西岡(1990)による〔『太陽の化石:石炭』(5-6p)から〕


1.3 石炭の根源植物とはどんなものか
 石炭となる根源植物の堆積時期が古生代シルリア紀から新生代第三紀に亘っていることを述べましたが、その間に植物は大きく進化変容しました。そのため外国炭(欧米炭)と日本炭とでは、その根源植物に大きな差があります。
 シルリア紀といえば、植物が水中生活から陸上生活へとその生活の場を広げた時期に当たります。最初の陸上植物はシダ植物とされ、デボン紀を経て石炭紀から二畳紀にかけてシダ類植物の最盛期を迎えるのです。欧米炭はこの時期に堆積した封印木、ろ木、鱗木類などの隠花植物を根源植物にしております。とくにデボン紀中期からジュラ紀に亘って生存した裸子植物の種子シダ類は、巨大な植物で、葉と幹はシダ類に似ているが葉の縁に種子が形成され、種子には胚珠が発育しているもので、石炭紀に繁茂し主要な石炭の根源植物になっています。
 石炭紀後期から現在見られるような植物が次々と現れてきます。種子シダ類からソテツ類が分化し、封印木、鱗木類の仲間からイチョウ類やマツ類が分化して裸子植物の時代に移ります。中生代の三畳紀、ジュラ紀、白亜紀の地層にはこれらの化石が多く発見されます。中生代に繁茂した植物を根源とする石炭も欧米に見られます。(第1・2図:略)
 中生代末期から新生代にかけて、地球上の気候帯や四季の区別がはっきりしてまいります。このような気候条件のもとでは、種子が果実の中に隠されている被子植物が他の植物群より有利に生存できます。日本炭の根源植物はこうした被子植物、それにマツ類などの裸子植物類を含む顕花植物を主としているとされています。
 これで欧米の石炭と日本の石炭とは堆積年代が大きく異なるのに加え、植物進化の過程とあいまってその根源植物をも異にしていることが理解頂けたと思います。』