資源エネルギー庁(編)(2001)による〔『エネルギー2001』(133-136p)から〕


(3)核燃料サイクルの仕組みと意義
@核燃料サイクルの意義

 鉱山から採掘されたウラン鉱石は、様々な工程を経て核燃料に加工され、原子力発電所で使用される。
 その後、使い終わった燃料を再処理して、燃え残りのウランやプルトニウムを取り出し、再び核燃料に加工して原子力発電所の燃料として使用。この流れを核燃料サイクルという。
 この核燃料サイクルを確立する意義は、主として次の3点である。
@-1 エネルギー・セキュリティの確保
 資源に乏しい我が国としては、エネルギーの安定供給を確保することが重要である。原子力は本来、供給安定性や価格安定性に優れたエネルギー源であるが、国内に核燃料サイクルが確立すれば、供給安定性は一層強化される。
@-2 資源の有効利用
 再処理によって使用済燃料から有用な核物質を分離回収し、これを再利用することにより、ウラン資源の有効利用が可能となる。
@-3 放射性廃棄物の適切な処理・処分
 再処理は、使用済燃料に含まれる放射性廃棄物を適切に処理処分する上でも非常に効果的である。
 さらに、再処理の過程で、放射能レベルの高低、放射性廃棄物の性状に応じて廃棄物を分別することができるため、それぞれの廃棄物の特性に合わせた合理的な処分をすることができる。

A核燃料サイクルの仕組み
 核燃料サイクルは、軽水炉の場合を例にとってみると、主として次の7つの過程に分けられる。
(1)採掘・製錬 ウラン鉱石を採掘し、製錬してイエローケーキ(U3O8)をつくる。
(2)転換・濃縮 イエローケーキを六フッ化ウランに転換し、所要の濃縮度(燃えるウランがウラン全体の約3〜5%)の濃縮ウランをつくる。
(3)再転換・成型加工 六フッ化ウランを二酸化ウランに再転換し、燃料集合体の形に成型加工する。
(4)発電 原子炉に装荷された燃料を核分裂させ、その際に発生するエネルギーを利用する。
(5)再処理 使用済燃料には、ウラン、プルトニウムのような有用な核物質と、これらを取り出した後に残る核分裂生成物とがあるので、これらを分離するために化学的処理を施す。
(6)再利用 回収されたウラン及びプルトニウムは、再び燃料として用いるため、燃料集合体に加工される。
(7)廃棄物処理処分 再処理の結果分離される核分裂生成物は、高レベル放射性廃棄物として、また発電所内で発生する廃液・雑固体等は、低レベル放射性廃棄物として、適切な処理を施した後、処分する。

B核燃料サイクル事業の推進
 現在、青森県六ヶ所村において、核燃料サイクル施設(ウラン濃縮、再処理、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理、低レベル放射性廃棄物埋設)の建設・操業が推進されている。
 これら施設の事業主体は、日本原燃(株)であり、同社は電力業界を中心に、関連業界の協力のもとに設立されたものである。
 このうち、ウラン濃縮施設については、1992(平成4)年3月、低レベル放射性廃棄物埋設施設については1992(平成4)年12月に、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理施設について1995(平成7)年4月に操業を開始した。
 また再処理施設については、1989(平成元)年3月に原子炉等規制法に基づく再処理事業指定申請がなされ、1992(平成4)年12月に再処理事業指定がなされた。現在、2005(平成17)年の操業開始に向け、建設が進められている。』