黒沼(1992)による〔『ウラン資源の現状と今後の展望』(137-138p)から〕


Abstract
1.はじめに

2.ウラン鉱床
 レッドブック(1991)は世界のウラン鉱床を、その地質学的環境に基づいて15の鉱床タイプに分類している。このうち、主要な鉱床の特徴は以下の通りである。
@不整合関連型鉱床
 多くのウラン鉱床が発見されているカナダ、サスカチワン州のアサバスカベーズン地域は、ハドソニアン造山運動を受けた変成岩類からなる基盤岩を、450×250kmの長円形の盆状に分布する中部原生代の未変成堆積岩が不整合に覆う。
 鉱床の主要部は、これらの堆積岩類と下位の変成岩類との不整合面付近に、かつ断層に沿って鉱脈状や塊状、角礫状、鉱染状に産する。鉱床が不整合面に密接に関連していることからこの名称で呼ばれるようになった。
 Ni、Co、As、Au等を伴う多元素鉱床の場合とウランだけの単味の鉱床とが知られている。鉱床の近傍にはシリカの溶脱と粘土化等の熱水変質が顕著である(Hoeve and Quirt, 1987)。
 代表的な鉱床はカナダ、サスカチワン州のキーレイク鉱床やシガーレイク鉱床(Bruneton, 1987)等、高品位(0.3〜10数%U3O8)で、かつ大規模(最大埋蔵量200,000tU3O8)で、生産コストが安いことが特徴である。この他、この種の鉱床としてオーストラリア北部準州のナバレク鉱床等が知られている。
 市況が低迷している現在、新規に開発が計画されている鉱床は殆どがこの種の鉱床である。
A砂岩型鉱床
 砂岩型ウラン鉱床は、陸成植物が現れたシルル紀以降の河川ないし湖沼に堆積した淘汰のよい細〜中粒の未変成砂岩層中に存在する。
 鉱床は母岩の層理面に、ほぼ平行に産する平板型と、泥岩で上下を挟まれた砂岩中に三日月型に層理に斜交するように酸化帯と非酸化帯境界面に沿って産するロールフロント型とがある。代表的な鉱床は、米国ニューメキシコ州グランツ地域の鉱床群やニジェールの鉱床群である。
 1948年から1980年にかけて約29万トンのウランを生産し、当期間の西側諸国の約46%うぃ生産した(Finch and Davis, 1985)。この種の鉱床の平均品位は0.2〜0.4%U3O8で、前述の不整合関連型鉱床より平均品位が劣るために低迷するウラン市況のもとでは競争力に乏しく、操業中止や縮小に追い込まれている。この傾向は米国で著しく In situ リーチングによる採鉱法を採用している鉱山が生き残っているに過ぎない現状である。
B石英礫岩型鉱床
 南アフリカのウィットウォータースランドベーズンは、始生代の基盤岩上に扇状地やデルタ等の堆積岩が数回のサイクルで堆積した北東方向480km、北西方向180kmの堆積盆である。鉱床はこれらの堆積岩のうち、よく円磨された石英礫を多く含む礫岩中にウラン鉱物の細かい粒子として、金や黄鉄鉱等の重鉱物とともに礫岩のマトリックス中に濃集してできたものである(Pretorius, 1981)。
 ウィットウォータースランドベーズンでは、金の副産物として採掘され、1952年からこれまでに13万トン以上のウランを生産し、主要なウラン生産センターの一つであるが、金価格の低迷と採掘条件の悪化により、近年操業を中止する鉱山が相次いだ。
 カナダのオンタリオ州エリオットレイク地域にも同種の鉱床があり、1956年以来重要なウラン生産センターとしてその地位を保ってきたが、平均品位が0.1%以下で生産コストが割高であり、長期契約の終了する1996年でその歴史を閉じる事となった。
Cその他の鉱床
 この他に資源的に重要なものとしては、オーストラリアのオリンピックダム鉱床(角礫岩複合鉱床)、ナミビアのロッシング鉱床(貫入岩型鉱床)、米国アリゾナの鉱床群(ブレッチャーパイプ型鉱床)、及び米国フロリダのリン灰土に伴うウラン(リンの副産物として生産される)等があげられる。』

3.世界のウラン資源量と生産能力
4.我が国のウラン資源確保活動の経緯と現状
5.今後のウラン資源の探査・開発への提言
謝辞
文献



戻る