緒方(2001)による〔『石炭層メタンの採掘技術・利用目的の現状と将来展望』(236p)から〕


Abstract
1.まえがき
2.化石資源の残存埋蔵量
2.1 石油
2.2 天然ガス
2.3 石炭

3.新メタン資源
 新メタン資源として非在来型天然ガスが注目されており、その種類と特性は表1の通りである5)-7)。これらの中で特に注目されているのが「深層天然ガス」、「メタンハイドレイト」および「コールベッドメタン」の3種類である。日本国内では特に「メタンハイドレイト」が注目されている。またこれらのガスに関して、(財)エネルギー総合工学研究所が調査研究を行い、平成4年にその報告書7)を出しているが、その概要は次の通りである。
表1 非在来型天然ガスの種類とその特性

種   類

起源、賦存状態等
コールベッドメタン Coal Bed Methane
* Coal Mine Gas
・石炭の炭化に伴って生成されたガス
・石炭内に自由及び吸着状態で包蔵
ガスハイドレイト
(メタンハイドレイト)
Gas Hydrate
Methane Hydrate
・深海等の堆積物中の有機物
・水分子とメタンの包接体(氷状)
深層天然ガス
 ・非生物起源ガス
 ・沈み込む帯生物起源ガス
 ・大深度堆積盆ガス

Abiogenic Gas
Subducted Organic Origin Gas
Deep Sedimentary Basin Gas
*地下数十kmに賦存
・地球誕生に起源したガス
・海洋堆積物有機物由来ガス
・下方に屈折した深い堆積盆堆積岩ガス
タイトフォーメイションガス
(タイトサンドガス)
Tight Formation Gas
Tight Sand Gas
・低浸透性白亜紀砂岩中に賦存
高圧水溶性ガス Geopressured Zone Gas ・地下深部の異常高圧水層中に水溶性ガスとして賦存
オイルシェールガス
(オイルサンド)
Oil Shale Gas
Oil Sand Gas
・砂岩や頁岩中に石油として賦存
バイオマスガス Biomas Gas ・各種生物の腐敗による発生メタン
スワンプガス Swamp Gas ・熱帯、亜熱帯の湖沼での発生メタン

(1)深層天然ガス:地球深部に賦存するとされ、いろいろな起源が推測されている。しかし、実体は未だ把握されていないし、開発等の対象にもなっていない。
(2)メタンハイドレイト:永久凍土の中にシャーベット状の水和物の形で存在するメタンガスがよく知られている。日本では相模湾から四国沖にかけての南海トラフ内の他、北海道のオホーツク海、奥尻島周辺、苫小牧沖周辺の大陸棚下に大量に賦存するとされ、その埋蔵量は約2兆m^3に達するとの説もある。なお、これらは物理探査による地質構造上での推測であり、より詳細な物理探査やボーリング調査等での確認が待たれるところである。
(3)コールベッドメタン:植物が高温、高圧で石炭化される段階で生成されるメタンが石炭の中に埋蔵されたガスである。したがって、その埋蔵量は石炭の埋蔵量に比例するが、石炭の炭化の程度、火成岩の貫入の影響、石炭に対する吸着力が大きい二酸化炭素の存在等の種々の要因に影響される。国内での石炭の生産は約370万t/年に減ってしまったが、石炭そのものは未だ大量に賦存しているので、この純国産の化石資源である石炭およびコールベッドメタンをいかに開発し、利用するかが今後の大きな課題である。なお、コールベッドメタン(CBM:Coal Bed Methane)は石炭層メタン(CSM:Coal Seam Methane)、石炭層ガス(CSG:Coal Seam Gas)、炭鉱ガス(CMG:Coal Mine Gas)等いろいろな呼び方がされているが、本稿では石炭層メタン(CSM)と呼ぶことにする。』

4.石炭層メタン
4.1 石炭層メタンの成分
4.2 石炭層メタンの埋蔵量
4.3 石炭層メタンが環境に与える影響
4.4 石炭層メタンの開発・利用の各国の現状
4.4.1 米国の場合
4.4.2 オーストラリアの場合
4.4.3 中国の場合
4.4.4 日本の場合
4.4.5 その他の国の場合
5.石炭層メタンの採掘技術
5.1 石炭層メタンの採掘技術の現状
5.1.1 石炭および石炭層の物性や地質学的特性等の評価
5.1.2 最適採掘システムの選定
(1)坑井掘削技術
(2)スティムレーション(坑井刺激)技術
5.2 石炭層メタンの採掘技術の長期展望
6.石炭層メタンの利用目的
6.1 石炭層メタンの利用目的の現状
6.2 石炭層メタンの新しい利用法
7.あとがき

引用文献(関係分のみ)
5) 藤田和男:資源と素材、Vol.110、No.12、p.919-926、(1994)
6) 浅川 忠:石油技術協会誌、Vol.60、No.2、p.128-135、(1996)
7) (財)エネルギー総合工学研究所:非在来型天然ガスに関する調査報告書、p.255-368、(1992)



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