岩生(1977)による〔『日本の鉱物資源*』(87-88p)から〕


非金属鉱物資源−イオウ・肥料原料等を除いて−

岩生周一

1 “非金属鉱物資源”の種類
を いわゆる“非金属鉱物資源”という用語は我が国ではごく普通に使われ、金属光沢を示さない鉱物を主体とするもの意味している。しかし、“金属鉱物資源”に対するこの区別がそれほど本質的でないことは論をまたない。また、用途別の原料として見た場合、“金属”“非金属”の2つの資源の間には共通する部分も少なくない。我が国では“非金属鉱物資源”の大部分は戦後初めて鉱業法鉱物に加えられ、それまでは“金属鉱物資源”並みの法的保護と法的規制とを受けなかったのであるが、現在はそのような差別はない。外国ではIndustrial Mineralsという言葉がしばしば用いられ、我が国でも工業用原料鉱物という表題の下に取りまとめられた例もいくつか見られる。ここにいう工業には、窯業、化学工業、土木建築工業などを含む。金属原料となる鉱物とは截然と区別されているようであるが、たとえばボーキサイト、クロム鉄鉱など、金属原料でもあり、窯業原料でもあり、分類上はなはだ都合の悪いものもある。工業技術の進歩により、鉱物を用途別に分類することは次第にその意味が薄れつつある。このような理由から、最近では資源としての鉱物を“金属”“非金属”の区別なくアルファベット順に並べ記述する傾向にある。
 このような問題はいちおう残したまま、輸入原料を含め、我が国で通常取り扱っている“非金属鉱物資源”のおもなものをあげると次の通りである(表1)。
表1 非金属鉱物資源の種類
珪酸質  “珪石”…… ペグマタイト石英、脈石英
珪化火山岩(細粒石英(宇久須など)、蛋白石(別府白土など))
軟珪石……チャートのやや風化したもの
炉材珪石……チャートと脈石英との複合体
珪砂……珪砂、蛙目珪砂
粘土質、高アルミナ質 カオリン質粘土……カオリン、ハロイサイト
セリサイト質粘土……セリサイト、陶石
ベントナイト……モンモリロナイト
ロー石質粘土……パイロフィライト(石英、カオリン、セリサイトなどを伴う)
ダイアスポア……(コランダム、パイロフィライトなどを伴うことがある)
シリマナイト、カイアナイト
ボーキサイト
長石質 長石、アプライト、陶石の一部
石灰質 石灰石、ドロマイト
マグネシア質 マグネサイト、ドロマイト、かんらん岩
クロム鉄鉱、石こう、蛍石他、ホウ素鉱、リン鉱、カリ・ソーダ原料鉱物、イオウ原料鉱物、ジルコン、チタニウム原料鉱物、重晶石、黒鉛、石綿、フッ石

 土木建築に用いられる“砂利”、軽量骨材の原料として用いられる浮石、ひる石、頁(けつ)岩なども広義のIndustrial mineralに属する。』

2 原料処理に見られる特徴
3 我が国における生産額
4 自給率と輸入
5 埋蔵量から見た特徴
6 原料の変遷と問題点の例
(1)代替原料(例)
(2)日本的特徴をもつ原料(例)
(3)輸入先の偏在(例)
(4)品種別輸入先(例)
(5)技術の変遷と新しい資源(例)

 石こう
 海水マグネシア
 F-リン灰石
(6)新しい材料(例)
7 結語
謝辞
おもな参考文献



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