由井(1977)による〔『現代鉱床学の基礎』(229p)から〕(229-238p)


第16章 層状マンガン鉱床
1 まえがき

 本章では、近年まで“秩父古生層中のチャートに伴う層状マンガン鉱床”と呼ばれていたものをおもに取り扱う。近年これに関連する次の諸点で大きな進歩が見られた。1)地向斜の本質、2)秩父古生層の研究、3)チャートの成因、4)深海底におけるマンガンの濃集。筆者はこれらの研究について十分な見通しを持っていないので、本章の記述に誤りがあったり、また近い将来大きな修正が必要となることも予想されるが、筆者の理解の範囲内で層状マンガン鉱床についての基礎的な考え方を述べる。個々の鉱床の記載は文献に譲ったが、頁数の関係から文献も総括的なもの、最近のものに限って示した。
 世界的には層状マンガン鉱床といえば、まず黒海北岸のニコポール型の鉱床が考えられる。この鉱床は鉱量として世界の70%を占めるといわれている(第1図:略)。わが国のチャートに伴う鉱床は地向斜における塩基性火山活動に伴って生成したと考えられ[渡辺、1957]、Shatskiy[1954]のVolcanogenic Greenstone-Siliceousグループに相当すると思われる。この種の鉱床は世界各地に多数分布し、一般に規模はあまり大きくはないが変化に富み、鉱床学的には興味深いものである。』

2 マンガンの地球化学的性質
3 マンガン鉱物とその産状
4 チャートに伴う層状マンガン鉱床
5 岩石からのマンガンの溶出実験
6 マンガン鉱床と深海底堆積物の比較
7 秩父地向斜とチャート
8 層状マンガン鉱床の生成
主な参考書



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