国際通貨危機等の影響もあり、1998年まで下落した。それ以後は、国際経済の回復により、上昇傾向に転じたものの、2000年2月時点でも1989年を下回る水準となっている。
 地金生産量やその価格は、将来の需要予測やそれに基づく供給側での投資計画を立てるといった点で重要であるが、国際的にも十分な実証研究が行われているとはいい難い。Pindyck(1993)は現在価値モデルを用いて、また、Schwartz(1997)は、ファイナンスで標準的に使われるモデルを用いて銅価格の分析を行い、さらに、生産のための投資の理論分析を試みている。しかしながら、価格および生産量の関係や国際経済との関連については、分析が行われていない。
 ここでは、London Metal Exchange(LME)で取引されているアルミニウム、銅、鉛、ニッケル、スズ、亜鉛の6種の地金生産量および価格についての定量的な分析を行う。旧ソ連を中心とする旧共産圏諸国の崩壊、さらにはこれらの国々が国際的な市場経済へ組み込まれたため、ベースメタルの分野における需給構造も、1990年以前とは大きく変化していると考えられる。また、1990年以前のGDP等のデータをそれ以後と整合性のある形で得ることができない。このため、1990年代における分析に限った。
 本論分では、まず、1990年代の地金生産量および価格の推移について説明する。ついで、同期間の世界経済の動向について説明し、世界のGDPと生産量・価格の関連について定性的な分析を行う。最後に、回帰モデルを使い、これらの定量的な相互関係について実証的に分析を行う。』

2.世界経済の動向と地金生産量・価格の推移
2.1 地金生産量の推移
2.2 価格の推移
2.3 世界経済の動向
2.4 世界のGDPと地金生産量
2.5 世界のGDPと価格
3.回帰モデルによる地金生産量・価格の分析
3.1 地金生産量
3.2 価格
4.需給構造のモデル
5.まとめおよび今後の展望
謝辞

引用文献(関係分のみ)
6) Pindyck, R.S. : Present Value Model of Rational Commodity Pricing, Economic Journal, Vol. 103, p. 511-530, (1993)
7) Schwartz, E. S. : "The Stochastic Behavior of Commodity Prices: Implication and Hedging," Journal of Finance, Vol. 52, p. 923-973, (1997)』



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